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[[前へ>セカンド その2]] 「はぁ……しんどいなぁ……」 歩きながら愚痴をこぼす僕。 僕は今、ズイタウンを抜けた所にある道路を進んでいた。 『喉は乾くし、足は痛いし……』 水の出が悪いせいか、ズイタウンでは申し訳程度の水しか飲んでいない。 それに加えて、この暑さ。 「もう……限界」 僕は最後にそう吐き捨てると、その場に大の字の形で寝転んでしまった。 「ん……?」 僕の顔に水滴が落ちる。 見ると、ここはさっき寝転んだ所じゃない。 暗い洞窟だった。 「何でここに……?」 疑問が過ぎる。 すると、突然辺りが明るくなった。 炎を纏った馬……ポニータによるものだ。 「君が僕をここまで運んでくれたのかい?」 ポニータは無垢な表情で僕を見ている。 外ではいつの間にやら雨が降っていた。 「そろそろ行くか……君も来るかい?」 僕が促しても、ポニータは一向に着いてくる気配を見せない。 「あ、そうか……お前、水苦手だもんな」 僕はポニータをボールに収め、洞窟を後にした。 ---- 次の町……トバリシティに着く頃には、服も髪もずぶ濡れだった。 「風引いちゃうよ……クシュン!」 思わずくしゃみが出てしまう。 そして僕がポケモンセンターに入ろうとした矢先…… 「ん?何だあれは……」 この町で一番高いビルの前で、ギンガ団の連中と誰かが交戦している。 僕は必死に目を凝らす。 「……あ!」 微かにだが、見えた。 あのトゲトゲリーゼントといったら、アイツしかいない。 「スネ夫ーっ!」 見ると、スネ夫は大量のギンガ団相手に奮闘していた。 だが、既に手持ちは全て瀕死状態で、本人も崩れ落ちている。 『やるしかないか』 意を決して、僕はその中に飛び込んでいった。 「もういいだろ!こいつの周りから去ってくれ!」 必死に頼む僕だったが、そうは問屋がおろさないらしい。 「ギンガ団に歯向かう奴がどれだけ愚かなのか、教えてやるよ!」 そう言うなり、大量のポケモン達を繰り出してくるギンガ団。 相手が人海戦術で来るならば、こっちも戦力を全て出すしかない。 「いけ!ハヤシガメ、ホーホー、ポニータ!」 ---- 「ハヤシガメ、はっぱカッターだ!」 得意の技でギンガ団のポケモンを倒していくハヤシガメ。 だが、やはり相手が多すぎる。 「ホーホーはつつく!ポニータは火の粉!」 ホーホーとポニータも技を繰り出す。 そして、ようやく下っ端の半数が倒れた時だった。 「お前達……何をやっている」 ビルから出て来たのは青髪の男。 その妙な威圧感で僕は悟った。 『ギンガ団幹部か……!』 幹部の強さは圧倒的だった。 「ユンゲラー、サイコキネシス」 一撃で粉砕されていく僕のポケモン達。 幹部は僕とスネ夫を一瞥する。 「今回は見逃してやる……だが、次は容赦しないぞ」 そう言うと、幹部は手負いの下っ端達を置いてビルの中へ戻っていった。 「今の内に……」 スネ夫を背中におぶり、重い足でその場から逃げ出す僕。 既に熱が出ていた影響もあり、体中が悲鳴をあげている。 やっとの事でポケモンセンターに入った時には、既に意識が遠のいていた。 ---- 「三十八度五分、か……」 目を覚まして体温を計ると、やはり熱があった。 走ってポケモンセンターに戻っていた時よりもかなりしんどい。 僕の隣のベッドで寝ていたスネ夫は、外を見つめていた。 「何で……何で助けたんだよ」 再び寝転んだ僕の耳にスネ夫の声が入ってくる。 「何で、って……危険な状況だったし……」 「余計な事をするな!」 仰向けになりながら答える僕に、スネ夫の怒声が飛んで来る。 僕は一瞬言葉が詰まった。 「お前が来なくても、僕は勝ってたんだ!」 意地を張り続けるスネ夫。 これには流石にカチンときた。 