「扉。 その1」(2007/01/18 (木) 23:08:11) の最新版変更点
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扉─。この広間の奥にある、巨大な扉。
その扉を開けば、全てが終わる…
幾多の犠牲を乗り越えて、遂にここまでやってきた。
少年は、広間の入口から扉を見据える。
突如、少年の前に巨大な黒い影が現れる。
「これが、最後の"アイドル"…そして…」
少年が呟くと同時に、咆哮する黒い影。
「行くよ…みんな。」
少年は、もう迷わない。失ったものを、取り戻すために…
「ねぇドラえもん!早く行こうよ~!」
先に駆けて行ったジャイアン・スネ夫・しずかの背を見ながら、
のび太はドラえもんを急かした。
「まぁまぁ、落ち着きなよのび太君、参加は確実に出来るんだ。焦らないで行こうよ。」
はやる気持ちを押さえる事が出来ないのび太を、ドラえもんはやれやれといった感じで諭す。
のび太達5人は、ドラえもんが貰った『ある企画』の参加権利、
その企画に参加する為22世紀の世界へと来ていた。
「見えてきたよドラえもん!あれが─」
ポケモンミュージアム。
そこは、21世紀に発売され爆発的な人気を誇ったゲーム『ポケットモンスター』を
専門に扱う展示会場である。
----
のび太は会場のゲートのところに、先に行った3人の姿を見つけた。
「ドラえもん!みんな待ってるよ、急ごう!」
とうとう痺れを切らし走り出すのび太。それをドラえもんが注意する。
「危ないよのび太君!人とぶつかりでもしたら…」
「平気平気…ってうわぁっ!」
「ほらみろ馬鹿。」
ドラえもんの忠告も虚しく、思いっきり転倒するのび太だった。
『ポケットモンスター』の初期作品、金銀・ルビーサファイアエメラルド・
ファイアレッドリーフグリーン。
それらに登場するポケモンと一緒に旅が出来る─そんな子供が夢みたような事が実現する。
そんなイベント『ポケモンワールドアドベンチャー』。
それに参加するのが、今回ののび太達の目的だった。
イベント会場。そこはイベントに参加する人やロボットで賑わっている。
「なぁドラえもん、これなんなんだ?」
ジャイアンが、受付で腕にはめられたリストバンドのような物を指差して尋ねた。
「説明聞いてなかったの?これは整理券みたいな物で、
他にもいろんな役割があるんだってさ。」
ドラえもんに言われ周りにいる人を見てみると、確かに皆にはめられている。
----
それからしばらくして辺りの照明が落ち、
会場の中心にある円形のステージにスポットライトが当たる。
そして、光の中に1人の男が現れた。立体映像だろうか、向こうが透けて見える。
「何、あの格好…」
会場にいた誰かが呟く。男の格好は、十何世紀かの貴族を気取ったような格好だ。
顔には仮面をつけて目だけが見える形になっている。お世辞にもカッコいいとは言えない。
「みんな、待たせたね。私はゲームの管理人ハム=ベーコン16世だ。」
会場に居た大部分の人は思った。
名前のセンスゼロじゃん…、と。
男…ハムは続ける。
「まぁ、ゲームマスターと呼んでくれたまえ。」
もはやハム=ベーコンと言う名前を名乗った意味もないかもしれない。
それはともかく、会場の視線はゲームマスターに集まっていた。
「さぁ、これから皆には冒険に出発してもらうよ。舞台はもちろん『ポケモン』の世界だ。」
いよいよ旅に出られるんだ。のび太はそう思った。会場に居た多くの子供も同じ気持ちだろう。
「…旅には、いろいろな物が必要だ。ポケモンやアイテムはもちろん。出会い、別れ、
勇気、決断…普段の生活では別段意識しないような事もね。」
----
男は、そこで一旦、話を止めた。
男の雰囲気が、どこか変わる。それに気付いた者は少なかった。
「そこで、だ。」
会場に、しばしの静寂が流れる。
「君達に、この旅でしてもらいたい事がある。」
張り詰める空気。聞いてはいけない、聞きたくない。会場の中には
そんな漠然とした不安に刈られる者も居た。
「それは…潰し合いだ。」
静寂。男の口から発せられた言葉を理解出来た人物が、一体何人居ただろうか。
「潰し合いって…どういう事ですか?」
静寂を破ったのは、メガネをかけた1人の少年。小学校低学年ぐらいだろうか、
小柄な少年だ。しかしその実、落ち着いた様子を見せている。
