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  扉─。この広間の奥にある、巨大な扉。 その扉を開けば、全てが終わる… 幾多の犠牲を乗り越えて、遂にここまでやってきた。 少年は、広間の入口から扉を見据える。 突如、少年の前に巨大な黒い影が現れる。 「これが、最後の"アイドル"…そして…」 少年が呟くと同時に、咆哮する黒い影。 「行くよ…みんな。」 少年は、もう迷わない。失ったものを、取り戻すために… 「ねぇドラえもん!早く行こうよ~!」 先に駆けて行ったジャイアン・スネ夫・しずかの背を見ながら、 のび太はドラえもんを急かした。 「まぁまぁ、落ち着きなよのび太君、参加は確実に出来るんだ。焦らないで行こうよ。」 はやる気持ちを押さえる事が出来ないのび太を、ドラえもんはやれやれといった感じで諭す。 のび太達5人は、ドラえもんが貰った『ある企画』の参加権利、 その企画に参加する為22世紀の世界へと来ていた。 「見えてきたよドラえもん!あれが─」 ポケモンミュージアム。 そこは、21世紀に発売され爆発的な人気を誇ったゲーム『ポケットモンスター』を 専門に扱う展示会場である。 ---- のび太は会場のゲートのところに、先に行った3人の姿を見つけた。 「ドラえもん!みんな待ってるよ、急ごう!」 とうとう痺れを切らし走り出すのび太。それをドラえもんが注意する。 「危ないよのび太君!人とぶつかりでもしたら…」 「平気平気…ってうわぁっ!」 「ほらみろ馬鹿。」 ドラえもんの忠告も虚しく、思いっきり転倒するのび太だった。 『ポケットモンスター』の初期作品、金銀・ルビーサファイアエメラルド・ ファイアレッドリーフグリーン。 それらに登場するポケモンと一緒に旅が出来る─そんな子供が夢みたような事が実現する。 そんなイベント『ポケモンワールドアドベンチャー』。 それに参加するのが、今回ののび太達の目的だった。 イベント会場。そこはイベントに参加する人やロボットで賑わっている。 「なぁドラえもん、これなんなんだ?」 ジャイアンが、受付で腕にはめられたリストバンドのような物を指差して尋ねた。 「説明聞いてなかったの?これは整理券みたいな物で、 他にもいろんな役割があるんだってさ。」 ドラえもんに言われ周りにいる人を見てみると、確かに皆にはめられている。 ---- それからしばらくして辺りの照明が落ち、 会場の中心にある円形のステージにスポットライトが当たる。 そして、光の中に1人の男が現れた。立体映像だろうか、向こうが透けて見える。 「何、あの格好…」 会場にいた誰かが呟く。男の格好は、十何世紀かの貴族を気取ったような格好だ。 顔には仮面をつけて目だけが見える形になっている。お世辞にもカッコいいとは言えない。 「みんな、待たせたね。私はゲームの管理人ハム=ベーコン16世だ。」 会場に居た大部分の人は思った。 名前のセンスゼロじゃん…、と。 男…ハムは続ける。 「まぁ、ゲームマスターと呼んでくれたまえ。」 もはやハム=ベーコンと言う名前を名乗った意味もないかもしれない。 それはともかく、会場の視線はゲームマスターに集まっていた。 「さぁ、これから皆には冒険に出発してもらうよ。舞台はもちろん『ポケモン』の世界だ。」 いよいよ旅に出られるんだ。のび太はそう思った。会場に居た多くの子供も同じ気持ちだろう。 「…旅には、いろいろな物が必要だ。ポケモンやアイテムはもちろん。出会い、別れ、 勇気、決断…普段の生活では別段意識しないような事もね。」 ---- 男は、そこで一旦、話を止めた。 男の雰囲気が、どこか変わる。それに気付いた者は少なかった。 「そこで、だ。」 会場に、しばしの静寂が流れる。 「君達に、この旅でしてもらいたい事がある。」 張り詰める空気。聞いてはいけない、聞きたくない。会場の中には そんな漠然とした不安に刈られる者も居た。 「それは…潰し合いだ。」 