「ルビー その7」(2007/03/09 (金) 21:03:07) の最新版変更点
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≪のび太サイド≫
ここはトクサネシティ。
マグマ団を倒した僕達4人は、ここで1日だけ休暇をとることにした。
今までの旅の疲れを癒すためだ。
……とはいっても、特にやることがないんだよね。
宿でゴロゴロしてるのもつまらないし、僕は外に出てみることにした。
「うーん……」
外に出てはみたものの、やはりやることがない。
そして、僕がうろうろして考えている時。
「君、ポケモントレーナー?」
誰かが僕の肩をポンと叩き、僕は後ろに振り向く。
そこにいたのは、僕が思いもよらない人物。
「はじめまして。僕はダイゴだ」
そう、リーグチャンピオン・ダイゴ。
「え?ダイゴさんって……あのチャンピオンの?」
ふぬけた顔で質問する僕に、ダイゴさんは笑って答える。
「ああ、そうさ。君……7個もバッジを持っているんだね。勝負しないかい?」
「え……」
どういうことだ?いきなり勝負だなんて……。
だけど、チャンピオンの申し込みを断るわけにもいかない。
「あ、はい。いいですよ」
----
≪のび太サイド≫
「そうか。ここじゃあまずいから、砂浜のほうでやろうか」
「は、はい」
ダイゴさんに先導され、僕も砂浜のほうへ歩き出す。
「……よし、ここでいいか。それじゃ……いけ、エアームド!」
「頼んだよ、ペリッパー!」
はじめて見るチャンピオンのポケモン。
真上からじんじんと照りつける太陽を挟み、バトルが始まった。
「ペリッパー、電撃波だ!」
「高速移動でかわせ!エアームド!」
目にも止まらぬスピードで動き回るエアームド。
当然、攻撃が当たることはない。
「今だ、エアームド。燕返し」
瞬時にエアームドがペリッパーの背後に回りこみ、翼で斬りつける。
そして、当然というべきなのだろうか、ペリッパーは一撃で沈む。
「ペ、ペリッパー!」
つ、強い。これが、リーグチャンピオンか……。
相手の実力を再認識した僕は、次のボールに手をかける。
「いけ、コノハナ!」
----
≪のび太サイド≫
「コノハナか……。戻れエアームド。そして、出て来いアーマルド!」
ダイゴさんの次のポケモンはアーマルド。
化石から復元されたポケモンだけあって、その威圧感は凄まじい。
「コノハナ、かわらわり!」
「受けて立とう。アーマルド、アイアンテール!」
アーマルド向かって振り落とされるコノハナの手刀。
しかし、それはアイアンテールによって阻まれ、体ごと吹き飛ばされてしまう。
「トドメだ。アーマルド、かわらわり!」
仰向けになった状態のコノハナに繰り出される攻撃。
それは、たった一撃でコノハナの体力を奪い取った。
「戻れコノハナ。次は……」
僕はボールを選ぼうとする。
「いや、もういい。ありがとう」
アーマルドをボールに戻すダイゴさん。
「この辺でとめておこう。……それと、君にはこれをあげよう」
ダイゴさんは1個のモンスターボールと緑の石を僕に手渡した。
「リーフの石。コノハナを進化させるために必要なものだ。それと……そのボールには
ダンバルが入っている。君へのプレゼントだ」
……僕へのプレゼント?それにしても、何で僕に?