少年の問いに、ゲームマスターはゆっくりと答えた。
「少年、焦らない事も大切だよ。まぁ聞きたまえ。これから皆にルールを説明しよう。」
パチンと、男が指を鳴らす。男の頭上に、巨大なボール型のホログラムが現れる。
そのボールの表面に、沢山の文字が表示された。どうやら360度、
会場のどこに居ても読めるようになっているようだ。
そして、沢山の文字の上に一際大きく記された文字があった。そこにはこう記されている。
『P・B・R』と。
----
男が一言、言った。
「『P・B・R』、ポケモン・バトル・ロワイアルだ。」
その言葉と同時に、会場に機械のような、どこか無機質なアナウンスが流れ出す。
『これから、P・B・Rのルール説明を行います。このアナウンスは
繰り返される事はありませんので、よく聞いて下さい。』
相変わらず静かな会場に、アナウンスの声が響いた。
『このゲームの参加者は、この会場にいる総数200名の子供・家庭用ロボットです。
皆さんには、ゲーム内でペアで行動してもらいます。皆さんの左手に
はめられているバンドをご覧下さい。』
言われるままにバンドに目をやる。するとそこには、さっきまで無かった模様が浮かび上がっていた。
『浮かび上がっている模様は100通り、二つずつあります。
同じ模様を持つ人物が、それぞれのパートナーとなります。
尚、そのバンドはゲーム終了まで着脱は不可能となっています。
ゲームクリアの条件は三つ。
1、最後の1組、優勝者が決まる。
2、このゲームの中に隠された謎を解く。
3、ゲームの世界の何処かにある"扉"を開く。となっています。
優勝を目指して周りを潰すのも、一致団結して協力するのも、皆さんの自由です。
条件の2・3は1ペアでもクリアすれば結構です。』
----
アナウンスは続く。
『参加者の皆さんには、1人1つの四次元リュックが配られます。
中身は各々確認して下さい。
そして、その中にはあなたのパートナーとなるポケモンが入ったモンスターボールがあります。
尚、パートナーとなるポケモンの他人との交換は不可能ですが、
捕まえたポケモン同士の交換は可能です。
一度に所有出来るポケモンの数は、1人辺り6体まで。
それ以上の数になると自動的にデータ化され、ある物に保存されます。
パートナーとなる人物同士は、ゲーム内にある"島"を離れて行動する事は出来ません。
尚、パートナー1人のみがリタイアになっても、残った方は旅を続ける事は通常通り可能です。
リタイアとなる条件は主に二つ。
参加者本体が、現実で大怪我になるような外傷を受けた場合。
もう1つは参加者同士のバトルで三度負けた場合です。
尚、ゲーム内に秘密道具の持ち込みは不可能です。
そして最後に。このゲームのタイムリミットは100日となっています。
それまでにクリア条件が満たされなかった場合、プログラムP・B・Rは強制終了します。
これで、プログラムの説明を終了します。』
説明が終わり、ホログラムが消えた。
----
男が不敵に笑う。
「どうだい?参加者同士の勝ち残りを競うバトル…ゾクゾクするだろう?」
男が語り続ける中、1人の少年が叫んだ。
「うわぁぁ!出して!怖いよ!僕帰る!家へ帰るんだぁぁ!」
パニック状態になる少年。それにつられるように辺りは子供のわめき声が響く。
『静まれ!!』
ピタリ、止まる騒ぎ声。騒音とも言える声を止める迫力を、充分に持った声だ。
声の先を見つめる子供達。それはのび太達5人も、メガネの少年も同じだった。
ゲームマスターだ。さっきまでハッキリとしていたホログラムは、
段々と形が乱れていく。
『もう…ゲームは始まろうとしている。止める事は出来ない、逃げる事もね。早く家へ帰りたければ、一刻も早くクリアする事だ…』
そして、ホログラムは消えた。
「どうやら…参加するしか無いようだね。」
ドラえもんが諦めたように言う。
「そんな!どこでもドアで脱出は出来ないの?」
ドラえもんにしがみつくのび太。そこである事に気付く。
「無い…」
無い。それまで確かにあった筈の四次元ポケットは、ドラえもんの胸元から消えていた。
----
「消えたんだよ。説明のアナウンスがあっただろう?秘密道具は使えない…
もうその影響が出てるんだ…」
ドラえもんが呟く。
「じゃあ…参加するしかないの?」
