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[[前へ>DP3 その3]] 第3話『パートナー』#9 ――スネ夫's report―― 釣り人が隠し玉を持つ理由。それは、 「自らの釣り上げた大物に対抗するためってのもあるが、 隠し玉のポケモンが、釣り人界のステータスシンボルに なってるってのが一番の理由だな」 との事。 つまり、ギャラドスを繰り出した釣り人のステータスは高めといえる。 理由を聞いて、隠し玉も見てしまった今となっては、釣り人のボロボロの服装も、 数々の大物と戦ってきたという勲章に見えなくもない。 「さあ! どこからでもかかって来い!」 ギャラドスの後方で、シゲさんがドンと胸を叩く。 完全に下に見られている。気に食わないな。 「じゃあお言葉に甘えて! グレッグル! どくばりだ!」 グレッグルは手を前方へ突き出すと、指先から無数の毒針を飛ばす。 使えるかどうか解らなかった【どくばり】。ダメ元で命令してみたのだが、 使えるレベルまで達していたようだ。 毒針がギャラドスの胴に命中する。 しかし、表層の所作から読み取るに、殆どノーダメージと言っていいだろう。 「その程度か? じゃあ次はこっちの番だ!」 不適な笑みを浮かべる釣り人。 「ギャラドス、アクアテール!」 アクアテール――ギャラドスがレベル35で覚える大技だ。 ゲームで育てていたからよく解る。 旋回しながら高速接近するギャラドス。グレッグルの目の前でターンし、 自らの巨大な尾を勢いに任せて振りかざす。 「かわすんだ! グレッグル!」 という僕の叫び虚しく、アクアテールはグレッグルにクリーンヒットする。 「グレッグルー!」 ---- 第3話『パートナー』#10 ――スネ夫's report―― 蹴り飛ばされたラグビーボールのような回転と放物線で飛んでいくグレッグル。 落下地点が砂浜でなければ大惨事だったろう。 この勝負は負けたか・・・・・・。 いや、これは仕方がない。相手が悪かった。 相手が悪かったのだけれど、さすがに悔しい。 歯を食いしばり俯く。 「いい勝負だったよスネ夫君!」 と、いうようなことを言うと思ってた。健闘を称えるような、そんな言葉。 だけど釣り人の発した言葉は違った。 「ほう、君のポケモン、なかなか丈夫じゃないか」 僕は恐る恐るグレッグルの方へ目をやる。 片膝を着きながらガクガクと震えるグレッグル。 さすがに驚いた。こう言うと語弊があるが、何故立っているのか。 ゲームとは違い、根性でなんとかなるとか? 僕はグレッグルに駆け寄り、腰を落として目線を同じ高さにする。 「君はまだ、闘えるのかい?」 大きく頷くグレッグル。 「そうか」と、グレッグルの顔に付いた砂を落としてやる。 「ありがとう。僕はまだ、負けてないんだね」 ---- 第3話『パートナー』#11 ――スネ夫's report―― 現状、僕のグレッグルが使えるワザは、 【おどろかす】【どろかけ】【どくばり】の三つ。 ゲーム内では、ギャラドスに対して地面タイプのどろかけは効果はない。 だけどこの世界ならどうだろう? やっぱり上昇されて避けられてしまうのかな? もし効果があるなら、どろかけで命中率を下げ、そこから勝機を――いやダメだ。 この際、この世界でも効果がないとして動くべきだね。 判断ミスが命取りの今、確認している暇はない。 完全に手詰まりになった。 と、僕が眉を顰めていると、徐にグレッグルが手を差し伸べてきた。 手には、こびり付くといった感じで、砂が張り付いている。 何だ? 「一緒に頑張ろう」みたいな握手かい? よく解らないが握手してみる。 そしてすぐ、手を握ってハッとした。 「――まさか!」 手の汗が完全に吸い取られた。 じゃあ、グレッグルの手に付着している砂は、 どろかけの際に投げつけた、元湿った砂ということか。 「グレッグル。君の特性は、乾燥肌・・・・・・そう解釈していいんだね?」 クスクスと笑うグレッグル。 「グレッグル。