僕は反論するべく起き上がる。 「何言ってんだよ!僕が来た時、君は既に戦えない状態だった!もし僕がいなかったら……」 「うるさい!余計なお世話なんだよ!」 そう言って部屋を出るスネ夫。 「まだ回復してないんだろ!」 僕が怒鳴るも、スネ夫は無視して扉を開ける。 返事代わりに乱暴な扉の閉まる音が響いた。 「なんだってんだよ……」 皆の手持ち のび太(ハヤシガメLv28、ヨルノズクLv26、ポニータLv25) スネ夫(モウカザルLv31、ゴルバットLv29) ---- 翌日に熱が回復した僕は、真っ先にジムへと向かっていた。 風邪が完治したせいか、妙に気分が良い。 負ける気はしなかった。 「よし、行くか……」 僕はジムの中へと足を踏み入れた。 案の定、ジム戦は至って楽勝だった。 鼻歌を歌いながら町を後にする僕。 ジムリーダーに余裕勝ちした事もあり、そこからの道中も大して苦にならない。 やがて着いたのはリッシ湖のほとりだった。 「今、ここは誰も入れません。ある人に言い付けられているのです」 と、言い張る二人の男。 どうやらリッシ湖には入れそうにも無い。 『ちぇっ、仕方ないか……』 僕がそう思った時だった。 「あれは……レストラン?」 僕の目に映ったのは、確かにレストランだ。 しかも、何処と無く高級な雰囲気を醸し出している。 腹が減っていた僕には願っても無い幸運だった。 ---- 「ふうー、満腹満腹!」 高級レストランで次々と料理をたいらげる僕。 『そろそろ出るか……』 僕がレジで会計を済ませようと思った時の事だった。 「五十万円になりまーす」 「……え?」 何を言っているのかわからなかった。 五十万円なんて僕に払える筈が無い。 「あ、あの……今、何て言いましたか?」 「あなたが全て食べた分で五十万円ですよ。払えないんですか?」 僕が払えない事を告げた途端、レジの男の形相が変わる。 「払えなかったら、ここで暫く働く事ですね。代金分は払ってもらいますから」 訳がわからない。 僕が食べた分じゃ、いくら何でも五十万円は有り得ない。 多めに見たとしても、ざっと二万円ぐらいのものだ。 「とりあえずここを出て右の建物に入ってて下さい。仕事の時間に呼び出します」 「いや、僕は……」 無理矢理レストランの右にある建物に連れていかれる僕。 『なんなんだよ……』 正直、かなり混乱していた。 「オラ、ダラダラしてないでさっさと行け!」 抵抗しても無駄だとわかった僕は、されるままに建物の中に連れ込まれた。 ---- 「え?これって……」 建物の中は酷い有り様だった。 そこら中に木屑が散乱していて、所々にカビが生えている。 だが、僕が驚いたのはそれだけじゃない。 「静香ちゃん……だよね?」 そう、建物の中には僕達と共に旅立った仲間――静香ちゃんが居たのだ。 「のび太さん……」 だが、その顔は昔の静香ちゃんのものじゃない。 完全に笑顔を失っていた。 「まさか、静香ちゃんも……?」 僕が恐る恐る聞くと、静香ちゃんはコクリと頷いた。 それから静香ちゃんは今までの経緯を話してくれた。 僕と同じような感じで無理矢理連れ込まれ、働かされるようになった事…… 睡眠時間無しで一日中働いていた事…… 本当に酷いとしか言い様が無かった。 「二階にも沢山の人が居るわ……皆私達と同じような境遇なのよ」 静香ちゃんが言い終えると、そこにいた一人のスキンヘッドが口を開いた。 「そのお嬢ちゃんの言う通りさ。しかも抵抗した奴は容赦無く殺されるんだ……」 「殺される……?」 僕が聞くと、スキンヘッドは悲しそうに俯いた。 「俺と一緒に働いてた友達が居てな、そいつはちょっと抵抗しただけで殺されちまったんだ……」 スキンヘッドは遠い目で天井を見上げた。 ---- 「畜生……許せねぇ……!」 拳を握り締めるスキンヘッド。 「ポケモンは?