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のび太は強く揺さぶられ、目を覚ました。
「な……なんだよ!?」
「起きろ、のび太!」ドラえもんが耳元で叫んだ。「大変なことになってる」
のび太は布団から立ち上がった。
いつも通りののび太の部屋だ。のび太は首を傾げた。「一体何だって?」
「外だ、外をみてみろ!」ドラえもんが窓を(手で)指した。
のび太は窓の外を怪訝そうにみた。外を飛び回る鳥達の姿が見える。そして
「……な!?」のび太は目を見開いた。
その鳥はポッポだったのだ。



「どうしてポケモンがいるのさ!?ドラえもん?」のび太はドラえもんの肩を揺らした。
「わからないよ!!朝起きたらこうなっていたんだ……」
ドラえもんは本当に知らないらしい。
「でもこれはこれでちょっといいかも」のび太は改めて外を見て呟いた。
「何いってるんだのび太君!これは大変なことなんだぞ!それに……まだ気づかないかい?」
「何を」と言いかけたのび太は口をつぐんだ。「ドラえもん、ポケットが無いじゃないか!!」
「そう」ドラえもんが力無く言った。
「多分この現象は僕のポケットを盗んだ奴がやってるんだ」



「いいかい、のび太君。多分今町中に、いやもしかしたら世界中にポケモンが発生しているはず。
 このままじゃ未来が変わっちゃうんだ。そしたら君の未来も変わる。
 君はしずかちゃんと結婚できなくなっちゃうんだぞ!!」
その言葉にのび太は深い衝撃をうけた。
「ド、ドラえも~ん!!大変じゃないか……僕はどうしればいいの!?」
「落ち着いて。まずはポケットを持っている奴を探さなきゃならない。
 昨日の夜誰かがこの家に侵入したはずだ。そいつを捕まえて、何とかしないと」
「ママは?」「それがいないんだ。」ドラえもんは肩をすくめた。
「そんなぁ~。とりあえず外に出てみようか。」
のび太の提案に、ドラえもんは賛成した。



のび太達は外に出た。町はの見た目はなんとも無いが、空ではポッポやヤミカラスが飛び交っている。
「ドラえも~ん!!のび太~!」
誰かの呼ぶ声がして、二人は振り向いた。声の主はスネ夫だった。
「二人とも、これはどういうことだい!?そこら中ポケモンだらけじゃないか!」
「僕らにもわからないんだ」ドラえもんはポケットの事を説明した。
「ふ~ん、ドラえもんのポケットを盗んだ奴か。うらや……いや、いやな奴だな。
 とにかく、みんな空き地に集まってるんだ。ついてきて。」
三人は空き地に向かった。



「おう、スネ夫!」空き地の土管からジャイアンが呼びかけた。スネ夫が手を振り、応える。
 空き地にはジャイアン、しずか、出来杉、その他大勢の町の子供が集まっていた。
ドラえもんは再びポケットの事を話した。
「なるほど、ドラえもんのポケットを持ってる奴が犯人だな!!」ジャイアンが言った。
「そうだね。そっちは何かわかってるの?」のび太が聞く。
「あくまで僕の調べた範囲でだけど……」出来杉が言った。
「まず大人が見当たらないんだ。親はもちろん、近所の人全員。」
ドラえもんは眉をひそめた。「犯人はどうしてそんなことを」
「君達、ちょっといいかい」突然誰かが呼びかけ、その場にいた全員が振り返った。



「私の名はアカギ」空き地の入り口に立つ男が言った。
「……アカギって、ギンガ団の首領じゃないか!?」スネ夫が怯えながら言う。
するとアカギは首を横に振った。
「それはゲームの話だ。今ここにいる私はある方に仕えている。
 そして私はその方の命令でここに来た。」
「そいつが僕のポケットを盗んだやつだな?」ドラえもんが凄んだがアカギは微笑むだけだ。
「さあ、どうだか。私は伝言を預かっただけだ。
 さて、その伝言と言う奴だが、……君たちにあるゲームに参加してもらいたい。」
そう言うと、アカギはポケットから六個のボールと六枚の紙を取り出した。
「!! その色は、マスターボールじゃないか」出来杉が驚きの声を洩らす。
「それにその紙は、どうやらマップのようだね。」
「そう」アカギは六個のマスターボールと紙をを地面に置いた。「ルール説明だ」

 参加者は六名。選ばれた六人はマスターボールで最初のポケモンをゲットする。
 ポケモンを手に入れたらタウンマップをもとにジムを四つめぐる。
 めぐるジムは六人全て違う。それぞれのリーダーはゲームと同じだが使うポケモンは違う。
 それぞれのジムで勝利したらバッジをもらい、四つ手に入れたら次の指示をだす。
 道具は町のショップで補充できる。新たなポケモンを捕まえてもいい。

「最後に一言。最終的に、残るのは一人になる」アカギは不気味に笑い、ドンカラスを繰り出した。
「待て!一体どうし――」ジャイアンの叫びは羽ばたきに掻き消された。
「さあ、早く六人を選べ。開始は明日の朝だ!!」アカギは告げ、飛び立った。