静寂。男の口から発せられた言葉を理解出来た人物が、一体何人居ただろうか。 「潰し合いって…どういう事ですか?」 静寂を破ったのは、メガネをかけた1人の少年。小学校低学年ぐらいだろうか、 小柄な少年だ。しかしその実、落ち着いた様子を見せている。 少年の問いに、ゲームマスターはゆっくりと答えた。 「少年、焦らない事も大切だよ。まぁ聞きたまえ。これから皆にルールを説明しよう。」 パチンと、男が指を鳴らす。男の頭上に、巨大なボール型のホログラムが現れる。 そのボールの表面に、沢山の文字が表示された。どうやら360度、 会場のどこに居ても読めるようになっているようだ。 そして、沢山の文字の上に一際大きく記された文字があった。そこにはこう記されている。 『P・B・R』と。 ---- 男が一言、言った。 「『P・B・R』、ポケモン・バトル・ロワイアルだ。」 その言葉と同時に、会場に機械のような、どこか無機質なアナウンスが流れ出す。 『これから、P・B・Rのルール説明を行います。このアナウンスは 繰り返される事はありませんので、よく聞いて下さい。』 相変わらず静かな会場に、アナウンスの声が響いた。 『このゲームの参加者は、この会場にいる総数200名の子供・家庭用ロボットです。 皆さんには、ゲーム内でペアで行動してもらいます。皆さんの左手に はめられているバンドをご覧下さい。』 言われるままにバンドに目をやる。するとそこには、さっきまで無かった模様が浮かび上がっていた。 『浮かび上がっている模様は100通り、二つずつあります。 同じ模様を持つ人物が、それぞれのパートナーとなります。 尚、そのバンドはゲーム終了まで着脱は不可能となっています。 ゲームクリアの条件は三つ。 1、最後の1組、優勝者が決まる。 2、このゲームの中に隠された謎を解く。 3、ゲームの世界の何処かにある"扉"を開く。となっています。 優勝を目指して周りを潰すのも、一致団結して協力するのも、皆さんの自由です。 条件の2・3は1ペアでもクリアすれば結構です。』 ---- アナウンスは続く。 『参加者の皆さんには、1人1つの四次元リュックが配られます。 中身は各々確認して下さい。 そして、その中にはあなたのパートナーとなるポケモンが入ったモンスターボールがあります。 尚、パートナーとなるポケモンの他人との交換は不可能ですが、 捕まえたポケモン同士の交換は可能です。 一度に所有出来るポケモンの数は、1人辺り6体まで。 それ以上の数になると自動的にデータ化され、ある物に保存されます。 パートナーとなる人物同士は、ゲーム内にある"島"を離れて行動する事は出来ません。 尚、パートナー1人のみがリタイアになっても、残った方は旅を続ける事は通常通り可能です。 リタイアとなる条件は主に二つ。 参加者本体が、現実で大怪我になるような外傷を受けた場合。 もう1つは参加者同士のバトルで三度負けた場合です。 尚、ゲーム内に秘密道具の持ち込みは不可能です。 そして最後に。このゲームのタイムリミットは100日となっています。 それまでにクリア条件が満たされなかった場合、プログラムP・B・Rは強制終了します。 これで、プログラムの説明を終了します。』 説明が終わり、ホログラムが消えた。 ---- 男が不敵に笑う。 「どうだい?参加者同士の勝ち残りを競うバトル…ゾクゾクするだろう?」 男が語り続ける中、1人の少年が叫んだ。 「うわぁぁ!出して!怖いよ!僕帰る!家へ帰るんだぁぁ!」 パニック状態になる少年。それにつられるように辺りは子供のわめき声が響く。 『静まれ!!』 ピタリ、止まる騒ぎ声。騒音とも言える声を止める迫力を、充分に持った声だ。 声の先を見つめる子供達。それはのび太達5人も、メガネの少年も同じだった。 ゲームマスターだ。さっきまでハッキリとしていたホログラムは、 段々と形が乱れていく。 『もう…ゲームは始まろうとしている。