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雨が降り注ぐ中、エンテイとスイクン、のびたと出来杉が
睨み合ったまま対峙している。先に動いたのはのびただった。
のび「エンテイ、炎の渦で僕たちを包め!」
本来、炎の渦は相手を中に閉じ込める技だ。
だが、のびたは自分と出来杉の間を炎で包ませた。
前後左右、上を見ても炎しか見えない。
先程降っていた雨もこの炎の中までは降ってこず、
炎の中は完全に外界と遮断された状況となった。
出来「これは、なにか考えがあっての事かい?まあいい、こんな熱いところに
いつまでも居たくないから早く終わらさせてもらうよ。スイクン、バブル光線だ。」
のび「エンテイ、穴を掘るで回避しろ。」
エンテイは地中に隠れ、バブル光線は外れて辺りを包む炎に当たった。
ちなみに、バブル光線では炎を消すことは出来なかった。
のび「よし今だ、出て来いエンテイ!」
出来「そうはいかないよ。まもるだ。」
エンテイの攻撃はスイクンの見えないバリアに弾かれる。
だが、攻撃が失敗したにもかかわらずのびたは笑っていた。
のび「作戦成功だ。出来杉、僕の狙いは穴を掘る攻撃じゃなくて、
この距離に持ち込むことだったんだよ。」
出来杉が“しまった”と思った時にはもう、エンテイのアイアンテールが
スイクンに命中し、スイクンはそこそこのダメージを受けた。
普通に戦えばスイクンが有利だが、
接近戦だけはパワーがあるエンテイの方が有利なのだ。
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敵の攻撃を受けて苦しむスイクンに早くもエンテイの次の攻撃が迫る。
のび「いいぞエンテイ。もう一度アイアンテールだ!」
出来「そうは行くか!まもるだ。」
スイクンはアイアンテールを防いだ。だが、すぐに次の一発がきて、
スイクンは地面に叩きつけられてしまった。
出来「何をやっているんだスイクン!くそ、使えない奴め!」
出来杉がスイクンを激しく罵倒する。その時、スイクンがいきなり犬のように
遠吠えした。ふつうに吠えただけなのに、
そのどこか美しい姿にのびたが、出来杉が、そしてエンテイまでもが動きを止めた。
出来「・・・はっ!今だスイクン、波乗りだ。」
先程の弱々しいバブル光線とは違い、スイクンは強力な波を起こした。
エンテイは波に飲み込まれ、辺りを包んでいた炎の渦も消えてしまった。
出来「・・・やった・・・か?―――何!」
そこには、効果抜群の強力な一撃をくらいながらも立っているエンテイの姿があった。
出来「何故だ!瞑想で特攻を上げまくり、雨も降っているのに・・・ん、雨?」
自分の言った言葉に疑問を感じた出来杉は上を見上げてみた。
そこには、信じられない光景が浮かんでいた。
出来「あ、雨がやんでいる!しかも、もの凄く晴れている・・・」
先程降らせた雨がやみ、辺りは曇り1つ無い晴天だった。
驚く出来杉に、のびたは解説する。
のび「晴れているのはもちろんエンテイの日本晴れによるものさ。
いつ使ったかというと、炎の渦を使ったすぐ後さ。」
出来「そうか・・・あの炎の渦は天気が変わったのを
悟られないためだったのか・・・・・・」
出来杉はすでに負けを認めた、という顔をしていた。
のび「さあ、このバトルもこれで終わりだ。エンテイ、ソーラービーム!」
エンテイが放ったソーラービ-ムは晴れ模様広がる空に綺麗な弧を描き、
スイクンに激しい一撃を加えた。そして・・・スイクンは倒れた・・・・・・
のびたの勝ちだ!