「……どうするの?」のび太の言葉で沈黙は破られた。
「あいつらの好きになんかさせるか!!」ジャイアンが咆えた。
「でもゲームに参加しないとあいつら何するかわからない。」ドラえもんが呟いた。
「考えてみるんだ。奴らはどうしてこんなことをするのか。」出来杉が提案した。
「僕には奴らが何かを隠しているように思えるんだ。奴らはこの世界をゲームの世界に変えている。
 目的は知らないけど。恐らくその目的が成熟するまでに時間がかかるんだ。」
「このゲームは時間稼ぎってこと?」スネ夫の言葉に出来杉は頷く。
「そうとしか考えられない。僕らはなぜかこの世界の影響を受けていない。
 奴らにとってそれは計画の邪魔なんだ。だからこんなゲームに参加させて
 先に目的を遂行させようとしているんだ。邪魔ものがいないうちに。」
出来杉の説得力のある言葉に、その場にいたほとんどの者が感心していた。
「そしてこのゲームは僕らにとってチャンスでもある。奴らの予想より早くゲームをクリアすれば
 奴らの目的を阻止できる。このゲームは奴らと僕らの唯一の繋がりなんだ。」
出来杉に拍手が送られた。出来杉はあまり快さそうな顔じゃないジャイアンを一瞥し、身を引いた。
「とにかく、」ジャイアンが切り出した。「六人を選ぼう。さあ立候補してくれ。」
しかし誰も手をあげようとしない。ジャイアンは苛立ち、唸った。
「俺はいくぜ!!」ジャイアンはボールとマップを手に取った。「奴らを絶対倒してやる!!」
それでも、立候補者はいなかった。
 結局立候補者は出ず、マスターボールとマップは土管の中にしまわれ、明日の朝決める事になった。



翌朝。ジャイアンは土管を見て、あることに気づいた。
「ボールが、二個ない!!」ジャイアンは町内を走り、親友たちをよびだした。
のび太、ドラえもん、スネ夫、そしてしずか。
ジャイアンは何かあるとまずこの四人を呼んでしまうのだった。いつものメンバーだから。
「とにかく、盗まれたってことはそれなりの理由があるはずだよ。
 何にせよ、ボールがわからない人のもとに行く前に、僕らで残りのボールの所持者を決めよう」
このドラえもんの一言に五人は頷いた。
「ボールは盗まれた分と、俺のを抜いてあと三つ」ジャイアンが指を折りながら呟く。
「……僕、いくよ!!」のび太は勢いよく手を挙げた。
その行動に誰もが驚いた。「の、のび太。いいのか?」ジャイアンは問いかけた。
「昨日の夜中に考えていたんだ。ずっと。……世界を自分勝手につくりかえていいわけがない。
ママやパパや、他の全ての人たちをとりかえそう、世界を元に戻そうってね!!」
「の、のび太、心の友よ!!」ジャイアンの熱い抱擁でのび太は笑いながら気絶しかけた。
「ぼ、僕もいく」咳き込むのび太の脇でスネ夫が言った。「のび太がいくんだ。僕にだってできる」
ジャイアンは涙を流してスネ夫の華奢な手を持ち潰・・・・・・いや握手した。
そのとき「あたしも」立候補したのはなんとしずかだった。
たちまちみんなからエェ―!?と声が出る。
「だ、大丈夫なの、しずかちゃん?」のび太は心配そうにきいたが、しずかはクスッと笑った。
「平気よ。あたしポケモン好きだから」
「じゃあ、僕は町のみんなを見守るよ」最後に残ったドラえもんが言った。
「決まりだな」ジャイアンは全員の顔を見回し、手を出した。
全員頷き、手がみんなの中心で重なっていく。「行くぞ、世界を取り戻しに!」
 全員が応えた。そして、ドラえもんを残して四人は旅に出た。



 のび太は最初のポケモンを手に入れるため、ひとまず学校に来た。
(まずは何かを手に入れなきゃ。強そうなのがいいなあ)
そんなことを考えながらプールについた。
プールには様々なポケモンが見えた。大方トサキントやケイコウオなどだった。
のび太は興味津々でプールを覗いた。
のび太は水タイプのポケモンが好きだ。
なぜなら、泳げることを羨ましく思っていたからである。
(いいなあ、あんなに自由に泳いで。……ようし、こんだけいるんだ。どれか一つ)
のび太はマスターボールをプールに向かって思い切りなげてみた。
しかしちょうどそのとき、プールからテッポウオが顔を出し、水を噴射してきた。
ボールはきれいに放物線を描き、のび太の顔面に直撃した。
(!!)のび太の目の前に星が飛びかった。(この、よくもやったな!)
のび太はプールに飛び込もうとしたが、泳げないことを思い出して足を止めた。
のび太は肩を落とし、ボールを拾ってプールサイドにしゃがんだ。
(ああ、こんな調子で大丈夫かな。)のび太はいまさらながら立候補したことを後悔した。
 のび太は脇のハスの葉にボールを置き、空をぽけ~と見上げた。 
(……ハスの……葉…・・・?ハス…・・・え!?)
のび太はハッとして脇をみた。
ボールが揺れている。何かをゲットした様子だ。そしてあのハスの葉がない。
のび太は自分が無意識のうちにポケモンをゲットしてしまったことに気づいた。
そして、なぜか妙にうれしくなった。(これが……ゲットなんだ!!)
のび太は飛び上がり、足を滑らせてプールに落ちてしまった。
のちにテッポウオの一斉射撃で帰還しても、喜びは消えなかった。
 のび太、ハスボーゲット!



