「ギンガ その9」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

ギンガ その9」(2007/07/29 (日) 12:05:35) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

[[前へ>ギンガ その8]] 新月島の奥――そこに奴は居た。 漆黒の体、無機質な蒼い瞳……ダークライ。 もう邪魔をする人間も居ない、あとはこいつを捕獲することで任務は完了する。 リュックからマスターボールを取り出し、宙に放り投げる。 ダークライは、そのボールにゆっくりと収納された。 収納されたボールを拾うと、俺の手の中で消滅する。 そうか、俺の手持ちは六体居るから、七体目のポケモンは転送されるのか。 父さんはそこまで考えて、ファイヤーとフリーザーを預けたのか。 もうここに用は無い。俺の任務は完了したんだ、とっととトバリビルに―― 『待ちなさい!』 狭いこの島で、再び声が木霊する。 その声の主は……現シンオウリーグチャンピオン、シロナ。 「スネオ君にあんなことして……許さないわよ」 『黙れっ!!』 今の俺の手持ちなら……伝説のポケモン二体なら勝てる。 「ここでぶっ倒してやる、行け、ファイヤー!」 ---- 再びその場に姿を現すファイヤー。 「伝説のポケモン……アカギめ、こんなポケモンを……」 「さぁ! 早くポケモンを出せ!」 どんなポケモンが来ようと、今の俺なら撃破することができる。 「出来れば使いたくなかったけど……仕方が無いわね、行け――」 シロナの投げたボールから出てきたのは、雷の猛獣、ライコウ。 まずい……ライコウのタイプは電気、ファイヤーとの相性は悪い。 「く、くそ…ファイヤー、火炎放射だ!」 「ライコウ、雷!」 火炎放射を撃つ前に、ファイヤーが雷に貫かれる。 その攻撃を、ファイヤーは耐えることができなかった。 まずい……ファイヤーが一撃で…… 次に出せばいいのはどっちだ、ラグラージ?フリーザー? 相性的に考えたらラグラージだが、電気タイプの技を封じたところで別の技にやられるだけ。 それならフリーザーを出して、ライコウより早く攻撃すれば…… 伝説のポケモンだ……相性なんて覆せるはず。 「行け! フリーザー、冷凍ビ――」 出てきたばかりのフリーザーに、激しい閃光が走り轟音と共に沈む。 その光景を俺はただ見てることしかできなかった。 ---- 「あ……あ……い、行け! ラグラ――」 『ライコウ!』 シロナの掛け声で、ライコウは俺の元へと駆け込み、俺を押したおす。 「ついに自分のポケモンすら信用できなくなってしまったのね……」 な……なんのことだ? 「本当はこんなことしたくないけど……  あなたがギンガ団幹部である以上見逃すわけにはいかないわ」 鋭い爪と牙を俺に向ける。 やばい……この攻撃を食らったら瀕死じゃ済まない……死ぬ。 あぁ……もう駄目だな。 「………さようなら」 ライコウの爪が、俺目掛けて振り下ろされた。 ---- 『十万ボルトだ!』 突如、ライコウを強大な電撃が襲う。 その攻撃を、ライコウは紙一重で回避した。 「……まさか…」 起き上がった俺の目に飛び込んできたのは、伝説のポケモン、サンダー。 そしてその背に乗っているのは、ギンガ団総裁である父親、アカギ。 「そこまでだ。現シンオウリーグチャンピオン、シロナ」 「あら、久しぶりね。また私にやられたいのかしら?」 流し目で父さんをみつめるシロナ。それに対し薄ら笑いを浮かべる父さん。 「やられる? それはそっちの話だ。お前のポケモンは二、三体ほど失っているだろう  それに対しこちらは手持ちがフルに残ってる。この時点で貴様に勝ち目はないのだ」 そう指摘され、シロナは父さんをキッと睨む。指摘されたことは間違いでは無いようだ。 「次は……覚えていなさい」 シロナは悔しそうにこちらを睨む。 