君がアクアテールを受けて立ち上がる時、 片膝を着いて震えていたのは演技。そう解釈していいんだね?」 ケタケタと笑うグレッグル。 「グレッグル。つまりこの勝負、僕が上手く立ち回れば勝てる。 そう解釈していいんだね?」 ゲラゲラと笑うグレッグル。 「グレッグル。そこまでだ。笑うのは、勝利の時までとっておくといい」 ---- 第3話『パートナー』#12 ――スネ夫's report―― 乾燥肌。水タイプのワザを受けると、体力が回復する特性。 つまりグレッグルは、ギャラドスのアクアテールを直撃したものの、 ダメージは受けていない、ということだね。 この特性を利用して勝つには、僕が話術でアクアテールを誘発し続ける必要がある。 「ギャラドスのアクアテール・・・・・・一撃でやられると思ったけど、 たいしたことないね!」 「ほう。だが次の攻撃で終わりだぜ! スネオ君!」 「残念だけど、僕はもうアクアテールは見切ったよ!」 アクアテールは見切った。そう言うことでアクアテールを誘う。 バトルで熱くなっている今、シゲさんが「じゃあ別のワザで攻撃しよう」 なんてことを言う確率は無くはないが、限りなく低いからね。 それから、乾燥肌のことがばれないようにする策も、既に考えてある。 とりあえず、この策をグレッグルに耳打ちで・・・・・・。 耳打ち・・・・・・耳・・・・・・。 おいグレッグル。お前の耳はどこだ・・・・・・。 ま・・・・・・まあいいか。側頭部に口を寄せれば聞こえるだろう。 「グレッグル。僕が・・・・・・と言ったら・・・・・・フリをするんだ。いいね?」 コクリと頷くグレッグル。 今できることはやりつくした。 ボールから飛び出した時よりも、より一層怖い顔をするギャラドス。 鼻息が荒く、その音は距離の離れた僕にも聞こえるほどだ。 さてと、第2ラウンドだ。 ---- 第3話『パートナー』#13 ――スネ夫's report―― 「グレッグル! おどろかす!」 「ギャラドス! アクアテール!」 急速に接近してくるギャラドス。その長い尾を大きく振る。 しかしグレッグルは、おどろかすの予備動作――しゃがみ込んで回避する。 そして飛び上がり、ギャラドスの目を突いた。 よしアクアテール! 計算通り! 回避できたのは計算外だけど。 おどろかすが急所に当たったのも計算外だけど。 そして、ギャラドスが怯んだのも計算外だけど。 「相手が怯んだ! グレッグル! どくばり!」 仰け反るギャラドスに、毒針を撃ちまくる。 よし! いい感じだ! 「クソ! ギャラドス! 今度こそアクアテールで終わらせろ!」 仰け反った状態を、自らの尾を振りかぶった状態へと転じるギャラドス。 「これはかわせないだろう! スネオ君!」 ギャラドスは、思い切り尾を振り下ろした。 確かにかわせない。が、当たってもダメージは無い。 だからといって、普通に受けていれば乾燥肌を見抜かれる。 そこで、僕が思いついた策の登場さ。 ---- 第3話『パートナー』#14 ――スネ夫's report―― 「グレッグル! まもる!」 ギャラドスの尾を、両手で受け止めるグレッグル。 「何!? グレッグルにまもるを覚えさせていたのか!」 【まもる】とは、相手の攻撃から身を守り、ダメージを受けないワザ。 まあ、そんなワザは勿論覚えさせていない。 これは、乾燥肌がばれないようにする、ただの策でしかないからね。 「グレッグル! 距離をとってどくばり!」 この距離というのは、勿論アクアテールの間合い。 より自然にアクアテールを使わせるのさ。 綺麗にヒットするわりに、相変わらずダメージを与えているのか、 いないのか解らない毒針。 「俺のギャラドス相手にここまでの戦いをするとは・・・・・・なかなかやるな」 「そんなこと言ってる暇は無いと思うよ! グレッグルおどろかす!」 「ギャラドス! アクアテール!」 「まもるだ! グレッグル!」 白熱するマサゴの浜の戦い。 その戦いは、いつの間にかギャラリーをちらほらと集めていた。 ---- 第3話『パートナー』#15 ――スネ夫's report―― 「しっかりしろよーシゲさん」 「カエルの方も頑張れー」 集まったギャラリーは、シゲさんの釣り人仲間やマサゴタウンの住人。 集まった理由は、グレッグルが、この辺りでは珍しいポケモンだからか? いや、ソレもあるだろうけど、一番の理由は、 グレッグルが町中で踊り、人々の注目を集めたからだろう。 「アクアテール!」 「まもる!」 運の悪いことに、なかなか決着の訪れない戦いを見て、 ギャラリーの一人が余計なことを呟いた。 「グレッグルの特性ってさぁ、水タイプのワザを受けないヤツもあったよな」と。 さらに運の悪いことに、シゲさんはその呟きを聞き逃していない。 「スネオ君。まさかとは思うが・・・・・・いや、初撃で倒れなかったところからも 試してみる価値はあるな」 これは・・・・・・ピンチだ。万事休すだ。 水タイプ以外のワザを受ければ、間違いなく負けるぞ。 どうする僕。どうする・・・・・・。 「ギャラドス! かみつくだ!」 グレッグルを飲み込まんとするような勢いで、大きな口を大きく開き、 突撃してくるギャラドス。 僕の咄嗟に発した言葉は情けないものだった。 「う、うわ~! に、逃げろグレッグル!」 逃げれるわけがない。 ランニングシューズを履いているからなのか、足が軽い。 軽すぎて、僕は、勝手に動き出す足を止められなかった。 ---- 第3話『パートナー』#16 ――スネ夫's report―― なぜだろう。 初めてグレッグルを見たとき、がっかりしたのに。 強くてカッコいいポケモンを捕まえたら、すぐに逃がすつもりだったのに。 その程度にしか考えていなかったポケモンなのに。 なのに僕は、ギャラドスの攻撃からかばうように、グレッグルを抱きしめていた。 腕の中でブルブルと震えるグレッグル。 ずっと怖かったんだろうな。 僕だって怖いんだ。 だからこそ余計に解らない。僕がグレッグルをかばう理由が。 目を思い切り閉じ、歯を思い切り食いしばり、腹をくくる。 ギャラドスに噛み付かれたら、ひとたまりもない。 重症どころじゃない。死ぬんじゃないか? 相当怖い。 ――のだけれど、いつまで経っても何も起きない。 目も歯も疲れてきたし、くくった腹も緩んできた。 そっと片目を開いて、恐る恐る後ろを振り向いてみる。 グレッグルも脇の下から顔を出して覗く。 僕らが目にしたのは宙を優雅に舞うギャラドスではなく、砂浜に顔を埋めるギャラドス。 風を撒き、勢い良く噛み付いてくるギャラドスではなく、ピタリと停止したギャラドス。 ギャラリー達も事態がいまいち掴めない様子で、口をポカンと開けている者が殆どだ。 確かにこの状況は・・・・・・クエスチョンマーク。 シゲさんの頭の上にもクエスチョンマークが見える。 心地の良い波の音だけが、耳の中で響いていた。 ---- 第3話『パートナー』#17 ――スネ夫's report―― 「勝ったの・・・・・・かな?」 よくは解らない。が、ギャラドスが倒れているところを見て、僕はそう呟いた。 とりあえずギャラドスをボールへ戻すシゲさん。 いったい何が起こったのだろうか。 「私が説明しよう」 静まり返ったギャラリーの中から、一人の老人が一歩前へ踏み出してきた。 年齢を感じさせない体格に良く似合うコート。鼻の下には立派な髭を蓄えている。 そんな老人を、僕は何者なのか知っている。 僕だけじゃない。ゲームのポケモンをプレイした人なら、誰もが知っているだろう。 この老人の名前はナナカマド。マサゴタウンに研究所を構えるナナカマド博士だ。 この人なら、この状況を詳しく説明してくれるだろう。 「まず、ギャラドスが何故倒れたのか・・・・・・これは毒状態による体力の消耗が原因だな」 毒? ああ、グレッグルの毒針・・・・・・すっかり追加効果のことなんて忘れていた。 「確かにギャラドスは、その強面から毒状態かどうかを見極めるのは難しい。  しかし、平常時よりも鼻息が荒くなっていたはずだ。この微妙な変化、  トレーナーなら気付くべきだな」 そういえば、離れた位置に居た僕の耳にまで、ギャラドスの鼻息の音は聞こえていた。 