ジャイアンは工場地帯にいた。
(俺のポケモン、俺のポケモン。強くてかっこいい俺のポケモン!!)
ジャイアンは頭の中で同じ言葉を繰り返しながら、最初のポケモンを探していた。
(俺のポケモン、俺のポケモン、強くて……ん!?)
ジャイアンの鋭い眼光が、目の前の倉庫で何かが動いたのを捕らえた。
「今何かいたな。ついに見つけたか?」
ジャイアンは意気揚々と倉庫に入っていった。
 倉庫の中は暗かったが、ジャイアンは何かの気配を感じていた。
そのとき、強い光と音が放たれた。
「うわ、何だこの野郎!!」ジャイアンは咄嗟につぶった目をゆっくりと開けた。
まず見えたのはコイルの大群だ。何十体ものコイルが一斉に放電している。
その次に見えたのはコイルたちに取り囲まれたココドラの姿だった。明らかに弱っている。
(あのココドラ、コイルに襲われているのか?何で逃げないんだ)
ジャイアンが首を傾げている間、ココドラは弱りながら暴れていた。
まるで強い力に抗っているように。
(!!そうか、わかったぞ。コイルの特性「じりょく」のせいだ!!)
ジャイアンは合点がつくと同時に駆け出していた。攻撃を食らっているココドラだけを見据えて。
(一対多数なんて卑怯だ!あのココドラを助けなきゃ)
ジャイアンはコイルの群れに飛び込み、ココドラを抱えた。
途端にコイルたちの電気ショックがジャイアンを襲い、ジャイアンは悲鳴を上げた。
「ぐおぉ!!」(くそったれ、じりょくが強すぎて動けねえ……)
コイルの放電は無常にも続けられた。ジャイアンは朦朧とする中、一つの考えが浮かんだ。
ジャイアンはマスターボールを取り出し、震える手でココドラに当てた。ココドラがボールに入る。
すると、じりょくの対象を失ったコイルたちは散り散りになった。ジャイアンは満足顔だ。
 ジャイアン、ココドラゲット!



しずかは学校の裏山にきていた。
今、しずかの前には小さな野生のミミロルがいる。
「わぁ―、これがミミロルね!こうしてリアルで見てもかわいい――!
 ……でも戦闘面じゃクズね。ゴミには用はないわ。ほら、あっちいけ」
しずかは手近に落ちてたマトマの実をミミロルに見せ、遠くに投げた。
人間の言葉は当然わからないミミロルは無垢な瞳でマトマの実を追いかけていった。
「やっぱり強いポケモンってなかなか見つからないものね。
 それにレベルも、能力値もわからないわ。リアルにもほどがある……」
しずかは愚痴を並べていった。
 しずかはポケモンが好きだった。ボールに入れば自分の僕となるポケモンたち。
そのポケモンを駆使してその世界の頂点にたつ。強者のみが勝つ世界。
普段バカな男子や変なロボットとつきあってるしずかにはいい気晴らしだった。
(でもこれはゲームと違う)しずかは歯噛みした。(強ければいいわけじゃない。一体どうすればいいの)
 しずかは悩んだ末、行動に移った。
(こうなればなるべく技のバリエーションが高いポケモンをする。テクニックで勝負よ!)
そのとき何かが飛び出してきた。しずかは一瞥した。ナゾノクサだ。
しずかは無意識のうちに蹴りを入れた。
だが、しずかはいつもと違う感触に驚き、下を向いた。ナゾノクサはその草で蹴りをうけとめていた。
(……わたしの蹴りを受け止めるとは……このクサ、できるわね)
しずかは何のためらいもなくボールを投げた。ナゾノクサは吸収され、しずかの足が空を切る。
(ふふ、あとはこいつを中心にポケモンを集めれば)
しずかはニヤリと笑った。(リアルポケモン、受けて立とうじゃない)
 しずか、ナゾノクサゲット



スネ夫は自分の家にいた。
といっても、別に棄権したわけではない。ちゃんとした用があったのだ。
スネ夫は玄関を静かに開けた。家の中は異様な気配がする。
「もう逃げないぞ。やい!出て来い!昨日はよくも」
突然スネ夫の鳥肌が立った。目の前の空間が歪み、子供の泣き声のようなこえがする。
 現れたのはムウマだった。
「やっとでてきたな」スネ夫ははき捨てるように言った。
「昨日はよくも僕を脅かしてくれたな!おかげで僕は怖くて寝れなかったんだぞ!」
ムウマはケラケラと笑った。
「笑い事じゃないぞ。僕の繊細なハートを傷つけやがって、僕ちゃんはとってもデリケートなんだ!!
 お前のせいで、お前のせいで僕ちゃんはシーツを三枚も干す羽目になったんだぞ!!」
すると、ムウマは激しく笑い転げた。
スネ夫は悔しさで涙があふれてきた。
「……なんだよ、もう。なんでそんなに笑うんだょ……うぅ」
スネ夫はその場でひざをつき、涙を拭った。
 ムウマは笑いを止め、スネ夫の顔を覗き込んだ。
「よるな!うっとうしい」スネ夫はムウマを払いのけた。
ムウマはしばらく漂っていたが、そのうち家の奥に入っていってしまった。
「なんだよ、ここから出て行かないってか。そんなこと……ゆるさないぞ。僕の家から出て行け!!」
反応はなかった。「ふん、そうかよ。だったらとっととこのゲームをクリアしてやる。
そしたらママも帰ってきて、お前なんか追い出して……?」
突然ムウマが飛び出してきた。手にはハンカチを持っている。スネ夫はあっけに取られていた。
「……それでふけってのか?」するとムウマは頷いた。スネ夫はハンカチを受け取った。
「礼は言わないぞ」ムウマはどこかうれしそうだ。さらに不思議なことに、ムウマはスネ夫の後をつい
てきた。スネ夫は不機嫌そうだったが、認めた。    スネ夫、ムウマゲット



