「ギンガ その11」(2007/08/12 (日) 02:10:31) の最新版変更点
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「勝負の方式はダブルバトル、使用ポケモンは二体だ」
俺はナギサジムの床に足を踏み入れている。
最後のジム戦……ナギサジムに挑戦しようとしているのだ。
「では行くぞ! 出て来い、オクタン、デンリュウ!」
「行け! ラグラージ、グレイシア!」
この二体ならば、電気タイプ相手に有利に戦うことのできるはず……勝負!
「オクタン、水の波動を乱れ撃ちしろ!」
オクタンは水の波動をそこらに乱射する。何か作戦があるのか?
グレイシアに冷凍ビームを命じる、対象はデンリュウだ。
しかし、冷凍ビームは青い防御壁によって阻まれる。『護る』の技か。
なら今度はオクタンだ。
「ラグラージ、オクタンに瓦割りだ!」
オクタンに接近するラグラージ、オクタンのスピードなら回避するのは困難だ。
「エナジーボール!」
緑色のエネルギーがラグラージに命中する。その攻撃を受けたラグラージは苦しそうな表情を表す。
しまった……ジムリーダー程の実践を積んでいれば、
鈍いオクタンを攻撃されるシチュエーションなど、何度も経験しているはず……
だからこそあそこまで冷静な対処ができたのだ、油断した。
----
グレイシアの技では、オクタンに大きなダメージを与えることができない。
かといってラグラージで接近すれば、さっきの要領でカウンターを受ける。
一つだけ……一つだけ攻略法があるが……この方法は取れない。
「グレイシア、ラグラージ、デンリュウを集中攻撃しろ!」
二体のポケモンはデンリュウに接近する、護るは連続で使用できないから今度は……
「デンリュウの援護に行けオクタン、エナジーボール!」
オクタンはラグラージに標準を定め、エナジーボールを発射する。
「目覚めるパワーで相殺しろ、グレイシア!」
紅い球を発射し、エナジーボールを相殺する。
「今だ、冷凍パンチ!」
デンリュウは冷凍パンチを受け、後方に吹っ飛ばされる。
「追撃だ、グレイシア、冷凍ビーム!」
「こっちも冷凍ビームだ!」
グレイシアが発射すると同時に、オクタンも冷凍ビームを発射し、巨大な氷塊が完成する。
「パワージェム!」
吹っ飛ばされていたデンリュウが、不思議な岩でグレイシアを攻撃する。
「グレイシア!」「まだまだ、ラグラージにエナジーボール!」
オクタンがエナジーボールを発射する。駄目だ、回避できない。それなら……
「傍の氷塊をオクタンにぶつけてやれ!」
冷凍ビームの激突でできた氷塊、これをオクタンに向けて打ち込む。
ラグラージが氷塊を打ち込んだ瞬間、戦闘不能になる。
だが氷塊はオクタンの急所に命中し、オクタンも戦闘不能となった。
----
「よし、これで一対一だ……」
「残念だったな……この勝負、もう終わった。10万ボルト!」
「そんな位置から届くわけが……」
10万ボルトは、地面を伝ってグレイシアを襲う。その攻撃はグレイシアのHPを一撃で奪い去った。
「馬鹿な……なぜ10万ボルトがここまで……それに威力が強すぎる」
「最初の水の波動でフィールド全体が濡れていた……
戦っているうちにその水がグレイシアにも付着して、10万ボルトの威力が上昇したんだ」
最初の水の波動乱射にはそんな意味が………
「君……ポケモン達を労わりすぎてないか?」
「ど…どういう意味だ?」
「さっきの局面、接近せずにラグラージに地震を命じていれば、おそらく俺は敗北していただろう
だが君は……グレイシアを気遣って使わなかったんじゃないか?」
そう……なのか?確かに地震を使っていれば、かなり有利に戦闘を進めれたはずだ。
だが無意識のうちに使うのを拒否した。それが……
「……またの挑戦待ってるよ」
----
ポケモンを労わりすぎてるか……
ジムを飛び出して、俺は砂浜に足を進め、腰を下ろした。
確かにラグラージ、グレイシア共に相手に決定打を与えられない状況で
地震を使用していれば、一瞬にして状況は変化しただろう。
だが使えなかった……グレイシアを巻き込むのが怖かった、
結局、勝負にも負け、ポケモン達を傷つけた……
それならいっそのこと……駄目だ!
それではスモモ戦の時に行った行為と変わらない。ポケモンを道具と見る行為。
そんなの……そんなの……
思わず頭を掻き毟る。なんだか頭痛もしてきた……
「どうかなさったのですか?」
背後に目をやる。そこには白いワンピースを着た、俺と同じくらいの少女が居た。
----
「……誰だ?」
「あたしはミカンと言います。ジョウトのアサギシティで、ジムリーダーをやらせていただいてます。あなたは?」
俺は名前だけを告げる。するとミカンは微笑みながら、俺にこう告げた。
「ここのジムリーダーの方に負けたのですか?」
「ど、どうしてそれを!?」
いきなり確信を突かれ、動揺を隠せない。心を見透かされたのか?