「帰るぞ、ナナシ……」 手を差し伸べられる。 俺はその手に掴み、ゆっくりと立ち上がった。 ---- 【資産家逮捕 ハクタイの森で強盗殺人】 ××日午前0時32分頃、ヨスガシティ付近に在住の、資産家、ウラヤマ容疑者(54)を 強盗殺人の疑いで緊急逮捕した。 調べによると、ウラヤマ容疑者は4年前、友人である資産家××××さん(当時50歳)と ××××さんの娘の××ちゃん(当時6歳)を殺害し、金目の物を奪った疑い。 ウラヤマ容疑者は前日の午後10時40分ごろ、犯罪組織ギンガ団に襲われ その時に容疑が暴かれる。 その後シンオウリーグチャンピオンによってギンガ団は撃退され、ウラヤマ容疑者は連行された。 ウラヤマ容疑者はこの事実を認め、死体の遺棄場所を供述し、 供述通りその場所から二人の死体が発見された。 警察はこの事実を踏まえ、ウラヤマ容疑者にさらなる事実を要求している。 ---- ………これが五日前の新聞の記事、あれからもうこんなに経ったのだ。 殺人事件を起こしたウラヤマ氏は記事どおり逮捕され、今も取調べを受けている。 殺害された二人の死体は、ハクタイの森の洋館の地中から発見されたそうだ。 執事も多少の取調べは受けたみたいだが、とくに罪には問われなかったらしい。 この事件の影響は大きく、ウラヤマ氏が経営していたポケモン触れ合い広場は当然閉鎖。 他にもいくつもの団体や組織に影響があったようだ。 この情報は、全てギンガ団の諜報部員が教えてくれた。 ……スネオは無事だろうか? 諜報部員に尋ねてみたが、調査することが難しいらしい。 ポケモンリーグが隠蔽工作をしており、下手したら命を落としかねないそうだ。 俺はあの後、二体の鳥ポケモンを回収され、一言こう言われた。 『力に溺れるな』 力に溺れる……なんとなく意味は分かる気がする。 ちょうどあの時、フリーザーかラグラージ、どちらを出すか悩んだ時 伝説というだけでフリーザーを出し、結果はあれだ。 なんというか……酷い無気力感に襲われた。 ---- いつまでも踏みとどまっていてはいけない。そう思い、俺はウラヤマさんの屋敷へと足を運んだ。 屋敷内は立ち入り禁止となっており、外から見るくらいしか出来ないが…… 数日前までは人がたくさん居たようだが、今は全く居ない。 たくさん居たメイドさんも、執事のお爺さんも、主人のウラヤマ氏も姿は無い。 こんなところを訪れてもしょうがない。そのはずだった。 俺が帰ろう、そう思ったときにポケモンの鳴き声が聞こえた。 鳴き声の聞こえた茂みを探してみると、白い体毛のイーブイが居た。 こいつは、ウラヤマさんの自慢のペットだったイーブイだ。 飼い主が逮捕されて、もう世話をする人間が居ないのか…… 「俺と一緒に来るか?」 手を伸ばす俺。 その手に前足を伸ばし、白いイーブイは高い声で鳴いた。 ---- その後、なんとなく森の洋館に訪れた。 人は居ると思ったのだが、ウラヤマ氏の屋敷周辺と同じく人は居ない。 呪い…が怖いのか? ……もうここには呪いなんて存在しない。 開放されたんだ、ここの主人も、ウラヤマさんも…… 俺はリュックの中から、かつてナタネに貰った羊羹二つと、紙皿を取り出す。 それを屋敷の門の前に備え、黙祷した。 ……黙祷し終わり、ゆっくりと立ち上がる。 そして、そのまま洋館に背を向けた。 これで…全て終わったんだ――― ナナシ ルカリオLv47、クロバットLv45、ロトムLv44、 ラグラージLv46、イーブイLv40 ---- 『ハ…ハ……ハクションッ!』 俺は次のジムのある町、キッサキシティに行くため、217番道路を歩いている。 だがこの道路……足元にも雪が絡み付いて、動くのにかなり労力を使う。 ったく……なんでこんな不便なところにジムがあるんだ。 突然寒気が俺を襲う。悪寒と言った方が適切だろうか? ……嫌な予感がするな。もしかしたらあいつらに――― 「やぁ、久しぶりだね」 まさか、とは思ったがタイミング悪すぎだろ…… 恐る恐る振り返ると、優等生面の少年、出木杉の姿があった。 