 スネ夫はタウンマップをもとに旅をしていた。
町にはいつの間にか人が増えていた。もっとも、ゲームの住人たちだったが。
そしてもちろんトレーナーもいて、スネ夫は今しがた戦闘を終え、ポケモンセンターに来た所だ。
(まったく、トレーナーまでいるなんて聞いてないや……まあ面白いからいいけど)
スネ夫は純粋にゲームを楽しんでいた。
「ジョーイさん、マップによるとこの辺りにジムがあるようだけど、どんなジムかわかる?」
スネ夫はメモ帳を取り出して情報収集を始めた。
何せポケモンの世界観であるものの、実際は誰かが作ったまったくオリジナルの世界。
何が待ち構えているかはわからない。そんな上で情報は重要だった。
「そうねえ、確かトウキといったはずよ」 ジョーイさんは微笑みながら答える。
(トウキか、格闘タイプ。でも使うポケモンはゲームと違うこともあるらしいし、
 まあムウマなら心配ないか) 「ありがとう、ジョーイさん」 
ムウマの回復は済んだが、外がもう暗いのでジム戦は明日にして今日はここにとまることにした。
この世界のポケモンセンターは無料の宿泊施設もかねている。

 次の日。
スネ夫は昼ごろに目を覚ました。学校もないから時間に追われることもない。
遅い朝食を済ませ、ジムに向かった。顔は自信に満ちている。
 ところが、ジムの前まで来たときだった。突然ボールが揺れ、ムウマが飛び出してきたのだ。
「な、何だよムウマ。どうしたって……イテテッ」 ムウマはスネ夫の髪を掴んで引っ張った。
「痛いじゃないか!!引っ張るのをやめ……イテッ、とにかく、ほらジムいく……ぞ?」
ムウマは引っ張るのをやめ、スネ夫の前に飛び出した。
「どうした……!?」 スネ夫は急にめまいに襲われた。
ムウマのナイトヘッドだ。
スネ夫はその場で気絶してしまった。



 スネ夫は周りがざわついているのに気づいた。
「君、やっと目が覚めたようだな」
スネ夫は話しかけられ、がばっと体を起こした。
スネ夫は話し手の顔を見た。トウキだった。
そして周りに人だかりが出来ているのに気付いた。スネ夫ははっとした。
(そうだ、ムウマの攻撃を食らって……)スネ夫は顔を赤くした。
「君、もう立てるね」 トウキに話しかけられ、スネ夫は頷いた。
「こんなこと言うのも難だが、ジムの前で寝そべっていられるのは邪魔だ」
トウキはそう言うと、ジムに帰っていった。
 スネ夫はボールを確かめた。そしてすばやく群集の間を駆け抜けた。
嘲笑が聞こえるたびに、歩調を強めた。
茂みに入り、ボールを地面にたたきつけるようにしてムウマを繰り出した。
「ムウマ!! なんてことするんだ!!」 
スネ夫は間髪いれずムウマを怒鳴った。
「お前のせいでみんなの笑われ者だ!! 恥ずかしいじゃないか、どうして……おいなんだ」
ムウマはスネ夫をじっと見つめていた。
「なんだよその目は。僕のことが嫌になったのか?
 ……ならちょうどいいや。こっちもお前のことなんか最初からいやだったんだ!!
 とっとと出てけ!!」
ムウマしばらく何か訴えるような目で浮いていたが、スネ夫が睨むと飛んでいってしまった。
 スネ夫は一息ついた。
(さて、またポケモンを捕まえないと。金ならトレーナーと戦ったからある。
 適当にボールでも買って、飛行タイプでも捕まえれば何とかなるだろ)
スネ夫は茂みから出た。



 スネ夫は目の前の光景に愕然とした。
ジムの中。トウキはハリテヤマを使っている。
そして今、即興で手に入れたスバメがやられたところだった。
「修行が足りないんじゃないのか?」 トウキが嘲笑混じりに言う。
「う、うるさい!!」 スネ夫はスバメをボールに戻した。(ありえない、何で)
スネ夫はチルットを繰り出した。
「さっきのは何かの間違いだ。タイプでは勝ってる。」
「タイプなんて力でカバーできるものだ」 トウキは腕を組みながら言う。
スネ夫は歯噛みした。「チルット、つつk」
「ねこだまし」 
トウキの命令とほぼ同時に、ハリテヤマはチルットの前で手を叩いた。
チルットはひるんだ。
「チルット、よけるんだ!」 スネ夫は必死に叫んだ。
チルットは動いた。が、
「遅い! つっぱり!」 ハリテヤマの攻撃がチルットを捕らえ、叩き落した。
「チルットぉ!」 スネ夫はチルットに駆け寄った。
「出直して来い」 トウキは告げた。「ジム戦は早すぎる。もっと練習す」
「うるさいやい!!」 スネ夫はジムを飛び出した。



