「挑戦者 その4」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

挑戦者 その4」(2007/01/16 (火) 21:25:45) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

[[前へ>挑戦者 その3]]  のび太はポケモンセンターでため息をついていた。 前の町からここまでの道のりは、体力のないのび太にとって地獄だった。 途中でハヤトが業を煮やし、エアームドにくわえさせて飛んだことも。 「のび太、休憩はすんだか?」 ハヤトが気楽に話しかけてきた。  のび太が頷くと、ハヤトは「よし」 と微笑んだ。 「じゃあもうジム戦できるな」 「ちょ、ちょっと待ってよ」 のび太は冗談じゃないという風に首を振る。 「明日でいいじゃないか。 それより、町を回ってみようよ!」  のび太に懇願され、ハヤトはしぶしぶ頷いた。  ――この町は一見派手で、そこらじゅうにネオン付きの看板がたてられている。 人々もどこか陽気で、活気にあふれていた。  のび太はすっかりここの空気に飲まれ、気持ちが浮かれてきていたが 「? どうしたの、ハヤテ」 「ハヤトだ」 と素早く返したハヤトだったが、その顔は険しかった。 「俺はこういう騒がしいところは嫌いなんだ」 ハヤトは腕を組みながら、人ごみを避けていった。  のび太はせかせかとその後をついていった。 そんなふうに歩いているうちに、二人はジムの前に来ていた。  ジムは赤と黄色に装飾され、周りの建物より一際派手にある。 「……ジムリーダー、マチス。イナズマアメリカン……」 のび太は入り口の看板を棒読みする。 「ふん。ジムにこんな装飾などしやがって……」 とハヤトは嘲り、その場を去ろうとした。  だが、 ---- ハヤトははっとして振り返る。  そこはジムの脇の路地裏だった。 「……のび太、来てみろ」 ハヤトはのび太の制止を無視し、ずんずん入っていった。  空が夕闇深くなるにつれ、路地裏は急速に暗くなっていった。 「どうしたのさ、ハヤt」 「静かに! 何かきこえるだろ」  のび太はいつものノリが遮断されたことにイラッときたが〔確信犯〕  素直に耳をそばだてた。  ……やがて微かな、鳴き声が聞こえてきた。 「鳥、かなあ」 「ああ、あれはムックルだ」 (流石ひこうジムリーダーだなぁ) とのび太は感心した。  やがて二人はその音源を見つけた。 ムックルが二体のコイルと一体のパチリスの攻撃をくらっている。 三体の電撃が放たれるたびに、ムックルは悲痛な叫びをあげた。 (あの、ムックルかわいそうに。いじめられて、ん?) のび太が呆気にとられている間に、ハヤトが飛び出していた。 「エアームド、奴らを追い払え!」  ハヤトが繰り出したエアームドがコイルに突撃する。 コイルは反撃するが、 エアームドとはレベルの差がありすぎた。 「エアームド、スピードスター!!」  エアームドの閃光がもう一体のコイルを吹き飛ばす。 「エアームド、最後は」 「おうおう、てめえ!!」  突然怒鳴られ、ハヤトは路地の奥を見た。 バイクにまたがったスキンヘッズ三人が立っていた。 ---- 「てめえ、兄貴のポケモンに何しやがるんでぇ!!」 どうやら手下の一人が口を出した。 「兄貴の遊びを邪魔しやがって、このy」 「遊びだと!?」 二人目の手下の言葉を遮って、ハヤトが怒鳴る。 「ひこうポケモンを何だと思っているんだ!!」 「はん、ひこうがどうした?」 一際大柄のスキンヘッズがハヤトを睨む。 「ただの雑魚だろうが」 その言葉で、ハヤトはきれた。 「エアームド!!! あのはげを八つ裂きにしろ!!!!」 エアームドは猛スピードで突進する。 はげ共は、失礼、スキンヘッズたちは間一髪でよけ、その場に倒れる。 「てめえ!! 俺のパチリスちゃんになにかあったら殺すぞ!! ゴラァ!!!」 