止める事は出来ない、逃げる事もね。早く家へ帰りたければ、一刻も早くクリアする事だ…』 そして、ホログラムは消えた。 「どうやら…参加するしか無いようだね。」 ドラえもんが諦めたように言う。 「そんな!どこでもドアで脱出は出来ないの?」 ドラえもんにしがみつくのび太。そこである事に気付く。 「無い…」 無い。それまで確かにあった筈の四次元ポケットは、ドラえもんの胸元から消えていた。 ---- 「消えたんだよ。説明のアナウンスがあっただろう?秘密道具は使えない… もうその影響が出てるんだ…」 ドラえもんが呟く。 「じゃあ…参加するしかないの?」 しずかは声を震わせている。 「そんな…怖いよ…」 すっかり怯えてしまっているスネ夫。 しかしそんな中、あの2人は違った。 「参加するしかねぇんだろう?だったら話は早いじゃねえか。とっとと参加して、 クリアすりゃあいいんだよ。」 いざという時には頼りになる男ジャイアン。それはこの場合でも同じだった。 「ジャイアンの言う通りだよ。みんなで協力したら、きっとどうにかなる!」 意外にも前向きだったのは、のび太だ。 その言葉で、3人は立ち直る事が出来た。 「そうね…みんな、頑張りましょう。」 「うん…ゲームなら、僕の得意分野だ!」 しずかとスネ夫も、普段の輝きを取り戻す。 「よし…じゃあ皆、パートナーを探そう!」 ドラえもんの一言に4人は同意し、それぞれのパートナー探しを始めたのだった。 プログラム"P・B・R"開始0日目 [残り200名・100ペア] -設定注釈:ポケ×ドラ×コナン×(バトロワ+ベイカー街+α) ---- 一同が仲間探しに別れた後、スネ夫はパートナーを探す中である事に気が付いた。 「人が…減ってる?」 周りを見渡す。明らかに人が少なくなっている。 この会場は密室、出られる筈がない。 そしてゲームマスターの話ではゲームの参加者は200人、 しかしどう見ても会場に残っているのは100人前後だろう。 どういう事だ?疑問に思うスネ夫。 しかし、その疑問はもっとも分かりやすい形で解決した。 パートナーが見つかったのだ。 二人は自己紹介をする。 「僕はスネ夫。君の名前は?」 「僕、ミツヒコっていいます。よろしくお願いします。」 ミツヒコは小学校低学年ぐらいだろうか。どうやら彼も友達と5人で このイベントに参加しているらしい。 スネ夫は、自分達の周りが段々ぼやけてくるのに気が付いた。 やがて、辺りは完全に別の場所になった。全体的に暗い、広い部屋だ。 なるほどね。スネ夫は理解した。 大方、パートナーが見つかって一定時間が経過するとゲームの中に飛ばされるとか、 そんな所だろう。 スネ夫の考えが正しいのを証明するかのように、 辺りには他の参加者の姿がチラホラと見える。 ---- 「スネ夫さん。」 ミツヒコに呼ばれ、後ろを振り向くと、ミツヒコはリュックを担いでいた。 「どこにあったんだ?それ。」 スネオが尋ねると、ミツヒコは何も言わずスネオの肩の辺りを指差す。 「あ、有った。」 気付かなかった。あまりに軽く、全く重量を感じないと言っていいリュックが、 いつの間にかスネオの背中に担がれていたのだ。 おそらく、ゲームに飛ばされた際に自動的に身に着けられたのだろう。 「とりあえず、中身を確認してみましょう。」 「そうだな。」 ミツヒコの提案で、2人は床に腰を下ろし中身を取り出した。 ボールに入った自分のポケモン、空のモンスターボール。 携帯食料、回復アイテム、それにアルバムの様な中身の無い冊子、謎の機械。 「これで全部か。」 スネオは一息着いた。リュックの中にはもう何も無い。 「これは…何でしょう?」 ミツヒコが手に持っているのは、謎の機械。見た目は一見携帯電話の様だ。 「それは、ポケナビフォンだよ。」 スネオじゃない、他の人物が答える。その声の主は、すぐそこに立っていた。 ミツヒコは驚いて立ち上がる。 「コナン君!」 ---- そこに立っていたのは、ミツヒコの友人、コナンだった。 