「あたしもジムリーダーです。あたしに敗北した方と同じような表情をしていましたから……」
なんだ……流石に心を見透かすなんてできないよな。
「でも…あなたはその人たちよりも難しい顔をしていますね。私でよければ相談に乗りますよ」
……この人に相談すれば解決できそうな気がする。
俺は自分の悩みを洗いざらいに話すことにした。
「……そうなのですか、あなたはポケモン思いなんですね」
ポケモン思いか……本当にそうなのか? 自分では分からない。
「あなたのポケモン達を見せていただけますか?」
その質問に黙って頷き、五つのモンスターボールを宙に放り投げた。
----
ミカンは、しばらくの間俺のポケモンを凝視し続けた。
「どの子もいい目をしています。あなたのことをとても信用しているのですね」
ミカンの話を聞いていると、ルカリオと目が合った。
初めて旅立った時……リオルの頃と比べるとしっかりとした目をしている気がする。
他のポケモン達とも目を合わせる。皆、最初に会った時に比べると目が光っているような気が……
「あなたのポケモン達は皆あなたを信頼しています。
それはあなたがポケモン達のことを思っているから……
そして、ポケモン達はあなたの期待に応えようとしています」
俺の期待?それは―――
「しかし、あなたはそれを受け取らなかった……
ポケモン達が、あなたの期待に応えようとしているのならば
あなたもポケモン達の期待に応えなければならないのです」
ポケモン達の期待に応える……この言葉を聞いたとき、俺の中で何かが吹っ切れた。
「そうか…そうだよな……ありがとう、ミカンさん。またジムに挑戦しに行ってみる」
「そうですか……健闘をお祈りしていますよ」
ミカンは俺を見て再び微笑んだ。
俺は立ち上がり、そしてジムへと一歩ずつ進んでいった。
ナナシ
ルカリオLv49、クロバットLv46、ロトムLv45、
ラグラージLv47、グレイシアLv45
----
「再戦しに来たのか、何か作戦でもできたのかな」
「さぁな、だが今回は絶対に勝利してみせる」
「ほぉ……ならそれを証明してみろ、勝負だ!」
デンジは二つのボールを放り投げる。出てくるのは前回と同じオクタンとデンリュウ。
俺が選択した二体も、前回と同じ、ラグラージ、グレイシアだ。
「同じ二体か……さっきのリプレイにならない様に注意するんだな。オクタン、水の波動を乱射しろ!」
さっきと同じか……
「グレイシア、オクタンに向けて水の波動だ!」
グレイシアがリング状の水をオクタンに放つ。
それは命中したものの、オクタンはまるで効いていないような涼しい顔をしている。
だがデンジはそれと対照的に、苦い顔をしているのであった。
「大した威力じゃないのに、決定打を打ち込まれたような顔だな」
俺の一言でデンジは顔を歪ませる。
「俺は不思議に思った。なぜフィールドを水浸しにするのに
広範囲を一気に潰せる波乗りでは無く、水の波動を使用したか……
その答えは簡単。波乗りを使用すると、俺達のポケモンだけでは無く
お前のポケモンまで濡れてしまうからだ。濡れれば、当然デンリュウの電撃を受けるからな
だからお前は自分のポケモンに水技が命中するのは絶対に避けねばならなかった、どうだ?」
----
沈黙がジム内に訪れる。不思議と口元の筋肉が緩んでいく。
「まさか見抜かれるとはな……だがこれでデンリュウの電撃を防いだと思うな
オクタン、冷凍ビームでフィールドを凍らせろ!」
オクタンが冷凍ビームを地面に発射する。濡れていた地面はみるみるうちに凍結していった。
「この隙を逃すか、デンリュウに攻撃だ!」
二体のポケモンがデンリュウに攻撃を仕掛ける
しかし、青い防御壁に二体の攻撃は阻まれてしまった。
「このシチュエーションも何度と体験している、簡単に通ると思うな」
いつの間にか水浸しのフィールドは、透き通った氷のフィールドへと変化していた。
だがこれも計算の内……見てろよ
「デンリュウに接近しろ、グレイシア!」
グレイシアは氷の地面を駆け抜けていく。氷のフィールドの力が作用してスピードが上昇している。
「デンリュウ、パワージェムだ!」
宝石のような石を飛ばしが、足場の悪さで狙いを外してしまう。
「冷凍ビーム!」
冷凍ビームを命じると同時に、デンリュウが腕を十字にし体を丸める。
だが俺が狙ったのはデンリュウじゃない……オクタンだ。
不意を突かれたオクタンは、冷凍ビームを諸に受ける。
「不意を突いたつもりか? 効果がいまひとつだぞ」
「ダメージを狙ったわけではない、オクタンを見てみな」
デンジの目前には、下半身が凍結したオクタンが居た。
----
「体の向きを変えられない以上、デンリュウのサポートをすることはできない。これで事実上の二対一だ」
「ならデンリュウだけで二体倒してやる、掛かって来い!」
デンリュウも体を奮い立たせ、いかにもやる気のあるという面構えになる。
「行くぞ! 冷凍ビーム!」「10万ボルトだ!」
強力な冷気と電撃の押し合いが数秒続き、爆発が起こる。
それにより煙が発生し、ジム内を静寂と共に包み込んだ。
そんな状態が十数秒続く……そろそろだ。
『今だ! 一気に片付けてやれ、冷凍ビームだ!』
俺の声が木霊した数秒後、強力な光を煙の中で感じる。
その光が消えると同時に煙は晴れていった。そこには氷漬けのデンリュウが……
「な……嘘だろ?」
デンリュウは青い防御壁に包まれている。護るか!?
