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ビギナー その1」(2006/12/26 (火) 23:51:45) の最新版変更点

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?「これで…私の長年の野望が…叶うのか…。長かった…本当に長かった。」 一人の男が呟く。その声は、暗くとても広い部屋の中で響いた。その男のすぐ側の椅子には若い青年が縛られている。 ?「あんた…本気で!止めっ」 ドスッ 激しく口答えしようとした青年は、"何か大きな生き物"の一撃で気を失ってしまう。 ?「殺すなよ。」 ?「…承知している。」 薄気味悪く微笑む黒服の男に猫がすり寄る。 「ニャー…」 暗い部屋に、男の笑い声が響いた。 青年はほんの少しばかり取り戻した浅い意識の中、 「あかん…誰かが止めな…この世界は……頼む………誰か…」 必死の想いで、服の袖口に仕込んだ小さなボタンを押した。 まだ見ぬ光に希望を託して、また深い意識の中に沈んでいく… ---- 暑い暑い、夏の昼下がり。 ある町の小さな一軒家、その二階の小さな一室に、眼鏡をかけたひ弱そうな少年、その正反対のように大柄で力が強そうな少年、トンガリヘアーでツリ目のチビな少年、そして紅一点可愛らしい少女が4人で座っている。 「なぁのび太?ドラえもんはまだなのかよ!!」 大柄な少年に胸ぐらを掴まれ、首をユサユサ振られる少年のび太。 のび太「うわわ!待ってよジャイアン、もう来る頃だからさ。」 「そうよタケシさん。のび太さんが悪いんじゃなくて、ドラちゃんがちょっと遅いだけじゃない。」 のび太をかばう少女、しずかの助けでのび太は解放される。 「大体どうして肝心のドラえもんがまだいないんだよ。」 トンガリヘアーのスネ夫が、汗をハンカチで拭いながらのび太に問う。 のび太「なんでもどこでもドアの調子が悪いらしくて、今修理に出してたのを取りに行くんだってさ。」 はぁ、とひと息つきながらスネ夫の質問に答えるのび太。 ジャイアン「早くオーストラリアの海で泳ぎてぇなぁ…」 スネ夫「そうだねぇ…」 一同持ち寄った水着とビーチセットに目をやり、ため息をつく。 ---- ここはとある森の中。1人の少女と、大きなキノコを被ったような不思議な生き物が歩いている。 ??「なかなか新種って見つからないもんだねぇ?アミーゴ。」 「うきゅー…」 その時、どこからか叫び声が聞こえてきた。 「うわーー!!」 少女は突然の状況にも慌てる事無く、冷静に声の位置を上と特定する。 「…標的は4つ!お願い!アリくん!!」 腰のベルトから1つのカプセル型のボールを取り外し、それを空中に投げる。するとその中から大きな蜘蛛のような生き物が飛び出してきた。 「大きな蜘蛛の巣を作って!!」 すると4本の木に、糸を吐き出し、一瞬で大きな蜘蛛の巣を作り出した。 その上に、のび太達四人が落っこちるが、蜘蛛の巣のおかげでケガはしなかった。 少女はそれを確認すると、また腰から1つのボールを取り外した。 ---- 「みんなごめん!遅くなっちゃった!」 そこに遅れてやってきた青狸こと、自称猫型ロボットのドラえもんが机の中から勢い良く飛び出してきた。 一同から遅いなどと言われながら、太い胴回りにカラフルな浮き輪をはめて、腰の四次元ポケットからドアを取り出すドラえもん。 さっきまでうなだれていた少年達の目は、希望に満ちて輝いている。 ドラえもん「じゃあ行くよ。」 一同「オーストラリアの海へ!!」 一斉に勢い良くどこでもドアになだれ込む。その拍子に、ドアがきしんで、変な空間が出来る。その不思議な空間の入り口に、ドラえもん以外はみんな吸い込まれてしまった。親友ののび太も。 ドラえもん「なんだこりゃ!?」 最後に残ったドラえもんは、みんなを放っておく訳には行かず、勇気を出して飛び込んだ。 誰も体験したことの無い、冒険の世界へと。 ---- 少女「バーちゃん、4人を降ろしてあげて。」 またボールから赤い光が出て、それが大きな鳥になった。 その鳥は羽ばたいて、4人の元へ向かった。 のび太「…あ~、なんだこれ?ってうわ~!!デッカい鳥だぁ!!」 蜘蛛の巣にビビって、見たことのない鳥にビビる少年のび太。ビビりっぱなしである。 他の3人も同じように驚いている。そこへ、下から声が聞こえた。自分達と同い年ぐらいに見える帽子を被った少女が大きく手を振っている。 少女「お~い!大丈夫?その子が降ろしてあげるからね!大人しくしててぇ!」 危険はないと分かりみんな少し安心して、五分後には地面に降りていた。 のび太「どうもありがとう、おかげで助かったよ。」 その隣にはさっきの鳥がいる。 そこで、平静を取り戻したスネ夫が、突然、 「あっー!ポケモンだぁぁ!!」 そう叫ぶ。そしてみんなも改めて気づいた。