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[[前へ>セカンド その7]] 「……スネ夫さん?」 僕の目の前の静香ちゃんが口を開く。 僕は無言でボールを放ち、ゴウカザルを出した。 「さあ、静香ちゃんも早くポケモンを出しなよ。 じゃないと……」 ゴウカザルに合図を送る。 すると、ゴウカザルが静香ちゃんの近くに火を吹いた。 「きゃあっ!」 静香ちゃんが叫ぶと共に、エンペルトが戦闘体勢をとる。 「やっぱりギンガ団に……頼んだわよ、エンペルト!」 エンペルトが静香ちゃんの前に立つ。 その隙を僕は見逃さなかった。 「一気に決める!ゴウカザル、インファイトだあッ!」 エンペルトを標的に、無数の拳を繰り出すゴウカザル。 「耐えて……エンペルト……」 静香ちゃんの願いが通じたのか、ボロボロになっても尚エンペルトは立っていた。 そして、反撃の波乗りがゴウカザルを一撃でダウンさせる。 ---- 「ビークイン、トドメだ!」 体力が残り僅かのエンペルトが沈む。 これで僕も静香ちゃんも失っているポケモンは一体。 だけど、いかんせん分が悪い。 データによると静香ちゃんのポケモンは四匹。 対するボクは三匹しか居ない。 「こうなったら……アレしかないか」 ビークインを戻し、クロバットを出す。 今回の僕の任務は静香ちゃんを捕える事。 わざわざバトルに勝つ必要は無い。 出来ればやりたくなかったが、恐らくやる他無いだろう。 僕は前方の静香ちゃんを見据え、クロバットに指示を出した。 「クロバット、エアカッター……」 ---- 「きゃああああああああああっ!」 耳を劈くような静香ちゃんの悲鳴が、雪原中に響き渡る。 クロバットの放った空気の刃は静香ちゃんの体の各所を掠った。 赤い血が、真っ白な雪原の上に流れ落ちていく。 そして、それを見た静香ちゃんは力なくその場に崩れ落ちた。 静香ちゃんが完全に気絶した事を確認し、ゆっくりと歩み寄る僕。 「さて……後はアジトまで運ぶだけ」 口ではそう言ったものの、当然本意でやる事じゃない。 静香ちゃんの顔を見ると、どうしても躊躇ってしまう。 今までの静香ちゃんとの思い出が、頭の中に現れては消えていく。 「くそっ……!僕は……僕は……!」 右手を震わせながら、静香ちゃんに手をかけようとする僕。 僕の体の中で、この右手だけが僕の物じゃないような気さえしてしまう。 「やるしか無いんだ。ゴメン、静香ちゃん……」 僕は意を決して静香ちゃんを担ぎ、ゆっくりと雪原の上を歩いていく。 血で染まった雪を握り締めながら―― ---- #静香サイド 「……ここは……?」 私は目を覚ました。 何も見えない……恐らく暗い洞窟か何かかしら。 少しふらふらする頭で必死に記憶の糸を手繰り寄せる。 確かスネ夫さんにバトルを挑まれて、クロバットが私に攻撃を…… それでその後、私は気絶しちゃって…… 見ると、手と足に幾つかの傷が残っていた。 今確かなのは、スネ夫さんがギンガ団に加担した事。 そして、私を捕らえようとした事……。 ……まさか、スネ夫さんがここまで運んできてくれたのかしら。 そうなると、まだ良心は残っているという事になる。 「とにかく……皆にこの事を伝えないと」 やっと目が慣れ、少し辺りが見えるようになってきた。 外は依然、かなり吹雪いている。 この吹雪ならそう遠くまで運ばれてない筈。 私は暗い洞窟を抜け、キッサキシティに向かって歩き始めた。 皆の手持ち 静香  エンペルトLv47、ミミロップLv43、ロズレイドLv44、パチリスLv40 スネ夫 ゴウカザルLv44、クロバットLv43、ビークインLv43 ---- #スネ夫サイド 「……何をやっている!」 僕の目の前のアカギが怒声を飛ばす。 理由は言わずもがな、僕が任務を失敗したからだ。 憤怒のあまり、アカギは傍にあったデスクを叩きつける。 ボクは静香ちゃんを気絶させた後、確かに静香ちゃんを担いだ。 でも、中々次の一歩が踏み出せない。 友達を捕えるなんて……到底出来る筈が無かった。 そして決心した僕は、結局近くの洞窟に置いていったのだった。 