ポケモンは使わなかったんですか?」 堪らず聞いてみる僕。 「それは無理だ。奴等はああ見えてかなり強い……特にアイツは別格だ」 「アイツ?」 「確かサターンと言っていたか……奴の実力は半端じゃない」 サターン……聞いた事も無い。 「でも、怪しいよな。こんな小規模なレストランが何故こんな事を……」 スキンヘッドがそこまで言った時、僕は直感した。 「静香ちゃん、来て!」 静香ちゃんの手を引いて、建物を出る僕。 「何なの?のび太さん……」 「いいから、来て!僕の予想が正しければ……」 僕が目をつけたのはレストランの奥にある小部屋。 幸い、外から中の様子を監視出来るようになっている。 中からはこんな会話が聞こえてきた。 「作戦は順調です、サターン様」 「そうか……だが、ずっとここで働いてもらうのも辛いだろうな」 「と、言いますと?」 「時期を経て、我々ギンガ団の手駒になってもらうとするか……ふふふ」 ギンガ団という言葉に反応する僕と静香ちゃん。 「ということは……」 「これはギンガ団の仕業だったんだわ!」 僕と静香ちゃんが真相に気付いた、丁度その時。 「どうやら蟻が紛れ込んだみたいだな……」 小部屋の窓が割れ、サターンと名乗るギンガ団幹部が現れた。 ---- 「まさか聞いていたとは……ならば、お前達を始末する他無いようだな」 見ると、トバリシティで交戦状態になっていた幹部だった。 それに続き、下っ端達もぞろぞろと出てくる。 「静香ちゃん、準備はいい……?」 「ええ、いつでもいいわよ」 モンスターボールを握り締める僕達。 腹は決まっていた。 「ポケモンバトルか……なら、お前達は下がっていろ」 下っ端を首で促すサターン。 その命令に従い、下っ端達は引き下がっていった。 「私に歯向かった事を後悔しろ……いけ、ドクロッグ!」 サターンのボールからはドクロッグが繰り出される。 「出番だ、ポニータ!」 「ロゼリア!」 相手のドクロッグを二匹のポケモンが挟む。 三匹が動いたのは次の瞬間だった。 「もう終わりですか……?」 冷酷な表情で僕達を見下すサターン。 二対一にも関わらず、奴のドクロッグは完全に僕達を圧倒していた。 既に僕達の戦力も底をついている。 「そろそろ終わりだ……ドクロッグ、どくづきだ!」 その右腕に毒を宿し、それを今にも突き刺さんとするドクロッグ。 ターゲットは……静香ちゃんだった。 「静香ちゃああぁぁぁぁん!」 必死に叫ぶ僕だったが、もう遅い。 次の瞬間には僕の耳に響いてきたのだ。 僕の叫びよりも遥かに大きい、静香ちゃんの悲鳴が―― ---- 「何……!」 どくづきを受けたのは静香ちゃんでは無かった。 ドクロッグの拳と静香ちゃんの間に割って入ったのは…… 「よくやったぞ、ゴローン!」 先程のスキンヘッドのゴローンだった。 「へっ、お前達だけに任せる訳にはいかねぇからな……」 見ると、スキンヘッドの後ろには数十人のトレーナーが控えている。 トレーナー達は一斉にポケモンを繰り出した。 「この数を見てもまだやるか?ギンガ団幹部のサターン!」 サターンを威嚇するスキンヘッド。 この状況では、流石の幹部も手が出せない。 「くっ……状況が状況だ……ここは撤退するか」 そう言うなり、ヤミカラスを繰り出してそれに飛び乗るサターン。 それに続き、他の下っ端達もその場を去っていった。 「ありがとうな、お嬢ちゃん達!」 僕達に礼を言うスキンヘッド達。 英雄みたいな気分でちょっと気持ち良かった。 「それじゃ、僕はこれで……」 やがてスキンヘッドと別れた僕達は、レストランを後にする。 今日の夕焼けは、何故だかいつもより一層綺麗に見えた。 皆の手持ち のび太 ハヤシガメLv31、ヨルノズクLv30、ポニータLv29 静香 ポッタイシLv33、ミミロップLv32、ロゼリアLv28 ----
