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ギンガ その13」(2007/12/30 (日) 01:11:18) の最新版変更点

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[[前へ>ギンガ その12]] 周囲には数軒の民家、それだけしかない小さな町だった。 その町の名前は『フタバタウン』俺は今この町に居た。 この町を訪れた理由、それは近辺にある『シンジ湖』に用があるからだ。 そこにはエムリット、俺たちを助けてくれたポケモンが居る。 もう三日も前の話か。だが俺はあの時の出来事は永遠に忘れることは無いだろう。 俺たち目掛けて落下してくる巨大な岩石―――のび太達が悲鳴を上げる。 あの時はもう『死』を覚悟した。 岩石が命中したその時、激しい閃光が俺を包む――― 気がついたときは、カンナギシティに立ち尽くしていた。 周囲には、のび太、ジャイアン、スネオ。 三人も目の前で起こった現象に呆然としているようだ。 一体……何が起こったんだ? とりあえず助かった。思わず気が抜けて座り込んでしまった。 するとエムリットが、俺の首周りを浮遊していた。 その顔には明らかに疲労の色が見える。 この時俺は悟った。エムリットが俺達を助けてくれたことを――― ---- しばらくしてシロナがやってきた。それと同時にもうエムリットが居ないことに気づく。 最初はかなり落ち込んだ顔をしていたが、俺達の姿を見た時 先ほどとは打って変わって、明るい表情へと変化した。 俺たちが生存していたのが嬉しかったのだろう。 その後、夜にシロナの家で食事を済ませた。 静香もその時には元に戻っており、俺の姿を見た時は驚いていたが 事情を説明すると、俺のことを受け入れてくれた。 その時に出木杉は来ないのが不思議になって、のび太に聞いたら 『出木杉とは連絡が取れなかった』と言っていた。 キッサキシティでは俺を襲ってきたが、たまたまその場に居たのだろうか……? 皆がシロナの家に宿泊して行くと言ったので、俺も宿泊していった。 いつも一人で寝ていたから、その時の夜は何か不思議な気持ちだった。 翌朝、俺は一番早く起床した。理由は誰にも気づかれずこの家を立ち去るためだ。 昨日まで敵だった奴が、一緒に食事をして、寝床につく。 なにかそれが恥ずかしかった。 足音を立てず玄関まで行く。その時背後にシロナが現れた。 何か言われると思ったが、ニコッと微笑みこう告げた。 『困ったことがあったら、私のところに来なさい』 と、この時もまた不思議な気持ちがした。 そして、俺はシロナの家の扉を開けた。 ---- その後、数日間色々な所を歩き回っていた。 四天王に挑戦する権利は得ていたが、このまま勝利できるほど甘い場所ではない。 そう感じた俺はポケモン達の、そして自分自身の修行を始めた。 ポケモンリーグ―――それも突破せねばならない関門だが それ以上に突破……いや崩壊させねばならない組織があった。 そう……『ギンガ団』 自分の行いに対する償い、自分に過去にけじめをつけるため……何が俺を駆り立てるかは分からない。 だがやらなければならない、そんな気がした。 ―――だが、やる前にもう一つやることはあった。 エムリットに礼を言いに行く。 気がついたときはエムリットは居なくなっていて、、礼の一つすら言えなかった。 所謂命の恩人に、何も言えないのは俺のポリシーに反する。 そんな思いで、今日はここに訪れたのだ。 ---- ―――シンジ湖 目前には透き通った湖……それだけではなく洞窟の様な物が中心に浮かんでいる。 前のリッシ湖と同じ考えで行くと、あそこにエムリットは居る。 そう確信した俺は、ラグラージに乗って空洞まで辿り着いた。 空洞の中に入る。中は静寂に包まれていた。 一歩一歩と進んでいく。   『抵抗するな!』 突然静寂は切裂かれる。それと同時に俺は走った。 エムリットに危機が迫っている。そう直感した俺はモンスターボールを投げた。 「クロバット、行け!」 ボールからクロバットを投げる。クロバットの素早さなら間に合う。 予想通り、誰かの短い悲鳴が俺の耳に飛び込んできた。 『なにをしているんだ!?』 大声を上げ、倒れている人間を睨みつける。 この時俺は目を疑った。 倒れていた人物それは―――出木杉英才だった。 ---- 「お前………」 出木杉は目を逸らす。その時エムリットは出木杉から逃げ出し、空洞の中から脱出した。 「あ、待て!」 出木杉は手を伸ばすがもう遅い、既にこの空洞内にエムリットは居なかった。 「……なぜエムリットを捕らえようとしたか説明してもらおうか?」 俺は出木杉の退路を封じる位置に立つ。 「そうは行かないよ……僕にはやらなきゃいけないことがあるからね!」 モンスターボールを構える出木杉、そういうことか。 俺はクロバットを一歩前進させる。 「行け、ムクホーク!」 モンスターボールが放物線描いて飛んでいく。 