リーダー格の奴は〔のび太が爆笑してることも知らずに〕怒声を上げた。 「五月蝿い!! これでも食らえ!!」  ハヤトはリュックからピッピ人形を取り出し、投げつけた。 「ピ、ピッピちゃん!! ぶぉっ!! ぉぉ」  スキンヘッズは〔鼻から〕 大量出血し、その場に倒れた。 「あ、兄貴いぃ!!」 手下たちはリーダーに駆け寄る。 手下たちは兄貴に触れようとするが、ハヤトの殺気に満ちた目線に気づいた。 「ち、ちくしょう!! 覚えてやがれ!」  手下たちは自分たちのコイルを戻し、一目散に逃げていった。  その場に一瞬沈黙が流れた。 ----  のび太は隠れていた物陰から出た。 「ハヤト、もうかえろ」  「HEY! おめえら!」 そういいながら、ジムの裏口からイナズマアメリカンが出てきた。 「人のジムの裏でなに暴れてるんだYO!  近所からJANJANうるせえうるせえCALLが来るじゃ」  ハヤトはマチスの口早な言葉を無視して振り返った。 「A-HA-? てめえどこへっと!」 マチスは地面に横たわるスキンヘッズに気づいた。 「……HEY,YOU」 マチスに呼び止められ、ハヤトは立ち止まる。 「暴れてたのはこいつだろ。だったらSORRY。こいつは俺の部下なんだ」 急に頭を下げるマチスに、ハヤトは目を見開く。 「いや、いいんだ。俺はただ」 「こいつは俺と違ってTHINKしたらすぐにMOVEしちゃう馬鹿だから」 その言葉と、マチスがちらりと地面にのたばるムックルを見た瞬間、 ハヤトの微笑みは消えた。  ハヤトはキッとマチスを睨む。 「貴様もひこうを愚弄する気か!!」 「HAHAHA! 俺は何ともいってないぜ」 といいつつマチスは 明らかな蔑みの目をハヤトに向ける。  しばらく二人は睨みあい、、やがてマチスがスキンヘッズを持ち上げた。 「じゃあな。FRY BOY」 マチスはパチリスが入るのと同時に戸をしめた。  ハヤトは舌打ちして振り返った。 ---- 「ねえハヤト!」 「ハヤテだ」 「ハヤテ……あれ? ねえハヤテ! 」  「ハヤトだ」 「ねえハヤト」 なんて会話を繰り返すうちに、二人はポケモンセンターにたどりついた。  だが突然目の前に何かが舞い降りてきて、二人は立ち止まった。 「あれ、さっきのムックルだ」  のび太は興味津々に抱えた。  そのままのび太たちはセンターの中に入る。 「僕らをついてきたのかな。……あれ?」 のび太はムックルを観察しているうちにあることに気づいた。 「このムックル、メールがついているよ」 ハヤトはやっとその言葉で振り向いた。 「誰かのポケモンなのか?」 「うん、多分」  二人はいすに腰掛け、メールを開いた。  それは手書きで、こう書かれている。  SOS ――――  のび太は固まった。「ねえ、これ」 「ああ、これを出した人は」 ハヤトも緊張した面持ちで呟いた。 「ねえ、これは助けてほしいんだよね? だったら」 「落ち着け、のび太。 今はあのジムを勝利することが先だ」  ハヤトはそう言うが、のび太はあいた口がふさがらないままだ。 「いいか、この先何かがおきれば絶対旅に関わってくるはずだ。 その前にここを出なきゃ意味ない」  ハヤトはそう言うと、自室へ帰っていった。 のび太はやっとの思いで手紙を畳む。 「……あれ、ムックル?」  ハヤトは突然後ろからつつかれ、振り返る。 「何だ、どうしてお前ここに!?」 ハヤトは叫んだが、ムックルは去ろうとしなかった。 注釈:ハヤテはピッピ人形をジムを去るときに持ってきたようだ ----  朝、のび太はハヤトの部屋の戸を叩いていた。 「ねえ、本当に行かないの?」 「ああ、誰が行くか。 あんなとこ」 ハヤトは頑として譲らず、仕方なくのび太は一人でジムに向かった。  派手派手しいジムの戸を、のび太はおどおどと開ける。 「こんに――」  のび太の言葉は大きなノイズに掻き消される。  ジムに入った途端、周りのトレーナーたちが祝砲を放ったからだ。 「っわわぁ!!」 のび太は反射的に叫び、耳を塞ぐ。 