しずかは声を震わせている。
「そんな…怖いよ…」
すっかり怯えてしまっているスネ夫。
しかしそんな中、あの2人は違った。
「参加するしかねぇんだろう?だったら話は早いじゃねえか。とっとと参加して、
クリアすりゃあいいんだよ。」
いざという時には頼りになる男ジャイアン。それはこの場合でも同じだった。
「ジャイアンの言う通りだよ。みんなで協力したら、きっとどうにかなる!」
意外にも前向きだったのは、のび太だ。
その言葉で、3人は立ち直る事が出来た。
「そうね…みんな、頑張りましょう。」
「うん…ゲームなら、僕の得意分野だ!」
しずかとスネ夫も、普段の輝きを取り戻す。
「よし…じゃあ皆、パートナーを探そう!」
ドラえもんの一言に4人は同意し、それぞれのパートナー探しを始めたのだった。
プログラム"P・B・R"開始0日目
[残り200名・100ペア]
-設定注釈:ポケ×ドラ×コナン×(バトロワ+ベイカー街+α)
----
一同が仲間探しに別れた後、スネ夫はパートナーを探す中である事に気が付いた。
「人が…減ってる?」
周りを見渡す。明らかに人が少なくなっている。
この会場は密室、出られる筈がない。
そしてゲームマスターの話ではゲームの参加者は200人、
しかしどう見ても会場に残っているのは100人前後だろう。
どういう事だ?疑問に思うスネ夫。
しかし、その疑問はもっとも分かりやすい形で解決した。
パートナーが見つかったのだ。
二人は自己紹介をする。
「僕はスネ夫。君の名前は?」
「僕、ミツヒコっていいます。よろしくお願いします。」
ミツヒコは小学校低学年ぐらいだろうか。どうやら彼も友達と5人で
このイベントに参加しているらしい。
スネ夫は、自分達の周りが段々ぼやけてくるのに気が付いた。
やがて、辺りは完全に別の場所になった。全体的に暗い、広い部屋だ。
なるほどね。スネ夫は理解した。
大方、パートナーが見つかって一定時間が経過するとゲームの中に飛ばされるとか、
そんな所だろう。
スネ夫の考えが正しいのを証明するかのように、
辺りには他の参加者の姿がチラホラと見える。
----
「スネ夫さん。」
ミツヒコに呼ばれ、後ろを振り向くと、ミツヒコはリュックを担いでいた。
「どこにあったんだ?それ。」
スネオが尋ねると、ミツヒコは何も言わずスネオの肩の辺りを指差す。
「あ、有った。」
気付かなかった。あまりに軽く、全く重量を感じないと言っていいリュックが、
いつの間にかスネオの背中に担がれていたのだ。
おそらく、ゲームに飛ばされた際に自動的に身に着けられたのだろう。
「とりあえず、中身を確認してみましょう。」
「そうだな。」
ミツヒコの提案で、2人は床に腰を下ろし中身を取り出した。
ボールに入った自分のポケモン、空のモンスターボール。
携帯食料、回復アイテム、それにアルバムの様な中身の無い冊子、謎の機械。
「これで全部か。」
スネオは一息着いた。リュックの中にはもう何も無い。
「これは…何でしょう?」
ミツヒコが手に持っているのは、謎の機械。見た目は一見携帯電話の様だ。
「それは、ポケナビフォンだよ。」
スネオじゃない、他の人物が答える。その声の主は、すぐそこに立っていた。
ミツヒコは驚いて立ち上がる。
「コナン君!」
----
そこに立っていたのは、ミツヒコの友人、コナンだった。
「パートナー、見つけたんだな。」
コナンがスネ夫の方を見ながら言った。
「えぇ、時間かかりましたが…コナン君のパートナーは?」
「ん?あぁ、向こうにいるぜ。アイとアユミもな。
俺達とあっちのパートナーが綺麗に重なったんだ。あっちも5人組なんだとよ。」
コナンがそんな話をしていると、向こうから5人の人影が歩いて来た。
「アイさん!アユミちゃん!」
2人の少女もミツヒコの友人だった。そして、スネ夫も気付いた。
「5人って、僕らの事だったのか…」
そこには、ドラえもんとしずかちゃん、そしてのび太の姿があった。
「凄い偶然ってあるもんだねぇ!」
のび太が気楽に笑いながら言った。一同は、皆で座って話していた。
ドラえもんはアイという少女、しずかはアユミという少女、のび太はコナンと
それぞれペアという、綺麗にお互いの仲間同士が重なった結果になっている。
「偶然じゃないよ。」
コナンがのび太に言った。
「このポケナビフォンに番号がついてるでしょ?