「油断したな……煙が発生した時点から既に護るのバリアーを貼っていたのだ」
自信満々に笑みを浮かべるデンジ。それを見て手で顔を伏せる。
「ククク……やはりそう来たか、読んでたさ……あんたがこの局面で護るを使うことくらいな」
「な、なに!?」
「俺が見えないフィールド内で行いたかった行動は二つ……
まず一つはグレイシアを俺の近くに戻すこと…
そして二つ目は……デンリュウに護るを使わせることだ!」
----
「まさか……次の攻撃が――」
「ラグラージに飛び乗れグレイシア!」
グレイシアは、ジャンプしてラグラージの頭に飛び乗る。
『地震!』
ラグラージが強大な地震を発生させる。
氷の地面に亀裂が走り、轟音と共に倒壊する。
そして、動くことのできないオクタン、防ぐ術を持たないデンリュウを容赦なく呑み込み
相手のポケモンを、一瞬にして戦闘不能へと追いやった。
----
「ふぅ……完敗だよ、君みたいなトレーナーには久々に会ったよ
これがビーコンバッジ、最後のジムバッジだ」
ビーコンバッジを手渡され、胸の高鳴りを感じる。
これで……これで全てのバッジが揃った。
「ポケモンリーグはナギサシティの北にある海から――」
安堵していた俺の耳に爆発音が飛び込んでくる。
「な、なんだ!?」
爆発音は外から……リッシ湖の方から聞こえる
「緊急事態らしいな……ナナシ君、俺は先に行くから後から駆けつけてくれ!」
デンジはそう言うと急いで去っていく。それと同時にポケッチから電子音が聞こえた。
ナナシ
ルカリオLv49、クロバットLv46、ロトムLv45、
ラグラージLv48、グレイシアLv45
----
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「勝負の方式はダブルバトル、使用ポケモンは二体だ」
俺はナギサジムの床に足を踏み入れている。
最後のジム戦……ナギサジムに挑戦しようとしているのだ。
「では行くぞ! 出て来い、オクタン、デンリュウ!」
「行け! ラグラージ、グレイシア!」
この二体ならば、電気タイプ相手に有利に戦うことのできるはず……勝負!
「オクタン、水の波動を乱れ撃ちしろ!」
オクタンは水の波動をそこらに乱射する。何か作戦があるのか?
グレイシアに冷凍ビームを命じる、対象はデンリュウだ。
しかし、冷凍ビームは青い防御壁によって阻まれる。『護る』の技か。
なら今度はオクタンだ。
「ラグラージ、オクタンに瓦割りだ!」
オクタンに接近するラグラージ、オクタンのスピードなら回避するのは困難だ。
「エナジーボール!」
緑色のエネルギーがラグラージに命中する。その攻撃を受けたラグラージは苦しそうな表情を表す。
しまった……ジムリーダー程の実践を積んでいれば、
鈍いオクタンを攻撃されるシチュエーションなど、何度も経験しているはず……
だからこそあそこまで冷静な対処ができたのだ、油断した。
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グレイシアの技では、オクタンに大きなダメージを与えることができない。
かといってラグラージで接近すれば、さっきの要領でカウンターを受ける。
一つだけ……一つだけ攻略法があるが……この方法は取れない。
「グレイシア、ラグラージ、デンリュウを集中攻撃しろ!」
二体のポケモンはデンリュウに接近する、護るは連続で使用できないから今度は……
「デンリュウの援護に行けオクタン、エナジーボール!」
オクタンはラグラージに標準を定め、エナジーボールを発射する。
「目覚めるパワーで相殺しろ、グレイシア!」
紅い球を発射し、エナジーボールを相殺する。
「今だ、冷凍パンチ!」
デンリュウは冷凍パンチを受け、後方に吹っ飛ばされる。
「追撃だ、グレイシア、冷凍ビーム!」
「こっちも冷凍ビームだ!」
グレイシアが発射すると同時に、オクタンも冷凍ビームを発射し、巨大な氷塊が完成する。
「パワージェム!」
吹っ飛ばされていたデンリュウが、不思議な岩でグレイシアを攻撃する。
「グレイシア!」「まだまだ、ラグラージにエナジーボール!」
オクタンがエナジーボールを発射する。駄目だ、回避できない。それなら……
「傍の氷塊をオクタンにぶつけてやれ!」
冷凍ビームの激突でできた氷塊、これをオクタンに向けて打ち込む。
ラグラージが氷塊を打ち込んだ瞬間、戦闘不能になる。
だが氷塊はオクタンの急所に命中し、オクタンも戦闘不能となった。
----
「よし、これで一対一だ……」
「残念だったな……この勝負、もう終わった。10万ボルト!」
「そんな位置から届くわけが……」
10万ボルトは、地面を伝ってグレイシアを襲う。その攻撃はグレイシアのHPを一撃で奪い去った。
「馬鹿な……なぜ10万ボルトがここまで……それに威力が強すぎる」
「最初の水の波動でフィールド全体が濡れていた……
戦っているうちにその水がグレイシアにも付着して、10万ボルトの威力が上昇したんだ」
最初の水の波動乱射にはそんな意味が………
「君……ポケモン達を労わりすぎてないか?」
「ど…どういう意味だ?」
「さっきの局面、接近せずにラグラージに地震を命じていれば、おそらく俺は敗北していただろう
だが君は……グレイシアを気遣って使わなかったんじゃないか?」
そう……なのか?確かに地震を使っていれば、かなり有利に戦闘を進めれたはずだ。
だが無意識のうちに使うのを拒否した。それが……
「……またの挑戦待ってるよ」
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ポケモンを労わりすぎてるか……
ジムを飛び出して、俺は砂浜に足を進め、腰を下ろした。
確かにラグラージ、グレイシア共に相手に決定打を与えられない状況で
地震を使用していれば、一瞬にして状況は変化しただろう。
だが使えなかった……グレイシアを巻き込むのが怖かった、
結局、勝負にも負け、ポケモン達を傷つけた……
それならいっそのこと……駄目だ!