「HEY,BOY!!」  ジムの奥で、マチスが呼びかけてきた。 「YOUだけかい? あのFLY BOYは来てないのか?」  のび太はひどくおびえた表情で頷く。 「MMM, まあOK. LET'S BATTLEね!」  マチスはそう言うと定位置につく。 のび太もそれに倣った。 (……うわぁ、外野が睨んできてる……) のび太は柄の悪いトレーナーたちの視線をビンビンに感じていた。 「GO! ライチュウ!!」 マチスはポケモンを繰り出した。 (相手はでんきだ。 それなら) 「いけ、ドンメル!!」  ドンメルが繰り出され、戦闘が始まった。 ---- 「ライチュウ! でんこうせっか!!」 マチスの指示で、ライチュウが光の如くドンメルに突撃する。 すばやさの低いドンメルは簡単に捕らえられるが、致命傷ではない。 「ドンメル、マグニチュード!」 ドンメルは地面を揺らす。 その場が大きく振動し、ライチュウは一撃でひんしになった。  マチスは力なく横たわるライチュウを戻す。  それと共に、外野からブーイングが飛んでくる。 「卑怯者―!!」 「でんき相手にじめん出しやがって!!」 「そ、そんな無茶な……」  のび太の反論は尻すぼみに消えた。 「NO PROBLEM, NO PROBLEM!!」 マチスが叫び、外野は静かになる。 「じめん相手ならこいつだ!」 マチスは次のポケモンを繰り出した。  青い体から二本の触覚を出す姿。 地面の上で力なくはねるそのポケモンは、チョンチーだった。 のび太はその危機を察した。 「ドンメル、マグニチュード!」 「チョンチー、地面にみずでっぽう!」 チョンチーは先手で水を放ち、その体は宙に浮く。 その直後地面が揺れたが空中では関係ない。 「やばい!! ドンメル動け!」 「SLOWLY! みずでっぽう!!」 のろいドンメルは容赦なく放水を浴びる。 ドンメルは悲鳴を上げ、力尽きたように倒れた。 ---- 「ドンメル、戻れ」 のび太は急いでドンメルを戻し、のこりの一体を繰り出した。 「いけ、ハスボー」 ハスボーがフィールドに現れる。 「ハスボー、すいとるだ!」 ハスボーはチョンチーに飛び掛った。 「チョンチー、みずでっぽう」  チョンチーは放水し、ハスボーに当たるが相性はよくない。 ハスボーはチョンチーをくわえ、すいとり始めた。 「チョンチー、ふりはらえ! じたばただ!!」 チョンチーは技を放つが、ハスボーはなかなか離れない。 「ハスボー! 絶対離すなよ!!」 「SIT! 何としても離れさせろ!!」 チョンチーはじたばたを繰り返すが、ハスボーは倒れない。 何故ならすいとるで回復し続けているからだ。  やがてチョンチーは息も絶え絶えになった。 「く、……チョンチー、あまごいだ!!」 マチスは指示を変え、チョンチーは最後の力を振り絞っていく。 やがて天井に雨雲がたちこめ、雨が降り出す。 それと共に、チョンチーは力尽きた。  その時、ハスボーの身に変化が起きる。 「ハスボー!?」 のび太は目を見開いてそれを見ていた。 ハスボーは光だし、見る間に姿形が変化していく。  ハスボーは進化したのだ。 ---- 「ハスボーがハスブレロになった!」 のび太は歓喜するが、マチスは舌打ちする。 「SIT! 地味に決めやがって、そのうえ進化まで……BUT, 次でTHE ENDね!!」 マチスは次のポケモンを繰り出す。  出てきたのはあの三位一体のポケモン、レアコイルだ。 「一気ににいかせてもらう!! レアコイル、かみなり!!」 「ハスブレロ! 避難だ!!」 上空の雨雲が光り、稲妻が落ちる。  一瞬であたりに煙がこもった。 「……避けても無駄。 RAININGだとかみなりはHIT率100%。逃げ場は無いぜBOY」 「……どうかな?」 のび太は不思議と強気だった。 煙がはれ、のび太の予想は的中する。 「!! レアコイル!」 マチスは叫んだ。 見るとレアコイルはハスブレロの少し上を、危うそうにふらついていた。 