目の前にいるのは、紛れもなく人気ゲームのキャラクター、ポケモンだったのだ。 のび太「なんで?!どうしてポケモンがいるの!?」 何に一同が驚いているのかわからず、少女は首を傾げた。 ---- そこにスネ夫が質問する。 スネ夫「これはポケモンのピジョットに、アリアドスに、キノガッサだよね?どうして君はポケモンを持ってるの?」 少女「どうしてって…私はトレーナーだし、ポケモンを連れているのは当たり前でしょ?」 スネ夫「だって!ポケモンは…」 スネ夫が意見しようとした時に、また上から叫び声が聞こえた。 ドラえもん「うわぁぁぁぁ!誰か助けてぇぇぇぇ!!」 機械のはずなのに顔を鼻水と涙でべちょべちょにしながら降ってきたドラえもん。 さっきのび太達を助けた少女は、"ある事"に気を取られ、ドラえもんを助ける事はなかった。 バサバサバサッ ドラえもんが落下してきた。木の枝がクッションになったらしく、大したダメージにはならなかったらしい。 すると真っ先にのび太が声をかけようとする。 ドラえもん「いてて…」 のび太「ドラえも「新種だ!!」」 のび太の声は、目を輝かせた少女によって遮られる。 のび太「君、違うよ!ドラえもんは…」 少女「外見からして…狸ポケモン!!」 ---- 少女にのび太の声は届いていない。そしてその一言にドラえもんはキレた。 ドラえもん「狸じゃない!ネコだ!ネ・コ・が・た!!」 少女「しかも喋った!!見かけによらず知能は高いのね…」 少女の声はドラえもんにはもはや挑発にしか聞こえない。 ドラえもん「もう怒ったぞ!!」 ドラえもんも戦闘態勢である。のび太達の姿はもはや目に映っていない。 少女「行くよ!アミーゴ!!」 少女はキノガッサを繰り出す。 ドラえもん「ポケモン!?」 ドラえもんはポケモンの登場に面食らって怯んでしまう。 少女「隙アリ!アミーゴ!キノコの胞子!!」 キノガッサのかさから出てきた綿のような胞子がドラえもんにかかり、ドラえもんは眠ってしまった。 少女「みねうち!」 キノガッサの拳がドラえもんのわき腹を捕らえる。するとドラえもんは叩き飛ばされ、すぐそこの木にぶつかった。 少女「そろそろかな…モンスターボール!」 恐ろしく手際良く攻めた少女がボールを投げようとしたとき、誰かに後ろから手を掴まれた。のび太だ。 のび太「あれは…ドラえもんはポケモンじゃなくて、僕達の友達なんだ!」 ---- …それから、起きたドラえもんとのび太達は少女に事情を説明した。 少女「じゃあ…あなた達は違う世界から来たって事?」 ドラえもん「どうやらそうみたいだね。しかもポケモンの世界へ…」 さっきの戦闘から少し経って、のび太達6人はすぐそこにあった原っぱで円になって話している。 のび太「…そしたら僕達はどうやって帰ればいいの?」 ドラえもん「わからない…どこでもドアもどこにあるのか…」 ジャイアン「それじゃあ俺達帰れねーじゃねぇか!!」 スネ夫「うわ~ん!助けてママン!」 しずか「困ったわねぇ…」 のび太達の事態は深刻である。 すると、話を聞いていた少女がある提案をした。 少女「ねぇ?今すぐ解決策が見つからないなら、私の町に来ない?知り合いに頼めばしばらくは宿も確保出来るだろうし。」 この提案はのび太達にとってありがたい事だった。宿の確保はドラえもんの道具で出来るが、それだけでは何の解決にもならず、人がいる町に行って何かしら情報を得る事が必要だったからである。 ドラえもん「本当!?助かるよ!」 のび太「ところで君が住んでいる町って、ここからどれくらい離れてるの?」 のび太が尋ねる。 ---- 少女「そうだなぁ…空を移動すれば夕暮れまでには着くと思うんだけど…君達はポケモン持ってないんだよね…」 少女は困ったような表情を見せる。 のび太「移動なら大丈夫だよ!ね、ドラえもん?」 ドラえもん「うん!」 この二人のやり取りを、少女は不思議そうに見ている。すると、ドラえもんがポケットからタケコプターを取り出した。 少女はポケットの中からの不思議な道具の登場に驚いている。 少女「それは何?」 すると、少女の隣りに座っていたしずかが、頭につけて見せた。 しずか「こうするの!」 そうして、タケコプターのボタンを押す。するとしずかが空に浮かんだ。 少女「うわっ!飛んだ!」 周りの四人も同じように空を飛ぶ。 のび太「ね!大丈夫でしょ?」 ジャイアン「はやく町に行こうぜ!」 のび太やジャイアンに急かされ、少女も準備を始める。 少女「そうね!行こうか。バーちゃん!」 少女はモンスターボールからピジョットを繰り出し、背中に飛び乗る。 のび太「そういえば…名前聞いてなかったよね?僕のび太!」 少女「私はリーフ!マサラタウンのリーフよ!」 ---- その言葉に驚いたのび太が訪ねる。 のび太「それじゃ僕達が向かってる町って…マサラタウンなの?」 リーフ「そうよ。なんで知ってるの?」 