「パートナー、見つけたんだな。」 コナンがスネ夫の方を見ながら言った。 「えぇ、時間かかりましたが…コナン君のパートナーは?」 「ん?あぁ、向こうにいるぜ。アイとアユミもな。 俺達とあっちのパートナーが綺麗に重なったんだ。あっちも5人組なんだとよ。」 コナンがそんな話をしていると、向こうから5人の人影が歩いて来た。 「アイさん!アユミちゃん!」 2人の少女もミツヒコの友人だった。そして、スネ夫も気付いた。 「5人って、僕らの事だったのか…」 そこには、ドラえもんとしずかちゃん、そしてのび太の姿があった。 「凄い偶然ってあるもんだねぇ!」 のび太が気楽に笑いながら言った。一同は、皆で座って話していた。 ドラえもんはアイという少女、しずかはアユミという少女、のび太はコナンと それぞれペアという、綺麗にお互いの仲間同士が重なった結果になっている。 「偶然じゃないよ。」 コナンがのび太に言った。 「このポケナビフォンに番号がついてるでしょ? 100を境に1と101でペアになるって仕組みなんだろうね。」 ---- コナンは続けて言った。聞いた話では、物凄く頭のキレる奴らしい。 「って事は、ジャイアンと…ゲンタ君だっけ?その子はペアって事?」 のび太が確認するように尋ねると、コナンは軽く頷く。 どっちが年上かわかったもんじゃない。 その後、一同はそれぞれのポケモンを確認した。 のび太はガーディ、ドラえもんはニョロモ、しずかはピィ、スネオはマダツボミ。 コナン一向はコナンがポニータ、アイはチコリータ、アユミがピチュー、 そしてミツヒコがズバットだった。 遥か向こうにある黒い巨大な壁を背に、 8人はこの広い空間の出口になっている光の元に来た。 コナンがそこに書かれていた注意書きのような物を読む。 「何々…この光の向こうは、最初の島となっています。 同時に複数のペアが飛び込んでも、辿り着くのはバラバラの場所になります…だとよ。」 「じゃあ皆…ここで一旦お別れなのね。」 アイがボソリと呟いた。 ここで皆別れるのだ。次会う事が出来るかなど、誰も分からない。 皆、自然と表情が強張った。 「また、みんなで会おうぜ!」 コナンとのび太が一番な光の中に飛び込み、皆、それに続く。 この先に何が待っているのかは、誰も知らなかった。 ---- -情報まとめ 組み合わせ&ポケモン -NO.75ドラえもん(ニョロモ)&NO.175アイ(チコリータ) -NO.76のび太(ガーディ)&NO.176コナン(ポニータ) -NO.77しずか(ピィ)&NO.177アユミ(ピチュー) -NO.78ジャイアン(??)&NO.178ゲンタ(??) -NO.79スネ夫(マダツボミ)&NO.179ミツヒコ(ズバット) 《リュックの中身》 -パートナーポケモン×1 -空モンスターボール×5 -圧縮携帯食料&水10日分 -謎の冊子×1 -ポケナビフォン×1 プログラム1日目 残り200名・100ペア ---- &size(medium){《ポケナビフォン説明》} このプログラムにおける通信機器です。様々な便利機能が備わっています。 -便利機能その1▼〔ポケモン預かり機能〕 手持ちが6匹になりそれ以上にポケモンを捕獲した場合、 ナビフォン内の"ポケモンフォルダ"にデータとして保存さます。 バトル中を除き自由にポケモンの入れ替えが出来ます。 -便利機能その2▼〔図鑑機能〕 出会ったポケモンのデータを自動的に記録します。 自分のポケモンのレベル・状態・使える技の確認・編集が出来ます。 -便利機能その3▼〔通信機能〕 ポケナビフォン内の"アドレス帳"にポケナビフォンの番号・アドレスを 互いに登録する事で、電話通信・メールが出来ます。 -便利機能その4▼〔アップデート機能〕 プログラム内のいたる所にある"アップデートメモリ"を使用する事で、 様々な機能を追加する事が可能です。 [[次へ>扉。 その2]] ----