「かみなりが直撃したのさ!! ハスブレロを追ったかみなりにね!! 」 そう、ハスブレロはあの一瞬で、レアコイルの下に隠れたのだ。 「それに僕のハスブレロの特性はすいすいなんだ!!」  マチスは舌打ちし、レアコイルに指示をするがレアコイルは様子が変だ。 「SIT!! 今のかみなりで磁力がおかしくなりがったみたいだ……  だがハスブレロに決定打は無い!! このままなら回復を待って」 「そんな時間はないよ。 ハスブレロ、しぜんのちから!!」 マチスは瞬時に理解した。   ハスブレロは雨がたまってできた池の上にいたのだ。 しぜんのちから、つまりバブルこうせんはレアコイルを連打する。 相性は普通。 だが、何度もくらえば……  磁力がいかれたレアコイルは泡にまみれて墜落する。…… ---- 「俺の負けだ」 マチスはあっさり認めた。 「FLY BOYに伝えといてくれ。お宅のひこうを中傷して、つまりけなして悪かったと」 マチスはバッジを渡す際、のび太に伝えた。  もっとものび太はトレーナーたちの視線が怖くてよくきいていなかったが。  のび太はバッジを受け取り、センターへ戻ってきた。 「勝ったのか」 ハヤトにきかれ、のび太は頷く。 「すごかったんだよ、ハヤテ!」 「ハヤトだ」 のび太のふるいつものやり取りにハヤトが答える。  のび太はポケモンを預け、ハヤトにジム戦を話した。 マチスのポケモンやそれをどう倒したか……ハスブレロへの進化など。 最後にのび太はマチスの言葉を思い出した。 「そうそう、マチスに何か君に伝えてくれって言われた」 「ほう。あいつが……何て言ってた?」 「えーとね……」 のび太は頭をひねったが、何しろ不良たちの視線がきになっていたため、思い出すのに苦労した。 ようやく思い出した言葉はこれだ。 「……そうだ。  ひこうおたくは重症だな、けなして悪かったって!!」    因みにのび太はたまに確信犯になる。 ハヤトが神速でセンターを出て行ったときににやりと笑ったのは、もしかしたら…… [[次へ>挑戦者 その5]] ----
[[前へ>挑戦者 その3]]  のび太はポケモンセンターでため息をついていた。 前の町からここまでの道のりは、体力のないのび太にとって地獄だった。 途中でハヤトが業を煮やし、エアームドにくわえさせて飛んだことも。 「のび太、休憩はすんだか?」 ハヤトが気楽に話しかけてきた。  のび太が頷くと、ハヤトは「よし」 と微笑んだ。 「じゃあもうジム戦できるな」 「ちょ、ちょっと待ってよ」 のび太は冗談じゃないという風に首を振る。 「明日でいいじゃないか。 それより、町を回ってみようよ!」  のび太に懇願され、ハヤトはしぶしぶ頷いた。  ――この町は一見派手で、そこらじゅうにネオン付きの看板がたてられている。 人々もどこか陽気で、活気にあふれていた。  のび太はすっかりここの空気に飲まれ、気持ちが浮かれてきていたが 「? どうしたの、ハヤテ」 「ハヤトだ」 と素早く返したハヤトだったが、その顔は険しかった。 「俺はこういう騒がしいところは嫌いなんだ」 ハヤトは腕を組みながら、人ごみを避けていった。  のび太はせかせかとその後をついていった。 そんなふうに歩いているうちに、二人はジムの前に来ていた。  ジムは赤と黄色に装飾され、周りの建物より一際派手にある。 「……ジムリーダー、マチス。イナズマアメリカン……」 のび太は入り口の看板を棒読みする。 「ふん。ジムにこんな装飾などしやがって……」 とハヤトは嘲り、その場を去ろうとした。  だが、 ---- ハヤトははっとして振り返る。  そこはジムの脇の路地裏だった。 「……のび太、来てみろ」 ハヤトはのび太の制止を無視し、ずんずん入っていった。  空が夕闇深くなるにつれ、路地裏は急速に暗くなっていった。 「どうしたのさ、ハヤt」 「静かに! 何かきこえるだろ」  のび太はいつものノリが遮断されたことにイラッときたが〔確信犯〕  素直に耳をそばだてた。  ……やがて微かな、鳴き声が聞こえてきた。 「鳥、かなあ」 「ああ、あれはムックルだ」 (流石ひこうジムリーダーだなぁ) とのび太は感心した。  やがて二人はその音源を見つけた。 ムックルが二体のコイルと一体のパチリスの攻撃をくらっている。 三体の電撃が放たれるたびに、ムックルは悲痛な叫びをあげた。 (あの、ムックルかわいそうに。いじめられて、ん?) のび太が呆気にとられている間に、ハヤトが飛び出していた。 「エアームド、奴らを追い払え!」  ハヤトが繰り出したエアームドがコイルに突撃する。 コイルは反撃するが、 エアームドとはレベルの差がありすぎた。 「エアームド、スピードスター!!」  エアームドの閃光がもう一体のコイルを吹き飛ばす。 「エアームド、最後は」 「おうおう、てめえ!!」  突然怒鳴られ、ハヤトは路地の奥を見た。 バイクにまたがったスキンヘッズ三人が立っていた。 ---- 「てめえ、兄貴のポケモンに何しやがるんでぇ!!」 どうやら手下の一人が口を出した。 「兄貴の遊びを邪魔しやがって、このy」 「遊びだと!?」 二人目の手下の言葉を遮って、ハヤトが怒鳴る。 「ひこうポケモンを何だと思っているんだ!!」 「はん、ひこうがどうした?」 一際大柄のスキンヘッズがハヤトを睨む。 「ただの雑魚だろうが」 その言葉で、ハヤトはきれた。 「エアームド!!! あのはげを八つ裂きにしろ!!!!」 エアームドは猛スピードで突進する。 はげ共は、失礼、スキンヘッズたちは間一髪でよけ、その場に倒れる。 「てめえ!! 俺のパチリスちゃんになにかあったら殺すぞ!! ゴラァ!!!」 リーダー格の奴は〔のび太が爆笑してることも知らずに〕怒声を上げた。 「五月蝿い!! これでも食らえ!!」  ハヤトはリュックからピッピ人形を取り出し、投げつけた。 「ピ、ピッピちゃん!! ぶぉっ!! ぉぉ」  スキンヘッズは〔鼻から〕 大量出血し、その場に倒れた。 「あ、兄貴いぃ!!」 手下たちはリーダーに駆け寄る。 手下たちは兄貴に触れようとするが、ハヤトの殺気に満ちた目線に気づいた。 「ち、ちくしょう!! 覚えてやがれ!」  手下たちは自分たちのコイルを戻し、一目散に逃げていった。  その場に一瞬沈黙が流れた。 ----  のび太は隠れていた物陰から出た。 「ハヤト、もうかえろ」  「HEY! おめえら!」 そういいながら、ジムの裏口からイナズマアメリカンが出てきた。 「人のジムの裏でなに暴れてるんだYO!  近所からJANJANうるせえうるせえCALLが来るじゃ」  ハヤトはマチスの口早な言葉を無視して振り返った。 「A-HA-? てめえどこへっと!」 マチスは地面に横たわるスキンヘッズに気づいた。 「……HEY,YOU」 マチスに呼び止められ、ハヤトは立ち止まる。 「暴れてたのはこいつだろ。だったらSORRY。こいつは俺の部下なんだ」 急に頭を下げるマチスに、ハヤトは目を見開く。 「いや、いいんだ。俺はただ」 「こいつは俺と違ってTHINKしたらすぐにMOVEしちゃう馬鹿だから」 その言葉と、マチスがちらりと地面にのたばるムックルを見た瞬間、 ハヤトの微笑みは消えた。  ハヤトはキッとマチスを睨む。 「貴様もひこうを愚弄する気か!!」 「HAHAHA! 俺は何ともいってないぜ」 といいつつマチスは 明らかな蔑みの目をハヤトに向ける。  しばらく二人は睨みあい、、やがてマチスがスキンヘッズを持ち上げた。 「じゃあな。FRY BOY」 マチスはパチリスが入るのと同時に戸をしめた。  ハヤトは舌打ちして振り返った。 ---- 「ねえハヤト!」 「ハヤテだ」 「ハヤテ……あれ? ねえハヤテ! 」  「ハヤトだ」 「ねえハヤト」 なんて会話を繰り返すうちに、二人はポケモンセンターにたどりついた。  だが突然目の前に何かが舞い降りてきて、二人は立ち止まった。 「あれ、さっきのムックルだ」  のび太は興味津々に抱えた。  