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[[前へ>ミュウ その16]] 「どうしよう…全然作戦が思い浮かばない……  早くしないと見つかるし、何か、何か作戦を考えなくちゃ…」 のび太は焦っていた。 余りに広大なフィールドに姿の見えない敵。 これ程作戦を立てにくいバトルは初めてだからだ。 「サンダーにはホウオウが使えない……  ルカリオに苦戦してたら負けは決まる様なもんだ。  隙を突いて、ルカリオになるべくノーダメージで倒さな…」 のび太の言葉はそこで途切れた。 「うわぁっ!?」 突然轟音が鳴り響き、店の商品がいくつも落ちてきたのだ。 音を立てないようゆっくりと立ち上がり、窓から外を眺めるのび太。 その目に映った物は―― ――――――――――― 「フン、この店には居なかった様だな。  ルカリオ、面倒だ。 片っ端から建物に波動弾を放て!」 ルカリオの手に、光が集まる。 そして、その光は多数に分かれ、多くの建物に向かって放たれた。 「し、しまっ…」 その光の一片は、真っ直ぐのび太の居る方に向かってくる。 のび太は後ろに跳び、頭を伏せた。 「う、うわぁぁぁぁぁッ!!!」 音をたて崩れる雑貨屋。 その雑貨屋から響く叫び声を、ジンは聞き逃さなかった。   「フン、そこか」 ---- 「フフッ、のび太さーん。  そこに居るのは分かってるのよ。 出てきてぇー」   無惨に崩れさった店に、わざとらしい声で呼び掛けるジン。 もちろん、のび太から返事が返ってくる事はない。 「フフッ、のび太さんの意地悪。 私怒っちゃった。  今から、この店の残骸をぜーんぶ消しちゃうんだから。 ルカリオ」 ルカリオが待ってましたと言わんばかりに両手を上に掲げた。 「……消せ」 両手に集められた巨大な光の弾が、元は雑貨屋だった物に直撃する。 その瞬間、辺りは光に包まれ、光の中から小さなクレーターが現れた。 「……ばいばい、のび太さ…」 「ちょっと待ってよ」 「!?」 のび太の声が後ろから聞こえ、ジンは振り返った。 「何故お前が…」 「咄嗟に店にあった"穴抜けの紐"を使ったんだよ。  もう少しで死ぬ所だったじゃないか、全く!」 「……少し、甘いんじゃないか?」 のび太を見て、ジンはニヤリと笑う。 「余りに突然の事で、ポケモンを出すのを忘れてるぞ?  俺が一声かければ、ルカリオの拳に貫かれて、お前は死ぬ!」 ジンがそう言うと、ルカリオは戦闘体勢をとった。   「フン、「爪が甘かったな、ジン!」   「何!?」 のび太がジンの言葉を遮ると同時に、ルカリオの下から黄色い尻尾が飛び出た。 「こいつは!?」 「ピカチュウ、アイアンテールで地中に引きずり込め!」 ---- ピカチュウに捕まり、ルカリオの姿は一瞬で見えなくなった。   「ルカリオ、そんなネズミ引き剥がしちまえ!」 ルカリオはジタバタと足を下へ振り回そうとする。 だが、地中では上手く体を動かせない。 ルカリオはおとなしく地面に埋まっていくしかなかった。 「ルカリオのスピードも、地面の中なら関係無い。  このままピカチュウが止めを刺して終わりだ!」   自信満々にそう言い放つのび太。 だが、ジンは眉間にしわを寄せて叫んだ。 「俺達を舐めるな!  ルカリオ、真下に向かって波動弾だ!」 地中にも届く程の声でジンがそう叫ぶと、ルカリオが拳に光を溜める。 そして、次の瞬間地面から光が吹き上がった。 地中から飛び出すピカチュウとルカリオ。 二体の体は、波動弾の暴発を間近で受け、傷ついていた。 「自分の体を傷つけてまで脱出するなんて…」 ルカリオの鬼気迫る表情に、足を下げるのび太。 のび太は確信した。   『このルカリオは……他のポケモンと格が違うのだと』   「フン、終わりだ。  ルカリオ、波動弾でネズミごとメガネを消し去れ」 ---- 「…僕は……僕はまだ負けられない!」 「ぐっ、この煙は!?」 大きな音が鳴り、ジンの視界を真っ白な煙が包み込んだ。 のび太が使ったのは煙玉。 雑貨屋に置いてあった、逃走を確実に成功させる為の道具だ。 「……チッ、メガネの分際で!」 バタンッ 「波動弾!」 音が聞こえた方に、波動弾が放たれる。 だが、そこに居たのは、住人が居ない間に空き巣に入ろうとしていたオッサンだった。 「フン、ゴミが……  精々必死に逃げてろ、メガネ!  逃げてばっかじゃ俺には勝てないがなぁ!フハハハハハハ!!!」   住人を消した商店街に、ジンの笑い声が鳴り響いた。 その笑い声を背に、悔しさを圧し殺して走るのび太。 「ぴか、ぴかぴぃ…」 ピカチュウも飼い主を心配をしている。 のび太は、そんなピカチュウに優しく笑いかけ、言った。 「ピカチュウ、大丈夫だよ。  昔の僕なら、プライドを守る為にあの場に残ってた。  でも、今は違う。  僕は自分の為に戦ってるんじゃないんだ」 のび太の足が止まる。 まずジンが居ない事を確認し、息を整えた。 そして周りを見つめ、冷静になった頭で作戦を構成していく。 その目に、もう恐れは無かった。 「……プライドなんか、もういらない。  どんなにカッコ悪くても、僕はしずかちゃんを、皆を助け出すんだ!」 ----