100を境に1と101でペアになるって仕組みなんだろうね。」
----
コナンは続けて言った。聞いた話では、物凄く頭のキレる奴らしい。
「って事は、ジャイアンと…ゲンタ君だっけ?その子はペアって事?」
のび太が確認するように尋ねると、コナンは軽く頷く。
どっちが年上かわかったもんじゃない。
その後、一同はそれぞれのポケモンを確認した。
のび太はガーディ、ドラえもんはニョロモ、しずかはピィ、スネオはマダツボミ。
コナン一向はコナンがポニータ、アイはチコリータ、アユミがピチュー、
そしてミツヒコがズバットだった。
遥か向こうにある黒い巨大な壁を背に、
8人はこの広い空間の出口になっている光の元に来た。
コナンがそこに書かれていた注意書きのような物を読む。
「何々…この光の向こうは、最初の島となっています。
同時に複数のペアが飛び込んでも、辿り着くのはバラバラの場所になります…だとよ。」
「じゃあ皆…ここで一旦お別れなのね。」
アイがボソリと呟いた。
ここで皆別れるのだ。次会う事が出来るかなど、誰も分からない。
皆、自然と表情が強張った。
「また、みんなで会おうぜ!」
コナンとのび太が一番な光の中に飛び込み、皆、それに続く。
この先に何が待っているのかは、誰も知らなかった。
----
-情報まとめ
組み合わせ&ポケモン
-NO.75ドラえもん(ニョロモ)&NO.175アイ(チコリータ)
-NO.76のび太(ガーディ)&NO.176コナン(ポニータ)
-NO.77しずか(ピィ)&NO.177アユミ(ピチュー)
-NO.78ジャイアン(??)&NO.178ゲンタ(??)
-NO.79スネ夫(マダツボミ)&NO.179ミツヒコ(ズバット)
《リュックの中身》
-パートナーポケモン×1
-空モンスターボール×5
-圧縮携帯食料&水10日分
-謎の冊子×1
-ポケナビフォン×1
プログラム1日目
残り200名・100ペア
----
&size(medium){《ポケナビフォン説明》}
このプログラムにおける通信機器です。様々な便利機能が備わっています。
-便利機能その1▼〔ポケモン預かり機能〕
手持ちが6匹になりそれ以上にポケモンを捕獲した場合、
ナビフォン内の"ポケモンフォルダ"にデータとして保存さます。
バトル中を除き自由にポケモンの入れ替えが出来ます。
-便利機能その2▼〔図鑑機能〕
出会ったポケモンのデータを自動的に記録します。
自分のポケモンのレベル・状態・使える技の確認・編集が出来ます。
-便利機能その3▼〔通信機能〕
ポケナビフォン内の"アドレス帳"にポケナビフォンの番号・アドレスを
互いに登録する事で、電話通信・メールが出来ます。
-便利機能その4▼〔アップデート機能〕
プログラム内のいたる所にある"アップデートメモリ"を使用する事で、
様々な機能を追加する事が可能です。
[[次へ>扉。 その2]]
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扉─。この広間の奥にある、巨大な扉。
その扉を開けば、全てが終わる…
幾多の犠牲を乗り越えて、遂にここまでやってきた。
少年は、広間の入口から扉を見据える。
突如、少年の前に巨大な黒い影が現れる。
「これが、最後の"アイドル"…そして…」
少年が呟くと同時に、咆哮する黒い影。
「行くよ…みんな。」
少年は、もう迷わない。失ったものを、取り戻すために…
「ねぇドラえもん!早く行こうよ~!」
先に駆けて行ったジャイアン・スネ夫・しずかの背を見ながら、
のび太はドラえもんを急かした。
「まぁまぁ、落ち着きなよのび太君、参加は確実に出来るんだ。
焦らないで行こうよ。」
はやる気持ちを押さえる事が出来ないのび太を、
ドラえもんはやれやれといった感じで諭す。
のび太達5人は、ドラえもんが貰った『ある企画』の参加権利、
その企画に参加する為22世紀の世界へと来ていた。
「見えてきたよドラえもん!あれが─」
ポケモンミュージアム。
そこは、21世紀に発売され爆発的な人気を誇ったゲーム『ポケットモンスター』を
専門に扱う展示会場である。
----