のび太「話せば長くなるんだけどさ…」 それからのび太達はいろいろな事を話した。自分達の自己紹介、ポケモンが自分達の世界では"ゲーム"として存在する事、さっきの原っぱでは話さなかった事も沢山話した。 そして、話をしている内に日が落ちてきた。 スネオ「ねぇリーフ、マサラタウンはまだ?」 リーフ「もうすぐそこだよ。ほら!見えてきた。」 リーフが指差す方向に、緑豊かな町が見える。イメージ通り静かな町が。 ジャイアン「うぉぉー!俺が一番乗りだぜ!!」 ジャイアンがスピードをあげて飛んでいく。 スネオ「うわっ!待ってよジャイアーン!」 のび太「ずるい!僕も!」 三人が我先にと競って飛んで行くのを、後ろの三人は笑って見ていた。その三人も、ジャイアン達が町に着いてすぐに着いた。 リーフ「ありがとうバーちゃん!」 リーフがピジョットをボールに戻す。時間はまだ夕暮れだが、外に人の姿は見えない。この町ではなかなか夜は人が出歩かないのだ。 リーフ「それじゃ研究所に行こう!」 ---- のび太「僕たち研究所に泊まるの?」 リーフ「泊まる場所はちょっと違うな、私の用事で、今度の調査結果を報告に行くの。それに研究所なら何か君達の事もわかるかも。あまり期待は出来ないけどねっ。」 リーフは少し苦笑いしながら丘の上の研究所へ続く一本道を歩き始めた。その後ろをのび太一向がついて行く。 小さな街なので、研究所には早く着いた。リーフは慣れた様子で研究所に入って行く。のび太達も"お邪魔しまーす。"と研究所に入る。当然の事ながら中は広く、不思議な機械も沢山並んでいた。 リーフ「オーキド博士!今回のレポート持って来ましたよー!!」 リーフが大声で博士を呼ぶと奥の扉が開き、ゲームとあまり見た目の変わらないオヤジ、オーキド博士が出て来た。 オーキド「おぉリーフ!ご苦労じゃったの。…おや?その少年達と…あれは…新種のポケモンかっ?!」 博士がドラえもんに飛び付く。 オーキド「スゴいじゃないかリーフ!新種を見つけて、捕まえてくるとは。この見た目…青狸ポケモンかの?」 その後、さっきのリーフと全く同じ反応をするオーキドに一同は大笑いし、のび太がオーキドにもリーフと同じ説明をした。 ---- オーキド「うーむ…で、何故かこの世界に迷いこんだと?」 ドラえもん「はい。こっちの事はゲームの中でしか知らないんです。」 オーキド「うーむ…残念だがワシにも全くわからんのぉ。」 オーキドもさすがにお手上げのようである。 リーフ「うーん…そうだ!博士、マサキさんなら何かわからないかな!?」 確かに転送システムを管理するマサキなら、何か手掛かりを持ってるかもしれない。マサキのいるハナダへ行くには時間も遅いので、明日リーフが行く事になった。 ドラえもん「博士、ありがとうございました。じゃあ僕たちは…」 ドラえもんがそう御礼を言って研究所から出ようとしたとき、 オーキド「あ~、ちょっと待ちたまえ!異世界からの客人達にいいモノをやろう!」 のび太「いいモノ?」 ジャイアン「食い物でもくれるの?」 オーキド「はっは、食べ物じゃあ芸も無かろう。着いて来たまえ。」 オーキドはそう言って奥の部屋に入って行った。みんなが着いて入って行くと、中には沢山の大きなタマゴがあった。 しずか「これってもしかして…」 スネオ「ポケモンのタマゴ?!」 オーキドが自慢げにうなずく。 ---- オーキド「この沢山のタマゴはな、リーフや他のマサラ出身のトレーナーが新米トレーナーへのプレゼントとして寄付してくれたんじゃよ。」 のび太「へぇ~…」 みんな部屋に並べられたタマゴを見る。 オーキド「君らもおそらくすぐに帰れるというワケにはいかんじゃろう。せっかくなんじゃから好きなタマゴを選びたまえ。中身はお楽しみじゃ!これがワシからのプレゼントじゃよ!」 ジャイアン「やったぜ!ありがとう博士!」 みんなそれぞれ好きなタマゴを選ぶ。 のび太「うわっ!このタマゴスゴく重いや!」 のび太が手に持っているのは緑と茶色が混じったようなタマゴ。そこにジャイアンがやってくる。 ジャイアン「なっさけねぇなぁ、のび太!このタマゴは俺が貰うぜ!」 のび太「あっ!ずるいよジャイアン!」 のび太は持っていたタマゴをジャイアンに無理矢理奪い取られ、仕方なく他のタマゴを探して部屋の奥に進む。するとあるひとつのタマゴが目に止まった。そのタマゴは真っ白で、少し動いたようだ。タマゴを持ち上げると、ほんのり暖かかった。 のび太「僕、このタマゴにしよう!」 のび太がタマゴを持ってみんなの元へ行くと、みんなすでにタマゴを持っていた。 ---- みんなのタマゴを見てみると、ドラえもんは黄色いタマゴ、しずかはピンクのタマゴ、スネオは茶色のタマゴ、ジャイアンは例のタマゴを持っていた。 オーキド「みんな選んだかの?それじゃあリーフ、みんなを連れて行ってあげなさい。」 リーフ「はーい、博士。」 