申し訳なさそうに頭を掻くシゲさん。 「それから、そっちのトゲトゲ頭の少年」 ・・・・・・ああ、僕のことか。 「自分のポケモンが大事なのは分かる。だがポケモンを庇ったりしてはいけない。  人間とポケモンでは、体の構造が全くと言っていいほど異なる。  怪我では済まなかったかもしれないぞ」 「あ、はい・・・・・・。でも僕も、どうしてグレッグルを庇おうと思ったのか分からないんです」 ナナカマドの顔が緩み、先程までとは打って変って、優しい口調で話始めた。 「遠い昔から、人とポケモンというのは、互いをパートナーとして、  協力し、支え合って生きてきた。  そしてそれは、今も変わらない。  ポケモンを守りたいという気持ちに理由はいらないんだよ。  しかしだ。だからと言って、今回のような無茶はしないようにな」 ---- 第3話『パートナー』#18 ――スネ夫's report―― 202番道路。 コトブキシティへと続く、曲がりくねった道。 シゲさんとナナカマド博士に別れを告げた後、 バトルに買って貰った奨金で、グレッグルを入れるボールを買い、ここに居る。 「先を急ぐぞ、グレッグル。いち早く僕がチャンピオンになるんだ」 相変わらず僕の後ろで道草ばかり食うグレッグル。 僕はグレッグルを、ボールに入れなかった。 理由はあくまで、グレッグルがボールに入るのを拒んだからであって、 決して僕がグレッグルと一緒に歩きたいだとか、そんなんじゃない。断じてだ。 「先を急ぐぞ」と言ったにも関わらず、グレッグルは野に咲く花を眺めたり、叩いたり。 何がしたいんだお前は。 「おいグレッグル!」 僕は少し声を荒げてみた。 こちらを向くグレッグル。僕の怒った顔を見て、笑って見せた。 ただ、その笑顔はもう僕を馬鹿にした笑いではない。 君も僕をパートナーと、認めてくれたのかな? 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[[前へ>DP3 その3]] 第3話『パートナー』#9 ――スネ夫's report―― 釣り人が隠し玉を持つ理由。それは、 「自らの釣り上げた大物に対抗するためってのもあるが、 隠し玉のポケモンが、釣り人界のステータスシンボルに なってるってのが一番の理由だな」 との事。 つまり、ギャラドスを繰り出した釣り人のステータスは高めといえる。 理由を聞いて、隠し玉も見てしまった今となっては、釣り人のボロボロの服装も、 数々の大物と戦ってきたという勲章に見えなくもない。 「さあ! どこからでもかかって来い!」 ギャラドスの後方で、シゲさんがドンと胸を叩く。 完全に下に見られている。気に食わないな。 「じゃあお言葉に甘えて! グレッグル! どくばりだ!」 グレッグルは手を前方へ突き出すと、指先から無数の毒針を飛ばす。 使えるかどうか解らなかった【どくばり】。ダメ元で命令してみたのだが、 使えるレベルまで達していたようだ。 毒針がギャラドスの胴に命中する。 しかし、表層の所作から読み取るに、殆どノーダメージと言っていいだろう。 「その程度か? じゃあ次はこっちの番だ!」 不適な笑みを浮かべる釣り人。 「ギャラドス、アクアテール!」 アクアテール――ギャラドスがレベル35で覚える大技だ。 ゲームで育てていたからよく解る。 旋回しながら高速接近するギャラドス。グレッグルの目の前でターンし、 自らの巨大な尾を勢いに任せて振りかざす。 「かわすんだ! グレッグル!」 という僕の叫び虚しく、アクアテールはグレッグルにクリーンヒットする。 「グレッグルー!」 ---- 第3話『パートナー』#10 ――スネ夫's report―― 蹴り飛ばされたラグビーボールのような回転と放物線で飛んでいくグレッグル。 落下地点が砂浜でなければ大惨事だったろう。 この勝負は負けたか・・・・・・。 いや、これは仕方がない。相手が悪かった。 相手が悪かったのだけれど、さすがに悔しい。 歯を食いしばり俯く。 「いい勝負だったよスネ夫君!」 