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新カントー物語 その15」(2007/03/27 (火) 00:25:59) の最新版変更点

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[[前へ>新カントー物語 その14]] サカキが言葉を終えて出したのはネンドール。 ドラえもんに唯一見せていたポケモンだ。 「そいつか……ウインディ、フレアドライブだ!」 炎を纏い突進するウインディ。 それは確実にネンドールに大きなダメージを与えている。 「トリックルームだ!」 サカキの指示を受けてネンドールは空間を歪ませる。 歪んでいく空間にウインディは居心地が悪そうだ。 「そいつはその為にいたのか……でもあの技は素早さに関係ないよ!」 ドラえもんの叫びに反応してウインディの姿が消える。 「……神速か。ネンドール、大爆発だ!」 指示を出すサカキ。 だがネンドールは指示には答えない。 ネンドールはウインディの姿が見えると同時に倒れたのだ。 観客席ロビー 「サカキさんが負ける……こんな簡単に?」 しずかは驚きを隠せない。 「つええ……強すぎるぜドラえもん」 ジャイアンは絶句する。 「トリックルーム……出てくるのは何だ?」 一人で考えるスネオ。 「……」 『ドラえもん……僕の戦闘の前に真相を明かしてもらうよ。  とぼけるようだったら……僕は君を壊す』 のび太は無言で決意する。 考えてる中、レベルの高い戦闘に魅入られる四人。 外から聞こえる轟音には、誰も気付く事はなかった。 ---- 「ドサイドン!」 プロテクターを着けたポケモン、ドサイドン。 その巨体は出ただけで大地を揺るがす物だ。 「そいつが居るのか……ウインディ、神速だ!」 指示を出した直後、ウインディは姿を消す。 ドサイドンは衝撃を受けるが、気にする様子は無い。 「その程度で倒れると思うのか? ドサイドン地震だ!」 地面を叩きつけて大地を揺るがすドサイドン。 その攻撃はウインディを捕らえた。 衝撃を受けて崩れ落ちていくウインディ。 ドラえもんのエースは遂にここで倒れた。 「ご苦労様、ウインディ」 労いの言葉をかけてウインディをボールに戻す。 『相手はドサイドン、ハピナスでカウンターでも狙うか……  いや、過信は駄目だ。ここは確実に二手で倒せるように……』 ボールを取りながら考えるドラえもん。 もう先程までの余裕に溢れた顔は無い。 その様子をサカキは満足そうに見る。 『サカキさん』 「!」 脳に響く声に一瞬途惑うが表情には出さないサカキ。 『何だ、D』 『いや、ソラがもう牢獄に来ちゃったんだけど。どうにかしてくれない?』 『といってもな……私は何も出来ぬし……お前のほうで何とかできないのか?』 『こっちは演出に忙しいんだ、それに色々警戒もしなきゃいけないし』 『むう……カイに相談して判断を取ったらどうだ?』 『そうだね……それが一番かな。頑張ってね、戦闘。後、あいつは使っちゃ駄目だよ』 『わかっている。では戦闘も始まるようだ、後はそちらでどうにかしてくれ』 サカキはドラえもんが投げたボールを見て会話を中断する事にした。 ---- 「ハピナス!」 ドラえもんが出したのは卵を抱えたかわいらしいポケモン、ハピナス。 「さて、歪んだ空間も時間に制限がある。素早くいかせて貰うぞ!」 サカキは叫びドサイドンは声を上げる。 「地震だ!」 「水の波動!」 地面を叩きつけるドサイドン。 その揺れは確実にハピナスから体力を奪う。 ハピナスも水の波動を当ててドサイドンにダメージを与える。 だが一撃で相手を倒す事も無かった。 「続けて地震だ、ドサイドン!」 地面の揺れは確実にハピナスを捉える。 今度の揺れで、流石にハピナスは倒れた。 「次は君だ、トゲキッス!」 ドラえもんが次に選んだのは、トゲキッス。 「草結びだ!」 「ストーンエッジ!」 ドサイドンがトゲキッスに近づいて腕を振り上げる。 そのまま叩きつけた腕はトゲキッスをとらえた。 だがトゲキッスも一撃では倒れない。 