[[前へ>セカンド その2]] 「はぁ……しんどいなぁ……」 歩きながら愚痴をこぼす僕。 僕は今、ズイタウンを抜けた所にある道路を進んでいた。 『喉は乾くし、足は痛いし……』 水の出が悪いせいか、ズイタウンでは申し訳程度の水しか飲んでいない。 それに加えて、この暑さ。 「もう……限界」 僕は最後にそう吐き捨てると、その場に大の字の形で寝転んでしまった。 「ん……?」 僕の顔に水滴が落ちる。 見ると、ここはさっき寝転んだ所じゃない。 暗い洞窟だった。 「何でここに……?」 疑問が過ぎる。 すると、突然辺りが明るくなった。 炎を纏った馬……ポニータによるものだ。 「君が僕をここまで運んでくれたのかい?」 ポニータは無垢な表情で僕を見ている。 外ではいつの間にやら雨が降っていた。 「そろそろ行くか……君も来るかい?」 僕が促しても、ポニータは一向に着いてくる気配を見せない。 「あ、そうか……お前、水苦手だもんな」 僕はポニータをボールに収め、洞窟を後にした。 ---- 次の町……トバリシティに着く頃には、服も髪もずぶ濡れだった。 「風引いちゃうよ……クシュン!」 思わずくしゃみが出てしまう。 そして僕がポケモンセンターに入ろうとした矢先…… 「ん?何だあれは……」 この町で一番高いビルの前で、ギンガ団の連中と誰かが交戦している。 僕は必死に目を凝らす。 「……あ!」 微かにだが、見えた。 あのトゲトゲリーゼントといったら、アイツしかいない。 「スネ夫ーっ!」 見ると、スネ夫は大量のギンガ団相手に奮闘していた。 だが、既に手持ちは全て瀕死状態で、本人も崩れ落ちている。 『やるしかないか』 意を決して、僕はその中に飛び込んでいった。 「もういいだろ!こいつの周りから去ってくれ!」 必死に頼む僕だったが、そうは問屋がおろさないらしい。 「ギンガ団に歯向かう奴がどれだけ愚かなのか、教えてやるよ!」 そう言うなり、大量のポケモン達を繰り出してくるギンガ団。 相手が人海戦術で来るならば、こっちも戦力を全て出すしかない。 「いけ!ハヤシガメ、ホーホー、ポニータ!」 ---- 「ハヤシガメ、はっぱカッターだ!」 得意の技でギンガ団のポケモンを倒していくハヤシガメ。 だが、やはり相手が多すぎる。 「ホーホーはつつく!ポニータは火の粉!」 ホーホーとポニータも技を繰り出す。 そして、ようやく下っ端の半数が倒れた時だった。 「お前達……何をやっている」 ビルから出て来たのは青髪の男。 その妙な威圧感で僕は悟った。 『ギンガ団幹部か……!』 幹部の強さは圧倒的だった。 「ユンゲラー、サイコキネシス」 一撃で粉砕されていく僕のポケモン達。 幹部は僕とスネ夫を一瞥する。 「今回は見逃してやる……だが、次は容赦しないぞ」 そう言うと、幹部は手負いの下っ端達を置いてビルの中へ戻っていった。 「今の内に……」 スネ夫を背中におぶり、重い足でその場から逃げ出す僕。 既に熱が出ていた影響もあり、体中が悲鳴をあげている。 やっとの事でポケモンセンターに入った時には、既に意識が遠のいていた。 ---- 「三十八度五分、か……」 目を覚まして体温を計ると、やはり熱があった。 走ってポケモンセンターに戻っていた時よりもかなりしんどい。 僕の隣のベッドで寝ていたスネ夫は、外を見つめていた。 「何で……何で助けたんだよ」 再び寝転んだ僕の耳にスネ夫の声が入ってくる。 「何で、って……危険な状況だったし……」 「余計な事をするな!」 仰向けになりながら答える僕に、スネ夫の怒声が飛んで来る。 僕は一瞬言葉が詰まった。 「お前が来なくても、僕は勝ってたんだ!」 意地を張り続けるスネ夫。 これには流石にカチンときた。 僕は反論するべく起き上がる。 「何言ってんだよ!僕が来た時、君は既に戦えない状態だった!もし僕がいなかったら……」 「うるさい!