のび太は会場のゲートのところに、先に行った3人の姿を見つけた。
「ドラえもん!みんな待ってるよ、急ごう!」
とうとう痺れを切らし走り出すのび太。それをドラえもんが注意する。
「危ないよのび太君!人とぶつかりでもしたら…」
「平気平気…ってうわぁっ!」
「ほらみろ馬鹿。」
ドラえもんの忠告も虚しく、思いっきり転倒するのび太だった。
『ポケットモンスター』の初期作品、金銀・ルビーサファイアエメラルド・
ファイアレッドリーフグリーン。
それらに登場するポケモンと一緒に旅が出来る─
そんな子供が夢みたような事が実現する。
そんなイベント『ポケモンワールドアドベンチャー』。
それに参加するのが、今回ののび太達の目的だった。
イベント会場。そこはイベントに参加する人やロボットで賑わっている。
「なぁドラえもん、これなんなんだ?」
ジャイアンが、受付で腕にはめられたリストバンドのような物を指差して尋ねた。
「説明聞いてなかったの?これは整理券みたいな物で、
他にもいろんな役割があるんだってさ。」
ドラえもんに言われ周りにいる人を見てみると、確かに皆にはめられている。
----
それからしばらくして辺りの照明が落ち、
会場の中心にある円形のステージにスポットライトが当たる。
そして、光の中に1人の男が現れた。立体映像だろうか、向こうが透けて見える。
「何、あの格好…」
会場にいた誰かが呟く。男の格好は、十何世紀かの貴族を気取ったような格好だ。
顔には仮面をつけて目だけが見える形になっている。
お世辞にもカッコいいとは言えない。
「みんな、待たせたね。私はゲームの管理人ハム=ベーコン16世だ。」
会場に居た大部分の人は思った。
名前のセンスゼロじゃん…、と。
男…ハムは続ける。
「まぁ、ゲームマスターと呼んでくれたまえ。」
もはやハム=ベーコンと言う名前を名乗った意味もないかもしれない。
それはともかく、会場の視線はゲームマスターに集まっていた。
「さぁ、これから皆には冒険に出発してもらうよ。舞台はもちろん『ポケモン』の世界だ。」
いよいよ旅に出られるんだ。のび太はそう思った。
会場に居た多くの子供も同じ気持ちだろう。
「…旅には、いろいろな物が必要だ。ポケモンやアイテムはもちろん。
出会い、別れ、勇気、決断…普段の生活では別段意識しないような事もね。」
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男は、そこで一旦、話を止めた。
男の雰囲気が、どこか変わる。それに気付いた者は少なかった。
「そこで、だ。」
会場に、しばしの静寂が流れる。
「君達に、この旅でしてもらいたい事がある。」
張り詰める空気。聞いてはいけない、聞きたくない。会場の中には
そんな漠然とした不安に刈られる者も居た。
「それは…潰し合いだ。」
静寂。男の口から発せられた言葉を理解出来た人物が、一体何人居ただろうか。
「潰し合いって…どういう事ですか?」
静寂を破ったのは、メガネをかけた1人の少年。小学校低学年ぐらいだろうか、
小柄な少年だ。しかしその実、落ち着いた様子を見せている。
少年の問いに、ゲームマスターはゆっくりと答えた。
「少年、焦らない事も大切だよ。まぁ聞きたまえ。これから皆にルールを説明しよう。」
パチンと、男が指を鳴らす。男の頭上に、巨大なボール型のホログラムが現れる。
そのボールの表面に、沢山の文字が表示された。どうやら360度、
会場のどこに居ても読めるようになっているようだ。
そして、沢山の文字の上に一際大きく記された文字があった。
そこにはこう記されている。
『P・B・R』と。
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男が一言、言った。
「『P・B・R』、ポケモン・バトル・ロワイアルだ。」
その言葉と同時に、会場に機械のような、どこか無機質なアナウンスが流れ出す。
『これから、P・B・Rのルール説明を行います。このアナウンスは
繰り返される事はありませんので、よく聞いて下さい。』
相変わらず静かな会場に、アナウンスの声が響いた。
『このゲームの参加者は、この会場にいる総数200名の子供・家庭用ロボットです。