そしてドサイドンの足元を草が覆う。 ドサイドンは草につまずいて転ぶ。 序句点の攻撃を受けたドサイドンが起き上がることは無かった。 ---- 「ハハハハハ! 愉快だ! これほど愉快なことなどあるものか!」 ドラえもんを見て笑い始めるサカキ。 「私がここまで追い詰められたのは何時以来だろう!?  私にこいつを出させるのは誰以来だろう!?  ……残念だ。この戦闘がもう終わるのが残念だ。  だがそうも言ってられない。私達にはもう時間が無いのだから」 サカキは手に取ったボールを手に慣らすように軽く上に浮かばせる。 「決着をつけるのは僕も淋しい……でももう終わらせるよ!」 ドラえもんもサカキの笑いに笑顔で答える。 「私の勝ちか? お前の勝ちか? 全てはこいつが倒れてから決まる事だ!」 しっかりと掴んでボールを投げるサカキ。 出てきたポケモンはドラえもんには見えない。 何故ならフィールドを砂嵐が覆ったからだ。 「最後がバンギラスとはね……」 ドラえもんがトゲキッスを見つめる。 『異空間の時間も残りわずか……奴の最後のポケモンはメタグロス。  バンギラスにあの技を指示するか……格闘半減の実を持たせているから一回は確実に耐えるだろう』 サカキは考えを決めて力強く拳を握り締める。 「波動弾!」 「踊れ、バンギラス! 龍の舞だ!」 黄色い弾を作り出してバンギラスに撃つトゲキッス。 直撃するがバンギラスは気にする様子も無い。 神秘的な踊りを舞い終わり攻撃態勢に入るバンギラス。 「ハハハハハ! 圧倒的な破壊力を見せ付けろバンギラス! ストーンエッジだ!」 「格闘タイプの技であれだけしか聞かないなんて……トゲキッスもう一発だ!」 黄色い弾を作り出し放とうとするトゲキッス。 だが攻撃より先にバンギラスが腕を振り下ろす。 その腕を受けてトゲキッスは壁に叩きつけられ、そのまま地に落ちていった。 ---- 『一対一……僕のポケモンはメタグロス。  あのバンギラスは龍の舞を一回舞っている……  一撃コメットパンチを与えられれば致命傷に近いはずだ……  でも……僕のメタグロスが耐えるのか? 負けるんじゃないのか?  信じるしかない。僕とポケモンの絆を。  そして……サカキさんとDの期待に答えてみせる!』 決意を固めてドラえもんは最後のボールを取り出す。 「いい目だ……それでこそ、我がライバルにふさわしい!」 『勝負は終わる……一対一。メタグロスが地震に耐えるか耐えないかだ!』 「メタグロス、頼むよ!」 最後に出てきた鋼鉄のポケモン、メタグロス。 ドラえもんのもう一匹の切り札だ。 「砕け散れ! 地震だ!」 「耐えてくれ! コメットパンチだ!」 足を叩きつけて地面を揺らすバンギラス。 周りの石像は全て倒れ、床にはヒビが入っていく。 だが揺れにも耐え切りメタグロスはコメットパンチを放つ。 しかし、バンギラスも倒れない。 両者が定位置に戻り、構える。 「私の勝ちだ! 終わらせろバンギラス!」 「僕の負けじゃない! これをバンギラスが耐えるかだ!  行け、メタグロス! パレットパンチだ!」 高速の動きでバンギラスに攻撃するメタグロス。 拳がバンギラスに直撃する。 だが―― バンギラスは倒れなかった。 ---- 「……負けたか」 ドラえもんが俯いて呟く。 その呟きに笑うサカキ。 「くく、負けだと? 負けではない。お前の勝ちだ」 サカキが言葉を言うとバンギラスを見るように指示を出す。 「!」 ドラえもんは驚いてそれを見た。 バンギラスは立ったまま気絶していたのだ。 ボールにバンギラスを回収してサカキは後ろを向く。 「惜しい……私が本気で戦えればもっと面白かっただろうに」 「……サカキさんの本当の切り札は・・・・・ですか?」 ドラえもんはその呟きに頷いて尋ねる。 サカキは後ろを向いたまま答える。 「……ああ、そうだ。  そして、私の右腕で親友が対となる・・・・・を持っている。  本来そいつは奴の妻の物で奴はそれらの上位の・・・・・の使い手だ。  妻が死んだ時に部下が上司を超えたらいけないとか言いだしてあいつはそいつを使うのを止めた。  ……私からすれば、ただ妻の物を使う為の言い訳にしか見えないがな」 サカキは苦笑してその場の石像を起こし始める。 「私はもう少しここに残る。お前は最後の戦いを見届けて来い」 「わかった。僕は行くよ……サカキさん」 ドラえもんが目を潤まして、名前を呼んだ。 「何だ?」 「全部が終わったらまた戦おうね! 今度こそ全力で!」 その叫びにサカキは笑う。 そして、襟を正してドラえもんを見つめた。 「願っても無い事だ。また宜しく頼む」 ドラえもんは言葉を聞いて、笑ってワープゾーンに飛び込んだ。 ---- 決着 ドラえもん ウインディLV95 ギャラドスLV88 メタグロスLV91       ハピナス LV85 ソーナンスLV85 トゲキッスLV86 サカキ   カバルドンLV87 フライゴンLV85 グライオンLV85       ネンドールLV85 ドサイドンLV92 バンギラスLV95 四回戦ドラえもん○―×サカキ 番外戦出木杉対ソラ ---- セキエイ高原牢獄前 切り立った崖に二人は向き合っている。 利発そうな少年、出木杉。 紫のドレスを着た少女、ソラ。 「戦う前に一つ聞きたい」 二人の間の沈黙を破って出木杉は話し掛ける。 「何ですか?」 「これは君の意思か? 誰かに命令されたとかじゃないのか?」 出木杉の問いにソラは手に乗せていた鳥を空に放ち、答えた。 「これは私の選択です。  実は貴方が帰った後にカイ様が来たんですよ」 「な、何だって!?」 出木杉の反応を聞いてソラは微笑を浮かべて続ける。 「ふふ。面白い方ですね、出木杉さんは。  私はカイ様に戦闘に出るなと言われました。  Dさんからも参加はしないでくれと言われました  実は……私はナナシマの筆頭リーダーに任じられました。  ……でも、そんな大役私には勤まるのか不安だった。  相応しい人はDさんにジュダさんにキクコさんにカンナさんに……一杯居ました。  ですが、私は私以外の人の満場一致でリーグの筆頭リーダー決まってしまいました。  これは……同じくらいの実力を持つ貴方と戦う事で自分を見極めたかったからです。  ……だから、全員の計画の迷惑覚悟で貴方を誘拐したんです。  もういいでしょうか? カイ様の命令を逆らうのは初めてなのでとても怖いんです」 ボールを取り出すソラ。 彼女の目に迷いは無い。 その目を見て、答えを聞いて、出木杉は笑った。 ---- 出ているのは両者のポケモン。 エレキブル対メガヤンマ。 先に動いたのはメガヤンマだった。 「眠って下さい!」 「雷パンチだ、エレキブル!」 攻撃に向かうエレキブルに催眠術を放つメガヤンマ。 エレキブルは前のめりに倒れた。 「当たったようですね」 ソラが胸を撫で下ろす。 だが、出木杉は焦ってなどいない。 「甘いよ! 僕はそれを読んでいた! エレキブル、雷パンチだ!」 倒れていたエレキブルが突如飛び上がる。 そして、そのままメガヤンマを殴りつけた。 「何故……」 メガヤンマを回収して呟くソラ。 「カゴの実さ。催眠術で攻めてくるのはわかってたしね。  君は飛行タイプで固めてるんじゃないのかな?  悪いけどエレキブルで押し切らせてもらうよ!」 出木杉の言葉にソラは一度驚いた後、微笑を浮かべる。 「すみませんけど……私のポケモンで飛行タイプを持っているのはこの子を入れて二体ですよ」 「な、何だって!?」 言葉に出木杉は驚いた。 『まずい、予想が外れた! じゃあ次は何が出てくるんだ?』 「ふふ、次の私のポケモンを考えているんですか? ……頼みましたよ、エル!」 ボールを投げるソラ。 出てきたのは腕に刃を持ったポケモンだった。 ---- 「エルレイド……」 出木杉がエルレイドを眺める。 『地震は耐えないよな……取りあえず一撃でも多くダメージを与えるか……』 一方エレキブルを見ているソラ。 『相手のポケモンはカメックス、ピジョット、フーディンはわかっています……。  この中で氷技を持っているとしたらカメックス……。  カメックスをどうにかして引きずり出して倒すしかありませんね。  私のカイリュ―は一体でも相手を壊滅させる実力を持っています。  あの子が言う事を聞いてくれればあっさり勝てるんでしょうけど……。  ……これはあの子に頼らないで勝てと言うカイ様の暗示ですね』 考えを決めた出木杉は指を突き出す。 考えを決めたソラが目にかかる髪を横に払う。 「エレキブル、雷パンチだ!」 「エル、地震です!」 跳躍してエルレイドに向かっていくエレキブル。 そのまま拳をエルレイドに当てて元いた場所に戻る。 行動を終えたエレキブルに地震が襲った。 ソラの立っている地面にヒビが入るほどの衝撃を起きる。 だがエレキブルは紙一重で衝撃に耐え切った。 『運も僕の味方か? 次のエレキブルの攻撃で倒せる!』 ガッツポーズをしながら指示を出す出木杉。 「エレキブル、雷パンチ!」 「エル、影打ちです!」 エレキブルの後ろからエルレイドの影が出てきて腕を振り下ろす。 後ろからの攻撃に反応できずにエレキブルは前のめりに崩れ落ちた。 ---- 『油断した……先制技を考えていなかった。  ……エルレイド。ハッサムなら安全に積み技を使えるかもしれない……』  考えを決めて腰からボールを取り、投げる出木杉。 「次は君だ、ハッサム!」 出木杉のボールから出てきたのはハッサム。 ハッサムを見てソラは手を顔に当てる。 『これで私の知らないポケモンは後一体……。  ハッサムと言う事は一回は安全に補助技を使えます。  ……相手は私の持ち物には気が付いていない筈です。  だったらまずはダメージを覚悟して補助技を使ってきますね』 相手の戦術を読みきり、ソラは指示を出すことにした。 「エル、インファイト!」 「高速移動だ!」 ハッサムの前に入り猛攻撃を開始するエルレイド。 だが、あっさり耐え切りハッサムは高速移動に成功する。 「そのままシザークロスだ!」 「堪える!」 ハッサムが驚異的な速さでエルレイドを切りつける。 しかし、エルレイドは攻撃を堪えきった。 エルレイドが赤く光りだす。 『これでカムラの実が発動しました。さあ、インファイトで止めを刺しましょう!』 ソラは確信を持って指示を出す。 出木杉は落ち着いて状況を見ているままだ。 「インファイト!」 「電光石火!」 出木杉の行動はさっきソラが出木杉の裏をついた行動だった。 攻撃を受けてエルレイドは倒れた。 ---- 『先制技ですか……自分が使ったのに……愚かですね、私は。  ハッサム……私の考えが正しければ……カメックスを引きずり出す絶好のチャンスかもしれない。  あの人のパーティーでこの子を止められるのはカメックスしかいないはずです。  ハッサムをこの子で倒すことになるとその後にカメックスをおびき出せるはず。  ……ハル、ヒョウ、貴方達から貰ったポケモン、使わせてもらうよ……』 ソラはボールを取り、投げる。 出てきたのは九個の尻尾を持ったポケモン。 「キュウコン! 頼みます」 キュウコンを見て出木杉は笑う。 『炎タイプが居た……予想の範囲内だ。  こっちの作戦を使う事になったか。……まあこっちでも問題は無いけど。  相手の切り札、カイリューを仕留めるにはカメックスが必要だ。  相手は僕の切り札カメックスをカイリューを出す前に仕留めたいはず。  これは交換できない戦いを上手く使ったおびき寄せる作戦だな。  甘いよ、僕は君に手を抜く気はない。本気で勝ちに行かせてもらう!』 考えを決めて出木杉は二つボールを取った。 『二つボールを取った?  諦めたと言う事……?   ここは……取りあえず攻撃しましょう!』 「火炎放射!」 キュウコンから炎が吐かれる。 その炎は真っ直ぐにハッサムに向かった。 「バトンタッチ!」 出木杉の声に二つのボールが反応して光り出した。 「そうやって登場させましたか……厄介ですね」 その場に居たのはソラが最も警戒していたポケモン。 スピードが上がった状態で出てきたカメックスだ。 ---- カメックスのハイドロポンプで一撃でやられるキュウコン。 運悪く急所に決まったようだ。 「さあ次のポケモンを出しなよ!」 出木杉は笑顔で語りかける。 ポケモンバトルを本当に楽しんでいる様子だ。 一方、ソラは浮かない顔をしている。 自分の作戦がほとんど崩されたからだ。 『母さんの形見……あのカメックスを倒せるはずだったのですが……。  