789 名前:ギンガ ◆pXSMZkovvI [sage] 投稿日:2007/07/23(月) 23:27:26 ID:??? 「で、出木杉!?」 まずい……既に俺がギンガ団員だというのは周知のこと。 こんなところで仲間を呼ばれたら…… 「そんなに驚いて……なにかあったのかい?」 ……まさかとは思うが、ひょっとして知らないのか? 「いや…突然後ろから声かけられたからさ……」 大丈夫だ…誤魔化せてるはずだ。 「お前はもうグレイシャバッジを手に入れたのか?」 「まだなんだ…これから僕も行くところだよ  それよりナナシ君、ジム戦の前に勝負をしてみないかい?」 勝負の申し込み、環境が悪かろうと売られた喧嘩は買うしかない。 790 名前:ギンガ ◆pXSMZkovvI [sage] 投稿日:2007/07/23(月) 23:29:01 ID:??? 俺の先鋒はルカリオ、相手はエレブーだ。 「炎のパンチだ、エレブー!」 拳に炎を宿し、ルカリオ目掛け突進してくる。 「電光石火で回避しろ!」 単調な攻撃は簡単に回避でk…… エレブーの右手はルカリオを捕らえ、炎が襲った。 しまった。足場が雪のせいで、素早く動くことができないのか…… だが相手も同じ条件だ。ここは単調な攻撃でも通る。 この後、ルカリオとエレブーの激しい技の応酬が続いたが 最初に受けた炎のパンチのダメージが大きく、先にルカリオが力尽きた。 俺は新たにラグラージを出し、冷凍パンチでエレブーを沈めた。 791 名前:ギンガ ◆pXSMZkovvI [sage] 投稿日:2007/07/23(月) 23:30:02 ID:??? 「やるね……ナナシ君」 「そっちもな。さぁ次のポケモンを出せ」 余裕を見せてはいるものの、切り札のルカリオを失った今、かなり不利な状況に立たされている。 相手のエレブーは、おそらく切り札でも何でも無いはず。 「行け、シャワーズ!」 イーブイの進化系シャワーズ、おそらく彼の切り札だ。 「シャワーズ、波乗りだ!」 波如く大量の水がラグラージに襲い掛かる。 「れ、冷凍パンチだ!」 波に拳を当て、凍結させる。 しかし、全てを凍結させることはできずに波はラグラージを呑みこんだ。 『ハ…ハ……ハクションッッ!!』 波はラグラージだけではなく、俺にも命中し 服を濡らされてしまった。 「ご、ごめん、大丈夫かい?」 「なんとかな……」 こんな寒い中で服を濡らすはめになるとは…… 「くそっ……瓦割りだ!」 腕を振り上げ、シャワーズに襲い掛かる。 しかし、その動きはどこかぎこちない。 その理由は足場の悪さ。 体重の重いラグラージは、素早く動き回ることはできないのだ。 792 名前:ギンガ ◆pXSMZkovvI [sage] 投稿日:2007/07/23(月) 23:31:14 ID:??? 「シャワーズ、オーロラビームだ!」 七色の光線がラグラージを貫く。 その光線でラグラージは、白い大地に倒れこんだ。 「僕のシャワーズを甘く見ないでもらいたいね」 このシャワーズ……強い。 勝負している環境も作用しておるが、シャワーズ自身もかなり育てこまれている。 こうなったら…… 「行け! クロバット」 翼を羽ばたかせ、空中を駆け巡るクロバット。 こいつなら地面の影響を受けることは無い。その素早さを存分に生かせる。 「クロスポイズン!」 クロバットは旋回しながら、シャワーズ目掛け突進する。 「オーロラビームだ!」 シャワーズは上を向き、オーロラビームを放とうとする。 しかしその攻撃は、突然中断された。 そして、隙の生まれたシャワーズに、クロスポイズンが打ち込まれた。 この攻撃と今まで蓄積されたダメージで、シャワーズは戦闘不能となった。 「どうしたんだシャワーズ!?」 「上を見れば分かるさ」 「なに……まぶしっ……そうか」 シャワーズは上を向いたとき、陽光が目に入り、攻撃を中断してしまったのだ。 