  扉─。この広間の奥にある、巨大な扉。 その扉を開けば、全てが終わる… 幾多の犠牲を乗り越えて、遂にここまでやってきた。 少年は、広間の入口から扉を見据える。 突如、少年の前に巨大な黒い影が現れる。 「これが、最後の"アイドル"…そして…」 少年が呟くと同時に、咆哮する黒い影。 「行くよ…みんな。」 少年は、もう迷わない。失ったものを、取り戻すために… 「ねぇドラえもん!早く行こうよ~!」 先に駆けて行ったジャイアン・スネ夫・しずかの背を見ながら、 のび太はドラえもんを急かした。 「まぁまぁ、落ち着きなよのび太君、参加は確実に出来るんだ。 焦らないで行こうよ。」 はやる気持ちを押さえる事が出来ないのび太を、 ドラえもんはやれやれといった感じで諭す。 のび太達5人は、ドラえもんが貰った『ある企画』の参加権利、 その企画に参加する為22世紀の世界へと来ていた。 「見えてきたよドラえもん!あれが─」 ポケモンミュージアム。 そこは、21世紀に発売され爆発的な人気を誇ったゲーム『ポケットモンスター』を 専門に扱う展示会場である。 ---- のび太は会場のゲートのところに、先に行った3人の姿を見つけた。 「ドラえもん!みんな待ってるよ、急ごう!」 とうとう痺れを切らし走り出すのび太。それをドラえもんが注意する。 「危ないよのび太君!人とぶつかりでもしたら…」 「平気平気…ってうわぁっ!」 「ほらみろ馬鹿。」 ドラえもんの忠告も虚しく、思いっきり転倒するのび太だった。 『ポケットモンスター』の初期作品、金銀・ルビーサファイアエメラルド・ ファイアレッドリーフグリーン。 それらに登場するポケモンと一緒に旅が出来る─ そんな子供が夢みたような事が実現する。 そんなイベント『ポケモンワールドアドベンチャー』。 それに参加するのが、今回ののび太達の目的だった。 イベント会場。そこはイベントに参加する人やロボットで賑わっている。 「なぁドラえもん、これなんなんだ?」 ジャイアンが、受付で腕にはめられたリストバンドのような物を指差して尋ねた。 「説明聞いてなかったの?これは整理券みたいな物で、 他にもいろんな役割があるんだってさ。」 ドラえもんに言われ周りにいる人を見てみると、確かに皆にはめられている。 ---- それからしばらくして辺りの照明が落ち、 会場の中心にある円形のステージにスポットライトが当たる。 そして、光の中に1人の男が現れた。立体映像だろうか、向こうが透けて見える。 「何、あの格好…」 会場にいた誰かが呟く。男の格好は、十何世紀かの貴族を気取ったような格好だ。 顔には仮面をつけて目だけが見える形になっている。 お世辞にもカッコいいとは言えない。 「みんな、待たせたね。私はゲームの管理人ハム=ベーコン16世だ。」 会場に居た大部分の人は思った。 名前のセンスゼロじゃん…、と。 男…ハムは続ける。 「まぁ、ゲームマスターと呼んでくれたまえ。」 もはやハム=ベーコンと言う名前を名乗った意味もないかもしれない。 それはともかく、会場の視線はゲームマスターに集まっていた。 「さぁ、これから皆には冒険に出発してもらうよ。舞台はもちろん『ポケモン』の世界だ。」 いよいよ旅に出られるんだ。のび太はそう思った。 会場に居た多くの子供も同じ気持ちだろう。 「…旅には、いろいろな物が必要だ。ポケモンやアイテムはもちろん。 出会い、別れ、勇気、決断…普段の生活では別段意識しないような事もね。」 ---- 男は、そこで一旦、話を止めた。 男の雰囲気が、どこか変わる。それに気付いた者は少なかった。 「そこで、だ。」 会場に、しばしの静寂が流れる。 「君達に、この旅でしてもらいたい事がある。」 張り詰める空気。聞いてはいけない、聞きたくない。会場の中には そんな漠然とした不安に刈られる者も居た。 「それは…潰し合いだ。」 静寂。男の口から発せられた言葉を理解出来た人物が、一体何人居ただろうか。 「潰し合いって…どういう事ですか?」 