と、いうようなことを言うと思ってた。健闘を称えるような、そんな言葉。 だけど釣り人の発した言葉は違った。 「ほう、君のポケモン、なかなか丈夫じゃないか」 僕は恐る恐るグレッグルの方へ目をやる。 片膝を着きながらガクガクと震えるグレッグル。 さすがに驚いた。こう言うと語弊があるが、何故立っているのか。 ゲームとは違い、根性でなんとかなるとか? 僕はグレッグルに駆け寄り、腰を落として目線を同じ高さにする。 「君はまだ、闘えるのかい?」 大きく頷くグレッグル。 「そうか」と、グレッグルの顔に付いた砂を落としてやる。 「ありがとう。僕はまだ、負けてないんだね」 ---- 第3話『パートナー』#11 ――スネ夫's report―― 現状、僕のグレッグルが使えるワザは、 【おどろかす】【どろかけ】【どくばり】の三つ。 ゲーム内では、ギャラドスに対して地面タイプのどろかけは効果はない。 だけどこの世界ならどうだろう? やっぱり上昇されて避けられてしまうのかな? もし効果があるなら、どろかけで命中率を下げ、そこから勝機を――いやダメだ。 この際、この世界でも効果がないとして動くべきだね。 判断ミスが命取りの今、確認している暇はない。 完全に手詰まりになった。 と、僕が眉を顰めていると、徐にグレッグルが手を差し伸べてきた。 手には、こびり付くといった感じで、砂が張り付いている。 何だ? 「一緒に頑張ろう」みたいな握手かい? よく解らないが握手してみる。 そしてすぐ、手を握ってハッとした。 「――まさか!」 手の汗が完全に吸い取られた。 じゃあ、グレッグルの手に付着している砂は、 どろかけの際に投げつけた、元湿った砂ということか。 「グレッグル。君の特性は、乾燥肌・・・・・・そう解釈していいんだね?」 クスクスと笑うグレッグル。 「グレッグル。君がアクアテールを受けて立ち上がる時、 片膝を着いて震えていたのは演技。そう解釈していいんだね?」 ケタケタと笑うグレッグル。 「グレッグル。つまりこの勝負、僕が上手く立ち回れば勝てる。 そう解釈していいんだね?」 ゲラゲラと笑うグレッグル。 「グレッグル。そこまでだ。笑うのは、勝利の時までとっておくといい」 ---- 第3話『パートナー』#12 ――スネ夫's report―― 乾燥肌。水タイプのワザを受けると、体力が回復する特性。 つまりグレッグルは、ギャラドスのアクアテールを直撃したものの、 ダメージは受けていない、ということだね。 この特性を利用して勝つには、僕が話術でアクアテールを誘発し続ける必要がある。 「ギャラドスのアクアテール・・・・・・一撃でやられると思ったけど、 たいしたことないね!」 「ほう。だが次の攻撃で終わりだぜ! スネオ君!」 「残念だけど、僕はもうアクアテールは見切ったよ!」 アクアテールは見切った。そう言うことでアクアテールを誘う。 バトルで熱くなっている今、シゲさんが「じゃあ別のワザで攻撃しよう」 なんてことを言う確率は無くはないが、限りなく低いからね。 それから、乾燥肌のことがばれないようにする策も、既に考えてある。 とりあえず、この策をグレッグルに耳打ちで・・・・・・。 耳打ち・・・・・・耳・・・・・・。 おいグレッグル。お前の耳はどこだ・・・・・・。 ま・・・・・・まあいいか。側頭部に口を寄せれば聞こえるだろう。 「グレッグル。僕が・・・・・・と言ったら・・・・・・フリをするんだ。いいね?」 コクリと頷くグレッグル。 今できることはやりつくした。 ボールから飛び出した時よりも、より一層怖い顔をするギャラドス。 鼻息が荒く、その音は距離の離れた僕にも聞こえるほどだ。 さてと、第2ラウンドだ。 ---- 第3話『パートナー』#13 ――スネ夫's report―― 「グレッグル! おどろかす!」 「ギャラドス! アクアテール!」 急速に接近してくるギャラドス。その長い尾を大きく振る。 しかしグレッグルは、おどろかすの予備動作――しゃがみ込んで回避する。 そして飛び上がり、ギャラドスの目を突いた。 