それは俺とクロバットの居る僅かな隙間で停止し、光りだす。 中からはムクホークが姿を現した。 「うわっ!」 思わず尻餅をつく。ムクホークに威嚇されてしまったのだ。 すると出木杉はムクホークに飛び乗った。 「じゃあね、またいつか会おう」 そのままムクホークは加速し、飛び去っていった。 その光景を呆然と見続ける俺。 あいつ上手い……ボールの状態だと小さいが、出てくればそれなりの大きさになる。 それでスペースを圧迫されたうえ、威嚇を受けて俺は尻餅をついてしまったのだ。 ……どうやら、もう戦いは始まっていたようだな。 ナナシ ルカリオLv57、クロバットLv54、ロトムLv53、 ラグラージLv55、グレイシアLv53 ---- 翌日、俺はカンナギシティを訪れた。 シロナの家を訪問すると、玄関に何足か小さな靴が乱雑に放置されていた。 まさかとは思ったが、シロナに案内された部屋にはやはりのび太達が居た。 しかし、どことなく空気が重い。 「暇だから僕らに会いに来た……ってわけじゃないみたいだね」 どうやら……そっちでも何かあったみたいだな。 少し話し合い、俺たちはお互いに知っている情報を話し、整理することにした。 俺は、出木杉がエムリットを誘拐しようとしていたことを皆に話した。 皆も驚いた表情をしていた。まるで信じられないと。 俺自身も未だに信じられないところがある。あの真面目な奴が…… 「次は僕らが見た出来事を話してもいい?」 「あぁ…聞かせてくれ」 のび太の話……それも信じられない出来事だった。 シンオウの大都市の大量のギンガ団員が現れて、トレーナーを襲撃していたというものだった。 その場に居合わせたのび太達は、周囲のトレーナーと協力し何とか追い払うことができたようだ。 だがいつまた襲撃されるか分からない。その事実に皆黙ってしまった。 ---- 「どうやらギンガ団が本格的に活動を始めたようね、ナナシ君はなんか聞いてない?」 シロナがそう尋ねる。 「何も聞いてないな。だが町を襲うほどの武力行使に出たのは初めてだな……  おそらくギンガ団は、ここ数日間で作戦を大幅に変更したのだと思う」 力や権力を利用するのを父さんは嫌悪しており、そんなことをすること今までに無かった。 だが今は違う……向こうも情けやプライドを捨て、野望を果たすために本気になったのだろう。 「分かったわ、その様子だと再び襲撃してくる可能性は高いわね  すぐに対応できるように皆で協力しましょう? いい?」 シロナの言うことは間違っていない。数には数で対抗する。俺も賛成だ。 俺が『分かった』と返事をしようとしたその時――― 『僕は嫌だよ!』 皆が声の主に反応して振り向く。声を張り上げたのはスネオだ。 スネオは俺の方をキッと睨み指差す。 『僕は一回こいつに殺されかけた!  それに裏切ったふりをして、スパイをしている可能性もある  僕はこいつを信用することはできないんだ!』 自分が悪い、そう分かっていても怒りが込上げてくる事はある。 俺が返しの言葉を言おうとしたとき、ジャイアンの大声が家中に響いた。 「もともとお前が、卑怯な手を使ってナナシのバッジを奪ったのが悪ぃじゃねーか!  いちいち細かいこと言うなよ、お互い様だろ?」 「くそっ……なんで僕ばかりが……こいつが仲間に入るなら僕は入らないよ、じゃあね」 スネオはそう言うと走り去っていった。 ---- 「なんだよあいつ……」 「いいんだ…結局俺が悪いのは事実だからさ」 不思議と今の気持ちは落ち着いていた。 「……今カンナギの周囲はテンガン山が崩壊したことによって、ポケモン達の気が立ってる  もしそんなところに入ったらまずいわね……ひょっとしたら……」 一気に気まずくなる。苦手なんだよな……こういう空気。 「仕方ないわね、探しに行きましょう。私はテンガン山の方を探してくるから  のび太君と静香ちゃんはこの辺を、ナナシ君とタケシ君は210番道路の方をお願い」 俺たちは返事をして、シロナの家を出た。 ―――210番道路 霧が立ち込めている。過去にここで出木杉と遭遇したっけな。 ひょっとしたら出木杉は、あの時点で俺の正体を知っていたかもしれないな…… 「なにぼぉっとしてるんだ! 周りにスネオが居ないか探せ!」 「あ…悪い……」 ジャイアンの一喝で俺の思考が途切れ、周りを見渡すのに集中し始めた。 ……が霧のせいで全く見えない。霧払いが使えるポケモンは持ってないしな。 「ナナシ、やっぱりあいつの言葉気にしてるのか?」 気にしてない……そう言えば嘘になる。 未だに頭の中にその言葉は響いている。そうすることでまた一段と暗い気持ちになる。 「大丈夫さ、俺がなんとかしてみせる」 ジャイアンのこの言葉、俺にとっては非常に頼もしいものだった。だが――― 『うわぁあぁぁああぁぁああ!!』 「この声はスネオの……お、おい待てよ!」 他人に頼ってはいけない、自分で自分の罪は償う! ---- 霧のせいで視界が悪く、スネオの詳しい位置までは分からないが 断続的に漏れる悲鳴と、僅かな足音でなんとなく位置は掴める。 