よくわからないが、お礼をしなくちゃ。
「あ、ありがとうございます。大事にします」
僕の返事を聞くと、ダイゴさんはにっこり微笑んだ。
「それじゃ、またどこかで会おう」
ダイゴさんはエアームドに乗り、飛び立っていった。
----
トクサネシティの宿。
外からポツポツという雨の音が聞こえてくる。
そこで、休暇を終えた4人は宿で出される高級料理を食べていた。
「これは美味しいわ!」
はしを休めることも無く食べるしずか。
「フン。僕はこんなの何回も食べたけどね……」
と、言いながらも我先にとはしを動かすスネ夫。
そんな微笑ましい空気の中、宿の扉がコンコンと叩かれた。
のび太がそれに気付き、扉を開ける。
そこにいたのはオレンジ色の髪をした少女。
だが、どこか様子がおかしい。
「どうしたの?」
のび太が聞くと、少女は体を震わせて言った。
「……寒い……寒いよ……」
その少女の名前はリン。
気付いたときには砂浜に打ち上げられていて、ようやくここり辿り着いたらしい。
そして、リンもこの宿に泊まることになった。
----
その翌朝。
「あのね、リンはポケモントレーナーなの!」
嬉しそうに話すリン。
どうやら、大分溶け込めてきたみたいだ。
「でもね……リンはまだ弱いんだ!だから、みんなに手伝ってほしいの」
のび太達4人は、リンの修行を手伝うために砂浜に行った。
「あ、あれはサメハダー!」
嬉しそうに叫ぶリン。そして、ボールからポケモンを出す。
「お願い、プラスル!スパークよ!」
……しかし、攻撃はサメハダーに避けられる。
「リンちゃん!電磁波で相手の素早さを下げるんだ!」
と、大声でアドバイスをするのはスネ夫。
「わ、わかった!電磁波よ!」
リンはスネ夫の指示通りに電磁波を出し、サメハダーを麻痺状態にさせた。
「今だリンちゃん!トドメをさすんだ!」
次はのび太が指示を出した。
「うん!とどめのスパークよ!」
スパークは見事に命中し、サメハダーを沈ませる。
「やった!やった!ありがとうね、みんな!」
リンが歓喜の叫びをあげ、プラスルをボールに戻そうとした――その時。
大きな爆発音と共にトクサネシティの建物が崩れ落ちた。
そして、次々に建物が爆破される……。
辺りに断末魔の叫びが響き、のび太達は大急ぎで町へ戻った。
----
ダッシュでトクサネシティに戻るのび太達。
そこには、想像を絶する光景があった。
「あれは……ミュウツー!」
ジャイアンが、震えている手で町の北端を指さした。
そこだけではない。
町中の建物を破壊しているモノ……それは紛れも無く伝説のポケモン・ミュウツー。
しかも、一体だけではない。ざっと十体はいるだろう。
その後ろでは、研究員の身なりをした男が指示を出している。
すぐさまジャイアンが飛び出し、一人の男のむなぐらを掴む。
「何やってんだよ、テメェ……」
男はジャイアンの腕を振り払って答えた。
「見ればわかるだろ?壊しているんだよ。今頃、ホウエン地方の大都市は全て襲われているハズだ……」
男の言葉にジャイアンは激怒した。
「どうして……どうしてこんなことを!」
「全てはあの方のご意志。そして、私達はそれに従っている。この世界を手に入れるためにな」
悪びれもなく言い放つ男。
ジャイアンは殴りかかろうとするが、それはスネ夫の叫びによって止められる。
「落ち着けよ、ジャイアン!その男の言葉通りだとしたら……ホウエン地方が危ない!他の町も守りに行かなくちゃ!」
スネ夫が言い終えると、次はのび太が言った。
「リンちゃんは気が動転してるみたいだから、ここは僕に任せて!みんなは他の町を!」
スネ夫、ジャイアン、しずかの3人は一斉に頷き、ポケモンに乗って飛び立った。
----
≪スネ夫サイド≫
僕はクロバットに乗って飛び立ち、ポケナビを見る。
ポケナビにはホウエン地方のニュースが反映されているのだ。
「被害を受けているのは……カナズミシティ、フエンタウン、ヒマワキシティ、トクサネシティか」
僕は大急ぎでジャイアンとしずかちゃんに報告した。
「被害を受けているのはその4地域だ!僕はカナズミシティに向かうよ!」
カナズミシティ。
ジムリーダーのツツジさんと一人の少年が必死に攻撃を食い止めている。
「援軍にきました!僕も手伝います」
僕はクロバットから降り、戦闘体制をとる。
「あなたは、いつしかの……」
どうやら、ツツジさんは僕のことを思い出したみたいだ。