余計なお世話なんだよ!」 そう言って部屋を出るスネ夫。 「まだ回復してないんだろ!」 僕が怒鳴るも、スネ夫は無視して扉を開ける。 返事代わりに乱暴な扉の閉まる音が響いた。 「なんだってんだよ……」 皆の手持ち のび太(ハヤシガメLv28、ヨルノズクLv26、ポニータLv25) スネ夫(モウカザルLv31、ゴルバットLv29) ---- 翌日に熱が回復した僕は、真っ先にジムへと向かっていた。 風邪が完治したせいか、妙に気分が良い。 負ける気はしなかった。 「よし、行くか……」 僕はジムの中へと足を踏み入れた。 案の定、ジム戦は至って楽勝だった。 鼻歌を歌いながら町を後にする僕。 ジムリーダーに余裕勝ちした事もあり、そこからの道中も大して苦にならない。 やがて着いたのはリッシ湖のほとりだった。 「今、ここは誰も入れません。ある人に言い付けられているのです」 と、言い張る二人の男。 どうやらリッシ湖には入れそうにも無い。 『ちぇっ、仕方ないか……』 僕がそう思った時だった。 「あれは……レストラン?」 僕の目に映ったのは、確かにレストランだ。 しかも、何処と無く高級な雰囲気を醸し出している。 腹が減っていた僕には願っても無い幸運だった。 ---- 「ふうー、満腹満腹!」 高級レストランで次々と料理をたいらげる僕。 『そろそろ出るか……』 僕がレジで会計を済ませようと思った時の事だった。 「五十万円になりまーす」 「……え?」 何を言っているのかわからなかった。 五十万円なんて僕に払える筈が無い。 「あ、あの……今、何て言いましたか?」 「あなたが全て食べた分で五十万円ですよ。払えないんですか?」 僕が払えない事を告げた途端、レジの男の形相が変わる。 「払えなかったら、ここで暫く働く事ですね。代金分は払ってもらいますから」 訳がわからない。 僕が食べた分じゃ、いくら何でも五十万円は有り得ない。 多めに見たとしても、ざっと二万円ぐらいのものだ。 「とりあえずここを出て右の建物に入ってて下さい。仕事の時間に呼び出します」 「いや、僕は……」 無理矢理レストランの右にある建物に連れていかれる僕。 『なんなんだよ……』 正直、かなり混乱していた。 「オラ、ダラダラしてないでさっさと行け!」 抵抗しても無駄だとわかった僕は、されるままに建物の中に連れ込まれた。 ---- 「え?これって……」 建物の中は酷い有り様だった。 そこら中に木屑が散乱していて、所々にカビが生えている。 だが、僕が驚いたのはそれだけじゃない。 「静香ちゃん……だよね?」 そう、建物の中には僕達と共に旅立った仲間――静香ちゃんが居たのだ。 「のび太さん……」 だが、その顔は昔の静香ちゃんのものじゃない。 完全に笑顔を失っていた。 「まさか、静香ちゃんも……?」 僕が恐る恐る聞くと、静香ちゃんはコクリと頷いた。 それから静香ちゃんは今までの経緯を話してくれた。 僕と同じような感じで無理矢理連れ込まれ、働かされるようになった事…… 睡眠時間無しで一日中働いていた事…… 本当に酷いとしか言い様が無かった。 「二階にも沢山の人が居るわ……皆私達と同じような境遇なのよ」 静香ちゃんが言い終えると、そこにいた一人のスキンヘッドが口を開いた。 「そのお嬢ちゃんの言う通りさ。しかも抵抗した奴は容赦無く殺されるんだ……」 「殺される……?」 僕が聞くと、スキンヘッドは悲しそうに俯いた。 「俺と一緒に働いてた友達が居てな、そいつはちょっと抵抗しただけで殺されちまったんだ……」 スキンヘッドは遠い目で天井を見上げた。 ---- 「畜生……許せねぇ……!」 拳を握り締めるスキンヘッド。 「ポケモンは?ポケモンは使わなかったんですか?」 堪らず聞いてみる僕。 「それは無理だ。奴等はああ見えてかなり強い……特にアイツは別格だ」 「アイツ?」 