「わ、悪かったよ……ちょっとイライラしてたんだ、もうしない、だから許して!」 スネオの姿が見えてくる。あと一歩で崖に転落という状況だ。 そして、スネオを襲っているのはコモルー。頭にこぶが出来ている。 大方スネオが石で蹴って、それがコモルーに命中したのだろう。 『ママーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』 『クロバット、催眠術だ!』 クロバットを出し、催眠術でコモルーを眠らせる。 これで一段落d――― 『うわぁあ!』 スネオが手を乗せていた足場がを突然崩れ、スネオは崖に転落した。 「スネオぉ!」 俺はスネオの方に手を伸ばす。すると肩が外れるくらいの痛みが俺を襲った。 「ぐぁあ……」 「ナ…ナナシ……」 「絶対手を離すなよ……引き上げるから……」 手に力を込めて引き上げようとするが、一向に上がりそうにない。 それどころから俺も崖の方に引き込まれ始めた。 まずい……このままじゃ……うわっ! 俺の居た足場が崩壊する、それと同時に腕から力が抜けていくのを感じた。 ---- 地面に転落しようとしたまさにその時、俺の腕が何者かに掴まれる。 その何者かは軽々俺を引き上げると、声を上げた。 「全く……無茶しやがって……俺様が助けてやらなかったらどうなったか……」 声の主はジャイアン。その額には汗が浮かんでいる。 そうだ、スネオは!? 「安心しろ、気絶してるが大丈夫だ……」 スネオがジャイアンを負ぶっている。助かったのか。 一気に体の熱が抜けていった ――― 「ご苦労様、危機一髪だったみたいね」 シロナが安心した表情で俺たちに声をかける。まだ少々フラフラしてる。 ジャイアンがスネオを負ぶってここまで連れて来たのだ、その体力に感心させられる。 「スネオ君……これからは感情的になって動かないようにね」 諭すようにシロナが喋る。スネオは俯きながら『分かりました』と呟いた。 ---- 今俺はソファに腰をかけて寛いでいる。 なんというかやる気がでない。ジャイアンは解散した後『修行だ!』とか言って外に出て行った。 後は知らんな……俺も疲れを癒そう。ギンガ団の襲撃を止めるためにな。 俺が夢の世界の扉を開けようとしたとき、不意に名前を呼ばれ飛び上がる。 名前を呼ばれた方を振り返る。そこにはスネオが居た。 「なにか用か?」 もう寝よう、という時に起こされて少々不機嫌だ。先ほどよりも声が暗い気がする。 「その……悪かったな。コボルバッジのこと……」 不意を突かれた。まさに今の俺の状態だ。 「このバッジは返すよ、自分の実力で挑戦してくる」 スネオが俺に菱形のバッジを押し付けてきた。 「じゃあな」 スネオはそう言うと俺に背を向ける。 「ま、待ってくれ!」 歩こうとしたスネオを静止する。スネオは振り向いた。 「俺もハクタイの森で悪かったな……やりすぎた」 そういえば何だかんだで初めて謝罪したんだな…… スネオは俺の言葉を聞いた後、無言で再び背を向け歩き出した。 その背中は何処と無く勇敢に見えた。 ナナシ ルカリオLv58、クロバットLv55、ロトムLv54、 ラグラージLv56、グレイシアLv54 ---- 六時頃、スネオは家に戻ってきた。その右手にコボルバッジを持って。 それに連れられるかの様に静香、のび太、ジャイアンの順で戻ってきた。 「大分俺のポケモン強くなったぜ?」「僕のポケモンだって!」「私もよ」 三人は満足そうな笑みを浮かべている。どれだけ強くなったのだろう? 一度手合わせをしてみたいな……現状で仲間通しの戦いは避けるべきか。 「そういえば私皆のポケモン全員見たこと無かったわね、見せてくれない?」 シロナもいつの間にか部屋に居た。 するとジャイアンが威勢よくモンスターボールを投げた。 「見て腰を抜かすなよ、行けぇ!」 投げたモンスターボールからはドダイトス、カイリキー、サマヨールそしてガブリアスが姿を現した。 「私はこの子達よ!」 静香がボールを投げる。コンテストの癖なのか投げるときにモーションがあった。 出てきたのはエンペルト、サーナイト、ガーディ、アブソルだ。 「出て来い!」 のび太のポケモンは前回戦った時の変化は無かった。だが全体的にレベルが上昇している。 「ふふふ…僕のポケモンも見てみなよ!」 スネオの顔は自信に満ち溢れている。 出てきたのはゴウカザル、トリトドン、テッカニン、ヌケニン、カクレオンだ。 最後に俺は自分のポケモンを出した。 ---- 「私の思ってたより皆成長していたのね……感心したわ」 チャンピオンに誉められたのが嬉しいのか、四人は顔を紅潮させている。 「タケシ君は攻撃力を優先、スネオ君はトリッキーなポケモンが多いわね  静香ちゃんは広範囲の突破……のび太君とナナシ君はバランスか……」 シロナがブツブツと何かを言っている。 「私が今度の襲撃の時の作戦を考えておいてあげるから、あなたたちは食事でもしてなさい」 襲撃時の作戦か……こちらの方が圧倒的に兵の数が少ないから 策が非常に重要になってくるな。 