皆さんには、ゲーム内でペアで行動してもらいます。皆さんの左手に
はめられているバンドをご覧下さい。』
言われるままにバンドに目をやる。するとそこには、さっきまで無かった
模様が浮かび上がっていた。
『浮かび上がっている模様は100通り、二つずつあります。
同じ模様を持つ人物が、それぞれのパートナーとなります。
尚、そのバンドはゲーム終了まで着脱は不可能となっています。
ゲームクリアの条件は三つ。
1、最後の1組、優勝者が決まる。
2、このゲームの中に隠された謎を解く。
3、ゲームの世界の何処かにある"扉"を開く。となっています。
優勝を目指して周りを潰すのも、一致団結して協力するのも、皆さんの自由です。
条件の2・3は1ペアでもクリアすれば結構です。』
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アナウンスは続く。
『参加者の皆さんには、1人1つの四次元リュックが配られます。
中身は各々確認して下さい。
そして、その中にはあなたのパートナーとなるポケモンが入った
モンスターボールがあります。
尚、パートナーとなるポケモンの他人との交換は不可能ですが、
捕まえたポケモン同士の交換は可能です。
一度に所有出来るポケモンの数は、1人辺り6体まで。
それ以上の数になると自動的にデータ化され、ある物に保存されます。
パートナーとなる人物同士は、ゲーム内にある"島"を離れて行動する事は出来ません。
尚、パートナー1人のみがリタイアになっても、
残った方は旅を続ける事は通常通り可能です。
リタイアとなる条件は主に二つ。
参加者本体が、現実で大怪我になるような外傷を受けた場合。
もう1つは参加者同士のバトルで三度負けた場合です。
尚、ゲーム内に秘密道具の持ち込みは不可能です。
そして最後に。このゲームのタイムリミットは100日となっています。
それまでにクリア条件が満たされなかった場合、プログラムP・B・Rは強制終了します。
これで、プログラムの説明を終了します。』
説明が終わり、ホログラムが消えた。
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男が不敵に笑う。
「どうだい?参加者同士の勝ち残りを競うバトル…ゾクゾクするだろう?」
男が語り続ける中、1人の少年が叫んだ。
「うわぁぁ!出して!怖いよ!僕帰る!家へ帰るんだぁぁ!」
パニック状態になる少年。それにつられるように辺りは子供のわめき声が響く。
『静まれ!!』
ピタリ、止まる騒ぎ声。騒音とも言える声を止める迫力を、充分に持った声だ。
声の先を見つめる子供達。それはのび太達5人も、メガネの少年も同じだった。
ゲームマスターだ。さっきまでハッキリとしていたホログラムは、
段々と形が乱れていく。
『もう…ゲームは始まろうとしている。止める事は出来ない、逃げる事もね。
早く家へ帰りたければ、一刻も早くクリアする事だ…』
そして、ホログラムは消えた。
「どうやら…参加するしか無いようだね。」
ドラえもんが諦めたように言う。
「そんな!どこでもドアで脱出は出来ないの?」
ドラえもんにしがみつくのび太。そこである事に気付く。
「無い…」
無い。それまで確かにあった筈の四次元ポケットは、ドラえもんの胸元から消えていた。
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「消えたんだよ。説明のアナウンスがあっただろう?秘密道具は使えない…
もうその影響が出てるんだ…」
ドラえもんが呟く。
「じゃあ…参加するしかないの?」
しずかは声を震わせている。
「そんな…怖いよ…」
すっかり怯えてしまっているスネ夫。
しかしそんな中、あの2人は違った。
「参加するしかねぇんだろう?だったら話は早いじゃねえか。とっとと参加して、
クリアすりゃあいいんだよ。」
いざという時には頼りになる男ジャイアン。それはこの場合でも同じだった。
「ジャイアンの言う通りだよ。みんなで協力したら、きっとどうにかなる!」
意外にも前向きだったのは、のび太だ。