リーフがのび太達がいた部屋とは違う部屋から出て来ると、手には緑色のタマゴを抱えていた。 リーフ「博士、この預けてたタマゴ持って行きますね。」 オーキド「おぉそれか、わかった。」 リーフ「じゃあみんな、私について来て。」 リーフに言われるままについていくと、研究所の裏にコテージがあった。 リーフ「ここはトレーナーが少しの間滞在したりするための場所なの。最近はあまり使ってないから、泊まるのは私達だけ。自由に使っていいのよ。」 しばらく使っていない割には、中は綺麗に掃除されている。 みんなでタマゴを見せ合ったりして話していると、コテージのドアが開いて、研究所の助手らしき女の人が入って来た。 リーフ「タマキさん!またご飯作ってくれるんですか?」 助手の名前はタマキさんと言うらしい。 タマキ「そうよ、みんな疲れてるだろうから、たくさん食べてね!」 ジャイアン「やった!俺腹減ってんだぁ!」 タマキさんは綺麗な人だ。リーフも泊まったときにはお世話になるらしい。 ---- みんなでタマキさんが作ってくれた夕飯を食べて、お風呂に入った。 そしてコテージの談話室で、リーフからポケモンについていろいろ聞いたり、タマキさんが研究所の事を話したりしてくれた(コテージの掃除もタマキさんがやってくれているらしい)。しばらくしてタマキさんも帰った。 のび太「僕疲れちゃった。眠いや…」 ドラえもん「もうこんな時間か。みんなそろそろ眠ろうか。」 時間は12時を少し過ぎている。 ジャイアン「俺も眠い…」 スネオ「僕も…ってあれ、しずかちゃん何してるの?」 スネオの言葉でしずかの方をみると、しずかが敷いた布団の中に何かを入れている。 しずか「タマゴも抱いて寝ようと思って。暖めると早く生まれそうじゃない?」 のび太「そうか!頭良いねしずかちゃん。」 そしてみんな真似して、タマゴを抱いて寝たのだった。 次の朝… のび太「ふわぁ…おはようドラえも…ってアレ?みんな居ないぞ?」 のび太が起きると、部屋にはのび太しかいなかった。外に出てみると、みんな研究所の庭を掃除している。それをボーッと見ていたのび太にドラえもんが話しかける。 ドラえもん「のび太君、遅いじゃないか!もうみんなとっくに起きて研究所の仕事を手伝っているんだよ。」 ---- ふと視界にジャイアンが入ってきた。タマキさんが荷物を運ぶのを手伝っているらしい。心なしかジャイアンの顔がニヤついてみえる。 のび太「ごめん。僕も何か手伝う事ないかな?」 ドラえもん「どうだろう…リーフちゃんに聞いてみたら?こっちは人手も足りてるし。」 のび太はドラえもんが"リーフちゃんは研究所の中にいるよ"と言ったので、研究所に入ってリーフの姿を探す。 のび太「あ、いた。リーフちゃん!」 リーフ「おはようのび太君。どうしたの?」 のび太「おはよう。みんな仕事してるからさ、僕も手伝う事ないかなぁって。」 リーフ「じゃあちょうどよかった!私と一緒にハナダのマサキさんの家に行こうか!」 のび太「わかった!ドラえもんも一緒に行けるよね?」 リーフ「大丈夫だよ。じゃあ準備して出発しようか!」 のび太「うん!」 こうしてリーフとのび太とドラえもんは、ハナダのマサキの家へ行く事になった。リーフがバッグにタマゴを入れているのを見て、のび太もドラえもんもタマゴを持って行く事にした。 移動は空を飛ぶピジョットとタケコプター。しかし、リーフがタケコプターを使ってみたいというのでのび太がピジョットに乗る事になった。 のび太がピジョットに乗って怖がったのは秘密だ。 ---- 空を移動し始めて二時間ほど、ハナダシティが見えて来た。 のび太「ここがハナダシティかぁ…」 ハナダに到着して、三人で歩いていると急にドラえもんが転がって笑い出した。 ドラえもん「うひゃひゃひゃ!止めて!くすぐったい!」 すると、のび太がドラえもんのポケットが光っているのに気がついた。 のび太「ドラえもん!ポケット見て!」 ドラえもん「うひゃ…え?ポケットって…やった!タマゴが孵ったんだ!」 ドラえもんのポケットから飛び出したポケモン、それはヒトデマンだった。 リーフ「よかったね、ドラちゃん!ちょっとそのヒトデマンかして。」 リーフはそういってドラえもんからヒトデマンを受け取るとポケモン図鑑を取り出し、何か調べている様子だった。 リーフ「この子が今使える技は、体当たりと、かたくなるね。でも、まだ戦えないから注意してね?ポケモンセンターでトレーナー登録をして、カードを貰わないとね。」 どうやらポケモン図鑑ではそのポケモンのレベルや使える技などがわかるらしい。 のび太よりはやく自分のポケモンを手に入れたドラえもんを、のび太は羨ましく思った。 ---- のび太「いいなぁ…ドラえもん。僕のタマゴも早く孵らないかなぁ。」 のび太も自分のタマゴに目をやる。 リーフ「のび太君、生まれる早さはタマゴによって違うんだよ。焦らない焦らない!」 