[[前へ>ミュウ その16]] 「どうしよう…全然作戦が思い浮かばない……  早くしないと見つかるし、何か、何か作戦を考えなくちゃ…」 のび太は焦っていた。 余りに広大なフィールドに姿の見えない敵。 これ程作戦を立てにくいバトルは初めてだからだ。 「サンダーにはホウオウが使えない……  ルカリオに苦戦してたら負けは決まる様なもんだ。  隙を突いて、ルカリオになるべくノーダメージで倒さな…」 のび太の言葉はそこで途切れた。 「うわぁっ!?」 突然轟音が鳴り響き、店の商品がいくつも落ちてきたのだ。 音を立てないようゆっくりと立ち上がり、窓から外を眺めるのび太。 その目に映った物は―― ――――――――――― 「フン、この店には居なかった様だな。  ルカリオ、面倒だ。 片っ端から建物に波動弾を放て!」 ルカリオの手に、光が集まる。 そして、その光は多数に分かれ、多くの建物に向かって放たれた。 「し、しまっ…」 その光の一片は、真っ直ぐのび太の居る方に向かってくる。 のび太は後ろに跳び、頭を伏せた。 「う、うわぁぁぁぁぁッ!!!」 音をたて崩れる雑貨屋。 その雑貨屋から響く叫び声を、ジンは聞き逃さなかった。   「フン、そこか」 ---- 「フフッ、のび太さーん。  そこに居るのは分かってるのよ。 出てきてぇー」   無惨に崩れさった店に、わざとらしい声で呼び掛けるジン。 もちろん、のび太から返事が返ってくる事はない。 「フフッ、のび太さんの意地悪。 私怒っちゃった。  今から、この店の残骸をぜーんぶ消しちゃうんだから。 ルカリオ」 ルカリオが待ってましたと言わんばかりに両手を上に掲げた。 「……消せ」 両手に集められた巨大な光の弾が、元は雑貨屋だった物に直撃する。 その瞬間、辺りは光に包まれ、光の中から小さなクレーターが現れた。 「……ばいばい、のび太さ…」 「ちょっと待ってよ」 「!?」 のび太の声が後ろから聞こえ、ジンは振り返った。 「何故お前が…」 「咄嗟に店にあった"穴抜けの紐"を使ったんだよ。  もう少しで死ぬ所だったじゃないか、全く!」 「……少し、甘いんじゃないか?」 のび太を見て、ジンはニヤリと笑う。 「余りに突然の事で、ポケモンを出すのを忘れてるぞ?  俺が一声かければ、ルカリオの拳に貫かれて、お前は死ぬ!」 ジンがそう言うと、ルカリオは戦闘体勢をとった。   「フン、「爪が甘かったな、ジン!」   「何!?」 のび太がジンの言葉を遮ると同時に、ルカリオの下から黄色い尻尾が飛び出た。 「こいつは!?」 「ピカチュウ、アイアンテールで地中に引きずり込め!」 ---- ピカチュウに捕まり、ルカリオの姿は一瞬で見えなくなった。   「ルカリオ、そんなネズミ引き剥がしちまえ!」 ルカリオはジタバタと足を下へ振り回そうとする。 だが、地中では上手く体を動かせない。 ルカリオはおとなしく地面に埋まっていくしかなかった。 「ルカリオのスピードも、地面の中なら関係無い。  このままピカチュウが止めを刺して終わりだ!」   自信満々にそう言い放つのび太。 だが、ジンは眉間にしわを寄せて叫んだ。 「俺達を舐めるな!  ルカリオ、真下に向かって波動弾だ!」 地中にも届く程の声でジンがそう叫ぶと、ルカリオが拳に光を溜める。 そして、次の瞬間地面から光が吹き上がった。 地中から飛び出すピカチュウとルカリオ。 二体の体は、波動弾の暴発を間近で受け、傷ついていた。 「自分の体を傷つけてまで脱出するなんて…」 ルカリオの鬼気迫る表情に、足を下げるのび太。 のび太は確信した。   『このルカリオは……他のポケモンと格が違うのだと』   「フン、終わりだ。  ルカリオ、波動弾でネズミごとメガネを消し去れ」 ---- 「…僕は……僕はまだ負けられない!」 「ぐっ、この煙は!?」 大きな音が鳴り、ジンの視界を真っ白な煙が包み込んだ。 