「挑戦者 その10」(2007/03/09 (金) 22:09:00) の最新版変更点
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「誰ですの?あなたたち」
エリカが今しがた壁から入ってきた三人にきく。
「入り口は一階ですけど?」
「ああ、正面が混んでたんでな」
ハヤトは袴を払いながら平然と答える。
「それに急いでたからちょっとすっ飛ばしてきた」
「なるほど」
エリカは顔色一つ変えず肯定する。
「それより、ここからどうやって出るの?」
スズナがハヤトにきく。
ハヤトたちがいるところは牢屋の中。
相手との間は鉄格子がある。
「なーに、こんな鉄」
ハヤトはそう呟くと、「エアームド、エアカッター」
エアームドが鉄の翼を振る。
風の渦がヒュッ、と音を鳴らす。
粉砕音が響き、鉄格子が散る。
両者の間を隔てるものは無くなった。
「これで思い切りやれるわけだ。
エアームド!エアカッター!」
再び風が鳴る。
目的はモンジャラ。だが
「思い切りやれるのは」
イワークが壁となり、風は掻き消される。
「こっちも同じだよ」
ヒョウタは微笑みかけてきた。
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鉄の壁、鉄の天井、鉄の床。
牢屋はそういうものなのだろう。
閉じ込められたものは冷酷に硬く、重い鉄により閉塞感を味わう。
人間味を感じさせない雰囲気は心の自由を奪う。
だけど、鉄は冷めやすいし、熱しやすい。
そう、今牢屋の階は熱かった。
「いわおとし!」
ヒョウタの命令と共に、天井が崩れ落ちる。
落下地点にいた三人は散り散りになる。
「ほら、スネ夫!」
のび太はスネ夫に手を伸ばす。
スネ夫は不意を突かれた。
「ど、どうしたんだよのびt」「上るよ。上まで」
「の、上るって……まさか最上階まで!?ちょ、ちょっと」
スネ夫の推測は正しかった。
のび太はスネ夫の腕をいやにがっしり掴み、階段へ向かう。
悪態をつくスネ夫を気にせず、のび太は上っていく。
埃から鉄までもが舞う部屋をあとにして。
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「ユキカブリ、こなゆき!」
スズナの声のもと、ユキカブリはモンジャラを攻撃する。
震えるモンジャラの蔓が凍りだす。
「モンジャラ、そのままつるのムチです!」
つるのムチは氷をまとい、ユキカブリを襲う。
「ユキカブリ、はっぱカッターで氷を砕いて!」
ユキカブリの手から葉が飛び出し、氷の蔓を襲う。
氷はひび割れ、澄んだ音を立てて裂ける。
だがムチの攻撃は続いていた。
鋭い音が響き、ユキカブリは呻く。
「モンジャラ、続けなさい!」
「ユキカブリ、走りながらこなゆきをかけ続けて!」
モンジャラのムチが次々と降り注ぐ。
ユキカブリはそれの間を駆け抜け、こなゆきを出す。
ムチは氷を纏い、肥大していく。
モンジャラの攻撃は威力を増していった。
それでも、スズナの読みどおり。
「どうやらスピードが遅くなっているみたいね!」
エリカは一瞬顔を歪めるが、すぐに命令を続ける。
「もっと速く、モンジャラ!」
だが、モンジャラにとってその命令は厳しかった。
何故なら蔓の氷がすでに大きくなりすぎていたから。
モンジャラは再び、ユキカブリ目掛けて蔓を振り上げる。
だが、蔓が高く上ったとき、限界を超越した。
蔓は大きな氷とともに、モンジャラに落下する。
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氷が落下すると、煙がもうもうと立ち込めた。
「くっ、戻りなさい」
エリカは煙の中にボールの光を出す。
だがなかなかモンジャラにあたらず、エリカは舌打ちする。
「結構慌てているようね」
ようやくモンジャラを収めると、スズナが挑発してきた。
「黙りなさい!」
エリカは淑やかさを忘れ、怒鳴りながらボールを取り出す。
「あっ!おい」
声をかけたのはヒョウタだったが、その声はエリカに届かなかった。
「いけタマタ……な!?」
エリカが繰り出したタマタマに突然菱形岩が降りかかる。
さっきのステルスロックだ。
「……ヒョウタ!!どうして言わなかった!?」
エリカが怒鳴ると、ヒョウタは反抗した。
「僕は止めたよ。でも君が気づかなかっただけだろ」
エリカは歯噛みして呻いていた。
「くぅっ!!タマタマ、ユキカブリを攻撃」
「あ、ゴメーン。凍らしといちゃったから」
スズナは氷付けにされたタマタマを示す。
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ヒョウタは隣でくず折れているエリカを一瞥してすぐ戦闘に目を向ける。
「イワーク、がんせきふうじ」
エアームドを取り囲むように、落石が生じる。
落石はエアームドに直下するが
「こうそくいどう」
一瞬でエアームドは技を回避する。
落石は空を押しつぶした。
「くそ、速いな。ならイワーク、ロックカット!!」
イワークの皮膚である岩石が削れ落ちる。
削れ落ちた岩が立てる粉塵の中、イワークは一段と軽くなっていた。
「たたきつける!」
イワークはエアームドに突撃する。
速さは格段に上がっている。
でも、エアームドは上をいっていた。
「避けろ!」
ハヤトの鋭い声。
エアームドはイワークの鼻先から姿を消す。
イワークは壁に激突した。
部屋は衝撃で揺れ動く。
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イワークは体制を持ち直す。
「イワークはまだ大丈夫だ。
そんなに柔な体じゃないんでね」
ヒョウタは笑いながら言う。
その様子がハヤトは気になった。
「ずいぶん楽しそうに話すな」
その質問に、ヒョウタは笑う。
「素晴らしい気分だからね!