とりあえずシロナに任せよう。腹が減った。 今日はカレーか……えぇーと砂糖はどこだ――― 砂糖を取ろうと手を伸ばしたその時、何かが床に落ちる音が聞こえる。続いて金属が落ちる音。 『静香ちゃんっ!?』 のび太が一目散に近寄る。静香は突然椅子から転げ落ちたのだ。 続いてスネオとジャイアンが近寄る。 「また……なのかよ……」 また? そういえば二回倒れたって言ってたな…… しかしこんな急に倒れるなんておかしくないか? だが現実に静香はうなされた表情をして倒れている。 「皆退いて、ベッドに運ぶわ! シロナの気迫に押されて一歩下がる。静香を抱えたシロナは自分の寝室に戻っていった。 ---- のび太達三人と輪を作り雑談する。内容はなぜ静香が倒れるかだ。 「……初めて倒れたのは、キッサキシティでちょうどスズナに勝利したところだよな?」 「うん、次に倒れたのはギンガトバリビルに乗り込む直前だよ」 そして三回目が食事を始めようとしたときだ。 なんらかの行動が、トリガーとなって倒れたってわけじゃ無さそうだな。 「なぁ……一体何で倒れたんだ? 静香ちゃんに何が起こってるのか教えてくれよ!」 「それは僕も知りたいよ、でも分からない、僕らには知る術が無いんだよ」 ギンガ団で、こんな行動を起こしているなんていうのも聞いたことが無い。 初めて倒れたのがキッサキである以上、俺が退団後に実行したって訳は無いしな。 まさか第三者の誰かがやっているのか?  この時、出木杉の顔が浮かぶ。まさかあいつが―――? それとも俺の知らない誰かか?  様々な予想が生まれて消えていくが、どこか納得の行かない。上手く行かないそんな感じがした。 「静香ちゃんも安定してきたわ、あなたたちももう寝なさい  明日の早朝に襲撃……ひょっとしたら深夜には来るかもしれないわよ」 ……そうか、目先の敵に捕らわれてはいけない。 敵は他にもたくさん居る。それら全てに対応せねばならないのだ。 皆も納得したのか、部屋の電気を消して布団に潜っていった。 ---- ―――午前零時 ……突然、目が覚めた。 なぜかは分からない、だがしばらく眠れそうに無いな…… 外の空気でも吸ってくるか。 安からか顔で眠っているのび太たちを踏まないように気をつけながら、外に出た。 空は霧がかかっていて薄暗く、星や月は全く見えなかった。 ふぅ……流石に寒い。霧のせいか? 腕を震わせる。遭難した時の寒さに比べたら数段マシだが。 首を回し、手を上に伸ばして体を解す。いい音が鳴った。 仲間……か。悪くは無いな。 トレーナーズスクール時代は、ギンガ団総裁の息子と言う縦書きのせいか 同級生も先生も必要以上は関わろうとせず、いい思い出がまるで無い。 そしてそれはギンガ団時代も同じだ。 結局俺には、今の今まで誰一人仲間と言うものは居なかった。 だが今は違う。色々あったけれども四人の友人が出来た。 俺はこの友人と共に頑張って行きたいと思う。 もうそろそろ戻ろう。そう思ったときだった。 俺の背後に一人の男が現れた。 それはギンガ団総裁であり、俺の父親でもある男―――アカギ。 ---- 「なんの用だ!」 咄嗟に身構える。こんな時間帯に遭遇するなんて…… 「まぁ落ち着け、今夜はお前達を襲いに来たわけじゃない。ちょっとした取引をしにきたのだよ」 「取引だと?」 襲撃しに来たわけじゃない。とりあえずこの言葉を聞いて安心する。 だが嘘かもしれない、油断しては駄目だ。 「今お前がギンガ団に戻ってきたら、副総裁の地位と共に伝説のポケモンをいくらか贈呈しよう  どうだ? あんなぬるい連中と一緒に居たら永遠に掴むことの出来ない待遇だぞ?」 伝説のポケモンか……確かに操ってみたい気もする、だが――― 『断る』 父さんは顔を歪めるが、俺がこの選択肢を選ぶのはある程度想像していたのか どこか余裕を含んだ表情となっている。 『俺は決めたんだ、のび太たちに最後まで協力するってな  だからギンガ団には戻らない、そして全力でギンガ団を叩き潰す!』 拳を前に突き出す。もうギンガ団に未練など無い。 「そうか……ならこちらも全力で貴様らを叩き潰そう  そして後悔させてやる、この選択肢を選んだことをな……」 父さんは邪悪な顔を一瞬こちらに向ける。だが怯んだりなどするものか。睨み返してやる。 俺が表情を険しくさせると、父さんは酷薄な笑みを浮かべ、周囲の闇に溶けていった。 ---- ナナシ ルカリオLv58、クロバットLv55、ロトムLv54、 ラグラージLv56、グレイシアLv54 静香 エンペルトLv60、サーナイトLv56、ガーディLv57 アブソルLv55 のび太 カイリューLv57、ライチュウLv54、アゲハントLv48、 ムウマージLv49、エテボースLv53  スネオ ゴウカザルLv57、トリトドンLv55、テッカニンLv50 ヌケニンLv51、カクレオンLv45 ジャイアン ドダイトスLv57、カイリキーLv55、サマヨールLv56 ガブリアスLv60 [[次へ>ギンガ その14]] ----