のび太が使ったのは煙玉。 雑貨屋に置いてあった、逃走を確実に成功させる為の道具だ。 「……チッ、メガネの分際で!」 バタンッ 「波動弾!」 音が聞こえた方に、波動弾が放たれる。 だが、そこに居たのは、住人が居ない間に空き巣に入ろうとしていたオッサンだった。 「フン、ゴミが……  精々必死に逃げてろ、メガネ!  逃げてばっかじゃ俺には勝てないがなぁ!フハハハハハハ!!!」   住人を消した商店街に、ジンの笑い声が鳴り響いた。 その笑い声を背に、悔しさを圧し殺して走るのび太。 「ぴか、ぴかぴぃ…」 ピカチュウも飼い主を心配をしている。 のび太は、そんなピカチュウに優しく笑いかけ、言った。 「ピカチュウ、大丈夫だよ。  昔の僕なら、プライドを守る為にあの場に残ってた。  でも、今は違う。  僕は自分の為に戦ってるんじゃないんだ」 のび太の足が止まる。 まずジンが居ない事を確認し、息を整えた。 そして周りを見つめ、冷静になった頭で作戦を構成していく。 その目に、もう恐れは無かった。 「……プライドなんか、もういらない。  どんなにカッコ悪くても、僕はしずかちゃんを、皆を助け出すんだ!」 ---- 「出木杉、全てを憎め。  お前を苦しめたこの世界に、復讐するんだ。  大丈夫、わしの言うことさえ聞けば、全てお前の思い通りに行く……  わしに……従うんだ」     闇の中で潜む老人は、笑みを浮かべながらそう言った。   僕の体は、その言葉を拒まない。 むしろ、自らが望む様に、僕はその老人の手を取った。     「はい、従います。 だから教えて下さい。  この世界に、僕と同じ苦しみを与える方法を……」 ---- 「フン、あのメガネ……どこ行きやがった」 ジンは、のび太を見付けられずに居た。 煙玉で見失い、この商店街、 いや、この広い町のどこかに逃げたのび太を、1人で探すのは流石に困難なのだ。 と言っても、闇雲に町を破壊すれば、相手に自分の居場所を教えることになる。 さっきのように、のび太が商店街に入るのを見ていたのなら話は別だが、 今回の様な場合では、地道に町を見回っていくのが、最善の策と言えるのだ。 「クソッ、メガネの分際で…  俺にこんな無駄な歩行をさせるとは、絶対に許さんぞ!」 商店街の出口が見えてきた。 どうやらのび太は商店街から抜け出したようだ。 「フン、ちょこまかと…」 だが、そんなジンの予想を、簡単に裏切られる事になる。 プシュッ! 「つッ!」 ジンの後頭部に、何かが当たった。 プシュッ! 「舐めるな!」 今度は一瞬でそれに反応し、その何かを掴む。 「……これは」 それは小さなエアガン用の弾。 それが誰が発射した物かは、もうハッキリしている。   「メぇガネェェェェェェェェェェッ!!!!」   叫び声と共に、1人の少女と1匹は走り出した。 ---- 「こんなショボい弾で、俺を倒せると思ったかァァァッ!」 女とは思えないスピードで、のび太との距離を縮めるジン(しずか)。 どら焼屋の屋根に座るのび太の姿が、だんだんハッキリしていく。 「フハハ、100000000倍返しだ!  お前の後頭部をグチョグチョにしてやるッ!!!」 だが、またもジンの予想を裏切る展開が待っていた。 「くっ、何だこれは!?」 小さな爆発音が数発鳴り、ジンの視界を白い煙が包んでいく。 「クソが! またさっきの煙幕か!  逃げてばかりじゃ俺は倒せないぞ!」 煙を掻き分けながら、ジンはそう叫んだ。 すると、その言葉に反応する様に、隣から声が聴こえた。 「おっはー」 「ルカリオ、波動弾だ!」 すかさずルカリオの攻撃がその音の主を襲う。 だが、そこに居たのは……   「ただの……テレビ…だと? クソッたれ!!!」   それは、のび太がリモコンで操作した電気屋のテレビの音だった。 そして、更なる混乱がジンとルカリオを襲う。   「ピカチュウ、かみなりだ!」   何処からともなく聴こえたのび太の声で、上空から雷光が降り注いだ。 ---- 「ル、ルカリオ!」   雷の直撃を受け、膝を着くルカリオ。 だが、ジンは見逃さなかった。 雷を撃たれる直前の一瞬の輝きを。 ポケモンが雷を撃つ前に、必ず起こるその光を。 「そこだ、ルカリオ!」 ジンの指を見た瞬間、全てを理解するルカリオ。 そして、膝を着いた状態のまま腕を上げた。     「 波 動 弾 ! 」 波動弾は、方向さえ合えば確実に相手を捉えてくれる。 ジンは勝利の笑みを浮かべながら、その閃光の様子を眺めていた。   「戻れ、ピカチュウ」 「何!?」   