こんな風に戦ってるとすがすがしいんだ!
さて、続けさせてもらうよ。イワーク!」
イワークは一声唸り、再びエアームド目掛ける。
何故だかイワークの速度は上がっていた。
トレーナーの気迫と呼応しているように。
ハヤトもその変化にきづいた。
「エアームド!こうそくいどう!」
ハヤトの素早い命令。
エアームドはそれをききとり、動こうとした。
でも少し遅れる。
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イワークの体がエアームドの羽を掠める。
エアームドは高い叫び声を上げ、壁に叩きつけられる。
「イワーク、今だ!」
ここぞとばかりにイワークは突撃する。
エアームド目掛けて。
「エアームド!避け」
爆発的な衝撃音が、ハヤトの必死の叫びを掻き消す。
代わりにエアームドの叫び声と、突風――
「な、まさか」
風を感じたハヤトはハッとする。
壁にぽっかりと穴が開いていた。
陽光が薄暗い階に差し込む。
光の中、ハヤトにはヒョウタの顔が見えた。
空虚な顔、やがて青ざめて口をあけ……
「イワァ―ク!!」
ヒョウタは穴のそばに駆け寄った。
だが、足元の鉄片に躓き、ヒョウタの勢いは落ちることなく。
ハヤトは考えるより速く手を伸ばし、ヒョウタを掴んだ。
ヒョウタは顔だけ穴から出し、ゆれ留まる。
やがてゆっくりと建物内に押し戻された。
ハヤトは穴の下を覗く。
下にはイワークとエアームドが倒れていた。
二体の周りには民衆が集まっている。
「やれやれ、おいお前、イワークのボールを」
ハヤトはヒョウタを向いた。その時だった。
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ハヤトはヒョウタの首飾りに気づいた。
ハガネールを模した銀のペンダントだ。
ハヤトは息を呑み、ヒョウタを掴む。
あまりの勢いにヒョウタは押し倒されそうになった。
「な、何だよ!」
ヒョウタは怒鳴るが、ハヤトは鋭く睨みつける。
「きかせてくれ。
……そのペンダント。そうか。
お前はトウガンさんの息子なのか?」
ヒョウタは僅かばかり眉を上げ、顔を逸らす。
「あんた、親父のこと知ってるのか」
「ああ、知ってる!」
ヒョウタは力強く答えた。
「トウガンさんはお前のことを待って」「ここでは話さないでくれ!」
ヒョウタはそう言うと立ち上がる。
ハヤトはヒョウタの様子を見つめていた。
目の前にいるヒョウタは、イメージしていたヒョウタと違っていた。
というか、ロケット団員だなんて。
「ほら、終わったようだよ」
ヒョウタはハヤトに告げた。
ハヤトが見ると、崩れ折れるエリカと笑顔のスズナが目に映る。
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「あんたはいきなよ。
僕が後始末しておく」
ヒョウタの言葉にハヤトは驚いて振り向く。
「お前」
「安心してくれ。これでも団の中じゃ有力なんだよ」
ハヤトはヒョウタの気持ちを察した。
「ご免」
ハヤトはそう言うとスズナに駆け寄った。
「馬鹿な奴らめ」
モテ夫はモニターで全て見ていた。
「あんなに簡単にまけるなんてまったくあれでも幹部の」
「モテ夫さま」
サカキが声を掛ける。
「なんだ?サカキ」
モテ夫は相変わらず振り返らずに言う。
「お客様をお連れしています」
「客?そんなもの」
モテ夫はそこで初めて振り返った。
「お、おまえ!」
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モテ夫は息を呑む。
「モテ夫君。
そろそろ終わりだよ」
宣告がモテ夫の耳にこだまする。
「どういう意味だい……ドラえもん!」
モテ夫は恐怖を感じていた。
目の前の青いロボット――ドラえもんの言葉に。
ドラえもんは無表情のまま頷く。
「言葉どおりの意味だよ。モテ夫君。
君はもう十分楽しい思いをしただろう?