「すいません、ボス……」 心にも無い事だが、こういうのはもう慣れっこだ。 僕の言葉を聞いたアカギは無言で部屋を去っていった。 「はぁ……」 空腹と落胆のせいか溜息しか出ない。 そう言えば、今日は朝から何も食べていなかった。 さっきからしきりに腹がグーグー鳴っているのもそのせいか。 「……もうすぐ夕食時だな」 そう呟いて部屋を後にするボク。 向かうは食堂だ。 ---- 「いやー、美味しいねぇ」 食堂で食べたギンガすき焼きは、僕の胃袋を満たすのに十分過ぎる程だった。 やはり巨大な組織だけあって、食材が高級なのだろうか。 ひとまず僕はうるさい腹を黙らせる事が出来たのである。 ……時計を見るともう九時だ。 「そろそろ風呂かな」 食堂を後にして、風呂場へ向かう。 風呂場は思ったより綺麗で、不潔な感じはこれっぽっちも無かった。 このアジトの設備には度々感心させられる。 「疲れが取れるなぁー……」 暖かい湯に浸かっていた僕は誰とも無しに呟いた。 足の重みが一気に取れ、体全体が軽くなったような気がする。 「……そういえば」 すっかり忘れていたが、のび太達は今キッサキシティに居る。 ……という事は、シナリオ通りに進めば次の目的地はここだ。 近いうちにここ……ギンガ団アジトを襲撃してくる筈。 その時にアイツ等の内の誰かと接触するのは明白だ。 「決戦は近いな……」 天井を見上げ、ポツリと呟く。 ---- それから僕は暫く考え込んでいた。 (アイツ等が襲撃してくるなら、恐らくこのアジトは潰れる。 何せあっちは四人。それもジムバッジを七つ集めたトレーナーだ。 対してこっちはボクとアカギの二人だけ。 他の幹部と出木杉は先にテンガン山に向かうと言っていた。 ……つまり、ボクとアカギは時間稼ぎ。 ギンガ団の総裁たるものが時間稼ぎをするのは矛盾しているような気もするけど。 もしかしたら、出木杉達は予め準備をしておくのかな……?) 頭の中を巡り巡る思考。 「……まぁ、明日になれば分かる事だよね」 いい加減蒸せてきた。 僕は熱気と化してしまった快楽から脱するべく、軽くなった足を上げる。 そして体を拭き、服を着て寝室に向かおうとする……。 その時だった。 ---- 「あら。初任務、失敗したんだってね」 寝室に向かう僕の前に現れたのはジュピター。 僕は望ましくない来客者に舌打ちし、眉を顰めた。 「……何の用だ」 僕が尋ねると、ジュピターは嘲笑混じりに言った。 「特に用は無いわ。任務を失敗したあなたがどんな顔をしているのかな、ってね」 これにはカチンときた。 コイツ……まさか僕をからかいに来たのか? 「……用が無いなら消えてくれ。僕はもう寝たいんだ」 そう言ってジュピターの横を通りすぎる僕。 「……待って!」 不意に、後ろから呼びかけられる。 振り返った僕の眼前には、決意の表情でモンスターボールを突きつけるジュピターの姿があった。 「バトル……しましょ」 「え……?」 唐突すぎるし、生憎もう眠い。 とてもやる気にはなれなかった。 「いや、僕はもう寝……」 僕の言葉は途中で止まってしまった。 目の前のジュピターが悲しげな顔をして僕を見つめていたからだ。 ---- 「ど、どうしたんだよ……」 急に表情を変えたジュピターを見て焦るボク。 そんな僕を見つめ、ジュピターは話した。 「……近々、ボスはテンガン山で伝説のポケモンを復活させるわ。 それがギンガ団の最終目的であり、私もそれを望んでいる。 でも……その目的を達成すればギンガ団は解散するの。 仲間内の繋がりも、全て無くなっちゃう。 ……負けっぱなしで終わるのは嫌なのよね、私」 ジュピターの表情は真剣そのものだった。 そう言えば、テンガン山のイベントが終わればギンガ団は居なくなるんだった。 ゲーム通りなら、主人公に敗北して終わってしまう。 そう考えると、何だか切ないな……。 「……いいよ、バトル」 そう言って、僕はいつに無く早足で歩き出す。 後ろにジュピターを連れて。 ---- 外に出た瞬間、心地良い夜風が僕の体を包んだ。 僕とジュピターはそれぞれの位置につき、対峙する。 「……さて、やりましょうか。 