それではスモモ戦の時に行った行為と変わらない。ポケモンを道具と見る行為。
そんなの……そんなの……
思わず頭を掻き毟る。なんだか頭痛もしてきた……
「どうかなさったのですか?」
背後に目をやる。そこには白いワンピースを着た、俺と同じくらいの少女が居た。
----
「……誰だ?」
「あたしはミカンと言います。ジョウトのアサギシティで、ジムリーダーをやらせていただいてます。あなたは?」
俺は名前だけを告げる。するとミカンは微笑みながら、俺にこう告げた。
「ここのジムリーダーの方に負けたのですか?」
「ど、どうしてそれを!?」
いきなり確信を突かれ、動揺を隠せない。心を見透かされたのか?
「あたしもジムリーダーです。あたしに敗北した方と同じような表情をしていましたから……」
なんだ……流石に心を見透かすなんてできないよな。
「でも…あなたはその人たちよりも難しい顔をしていますね。私でよければ相談に乗りますよ」
……この人に相談すれば解決できそうな気がする。
俺は自分の悩みを洗いざらいに話すことにした。
「……そうなのですか、あなたはポケモン思いなんですね」
ポケモン思いか……本当にそうなのか? 自分では分からない。
「あなたのポケモン達を見せていただけますか?」
その質問に黙って頷き、五つのモンスターボールを宙に放り投げた。
----
ミカンは、しばらくの間俺のポケモンを凝視し続けた。
「どの子もいい目をしています。あなたのことをとても信用しているのですね」
ミカンの話を聞いていると、ルカリオと目が合った。
初めて旅立った時……リオルの頃と比べるとしっかりとした目をしている気がする。
他のポケモン達とも目を合わせる。皆、最初に会った時に比べると目が光っているような気が……
「あなたのポケモン達は皆あなたを信頼しています。
それはあなたがポケモン達のことを思っているから……
そして、ポケモン達はあなたの期待に応えようとしています」
俺の期待?それは―――
「しかし、あなたはそれを受け取らなかった……
ポケモン達が、あなたの期待に応えようとしているのならば
あなたもポケモン達の期待に応えなければならないのです」
ポケモン達の期待に応える……この言葉を聞いたとき、俺の中で何かが吹っ切れた。
「そうか…そうだよな……ありがとう、ミカンさん。またジムに挑戦しに行ってみる」
「そうですか……健闘をお祈りしていますよ」
ミカンは俺を見て再び微笑んだ。
俺は立ち上がり、そしてジムへと一歩ずつ進んでいった。
ナナシ
ルカリオLv49、クロバットLv46、ロトムLv45、
ラグラージLv47、グレイシアLv45
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「再戦しに来たのか、何か作戦でもできたのかな」
「さぁな、だが今回は絶対に勝利してみせる」
「ほぉ……ならそれを証明してみろ、勝負だ!」
デンジは二つのボールを放り投げる。出てくるのは前回と同じオクタンとデンリュウ。
俺が選択した二体も、前回と同じ、ラグラージ、グレイシアだ。
「同じ二体か……さっきのリプレイにならない様に注意するんだな。オクタン、水の波動を乱射しろ!」
さっきと同じか……
「グレイシア、オクタンに向けて水の波動だ!」
グレイシアがリング状の水をオクタンに放つ。
それは命中したものの、オクタンはまるで効いていないような涼しい顔をしている。
だがデンジはそれと対照的に、苦い顔をしているのであった。
「大した威力じゃないのに、決定打を打ち込まれたような顔だな」
俺の一言でデンジは顔を歪ませる。
「俺は不思議に思った。なぜフィールドを水浸しにするのに
広範囲を一気に潰せる波乗りでは無く、水の波動を使用したか……
その答えは簡単。波乗りを使用すると、俺達のポケモンだけでは無く
お前のポケモンまで濡れてしまうからだ。濡れれば、当然デンリュウの電撃を受けるからな
だからお前は自分のポケモンに水技が命中するのは絶対に避けねばならなかった、どうだ?」
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沈黙がジム内に訪れる。不思議と口元の筋肉が緩んでいく。
「まさか見抜かれるとはな……だがこれでデンリュウの電撃を防いだと思うな
オクタン、冷凍ビームでフィールドを凍らせろ!」
オクタンが冷凍ビームを地面に発射する。濡れていた地面はみるみるうちに凍結していった。
「この隙を逃すか、デンリュウに攻撃だ!」
二体のポケモンがデンリュウに攻撃を仕掛ける
しかし、青い防御壁に二体の攻撃は阻まれてしまった。
「このシチュエーションも何度と体験している、簡単に通ると思うな」
いつの間にか水浸しのフィールドは、透き通った氷のフィールドへと変化していた。
だがこれも計算の内……見てろよ
「デンリュウに接近しろ、グレイシア!」
グレイシアは氷の地面を駆け抜けていく。氷のフィールドの力が作用してスピードが上昇している。
「デンリュウ、パワージェムだ!」
宝石のような石を飛ばしが、足場の悪さで狙いを外してしまう。
「冷凍ビーム!」
冷凍ビームを命じると同時に、デンリュウが腕を十字にし体を丸める。
だが俺が狙ったのはデンリュウじゃない……オクタンだ。
不意を突かれたオクタンは、冷凍ビームを諸に受ける。
「不意を突いたつもりか? 効果がいまひとつだぞ」
「ダメージを狙ったわけではない、オクタンを見てみな」
デンジの目前には、下半身が凍結したオクタンが居た。
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「体の向きを変えられない以上、デンリュウのサポートをすることはできない。これで事実上の二対一だ」
「ならデンリュウだけで二体倒してやる、掛かって来い!」
デンリュウも体を奮い立たせ、いかにもやる気のあるという面構えになる。
「行くぞ! 冷凍ビーム!」「10万ボルトだ!」
強力な冷気と電撃の押し合いが数秒続き、爆発が起こる。
それにより煙が発生し、ジム内を静寂と共に包み込んだ。
そんな状態が十数秒続く……そろそろだ。
『今だ! 一気に片付けてやれ、冷凍ビームだ!』
俺の声が木霊した数秒後、強力な光を煙の中で感じる。
その光が消えると同時に煙は晴れていった。そこには氷漬けのデンリュウが……
「な……嘘だろ?」
デンリュウは青い防御壁に包まれている。護るか!?