のび太「うん…」 のび太はリーフの言葉で少し安心したのだった。 それからポケモンセンターでドラえもんのトレーナー登録を済ませ(センターでもドラえもんがポケモンと間違えられたのは内緒だ)、再びマサキの家を目指して歩く。 橋を渡り少し歩くとすぐそこのハナダの岬に、ポツンと一軒、家が建っている。マサキの家だ。玄関まで行きリーフがマサキを呼ぶ。 リーフ「マサキさーん、居ませんかぁ?私です、リーフです!」 しかし、リーフがいくら呼び掛けても返事がない。三人が立ち尽くしていると、不意に後ろから声をかけられた。 ?「リーフちゃん!」 後ろを見ると、そこに立っていたのは一人の青年だった。 リーフ「ニシキさん!」 ニシキと呼ばれたその青年は、ここ一か月まるでマサキと連絡がとれなくなり、カントーに来たついでに訪ねてきたという。 ニシキ「そっか。ここにも居ないのか。ジョウトの実家にもいないみたいだし、どこ行っちゃったんだろう…」 そう言ってニシキは別の用事があるからと言って去って行った。 ---- ニシキが去って、のび太達も仕方なく帰ろうとしたとき、リーフがある事に気がつく。 リーフ「…窓ガラスが割れてる!」 リーフが身軽に塀を乗り越え中を覗くと、部屋中が荒らされている。ただ事じゃないと思い、リーフが中に入る。その後をドラえもん、のび太と続く。 リーフ「おかしい…マサキさんは部屋は綺麗にしてるのに…。一体何があったんだろう…」 リーフが部屋を見ていた時、のび太が机の上にあるモノに気がついた。 のび太「これは…鈴?」 リーフがいうには、これは"やすらぎの鈴"らしい。他にもいくつあり、一つくらい良いだろうとのび太は勝手に貰った。 ポケットに鈴を入れると、鈴のあった机の下に小さな青いディスクがあるのに気がついた。 のび太「ねぇリーフちゃん、このディスクは何?」 リーフ「かして。…うーん、何かは分からないけど、手掛かりになるかも。パソコンで再生してみようか。」 リーフがそう言ってディスクを再生してみようと試みるが、パソコンのコードが切れていて動かない。何かの拍子に切れてしまったようだ。 ---- その後は手掛かりになるようなものは何も手に入らなかったので、後は警察に任せて三人はマサキの家を後にする。 市街地に行く道で、ドラえもんはヒトデマンをボールから出して眺めたりしていた。のび太は少し寂しかった。それを表情で感じ取ったリーフが、あるものをのび太に差し出した。 リーフ「これあげる!」 のび太「これは?」 のび太に差し出されたのは空っぽのゴージャスボール。 リーフ「タマゴが孵ったらそのボールに入れてあげたら?よくなつくよ。」 のび太「ありがとうリーフちゃん!」 ドラえもん「よかったねのび太くん!」 のび太「うん!」 のび太は笑顔でポケットにゴージャスボールをしまった。 その後ポケモンセンターに到着した三人はディスクの再生を試みるが、センターのパソコンではエラーにしかならず、研究所に持って行く事にした。 マサラに戻る移動中、リーフは焦っていた。のび太にボールをあげたときも、内心マサキが心配で気が気ではなかった。 リーフ"何か…嫌な予感がする…" リーフはピジョットで猛スピードで飛んで行く。そのスピードは、タケコプターでは見失わないのが精一杯だった。 ---- 一方その少し前、マサラタウン しずかとジャイアンとスネオは、一つのタマゴをジッと見つめている。 すると、タマゴが揺れてヒビが入り少しずつ割れてきた。 ジャイアン「孵るぞ!」 スネオ「何が産まれるのかな?!」 しずかは何も言わずにタマゴを見つめる。すると殻が大きく割れて、中からピンクいポケモンが現れた。 スネオ「ラッキーだ!」 ジャイアン「しずかちゃんよかったなぁ!一番乗りじゃんか!」(実はドラえもんのほうが早い) しずか「うん!可愛いコで嬉しいわ。よろしくねラッキー!」 しずかは孵ったばかりのラッキーを抱えて嬉しそうにしている。ジャイアン達はそれを羨ましそうに見ていた。するとその時、スネオの持っていたタマゴもヒビが入った。 スネオ「やった!僕のタマゴも孵るぞ!!」 だんだんヒビが大きくなり、中から可愛らしい六本の尻尾を持ったポケモンが孵った。 スネオ「ロコンだ!美しい…僕にピッタリだねぇ。」 スネオも嬉しそうにロコンを抱える。 しかしジャイアンは面白くなかった。 ジャイアン「なんで俺のタマゴだけまだ孵らねぇんだよ!」 ジャイアンは一人、部屋に入ってタマゴと睨めっこを続けるのだった。 ---- ジャイアンが部屋にこもって二時間ほど。しずかとスネオが研究所の庭でポケモンと遊んでいると、のび太達が帰ってきた。 真っ先にピジョットで帰って来たリーフは、急いだ様子で研究所に入って行く。 しずか達がどうしたのかと思っていると、遅れてのび太とドラえもんが帰って来た。 スネオ「何かあったのか?」 