まさか高速移動バトンタッチとは……不利ですね、間違いなく。  取りあえず出して考えましょう。まだ負けが決まったわけではありませんから』 「ナイト!」 ソラが投げたボールから出たのはサーナイト。 光を纏いその場に登場する。 『サーナイトか……確実に十万ボルトを二回撃って倒すつもりだったな。  だけど甘いよ、僕のカメックスを舐めないで欲しいな』 「ナイト、十万ボルト!」 電撃がカメックスに浴びせられる。 だが高速移動をしたはずのカメックスの行動よりサーナイトの行動のほうが早かった。 『どういう事……?』 ソラはカメックスの動きに疑問を覚える。 だがその疑問は出木杉の言葉によってすぐに解消された。 「ミラーコートだ!」 カメックスから受けた二倍の電撃が放出される。 その攻撃にサーナイトは耐える事は無かった。 ---- 『もう残りはカイリューだけ。  ……やはり私は弱い、何で皆は私を筆頭リーダーにしたの?  こんなに弱い私を……何故……』 一週間前 ナナシマリーグ会議場 「ではリーダーの投票の結果を発表させて頂きます」 そう言って、箱から紙を取り出して読み上げていく、1の島ジムリーダー、ニシキ。 ニシキの言葉を受けてホワイトボードに書き込むのは4の島ジムリーダー、カンナ。 「1の島ジムリーダー、ニシキ。推薦6の島ジムリーダー、ソラ」 ホワイトボードの数字の6の下に一本赤いラインが引かれる。 『私に……? ニシキさんは何を考えているのでしょう?』 「2の島ジムリーダー、メイジン。推薦6の島ジムリーダー、ソラ」 『!』 ホワイトボードに二本目の線が引かれる。 それはまた6の島だ。 『メイジンさんも……。何故私なのでしょう? 理由が聞きたいです。  でもゴウゾウさんは私だとしても他の人は違うはず。  皆、Dさんやジュダさんを選ぶはずです……』 ソラの予想通り3の島のジムリーダー、ゴウゾウもソラに票を入れる。 『次はカンナさん。多分ジュダさん辺りを選ぶはずです』 「4の島ジムリーダー、カンナ。推薦6の島ジムリーダー、ソラ」 『! 何で!?』 次のジュダもソラを推薦し、その瞬間ソラはナナシマリーグの筆頭リーダーに決定した。 ---- 「キクコお婆ちゃん」 ソラは会議が終わり最後まで残っていたキクコに話し掛けた。 「なんだい? あたしはもう帰ろうと思ったんだがね」 床を杖で叩いて欠伸をするキクコ。 その姿は元四天王とは思えない。 「何故皆さん私に投票したんですか? 私より相応しい人は居るはずです」 真剣な眼差しをぶつける。 「嫌なのかい? 筆頭リーダーが」 キクコはソラを見つめて問い掛ける。 「……自信がありません。私には荷が重いです」 ソラは頭を下げた。 「お願いです! 私の代わりにやってくれませんか!?」 言葉を受けて溜息をつくキクコ。 「……自分が選ばれた理由がわからないんだね、ソラ?」 問いに首を縦に振るソラ。 それを見て老婆は笑う。 「わからないならそれでいい。でも私やカンナ、ジュダがやることは無い。  まあ……更にニシキとメイジンとゴウゾウはないから最初からソラとDのどっちかだったのさ」 杖を突いて扉の前に立つキクコ。 「……何故やらないんですか」 後ろを向いている問い掛けるソラ。 その問いにキクコは一言呟いた。 「……百花繚乱」 キクコはそれだけ言うと部屋から出て行った。 ---- 廊下を歩く老婆。 目の前に人が居るのに気が付き足を止める。 前に居るのは青い髪の少年。 「あんたも言う事があるんだったら速く言いなよ。年寄りをこき使わないでおくれ」 そう言って男の横を通り抜けていく老婆。 「かなわないなあ、キクコ婆には」 男は髪をかきあげて呟く。 「……後は頼んだよD。今からはアンタ等の時代なんだ。  あたし達を一番若いソラが引っ張っていくんだ。  年が一番近いアンタがあの子を支えなきゃいけないんだからね」 杖を突いて廊下を歩き始めるキクコ。 その老婆の後ろ姿を見てDと呼ばれた少年は呟く。 「……貴方は尊敬に値するよ、キクコ婆」 その言葉に老婆は笑い声を上げて歩いていく。 少年はその様子に苦笑した。 