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バトルが終わり、出来杉はその場に跪いていた。自分の負けが信じられないようだ。
出来「そんな・・・この僕が・・・のびた君なんかに負けるなんて・・・・・・」
そんな出来杉に、チャンピオンとなったのびたが声をかけた。
のび「君はよく頑張ったよ、出来杉。ただ、敗戦の理由を挙げるとすれば・・・」
のびたの言葉など無視していたが、“敗戦の理由”という言葉に出来杉が反応した。
出来「そうだ、教えてくれ!なんで僕は負けたんだ!
ゲンガー、フーディン、ブラッキー、スイクン・・・
この地方でも屈指の強いポケモンを集めた!
レベルもかなり上げた、戦略だって決して悪くなかった!それなのに、どうして・・・・・・」
うなだれる出来杉に、のびたは答えた。
のび「たしかに君の手持ちは悪くなかった。でも君が負けたのは、多分ポケモンへの
愛情が足りなかったからだよ。君はポケモンをバトルの道具としか見ていなかった・・・」
その言葉を聞いた出来杉は彼を罵った。
出来「なにが愛情だ!笑わせるなよ・・・そんなもの・・・関係ない!
関係ないんだよ!」
のび「君は僕がエンテイを出したとき、
“エンテイは弱いからスイクンに勝てる訳が無い”と言ったよね。
でも僕は勝った。それは、エンテイが僕を信じ、僕の為に頑張ってくれたからさ。
それに対して、君は強いポケモンにしか興味を持たず、
そのポケモン達をバトルの道具として扱ってきた。それが僕たちの差だったんだよ・・・
ここに来る途中、四天王のカリンさんも言ってた。
『強いポケモン、弱いポケモン、そんなの人の勝手。
本当に強いトレーナーなら好きなポケモンで勝てるように頑張るべき。』ってね。」
それを聞いた出来杉は後悔した。自分の育て方は間違っていたのか、
自分はダメな人間なのか・・・と。
出来「ねえのびた君。僕のポケモンは、こんな育て方をした僕を恨んでいるのかな・・・」
落ち込む彼を、のびたはやさしく慰めた。
のび「それは無いと思うよ。だってあの時・・・君のフーディンは
自分の意思で勝手にミラクルアイを使った。
あれは君に勝って欲しいから、あの技を使ったんだと思うよ。それに君のポケモンは
君の命令に忠実に従っていた。僕は、彼らなりに君を思っていたんだと思うよ・・・」
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出来杉は遂に泣き崩れた。自分のポケモンは、
あんな育て方をされたにも関わらず、僕のことを愛してくれていたんだ、と。
出来「ありがとうのびた君。やはり君は、素晴らしい心の持ち主だよ・・・」
出来杉がのびたをを褒め称えたその時、彼の体がだんだん消え始めた。
ゲームオーバーだ。最後にふと、上を見上げた出来杉はあることに気付いた。
(チャンピオンルームの天井は開閉式になっているのです。)
出来「ねえのびた君。空を、見てごらんよ。」
彼に言われた通りに上空を見上げたのびた。
そこには、バトルの天候技によって大きな虹が架かっていた。
のび「うわあ、綺麗だね。ねえ、出来杉!」
のびたが先程まで出来杉がいた位置を見ると、もうそこに出来杉の姿は無かった。
出来杉英才、ゲームオーバー
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遂にたった一人になったのびた。彼は最後の殿堂入りを済ますため、
奥の部屋へ向かった。
のび「うわあ、ここが殿堂入りの部屋か・・・」
そこは、チャンピオンを讃えるに相応しい素晴らしい部屋だった。
のびたが慣れない手つきで機会を触り、自分のデータを登録すると、
突然ポケギアから音声が流れ出した。
ギア「おめでとうございます。よくぞ、このゲームをクリアしましたね。
褒美として、あなたの願いを1つ、叶えて差し上げましょう。」
願いを叶える?突然の出来事にのびたは戸惑った。おそらく、ドラえもんが
優勝者のために仕掛けていたサプライズだろう。
のび(願いかあ・・・何にしようかな。
さすがに“願いがいくつでも叶いますように”は無理だろうな・・・)
