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挑戦者 その21」(2007/05/06 (日) 15:21:11) の最新版変更点

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[[前へ>挑戦者 その20]] ジャイアンが目を開けた時、周りの景色は変わっていた。 静寂が耳を突いてくる――土の壁が僅かな音をも吸収してしまっているのだ。 そう、ここは地下、ただ均等に置かれた松明で辺りの様子はわかる。 ハッとジャイアンが振り返ると、そこは行き止まり。 そばには少し大きな三角錐の形をした岩がある。 「……ここがスタートってわけか」 そう呟くと、ジャイアンの顔には自然と笑みが浮かぶ。 「へ、迷路なんてちょろいもんだぜ!  さぁて、行くか」 意気揚々とジャイアンは歩みだした。 「……あ、あれ?」 行き止まりに辿り着いたジャイアンが首を傾げる。 そばには少し大きな三角錐の岩―― 「い、いやまさか!  俺様が同じ場所に戻ってくるなんてありえねえぜ!」 大声で言いながら、ジャイアンは身を翻す。 「さぁて、今度こそ行くか!」 数分後。 例の三角錐の岩に持たれかかるジャイアン。 「……へ、へへ。  俺様が素直になっていることが間違いだったんだ」 ポンと投げられるボールから、コドラが繰り出された。 ‘お、兄貴悪そうな面してる……’ 「コドラ、壁に向かってアメタルクローだ!」 ニッと笑って壁を破壊するコドラ。 「よし、俺様を遮るものは全て壊してやるぜ!」 ---- スネ夫は銅メダルの迷路から入っていた。 今は目を瞑り、神経をその髪型以上に尖らせている。 (ムウマ、どうだい?) その後、頭に送られてきたのは迷路の道筋。 スネ夫の現在位置から先、曲がり、下って、上って、また曲がって……やがて大空洞へ。 そこには誰かがいる。 (誰だ、そいつは?) すると画面がトレーナーの肩にズームされていく。 銅メダルを持ったケーシィが座っている。 (なるほどね。でもいったい何をしているんだろ) そのスネ夫の疑問を晴らすため、ムウマが画面をずらした。 「ふぅ、これで良し」 大空洞のトレーナーは汗を拭った。 「出て来い、ディグダ。穴は掘り終わっただろ」 暫くして、足元にわらわらと六匹のディグダが現れた。 全部このトレーナーのポケモンである。 今しがた、この大空洞の地下全域に穴を掘ったのだ。 「これで、この大空洞に入ってきた奴らは全員落下する。  そこを突いてケーシィ倒しちゃえば――」 不敵に笑いながら、その場を去ろうとする。 だが、足は動かなかった。 「……な、なんだよこれ!?」 いくら足を踏ん張っても、そのトレーナーは歩けなかった。 「『くろいまなざし』だよ」 大空洞の入り口で、誰かの声。 ---- 「話聞いたけど、ずいぶん頑張って穴掘ったんだってねえ。  まあ無駄だけど~」 入り口で目を細めるのは、スネ夫だ。 「な、なんだお前!?  どうして俺の声が聞こえ、いや、計画に気づいた?」 「こいつだよ」 すると、スネ夫は指を鳴らした。 トレーナーの前に突如、ポケモンが現れる。 「ぅ、うわぁ!!」 尻餅をつくトレーナーを見下ろし、宙を漂うムウマはケラケラ笑った。 「安心しろよ。ただの『おどろかす』だよ」 スネ夫はいじらしく教えた。 「な、なんで命令もなし、に技を出せたんだ、ぉよぉ……」 トレーナーは乱れた呼吸を必死で堪えながら、質問した。 だが、言葉を無視して、スネ夫はドガースを繰り出す。 それに掴まるとふわふわ浮いて、トレーナーの傍に降り立った。 「ふふ、こうしないとこっちに来れないからね。  あぁ、質問の答えは『ここをつかう』ってことさ」 スネ夫は頭を指差した。 トレーナーが眉を顰め、聞き返そうとする。 「ムウマ、サイケこうせん」 光線がケーシィの体にぶち当たった。 「ケ、ケーシィ!」 トレーナーは慌ててケーシィに触れた。 その瞬間ケーシィが煌き、少年もろとも消え去る。 「なるほど。これが脱落の仕方か……」 スネ夫はもっともらしそうに頷いた。 ---- 突然、大空洞に拍手が響く。 スネ夫は元々細い目を更に細め、大空洞の出口を見た。 「やぁ、すごかったね」 出口の少年は賞賛する。 右肩にはケーシィが座り、左肩にはピィが座っている。 「誰だい、君は?」 スネ夫はなるべく親密感を出しながら聞いた。 相手の少年も、笑顔を崩さない。 「僕の名前はユウト。  君と同じように、銅メダルを持って二次予選に来たんだ」 (ムウマ、姿を消せ。あのユウトとかいう奴の挙動を見張れ) 「それで、そんな君がどうしてここにいるんだい?  早くゴールしないとまずいんじゃないのかな」 スネ夫はユウトを見据えたまま、首を傾げた。 「実はね。僕は優勝なんかはどうでもいいんだ。  行方不明の友達に会いたいだけなんだよ。  君、こいつ知ってる?」 ユウトはポケットから一枚の写真を取り出した。 慎重さを保ちながら、スネ夫は近づいてその写真を見た。 「ぁ……」 慌てて口を閉じるスネ夫。 写真に写っていた好青年は、出木杉だったのだ。 (まずい、多分ここで知っているって言ったら) スネ夫は恐る恐る、ユウトを見上げた。 途端に、鋭い眼光と目が合う。 ユウトは僅かに笑みを浮かべた。 「知ってるね」 ---- 「ま、待ってくれ!  そいつがお前の友達なはずないぞ!」 スネ夫は距離を取りながら、必死で弁明した。 「?どうしてそう思ったんだい?」 ユウトは微笑んだまま聞いてきた。 暫く、沈黙。 やがてスネ夫は声を出した。 「そいつは……僕の知り合いで、僕らの町にいた。  僕はお前と接点が無い。そして、そいつとお前との接点も見当がつかない」 そう一気に言い終えると、スネ夫はユウトの反応を待った。 ユウトはおもむろに口を開く。 「その通り。僕が探しているのはこいつじゃない。  僕の友達は数日前、こいつと一緒にいたんだ。  生憎証拠はこれしかないが、僕は確信しているんだ。  こいつを見つければ友達も見つかるはずだってね。  ところで、君はこいつを知っているんだろう?」 スネ夫は一瞬ビクッとして、それから平静を保つ。 「あ、ああ、出木杉って言うんだ。  何で君の友達と一緒にいたのかは知らないよ。  でも、そいつは多分このリーグの傍にいる。僕らも探しているようなものだからね」 「なら都合がいい!これから一緒に行動しようよ!」 ユウトは明るく提案してきた。 「ぇ、でもこのリーグに参加してるとは限らな」 「でも本選に行けば会えるかもよ。観客席にいるかもしれない」 ユウトは手を差し出した。 「さあ、握手しよ!  同志としてね」    ――― ----

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