[[前へ>ギンガ その12]] 周囲には数軒の民家、それだけしかない小さな町。 その町の名前は『フタバタウン』俺は今この町に居た。 この町を訪れた理由、それは近辺にある『シンジ湖』に用があるからだ。 そこにはエムリット、俺たちを助けてくれたポケモンが居る。 もう三日も前の話か。だが俺はあの時の出来事は永遠に忘れることは無いだろう。 俺たち目掛けて落下してくる巨大な岩石―――のび太達が悲鳴を上げる。 あの時はもう『死』を覚悟した。 岩石が命中したその時、激しい閃光が俺を包む――― 気がついたときは、カンナギシティに立ち尽くしていた。 周囲には、のび太、ジャイアン、スネオ。 三人も目の前で起こった現象に呆然としているようだ。 一体……何が起こったんだ? とりあえず助かった。思わず気が抜けて座り込んでしまった。 するとエムリットが、俺の首周りを浮遊していた。 その顔には明らかに疲労の色が見える。 この時俺は悟った。エムリットが俺達を助けてくれたことを――― ---- しばらくしてシロナがやってきた。それと同時にもうエムリットが居ないことに気づく。 最初はかなり落ち込んだ顔をしていたが、俺達の姿を見た時 先ほどとは打って変わって、明るい表情へと変化した。 俺たちが生存していたのが嬉しかったのだろう。 その後、夜にシロナの家で食事を済ませた。 静香もその時には元に戻っており、俺の姿を見た時は驚いていたが 事情を説明すると、俺のことを受け入れてくれた。 その時に出木杉は来ないのが不思議になって、のび太に聞いたら 『出木杉とは連絡が取れなかった』と言っていた。 キッサキシティでは俺を襲ってきたが、たまたまその場に居たのだろうか……? 皆がシロナの家に宿泊して行くと言ったので、俺も宿泊していった。 いつも一人で寝ていたから、その時の夜は何か不思議な気持ちだった。 翌朝、俺は一番早く起床した。理由は誰にも気づかれずこの家を立ち去るためだ。 昨日まで敵だった奴が、一緒に食事をして、寝床につく。 なにかそれが恥ずかしかった。 足音を立てず玄関まで行く。その時背後にシロナが現れた。 何か言われると思ったが、ニコッと微笑みこう告げた。 『困ったことがあったら、私のところに来なさい』 と、この時もまた不思議な気持ちがした。 そして、俺はシロナの家の扉を開けた。 ---- その後、数日間色々な所を歩き回っていた。 四天王に挑戦する権利は得ていたが、このまま勝利できるほど甘い場所ではない。 そう感じた俺はポケモン達の、そして自分自身の修行を始めた。 ポケモンリーグ―――それも突破せねばならない関門だが それ以上に突破……いや崩壊させねばならない組織があった。 そう……『ギンガ団』 自分の行いに対する償い、自分に過去にけじめをつけるため……何が俺を駆り立てるかは分からない。 だがやらなければならない、そんな気がした。 ―――だが、やる前にもう一つやることはあった。 エムリットに礼を言いに行く。 気がついたときはエムリットは居なくなっていて、、礼の一つすら言えなかった。 所謂命の恩人に、何も言えないのは俺のポリシーに反する。 そんな思いで、今日はここに訪れたのだ。 ---- ―――シンジ湖 全体に茂る若草、所々に咲き乱れ原っぱを明るい雰囲気へと変化させる花。底が見えるほど奇麗な湖。 そして、湖面に不自然に浮かび上がる小さな洞窟。 心が洗い流されるような景色だったが、何故か不快感が浮かび上がる。 昔から、湖など水辺は好きになれない。 なぜ好きになれないのか、不思議に思った。 くだらない思想はさておき、前のリッシ湖と同じ考えで行くと、あそこにエムリットは居る。 そう確信した俺は、ラグラージに乗って空洞まで辿り着いた。 空洞の中に入る。中は静寂に包まれていた。 一歩一歩と進んでいく。   『抵抗するな!』 突然静寂は切裂かれる。それと同時に俺は走った。 エムリットに危機が迫っている。そう直感した俺はモンスターボールを投げた。 「クロバット、行け!」 ボールからクロバットを投げる。クロバットの素早さなら間に合う。 予想通り、誰かの短い悲鳴が俺の耳に飛び込んできた。 『なにをしているんだ!?』 大声を上げ、倒れている人間を睨みつける。 この時俺は目を疑った。 倒れていた人物それは―――出木杉英才だった。 ---- 「お前………」 出木杉は目を逸らす。その時エムリットは出木杉から逃げ出し、空洞の中から脱出した。 「あ、待て!」 出木杉は手を伸ばすがもう遅い、既にこの空洞内にエムリットは居なかった。 「……なぜエムリットを捕らえようとしたか説明してもらおうか?」 俺は出木杉の退路を封じる位置に立つ。 「そうは行かないよ……僕にはやらなきゃいけないことがあるからね!」 モンスターボールを構える出木杉、そういうことか。 俺はクロバットを一歩前進させる。 「行け、ムクホーク!」 モンスターボールが放物線描いて飛んでいく。 それは俺とクロバットの居る僅かな隙間で停止し、光りだす。 中からはムクホークが姿を現した。 「うわっ!」 