そのままのび太たちはセンターの中に入る。 「僕らをついてきたのかな。……あれ?」 のび太はムックルを観察しているうちにあることに気づいた。 「このムックル、メールがついているよ」 ハヤトはやっとその言葉で振り向いた。 「誰かのポケモンなのか?」 「うん、多分」  二人はいすに腰掛け、メールを開いた。  それは手書きで、こう書かれている。  SOS ――――  のび太は固まった。「ねえ、これ」 「ああ、これを出した人は」 ハヤトも緊張した面持ちで呟いた。 「ねえ、これは助けてほしいんだよね? だったら」 「落ち着け、のび太。 今はあのジムを勝利することが先だ」  ハヤトはそう言うが、のび太はあいた口がふさがらないままだ。 「いいか、この先何かがおきれば絶対旅に関わってくるはずだ。 その前にここを出なきゃ意味ない」  ハヤトはそう言うと、自室へ帰っていった。 のび太はやっとの思いで手紙を畳む。 「……あれ、ムックル?」  ハヤトは突然後ろからつつかれ、振り返る。 「何だ、どうしてお前ここに!?」 ハヤトは叫んだが、ムックルは去ろうとしなかった。 注釈:ハヤテはピッピ人形をジムを去るときに持ってきたようだ ----  朝、のび太はハヤトの部屋の戸を叩いていた。 「ねえ、本当に行かないの?」 「ああ、誰が行くか。 あんなとこ」 ハヤトは頑として譲らず、仕方なくのび太は一人でジムに向かった。  派手派手しいジムの戸を、のび太はおどおどと開ける。 「こんに――」  のび太の言葉は大きなノイズに掻き消される。  ジムに入った途端、周りのトレーナーたちが祝砲を放ったからだ。 「っわわぁ!!」 のび太は反射的に叫び、耳を塞ぐ。 「HEY,BOY!!」  ジムの奥で、マチスが呼びかけてきた。 「YOUだけかい? あのFLY BOYは来てないのか?」  のび太はひどくおびえた表情で頷く。 「MMM, まあOK. LET'S BATTLEね!」  マチスはそう言うと定位置につく。 のび太もそれに倣った。 (……うわぁ、外野が睨んできてる……) のび太は柄の悪いトレーナーたちの視線をビンビンに感じていた。 「GO! ライチュウ!!」 マチスはポケモンを繰り出した。 (相手はでんきだ。 それなら) 「いけ、ドンメル!!」  ドンメルが繰り出され、戦闘が始まった。 ---- 「ライチュウ! でんこうせっか!!」 マチスの指示で、ライチュウが光の如くドンメルに突撃する。 すばやさの低いドンメルは簡単に捕らえられるが、致命傷ではない。 「ドンメル、マグニチュード!」 ドンメルは地面を揺らす。 その場が大きく振動し、ライチュウは一撃でひんしになった。  マチスは力なく横たわるライチュウを戻す。  それと共に、外野からブーイングが飛んでくる。 「卑怯者―!!」 「でんき相手にじめん出しやがって!!」 「そ、そんな無茶な……」  のび太の反論は尻すぼみに消えた。 「NO PROBLEM, NO PROBLEM!!」 マチスが叫び、外野は静かになる。 「じめん相手ならこいつだ!」 マチスは次のポケモンを繰り出した。  青い体から二本の触覚を出す姿。 地面の上で力なくはねるそのポケモンは、チョンチーだった。 のび太はその危機を察した。 「ドンメル、マグニチュード!」 「チョンチー、地面にみずでっぽう!」 チョンチーは先手で水を放ち、その体は宙に浮く。 その直後地面が揺れたが空中では関係ない。 「やばい!! ドンメル動け!」 「SLOWLY! みずでっぽう!!」 のろいドンメルは容赦なく放水を浴びる。 ドンメルは悲鳴を上げ、力尽きたように倒れた。 ---- 「ドンメル、戻れ」 のび太は急いでドンメルを戻し、のこりの一体を繰り出した。 「いけ、ハスボー」 ハスボーがフィールドに現れる。 「ハスボー、すいとるだ!」 ハスボーはチョンチーに飛び掛った。 「チョンチー、みずでっぽう」  チョンチーは放水し、ハスボーに当たるが相性はよくない。 