使用ポケモンは三体でいいかしら?」 「ああ、いいよ」 僕の返事を聞くと、ジュピターがモンスターボールを取り出し、投げる。 それがバトル開始の合図となった。 「行きなさい、スカタンク!」 「いけ、ドータクン!」 任務でアジトに戻る道中に捕まえたポケモン、ドータクンを出す。 それを見てスカタンクが火炎放射を放つが、ドータクンの耐久力の高さは折り紙つき。 当然の如く耐え、催眠術で相手を眠らせる事に成功した。 「嫌らしい戦術ね……戻れスカタンク!」 スカタンクがボールに回収され、ジュピターの次のポケモンが現れる。 ゴーストポケモン、ムウマージだ。 「チッ……」 好ましくない状況に苛立つ僕。 スカタンクに対して放った地震攻撃は、浮遊を持つムウマージには効果が無かった。 ---- その後結局催眠術は外れてしまい、合計二回のシャドーボールでドータクンは倒れた。 「仕方ないか……いけ、ドククラゲ!」 僕が繰り出したのはドククラゲ。 これまた今日捕まえた僕の新戦力だ。 「サイコキネシスをお見舞いしなさい!」 ドククラゲに向かってサイコキネシスが放たれる。 「甘いよ、それぐらいじゃドククラゲは倒れない」 そう言い、僕はドククラゲに指示を出す。 次の瞬間には、ドククラゲの攻撃によってムウマージは倒れていた。 「えっ……?」 その光景に唖然とするジュピター。 僕は含み笑いをしながら言った。 「ミラーコート。特殊攻撃を倍のダメージで返す事が出来るのさ」 その言葉を聞き、ジュピターはムッとなってムウマージを戻す。 だが、次のポケモンを出す様子は無い。 「私の最後のポケモン……ユキメノコを出しても到底勝ち目は無いわ。 どうせあなたの最後のポケモンはゴウカザルでしょ?」 その問いに頷く僕。 「やっぱり今の私じゃ勝てなかったのね……良く分かったわ。 もう寝ましょう。明日の事もあるし」 そう言い終えると、ジュピターはアジトの中へと入っていく。 複雑な心境になった僕は、それを呆然と見つめていた。 皆の手持ち スネ夫 ゴウカザルLv47、クロバットLv46、ビークインLv44、ドククラゲLv42、ドータクンLv40 ----
[[前へ>セカンド その7]] 「……スネ夫さん?」 僕の目の前の静香ちゃんが口を開く。 僕は無言でボールを放ち、ゴウカザルを出した。 「さあ、静香ちゃんも早くポケモンを出しなよ。 じゃないと……」 ゴウカザルに合図を送る。 すると、ゴウカザルが静香ちゃんの近くに火を吹いた。 「きゃあっ!」 静香ちゃんが叫ぶと共に、エンペルトが戦闘体勢をとる。 「やっぱりギンガ団に……頼んだわよ、エンペルト!」 エンペルトが静香ちゃんの前に立つ。 その隙を僕は見逃さなかった。 「一気に決める!ゴウカザル、インファイトだあッ!」 エンペルトを標的に、無数の拳を繰り出すゴウカザル。 「耐えて……エンペルト……」 静香ちゃんの願いが通じたのか、ボロボロになっても尚エンペルトは立っていた。 そして、反撃の波乗りがゴウカザルを一撃でダウンさせる。 ---- 「ビークイン、トドメだ!」 体力が残り僅かのエンペルトが沈む。 これで僕も静香ちゃんも失っているポケモンは一体。 だけど、いかんせん分が悪い。 データによると静香ちゃんのポケモンは四匹。 対するボクは三匹しか居ない。 「こうなったら……アレしかないか」 ビークインを戻し、クロバットを出す。 今回の僕の任務は静香ちゃんを捕える事。 わざわざバトルに勝つ必要は無い。 出来ればやりたくなかったが、恐らくやる他無いだろう。 僕は前方の静香ちゃんを見据え、クロバットに指示を出した。 「クロバット、エアカッター……」 ---- 「きゃああああああああああっ!」 耳を劈くような静香ちゃんの悲鳴が、雪原中に響き渡る。 クロバットの放った空気の刃は静香ちゃんの体の各所を掠った。 赤い血が、真っ白な雪原の上に流れ落ちていく。 そして、それを見た静香ちゃんは力なくその場に崩れ落ちた。 静香ちゃんが完全に気絶した事を確認し、ゆっくりと歩み寄る僕。 「さて……後はアジトまで運ぶだけ」 口ではそう言ったものの、当然本意でやる事じゃない。 