思わず尻餅をつく。ムクホークに威嚇されてしまったのだ。 すると出木杉はムクホークに飛び乗った。 「じゃあね、またいつか会おう」 そのままムクホークは加速し、飛び去っていった。 その光景を呆然と見続ける俺。 あいつ上手い……ボールの状態だと小さいが、出てくればそれなりの大きさになる。 それでスペースを圧迫されたうえ、威嚇を受けて俺は尻餅をついてしまったのだ。 ……どうやら、もう戦いは始まっていたようだな。 ナナシ ルカリオLv57、クロバットLv54、ロトムLv53、 ラグラージLv55、グレイシアLv53 ---- 翌日、俺はカンナギシティを訪れた。 シロナの家を訪問すると、玄関に何足か小さな靴が乱雑に放置されていた。 まさかとは思ったが、シロナに案内された部屋にはやはりのび太達が居た。 しかし、どことなく空気が重い。 「暇だから僕らに会いに来た……ってわけじゃないみたいだね」 どうやら……そっちでも何かあったみたいだな。 少し話し合い、俺たちはお互いに知っている情報を話し、整理することにした。 俺は、出木杉がエムリットを誘拐しようとしていたことを皆に話した。 皆も驚いた表情をしていた。まるで信じられないと。 俺自身も未だに信じられないところがある。あの真面目な奴が…… 「次は僕らが見た出来事を話してもいい?」 「あぁ…聞かせてくれ」 のび太の話……それも信じられない出来事だった。 シンオウの大都市の大量のギンガ団員が現れて、トレーナーを襲撃していたというものだった。 その場に居合わせたのび太達は、周囲のトレーナーと協力し何とか追い払うことができたようだ。 だがいつまた襲撃されるか分からない。その事実に皆黙ってしまった。 ---- 「どうやらギンガ団が本格的に活動を始めたようね、ナナシ君はなんか聞いてない?」 シロナがそう尋ねる。 「何も聞いてないな。だが町を襲うほどの武力行使に出たのは初めてだな……  おそらくギンガ団は、ここ数日間で作戦を大幅に変更したのだと思う」 力や権力を利用するのを父さんは嫌悪しており、そんなことをすること今までに無かった。 だが今は違う……向こうも情けやプライドを捨て、野望を果たすために本気になったのだろう。 「分かったわ、その様子だと再び襲撃してくる可能性は高いわね  すぐに対応できるように皆で協力しましょう? いい?」 シロナの言うことは間違っていない。数には数で対抗する。俺も賛成だ。 俺が『分かった』と返事をしようとしたその時――― 『僕は嫌だよ!』 皆が声の主に反応して振り向く。声を張り上げたのはスネオだ。 スネオは俺の方をキッと睨み指差す。 『僕は一回こいつに殺されかけた!  それに裏切ったふりをして、スパイをしている可能性もある  僕はこいつを信用することはできないんだ!』 自分が悪い、そう分かっていても怒りが込上げてくる事はある。 俺が返しの言葉を言おうとしたとき、ジャイアンの大声が家中に響いた。 「もともとお前が、卑怯な手を使ってナナシのバッジを奪ったのが悪ぃじゃねーか!  いちいち細かいこと言うなよ、お互い様だろ?」 「くそっ……なんで僕ばかりが……こいつが仲間に入るなら僕は入らないよ、じゃあね」 スネオはそう言うと走り去っていった。 ---- 「なんだよあいつ……」 「いいんだ…結局俺が悪いのは事実だからさ」 不思議と今の気持ちは落ち着いていた。 「……今カンナギの周囲はテンガン山が崩壊したことによって、ポケモン達の気が立ってる  もしそんなところに入ったらまずいわね……ひょっとしたら……」 一気に気まずくなる。苦手なんだよな……こういう空気。 「仕方ないわね、探しに行きましょう。私はテンガン山の方を探してくるから  のび太君と静香ちゃんはこの辺を、ナナシ君とタケシ君は210番道路の方をお願い」 俺たちは返事をして、シロナの家を出た。 ―――210番道路 霧が立ち込めている。過去にここで出木杉と遭遇したっけな。 ひょっとしたら出木杉は、あの時点で俺の正体を知っていたかもしれないな…… 「なにぼぉっとしてるんだ! 周りにスネオが居ないか探せ!」 「あ…悪い……」 ジャイアンの一喝で俺の思考が途切れ、周りを見渡すのに集中し始めた。 ……が霧のせいで全く見えない。霧払いが使えるポケモンは持ってないしな。 「ナナシ、やっぱりあいつの言葉気にしてるのか?」 気にしてない……そう言えば嘘になる。 未だに頭の中にその言葉は響いている。そうすることでまた一段と暗い気持ちになる。 「大丈夫さ、俺がなんとかしてみせる」 ジャイアンのこの言葉、俺にとっては非常に頼もしいものだった。だが――― 『うわぁあぁぁああぁぁああ!!』 「この声はスネオの……お、おい待てよ!」 他人に頼ってはいけない、自分で自分の罪は償う! ---- 霧のせいで視界が悪く、スネオの詳しい位置までは分からないが 断続的に漏れる悲鳴と、僅かな足音でなんとなく位置は掴める。 「わ、悪かったよ……ちょっとイライラしてたんだ、もうしない、だから許して!」 スネオの姿が見えてくる。