その言葉で、3人は立ち直る事が出来た。
「そうね…みんな、頑張りましょう。」
「うん…ゲームなら、僕の得意分野だ!」
しずかとスネ夫も、普段の輝きを取り戻す。
「よし…じゃあ皆、パートナーを探そう!」
ドラえもんの一言に4人は同意し、それぞれのパートナー探しを始めたのだった。
プログラム"P・B・R"開始0日目
[残り200名・100ペア]
-設定注釈:ポケ×ドラ×コナン×(バトロワ+ベイカー街+α)
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一同が仲間探しに別れた後、スネ夫はパートナーを探す中である事に気が付いた。
「人が…減ってる?」
周りを見渡す。明らかに人が少なくなっている。
この会場は密室、出られる筈がない。
そしてゲームマスターの話ではゲームの参加者は200人、
しかしどう見ても会場に残っているのは100人前後だろう。
どういう事だ?疑問に思うスネ夫。
しかし、その疑問はもっとも分かりやすい形で解決した。
パートナーが見つかったのだ。
二人は自己紹介をする。
「僕はスネ夫。君の名前は?」
「僕、ミツヒコっていいます。よろしくお願いします。」
ミツヒコは小学校低学年ぐらいだろうか。どうやら彼も友達と5人で
このイベントに参加しているらしい。
スネ夫は、自分達の周りが段々ぼやけてくるのに気が付いた。
やがて、辺りは完全に別の場所になった。全体的に暗い、広い部屋だ。
なるほどね。スネ夫は理解した。
大方、パートナーが見つかって一定時間が経過するとゲームの中に飛ばされるとか、
そんな所だろう。
スネ夫の考えが正しいのを証明するかのように、
辺りには他の参加者の姿がチラホラと見える。
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「スネ夫さん。」
ミツヒコに呼ばれ、後ろを振り向くと、ミツヒコはリュックを担いでいた。
「どこにあったんだ?それ。」
スネオが尋ねると、ミツヒコは何も言わずスネオの肩の辺りを指差す。
「あ、有った。」
気付かなかった。あまりに軽く、全く重量を感じないと言っていいリュックが、
いつの間にかスネオの背中に担がれていたのだ。
おそらく、ゲームに飛ばされた際に自動的に身に着けられたのだろう。
「とりあえず、中身を確認してみましょう。」
「そうだな。」
ミツヒコの提案で、2人は床に腰を下ろし中身を取り出した。
ボールに入った自分のポケモン、空のモンスターボール。
携帯食料、回復アイテム、それにアルバムの様な中身の無い冊子、謎の機械。
「これで全部か。」
スネオは一息着いた。リュックの中にはもう何も無い。
「これは…何でしょう?」
ミツヒコが手に持っているのは、謎の機械。見た目は一見携帯電話の様だ。
「それは、ポケナビフォンだよ。」
スネオじゃない、他の人物が答える。その声の主は、すぐそこに立っていた。
ミツヒコは驚いて立ち上がる。
「コナン君!」
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そこに立っていたのは、ミツヒコの友人、コナンだった。
「パートナー、見つけたんだな。」
コナンがスネ夫の方を見ながら言った。
「えぇ、時間かかりましたが…コナン君のパートナーは?」
「ん?あぁ、向こうにいるぜ。アイとアユミもな。
俺達とあっちのパートナーが綺麗に重なったんだ。あっちも5人組なんだとよ。」
コナンがそんな話をしていると、向こうから5人の人影が歩いて来た。
「アイさん!アユミちゃん!」
2人の少女もミツヒコの友人だった。そして、スネ夫も気付いた。
「5人って、僕らの事だったのか…」
そこには、ドラえもんとしずかちゃん、そしてのび太の姿があった。
「凄い偶然ってあるもんだねぇ!」
のび太が気楽に笑いながら言った。一同は、皆で座って話していた。
ドラえもんはアイという少女、しずかはアユミという少女、のび太はコナンと
それぞれペアという、綺麗にお互いの仲間同士が重なった結果になっている。
「偶然じゃないよ。」
コナンがのび太に言った。
「このポケナビフォンに番号がついてるでしょ?