「油断したな……煙が発生した時点から既に護るのバリアーを貼っていたのだ」
自信満々に笑みを浮かべるデンジ。それを見て手で顔を伏せる。
「ククク……やはりそう来たか、読んでたさ……あんたがこの局面で護るを使うことくらいな」
「な、なに!?」
「俺が見えないフィールド内で行いたかった行動は二つ……
まず一つはグレイシアを俺の近くに戻すこと…
そして二つ目は……デンリュウに護るを使わせることだ!」
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「まさか……次の攻撃が――」
「ラグラージに飛び乗れグレイシア!」
グレイシアは、ジャンプしてラグラージの頭に飛び乗る。
『地震!』
ラグラージが強大な地震を発生させる。
氷の地面に亀裂が走り、轟音と共に倒壊する。
そして、動くことのできないオクタン、防ぐ術を持たないデンリュウを容赦なく呑み込み
相手のポケモンを、一瞬にして戦闘不能へと追いやった。
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「ふぅ……完敗だよ、君みたいなトレーナーには久々に会ったよ
これがビーコンバッジ、最後のジムバッジだ」
ビーコンバッジを手渡され、胸の高鳴りを感じる。
これで……これで全てのバッジが揃った。
「ポケモンリーグはナギサシティの北にある海から――」
安堵していた俺の耳に爆発音が飛び込んでくる。
「な、なんだ!?」
爆発音は外から……リッシ湖の方から聞こえる
「緊急事態らしいな……ナナシ君、俺は先に行くから後から駆けつけてくれ!」
デンジはそう言うと急いで去っていく。それと同時にポケッチから電子音が聞こえた。
ナナシ
ルカリオLv49、クロバットLv46、ロトムLv45、
ラグラージLv48、グレイシアLv45
----
――キッサキシティ
俺は父さんの指令を受け、再びここへ訪問した。
指令の内容は「キッサキ神殿にある金剛玉と白玉を入手してこい」というものだ。
そして、俺はキッサキ神殿の入り口へとやってきた。
入り口には一人の女性が立っている。
「ここへ入らせてもらうぞ…」
「この神殿は、ジムリーダーのスズナさんに許可を得なければ入れません」
「……なら、仕方が無いか」
こうはしたくないが、任務は最優先させなばならない。
なるべく相手を傷つけることなく済ませよう。
「ここを通さなければ、少々痛い目にあってもらうことになるが……いいのか?」
傍にクロバットを待機させ、脅す。これで引き下がってくれれば――
『嫌です! なにをされようとここは通しません!』
「ならクロバ――うっ」
俺の頭の中に血塗れのスネオが浮かび上がる。駄目だ…攻撃できない。
『待ちなさいっ!!』
雪の大地を物ともしない速度で走ってくるその女性は―――スズナ
「ギンガ団なんかは絶対にここには入れないわよ!」
……こうなった以上、勝負は避けられない。
----
「波動弾だ、ルカリオ!」
ルカリオの発した波動弾が命中し、マンムーのその巨体は地にひれ伏す。
「そんな……なんて強さなの、私じゃ勝てない」
スズナのポケモン三体は既に全滅した、もう追撃は無いだろう。
「入らせてもらうぞ……キッサキ神殿」
物言わぬスズナを最後に見て、俺はキッサキ神殿内へと足を進めた。
――キッサキ神殿内部
中は肌寒いうえに暗く、ロトムの明かりを頼りに先に進んでいる状態。
床が凍りついていて一回転倒した。頭が痛い。
下の階に行くごとに肌寒さは増して行き、床の凍りも大きくなっていく。
この下に二つの宝玉はあるのか……それにしては警戒心が無さ過ぎる。
おそらく最下層には何かがある、常に警戒態勢を取れ……
吐いた息が白く染まる。多分次が最下層だな。
不自然な明かりが漏れ、肌寒さなどまるで感じない。
最下層はまるで別空間のようだ。
だがそんなことはどうでもいい、なぜなら俺の目の前には他とは比較にならないほどの物があるからだ。
そいつは俺より三倍ほども背丈があり、今までに無いような威圧感を受ける。
……こいつはポケモンなのか?ピクリとも動かない。
動かないなら好都合、さっさと宝玉入手して立ち去るだけだ。
部屋の中央に宝箱のようなものがある、おそらくあれが――
宝箱に手をかけた瞬間、地面の揺れと共に巨大な物体は動き出した。
----
そいつはゆっくりと迫ってくる。目標は間違いなく俺。
俺の身長ほどもある拳が迫ってくる、なんとか回避したものの衝撃で吹っ飛んでしまった。
こいつを何とかしなければ、宝玉は持って帰ることは出来ない。
「行け、ラグラージ!」
見た目からはタイプが全く想像できない。唯一つ分かるのはかなりの鈍足だということだ。
「地震だ!」
指示を受け地震を発生させるラグラージ。だがそいつは大してダメージを受けていないようだ。