ドラえもん「いろいろとね…」 そこでのび太がしずか達のポケモンに気がつく。 のび太「あっ!しずかちゃん達のタマゴも孵ったの?いいなぁ~。ラッキーにロコンかぁ。僕のはいつ孵るかなぁ?」 ドラえもん「のび太くん、さっきリーフちゃんに言われただろ!人それぞれだよ。」 のび太「うん…」 そんな会話をしていると、コテージからジャイアンの雄叫びが聞こえて、すぐにジャイアンが出てきた。 ジャイアン「うっ!産まれたぞぉぉぉ!スネオ!来い!!」 スネオは軽々とジャイアンに引きずられ、コテージに連れて行かれた。 スネオ「痛いよジャイアン!何なのさ一体?」 ジャイアン「見ろ!俺のヨーギラスだ。カッコいいだろ? ジャイアンは、とうとう生まれた自分のポケモンを自慢したかっただけだった。 スネオ「さっすがジャイアン!タマゴを見る目があるねぇ!」 さすがスネオ。お世辞は一流である。 ---- ジャイアン「ヨーギラス、よろしくなっ!!」 ジャイアンは、"強くなる"ポケモンが手に入ってとても嬉しかった。 そんな光景を、タマキが研究所の窓から見ていた。 タマキ「よかったですね、博士。子供達も喜んでますよ。」 オーキド「トレーナーの第一歩は自分のポケモンを手に入れた時。その喜びはとても大きいものなんじゃよ。異世界の子供でも、それは変わらないんじゃろうなぁ。」 タマキ「そうですね、博士。」 タマキもクスリと笑う。 助手「博士!例のディスクの再生準備が出来ました!」 その一言に場の空気が張り詰め、和やかなムードは無くなる。リーフも真剣な目でスクリーンを見つめる。 マサキ「イェ~イ!リーフちゃん、オーキド博士!元気にしてまっか!?マサキです!」 再生されたのは、陽気に喋る関西弁の青年マサキ。出だしからするにビデオメッセージらしかった。内容を進めて見るも、中身はマサキが発明したという新しい転送システムの説明と、この映像を写した最新型のカメラの自慢だった。 オーキド「しかし、これではあの状況の説明がつかないのぅ。」 オーキドはリーフから事情を聞いていた。オーキドがそう思い映像を止めようとした時。 異変が起きた。 ---- ビデオのマサキが別れを告げようとすると、マサキの背後に見えていた窓が大きな音をたてて割れ、黒服の三人組が現れた。 マサキ「なっ、なんやお前らは!?」 マサキが慌てる。しかし、マサキの問いに答える事なく黒服の三人は家中を荒らす。 リーフ"何か探してる…のかな。" リーフがそう思った矢先、三人の家の一人が叫ぶ。 黒服の男「ありました!例のディスクですよ!リンさん!!」 リンと呼ばれた黒服が、話し方からして下っ端であろう男を見て言う。 下っ端の手には、赤いディスクが握られていた。 リン「よくやったわ!さぁ、引き上げるわよ。」 リンがそう言ってマサキを無視して出て行こうとすると、マサキが目の前に立ちはだかるのが写っている。どうやらカメラはテーブルの上に置いて写しているらしい。 マサキ「そのディスクが目的とは…お前ら…、ロケット団やな?そのディスク、渡す訳にはいかん。返してもらうで!」 リン「マサキ…貴様に用はないが、邪魔をするなら…」 リンの隣りにいたさっきとは別の下っ端が、マタドガスを繰り出した。 リン「容赦はしないわよ。」 マサキ"今はこいつしかおらん、頼むで…"「イーブイ!」 ---- マサキはイーブイを繰り出し応戦する。 マサキ「電光石火や!」 イーブイが目にも止まらぬスピードでマタドガスに体当たりする。しかし、下っ端は慌てない。 下っ端「10万ボルト!」 マタドガスの体から発生した電撃が、攻撃後のイーブイに直撃する。 マサキ「イーブイ!くそっ…」 イーブイは体も痺れ、もう戦えない。マサキがイーブイをボールに戻すと、下っ端がマタドガスに次の指令を出す。 下っ端「煙幕だ!」 マタドガスの口や体から黒い煙幕が吹き出す。 マサキ「しまった!逃げるな…うわっ!」 ビデオの映像は煙幕で見えないが、ビデオの画面が震える。カメラに何か衝撃が加えられたようだ。 リンの声がする。 リン「次はホウエンの……ガガ…に行くのよ…マサキ…ガガ…連れて…なさい…」 映像は最後雑音が混じり、そこで途切れた。 映像が止まり、研究所の中に静寂が流れる。このビデオの内容からするに、マサキはロケット団に連れて行かれたのだろう。 オーキド「ホウエンか…遠いな。しかも詳しい場所もわからない…」 リーフ「博士!私が…」 オーキド「行ってはいかん!事態はよくわからんが…危険すぎる!」 オーキドも焦りを隠せない。オーキド「それに…わからない事が多過ぎる!」 ---- リーフ「でも!」 タマキ「リーフさん…ここは押さえて下さい。」 焦りが見えるリーフを、タマキが冷静に押さえる。 オーキド「とりあえず…何か分かるまで待つんじゃ。」 リーフ「わかりました…」 その様子を窓から覗いていたのび太とドラえもんは、ただならぬ事態である事を知った。 