「ええ。でも、今はそんな事を言ってる場合じゃない。ジュカイン、町を守るんだ!」
僕達3人はフルメンバーを出し、町を守らせた。
「このままじゃいずれ負けてしまう……あのミュウツー達に勝つにはどうすれば……」
今の防戦一方の状態ではやられるのは明白。
とりあえず時間を稼いで、策を練るしかない……。
「頑張ってくれ、みんな!」
----
≪ジャイアンサイド≫
俺が真っ先に向かったのはフエンタウン。
今、前戦ったジムリーダーの姉ちゃんと背中を合わせて戦っている。
「コイツ等……かなり強いぜ、姉ちゃん」
「アスナだよ、アスナ。それはともかく、私達が倒されるのも時間の問題ね」
俺とアスナは必死に抵抗するが、十数体の伝説のポケモンには適わない。
「はぁはぁ……コータス、オーバヒート!」
「まだまだぁ!ボーマンダ、火炎放射!」
二つの強力な炎が放たれ、ミュウツー達を襲う。
しかし、それは建物に当たる。
「これは……サイコキネシスで方向転換させたのか!」
ミュウツーの力を目の当たりにして、驚くアスナ。
「なあ……本来ならこんなにミュウツーが出るってことはありえないよな?」
俺はアスナに問い掛ける。
「ああ。何かトリックがあるハズね。だが、それがわからない……」
考えろ、俺。トリック……トリック……。
だが、頭を捻っても無駄だった。何も思いつかない。
「みんな!他の町から援軍を呼んで!そして、ポケモンを出しなさい!」
アスナの声が響くと、ジムトレーナー達は大急ぎで他の町へ向かう。
そして、残ったものはポケモンを出して攻撃を阻止する。
「みんな!頑張って持ち応えるんだよ!」
----
伝説のポケモン・ミュウツー達の襲撃。
それは各地に甚大な被害を与え、今も尚それは続いている。
そして、破壊工作を止めるべく戦闘に参加したトレーナー達の疲労は限界に達していた。
カナズミシティ。
町の端にまで追い込まれたスネ夫とツツジ、そして少年。
既にポケモン達は瀕死状態になっており、万事休すだ。
フエンタウン。
背を合わせ、どんどん追い詰められていくジャイアンとアスナ。
他のトレーナー達の援軍も虚しく、町は焼け野原と化していた。
ヒワマキシティ。
戦力を失い、力尽きて倒れ込むしずかとナギ。
まだ戦っているトレーナー達も次々とやられ、絶体絶命の状況だ。
トクサネシティ。
沢山のミュウツー相手に一人で戦っていたのび太。
完膚なきまでに叩きのめされ、その周囲には力尽きたポケモン達が虚しく倒れている。
どの町でも似たような光景が繰り広げられており、破壊工作は止まる所を知らない。
そして、全員が死を覚悟した時――
プルルルル、プルルルル。
隊長と思われる男のトランシーバーが鳴った。
そのトランシーバーから首謀者と思われる男の命令を受け、隊長は声をあげる。
「全員に告ぐ。今すぐ攻撃を中止しろ!そして、ルネシティへ向かえ!」
----
ホウエン地方の各地。
隊長の命令を受け、男達は次々に姿を消していく。
ミュウツーの超能力による瞬間移動。つまりテレポートに似たような現象だ。
のび太達はポケナビで連絡をとり、トクサネシティで落ち合うことにした。
トクサネシティ。
ポケモンに乗って現れるトレーナーとジムリーダー達。
一行はポケモンの体力を回復させ、ルネシティへ向かった。
「さっきの襲撃事件……このホウエン地方で何かが動いているようですね」
ルネシティへ向かう途中、最初に口を開けたのは少年ミツル。
「ええ。それにあの数とあの能力……。相当な技術者達だわ」
ヒワマキシティジムリーダー・ナギが言った。
「僕達、これからどうなっちゃうんだろう……」
のび太が弱々しく呟き、再び元の沈黙に戻る。
「あ、見えた!ルネシティの入り口!」
スネ夫が叫び、その指指す先にはルネシティの入り口と思われる穴がある。
一行はダイビングで上に上がっていく――
だが、そこで見た光景はのび太達にとって信じられないものであった。
一人の少年がレックウザに乗り、町を破壊している。
その少年は、現リーグチャンピオン――そして、のび太達と共に旅立った仲間――
少年の名は出木杉英才。
----
「お前は、出木杉!」
レックウザを従え、町を破壊しているのは紛れも無く出木杉だ。
のび太の声を聞き、出木杉は地に降りる。
「やあ、久しぶりだね。みんな」
まるで何も無かったかのような発言。
出木杉は、顔色一つ変えず言った。
「てめぇ、何してるんだ!」
ジャイアンが叫ぶ。