静香ちゃんの顔を見ると、どうしても躊躇ってしまう。 今までの静香ちゃんとの思い出が、頭の中に現れては消えていく。 「くそっ……!僕は……僕は……!」 右手を震わせながら、静香ちゃんに手をかけようとする僕。 僕の体の中で、この右手だけが僕の物じゃないような気さえしてしまう。 「やるしか無いんだ。ゴメン、静香ちゃん……」 僕は意を決して静香ちゃんを担ぎ、ゆっくりと雪原の上を歩いていく。 血で染まった雪を握り締めながら―― ---- #静香サイド 「……ここは……?」 私は目を覚ました。 何も見えない……恐らく暗い洞窟か何かかしら。 少しふらふらする頭で必死に記憶の糸を手繰り寄せる。 確かスネ夫さんにバトルを挑まれて、クロバットが私に攻撃を…… それでその後、私は気絶しちゃって…… 見ると、手と足に幾つかの傷が残っていた。 今確かなのは、スネ夫さんがギンガ団に加担した事。 そして、私を捕らえようとした事……。 ……まさか、スネ夫さんがここまで運んできてくれたのかしら。 そうなると、まだ良心は残っているという事になる。 「とにかく……皆にこの事を伝えないと」 やっと目が慣れ、少し辺りが見えるようになってきた。 外は依然、かなり吹雪いている。 この吹雪ならそう遠くまで運ばれてない筈。 私は暗い洞窟を抜け、キッサキシティに向かって歩き始めた。 皆の手持ち 静香  エンペルトLv47、ミミロップLv43、ロズレイドLv44、パチリスLv40 スネ夫 ゴウカザルLv44、クロバットLv43、ビークインLv43 ---- #スネ夫サイド 「……何をやっている!」 僕の目の前のアカギが怒声を飛ばす。 理由は言わずもがな、僕が任務を失敗したからだ。 憤怒のあまり、アカギは傍にあったデスクを叩きつける。 ボクは静香ちゃんを気絶させた後、確かに静香ちゃんを担いだ。 でも、中々次の一歩が踏み出せない。 友達を捕えるなんて……到底出来る筈が無かった。 そして決心した僕は、結局近くの洞窟に置いていったのだった。 「すいません、ボス……」 心にも無い事だが、こういうのはもう慣れっこだ。 僕の言葉を聞いたアカギは無言で部屋を去っていった。 「はぁ……」 空腹と落胆のせいか溜息しか出ない。 そう言えば、今日は朝から何も食べていなかった。 さっきからしきりに腹がグーグー鳴っているのもそのせいか。 「……もうすぐ夕食時だな」 そう呟いて部屋を後にするボク。 向かうは食堂だ。 ---- 「いやー、美味しいねぇ」 食堂で食べたギンガすき焼きは、僕の胃袋を満たすのに十分過ぎる程だった。 やはり巨大な組織だけあって、食材が高級なのだろうか。 ひとまず僕はうるさい腹を黙らせる事が出来たのである。 ……時計を見るともう九時だ。 「そろそろ風呂かな」 食堂を後にして、風呂場へ向かう。 風呂場は思ったより綺麗で、不潔な感じはこれっぽっちも無かった。 このアジトの設備には度々感心させられる。 「疲れが取れるなぁー……」 暖かい湯に浸かっていた僕は誰とも無しに呟いた。 足の重みが一気に取れ、体全体が軽くなったような気がする。 「……そういえば」 すっかり忘れていたが、のび太達は今キッサキシティに居る。 ……という事は、シナリオ通りに進めば次の目的地はここだ。 近いうちにここ……ギンガ団アジトを襲撃してくる筈。 その時にアイツ等の内の誰かと接触するのは明白だ。 「決戦は近いな……」 天井を見上げ、ポツリと呟く。 ---- それから僕は暫く考え込んでいた。 (アイツ等が襲撃してくるなら、恐らくこのアジトは潰れる。 何せあっちは四人。それもジムバッジを七つ集めたトレーナーだ。 対してこっちはボクとアカギの二人だけ。 他の幹部と出木杉は先にテンガン山に向かうと言っていた。 ……つまり、ボクとアカギは時間稼ぎ。 ギンガ団の総裁たるものが時間稼ぎをするのは矛盾しているような気もするけど。 もしかしたら、出木杉達は予め準備をしておくのかな……?) 頭の中を巡り巡る思考。 「……まぁ、明日になれば分かる事だよね」 いい加減蒸せてきた。 僕は熱気と化してしまった快楽から脱するべく、軽くなった足を上げる。 