「確かサターンと言っていたか……奴の実力は半端じゃない」 サターン……聞いた事も無い。 「でも、怪しいよな。こんな小規模なレストランが何故こんな事を……」 スキンヘッドがそこまで言った時、僕は直感した。 「静香ちゃん、来て!」 静香ちゃんの手を引いて、建物を出る僕。 「何なの?のび太さん……」 「いいから、来て!僕の予想が正しければ……」 僕が目をつけたのはレストランの奥にある小部屋。 幸い、外から中の様子を監視出来るようになっている。 中からはこんな会話が聞こえてきた。 「作戦は順調です、サターン様」 「そうか……だが、ずっとここで働いてもらうのも辛いだろうな」 「と、言いますと?」 「時期を経て、我々ギンガ団の手駒になってもらうとするか……ふふふ」 ギンガ団という言葉に反応する僕と静香ちゃん。 「ということは……」 「これはギンガ団の仕業だったんだわ!」 僕と静香ちゃんが真相に気付いた、丁度その時。 「どうやら蟻が紛れ込んだみたいだな……」 小部屋の窓が割れ、サターンと名乗るギンガ団幹部が現れた。 ---- 「まさか聞いていたとは……ならば、お前達を始末する他無いようだな」 見ると、トバリシティで交戦状態になっていた幹部だった。 それに続き、下っ端達もぞろぞろと出てくる。 「静香ちゃん、準備はいい……?」 「ええ、いつでもいいわよ」 モンスターボールを握り締める僕達。 腹は決まっていた。 「ポケモンバトルか……なら、お前達は下がっていろ」 下っ端を首で促すサターン。 その命令に従い、下っ端達は引き下がっていった。 「私に歯向かった事を後悔しろ……いけ、ドクロッグ!」 サターンのボールからはドクロッグが繰り出される。 「出番だ、ポニータ!」 「ロゼリア!」 相手のドクロッグを二匹のポケモンが挟む。 三匹が動いたのは次の瞬間だった。 「もう終わりですか……?」 冷酷な表情で僕達を見下すサターン。 二対一にも関わらず、奴のドクロッグは完全に僕達を圧倒していた。 既に僕達の戦力も底をついている。 「そろそろ終わりだ……ドクロッグ、どくづきだ!」 その右腕に毒を宿し、それを今にも突き刺さんとするドクロッグ。 ターゲットは……静香ちゃんだった。 「静香ちゃああぁぁぁぁん!」 必死に叫ぶ僕だったが、もう遅い。 次の瞬間には僕の耳に響いてきたのだ。 僕の叫びよりも遥かに大きい、静香ちゃんの悲鳴が―― ---- 「何……!」 どくづきを受けたのは静香ちゃんでは無かった。 ドクロッグの拳と静香ちゃんの間に割って入ったのは…… 「よくやったぞ、ゴローン!」 先程のスキンヘッドのゴローンだった。 「へっ、お前達だけに任せる訳にはいかねぇからな……」 見ると、スキンヘッドの後ろには数十人のトレーナーが控えている。 トレーナー達は一斉にポケモンを繰り出した。 「この数を見てもまだやるか?ギンガ団幹部のサターン!」 サターンを威嚇するスキンヘッド。 この状況では、流石の幹部も手が出せない。 「くっ……状況が状況だ……ここは撤退するか」 そう言うなり、ヤミカラスを繰り出してそれに飛び乗るサターン。 それに続き、他の下っ端達もその場を去っていった。 「ありがとうな、お嬢ちゃん達!」 僕達に礼を言うスキンヘッド達。 英雄みたいな気分でちょっと気持ち良かった。 「それじゃ、僕はこれで……」 やがてスキンヘッドと別れた僕達は、レストランを後にする。 今日の夕焼けは、何故だかいつもより一層綺麗に見えた。 皆の手持ち のび太 ハヤシガメLv31、ヨルノズクLv30、ポニータLv29 静香 ポッタイシLv33、ミミロップLv32、ロゼリアLv28 [[次へ>セカンド その4]] ----

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