よしアクアテール! 計算通り! 回避できたのは計算外だけど。 おどろかすが急所に当たったのも計算外だけど。 そして、ギャラドスが怯んだのも計算外だけど。 「相手が怯んだ! グレッグル! どくばり!」 仰け反るギャラドスに、毒針を撃ちまくる。 よし! いい感じだ! 「クソ! ギャラドス! 今度こそアクアテールで終わらせろ!」 仰け反った状態を、自らの尾を振りかぶった状態へと転じるギャラドス。 「これはかわせないだろう! スネオ君!」 ギャラドスは、思い切り尾を振り下ろした。 確かにかわせない。が、当たってもダメージは無い。 だからといって、普通に受けていれば乾燥肌を見抜かれる。 そこで、僕が思いついた策の登場さ。 ---- 第3話『パートナー』#14 ――スネ夫's report―― 「グレッグル! まもる!」 ギャラドスの尾を、両手で受け止めるグレッグル。 「何!? グレッグルにまもるを覚えさせていたのか!」 【まもる】とは、相手の攻撃から身を守り、ダメージを受けないワザ。 まあ、そんなワザは勿論覚えさせていない。 これは、乾燥肌がばれないようにする、ただの策でしかないからね。 「グレッグル! 距離をとってどくばり!」 この距離というのは、勿論アクアテールの間合い。 より自然にアクアテールを使わせるのさ。 綺麗にヒットするわりに、相変わらずダメージを与えているのか、 いないのか解らない毒針。 「俺のギャラドス相手にここまでの戦いをするとは・・・・・・なかなかやるな」 「そんなこと言ってる暇は無いと思うよ! グレッグルおどろかす!」 「ギャラドス! アクアテール!」 「まもるだ! グレッグル!」 白熱するマサゴの浜の戦い。 その戦いは、いつの間にかギャラリーをちらほらと集めていた。 ---- 第3話『パートナー』#15 ――スネ夫's report―― 「しっかりしろよーシゲさん」 「カエルの方も頑張れー」 集まったギャラリーは、シゲさんの釣り人仲間やマサゴタウンの住人。 集まった理由は、グレッグルが、この辺りでは珍しいポケモンだからか? いや、ソレもあるだろうけど、一番の理由は、 グレッグルが町中で踊り、人々の注目を集めたからだろう。 「アクアテール!」 「まもる!」 運の悪いことに、なかなか決着の訪れない戦いを見て、 ギャラリーの一人が余計なことを呟いた。 「グレッグルの特性ってさぁ、水タイプのワザを受けないヤツもあったよな」と。 さらに運の悪いことに、シゲさんはその呟きを聞き逃していない。 「スネオ君。まさかとは思うが・・・・・・いや、初撃で倒れなかったところからも 試してみる価値はあるな」 これは・・・・・・ピンチだ。万事休すだ。 水タイプ以外のワザを受ければ、間違いなく負けるぞ。 どうする僕。どうする・・・・・・。 「ギャラドス! かみつくだ!」 グレッグルを飲み込まんとするような勢いで、大きな口を大きく開き、 突撃してくるギャラドス。 僕の咄嗟に発した言葉は情けないものだった。 「う、うわ~! に、逃げろグレッグル!」 逃げれるわけがない。 ランニングシューズを履いているからなのか、足が軽い。 軽すぎて、僕は、勝手に動き出す足を止められなかった。 ---- 第3話『パートナー』#16 ――スネ夫's report―― なぜだろう。 初めてグレッグルを見たとき、がっかりしたのに。 強くてカッコいいポケモンを捕まえたら、すぐに逃がすつもりだったのに。 その程度にしか考えていなかったポケモンなのに。 なのに僕は、ギャラドスの攻撃からかばうように、グレッグルを抱きしめていた。 腕の中でブルブルと震えるグレッグル。 ずっと怖かったんだろうな。 僕だって怖いんだ。 だからこそ余計に解らない。僕がグレッグルをかばう理由が。 目を思い切り閉じ、歯を思い切り食いしばり、腹をくくる。 ギャラドスに噛み付かれたら、ひとたまりもない。 重症どころじゃない。死ぬんじゃないか? 相当怖い。 ――のだけれど、いつまで経っても何も起きない。 