793 名前:ギンガ ◆pXSMZkovvI [sage] 投稿日:2007/07/23(月) 23:31:58 ID:??? 段々と風が強くなっていく、濡れた服のせいで寒い。 「シャワーズを倒されるとはね……でもまだだ! 行けムクホーク!」 鋭い眼光をクロバットに向ける。一瞬俺まで怯えてしまった。 「捨て身タックルだ!」 いきなりの奇襲、風を切裂く音が俺の耳にも入ってくる。 「応戦しろ! ブレイブバードだ」 クロバットも羽を折りたたみ、ムクホークに突撃する。 お互いがぶつかり合い、衝撃波が飛び散る。 数秒ぶつかり合い、やがてクロバットが押し負けた。 なんて攻撃力なんだ…… 「まだだ! 応戦しろクロバット」 何度もぶつかり合うムクホークとクロバット。 しかし、負けるのはクロバットだ。 いくらムクホークの攻撃力が高いからって、この結果はおかしすぎる。 他の要素が……しまった。 ムクホークの特性『威嚇』を忘れてた。 これが原因で、クロバットの攻撃力が下がっていたのか。 「一旦離れろ! 今の状態じゃ――」 「もう遅いよ、とどめの電光石火!」 流星のようなスピードで、ムクホークはクロバットに一撃を加える。 この攻撃でクロバットは地に落ちた。 794 名前:ギンガ ◆pXSMZkovvI [sage] 投稿日:2007/07/23(月) 23:32:42 ID:??? 「くそ……行け、ロト……うわっ」 吹雪がフィールドを襲う。 『大丈夫かーい!?』 出木杉の声が聞こえる。そっちは大丈夫なようだ。 「もう勝負は無理みたいだね……とりあえず引き分けという形でいいよね?」 こっちが三体失っていて、相手は二体失っている。 はっきり言えば負けているのは俺……だが相手がそう言っているのならばいいか。 「分かった、またいつか勝負できる機会があればいいな」 「そうだね……じゃあ!」 この場所からどうやって離脱するんだ? そう考えていると、ムクホークが出木杉を乗せてキッサキ方面に飛び立っていった。 よし、俺もクロバットに乗って…… クロバットは、さっきの戦闘で瀕死になっていたんだ…… ここから……どうやってキッサキシティにつけばいいんだ? ナナシ ルカリオLv47、クロバットLv45、ロトムLv44、 ラグラージLv46、イーブイLv40 出木杉 シャワーズLv52、ムクホークLv47、エレブーLv46、残りの手持ち不明 [[次へ>ギンガ その10]] ----
[[前へ>ギンガ その8]] 新月島の奥――そこに奴は居た。 漆黒の体、無機質な蒼い瞳……ダークライ。 もう邪魔をする人間も居ない、あとはこいつを捕獲することで任務は完了する。 リュックからマスターボールを取り出し、宙に放り投げる。 ダークライは、そのボールにゆっくりと収納された。 収納されたボールを拾うと、俺の手の中で消滅する。 そうか、俺の手持ちは六体居るから、七体目のポケモンは転送されるのか。 父さんはそこまで考えて、ファイヤーとフリーザーを預けたのか。 もうここに用は無い。俺の任務は完了したんだ、とっととトバリビルに―― 『待ちなさい!』 狭いこの島で、再び声が木霊する。 その声の主は……現シンオウリーグチャンピオン、シロナ。 「スネオ君にあんなことして……許さないわよ」 『黙れっ!!』 今の俺の手持ちなら……伝説のポケモン二体なら勝てる。 「ここでぶっ倒してやる、行け、ファイヤー!」 ---- 再びその場に姿を現すファイヤー。 「伝説のポケモン……アカギめ、こんなポケモンを……」 「さぁ! 早くポケモンを出せ!」 どんなポケモンが来ようと、今の俺なら撃破することができる。 「出来れば使いたくなかったけど……仕方が無いわね、行け――」 シロナの投げたボールから出てきたのは、雷の猛獣、ライコウ。 まずい……ライコウのタイプは電気、ファイヤーとの相性は悪い。 「く、くそ…ファイヤー、火炎放射だ!」 