静寂を破ったのは、メガネをかけた1人の少年。小学校低学年ぐらいだろうか、 小柄な少年だ。しかしその実、落ち着いた様子を見せている。 少年の問いに、ゲームマスターはゆっくりと答えた。 「少年、焦らない事も大切だよ。まぁ聞きたまえ。これから皆にルールを説明しよう。」 パチンと、男が指を鳴らす。男の頭上に、巨大なボール型のホログラムが現れる。 そのボールの表面に、沢山の文字が表示された。どうやら360度、 会場のどこに居ても読めるようになっているようだ。 そして、沢山の文字の上に一際大きく記された文字があった。 そこにはこう記されている。 『P・B・R』と。 ---- 男が一言、言った。 「『P・B・R』、ポケモン・バトル・ロワイアルだ。」 その言葉と同時に、会場に機械のような、どこか無機質なアナウンスが流れ出す。 『これから、P・B・Rのルール説明を行います。このアナウンスは 繰り返される事はありませんので、よく聞いて下さい。』 相変わらず静かな会場に、アナウンスの声が響いた。 『このゲームの参加者は、この会場にいる総数200名の子供・家庭用ロボットです。 皆さんには、ゲーム内でペアで行動してもらいます。皆さんの左手に はめられているバンドをご覧下さい。』 言われるままにバンドに目をやる。するとそこには、さっきまで無かった 模様が浮かび上がっていた。 『浮かび上がっている模様は100通り、二つずつあります。 同じ模様を持つ人物が、それぞれのパートナーとなります。 尚、そのバンドはゲーム終了まで着脱は不可能となっています。 ゲームクリアの条件は三つ。 1、最後の1組、優勝者が決まる。 2、このゲームの中に隠された謎を解く。 3、ゲームの世界の何処かにある"扉"を開く。となっています。 優勝を目指して周りを潰すのも、一致団結して協力するのも、皆さんの自由です。 条件の2・3は1ペアでもクリアすれば結構です。』 ---- アナウンスは続く。 『参加者の皆さんには、1人1つの四次元リュックが配られます。 中身は各々確認して下さい。 そして、その中にはあなたのパートナーとなるポケモンが入った モンスターボールがあります。 尚、パートナーとなるポケモンの他人との交換は不可能ですが、 捕まえたポケモン同士の交換は可能です。 一度に所有出来るポケモンの数は、1人辺り6体まで。 それ以上の数になると自動的にデータ化され、ある物に保存されます。 パートナーとなる人物同士は、ゲーム内にある"島"を離れて行動する事は出来ません。 尚、パートナー1人のみがリタイアになっても、 残った方は旅を続ける事は通常通り可能です。 リタイアとなる条件は主に二つ。 参加者本体が、現実で大怪我になるような外傷を受けた場合。 もう1つは参加者同士のバトルで三度負けた場合です。 尚、ゲーム内に秘密道具の持ち込みは不可能です。 そして最後に。このゲームのタイムリミットは100日となっています。 それまでにクリア条件が満たされなかった場合、プログラムP・B・Rは強制終了します。 これで、プログラムの説明を終了します。』 説明が終わり、ホログラムが消えた。 ---- 男が不敵に笑う。 「どうだい?参加者同士の勝ち残りを競うバトル…ゾクゾクするだろう?」 男が語り続ける中、1人の少年が叫んだ。 「うわぁぁ!出して!怖いよ!僕帰る!家へ帰るんだぁぁ!」 パニック状態になる少年。それにつられるように辺りは子供のわめき声が響く。 『静まれ!!』 ピタリ、止まる騒ぎ声。騒音とも言える声を止める迫力を、充分に持った声だ。 声の先を見つめる子供達。それはのび太達5人も、メガネの少年も同じだった。 ゲームマスターだ。さっきまでハッキリとしていたホログラムは、 段々と形が乱れていく。 『もう…ゲームは始まろうとしている。止める事は出来ない、逃げる事もね。 早く家へ帰りたければ、一刻も早くクリアする事だ…』 そして、ホログラムは消えた。 