すると、出木杉はヤレヤレといった素振りを見せる。
「……ププッ。見てわからない?この町を破壊しているのさ」
あっけなく言い放つ出木杉。
「何で……何でこんなことを!」
スネ夫が懐のボールに手をかけ、言う。
「これが僕の望みだからさ。さあ、早く僕を倒さないと町が潰れるよ?」
部下達のミュウツーは次々と光線を放ち、町を破壊している。
そして、仲間の変わりように驚愕していたのび太達も、危険を悟り覚悟を決める。
「僕が行くよ。僕が君を倒す!」
最初に一歩踏み出したのはのび太だ。
……だが、それはスネ夫の手によって制止される。
「ダメだ。今一番弱いお前が行っても負けるだけ。ここは僕がやる」
スネ夫の言葉を聞いて、のび太はしぶしぶ踏み出した足を戻す。
「出木杉は僕に任せて。みんなはミュウツー達を食い止めるんだ!」
----
「僕の相手は君かい、骨川君」
出木杉はレックウザを従え、スネ夫と対峙する。
「ああ。何でこんな事になったのかわからないけど、君を倒してでも探ってやるよ」
一触即発。緊迫した空気が流れる。
そして、出木杉がその空気を立ち切った。
「ここは狭い。バトルには不向きだな……。レックウザ、冷凍ビームだ」
レックウザが氷の光線を放ち、ルネの水上を凍らせていく。
たちまち辺りには氷の地盤が出来た。
「どうだい?骨川君。これがレックウザの力さ。逃げるのなら今のうちだよ?」
出木杉がこれみよがしに言って見せるが、スネ夫は動じない。
「御託はもういいだろ?こっちの準備は出来てるんだ。早くしてくれ」
ジュカインを出し、あくまでも平然を装うスネ夫。
だが、その胸に秘めた不安が顔にも表れている。
『カッコ付けて言っちゃったけど、相手はレックウザ。僕は勝てるのか?』
「フフ、じゃあやろうか……」
出木杉がそう言うと、とぐろを巻いた龍が急降下してくる。
「それじゃあ、始めようか」
出木杉の声と共に、加速をつけてジュカインに向かってくるレックウザ。
ルネシティの氷上にて、戦いが始まった。
----
猛スピードで向かってくるレックウザ。
「レックウザ、燕返し!」
出木杉の命令と共に、レックウザはその尾でジュカインを切り裂く。
「ジュカイン!」
効果抜群の一撃を食らい、ジュカインはかなりのダメージを受けた。
「あれ、よけないの?どうしたのかなぁ?」
ニヤニヤと笑っている出木杉。
対して、スネ夫は焦っていた。
『今の攻撃……タイミングが早い!』
そう、ジュカインはよけないのではなくよけきれない。
哀れかな、レベルの差がありすぎるのだ。
「まだまだいくよ。レックウザ、もう一度燕返し!」
再びジュカインの前に現れるレックウザ。
だが、何度も同じ手でやられるスネ夫ではない。
「ジュカイン、見切りだ!」
ジュカインを青い防御壁が包み、勢い良く振り落とされるレックウザの尾を無効化する。
「なるほど、見切りか。だが、それはただの時間稼ぎにしかならないよ」
余裕の出木杉。
だが、スネ夫の頭の中では一つの作戦が導き出されていた。
『無駄に時間稼ぎをしているわけじゃないさ。目にもの見せてやる!』
----
青い防御壁に阻まれ、尾を休めるレックウザ。
「いつまで持つのかな?骨川君」
出木杉が挑発するも、スネ夫はニヤニヤと笑っている。
その顔はさっきまでとは一変、自信に満ち溢れた表情だ。
「ジュカイン、高速移動だ!」
レックウザの周囲を高速で動き回るジュカイン。
「これは……何のつもりだい?」
出木杉はよくわからないという表情をしている。
「見ての通りさ。確かにレックウザの攻撃タイミングは速い。でも、レックウザが
ジュカインに近づくまでにある程度距離をとっておけば、話は別だよね」
スネ夫の言葉を聞き、出木杉は状況を把握した。
「じゃあ、試してみるか……」
またもやレックウザがジュカインに近づき、その尾を振り落とす。
……だが、尾は空を切った。
その様子を見て、スネ夫が更に話を続ける。
「ジュカインのスピードに高速移動のスピードが加わったんだ。そう簡単には攻撃を当てられないよ」
攻撃を外したレックウザの周囲を移動するジュカイン。
見事にしてやられた出木杉は、苛立ちを隠せない。
「今すぐとらえてやるよ……レックウザ、龍の舞!そして間合いをとって破壊光線だ!」
レックウザは体をくねらせ、攻撃力と素早さをあげる。
そして、フルスピードでジュカインに近づく――
「決めろ、レックウザ!」
ジュカイン目掛け、眩い光線が発射された。