このことからあの巨人は、飛行、電気、炎、岩、毒、鋼、の可能性は消えた。
「次だ、冷凍パンチ!」
冷凍パンチを命中させるが、先ほどの同じく平気のようだ。
これで、草、ドラゴン、地面、の可能性は消えた。
だが巨人の反撃を受け、ラグラージは痛手を負ってしまった。もう交代させよう。
「戻れラグラージ。行けルカリオ!」
ラグラージと交代にルカリオが姿を現す。
調べた中で残ってるタイプは、ノーマル、悪、格闘、エスパー、虫、氷、水、ゴースト。
その中で可能性的に高いのは、悪、エスパー、ノーマル、格闘、ゴーストの五つ。
この四つならば全てルカリオで探りを入れられるはずだ。
「悪の波動!」
禍々しい波動を巨人に命中させる。今までと大差が無い
このことから、エスパー、悪、格闘、ゴースト、は除外される。
となると残りは一つ。ノーマルタイプだ。
『行け、波動弾!』
----
――少しずつではあったが波動弾のダメージが蓄積して、ついに巨人を撃退することができた。
倒れている巨人を背にし、宝箱に手をかける。
中には黒い球と白い球、二つの宝玉が収められていた。
これを手に取った瞬間、地面が再び揺れる。
恐る恐る背後に目を向けると、倒したはずの巨人が復活をしていた。
「くそっ……波動弾だ、ルカリオ!」
巨人に波動弾を発射するが、弾かれてしまう。
そのまま突っ込んで――なっ!?早い!!
今までのスピードとは二倍近くの差がある。こんなのじゃ……
巨人の一撃を受け、ルカリオは戦闘不能になる。
まずい、俺に迫ってくる。
「クロバット、催眠術だぁ!」
ボールから出てきて即座に催眠術を使用する。
そして、そのまま巨人は動きを止めた。
安心してる場合じゃない、催眠術だってすぐに解けてしまうかもしれない。さっさと立ち去ろう。
最後に巨人が追ってこないことを確認し、神殿の階段を登っていった。
ナナシ
ルカリオLv51、クロバットLv46、ロトムLv45、
ラグラージLv48、グレイシアLv45
----
クロバットと共に神殿を出ると、いつの間にか雪が降り注いでいる。
数日前の遭難を思い出す、さっさと立ち去ろう。
『ユキメノコ、吹雪だ!』
突然、猛烈な吹雪が襲い掛かってくる。
「お前は……出木杉!」
出木杉がこちらを睨んでくる。まさか――
「君の正体はのび太君達に聞かせてもらったよ、ナナシ君」
自分の名前を呼ばれ、体中の血液が冷たくなっていく。
これでもう全員に知られたか……
…こいつを突破するのは今の俺の手持ちでは困難、どうする。
「追撃だ、シャドーボール!」
黒い球体がクロバット目掛けて発射される。それを素早く回避するが
二発目が即座に飛んでくる。かなりの素早さだ、こうなったら……
「黒い霧だ、この辺一帯を包み隠せ!」
「甘い、吹雪で霧を吹き飛ばすんだ!」
黒い霧で辺りが包まれたのも束の間、その僅か数秒後には霧は吹き飛んでしまった。
「そう簡単に僕から逃げれるなんて思わないで欲しいね、シャドーボール!」
………出木杉は指示を出したものの。ユキメノコは動かない。
「どうしたんだユキメ――馬鹿な!?」
----
ユキメノコは戦闘不能になっている。だが出木杉の目に飛び込んできたのはそれだけではないはず。
間違いなく……出木杉の目には色違いの白いグレイシアが映っている。
「どうしてここにグレイシアが居るか?って顔してるな
そいつは当然俺のポケモンだ、そしてさっきの黒い霧は囮
あれを処理するために、お前が吹雪を使ってくるのは読んでいた
その隙にグレイシアを出し、めざめるパワーでユキメノコを仕留めたのさ
雪隠れの特性に加え、そのグレイシアの体色のせいで全く存在に気づかなかったんだな」
こう言うと、俺を乗せたクロバットは上昇を始める。
その光景を見て、出木杉は下唇を噛み締める。
「言っておくがこれを卑怯なんて言うなよ?これはポケモンバトルじゃない
それが理解できていなかった時点で、お前の負けは決まっていたんだよ。じゃあな」
グレイシアをボールに戻すと同時に、クロバットは加速した。
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――ギンガトバリビル
「ごくろうだったナナシ、これは受け取っておく」
このビルの最上階には、前回と同じく俺を含むギンガ団重要人物五人が集合していた。
「これで……全ての準備が整った。アグノム、ユクシー、エムリットから
赤い鎖を作り出させ、二つの宝玉も我が手に……私の野望もあと僅かで達成する」
外を見て笑みを浮かべる父さん。これでギンガ団の『野望』も達成されるのか。
『アカギ様大変です!』
突然、部屋の中に一人の団員が入ってくる。息が完全に上がっている。
『どうしたのだっ!?』
「このビルに数名のトレーナーが乗り込んで来ようとしています!