あと一歩で崖に転落という状況だ。 そして、スネオを襲っているのはコモルー。頭にこぶが出来ている。 大方スネオが石で蹴って、それがコモルーに命中したのだろう。 『ママーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』 『クロバット、催眠術だ!』 クロバットを出し、催眠術でコモルーを眠らせる。 これで一段落d――― 『うわぁあ!』 スネオが手を乗せていた足場がを突然崩れ、スネオは崖に転落した。 「スネオぉ!」 俺はスネオの方に手を伸ばす。すると肩が外れるくらいの痛みが俺を襲った。 「ぐぁあ……」 「ナ…ナナシ……」 「絶対手を離すなよ……引き上げるから……」 手に力を込めて引き上げようとするが、一向に上がりそうにない。 それどころから俺も崖の方に引き込まれ始めた。 まずい……このままじゃ……うわっ! 俺の居た足場が崩壊する、それと同時に腕から力が抜けていくのを感じた。 ---- 地面に転落しようとしたまさにその時、俺の腕が何者かに掴まれる。 その何者かは軽々俺を引き上げると、声を上げた。 「全く……無茶しやがって……俺様が助けてやらなかったらどうなったか……」 声の主はジャイアン。その額には汗が浮かんでいる。 そうだ、スネオは!? 「安心しろ、気絶してるが大丈夫だ……」 スネオがジャイアンを負ぶっている。助かったのか。 一気に体の熱が抜けていった ――― 「ご苦労様、危機一髪だったみたいね」 シロナが安心した表情で俺たちに声をかける。まだ少々フラフラしてる。 ジャイアンがスネオを負ぶってここまで連れて来たのだ、その体力に感心させられる。 「スネオ君……これからは感情的になって動かないようにね」 諭すようにシロナが喋る。スネオは俯きながら『分かりました』と呟いた。 ---- 今俺はソファに腰をかけて寛いでいる。 なんというかやる気がでない。ジャイアンは解散した後『修行だ!』とか言って外に出て行った。 後は知らんな……俺も疲れを癒そう。ギンガ団の襲撃を止めるためにな。 俺が夢の世界の扉を開けようとしたとき、不意に名前を呼ばれ飛び上がる。 名前を呼ばれた方を振り返る。そこにはスネオが居た。 「なにか用か?」 もう寝よう、という時に起こされて少々不機嫌だ。先ほどよりも声が暗い気がする。 「その……悪かったな。コボルバッジのこと……」 不意を突かれた。まさに今の俺の状態だ。 「このバッジは返すよ、自分の実力で挑戦してくる」 スネオが俺に菱形のバッジを押し付けてきた。 「じゃあな」 スネオはそう言うと俺に背を向ける。 「ま、待ってくれ!」 歩こうとしたスネオを静止する。スネオは振り向いた。 「俺もハクタイの森で悪かったな……やりすぎた」 そういえば何だかんだで初めて謝罪したんだな…… スネオは俺の言葉を聞いた後、無言で再び背を向け歩き出した。 その背中は何処と無く勇敢に見えた。 ナナシ ルカリオLv58、クロバットLv55、ロトムLv54、 ラグラージLv56、グレイシアLv54 ---- 六時頃、スネオは家に戻ってきた。その右手にコボルバッジを持って。 それに連れられるかの様に静香、のび太、ジャイアンの順で戻ってきた。 「大分俺のポケモン強くなったぜ?」「僕のポケモンだって!」「私もよ」 三人は満足そうな笑みを浮かべている。どれだけ強くなったのだろう? 一度手合わせをしてみたいな……現状で仲間通しの戦いは避けるべきか。 「そういえば私皆のポケモン全員見たこと無かったわね、見せてくれない?」 シロナもいつの間にか部屋に居た。 するとジャイアンが威勢よくモンスターボールを投げた。 「見て腰を抜かすなよ、行けぇ!」 投げたモンスターボールからはドダイトス、カイリキー、サマヨールそしてガブリアスが姿を現した。 「私はこの子達よ!」 静香がボールを投げる。コンテストの癖なのか投げるときにモーションがあった。 出てきたのはエンペルト、サーナイト、ガーディ、アブソルだ。 「出て来い!」 のび太のポケモンは前回戦った時の変化は無かった。だが全体的にレベルが上昇している。 「ふふふ…僕のポケモンも見てみなよ!」 スネオの顔は自信に満ち溢れている。 出てきたのはゴウカザル、トリトドン、テッカニン、ヌケニン、カクレオンだ。 最後に俺は自分のポケモンを出した。 ---- 「私の思ってたより皆成長していたのね……感心したわ」 チャンピオンに誉められたのが嬉しいのか、四人は顔を紅潮させている。 「タケシ君は攻撃力を優先、スネオ君はトリッキーなポケモンが多いわね  静香ちゃんは広範囲の突破……のび太君とナナシ君はバランスか……」 シロナがブツブツと何かを言っている。 「私が今度の襲撃の時の作戦を考えておいてあげるから、あなたたちは食事でもしてなさい」 襲撃時の作戦か……こちらの方が圧倒的に兵の数が少ないから 策が非常に重要になってくるな。 とりあえずシロナに任せよう。腹が減った。 