のび太「大変な事になってるみたいだね…」 ドラえもん「そうだね…でも、僕らには何も出来ないさ…」 ドラえもんも、のび太も悔しそうに唇を噛み締める。 しかし、一番悔しいのはリーフだった。 カントーのトレーナーにとって、マサキは非常に助かる存在なのだ。預かりシステムを管理し、カントーの全てのトレーナーがお世話になっているだろう。 もちろんリーフもその一人だ。数年前、初めてマサキとあった時にはマサキはポケモンと合体していた。それを助けて、それから何度かマサキの家を訪れていた。 自分のお世話になったマサキを、自分の手で助けられない。そんな自分に、リーフは腹をたてていたのだった。 そして昼、またタマキさんがご飯を作ってくれた。しかしリーフの姿は食卓にはなかった。 昼食を食べ終えてしばらくすると、ドアが開きリーフが入って来た。 ---- 入ってきたリーフに声をかけようとしたのび太には、心なしかリーフの目が赤く見えた。 リーフはのび太達に話しかける事なくコテージの二階へ上がり、すぐに降りてきた。 リーフ「ちょっと出かけてくる…」 そう言ってコテージを出て行くリーフ。その後をタマキが追う。 タマキ「リーフさん、待って下さい!」 のび太とドラえもんは事情を知っていた為、いてもたっても居られずその後を追っていく。ジャイアン達は何がなんだかわからないといった様子である。 タマキ「待って下さいリーフさん!」 タマキがリーフの手を掴んだのは、リーフがピジョットの入ったモンスターボールを取り出そうとした時だった。 リーフ「離して!私が行かなきゃ…」 ──パシンッ タマキがリーフの頬を叩く。「あなたが行ってどうするの?!あなたはまだ子供なの!危険過ぎます!!」 リーフ「……」 リーフは黙って下を向く。握った手が震えている。 タマキ「とりあえず、何かわかるまで待って下さい。分かり次第教えますから…」 リーフは無反応だったが、しばらくして小さく頷き、 リーフ「わかりました…」 そう言ったのだった。 そしてその晩夕食を囲むメンバーの中には、リーフの姿があった。 ---- みんなは夕食を食べながら、自分のポケモンと遊んでいる。 スネオ「やっぱり僕のロコンが一番綺麗だね!」 ジャイアン「俺のヨーギラスのほうが強くてカッコいいぜ!」 ドラえもん「しずかちゃんのラッキー、可愛いね!」 しずか「ドラちゃんのヒトデマンだって、不思議さなら一番よ!」 ドラえもん「……うん。」 のび太はみんなの中にいるのが嫌で、外で一人タマゴを抱えていた。 のび太"はぁ…早く生まれないかなぁ…" のび太はそんな事を思っていた。すると、後ろから不意に声をかけられた。リーフだ。 リーフ「何してんの?あ…タマゴ暖めてるのか。頑張るね!」 のび太「うん…」 リーフがのび太の隣りに腰をおろす。その時に、リーフもタマゴを抱えているのに気がついた。 リーフ「よいしょっと…。大丈夫!きっとすぐに生まれてくれるよ!」 そう言ってリーフがのび太のタマゴに耳を当てる。 リーフ「ほら!音が聞こえる!」 のび太「本当!?」 のび太も耳を当てると、中から確かに音が聞こえた。 のび太「本当だ…」 のび太が嬉しそうに耳を離すと、突然タマゴにヒビが入った。 ---- のび太「うわ!…ヒビが入った!!産まれそうだ…」 リーフ「いよいよだね…」 のび太もリーフも、タマゴをジッと見ている。ヒビが少しずつ時間をかけて大きくなり、タマゴが割れた。 のび太「生まれた!イーブイだ!」 のび太のタマゴから孵ったのは、イーブイだった。それも、 リーフ「スゴい…、白いイーブイ…色違いのイーブイなんて、やったじゃないのび太くん!よかったねっ!」 のび太「うんっ!」 のび太は生まれたばかりのイーブイを抱えて嬉しそうにしている。 その後すぐに、リーフのタマゴからもストライクが孵った。 二人のポケモンの誕生を喜びみんなの所に行くと、みんなからとても羨ましがられた。 ドラえもん「やったねのび太くん!」 しずか「可愛いイーブイね!」 ドラえもんとしずかが、のび太の腕の中のイーブイを撫でる。 スネオ"色違いなんて、僕はゲームでも持ってないのに…のび太のくせに!でも、僕にはロコンがいるもんね!!" ジャイアン"あいつのタマゴにすりゃーよかった!" 各々自分のポケモンを手に入れ、ポケモンの世界二日目の夜を過ごした。 それぞれのポケモン のび太 イーブイ ドラえもん ヒトデマン しずか ラッキー ジャイアン ヨーギラス スネオ ロコン リーフ ストライク、他。 ---- 次の日 のび太「ふぁ~…」 のび太は自身にしては珍しく、朝早くに目が覚めた。周りをみるとドラえもん達はまだ眠っている。そして、昨日生まれたのび太のイーブイもスヤスヤと寝息をたてている。 しかし、リーフの姿がない。のび太が外に出ると、自転車に乗ってどこかへ行こうとしているリーフがいた。 のび太「おはよう!リーフちゃん。