既に周辺の警備をしていた団員は全滅しました!!」
『『『なにぃ!?』』』
周辺に居た団員は五十人近く居たはずだ。それをたった数人で……
「くそっ……こんな時にぃ、全員で太刀打ちして時間稼ぎをしろ!」
「わ、分かりました!」
団員はそう言うと去っていく。父さんは苛立ちを隠せないようだ。
数人のトレーナー…まさか――
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「これより作戦変更をする、よく聞け!」
父さんの怒鳴り声に近い声で、三人の幹部と俺は前方に目をやる。
「マーズ、ジュピター、サターン、お前らはこれから私と一緒にテンガン山へ付いて来い」
この言葉を聞くと、三人の幹部は揃って返事をする。
「そしてナナシ、お前はここに残って侵入者の足止めをしろ」
侵入者の足止め!?そんなの一人で出来るわけが……
「分かっている、お前一人では止められないことぐらいはな。
まず制御室で待機し、侵入者を防御壁などで阻む
そして戦闘になり、万が一敗北した場合は、制御室からワープした部屋の先に
テンガン山へワープできる扉がある、そこからこちらに向かうんだ。
一度転送したら、制御室のワープパネルは作動しないようになっているから安心しろ」
咄嗟の判断でそこまで考えてある……流石は父さん、抜け目がまるで無い。
「分かったな、では付いて来い、マーズ、ジュピター、サターン!」
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――数十分後、ギンガトバリビル制御室
防御壁のほとんどは侵入者に突破された、残された団員もほぼ全滅。
このビルももう終わりだな……
周囲に目をやる、そこには緑色の液体が入ったカプセルに監禁されている三匹のポケモンが居る。
随分と虚ろな目をしている、思わず目を逸らしてしまう。
さっきから何度もこの行動を繰り返している……
……侵入者四人のうちの一人がこちらに向かってきている。
決戦は避けられないだろう。リュックの中に入っている五つのモンスターボールを手に取る。
侵入者……その正体はなんとなく掴めている。
だが来て欲しくない、もう――
……壁越しに足音が聞こえる。もう少しで勝負だ。
心臓の鼓動音は一段と高くなり、冷や汗が出てくる。
来るな――来るな――
その瞬間、爆発音と共に部屋の中に明かりが入ってくるのを感じる。
頑丈なはずの扉が破壊されたのか……
侵入者の顔が俺の視界に入ってくる。
侵入者の正体は――のび太。
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「ナナシ君……だよね?」
「………」
「その仮面外してよ……僕は君のこと知ってるんだから、仮面で顔を隠す意味なんて無いだろ?」
「………」
「……会話する気は無いんだね、じゃあはっきり言うよ」
『ナナシ君、僕は君をここで倒す!!』
暗い部屋にのび太の声が木霊する。
「……ほぉ、やれるものならやってみろ!」
俺はグレイシアのモンスターボールを宙に放り投げる。
「行け、グレイシア! 冷凍ビ―――」
「エテボース、猫騙しだ!」
突然現れたエテボースがグレイシアに攻撃を加える。
「続いてダブルアタック!」
猫騙しで怯んでいるグレイシアに、エテボースは尻尾で二回攻撃した。
二連続で攻撃を受け、グレイシアはゆっくりと崩れる。
「な……」
『僕は絶対に君に負けない……だから次のポケモンを出せ!』
ナナシ
ルカリオLv51、クロバットLv47、ロトムLv45、
ラグラージLv48、グレイシアLv45
のび太
エテボースLv43 残りの手持ち不明
出木杉
ユキメノコLv46 残りの手持ち不明
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倒れているグレイシアをボールに戻す。
「エテボースの特性は『テクニシャン』弱い技の威力が上がる特性…
さらにタイプ一致+シルクのスカーフで、威力は数倍にまで跳ね上がっているんだ!」
道具まで使いこなすようになっていたか……ここの警備を突破できただけはある。
「ならこいつでどうだ! 行け、ルカリオ!」
フィールドに姿を現す波動の戦士、その波動に空気が震える。
「君の最強のポケモン……でも負けないよ、ダブルアタック!」
エテボースが軽快なスピードで接近し、尻尾で攻撃を加える。
「無駄だ! 反撃しろ、波動弾!」
尻尾の攻撃を難なく耐え切ったルカリオは、次の瞬間波動弾を発射する。
相性の悪い攻撃を受けたエテボースが、その攻撃を耐えられるはずが無かった。
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「相性を考えるんだな、鋼タイプに対してノーマルタイプの攻撃は攻撃は効果いまひとつだ」
「分かってるさ、行け、ムウマージ!」
エテボースと入れ替わって出てきたのはムウマージ、不気味な笑みを掲げている。
「くくく、悪の波動だ!」
禍々しい波動がムウマージを襲う。その攻撃を受けムウマージは地に落ちてしまった。
「波動弾が効かないゴーストタイプを選んだつもりだったのだろうが、
油断したな、そのくらいは対策してあるんだよ」
「……君のルカリオを見てみなよ」
そう言われフィールドに目を移す、そこには魂の抜けたように倒れているルカリオが居た。
「ハッ……まさか」
「道連れを使わせてもらったよ。ごめんねムウマージ」
のび太はムウマージをボールに戻し、仕舞う。
こちらもルカリオをボールに戻し、次のボールを手に取った。
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「ロトム!」「アゲハント!」
宙に姿を現す二体のポケモン、これで仕切りなおしだ。
「身代わりだ」
ロトムの体力を少量削り、身代わりの人形が出てくる。
そして、アゲハントはその人形に痺れ粉を吹きかけ始めた。