ハスボーはチョンチーをくわえ、すいとり始めた。 「チョンチー、ふりはらえ! じたばただ!!」 チョンチーは技を放つが、ハスボーはなかなか離れない。 「ハスボー! 絶対離すなよ!!」 「SIT! 何としても離れさせろ!!」 チョンチーはじたばたを繰り返すが、ハスボーは倒れない。 何故ならすいとるで回復し続けているからだ。  やがてチョンチーは息も絶え絶えになった。 「く、……チョンチー、あまごいだ!!」 マチスは指示を変え、チョンチーは最後の力を振り絞っていく。 やがて天井に雨雲がたちこめ、雨が降り出す。 それと共に、チョンチーは力尽きた。  その時、ハスボーの身に変化が起きる。 「ハスボー!?」 のび太は目を見開いてそれを見ていた。 ハスボーは光だし、見る間に姿形が変化していく。  ハスボーは進化したのだ。 ---- 「ハスボーがハスブレロになった!」 のび太は歓喜するが、マチスは舌打ちする。 「SIT! 地味に決めやがって、そのうえ進化まで……BUT, 次でTHE ENDね!!」 マチスは次のポケモンを繰り出す。  出てきたのはあの三位一体のポケモン、レアコイルだ。 「一気ににいかせてもらう!! レアコイル、かみなり!!」 「ハスブレロ! 避難だ!!」 上空の雨雲が光り、稲妻が落ちる。  一瞬であたりに煙がこもった。 「……避けても無駄。 RAININGだとかみなりはHIT率100%。逃げ場は無いぜBOY」 「……どうかな?」 のび太は不思議と強気だった。 煙がはれ、のび太の予想は的中する。 「!! レアコイル!」 マチスは叫んだ。 見るとレアコイルはハスブレロの少し上を、危うそうにふらついていた。 「かみなりが直撃したのさ!! ハスブレロを追ったかみなりにね!! 」 そう、ハスブレロはあの一瞬で、レアコイルの下に隠れたのだ。 「それに僕のハスブレロの特性はすいすいなんだ!!」  マチスは舌打ちし、レアコイルに指示をするがレアコイルは様子が変だ。 「SIT!! 今のかみなりで磁力がおかしくなりがったみたいだ……  だがハスブレロに決定打は無い!! このままなら回復を待って」 「そんな時間はないよ。 ハスブレロ、しぜんのちから!!」 マチスは瞬時に理解した。   ハスブレロは雨がたまってできた池の上にいたのだ。 しぜんのちから、つまりバブルこうせんはレアコイルを連打する。 相性は普通。 だが、何度もくらえば……  磁力がいかれたレアコイルは泡にまみれて墜落する。…… ---- 「俺の負けだ」 マチスはあっさり認めた。 「FLY BOYに伝えといてくれ。お宅のひこうを中傷して、 つまりけなして悪かったと」 マチスはバッジを渡す際、のび太に伝えた。  もっとものび太はトレーナーたちの視線が怖くてよくきいていなかったが。  のび太はバッジを受け取り、センターへ戻ってきた。 「勝ったのか」 ハヤトにきかれ、のび太は頷く。 「すごかったんだよ、ハヤテ!」 「ハヤトだ」 のび太のふるいつものやり取りにハヤトが答える。  のび太はポケモンを預け、ハヤトにジム戦を話した。 マチスのポケモンやそれをどう倒したか……ハスブレロへの進化など。 最後にのび太はマチスの言葉を思い出した。 「そうそう、マチスに何か君に伝えてくれって言われた」 「ほう。あいつが……何て言ってた?」 「えーとね……」 のび太は頭をひねったが、何しろ不良たちの視線がきになっていたため、 思い出すのに苦労した。 ようやく思い出した言葉はこれだ。 「……そうだ。  ひこうおたくは重症だな、けなして悪かったって!!」    因みにのび太はたまに確信犯になる。 ハヤトが神速でセンターを出て行ったときににやりと笑ったのは、 もしかしたら…… [[次へ>挑戦者 その5]] ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
記事メニュー
目安箱バナー