だが、今回はのび太の方が一枚上手だった。 全ての攻撃を確実に避ける唯一の方法。 それは、ポケモンをモンスターボールに戻す事だ。 普通のバトルでは次のポケモンがダメージを負ってしまうが、 今回はステージ上ではなく、広い町中。 デメリットなど何も無い。 のび太はその事を充分に理解していたのだ。 「ルカリオ、立て!  今のでメガネの場所が分かった! 追い掛けるぞ!」 その言葉で、フラフラと立ち上がるルカリオ。 すぐに二人は、ピカチュウが戻される時に見えた光の元に走った。 そして、煙の空間を抜ける。   「メガネ、ガキの遊びもここまでだッ!」 ---- 「バカな、俺はすぐに走ったはずだ……  あの男が、こんなに早く見えなくなるなんて…ある訳が……」   ジンは、だだっ広い空間の真ん中で、そう呟いた。   誰も居ない、真っ直ぐ続く商店街の道の真ん中で。   「…殺してやる……」 ジンの、本能とも言うべき何かが、目覚めていく。 「…あのメガネを……八つ裂きにしてやる……」 久しぶりに味わった敗北感が、ジンの中で野生を蘇らせた。 ルカリオは、その静かなる殺意に体の震えを抑えられない。 「ルカリオ、怯えなくて良いぞ。  俺は少し、今まで感情に流され過ぎていた様だな」 ルカリオの頭を撫でながら、そう話すジン。 その目は、のび太に対する静かで激しい憎悪に満たされていた。   「行くぞ、ルカリオ。  今まで受けた屈辱を、全てアイツに返してやるんだ」   コツ…コツ……コツ………コツ…………コツ……………コ…   ジン達の足音が遠退いていく。 地下に隠れていたのび太は、ゆっくりとため息を吐いた。   「ふぅ、何とかやり過ごしたぞ…」 ---- のび太がジンに見つからなかった理由。   それは、のび太がマンホールの中に身を隠していたからだ。 だが、それだけじゃない。   あの時、のび太はジンから逃げるのではなく、ジンに近づいたのだ。 視界にマンホールの蓋が見えれば、必ずジンは不審に思うだろう。 だが、マンホールがジンより後方に有れば、話は別だ。   つまりあの時、マンホールは煙の中にあったのだ。 もちろん、あらかじめ蓋が開いた状態で。 のび太が屋根の上に居たのも、蓋が開いてるのがバレない為。 あれは、ジンの視線を上に集中させるのが最大の目的だったのだ。     これだけの作戦を、のび太が思い付くのは少し不思議に思う人が居るだろう。 だが、これは別に不思議な事でも有り得ない事でも無い。 のび太は、人を困らせる力と、道具を最大限に活かす力に昔から長けていた。 その2つの力が、この戦いにおいて大きな戦力になっている。 のび太はこの時、 自分でも気付かない内に、天才戦略家としての才能に目覚めようとしていた。 ---- 「これでルカリオの体力は僅か……  でもさっきの様子だと、もうジンに半端な作戦が通用するとは思えない。  ここは、どうするべきかな?」 のび太の手持ちにあるのは、もう穴抜けの紐2本に煙玉1つ。 どこかでアイテムを補充するのも良いかも知れない。 だが、それは同時にジンに不意討ちされる可能性も高くなる。 のび太は気持ちを落ち着かせ、ゆっくりと思考を回転させてみた。   『―ルカリオ―アイテム―下水道―次のポケモン―町中―』   のび太の頭の中で、勝利の設計図が高速で作成されていく。 そして、その設計図はのび太の考えを1つの答えへと導いた。   『何でだろ? 僕は今、とても冴えてる。  ジンの行動パターンも、それを打ち破る策も手に取る様に分かる。  行けるぞ…これならあのジンに必ず勝てる!』     「ハッサム、出てきて」   そののび太の声を合図に、ハッサムが姿を現した。 ハッサムは、以前のジンとの戦いでルカリオに一蹴されている。 ハッサムからしたら、ルカリオは因縁の、どうしても戦いたい相手だ。 「ルカリオには、君で止めを刺したい。 出来るかい?」   ハッサムは短くうなづいた。 ---- 「フン、メガネめ……何のつもりだ?」   ――数分前 大きな轟音が鳴り響いた。 そしてジンが様子を見に来ると、商店街の道の脇から大量の水が吹き出していた。 「水道管を破裂させたか。  すると、狙いはピカチュウの電撃だな。  だったら……ルカリオ、俺の体を持て 」 ルカリオがジンの体を持ち、足に力を入れた。   一方、のび太は屋根の上で待っていた。 ジンが、ここに上って来るのを…… 「来い…ジン」 下で音がした。 のび太の前方に、ジンとルカリオが姿を現す。 ジンは少し驚いたが、すぐに状況を理解して言った。 