そして体を拭き、服を着て寝室に向かおうとする……。 その時だった。 ---- 「あら。初任務、失敗したんだってね」 寝室に向かう僕の前に現れたのはジュピター。 僕は望ましくない来客者に舌打ちし、眉を顰めた。 「……何の用だ」 僕が尋ねると、ジュピターは嘲笑混じりに言った。 「特に用は無いわ。任務を失敗したあなたがどんな顔をしているのかな、ってね」 これにはカチンときた。 コイツ……まさか僕をからかいに来たのか? 「……用が無いなら消えてくれ。僕はもう寝たいんだ」 そう言ってジュピターの横を通りすぎる僕。 「……待って!」 不意に、後ろから呼びかけられる。 振り返った僕の眼前には、決意の表情でモンスターボールを突きつけるジュピターの姿があった。 「バトル……しましょ」 「え……?」 唐突すぎるし、生憎もう眠い。 とてもやる気にはなれなかった。 「いや、僕はもう寝……」 僕の言葉は途中で止まってしまった。 目の前のジュピターが悲しげな顔をして僕を見つめていたからだ。 ---- 「ど、どうしたんだよ……」 急に表情を変えたジュピターを見て焦るボク。 そんな僕を見つめ、ジュピターは話した。 「……近々、ボスはテンガン山で伝説のポケモンを復活させるわ。 それがギンガ団の最終目的であり、私もそれを望んでいる。 でも……その目的を達成すればギンガ団は解散するの。 仲間内の繋がりも、全て無くなっちゃう。 ……負けっぱなしで終わるのは嫌なのよね、私」 ジュピターの表情は真剣そのものだった。 そう言えば、テンガン山のイベントが終わればギンガ団は居なくなるんだった。 ゲーム通りなら、主人公に敗北して終わってしまう。 そう考えると、何だか切ないな……。 「……いいよ、バトル」 そう言って、僕はいつに無く早足で歩き出す。 後ろにジュピターを連れて。 ---- 外に出た瞬間、心地良い夜風が僕の体を包んだ。 僕とジュピターはそれぞれの位置につき、対峙する。 「……さて、やりましょうか。 使用ポケモンは三体でいいかしら?」 「ああ、いいよ」 僕の返事を聞くと、ジュピターがモンスターボールを取り出し、投げる。 それがバトル開始の合図となった。 「行きなさい、スカタンク!」 「いけ、ドータクン!」 任務でアジトに戻る道中に捕まえたポケモン、ドータクンを出す。 それを見てスカタンクが火炎放射を放つが、ドータクンの耐久力の高さは折り紙つき。 当然の如く耐え、催眠術で相手を眠らせる事に成功した。 「嫌らしい戦術ね……戻れスカタンク!」 スカタンクがボールに回収され、ジュピターの次のポケモンが現れる。 ゴーストポケモン、ムウマージだ。 「チッ……」 好ましくない状況に苛立つ僕。 スカタンクに対して放った地震攻撃は、浮遊を持つムウマージには効果が無かった。 ---- その後結局催眠術は外れてしまい、合計二回のシャドーボールでドータクンは倒れた。 「仕方ないか……いけ、ドククラゲ!」 僕が繰り出したのはドククラゲ。 これまた今日捕まえた僕の新戦力だ。 「サイコキネシスをお見舞いしなさい!」 ドククラゲに向かってサイコキネシスが放たれる。 「甘いよ、それぐらいじゃドククラゲは倒れない」 そう言い、僕はドククラゲに指示を出す。 次の瞬間には、ドククラゲの攻撃によってムウマージは倒れていた。 「えっ……?」 その光景に唖然とするジュピター。 僕は含み笑いをしながら言った。 「ミラーコート。特殊攻撃を倍のダメージで返す事が出来るのさ」 その言葉を聞き、ジュピターはムッとなってムウマージを戻す。 だが、次のポケモンを出す様子は無い。 「私の最後のポケモン……ユキメノコを出しても到底勝ち目は無いわ。 どうせあなたの最後のポケモンはゴウカザルでしょ?」 その問いに頷く僕。 「やっぱり今の私じゃ勝てなかったのね……良く分かったわ。 もう寝ましょう。明日の事もあるし」 そう言い終えると、ジュピターはアジトの中へと入っていく。 複雑な心境になった僕は、それを呆然と見つめていた。 皆の手持ち スネ夫 ゴウカザルLv47、クロバットLv46、ビークインLv44、ドククラゲLv42、ドータクンLv40 ---- ほぼ同時刻、ギンガ団アジト内。 