「ライコウ、雷!」 火炎放射を撃つ前に、ファイヤーが雷に貫かれる。 その攻撃を、ファイヤーは耐えることができなかった。 まずい……ファイヤーが一撃で…… 次に出せばいいのはどっちだ、ラグラージ?フリーザー? 相性的に考えたらラグラージだが、電気タイプの技を封じたところで別の技にやられるだけ。 それならフリーザーを出して、ライコウより早く攻撃すれば…… 伝説のポケモンだ……相性なんて覆せるはず。 「行け! フリーザー、冷凍ビ――」 出てきたばかりのフリーザーに、激しい閃光が走り轟音と共に沈む。 その光景を俺はただ見てることしかできなかった。 ---- 「あ……あ……い、行け! ラグラ――」 『ライコウ!』 シロナの掛け声で、ライコウは俺の元へと駆け込み、俺を押したおす。 「ついに自分のポケモンすら信用できなくなってしまったのね……」 な……なんのことだ? 「本当はこんなことしたくないけど……  あなたがギンガ団幹部である以上見逃すわけにはいかないわ」 鋭い爪と牙を俺に向ける。 やばい……この攻撃を食らったら瀕死じゃ済まない……死ぬ。 あぁ……もう駄目だな。 「………さようなら」 ライコウの爪が、俺目掛けて振り下ろされた。 ---- 『十万ボルトだ!』 突如、ライコウを強大な電撃が襲う。 その攻撃を、ライコウは紙一重で回避した。 「……まさか…」 起き上がった俺の目に飛び込んできたのは、伝説のポケモン、サンダー。 そしてその背に乗っているのは、ギンガ団総裁である父親、アカギ。 「そこまでだ。現シンオウリーグチャンピオン、シロナ」 「あら、久しぶりね。また私にやられたいのかしら?」 流し目で父さんをみつめるシロナ。それに対し薄ら笑いを浮かべる父さん。 「やられる? それはそっちの話だ。お前のポケモンは二、三体ほど失っているだろう  それに対しこちらは手持ちがフルに残ってる。この時点で貴様に勝ち目はないのだ」 そう指摘され、シロナは父さんをキッと睨む。指摘されたことは間違いでは無いようだ。 「次は……覚えていなさい」 シロナは悔しそうにこちらを睨む。 「帰るぞ、ナナシ……」 手を差し伸べられる。 俺はその手に掴み、ゆっくりと立ち上がった。 ---- 【資産家逮捕 ハクタイの森で強盗殺人】 ××日午前0時32分頃、ヨスガシティ付近に在住の、資産家、ウラヤマ容疑者(54)を 強盗殺人の疑いで緊急逮捕した。 調べによると、ウラヤマ容疑者は4年前、友人である資産家××××さん(当時50歳)と ××××さんの娘の××ちゃん(当時6歳)を殺害し、金目の物を奪った疑い。 ウラヤマ容疑者は前日の午後10時40分ごろ、犯罪組織ギンガ団に襲われ その時に容疑が暴かれる。 その後シンオウリーグチャンピオンによってギンガ団は撃退され、ウラヤマ容疑者は連行された。 ウラヤマ容疑者はこの事実を認め、死体の遺棄場所を供述し、 供述通りその場所から二人の死体が発見された。 警察はこの事実を踏まえ、ウラヤマ容疑者にさらなる事実を要求している。 ---- ………これが五日前の新聞の記事、あれからもうこんなに経ったのだ。 殺人事件を起こしたウラヤマ氏は記事どおり逮捕され、今も取調べを受けている。 殺害された二人の死体は、ハクタイの森の洋館の地中から発見されたそうだ。 執事も多少の取調べは受けたみたいだが、とくに罪には問われなかったらしい。 この事件の影響は大きく、ウラヤマ氏が経営していたポケモン触れ合い広場は当然閉鎖。 他にもいくつもの団体や組織に影響があったようだ。 この情報は、全てギンガ団の諜報部員が教えてくれた。 ……スネオは無事だろうか? 諜報部員に尋ねてみたが、調査することが難しいらしい。 ポケモンリーグが隠蔽工作をしており、下手したら命を落としかねないそうだ。 俺はあの後、二体の鳥ポケモンを回収され、一言こう言われた。 『力に溺れるな』 力に溺れる……なんとなく意味は分かる気がする。 