(なんだよ、なんだってんだ……)
スネ夫は顔をしかめた。タイプ相性だけじゃ勝てない。
実は先に出したスバメもチルット同様、つっぱり一発で倒されたのだ。
 夜になり、スネ夫はポケモンセンターの宿泊部屋に戻った。
肩を怒らせ、ベランダにでる。まず手に取ったのはスバメのボールだった。
(使えないポケモンなんていらないや)
スネ夫はボールからスバメを出した。「スバメ、もういっていいぞ」
スネ夫はスバメを逃がした。スバメは夜空を滑空する。
(次は、っと)スネ夫はチルットのボールに手を出した。
が、そのとき、目の前の空間が歪んだ。



現れたのは、あのムウマだった。
スネ夫は舌打ちした。「何だ、逃げたんじゃなかったのか?」
ムウマはスネ夫を睨んでいる。スネ夫はため息をついた。
「何の用かは知らないけどな、とにかく今はこいつを」
スネ夫はベランダでボールのスイッチを押そうとしたが、その指をムウマは押さえた。
スネ夫は苛立った。
「そんなに俺の邪魔をしたいのか? 冗談じゃない、僕は出てけと言っただろ。
 早くでてけよ、僕に恨みでもあるのか? 恨みがあるのはこっちのほうだ!!」
ムウマは指を押さえたまま、首を振るだけだ。
「何がしたい? 僕に付きまとうなよ! お前がいなくても別に……」
スネ夫はふっと怒りを鎮めた。
 ムウマが泣いていたのだ。スネ夫の指を掴んだまま。
「……わかったよ、チルットは逃がさない」スネ夫は手を降ろした。
「でもな、お前は連れて行かないぞ!! 泣いたってむだだ。
 いくら僕につきまとっても僕がこのゲームをクリアすれば、ママが……」
スネ夫はあることに気付いた。



「ムウマ、お前僕にゲームをクリアしてほしくないのか?」
スネ夫は今更ながら気付いた。「自分が消えてしまうから」
 ムウマはスネ夫を見据え、顎でスネ夫を指した。
「……僕?僕と、わかれることになるから?」
ムウマは大きく頷いた。
 スネ夫は口を半開きにしてムウマを見た。ムウマの目は潤んでいる。
(ムウマは本気で悩んでいるんだ)スネ夫は急に目を伏せた。
「ムウマ、怒って悪かった。でも、」
スネ夫は言葉を探した。ムウマはじっとまっている。
「でもな、僕はこの世界をもとに戻さなくちゃいけない。
 それに、僕の友達に何でも叶えてくれるやつがいるんだ。
 この世界もそいつの道具が作ってしまったもの。そいつに話せばきっとまたあえるよ。
 ゲームをクリアしたあとでも」
ムウマは笑ってくれた。
スネ夫は自然と顔がほころんだ。さっきまでカリカリしていたのが恥ずかしいくらいに。
 スネ夫は今度こそトウキに勝つ、そしてこのゲームでも、と誓った。 



 スネ夫はジムに入った。
「何だ、また来たのか」 トウキが呆れた口調で言う。
「昨日の勝負で力の差はわかったはずだ。それとも、たった一日で俺を倒せるだけ強くなったのか?」
「ああ、そうさ! 僕はお前に勝つ」 
スネ夫の声は自信に溢れていた。トウキはそれをきいて微笑んだ。
「どうやら昨日よりは楽しめそうだな。いいだろう、ジム戦の開始だ」
 スネ夫とトウキはバトルフィールドに立った。
「いけ、チルット!」
スネ夫はチルットを繰り出した。
「昨日はつっぱり一つで終わったが、大丈夫なのか?」
「もちろんさ!」
「ふん、では試してやろう。いけ、ハリテヤマ!!」
トウキはハリテヤマを繰り出した。
「ハリテヤマ、ねこだまし」
ハリテヤマがチルットに迫った。昨日と同じ戦法だ。
「チルット、目をつぶれ! そしてうたう!」
スネ夫の指示が飛ぶと同時に、ハリテヤマは手を叩いた。
しかしチルットはすでに目を閉じて歌い始めていた。
トウキは息を飲んだ。「まずい、ハリテヤマ逃げろ!」
だがハリテヤマは動かない。もう眠っていたからだ。
「対策は出来ているわけだな」 トウキが話しかけた。
「もう同じ手は食わないさ。チルット、つつく攻撃!」



「もどれ、ハリテヤマ」
トウキはボールのスイッチを押した。ハリテヤマがボールに納まり、チルットのつつくが空を切る。
「どうやらあまく見ていたようだ。次はこいつだ」
 トウキはゴーリキーを繰り出した。
「さっきの勝負は僕の勝ちってことかい?」 スネ夫は確認する。
「いや、こいつはまだ戦える。普段弱い奴はハリテヤマで適当にあしらっていたんだ。
 けどそうもいかないらしい。今度繰り出したときは本気のハリテヤマで勝負だ。
 ……まあそれも、俺のゴーリキーに勝てたらだがな!」
 ゴーリキーはチルットに詰め寄った。
「ゴーリキー、からてチョップ」 「よけろ、チルット! そしてつつく!」
ゴーリキーの攻撃から逃れたチルットは、そのまま旋回して突撃した。
「受け止めろ、ゴーリキー!!」 「な、なんだって―!?」
スネ夫が驚いている間に、ゴーリキーはチルットを押さえた。
「そのままちきゅうなげ!」
ゴーリキーはチルットを投げ、地面に叩き付けた。
「う、受け止めるなんてせこいぞ!」 スネ夫は講義した。
「練習の賜物だ。ゴーリキー、からてチョップ」
チルットは何とか起き上がったところで、からてチョップをくらい再び地面に突っ伏した。
「どうやら急所に当たったようだな」 トウキの言う通り、チルットはもう立てそうにない。
「く、もどれチルット」 (からてチョップは急所に当たりやすい。すっかり忘れていた)
 スネ夫は次のポケモンを繰り出した。