「待ち伏せ……いや、待っていた、と言うのが正しいか。  メガネの分際でサシの戦いを望むとは、舐めてくれるじゃないか」 ジンとのび太の距離は、およそ10m。 店を1つ隔てて、二人は直線上で睨み合っている。 「フン、どうせまた狡い手で逃げながらルカリオの体力を削る気だろ?  悪いが、もう俺に策は通じん。 徹底的に……潰すぞ」 ジンが、強烈な殺気を出しながらそう言う。 のび太はその殺気に震えた。 だが、足は引かない。 逆に一歩踏み出す。 そして言った。   「来い!!!ジン!!!」   ---- 「ルカリオ、神速だ!」   のび太がそう叫んだ瞬間、ジンはそう叫び返した。 のび太の脳裏に、以前の記憶がよぎる。 以前の戦い、ルカリオの攻撃で腹に瀕死の怪我を負った時の事を。 更に思い出す。 数日前、洞窟内でした修行の事を。   『裁きの穴で学んだ事……それは、勇気』   数多くのポケモンに命を狙われた。 そして、多くの傷を負い、多くの事を学んだ。  ビュゥッ! ルカリオが目前に迫る。 風が切れる音がした。 『怖くない…避けられる』 のび太は足を後ろへ伸ばし、腹の位置を数cmズラす。 すると、ルカリオの右ストレートはズラす前の腹の位置を真っ直ぐ貫いた。 「な、なん…」 瞬間の中で、人が出来る行動なんてほんの僅かだ。 だが、そのほんの僅かな行動が、人の生死を分ける事になる。 「ぐぁッ!」 のび太の顔が歪んだ。 さっきの攻撃、当たらなかったのではなく、実はカスっている。 のび太は、避ける為に体を動かしたのではなく、勝つ為に体を動かしたのだ。 本来ルカリオの攻撃は回避不可だが、怪我をする覚悟さえあれば話は別。 急所を外すだけなら、一瞬の、ほんの僅かな行動で充分なのだ。 「…だと!?」 そして、ルカリオの居る場所。 つまり、のび太がさっき立っていた場所の下から、 屋根を突き破ってハッサムが姿を現した。 ---- のび太は、ハッサムにこう言っていた。   「僕が、ルカリオの注意を一秒牽く。  だからその一秒で……君にルカリオを倒して貰いたい」と。   ハッサムは、ずっと屋根の下から耳を澄ましていた。 そして、風を切る音を聞いた。 足に力を込め、一気に飛び上がる。   「君は、僕を信じて真上を全力で貫けば良いんだ」   あれだけの信頼を自分にくれた主人の為、ハッサムは全身の力をその右手に込めた。 思い切り……振り抜く。 コンクリートの砕ける音が響き、目の前にルカリオの姿が見えた。 拳がルカリオに当たる。 ルカリオの体は、その一撃で勢い良く吹き飛んだ。 そしてハッサムは静かに着地し、横で倒れる主人の方を見る。 「……ハッサム、良いパンチだったよ」 主人の破けた服の下から、紫色の皮膚が見えた。 ……酷い怪我だ。 きっと、かなりの激痛がしているだろう。 「ハッサム、僕の事は良い。 それよりも…」 ルカリオはフラフラと立ち上がった。 もう目は虚ろ……明らかに限界を超えている。 だがルカリオは、何かを訴える様に大きな唸り声をあげた。 「ルカリオ、もう良い。 後は……俺達がやる。  お前は良くやった」 ルカリオは動かない。 立ったまま気絶したのだ。 ジンは、ゆっくりとそのルカリオをボールへ戻した。 ---- 「また、お前の策にやられちまったようだな」 下を向いたまま、ジンが短く笑う。 その表情はとても穏やかだが、隠しきれない殺意を漏らしていた。 「フン、さっきのお前の勇気と覚悟、恐れいったよ。  お前達の事を舐めていたのは俺達だったのかもしれないな」 ジンは空にボールを投げ上げた。 そのボールから、雷電から奪い取ったサンダーが現れる。 「だけど次のポケモンには、覚悟も勇気も通じないぞ。  さぁ、どうする? フハハハ…」 ジンの言葉に対し、のび太はこう言い返した。   「もちろん…………逃 げ る さ ! 」   また煙玉を下へ投げつけるのび太。 「サンダー、高速移動」 だが、その瞬間目の前にサンダーが現れた。 「なっ!?」 「フン、二度も同じ手を食らえばサルでも学習する」 のび太の額に冷や汗が伝う。 頭の中で『ハッサム、メタルクロー』と言う指示を出すが、声にならない。   「サンダー、10万ボルト」   のび太の視界を、真っ白な光が包み込んだ。 ---- 「死ね、メガネェー!」 ジンはのび太の行動を予想し、サンダーに指示を出していた。 不覚。それは、相手の力量を量り間違えた事による失敗。 のび太の思考回路が動き出す頃には、サンダーの攻撃準備は完了していた。 『ダメだ!殺られる!』 