----
至近距離で破壊光線を受けたジュカイン。
当然、まともに立っていられるハズがない。
「ジュカイン!ジュカイン!」
スネ夫の必死の叫びも虚しく、力尽きたジュカインがあらわになる。
「所詮はこの程度か……。でも、暇潰しには丁度良かったよ」
出木杉は、レックウザをボールに戻す。
『何故レックウザを戻すんだ?』
疑問に思うスネ夫。
だが、その疑問はすぐに晴れた。
「お前達、撤退だ。もうこのぐらいでいいだろう」
出木杉の撤退命令と共に、ミュウツーと研究員の男達が次々と消えていく。
まるで、さっきまでの戦闘がウソのように。
ジャイアン達も疲労のあまり腰を落とす。
「さて、いいかい?君達」
ほぼ全員が疲れてその場に座り込んでいる中、出木杉が話を始める。
「今回のは序章に過ぎない。いずれは僕達がこの世界を手中にする……。」
そう言うと、出木杉はレックウザに乗り、去っていった。
[[前へ>ルビー その8]]
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[[前へ>ルビー その6]]
≪のび太サイド≫
ここはトクサネシティ。
マグマ団を倒した僕達4人は、ここで1日だけ休暇をとることにした。
今までの旅の疲れを癒すためだ。
……とはいっても、特にやることがないんだよね。
宿でゴロゴロしてるのもつまらないし、僕は外に出てみることにした。
「うーん……」
外に出てはみたものの、やはりやることがない。
そして、僕がうろうろして考えている時。
「君、ポケモントレーナー?」
誰かが僕の肩をポンと叩き、僕は後ろに振り向く。
そこにいたのは、僕が思いもよらない人物。
「はじめまして。僕はダイゴだ」
そう、リーグチャンピオン・ダイゴ。
「え?ダイゴさんって……あのチャンピオンの?」
ふぬけた顔で質問する僕に、ダイゴさんは笑って答える。
「ああ、そうさ。君……7個もバッジを持っているんだね。勝負しないかい?」
「え……」
どういうことだ?いきなり勝負だなんて……。
だけど、チャンピオンの申し込みを断るわけにもいかない。
「あ、はい。いいですよ」
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≪のび太サイド≫
「そうか。ここじゃあまずいから、砂浜のほうでやろうか」
「は、はい」
ダイゴさんに先導され、僕も砂浜のほうへ歩き出す。
「……よし、ここでいいか。それじゃ……いけ、エアームド!」
「頼んだよ、ペリッパー!」
はじめて見るチャンピオンのポケモン。
真上からじんじんと照りつける太陽を挟み、バトルが始まった。
「ペリッパー、電撃波だ!」
「高速移動でかわせ!エアームド!」
目にも止まらぬスピードで動き回るエアームド。
当然、攻撃が当たることはない。
「今だ、エアームド。燕返し」
瞬時にエアームドがペリッパーの背後に回りこみ、翼で斬りつける。
そして、当然というべきなのだろうか、ペリッパーは一撃で沈む。
「ペ、ペリッパー!」
つ、強い。これが、リーグチャンピオンか……。
相手の実力を再認識した僕は、次のボールに手をかける。
「いけ、コノハナ!」
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≪のび太サイド≫
「コノハナか……。戻れエアームド。そして、出て来いアーマルド!」
ダイゴさんの次のポケモンはアーマルド。
化石から復元されたポケモンだけあって、その威圧感は凄まじい。
「コノハナ、かわらわり!」
「受けて立とう。アーマルド、アイアンテール!」
アーマルド向かって振り落とされるコノハナの手刀。
しかし、それはアイアンテールによって阻まれ、体ごと吹き飛ばされてしまう。
「トドメだ。アーマルド、かわらわり!」
仰向けになった状態のコノハナに繰り出される攻撃。
それは、たった一撃でコノハナの体力を奪い取った。
「戻れコノハナ。次は……」
僕はボールを選ぼうとする。
「いや、もういい。ありがとう」
アーマルドをボールに戻すダイゴさん。
「この辺でとめておこう。……それと、君にはこれをあげよう」
ダイゴさんは1個のモンスターボールと緑の石を僕に手渡した。
「リーフの石。コノハナを進化させるために必要なものだ。それと……そのボールには
ダンバルが入っている。君へのプレゼントだ」
……僕へのプレゼント?それにしても、何で僕に?