「……全く、僕はこういうのは嫌いなんだけどね」 髪をかきあげて、少年は呟いた。 「ソラに用件だけ伝えるか。……はあ」 頭をかいて少年は部屋に向かう。 部屋の前に辿り着いて少年は扉を開けた。 ---- 部屋の扉を開けてDは驚愕する。 目に飛び込んできたのは少女が顔に手を合わせて泣いている姿だったからだ。 「ちょ、ちょっと! 何で泣いてるんだよ!」 慌てて近づくD。 その声にやっと気が付いたのかソラはDに目を向ける。 真っ赤に染まりきった目。 ソラは小さい声で呟いた。 「……だって……皆……理由を言ってくれないから……」 その言葉を聞いて溜息をつくD。 「そんなことで泣いてるのか。僕は真面目なキミが一番いいと思ったから入れただけ。  頑張っている人をサポートするのが僕にはあってるんだよ」 Dの言葉を聞き終えるとソラは涙を拭いて呟く。 「……そうなの?」 「そうだよ! 僕はリーダー体質じゃないんだよ、オリジナルと違ってね。  ああ、そう僕はキミに言う事があったんだ」 ソラに即答してDは髪をかきあげる。 「……何?」 「セキエイでの決戦には参加しないで。キミは色々な意味でイレギュラーだから」 Dはそう言うとポケモンを一体繰り出した。 「じゃあ僕は船に戻るよ。頼むよパートナー」 『心得た、D』 「待って、Dさん! 私は!」 光を放ち、Dとそのポケモンは一瞬で消えた。 「……私は……私は……」 ---- 一日前 ソラの家 出木杉帰宅後 「明日が決戦ですか……」 誰も居ない部屋でソラは呟く。 『あの人と戦って自分の実力を確かめたいと思っていたのに……皆と相談しますか』 そう思うと、ソラはポケモンを繰り出す。 出てきたのはエルレイド、サーナイト、キュウコン。 (何でカイリューは出さなかったの?) 思念波で伝えてくるキュウコン 「あの子は家の中では出れませんから」 ソラはキュウコンの問いに答える。 ソラの家系はポケモンと精神を共有する事ができる。 この事を詳しく知っているのは父のカイと兄のセイトのみでソラですら詳しくは知らない事だ。 普段はこれを隠しているがそれは兄の言い付けを守っているからである。 『あいつは居ないな……今日こそ切り殺してやろうと思ったのに』 [駄目ですよ、エル。彼女も私たちの仲間なんですから] エルレイドを嗜めるサーナイト。 それは彼らが夫婦だからこその光景だ。 「ねえ皆相談したいことが……」 ソラは言葉を紡ぎかけて、止めた。 ドアの音を立てては居ないが、誰かが家に入ってきたからである。 ---- (誰だろう?)[敵意は感じません。家の鍵を持っている誰かですね]『……俺たちの出番は無いな』 取りあえず全員をボールに戻すソラ。 そして来た人間を考える。 『敵意は感じない……そして家の鍵を持っている……心当たりは二人ですね。  でもどちらにしろ……用心をするに越した事はありませんね。  あの二人なら……大丈夫。どちらも……私よりは強い』 机の上に置いてあったナイフを取り、ソラはドアの前で息を潜める。 どうやら相手はリビングの写真を飾っている棚の前に立っているようだ。 これは好都合、相手は自分の距離からそんなに離れていない。 一つ息をついて、ソラは扉を開け、相手に飛び掛った。 だがその攻撃はあっさりかわされ、浮かんだ状態のソラは首を腕で捕まれそのまま床に叩きつけられた。 「けほっ!」 首を締められて呻き声を上げるソラ。 だが、ただで終わるわけにもいかない。 足を振り上げて相手の顔を狙う。 だがその動きを相手は予測していたかのように相手は先に足を手で抑えていた。 「負けを認めるか?」 男は少女に尋ねる。 問いに少女は頷いた。 首から手を離された少女は息を整える。 その様子を見て男は呆れたように呟いた。 「全く……俺はこんな教育した覚えは無いぞ」 そう言って、男は襟を正す。 その懐かしい仕草を見てソラは微笑を浮かべた。 「私も教育を受けた覚えはありませんから。カイ様には」 [[次へ>新カントー物語 その16]] ----

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