隣のハッサムに指示を出す前に、自分は黒コゲになる。 もう、間に合わない。 そう、思った時だった。 「ハ、ハッサム!?」 電流が弾け飛び、ハッサムの体を焦がしていく。 ハッサムは自らのび太の前に飛び出し、のび太の盾となった。 のび太の指示を聞く前に、自分の意思でのび太を助けに入ったのだ。 「……はっ、ピカチュウ、出てこい!」 倒れ込むハッサムを一瞬眺めていたのび太だったが、 直ぐ様に我に返り、ピカチュウをサンダーの目前へ呼び出した。 「サ、サン…」 「ヴォルテッカー!」 戦いの中で、想定外の事が起きるのは極めて自然な事だ。 大切なのは、いかにそれに適当な対応が出来るか。 今回は、一瞬その対応が早かったのび太に軍配が上がった。 「ピカチュウ、走るぞ!」 攻撃を加えると、のび太は直ぐ様後ろへと走り出した。 屋根の上ではサンダーの格好の的になる。 そして、のび太にはまだ策が残っているのだ。 サンダーが態勢を整えると、直ぐにフラッシュで目を眩まし、 のび太は商店街からの脱出に成功した。 ---- 「ピカチュウ、大丈夫か?」 商店街から500m程離れた地点。 そこでピカチュウは、力無く地面へと倒れ込んだ。 無理もない。 ピカチュウは一度ルカリオの波動弾の暴発を、間近で受けている。 その上、この緊迫した戦いでの度重なる呼び出し、そしてヴォルテッカー。 逆に、今意識を保っているのが不思議なくらいだ。 『ピカチュウの体力は僅か、ハッサムは約半分……だけど麻痺状態』 ハッサムを温存しておいたおかげで、体力が充分に残ってるのが唯一の救いだ。 ジンのまだ見ぬ切り札の為にも、ホウオウは無傷のままにしておきたい。 そして、あの作戦の為にも……   「ん?ピカチュウ、どうした?」   ふと横を見ると、ピカチュウが顔を真っ青にして震えていた。 こんな顔をするのは珍しい。 のび太はピカチュウの視線の先に、恐る恐る顔を向けた。 「…な、なんだ? あれ?」 さっきまで自分達が居た場所の上空に、眩しく光る何かが浮かんでいる。 のび太は、本能で察知した。 『ここに居たら死ぬ』と。 体力が残ってないピカチュウを抱かえ、のび太は走り出した。 「はぁ! はぁ!」 どんどん膨張していく、その光。   どこまで大きくなるのかとのび太が思った瞬間、その光は……一筋の光線となり、のび太に襲い掛かった。 ---- 「フン、よくやった、サンダー」 ジンは、上空のサンダーを見上げながらそう言った。 雷電が自ら改造を施した、この特別なサンダーの特性はリミッター解除。 ダイゴ、シロナペアとの戦いで見せた技がそれである。 このサンダーに、能力向上効果のある技のリミッターは無い。 つまり、このサンダーが充電(次の技の威力が倍になる)を使えば、 1度目で2倍、2度目で4倍、3度目で8倍と、誰にも止められない技となるのだ。 実際、今の技で町の一部分が跡形も無く消し飛んでいる。 このサンダーは、策も罠も必要としない、最強で純粋なパワータイプと言えるのだ。 「8倍でこれくらいか……  フン…なら次は16倍で行くぞ」 ジンの指示に、黙って従うサンダー。 その目は、どこか悲しく、とても冷たい目をしていた。   「…ふぅー、間一髪!」 のび太は壁に寄りかかり、安堵のため息を吐いた。 すぐ近くには、残骸と化したスネ夫の家が転がっている。 のび太達は、ギリギリの所であの電撃を避ける事が出来たのだ。 「そう言えばスネ夫が言ってたな。  あのサンダー、まるで能力の限界が無いみたいだ、って」 のび太は、あの作戦を実行に移す為の作戦を考えてみた。 あのサンダーの技を食らわずに、あの場所まで導く方法を。   「一か八か……これに賭けるしか無いかもね」 のび太は高まる心音を抑えつけ、ジンの所へと向かった。 ---- 「…よし、次は8倍だ」 ジンの指示で、ゆっくりと光が大きくなっていく。 その眩しさは、もう太陽の比では無い。 「フン、次はどこを狙うかな…」 次々と家を指で差していき、屋根がピンク色の家で指を止めた。 「あれだ……サンダー、16倍にしろ!」 光が、先程よりも更に大きくなっていく。 そして、遂にその光は全ての準備を完了した。 「クックック、メガネ……消し飛びなぁー!!!」 ジンがそう叫んだ、その時だった。 「ピカチュウ、今だ!」 「!?」 その言葉と同時に、ピカチュウがジンの前に現れる。 そして、瞬きをする間もなく、ピカチュウはジンの周りを回り始めた。 「な、何だ!? 何のつもりだ!?」 「お前を倒しに来たんだよ」 ジンの前に立つのび太。 