「どうやら…参加するしか無いようだね。」 ドラえもんが諦めたように言う。 「そんな!どこでもドアで脱出は出来ないの?」 ドラえもんにしがみつくのび太。そこである事に気付く。 「無い…」 無い。それまで確かにあった筈の四次元ポケットは、ドラえもんの胸元から消えていた。 ---- 「消えたんだよ。説明のアナウンスがあっただろう?秘密道具は使えない… もうその影響が出てるんだ…」 ドラえもんが呟く。 「じゃあ…参加するしかないの?」 しずかは声を震わせている。 「そんな…怖いよ…」 すっかり怯えてしまっているスネ夫。 しかしそんな中、あの2人は違った。 「参加するしかねぇんだろう?だったら話は早いじゃねえか。とっとと参加して、 クリアすりゃあいいんだよ。」 いざという時には頼りになる男ジャイアン。それはこの場合でも同じだった。 「ジャイアンの言う通りだよ。みんなで協力したら、きっとどうにかなる!」 意外にも前向きだったのは、のび太だ。 その言葉で、3人は立ち直る事が出来た。 「そうね…みんな、頑張りましょう。」 「うん…ゲームなら、僕の得意分野だ!」 しずかとスネ夫も、普段の輝きを取り戻す。 「よし…じゃあ皆、パートナーを探そう!」 ドラえもんの一言に4人は同意し、それぞれのパートナー探しを始めたのだった。 プログラム"P・B・R"開始0日目 [残り200名・100ペア] -設定注釈:ポケ×ドラ×コナン×(バトロワ+ベイカー街+α) ---- 一同が仲間探しに別れた後、スネ夫はパートナーを探す中である事に気が付いた。 「人が…減ってる?」 周りを見渡す。明らかに人が少なくなっている。 この会場は密室、出られる筈がない。 そしてゲームマスターの話ではゲームの参加者は200人、 しかしどう見ても会場に残っているのは100人前後だろう。 どういう事だ?疑問に思うスネ夫。 しかし、その疑問はもっとも分かりやすい形で解決した。 パートナーが見つかったのだ。 二人は自己紹介をする。 「僕はスネ夫。君の名前は?」 「僕、ミツヒコっていいます。よろしくお願いします。」 ミツヒコは小学校低学年ぐらいだろうか。どうやら彼も友達と5人で このイベントに参加しているらしい。 スネ夫は、自分達の周りが段々ぼやけてくるのに気が付いた。 やがて、辺りは完全に別の場所になった。全体的に暗い、広い部屋だ。 なるほどね。スネ夫は理解した。 大方、パートナーが見つかって一定時間が経過するとゲームの中に飛ばされるとか、 そんな所だろう。 スネ夫の考えが正しいのを証明するかのように、 辺りには他の参加者の姿がチラホラと見える。 ---- 「スネ夫さん。」 ミツヒコに呼ばれ、後ろを振り向くと、ミツヒコはリュックを担いでいた。 「どこにあったんだ?それ。」 スネオが尋ねると、ミツヒコは何も言わずスネオの肩の辺りを指差す。 「あ、有った。」 気付かなかった。あまりに軽く、全く重量を感じないと言っていいリュックが、 いつの間にかスネオの背中に担がれていたのだ。 おそらく、ゲームに飛ばされた際に自動的に身に着けられたのだろう。 「とりあえず、中身を確認してみましょう。」 「そうだな。」 ミツヒコの提案で、2人は床に腰を下ろし中身を取り出した。 ボールに入った自分のポケモン、空のモンスターボール。 携帯食料、回復アイテム、それにアルバムの様な中身の無い冊子、謎の機械。 「これで全部か。」 スネオは一息着いた。リュックの中にはもう何も無い。 「これは…何でしょう?」 ミツヒコが手に持っているのは、謎の機械。見た目は一見携帯電話の様だ。 「それは、ポケナビフォンだよ。」 スネオじゃない、他の人物が答える。その声の主は、すぐそこに立っていた。 ミツヒコは驚いて立ち上がる。 「コナン君!」 ---- そこに立っていたのは、ミツヒコの友人、コナンだった。 「パートナー、見つけたんだな。」 コナンがスネ夫の方を見ながら言った。 