今日はカレーか……えぇーと砂糖はどこだ――― 砂糖を取ろうと手を伸ばしたその時、何かが床に落ちる音が聞こえる。続いて金属が落ちる音。 『静香ちゃんっ!?』 のび太が一目散に近寄る。静香は突然椅子から転げ落ちたのだ。 続いてスネオとジャイアンが近寄る。 「また……なのかよ……」 また? そういえば二回倒れたって言ってたな…… しかしこんな急に倒れるなんておかしくないか? だが現実に静香はうなされた表情をして倒れている。 「皆退いて、ベッドに運ぶわ! シロナの気迫に押されて一歩下がる。静香を抱えたシロナは自分の寝室に戻っていった。 ---- のび太達三人と輪を作り雑談する。内容はなぜ静香が倒れるかだ。 「……初めて倒れたのは、キッサキシティでちょうどスズナに勝利したところだよな?」 「うん、次に倒れたのはギンガトバリビルに乗り込む直前だよ」 そして三回目が食事を始めようとしたときだ。 なんらかの行動が、トリガーとなって倒れたってわけじゃ無さそうだな。 「なぁ……一体何で倒れたんだ? 静香ちゃんに何が起こってるのか教えてくれよ!」 「それは僕も知りたいよ、でも分からない、僕らには知る術が無いんだよ」 ギンガ団で、こんな行動を起こしているなんていうのも聞いたことが無い。 初めて倒れたのがキッサキである以上、俺が退団後に実行したって訳は無いしな。 まさか第三者の誰かがやっているのか?  この時、出木杉の顔が浮かぶ。まさかあいつが―――? それとも俺の知らない誰かか?  様々な予想が生まれて消えていくが、どこか納得の行かない。上手く行かないそんな感じがした。 「静香ちゃんも安定してきたわ、あなたたちももう寝なさい  明日の早朝に襲撃……ひょっとしたら深夜には来るかもしれないわよ」 ……そうか、目先の敵に捕らわれてはいけない。 敵は他にもたくさん居る。それら全てに対応せねばならないのだ。 皆も納得したのか、部屋の電気を消して布団に潜っていった。 ---- ―――午前零時 ……突然、目が覚めた。 なぜかは分からない、だがしばらく眠れそうに無いな…… 外の空気でも吸ってくるか。 安からか顔で眠っているのび太たちを踏まないように気をつけながら、外に出た。 空は霧がかかっていて薄暗く、星や月は全く見えなかった。 ふぅ……流石に寒い。霧のせいか? 腕を震わせる。遭難した時の寒さに比べたら数段マシだが。 首を回し、手を上に伸ばして体を解す。いい音が鳴った。 仲間……か。悪くは無いな。 トレーナーズスクール時代は、ギンガ団総裁の息子と言う縦書きのせいか 同級生も先生も必要以上は関わろうとせず、いい思い出がまるで無い。 そしてそれはギンガ団時代も同じだ。 結局俺には、今の今まで誰一人仲間と言うものは居なかった。 だが今は違う。色々あったけれども四人の友人が出来た。 俺はこの友人と共に頑張って行きたいと思う。 もうそろそろ戻ろう。そう思ったときだった。 俺の背後に一人の男が現れた。 それはギンガ団総裁であり、俺の父親でもある男―――アカギ。 ---- 「なんの用だ!」 咄嗟に身構える。こんな時間帯に遭遇するなんて…… 「まぁ落ち着け、今夜はお前達を襲いに来たわけじゃない。ちょっとした取引をしにきたのだよ」 「取引だと?」 襲撃しに来たわけじゃない。とりあえずこの言葉を聞いて安心する。 だが嘘かもしれない、油断しては駄目だ。 「今お前がギンガ団に戻ってきたら、副総裁の地位と共に伝説のポケモンをいくらか贈呈しよう  どうだ? あんなぬるい連中と一緒に居たら永遠に掴むことの出来ない待遇だぞ?」 伝説のポケモンか……確かに操ってみたい気もする、だが――― 『断る』 父さんは顔を歪めるが、俺がこの選択肢を選ぶのはある程度想像していたのか どこか余裕を含んだ表情となっている。 『俺は決めたんだ、のび太たちに最後まで協力するってな  だからギンガ団には戻らない、そして全力でギンガ団を叩き潰す!』 拳を前に突き出す。もうギンガ団に未練など無い。 「そうか……ならこちらも全力で貴様らを叩き潰そう  そして後悔させてやる、この選択肢を選んだことをな……」 父さんは邪悪な顔を一瞬こちらに向ける。だが怯んだりなどするものか。睨み返してやる。 俺が表情を険しくさせると、父さんは酷薄な笑みを浮かべ、周囲の闇に溶けていった。 ---- ナナシ ルカリオLv58、クロバットLv55、ロトムLv54、 ラグラージLv56、グレイシアLv54 静香 エンペルトLv60、サーナイトLv56、ガーディLv57 アブソルLv55 のび太 カイリューLv57、ライチュウLv54、アゲハントLv48、 ムウマージLv49、エテボースLv53  スネオ ゴウカザルLv57、トリトドンLv55、テッカニンLv50 ヌケニンLv51、カクレオンLv45 ジャイアン ドダイトスLv57、カイリキーLv55、サマヨールLv56 ガブリアスLv60 [[次へ>ギンガ その14]] ----

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