「補助技を使うことぐらい読んでたさ、そのための身代わりだ」
「なら身代わりを破壊するまでだよ、サイコキネシス!」
念力波が身代わり人形を襲う。それを受け身代わり人形は消滅した。
だが破壊している隙に、電撃波がアゲハントを貫いた。
ロトムはまた身代わりを作る。だがその光景を見てのび太は笑みを浮かべる
「やっぱりそう来たね……だけどこの技は防げないよ、吹き飛ばしだ!」
アゲハントが突風を引き起こす。その突風に身代わりもろともロトムは吹き飛ばされた。
「身代わり状態でも一部の技は通用するんだよ、その一つが吹き飛ばしなんだ」
ロトムと入れ替わりにクロバットが出てくる。
そして、次のクロバットの攻撃でアゲハントは戦闘不能になった。
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「ありがとうアゲハント……行け、ライチュウ!」
ついに出てきた……おそらくこいつがのび太の切り札だ。
飛行タイプだから出したのだろうが、こちらの方が素早さは上だ。
一撃で倒せなくとも、次のポケモンに回せば倒せる。
予想通りクロバットが先に動き出し、ライチュウにクロスポイズンを命中させる。
そしてライチュウの10万ボルトで、クロバットは戦闘不能になった。
「ご苦労だった、行け、ロトム!」
HPがちょうど半分のロトムが姿を見せる。これでジ・エンドだ。
だが慎重に行こう……思わぬ反撃を受けるかもしれない。
「身代わりを作れロトム!」
この戦闘中見慣れた身代わり人形が出てくる。こいつを破壊するには最低でも二回攻撃を加えなければならない。
もう勝利は目の前だ。
「そう来るのは分かってたよ、アンコールだ!」
「なにっ!?」
ライチュウがロトムに拍手をする、これでしばらくは身代わり以外の技を出すことができない。
無意味な身代わりを繰り出している最中に、悪巧みを積むライチュウ。
次も同じ行為を続けるロトムの身代わりに、10万ボルトがヒットした。
当然これで身代わりは消滅する。
そして、次の瞬間には再びライチュウが強力な電撃をロトムに加え
ロトムは瀕死になってしまった。
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これで俺のポケモンは最後の一体、だがそいつはライチュウでは絶対に崩すことのできない壁。
「くくく……まさかこれほどまでに熱い勝負ができるとはな。だがこれで終わりだ!」
最後のモンスターボールを投げる。その中から出てくるのは――――ラグラージ。
水、地面タイプを合わせ持ち、電気タイプの攻撃を一切遮断する。
「くそっ……電光石火だ!」
素早く動きラグラージに体当たりを加えるが、まるでダメージが無い。
「地震だ、砕け散れぇぇえええ」
地震が発生し、ライチュウを呑み込む。
その威力は、もともとダメージを負っていたライチュウを瀕死にするには十分すぎる威力だった。
ライチュウをボールに戻すのび太。勝った……俺の勝ちだ。
「俺の勝ちだ、さっさと仲間と一緒に立ち去れ!」
「まだ僕は負けてないよ」
なんだと!?ライチュウは倒したし、他のポケモンだって……ハッ
ライチュウが切り札だとは一言も言っていない。俺が勝手に勘違いしただけだ。
「まだ僕のポケモンは一体残っているんだ、それはこいつだ!」
のび太が宙にボールを放り投げる。
そこから発生した光はどんどんと広がっていく、一体の生物のシルエットを描く。
それはやがてシルエットでは無く、現実のものとなる。
その正体は―――カイリュー
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「こいつが正真正銘僕の最後のポケモン、そして最強の切り札だ!」
なんて威圧感……まるで伝説のポケモンと対峙しているようだ。
だがこちらにも勝機はある、ラグラージは氷タイプの技『冷凍パンチ』を覚えている。
こいつを一発でもぶち込めば、カイリューであろうと一撃で倒せるだろう。
「ドラゴンダイブだ!」「滝登り!」
技と技の激突、まさに一触即発と言える。
やがてお互いが弾き飛ばされるが、すぐにカイリューは体勢を立て直し、ラグラージに突進する。
ドラゴンダイブが命中し、苦痛の表情を浮かべるラグラージだが、致命傷には至ってない。
「反撃だ、冷凍パンチ!」
この攻撃が当たれば――――しかしラグラージは動こうしない。
「さっきのドラゴンダイブで怯んだみたいだね、次の攻撃で僕の勝ちだ! ドラゴンダイブ!」
三度ドラゴンダイブの体勢をとるが、ラグラージの方では無く、のび太の方に突撃しようとしている。
「そ、そっちじゃないよカイリュー! 向こうだよ!」
のび太の指示に対応することが出来ず、結局カイリューはのび太の周辺の地面に突撃してしまった。
そうか、ドラゴンダイブはあまり命中率の高い技ではない。
だからのび太の方向に……
のび太はなんとか直撃は避けれたようだが、足を痛めてしまい、動けないようだ。
そしてカイリューも同じ、頭を強く打ってボンヤリしている。
「最後の最後に不運だったな、これで本当に終わりだ……ラグラージ、冷凍パンチ!」
右手に氷を宿し、動けないカイリューに突進するラグラージ。
これで今度こそ――――
この瞬間、頭の中にある静止画が浮かび上がる。それは血塗れになっているのび太。
……今、ラグラージで攻撃したら、カイリューが吹っ飛んで後ろののび太にまで――――
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ナナシ
ルカリオLv51、クロバットLv47、ロトムLv45、
ラグラージLv48、グレイシアLv45
のび太
カイリューLv55、ライチュウLv47、アゲハントLv41、
ムウマージLv42、エテボースLv43
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