さあ、僕らのところに帰るんだ」
「……いやだね」
モテ夫は強気に答える。
「サカキ、こいつを連れ出せ!」
モテ夫は怒鳴るが、サカキは動かない。
「モテ夫さま。
私はリーダーの指示をききます」
「リーダー?」
モテ夫は鼻で笑う。「それは僕だろう」
「違うよ」
入り口から誰かが否定する。
モテ夫の視線が入り口へ写る。
入り口の人物は優しげに告げる。
「そのリーダーは、僕さ」
出木杉がそこにいた。
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「なあ……のび太」
スネ夫は階段を駆け上りながら、声をかける。
「ん?なんだい」
のび太は顔を向け、首を傾げる。
「あのさぁ、実は……し、しずちゃんが話あるって」
スネ夫は必死に取り繕った。
自分で言及することもできるが、それには危険が伴う。
なのでスネ夫はこのように、かかる危険を自分からしずかに移した。
「ふうん、しずかちゃんが」
のび太は事も無げにまた階段を上りだす。
(……本当にしずちゃんの言っていた通りだ。
でも、これだけじゃ無いよな)
スネ夫はのび太の行動を監視する。
ジャイ子は最上階の一室で待っていた。
部屋の扉には『牢屋』と書かれている。
のび太、スネ夫は必ずこの部屋に来るだろう。
「けれど……」
ジャイ子は牢を振り返る。
鉄格子の向こうにジャイアンが、石の床で座っている。
そして、そのすぐ脇のテーブルにはモンスターボールが三つとリュック一つ。
ここはジャイアンの荷物を隠した部屋だったのだ。
ジャイ子は一抹の不安を抱えていた。
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「ジャイ子」
ジャイアンはだめもとで話しかけた。
「本当に改心してはくれないんだな」
「当然よ」
ジャイ子ははっきりと言う。
「アタシの気持ちは変わらないわ」
するとジャイアンは溜め息をついて、テーブルを見つめる。
(せめて俺のボールさえ取れれば……)
ジャイアンは歯噛みしている。
その時だった。
「!!来たわ」
ジャイ子は立ち上がると、自分のボールに手を掛ける。
同時に、部屋の扉が開かれた。
「フフフ、今最高に活気付いているこの僕スネ夫さまただ今参じょ「行きなさい、ハクリュー」……え?」
言葉を折られた上にとんでもない化け物を見せられたスネ夫は呆然とした。
そこに息を荒げたのび太が到着する。
「?どうしたのスネ……!!」
のび太は部屋の中で広がる二つの生き物を見た。
いや、『二つの』ではない。『二つ分の』……
「うわぁ……」
のび太は思わず声を漏らす。
双頭のハクリューだ。
青い鱗が煌びやかに照り、その異形を際立てる。
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「こ、これも改造ポケモン!?」
スネ夫はぽかんとしながら叫ぶ。
「そうよ!」
ジャイ子は意地悪く笑いながら答える。
「さあ、行け!ハクリュー!!」
左首のハクリューが一声唸る。
「!!?」
スネ夫は突然体を強張らせる。
「スネ夫!?」
のび太はスネ夫に駆け寄ろうとするが
「来るな……ただのでんじは……来るぞ!!」
スネ夫の声で振り返るのび太。
右首のハクリューが大きく首を振り上げ――
「たたきつけるだ!」
のび太は叫びながらスネ夫を抱えて、ハクリューの懐に飛び込む。
背後で首が空を切り、粉塵が巻き上がる。
「あ~あぶなか……」
溜め息をつくのび太の目に、牙をむく左首ハクリューの顔が――
のび太は声にならない叫びを上げ、スネ夫を抱えたままハクリューの右脇に逃げ込む。
なんとか落ち着くと、のび太はリュックからまひなおしを取り出し、スネ夫に与えた。
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「おい、お前ら!!」
ジャイアンが怒鳴ってきた。
「こんな化けモンにびびってねえで、とっととポケモン出せ!!」
「……ふう、まったく無茶言うよ」
自由になったスネ夫が愚痴を漏らす。
「でも、言ってることはあってるよ」
のび太はボールを取り出しながら言う。
スネ夫は立ち上がり、頷く。
「のび太。出すのはハスボーだ」
急に語調を変えたスネ夫をのび太は見つめた。
「何かいい考えがうかんだの?」
「もちろん。怒鳴られてすっきりしたよ」
スネ夫はのび太に笑いかけてきた。
のび太も笑い返す。
ハクリューはゆっくりと、のび太とスネ夫の方へ向きを変えてきた。
「行くよ!ハスブレロ」「行け、チルット!」
二人のポケモンが繰り出される。
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(お……おお!?)