よくわからないが、お礼をしなくちゃ。
「あ、ありがとうございます。大事にします」
僕の返事を聞くと、ダイゴさんはにっこり微笑んだ。
「それじゃ、またどこかで会おう」
ダイゴさんはエアームドに乗り、飛び立っていった。
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トクサネシティの宿。
外からポツポツという雨の音が聞こえてくる。
そこで、休暇を終えた4人は宿で出される高級料理を食べていた。
「これは美味しいわ!」
はしを休めることも無く食べるしずか。
「フン。僕はこんなの何回も食べたけどね……」
と、言いながらも我先にとはしを動かすスネ夫。
そんな微笑ましい空気の中、宿の扉がコンコンと叩かれた。
のび太がそれに気付き、扉を開ける。
そこにいたのはオレンジ色の髪をした少女。
だが、どこか様子がおかしい。
「どうしたの?」
のび太が聞くと、少女は体を震わせて言った。
「……寒い……寒いよ……」
その少女の名前はリン。
気付いたときには砂浜に打ち上げられていて、ようやくここり辿り着いたらしい。
そして、リンもこの宿に泊まることになった。
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その翌朝。
「あのね、リンはポケモントレーナーなの!」
嬉しそうに話すリン。
どうやら、大分溶け込めてきたみたいだ。
「でもね……リンはまだ弱いんだ!だから、みんなに手伝ってほしいの」
のび太達4人は、リンの修行を手伝うために砂浜に行った。
「あ、あれはサメハダー!」
嬉しそうに叫ぶリン。そして、ボールからポケモンを出す。
「お願い、プラスル!スパークよ!」
……しかし、攻撃はサメハダーに避けられる。
「リンちゃん!電磁波で相手の素早さを下げるんだ!」
と、大声でアドバイスをするのはスネ夫。
「わ、わかった!電磁波よ!」
リンはスネ夫の指示通りに電磁波を出し、サメハダーを麻痺状態にさせた。
「今だリンちゃん!トドメをさすんだ!」
次はのび太が指示を出した。
「うん!とどめのスパークよ!」
スパークは見事に命中し、サメハダーを沈ませる。
「やった!やった!ありがとうね、みんな!」
リンが歓喜の叫びをあげ、プラスルをボールに戻そうとした――その時。
大きな爆発音と共にトクサネシティの建物が崩れ落ちた。
そして、次々に建物が爆破される……。
辺りに断末魔の叫びが響き、のび太達は大急ぎで町へ戻った。
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ダッシュでトクサネシティに戻るのび太達。
そこには、想像を絶する光景があった。
「あれは……ミュウツー!」
ジャイアンが、震えている手で町の北端を指さした。
そこだけではない。
町中の建物を破壊しているモノ……それは紛れも無く伝説のポケモン・ミュウツー。
しかも、一体だけではない。ざっと十体はいるだろう。
その後ろでは、研究員の身なりをした男が指示を出している。
すぐさまジャイアンが飛び出し、一人の男のむなぐらを掴む。
「何やってんだよ、テメェ……」
男はジャイアンの腕を振り払って答えた。
「見ればわかるだろ?壊しているんだよ。今頃、ホウエン地方の大都市は全て襲われているハズだ……」
男の言葉にジャイアンは激怒した。
「どうして……どうしてこんなことを!」
「全てはあの方のご意志。そして、私達はそれに従っている。この世界を手に入れるためにな」
悪びれもなく言い放つ男。
ジャイアンは殴りかかろうとするが、それはスネ夫の叫びによって止められる。
「落ち着けよ、ジャイアン!その男の言葉通りだとしたら……ホウエン地方が危ない!他の町も守りに行かなくちゃ!」
スネ夫が言い終えると、次はのび太が言った。
「リンちゃんは気が動転してるみたいだから、ここは僕に任せて!みんなは他の町を!」
スネ夫、ジャイアン、しずかの3人は一斉に頷き、ポケモンに乗って飛び立った。
----
≪スネ夫サイド≫
僕はクロバットに乗って飛び立ち、ポケナビを見る。
ポケナビにはホウエン地方のニュースが反映されているのだ。
「被害を受けているのは……カナズミシティ、フエンタウン、ヒマワキシティ、トクサネシティか」
僕は大急ぎでジャイアンとしずかちゃんに報告した。
「被害を受けているのはその4地域だ!僕はカナズミシティに向かうよ!」
カナズミシティ。
ジムリーダーのツツジさんと一人の少年が必死に攻撃を食い止めている。
「援軍にきました!僕も手伝います」
僕はクロバットから降り、戦闘体制をとる。
「あなたは、いつしかの……」
どうやら、ツツジさんは僕のことを思い出したみたいだ。
「ええ。でも、今はそんな事を言ってる場合じゃない。ジュカイン、町を守るんだ!」
僕達3人はフルメンバーを出し、町を守らせた。
「このままじゃいずれ負けてしまう……あのミュウツー達に勝つにはどうすれば……」
今の防戦一方の状態ではやられるのは明白。
とりあえず時間を稼いで、策を練るしかない……。
「頑張ってくれ、みんな!」