のびたはいろいろと考えてみた。新しいラジコンが欲しい、
テストで百点が取りたい、ジャイアンに喧嘩で勝てる程強くなりたい、
野球の試合でホームランが打ちたい、しずかちゃんともっと仲良くなりたい
……等、様々なものを考えた。
だが結局、彼はこれを自分自身のためには使わなかった。
のび「じゃあ、僕の願いを言うよ。それはね・・・・・・」
そして、のびたが願いを言い終えると同時に、のびたの体は消え始めた。
現実の世界に帰るときが来たのだ!のびたはポケモンたちを出し、
泣きながら彼らに別れを告げた。
そして、のびたの体はこの世界から完全に消えていった・・・・・・
野比のび太、ゲームクリア
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―――それから一年後
ここ、空き地では、今日ものびたたちがDSのポケモンバトルを繰り広げていた。
彼らが熱中しているのは、一週間前に発売されたばかりの金銀のリメイク版
「サンゴールド&ムーンシルバー」である。
ジャイ「オーダイル、噛み砕くだ!」
のび「ああ、僕のヤドキングが・・・」
スネ「これで4対3、ジャイアンの勝ち越しだね。」
のび「何!まだまだ、次こそ勝ってやる!」
ジャイ「ガハハハハ!かかって来いのびた!」
そんな彼らの様子を見て微笑みながら空き地の隅で談笑しているのは
ドラえもん、出来杉、しずかの三人だ。
出来「それにしても驚いたね。まさか金銀のリメイク版が出ることになるなんて・・・」
しず「そうね。ねえ出来杉さん、ドラちゃん。私たちもそろそろ混ざりましょうよ!」
出来&ドラ「うん!」
ドラえもんには1つ気がかりなことがあった。
あの後、ポケモン世界から帰ってきたのびたが言ったのだ。
『まさか願いを叶えてくれるなんて、すごいサプライズだったよ。さすがドラえもん!』と。
だがドラえもんにはまったく心当たりが無かった。
おまけに、のびたになんと答えてのか
いくら訪ねても“秘密”と言って教えてくれなかった。
……この先も彼らの友情は永遠に続くだろう。
なぜならのびたが『僕たちがずっと友達でいられますように!』と願ったからだ。
あのゲームは、とても素晴らしいプレイをした人の願いを
叶える極秘システムがあったのだ・・・・・・
曇り1つ無い青空に、6人の笑い声が絶えず響いていた。
&size(large){―――完―――}
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&size(medium){あとがき}
509 :金銀物語 ◆AoT8KYCnWo :2007/01/20(土) 21:32:12 ID:???
読者の皆さんへ
どうも、金銀物語です。今回の24回目の投下で、遂にこの物語は完結しました。
書いていた影響からか、金銀リメイク版がかなりやりたくなってます。
初めて作品を投下したころは、sageも知らない素人でしたが、
皆さんが暖かく見守ってくださったおかげでなんとか完結させることが出来ました。
プレイしたのが何年も前の金銀編を書くのは大変でした。
時には攻略サイトから必死で探し、
時には必死でストーリーを思いだいながら書きました。
(最後のバッジを取るときに龍の牙をとりに行くイベントが無いですが、
これは必要ないと思ったので省いただけです)
スランプに陥り、書く気力がしなかった時もありましたが、「乙」「GJ」などと
コメントを貰うと、次も頑張って書こうとやる気が出ました。
次回作を書くかどうかですが、一応次の作品の構想は練ってあります。
ですが、私は一応学生(中2)ですし、
来年は受験も控えているので書けるかどうかは分かりません。
とりあえず書くとしたら名前と酉は変えますが・・・
もちろんこれからもこのスレは見ていきます。
最後に、この作品を読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。
一度も読んだことが無い人は、暇なときにでもいいので見てやってください。
それでは、さようなら。
作者、金銀物語より
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