それだけ言うと、のび太は片手を思い切り後ろへと引いた。 「ぐ、ぐぁッ!?」 突然の胸の圧迫感に、驚くジン。 のび太はニヤリと笑い、手に持っている物を見せた。 「そ、それは…」 「ピカチュウに"あなぬけの紐"をくわえさせていたのさ。  使用法は違うけど、これでお前はもう動けないぞ! ジン!」 ---- 「フハハ!正気か?  ここに来るってことはサンダーの的になるってことだぞ?  お前は、わざわざここに死にに来たのかぁ?」 そうあざけ笑うジン。 だが、のび太には考えがあった。   「へんだ、的にはならないよ。  だって今サンダーが攻撃をすれば、お前も巻き込まれて死ぬからね」 そう、サンダーの弱点……それはその余りあるパワー。 威力を上げることは出来ても、下げることは出来ない。 今、もしのび太を狙って攻撃すれば、もちろん近くに居るジンにも当たる。 つまり、サンダーの攻撃の恐怖から確実に逃れる方法は、 離れるのではなく、逆に近付くことだったのだ。   「…フン、次はどうするつもりだ?  俺を殺して、試合を終わらせるか?  それとも…このままずっと黙り状態を続けるつもりか?」   圧倒的不利な状況だが、ジンの目にはまだ余裕が溢れている。 のび太には、それが不気味でならなかった。 だが、それに臆せず、のび太は会話を続ける。 「お前を殺したりはしない。  お前の体が…しずかちゃんの物だって可能性も捨てきれないからね。  だから、僕はお前との戦いに、ポケモンでケリをつける!」 ---- 『メガネめ、俺をどこに連れていくつもりだ?』 のび太はジンを拘束した状態で、ある場所へと向かっていた。 それも砂嵐で視界を無くしながらという、最悪の状態で。 『……フン、バカめ。  お前が油断した瞬間、一瞬で縄を切って逃げ出してやる。  せいぜい無意味な作戦を実行してるんだな』 ジンは、横目で後ろを覗き見た。 ハッサムが体を重そうにすぐ後ろに付いている。 サンダーは、頭上でこちらの様子を伺ってるようだ。 『フハハ、これなら…上手くいくぞ!』 勝機を感じるジン。 だが、そうしてジンが周りを見渡していると、足場に変化に気が付いた。 『……この足の感触、町を出たのか?』 砂場に似た感触を、足に感じる。 だが、のび太は何も言わず、ただ歩いていくだけ。 『ちっ…少し早いが、実行に移すか』 ジンは足場の変化に焦り、予定よりも早く行動を始めた。 『あのカニもどきは、明らかに麻痺状態だ。  必ず、必ず一瞬……体が動かせない瞬間がある』 ジンが横目でじっくりと凝視する。 しばらく見つめていると、予想通りその瞬間は訪れた。 『フハハハハ! 見たぞ! 今の動作ぁ!』 ハッサムが一瞬体を硬直させた瞬間、 素早く縄を切り、回し蹴りをハッサムの腹に決めた。 体の中で唯一柔らかい部分を狙われたハッサムは、たまらずしゃがみこむ。 更に、ジンはその隙にのび太から10m程の距離を空けた。 「フハハハハ! 爪が甘かったなぁ!  サンダー、あのメガネ猿に雷だッ!!!」 待ってましたとばかりに唸り声を上げるサンダー。 そして、目映い閃光がのび太へと放たれた。 ---- 大量の砂煙が辺りを満たす。 その中心で、ジンは満足そうな笑みを浮かべながら立っていた。 「フハハハハ、メガネぇ残念だったなぁ!  結局、お前は女一人守ることが出来ない…クズなんだよぉ!」 砂嵐の中を笑い声が響き渡り、その静けさを更に引き立てる。 だが、その沈黙は突然破られた。 「ハッサム!」 「!?」 砂の中からハッサムが現れ、空中へと飛び上がった。 『どういうことだ!?  砂を被ったくらいじゃあの雷は防げないはずだ!』 疑問はつきない。 だが考えてる暇は無い。 「サンダー、10万ボルトで撃ち落とせ!」 その指示に素早く従うサンダー。 「ハッサム、戻れ!」 だが、その瞬間ハッサムはボールの中に戻されてしまった。 「ジン、投げたボールからポケモンが出てくる条件を、知ってる?」 突然、のび太はジンにそんな質問をした。 「スイッチを押してから何か衝撃を加えると、ポケモンは現れるんだ」 そう言いながら、のび太は懐からエアガンを取り出す。 「さっきハッサムには、ボタンを押したままの状態のボールを持たせていた。  サンダーの近くまで来たら、出来るだけ高く投げ上げろって指示をしてからね」 ジンが驚いて上を見ると、サンダーの頭上に、赤い何かが見えた。 それにのび太は狙いを定める。   「つまりオモチャの鉄砲の衝撃でも、ポケモンはボールから現れるんだよ!」 ---- パンッ、という炸裂音がした。 