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≪ジャイアンサイド≫
俺が真っ先に向かったのはフエンタウン。
今、前戦ったジムリーダーの姉ちゃんと背中を合わせて戦っている。
「コイツ等……かなり強いぜ、姉ちゃん」
「アスナだよ、アスナ。それはともかく、私達が倒されるのも時間の問題ね」
俺とアスナは必死に抵抗するが、十数体の伝説のポケモンには適わない。
「はぁはぁ……コータス、オーバヒート!」
「まだまだぁ!ボーマンダ、火炎放射!」
二つの強力な炎が放たれ、ミュウツー達を襲う。
しかし、それは建物に当たる。
「これは……サイコキネシスで方向転換させたのか!」
ミュウツーの力を目の当たりにして、驚くアスナ。
「なあ……本来ならこんなにミュウツーが出るってことはありえないよな?」
俺はアスナに問い掛ける。
「ああ。何かトリックがあるハズね。だが、それがわからない……」
考えろ、俺。トリック……トリック……。
だが、頭を捻っても無駄だった。何も思いつかない。
「みんな!他の町から援軍を呼んで!そして、ポケモンを出しなさい!」
アスナの声が響くと、ジムトレーナー達は大急ぎで他の町へ向かう。
そして、残ったものはポケモンを出して攻撃を阻止する。
「みんな!頑張って持ち応えるんだよ!」
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伝説のポケモン・ミュウツー達の襲撃。
それは各地に甚大な被害を与え、今も尚それは続いている。
そして、破壊工作を止めるべく戦闘に参加したトレーナー達の疲労は限界に達していた。
カナズミシティ。
町の端にまで追い込まれたスネ夫とツツジ、そして少年。
既にポケモン達は瀕死状態になっており、万事休すだ。
フエンタウン。
背を合わせ、どんどん追い詰められていくジャイアンとアスナ。
他のトレーナー達の援軍も虚しく、町は焼け野原と化していた。
ヒワマキシティ。
戦力を失い、力尽きて倒れ込むしずかとナギ。
まだ戦っているトレーナー達も次々とやられ、絶体絶命の状況だ。
トクサネシティ。
沢山のミュウツー相手に一人で戦っていたのび太。
完膚なきまでに叩きのめされ、その周囲には力尽きたポケモン達が虚しく倒れている。
どの町でも似たような光景が繰り広げられており、破壊工作は止まる所を知らない。
そして、全員が死を覚悟した時――
プルルルル、プルルルル。
隊長と思われる男のトランシーバーが鳴った。
そのトランシーバーから首謀者と思われる男の命令を受け、隊長は声をあげる。
「全員に告ぐ。今すぐ攻撃を中止しろ!そして、ルネシティへ向かえ!」
----
ホウエン地方の各地。
隊長の命令を受け、男達は次々に姿を消していく。
ミュウツーの超能力による瞬間移動。つまりテレポートに似たような現象だ。
のび太達はポケナビで連絡をとり、トクサネシティで落ち合うことにした。
トクサネシティ。
ポケモンに乗って現れるトレーナーとジムリーダー達。
一行はポケモンの体力を回復させ、ルネシティへ向かった。
「さっきの襲撃事件……このホウエン地方で何かが動いているようですね」
ルネシティへ向かう途中、最初に口を開けたのは少年ミツル。
「ええ。それにあの数とあの能力……。相当な技術者達だわ」
ヒワマキシティジムリーダー・ナギが言った。
「僕達、これからどうなっちゃうんだろう……」
のび太が弱々しく呟き、再び元の沈黙に戻る。
「あ、見えた!ルネシティの入り口!」
スネ夫が叫び、その指指す先にはルネシティの入り口と思われる穴がある。
一行はダイビングで上に上がっていく――
だが、そこで見た光景はのび太達にとって信じられないものであった。
一人の少年がレックウザに乗り、町を破壊している。
その少年は、現リーグチャンピオン――そして、のび太達と共に旅立った仲間――
少年の名は出木杉英才。
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「お前は、出木杉!」
レックウザを従え、町を破壊しているのは紛れも無く出木杉だ。
のび太の声を聞き、出木杉は地に降りる。
「やあ、久しぶりだね。みんな」
まるで何も無かったかのような発言。
出木杉は、顔色一つ変えず言った。
「てめぇ、何してるんだ!」
ジャイアンが叫ぶ。
すると、出木杉はヤレヤレといった素振りを見せる。
「……ププッ。見てわからない?この町を破壊しているのさ」
あっけなく言い放つ出木杉。
「何で……何でこんなことを!」
スネ夫が懐のボールに手をかけ、言う。
「これが僕の望みだからさ。さあ、早く僕を倒さないと町が潰れるよ?」
部下達のミュウツーは次々と光線を放ち、町を破壊している。
そして、仲間の変わりように驚愕していたのび太達も、危険を悟り覚悟を決める。
「僕が行くよ。僕が君を倒す!」
最初に一歩踏み出したのはのび太だ。
……だが、それはスネ夫の手によって制止される。
「ダメだ。今一番弱いお前が行っても負けるだけ。ここは僕がやる」
スネ夫の言葉を聞いて、のび太はしぶしぶ踏み出した足を戻す。