アカギは自らの部屋で伝説のポケモンに纏わる本を読んでいた。 右手で次々とページを捲っていくが、突如手の動きが止まる。 「……そこに居るのは分かっている」 静かに、けれども威厳のある声でアカギは言った。 すると、暗闇の中に一人の少年の姿が浮かび上がる。 「バレちゃったか。流石はギンガ団の総裁ですね……。 ……まぁ、それも今日で終わりですけど」 暗闇からその姿を露にしたのは出木杉英才。 その右手には一つのモンスターボール。 「大体見当はついていた。いつか貴様が裏切るだろう、とな」 アカギもモンスターボールを取り出し、言う。 それを見て、少年……出木杉は笑い始めた。 「ハハッ……。なら今から僕がやる事は分かってますよね……?」 出木杉はモンスターボールを構え、放つ。 それとほぼ同時にアカギもモンスターボールを投げた。 「ああ、分かっている。それに、準備も出来ているさ。 貴様を埋葬する準備がな……いけ、ドンカラス!」 ---- アカギのドンカラスに対し、出木杉はフーディン。 「フーディン、電撃波だ!」 両手で電気の球を作るフーディン。 だが、先に動いたのはドンカラスだった。 「決めろ、ドンカラス!」 アカギの指示と共に、ドンカラスがフーディンに体当たりをかます。 「……不意打ちか!」 不意打ち……相手が攻撃技を指示していたら先手を取れる攻撃技。 出木杉は「しまった」という顔をする。 それを見て、アカギは言い放った。 「私を見縊るなよ……まだまだ貴様如きには負けん」 「ちっ……次はお前だ、ガブリアス!」 出木杉が放ったボールからはガブリアスが繰り出される。 「……ところで、アンタはどうして僕が裏切ると思った? ボスに忠実な幹部を装ったつもりなんだけどなぁ~」 頭を掻きながら出木杉は言う。 アカギはそれを眼光鋭く睨みつけた。 「私は何百……いや、何千の部下を従える組織の総裁だ。 部下の考えは全てお見通しだ……貴様が愚行に走る事もな」 「あっそうですか……でも、それとこのバトルでアンタが勝つかは別問題だよね。 ガブリアス、ドラゴンクローだっ!」 出木杉のガブリアスの鋭い爪が、ドンカラス目掛け振り下ろされた。 ---- 「しぶとい奴……もう一発お見舞いしちゃえ!」 ドンカラスの攻撃を耐えたガブリアスが二発目の攻撃を当てる。 それを受けたドンカラスは、鈍い音を立てて倒れた。 「いけ、マニューラ」 次に出てきたのはマニューラ。 拳に冷気を込め、それをガブリアスにぶつける。 「どうだ、出木……何!」 ガブリアスは弱点の攻撃を受けて尚、その場に立っていた。 それを怪しく思ったアカギは、ガブリアスの手に握られたタスキを見て狼狽する。 「甘い甘い……ガブリアス、地震!」 ガブリアスの地震攻撃により、衝撃波が発生した。 衝撃波は速さと鋭さを増し、前進する。 マニューラとアカギの方向かって一直線に。 「ぐわああぁぁああぁあっ!」 衝撃波に直撃したアカギは、激痛のあまりその場に倒れ込む。 傍らのマニューラは当然の如く瀕死状態になっていた。 「あっ、ごめんなさい……トレーナーに攻撃しちゃダメでしたよね……」 不敵な笑みを浮かべ、ゆっくりと歩み寄る出木杉。 ---- 「……ぐは!」 無様にも地にひれ伏したアカギが、出木杉に蹴り飛ばされる。 「これでもうアンタは動けない……。 伝説のポケモンを従えるのはこの僕さ。 ……それじゃあ、さよなら」 ガブリアスを戻し、出木杉は部屋を後にする。 恐らく、出木杉が伝説のポケモンを復活させるのも時間の問題だろう。 もう、一刻の猶予も許されないところまで来ているのだ。 一人取り残されたアカギは、言葉を搾り出すように言った。 「ダメだ……アイツは…… このままじゃ……きっと…… 大変な……こと……に……」 そこまで言った時、アカギは意識を失った。 そう遠くない未来に思いを馳せ、深い眠りについていく―― [[次へ>セカンド その9]] ----

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