風圧、距離、物質の落下速度までも計算されたその弾が、 真っ直ぐに赤い球へと飛んでいく。   当たった。   そして、ピカチュウが現れる。 サンダーのすぐ頭上。 絶好な位地にピカチュウは現れた。 何も言わなくても、分かる。 身体中の電力を一点に集中し、サンダーの左翼へと突っ込んだ。 別に倒し切らなくても良い。 のび太がこの場所を選んだ理由は、良く分かる。 ピカチュウは、サンダーを地面に落とすことに全てを賭けた。 「サンダー!?」 片翼を失ったサンダーは、力無く地面へと落ちていく。 だが、それではまだ勝てない。 その事を知っているのび太は、勝利を決定付ける言葉を言った。 「カバルドン達、地震を頼む」 そう、この場所は、以前のび太が修行に使っていた裏山の砂漠地帯。 ここで沢山の修行をしたのび太は、 カバルドン達にその実力を気に入られ、仲間に認められていたのだ。 さっきの雷も、カバルドン達が盾になって防いでくれていた。 地面タイプのカバルドン達が一緒に戦ってくれれば勝てる。 それを見越して、のび太はこの場所で戦おうと決めたのだ。 地面へと吸い込まれていくサンダー。 それをカバルドン達が起こした地震が待ち受ける。   「ジン、悪いけど…僕には一緒に戦ってくれる、仲間が居るんだよ」   こうして、サンダーは遂に倒れた。 ---- 「皆、集まってくれたようだな」 暗闇の中に、無数の人影が集まる。 ジンとのび太の戦いの最中、町の地下では出木杉の計画が進行していた。 「諸君の頑張りのおかげでようやく見付かったんだよ。 この計画に絶対に必要な、あのポケモンを。  今から捕まえにいく。 皆、僕の後に付いて来い」   ここには光が届かず、酸素も少ない。 流水によって取り付けられた機械により、人の出入りが可能になっている。 その暗黒空間を、出木杉は躊躇もせず進んでいった。 「ここだ…」 出木杉が立ち止まり、手を前に出す。 その瞬間、空間に歪みができ、周りに居た部下達を驚かせた。 「ふふっ、驚かなくて良い。  ここが、ポケモン世界と現実世界の間……通称"暗黒世界"なんだ。  この先に、僕達がまだ見たことが無いプログラムが隠されてるんだよ」 その場の皆が唾を飲む。 未知の世界への不安と、遂に来た計画実行への期待。 その2つが混じった、例えようもない空気が周りを満たしている。 その空気を切り裂くように、出木杉が口を開けた。 「それでは、この計画の最後の役割を決める!  僕の周囲を守る幹部は、流水、清姫君、業火……そして雷電!  他の者は反乱分子の鎮圧、及びタイムパトロールへの警戒だ!  分かったなら返事をしろ!」 暗闇の中を幹部達の叫びが響く。 出木杉は、その様子を見て笑みを浮かべた。 『野比君、せいぜい頑張って足掻くが良いさ。  僕の計画は絶対に止められない。 そう、絶対にだ……』   ついでにその頃、地上のゴクは最終決戦に着る衣装に悩んでいた。 ---- 「戻れ、ピカチュウ」 瀕死になったピカチュウを、のび太はボールへと戻した。 「遂に、最後だね。 ジン」 「…………」 「僕はお前に勝って、必ずしずかちゃんを助けだす。  早く……最後のポケモンを出せ!」 「最後のポケモン、か…フハ、フハハハハハ!」 突然笑い出すジン。 それにのび太は驚き、怒りの言葉を発した。 「な、何がおかしいんだ!」 「何が? お前が言ったことが笑えるんだよ」 ジンの言葉の真意が分からない。 のび太は更に声を強め、叫んだ。 「どこがだよ! 僕は最後のポケモンを出せって…言っただけ…」 この時、のび太は2つの疑問の存在に気付いた。 目の前に居る、しずかの姿をした男。 もし、この男がしずかを操っているなら、あのブレスレットはどこにある? どうして、あのルカリオはあんなにも強かった? その2つの疑問が意味している答えは、1つ。 「ジン、お前はまさか……ウワッ!」 突風がのび太を襲った。 砂嵐は一瞬勢いを増し、そして晴れていく。 辺りは、砂煙に包まれてしまった。 「メガネ……お前の実力は認めてやるよ」 砂煙がゆっくりと消えていく。 正体を現したジンが、のび太の目前に現れた。 「だが、これで終わりだ」 今まで感じていた、ジンに対する恐怖感。 その理由を、ようやくのび太は理解した。   「ミュウ…ツー…」 何故なら自分が戦っていた相手は、人間ではなかったのだから。 [[次へ>ミュウ その18]] ----

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