ジャイアンは誰にも気づかれないように喜んだ。
先ほどの右首ハクリューのたたきつける。
その衝撃で削れた石片が、手元にある。
鋭い石。硬い。
これをつかえば、もしかしたら……
(この縄を切れるかも!?)
ジャイアンはジャイ子の様子を伺いながら作業を始めた。
「チルット、どっちでもいい。
首元を旋回するんだ!」
スネ夫は指示を出すと、のび太へ目を移す。
「のび太。僕が合図したら『しろいきり』だ。
合図するまで何もするなよ」
のび太は頷いた。
チルットは左首ハクリューの首元を回る。
ハクリューがいらいらした様子でその後をおう。
やがて左首ハクリューが唸り、大口を開け――
「今だ!のび太!!」
「しろいきりだ、ハスブレロ!!」
丁度チルットが左首ハクリューの口に近づいた瞬間。
霧が一気に立ち込める。
辺りは白く包まれる。
視界はほんの少しだけ……
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(……き、切れた!!)
ジャイアンは縄を切り落とすと、見えないことをいいことに一人ガッツポーズする。
(おっと、こうしちゃいられねえ)
ジャイアンは手探りでテーブルを探し出す。
やがてジャイアンはついに見つけた。
自分のボールを。
(おっしゃぁ!!これで戦え……)
ジャイアンの思考は急に切り替わる。
霧が晴れてきた。
そして同時に、格子の向こうで気味の悪いものが見える。
「な……なんだよあれ」
ジャイアンは唖然とする。
「な、なに?」
ジャイ子は目の前の光景を見て呟く。
だらりと垂れる右首ハクリュー。
その首に巻きつく左首ハクリュー。
「よくやった、チルット」
スネ夫が手を伸ばすと、チルットは無事生還してきた。
ハクリューは右首から地面に倒れ、地響きを出す。
そして動かなくなった。
「ふふ、チルットを囮に使ったんだ」
スネ夫が呆然とするジャイ子に解説する。
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左首ハクリューはチルットを追っていた。
そこに突然白い霧が巻かれ、視界が狭まる。
左首ハクリューの意識はチルットに集中した。
チルットは命令どおり右首ハクリューの首元を回る。
左首ハクリューはその後を追いかけ、知らないうちに
右 首 ハ ク リュ ー の 首 を 絞 め て い た。
「……これが、霧の中起こっていたことさ」
スネ夫は長々と説明していた。
「あ、あいつらすげえ……」
ジャイアンは口を開けながら驚嘆する。
(な、なんて驚いてる場合じゃねえ……)
ジャイアンはボールをリュックにしまい始めた。
ジャイ子は舌打ちしながらも構える。
「まだよ……まだモテ夫さまから授かったバシャーモが」
「「もしも~し」」
突然、放送が鳴った。
その場の四人は顔を上げる。
「い、今の声は……!!」
スネ夫が息を呑み、呟く。
「出木杉……だったよな」
ジャイアンが言う。
「「あ~もう聞こえたかな?
簡単に言うよ。
茂手モテ夫は僕が倒した。もうここにはいない」」
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出木杉は不気味に笑いながらマイクの前にいた。
「ロケット団の皆さん。
そして民衆の方々。
人探しはもういいです。
撤収してください」
「お……おいやめろ……」
出木杉の背後でモテ夫は呻く。
「ん~?」
出木杉はマイクから離れ、モテ夫の前に立つ。
「民衆は……ロケット団のことを……知らない。
そんなことばらしたら、大変なことに」
「ダーテング」
出木杉はモテ夫の台詞を無視して自分のポケモンを呼ぶ。
「や、やめろ」
モテ夫の必死の懇願は出木杉に踏みにじられる。
「じんつうりき」
「やめろおオォぉあァぁあァ!!」
モテ夫は頭を抱えて転げ周り、そして動かなくなる。
「ドラえもん、これでいいんだろ?」
出木杉は肩をすくめてきく。
「……いや、まだだ」
ドラえもんはきっぱり告げる。
「僕は君も止めなければならない。
なぜなら君もモテ君と同じく」
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途端に出木杉は高笑いする。
「僕が?そいつと同じだって?
ハハハ!! 月とすっぽんだよ。
そいつはこの世界の長には相応しくない。
真の天才はこの僕だけさ」
ドラえもんは首を横に振る。
「違う。君も彼と同じく、この道具で」
「ドラえもん。
今すぐ外で待っているサカキを呼んであげてもいいんんだよ?」
その言葉で、ドラえもんは黙り込む。
「せっかく二人になれたんだ。
話したいことは山ほどあった」
出木杉は椅子に座り、頬杖をつく。
「いったい何をだい?」
ドラえもんはまずきいた。
これが尋問の始まりだった。
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