「出木杉は僕に任せて。みんなはミュウツー達を食い止めるんだ!」
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「僕の相手は君かい、骨川君」
出木杉はレックウザを従え、スネ夫と対峙する。
「ああ。何でこんな事になったのかわからないけど、君を倒してでも探ってやるよ」
一触即発。緊迫した空気が流れる。
そして、出木杉がその空気を立ち切った。
「ここは狭い。バトルには不向きだな……。レックウザ、冷凍ビームだ」
レックウザが氷の光線を放ち、ルネの水上を凍らせていく。
たちまち辺りには氷の地盤が出来た。
「どうだい?骨川君。これがレックウザの力さ。逃げるのなら今のうちだよ?」
出木杉がこれみよがしに言って見せるが、スネ夫は動じない。
「御託はもういいだろ?こっちの準備は出来てるんだ。早くしてくれ」
ジュカインを出し、あくまでも平然を装うスネ夫。
だが、その胸に秘めた不安が顔にも表れている。
『カッコ付けて言っちゃったけど、相手はレックウザ。僕は勝てるのか?』
「フフ、じゃあやろうか……」
出木杉がそう言うと、とぐろを巻いた龍が急降下してくる。
「それじゃあ、始めようか」
出木杉の声と共に、加速をつけてジュカインに向かってくるレックウザ。
ルネシティの氷上にて、戦いが始まった。
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猛スピードで向かってくるレックウザ。
「レックウザ、燕返し!」
出木杉の命令と共に、レックウザはその尾でジュカインを切り裂く。
「ジュカイン!」
効果抜群の一撃を食らい、ジュカインはかなりのダメージを受けた。
「あれ、よけないの?どうしたのかなぁ?」
ニヤニヤと笑っている出木杉。
対して、スネ夫は焦っていた。
『今の攻撃……タイミングが早い!』
そう、ジュカインはよけないのではなくよけきれない。
哀れかな、レベルの差がありすぎるのだ。
「まだまだいくよ。レックウザ、もう一度燕返し!」
再びジュカインの前に現れるレックウザ。
だが、何度も同じ手でやられるスネ夫ではない。
「ジュカイン、見切りだ!」
ジュカインを青い防御壁が包み、勢い良く振り落とされるレックウザの尾を無効化する。
「なるほど、見切りか。だが、それはただの時間稼ぎにしかならないよ」
余裕の出木杉。
だが、スネ夫の頭の中では一つの作戦が導き出されていた。
『無駄に時間稼ぎをしているわけじゃないさ。目にもの見せてやる!』
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青い防御壁に阻まれ、尾を休めるレックウザ。
「いつまで持つのかな?骨川君」
出木杉が挑発するも、スネ夫はニヤニヤと笑っている。
その顔はさっきまでとは一変、自信に満ち溢れた表情だ。
「ジュカイン、高速移動だ!」
レックウザの周囲を高速で動き回るジュカイン。
「これは……何のつもりだい?」
出木杉はよくわからないという表情をしている。
「見ての通りさ。確かにレックウザの攻撃タイミングは速い。でも、レックウザが
ジュカインに近づくまでにある程度距離をとっておけば、話は別だよね」
スネ夫の言葉を聞き、出木杉は状況を把握した。
「じゃあ、試してみるか……」
またもやレックウザがジュカインに近づき、その尾を振り落とす。
……だが、尾は空を切った。
その様子を見て、スネ夫が更に話を続ける。
「ジュカインのスピードに高速移動のスピードが加わったんだ。そう簡単には攻撃を当てられないよ」
攻撃を外したレックウザの周囲を移動するジュカイン。
見事にしてやられた出木杉は、苛立ちを隠せない。
「今すぐとらえてやるよ……レックウザ、龍の舞!そして間合いをとって破壊光線だ!」
レックウザは体をくねらせ、攻撃力と素早さをあげる。
そして、フルスピードでジュカインに近づく――
「決めろ、レックウザ!」
ジュカイン目掛け、眩い光線が発射された。
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至近距離で破壊光線を受けたジュカイン。
当然、まともに立っていられるハズがない。
「ジュカイン!ジュカイン!」
スネ夫の必死の叫びも虚しく、力尽きたジュカインがあらわになる。
「所詮はこの程度か……。でも、暇潰しには丁度良かったよ」
出木杉は、レックウザをボールに戻す。
『何故レックウザを戻すんだ?』
疑問に思うスネ夫。
だが、その疑問はすぐに晴れた。
「お前達、撤退だ。もうこのぐらいでいいだろう」
出木杉の撤退命令と共に、ミュウツーと研究員の男達が次々と消えていく。
まるで、さっきまでの戦闘がウソのように。
ジャイアン達も疲労のあまり腰を落とす。
「さて、いいかい?君達」
ほぼ全員が疲れてその場に座り込んでいる中、出木杉が話を始める。
「今回のは序章に過ぎない。いずれは僕達がこの世界を手中にする……。」
そう言うと、出木杉はレックウザに乗り、去っていった。
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