「えぇ、時間かかりましたが…コナン君のパートナーは?」 「ん?あぁ、向こうにいるぜ。アイとアユミもな。 俺達とあっちのパートナーが綺麗に重なったんだ。あっちも5人組なんだとよ。」 コナンがそんな話をしていると、向こうから5人の人影が歩いて来た。 「アイさん!アユミちゃん!」 2人の少女もミツヒコの友人だった。そして、スネ夫も気付いた。 「5人って、僕らの事だったのか…」 そこには、ドラえもんとしずかちゃん、そしてのび太の姿があった。 「凄い偶然ってあるもんだねぇ!」 のび太が気楽に笑いながら言った。一同は、皆で座って話していた。 ドラえもんはアイという少女、しずかはアユミという少女、のび太はコナンと それぞれペアという、綺麗にお互いの仲間同士が重なった結果になっている。 「偶然じゃないよ。」 コナンがのび太に言った。 「このポケナビフォンに番号がついてるでしょ? 100を境に1と101でペアになるって仕組みなんだろうね。」 ---- コナンは続けて言った。聞いた話では、物凄く頭のキレる奴らしい。 「って事は、ジャイアンと…ゲンタ君だっけ?その子はペアって事?」 のび太が確認するように尋ねると、コナンは軽く頷く。 どっちが年上かわかったもんじゃない。 その後、一同はそれぞれのポケモンを確認した。 のび太はガーディ、ドラえもんはニョロモ、しずかはピィ、スネオはマダツボミ。 コナン一向はコナンがポニータ、アイはチコリータ、アユミがピチュー、 そしてミツヒコがズバットだった。 遥か向こうにある黒い巨大な壁を背に、 8人はこの広い空間の出口になっている光の元に来た。 コナンがそこに書かれていた注意書きのような物を読む。 「何々…この光の向こうは、最初の島となっています。 同時に複数のペアが飛び込んでも、辿り着くのは バラバラの場所になります…だとよ。」 「じゃあ皆…ここで一旦お別れなのね。」 アイがボソリと呟いた。 ここで皆別れるのだ。次会う事が出来るかなど、誰も分からない。 皆、自然と表情が強張った。 「また、みんなで会おうぜ!」 コナンとのび太が一番な光の中に飛び込み、皆、それに続く。 この先に何が待っているのかは、誰も知らなかった。 ---- -情報まとめ 組み合わせ&ポケモン -NO.75ドラえもん(ニョロモ)&NO.175アイ(チコリータ) -NO.76のび太(ガーディ)&NO.176コナン(ポニータ) -NO.77しずか(ピィ)&NO.177アユミ(ピチュー) -NO.78ジャイアン(??)&NO.178ゲンタ(??) -NO.79スネ夫(マダツボミ)&NO.179ミツヒコ(ズバット) 《リュックの中身》 -パートナーポケモン×1 -空モンスターボール×5 -圧縮携帯食料&水10日分 -謎の冊子×1 -ポケナビフォン×1 プログラム1日目 残り200名・100ペア ---- &size(medium){《ポケナビフォン説明》} このプログラムにおける通信機器です。様々な便利機能が備わっています。 -便利機能その1▼〔ポケモン預かり機能〕 手持ちが6匹になりそれ以上にポケモンを捕獲した場合、 ナビフォン内の"ポケモンフォルダ"にデータとして保存さます。 バトル中を除き自由にポケモンの入れ替えが出来ます。 -便利機能その2▼〔図鑑機能〕 出会ったポケモンのデータを自動的に記録します。 自分のポケモンのレベル・状態・使える技の確認・編集が出来ます。 -便利機能その3▼〔通信機能〕 ポケナビフォン内の"アドレス帳"にポケナビフォンの番号・アドレスを 互いに登録する事で、電話通信・メールが出来ます。 -便利機能その4▼〔アップデート機能〕 プログラム内のいたる所にある"アップデートメモリ"を使用する事で、 様々な機能を追加する事が可能です。 [[次へ>扉。 その2]] ----

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