 スネ夫の二番手、ムウマを見ると、トウキは顔をしかめた。
「かくとうタイプ相手にゴーストタイプを使うのはせこくないのか?」
「うるさい、あの技があるだろ」 スネ夫は指摘した。
「ああ、その通りだ。ゴーリキーみやぶる」
ゴーリキーはみやぶり始めた。
 その隙にムウマが動く。「先手を打て! サイコウェーブ!」 
ムウマから波状の光線が発射される。
ゴーリキーは攻撃を食らい、苦痛の声をもらす。
「負けるなゴーリキー! リベンジ!」 トウキの声が響く。
ゴーリキーの目に光が戻り、ムウマを攻撃した。
「!! もうみやぶっていたのか。耐えろムウマ!!なきごえだ!」
ムウマのなきごえがゴーリキーの攻撃力を下げた。
「ふん、無駄だ! ゴーリキー、にらみつける」
今度はムウマの防御が下がる。
「ムウマ、なきごえなきごえなきごえなきごえ」
スネ夫は何を思ったか何度も同じ命令をした。
「何度やっても同じだ!にらみつけるにらみつけるにらみ」
「サイコウェーブ!!」
ゴーリキーはメンチ切ってる間に不意をつかれた。
「ゴーリキー!! くそ、ひきょうな!」 トウキは悪態をついた。
「ひきょう? のってきたのはそっちじゃないか」 スネ夫はいじらしく笑った。
「く、こざかしい。こうなったr」 「ムウマ、止めだ」 「え、ちょ」
トウキの言葉をさえぎり、ムウマの光線がゴーリキーを仕留めた。



「……戻れゴーリキー」 トウキはボールをしまった。
「さっきはまんまとやられたが、コイツにそんな戦法は通じないぞ! いけハリt」
「ちょっとまった」 スネ夫が止めた。「いいのかい? そんな奴出して」
「なんだと、どういうことだ?」 トウキは眉をひそめた。
スネ夫はメモ帳を取り出した。
「ええと、ハリテヤマの覚える技は……たいあたり、きあいだめ、すなかけ、つっぱり、あてみなげ
 ねこだまし、ふきとばし、はたきおとす、きつけ、はらだいこ、こらえる、ちきゅうなげ
 きしかいせい、……いいかい、その中でムウマに攻撃を食らわせられる技は0だ。
 つまりお前がハリテヤマを出しても、僕のムウマにはなす術も無く倒される。 
 それでもやるかい?」
トウキは愕然とした。それは単一タイプであるジムの宿命であり、どうあってもくつがえせない。
「お、……俺の負けだ」
トウキはがくっとひざをついた。
「お疲れ様でした~」 スネ夫は意気揚々とバッジを受け取り、足早にそこをさった。



 何故急いでたかって? 
トウキが、唯一ハリテヤマでムウマに攻撃を与えられる技に気づく前に、町を去るためさ。……



こうしてスネ夫は最初のジムをクリアした。



 スネ夫がバッジを手に入れた頃。
「もう終わりね」 しずかは目の前で唖然としている男に向かって告げた。
 男はジムリーダーのタケシだった。
「く、俺の……負けだ」 タケシは歯を噛み締め、認めた。
タケシは今しがた倒されたハガネールをボールに戻した。
「一つ言いたいんだけど……」しずかはナゾノクサをボールに戻しながら言った。
そう、しずかはこのナゾノクサ一体でハガネールを下したのだ。
「いわタイプのジムのくせに、はがねタイプなんか使って罪悪感ないの」
「ぐっ……」 しずかの言葉がタケシの胸に突き刺さる。「これは弟たちが勝手に」
「まあいいわ。どのみちあたしの敵じゃないし」 しずかはバッジを取りにタケシに近づいた。
「しかし、どうしてだ」 タケシは質問した。「どうしてナゾノクサでハガネールを倒せた?」
「……ハガネールはくさ・じめんタイプ。そのせいでくさタイプの技は通常通りにきく」
しずかはバッジを受け取った。
「それにそんなに大きなポケモンなら急所に当てるのは簡単よ。すいとるだけで倒せるわ」
 タケシはその技術に脱帽した。
(この少女……大きいハガネールを見てもひるまず、そんなに冷静な判断を……
 いや、あのナゾノクサも褒め称えるべきか。実際あれ程トレーナーに従順なポケモン見たことが)
「それじゃ、さよなら」 しずかが扉を開け、タケシははっと目を上げた。
(これは恐ろしいトレーナーが現れたものだ……)
 タケシは苦笑いしながらしずかを見送るのであった……