ちょうどあの時、フリーザーかラグラージ、どちらを出すか悩んだ時 伝説というだけでフリーザーを出し、結果はあれだ。 なんというか……酷い無気力感に襲われた。 ---- いつまでも踏みとどまっていてはいけない。そう思い、俺はウラヤマさんの屋敷へと足を運んだ。 屋敷内は立ち入り禁止となっており、外から見るくらいしか出来ないが…… 数日前までは人がたくさん居たようだが、今は全く居ない。 たくさん居たメイドさんも、執事のお爺さんも、主人のウラヤマ氏も姿は無い。 こんなところを訪れてもしょうがない。そのはずだった。 俺が帰ろう、そう思ったときにポケモンの鳴き声が聞こえた。 鳴き声の聞こえた茂みを探してみると、白い体毛のイーブイが居た。 こいつは、ウラヤマさんの自慢のペットだったイーブイだ。 飼い主が逮捕されて、もう世話をする人間が居ないのか…… 「俺と一緒に来るか?」 手を伸ばす俺。 その手に前足を伸ばし、白いイーブイは高い声で鳴いた。 ---- その後、なんとなく森の洋館に訪れた。 人は居ると思ったのだが、ウラヤマ氏の屋敷周辺と同じく人は居ない。 呪い…が怖いのか? ……もうここには呪いなんて存在しない。 開放されたんだ、ここの主人も、ウラヤマさんも…… 俺はリュックの中から、かつてナタネに貰った羊羹二つと、紙皿を取り出す。 それを屋敷の門の前に備え、黙祷した。 ……黙祷し終わり、ゆっくりと立ち上がる。 そして、そのまま洋館に背を向けた。 これで…全て終わったんだ――― ナナシ ルカリオLv47、クロバットLv45、ロトムLv44、 ラグラージLv46、イーブイLv40 ---- 『ハ…ハ……ハクションッ!』 俺は次のジムのある町、キッサキシティに行くため、217番道路を歩いている。 だがこの道路……足元にも雪が絡み付いて、動くのにかなり労力を使う。 ったく……なんでこんな不便なところにジムがあるんだ。 突然寒気が俺を襲う。悪寒と言った方が適切だろうか? ……嫌な予感がするな。もしかしたらあいつらに――― 「やぁ、久しぶりだね」 まさか、とは思ったがタイミング悪すぎだろ…… 恐る恐る振り返ると、優等生面の少年、出木杉の姿があった。 ---- 「で、出木杉!?」 まずい……既に俺がギンガ団員だというのは周知のこと。 こんなところで仲間を呼ばれたら…… 「そんなに驚いて……なにかあったのかい?」 ……まさかとは思うが、ひょっとして知らないのか? 「いや…突然後ろから声かけられたからさ……」 大丈夫だ…誤魔化せてるはずだ。 「お前はもうグレイシャバッジを手に入れたのか?」 「まだなんだ…これから僕も行くところだよ  それよりナナシ君、ジム戦の前に勝負をしてみないかい?」 勝負の申し込み、環境が悪かろうと売られた喧嘩は買うしかない。 ---- 俺の先鋒はルカリオ、相手はエレブーだ。 「炎のパンチだ、エレブー!」 拳に炎を宿し、ルカリオ目掛け突進してくる。 「電光石火で回避しろ!」 単調な攻撃は簡単に回避でk…… エレブーの右手はルカリオを捕らえ、炎が襲った。 しまった。足場が雪のせいで、素早く動くことができないのか…… だが相手も同じ条件だ。ここは単調な攻撃でも通る。 この後、ルカリオとエレブーの激しい技の応酬が続いたが 最初に受けた炎のパンチのダメージが大きく、先にルカリオが力尽きた。 俺は新たにラグラージを出し、冷凍パンチでエレブーを沈めた。 ---- 「やるね……ナナシ君」 「そっちもな。さぁ次のポケモンを出せ」 余裕を見せてはいるものの、切り札のルカリオを失った今、かなり不利な状況に立たされている。 相手のエレブーは、おそらく切り札でも何でも無いはず。 「行け、シャワーズ!」 イーブイの進化系シャワーズ、おそらく彼の切り札だ。 「シャワーズ、波乗りだ!」 波如く大量の水がラグラージに襲い掛かる。 「れ、冷凍パンチだ!」 波に拳を当て、凍結させる。 