目も歯も疲れてきたし、くくった腹も緩んできた。 そっと片目を開いて、恐る恐る後ろを振り向いてみる。 グレッグルも脇の下から顔を出して覗く。 僕らが目にしたのは宙を優雅に舞うギャラドスではなく、砂浜に顔を埋めるギャラドス。 風を撒き、勢い良く噛み付いてくるギャラドスではなく、ピタリと停止したギャラドス。 ギャラリー達も事態がいまいち掴めない様子で、口をポカンと開けている者が殆どだ。 確かにこの状況は・・・・・・クエスチョンマーク。 シゲさんの頭の上にもクエスチョンマークが見える。 心地の良い波の音だけが、耳の中で響いていた。 ---- 第3話『パートナー』#17 ――スネ夫's report―― 「勝ったの・・・・・・かな?」 よくは解らない。が、ギャラドスが倒れているところを見て、僕はそう呟いた。 とりあえずギャラドスをボールへ戻すシゲさん。 いったい何が起こったのだろうか。 「私が説明しよう」 静まり返ったギャラリーの中から、一人の老人が一歩前へ踏み出してきた。 年齢を感じさせない体格に良く似合うコート。鼻の下には立派な髭を蓄えている。 そんな老人を、僕は何者なのか知っている。 僕だけじゃない。ゲームのポケモンをプレイした人なら、誰もが知っているだろう。 この老人の名前はナナカマド。マサゴタウンに研究所を構えるナナカマド博士だ。 この人なら、この状況を詳しく説明してくれるだろう。 「まず、ギャラドスが何故倒れたのか・・・・・・これは毒状態による体力の消耗が原因だな」 毒? ああ、グレッグルの毒針・・・・・・すっかり追加効果のことなんて忘れていた。 「確かにギャラドスは、その強面から毒状態かどうかを見極めるのは難しい。  しかし、平常時よりも鼻息が荒くなっていたはずだ。この微妙な変化、  トレーナーなら気付くべきだな」 そういえば、離れた位置に居た僕の耳にまで、ギャラドスの鼻息の音は聞こえていた。 申し訳なさそうに頭を掻くシゲさん。 「それから、そっちのトゲトゲ頭の少年」 ・・・・・・ああ、僕のことか。 「自分のポケモンが大事なのは分かる。だがポケモンを庇ったりしてはいけない。  人間とポケモンでは、体の構造が全くと言っていいほど異なる。  怪我では済まなかったかもしれないぞ」 「あ、はい・・・・・・。でも僕も、どうしてグレッグルを庇おうと思ったのか分からないんです」 ナナカマドの顔が緩み、先程までとは打って変って、優しい口調で話始めた。 「遠い昔から、人とポケモンというのは、互いをパートナーとして、  協力し、支え合って生きてきた。  そしてそれは、今も変わらない。  ポケモンを守りたいという気持ちに理由はいらないんだよ。  しかしだ。だからと言って、今回のような無茶はしないようにな」 ---- 第3話『パートナー』#18 ――スネ夫's report―― 202番道路。 コトブキシティへと続く、曲がりくねった道。 シゲさんとナナカマド博士に別れを告げた後、 バトルに買って貰った奨金で、グレッグルを入れるボールを買い、ここに居る。 「先を急ぐぞ、グレッグル。いち早く僕がチャンピオンになるんだ」 相変わらず僕の後ろで道草ばかり食うグレッグル。 僕はグレッグルを、ボールに入れなかった。 理由はあくまで、グレッグルがボールに入るのを拒んだからであって、 決して僕がグレッグルと一緒に歩きたいだとか、そんなんじゃない。断じてだ。 「先を急ぐぞ」と言ったにも関わらず、グレッグルは野に咲く花を眺めたり、叩いたり。 何がしたいんだお前は。 「おいグレッグル!」 僕は少し声を荒げてみた。 こちらを向くグレッグル。僕の怒った顔を見て、笑って見せた。 ただ、その笑顔はもう僕を馬鹿にした笑いではない。 君も僕をパートナーと、認めてくれたのかな? ---- 第4話『これから』#1 草木の香り香るシンジ湖のほとり。 「いい加減にしろォ~!」 と痺れを切らし、地団駄を踏むジャイアンの叫びがこだまする。ちなみに、地団駄が癖になっていることに本人は気付いていないようだ。 