 タケシ……と言っても、こちらは剛田 武。通称ジャイアン。
そのジャイアンはまだ、工場からそんなに離れていないポケモンセンターにいた。
いや、実は離れられないのだ。
(どういうことだ? くそ) ジャイアンは首を傾げていた。
「なあ、ジョーイさん。俺のココドラ、どこかおかしなところないか?」
ジャイアンはココドラを預けながらきいた。
「え、どうかしたの?」 ジョーイは不思議そうな顔をする。
「ここ最近よく診るけど別に普通よ。何かあったの?」
「それが、実は……俺のココドラ、この周辺から離れようとしないんだ!」
 そう、それがここを離れられない理由だった。
ココドラはジャイアンが次の町へ行こうとする度にボールからでて、ジャイアンの前に立ちはだかる。
そしてジャイアンが進むのを必死で抑えるのだ。
「あいつ時には俺を攻撃してくるんだぜ。おかげで何べんもあざができちまった」
「そう。それで始めに来たとき、『俺の傷を治してくれ』なんて言ったのね。
 そんな理由があったなんて。ポケモン用の薬を使っちゃってごめんね」
「ああ、あのときは大変だったぜ。もう俺をポケモンだなんて間違えないでくれよ!」
「ええ、もちろん。ところでそのココドラ、あそこでゲットしたの?」
ジョーイは窓の外の工場を指した。
「ああ、そうだよ。あそこで初めて出会ったんだ」 ジャイアンの顔は自然と笑っていた。
「なら、あそこに何かあるのかもね。あそこは廃工場だから、人はあまり寄り付かない。
 ポケモンの巣窟だからわからないことも多いし。もう一度行ってみたらどう?
 ココドラのほうから何かを示してくれるかもしれないわ」
ジョーイの提案に、ジャイアンは大賛成した。



 ココドラの回復が済み、ジャイアンは工場に向かった。
 ジョーイの言った通り、ここは廃工場。あたりにははがねタイプのポケモンが寄り付いている。
もっとも、ジャイアンはココドラを育てるためここで修行していた。
 ジャイアンはふと思いつき、ココドラを出した。
ココドラはあたりを見回し、ジャイアンを見上げた。
ジャイアンはその首をつかみ、持ち上げた。ココドラは慌てている。
「さあ、ココドラ。教えやがれ」
どうもジャイアンはジョーイの話を取り違えたらしく、ココドラを脅し始めた。
突然の主人の行動にココドラは慌てふためいた。
「騒ぐんじゃねぇ! いいか、お前がここに何か隠しているのはわかってんだ!!
 話は全てジョーイさんからきいたぜ。へへ、」
ジャイアンは久々の感覚にニヤリとした。
「さあ早く場所を教えやがれ!! でないとギタギタに、へぶぅ!!」
ココドラはジャイアンを頭突きし、工場の奥へ駆け出した。
「くそぉ、待てのび太~!!」
ジャイアンはココドラの姿に、完全にのび太を投影していた。
 その時、突然大きな音が響いた。
ジャイアンははっとした。音は奥の方からだ。
「ココドラ!」 ジャイアンは急いで走り、積み上げられた鉄材の奥へ回った。
ココドラは無事だった。ジャイアンはひとまず安堵した。
そして次にその奥を見て息を飲んだ。そこではイワーク二体が誰かを取り囲んでいた。



(前にも似た様なことがあったな) 
ジャイアンはそう思いながら指示を出した。「ココドラ、メタルクロー!!」
「だれ!?」 イワークの間から、女の声がする。
「今助けてやるからな!」 ジャイアンの声と共に、ココドラの攻撃が一体に当たった。
イワークは吠えながら崩れ落ちる。「続けて横のもだ!!」
ココドラは勢いを殺さず、二体目に突撃した。
一瞬閃いて、イワークが「く」の字に折れ曲がり、倒れた。
「よくやった、ココドラ」 ジャイアンは駆け寄りながらいった。ココドラはジャイアンに跳び寄る。
 ジャイアンは目の前の、少し年上くらいの少女を見た。「大丈夫か?」
「……平気。あなたポケモン強いのね」
少女の目がジャイアン、マスターボール、そしてココドラにうつる。
「へへ、いつもここで鍛えているからよ! じゃ、無事みたいだから早く帰りな」
ジャイアンは振り返り、ココドラを引き止めるものを探しに戻ろうとした。だが、
「待って!」 少女の言葉がジャイアンを止めた。
「ねえ、お願い。あたしのポケモンを探して欲しいの!」
 ジャイアンは驚いて振り向いた。
「お前もポケモン持ってるのか?」
「うん」 少女は答え、そして不安そうに付け加えた。
「でもその子だけだから大変なの。探そうとしてもポケモンが襲ってきて危険で……
 だからお願い!!」
少女は手を合わせて願っていた。
「……まあ、この工場にいるんなら、俺もここに用があるしな!」
ジャイアンが答えると、少女は嬉しそうに笑い顔になった。



「あたしの名前はスズナ。いなくなったのはユキカブリよ」
「えっと、ユキカブリってどんな奴だっけ?」
ダイヤモンド・パールをやったことがないジャイアンは質問した。
 二人はそれぞれの理由で工場を散策した。
スズナはここより少し北の町から、ポケモン採集に来た、と説明した。
ジャイアンも自分のココドラの奇妙な症状のことを説明した。
「へえ、じゃあこのあと旅に出るのね」
「ああ、早く出発しなきゃ! 心の友との約束なんだ! 早くこの……」
ジャイアンは世界のことを口に出そうとして思わず口をつぐんだ。
(スズナはこの世界の住人なんだよな。言っちゃまずいか)
ジャイアンはスズナが自分を不思議そうにじっと見てることに気づき、
「この……問題を解決しなきゃなんだ。はは」
ジャイアンは何とか言い繕った。
 そうこうしてるうちに、二人は辺りの変化に気づいた。
「なんかこの辺、寒いな」 
「ええ。……もしかしたらユキカブリのせいかも! あの子こおりタイプだから」
「じゃあ、もうすぐ会えるかもな……う~さみぃ」
二人は凍りついた鉄くずの山を越えた。
 二人は目の前の光景を見て息を呑んだ。
その隙に、ココドラが駆け出していった。