しかし、全てを凍結させることはできずに波はラグラージを呑みこんだ。 『ハ…ハ……ハクションッッ!!』 波はラグラージだけではなく、俺にも命中し 服を濡らされてしまった。 「ご、ごめん、大丈夫かい?」 「なんとかな……」 こんな寒い中で服を濡らすはめになるとは…… 「くそっ……瓦割りだ!」 腕を振り上げ、シャワーズに襲い掛かる。 しかし、その動きはどこかぎこちない。 その理由は足場の悪さ。 体重の重いラグラージは、素早く動き回ることはできないのだ。 ---- 「シャワーズ、オーロラビームだ!」 七色の光線がラグラージを貫く。 その光線でラグラージは、白い大地に倒れこんだ。 「僕のシャワーズを甘く見ないでもらいたいね」 このシャワーズ……強い。 勝負している環境も作用しておるが、シャワーズ自身もかなり育てこまれている。 こうなったら…… 「行け! クロバット」 翼を羽ばたかせ、空中を駆け巡るクロバット。 こいつなら地面の影響を受けることは無い。その素早さを存分に生かせる。 「クロスポイズン!」 クロバットは旋回しながら、シャワーズ目掛け突進する。 「オーロラビームだ!」 シャワーズは上を向き、オーロラビームを放とうとする。 しかしその攻撃は、突然中断された。 そして、隙の生まれたシャワーズに、クロスポイズンが打ち込まれた。 この攻撃と今まで蓄積されたダメージで、シャワーズは戦闘不能となった。 「どうしたんだシャワーズ!?」 「上を見れば分かるさ」 「なに……まぶしっ……そうか」 シャワーズは上を向いたとき、陽光が目に入り、攻撃を中断してしまったのだ。 ---- 段々と風が強くなっていく、濡れた服のせいで寒い。 「シャワーズを倒されるとはね……でもまだだ! 行けムクホーク!」 鋭い眼光をクロバットに向ける。一瞬俺まで怯えてしまった。 「捨て身タックルだ!」 いきなりの奇襲、風を切裂く音が俺の耳にも入ってくる。 「応戦しろ! ブレイブバードだ」 クロバットも羽を折りたたみ、ムクホークに突撃する。 お互いがぶつかり合い、衝撃波が飛び散る。 数秒ぶつかり合い、やがてクロバットが押し負けた。 なんて攻撃力なんだ…… 「まだだ! 応戦しろクロバット」 何度もぶつかり合うムクホークとクロバット。 しかし、負けるのはクロバットだ。 いくらムクホークの攻撃力が高いからって、この結果はおかしすぎる。 他の要素が……しまった。 ムクホークの特性『威嚇』を忘れてた。 これが原因で、クロバットの攻撃力が下がっていたのか。 「一旦離れろ! 今の状態じゃ――」 「もう遅いよ、とどめの電光石火!」 流星のようなスピードで、ムクホークはクロバットに一撃を加える。 この攻撃でクロバットは地に落ちた。 ---- 「くそ……行け、ロト……うわっ」 吹雪がフィールドを襲う。 『大丈夫かーい!?』 出木杉の声が聞こえる。そっちは大丈夫なようだ。 「もう勝負は無理みたいだね……とりあえず引き分けという形でいいよね?」 こっちが三体失っていて、相手は二体失っている。 はっきり言えば負けているのは俺……だが相手がそう言っているのならばいいか。 「分かった、またいつか勝負できる機会があればいいな」 「そうだね……じゃあ!」 この場所からどうやって離脱するんだ? そう考えていると、ムクホークが出木杉を乗せてキッサキ方面に飛び立っていった。 よし、俺もクロバットに乗って…… クロバットは、さっきの戦闘で瀕死になっていたんだ…… ここから……どうやってキッサキシティにつけばいいんだ? ナナシ ルカリオLv47、クロバットLv45、ロトムLv44、 ラグラージLv46、イーブイLv40 出木杉 シャワーズLv52、ムクホークLv47、エレブーLv46、残りの手持ち不明 [[次へ>ギンガ その10]] ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
記事メニュー
目安箱バナー