100を境に1と101でペアになるって仕組みなんだろうね。」
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コナンは続けて言った。聞いた話では、物凄く頭のキレる奴らしい。
「って事は、ジャイアンと…ゲンタ君だっけ?その子はペアって事?」
のび太が確認するように尋ねると、コナンは軽く頷く。
どっちが年上かわかったもんじゃない。
その後、一同はそれぞれのポケモンを確認した。
のび太はガーディ、ドラえもんはニョロモ、しずかはピィ、スネオはマダツボミ。
コナン一向はコナンがポニータ、アイはチコリータ、アユミがピチュー、
そしてミツヒコがズバットだった。
遥か向こうにある黒い巨大な壁を背に、
8人はこの広い空間の出口になっている光の元に来た。
コナンがそこに書かれていた注意書きのような物を読む。
「何々…この光の向こうは、最初の島となっています。
同時に複数のペアが飛び込んでも、辿り着くのは
バラバラの場所になります…だとよ。」
「じゃあ皆…ここで一旦お別れなのね。」
アイがボソリと呟いた。
ここで皆別れるのだ。次会う事が出来るかなど、誰も分からない。
皆、自然と表情が強張った。
「また、みんなで会おうぜ!」
コナンとのび太が一番な光の中に飛び込み、皆、それに続く。
この先に何が待っているのかは、誰も知らなかった。
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-情報まとめ
組み合わせ&ポケモン
-NO.75ドラえもん(ニョロモ)&NO.175アイ(チコリータ)
-NO.76のび太(ガーディ)&NO.176コナン(ポニータ)
-NO.77しずか(ピィ)&NO.177アユミ(ピチュー)
-NO.78ジャイアン(??)&NO.178ゲンタ(??)
-NO.79スネ夫(マダツボミ)&NO.179ミツヒコ(ズバット)
《リュックの中身》
-パートナーポケモン×1
-空モンスターボール×5
-圧縮携帯食料&水10日分
-謎の冊子×1
-ポケナビフォン×1
プログラム1日目
残り200名・100ペア
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&size(medium){《ポケナビフォン説明》}
このプログラムにおける通信機器です。様々な便利機能が備わっています。
-便利機能その1▼〔ポケモン預かり機能〕
手持ちが6匹になりそれ以上にポケモンを捕獲した場合、
ナビフォン内の"ポケモンフォルダ"にデータとして保存さます。
バトル中を除き自由にポケモンの入れ替えが出来ます。
-便利機能その2▼〔図鑑機能〕
出会ったポケモンのデータを自動的に記録します。
自分のポケモンのレベル・状態・使える技の確認・編集が出来ます。
-便利機能その3▼〔通信機能〕
ポケナビフォン内の"アドレス帳"にポケナビフォンの番号・アドレスを
互いに登録する事で、電話通信・メールが出来ます。
-便利機能その4▼〔アップデート機能〕
プログラム内のいたる所にある"アップデートメモリ"を使用する事で、
様々な機能を追加する事が可能です。
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