目の前にはぐったりしたボスゴドラが横たわっていた。
「ボスゴドラだ……」 ジャイアンはつぶやき、そしてココドラが駆け寄っていくのに気づいた。
「ココドラ!!」 ジャイアンはココドラを追った。
 ボスゴドラは弱っていた。そのボスゴドラを、ココドラは心配そうに見ていた。
「ココドラ、どういうことだ?」 ジャイアンはボスゴドラを触った。焼けるように熱い。
「どうやら、その子の母親のようね」 スズナが見上げながら言った。
 ジャイアンははっとした。「そうか、ココドラ。お前こいつのことが心配で」
その時、ボスゴドラの後ろで何かがはじけた。二人と一匹は裏へ回った。
 そこにはボスゴドラに潰されているレアコイル。たくさんのレアコイル。そしてユキカブリがいた。
「ユキカブリ!!」スズナは呼んだ。ユキカブリは手を振った。
だがユキカブリの姿は、ところどころ傷ついている。
「レアコイル相手に戦ってたんだ」 スズナは考え付いた。
スズナはユキカブリを戻した。すると、レアコイルたちが、ボスゴドラに電気ショックを与えた。
ボスゴドラの低い悲鳴が響く。「あの野郎ども!」 ジャイアンは攻撃しようとしたが
「ねえ、そのココドラ捕まえたのいつごろ?」 スズナの語調は鋭かった。
「三日前……だけど」 ジャイアンは尻すぼみに答えた。
「あのレアコイルたち、どうやら潰されているレアコイルを助けようとしてるみたい。
 三日前に捕まったココドラがそのことを知っているんだから」
「それより前からあのレアコイルは潰されているってことか」
ジャイアンは納得した。「それにもしレアコイルの特性がじりょくだとしたら厄介だぞ」
「ええ、何とかしなきゃ」



スズナはユキカブリを繰り出した。
「お前、なにする気だ?」 ジャイアンが心配そうに聞く。
「まあ見てなさいって。ユキカブリ、くさぶえ」
不思議な音色が響いた。ジャイアンは直感で耳をふさいだ。
レアコイルたちが次々と眠りについた。
「さあ、これで抵抗はうけないわ。さあ、次はねをはる!!」
ユキカブリは根をはった。コンクリートがめくれる。
「ねをはるは回復技だろ?どうしてこんな場面で」
「いいから、見てなって。ユキカブリ、押し上げて!」
すると、根っこがボスゴドラの巨体を持ち上げた。
「さあ、レアコイルを取って」
ジャイアンは自分に向けられている言葉とわかり、すぐさまとびついた。
「早くしてね!あまりもちそうにないから!」
(むちゃくちゃな作戦だな)と、ジャイアンは思った。
もっとも、素でコイルの群れに跳びかかったことのあるジャイアンのいえたことではないが。
とにかく、ジャイアンはレアコイルを抜き出した。



 ジャイアンたちはレアコイルを見送った。
ココドラは母であるボスゴドラを見つめた。
ボスゴドラはやさしく我が子を見つめ、ささやいた。
「あったかい光景ねえ」 スズナは微笑みながら言う。
「もっとも、まわりは寒いけど。……あれ、武どうしたの?」
スズナは目を押さえるジャイアンを心配そうに見た。
「俺、こういう場面に弱いんだ……」

後に、ジャイアンはココドラを力強く抱きしめ、工場を出た。
「世話になったな」 ジャイアンはスズナに礼を言った。
「お安い御用よ。それじゃ」
スズナは北へ向かっていった。
「さて、俺も……ん?」



スズナは走って追いかけてきたジャイアンを心配そうに見た。
「どうしたの?」 スズナは目を見開いて言う。
「……た、頼む。タウンマップ持ってない?どうやら工場で落としちまったみたいでよ」
ジャイアンは申し訳なさそうに言った。
スズナはため息をついた。「あるにはあるけど……あなた大丈夫?」
「何が?」 「これからの旅よ」 スズナは指をつき立てた。
「あなた、ユキカブリのこと知らなかったでしょ。それになにかあるとすぐに突撃するし。
 道具をなくすなんて、いい?タウンマップは大切なものなのよ!た・い・せ・つなの!
 そんなものをなくすなんて考えられないわ」
「そんなこと言ったって、なくなっちゃったものは仕方ないだろ? なあ頼むよ。貸して」
ジャイアンは工場でスズナがしたように、手を合わせて願った。
「……まあいいけど、じゃあ一つ条件を出すわ。あたしを旅に連れてって!」
ジャイアンは不意をつかれて動揺した。「な、なんでだよ!?」
「いいでしょ、あたしあまり他の町みたことないのよ」
ジャイアンは参った顔をしていたが、しぶしぶ認めた。
こうしてジャイアンの旅にスズナが同行することになった。