「おいドラえもん! いつになったらタマゴが孵るんだよ!」 ジャイアンがそう言うのも、スネ夫が旅に出てから約3時間ないし4時間の経過。自分も早く旅に出たくて仕方なかったからだ。 「まあまあ。気長に待ってよジャイアン」 ドラえもんがそう宥めると、とりあえずは静まるジャイアン。だが食いしばった歯の隙間からは、シューシューと息が漏れている。 「くっそー! スネ夫にだけは負けたくないのに・・・・・・」 程無くして。 ジャイアンの思いが通じたのだろうか。 タマゴの天辺から地にかけて、落雷のようなヒビが入る。 しかし、そのタマゴはジャイアンのものではなく、源 静香のものだった。 「って俺のじゃないのかよ!」と自らの膝を叩くジャイアンとは対照的に、 「ウフフ。何が生まれてくるのかしら。楽しみだわ」可愛らしく微笑む静香。 タマゴの殻が勢い良く吹き飛ぶ。 中から飛び出したのは桃色の星。の、形をしたポケモン。 ほしがたポケモンのピィだ。 「まぁ可愛い!」と、静香は生まれてきたピィに大満足。 「これからヨロシクね」 静香はそう言うと中腰になり、握手を求める。が―― パチンと静香の手を叩き落とすピィ。 「・・・・・・生まれたばかりだものね。まだ私が怖いのよね」 静香はそう言うものの、ピィは「怖い」といった様子ではない。 静香をあからさまに毛嫌いしている――そんな感じだった。 そして静香はそれに気付いていない――そんな感じだった。 ---- 第4話『これから』#2 ――静香's report―― 初めまして。源 静香です。 スネ夫さんの次は私のレポートね。 私の最初のポケモンはピィという名前のポケモン。そう武さんが教えてくれたわ。 生まれたばかりで、まだ私に懐いてくれてないけど、一緒に旅をしていれば、いずれ懐いてくれるよね? 「じゃあドラちゃん、私もそろそろ行くね」 「頑張ってね。静香ちゃん」 ドラちゃん――ドラえもん、だからドラちゃん――に別れを告げて、早速旅立とうと思ったのだけれど・・・・・・ピィちゃんがなかなか付いてきてくれないわ。 どうしようかしら。 私がポケモントレーナーになって、初めての壁ね。 ――武's report―― おーれはジャイアーン♪ ガーキ大将ー♪ フゥ・・・・・・。イライラが少し治まったぜ。 俺の名前は剛田 武。皆からはジャイアンと呼ばれていて、すっげぇ頼りにされてる。 俺の男らしさ故だろうな。あとルックスとか。歌唱力とかも。まぁ挙げればきりがない。 それにしても、スネ夫も静香ちゃんも羨ましいぜ。 早く俺の卵も孵らないかなぁ。 まだかなぁ? そろそろじゃないか? そろそろだろ? そろそろなんだろ? そうだろ。ああそうだ。 なぁ? オイ。まだかよ。 コラ。 ・・・・・・。 「いい加減に生まれやがれ!!」 ---- 第4話『これから』#3 ――武's report―― 俺の今の状況を端から見ると、タマゴを天に掲げたカッコいいお兄さん程度にしか見えないだろうが、 実は俺は今、これから生まれてくるであろうタマゴの中のポケモンと交信している。 (早く生まれてくるんだ。そして一緒に歌おうじゃないか!) ――しかし生まれない。何故だ? いや、その理由は分かってる。アイツのせいだ。 さっきから何やら頭を抱えている静香ちゃん。 の、足元にいるピンクの丸っこい奴。 ピィだ。ピィがさっきからこっちを、じっと見ている。 きっと俺の交信を邪魔しているに違いない。 こっち見んな! そんな念をたっぷり込めて、俺はピィに睨みを利かせた。 そしたら、効果は抜群。 ピィは俺に恐れをなして、どこかへ走り去ってしまった。 さすが俺。 あっ! しまった! ピィは、静香ちゃんを放って何処かへ行ってしまったことに気付いた。ごめんよ静香ちゃん・・・・・・。 呆然と立ち尽くす静香ちゃん。 おさげとスカートをバタバタと靡かせ、去り行くピィを見つめる姿は、どこかカッコ良かった。 [[次へ>DP3 その5]] ----

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