これからどこか行くの?」 リーフ「あ、おはよう、のび太くん。私はこれからトキワのポケモンセンターに用事があるの。」 のび太「そっかぁ…あのさ、僕も一緒に行っていいかな?」 リーフ「え?いいけどなんで…ってそっか、まだトレーナー登録してないのはのび太くんだけだったね。」 実は昨日、昼ご飯の後にみんなトキワのポケモンセンターで登録を済ませ、残るはのび太だけだったのだ。 自転車は一台しかないし、トキワまではそう遠くない。 リーフ"たまにはのんびり散歩気分で行こうかな。" リーフはそう思い、自転車を置いてのび太と歩いて行く事にした。原っぱを抜ける道を過ぎると、すぐにトキワシティが見えてきた。 ---- のどかな町をのび太とリーフが歩く。 のび太「ここがトキワシティか…あまりマサラタウンと変わらないんだね。」 リーフとポケモンセンターまでの道を歩きながら、のび太が言う。 リーフ「まぁ、このへんは自然が豊かな地域だからね。ポケモンセンターやジムがある分マサラよりは都会かな。それに…」 リーフがそう言って指差す向こうには、大きな関所のような所が見えた。 リーフ「カントーのトレーナーの頂点を決める、セキエイ高原へ続く町でもあるんだよ。」 何かを思い起こすように、リーフは言った。 ポケモンセンターに着き、のび太のトレーナー登録を行なう。 ジョーイ「お待たせしました!こちらが、のび太さんのトレーナーカードになります。」 のび太「あ、ありがとうございます!」 のび太がそう言って受け取った真新しいトレーナーカード。それにはバッチは一つも着いていない。のび太がカードを眺めていると、自分の用事を済ませたリーフが話しかけてきた。 リーフ「カードにバッチを沢山飾れるといいね!」 のび太「うん!」 そんな事を話しながらのび太達がポケモンセンターを後にしようとする。 ---- するとその時、パソコンのある所にいたトレーナーが声をあげた。 トレーナー「私が預けたポケモンが引き取れない!」 その声にリーフは驚く。 リーフ「なんですって!?」 リーフが慌ててパソコンに駆け寄る。何度かパソコンをいじりるが、何度やってもポケモンを引き取る事が出来ない。 リーフ"ダメだ…預かりシステムが完全に停止しちゃってる。" カントーの預かりシステムを一人で管理していたマサキがいなくなった今、カントー全域では"預けていたポケモンの管理が出来ない"という大変な事態になっていた。 リーフ「博士に知らせなきゃ!」 リーフはセンターを飛び出した。 一方、状況を上手く把握出来てないのび太は慌ててリーフの後を追うのだった。 リーフ「博士!」 トキワから全力で走ってきたリーフが、大きな音をたててドアを開ける。 オーキド「どうしたんじゃ?リーフ、そんなに慌てて。」 オーキドは、タマキと朝食をとっている最中だった。 そんなオーキドに、リーフはポケモンセンターであった出来事を話し始めた。 その頃 のび太「はぁ…はぁ…足、早すぎるよリーフちゃん…」 鈍足少年のび太は、研究所へ続く一本道をバテバテになりながらも、必死に走っていたのだった。
?「これで…私の長年の野望が…叶うのか…。長かった…本当に長かった。」 一人の男が呟く。その声は、暗くとても広い部屋の中で響いた。その男のすぐ側の椅子には若い青年が縛られている。 ?「あんた…本気で!止めっ」 ドスッ 激しく口答えしようとした青年は、"何か大きな生き物"の一撃で気を失ってしまう。 ?「殺すなよ。」 ?「…承知している。」 薄気味悪く微笑む黒服の男に猫がすり寄る。 「ニャー…」 暗い部屋に、男の笑い声が響いた。 青年はほんの少しばかり取り戻した浅い意識の中、 「あかん…誰かが止めな…この世界は……頼む………誰か…」 必死の想いで、服の袖口に仕込んだ小さなボタンを押した。 まだ見ぬ光に希望を託して、また深い意識の中に沈んでいく… ---- 暑い暑い、夏の昼下がり。 ある町の小さな一軒家、その二階の小さな一室に、眼鏡をかけたひ弱そうな少年、その正反対のように大柄で力が強そうな少年、トンガリヘアーでツリ目のチビな少年、そして紅一点可愛らしい少女が4人で座っている。 「なぁのび太?ドラえもんはまだなのかよ!!」 大柄な少年に胸ぐらを掴まれ、首をユサユサ振られる少年のび太。 のび太「うわわ!待ってよジャイアン、もう来る頃だからさ。」 「そうよタケシさん。のび太さんが悪いんじゃなくて、ドラちゃんがちょっと遅いだけじゃない。」 のび太をかばう少女、しずかの助けでのび太は解放される。 「大体どうして肝心のドラえもんがまだいないんだよ。」 トンガリヘアーのスネ夫が、汗をハンカチで拭いながらのび太に問う。 のび太「なんでもどこでもドアの調子が悪いらしくて、今修理に出してたのを取りに行くんだってさ。」 はぁ、とひと息つきながらスネ夫の質問に答えるのび太。 ジャイアン「早くオーストラリアの海で泳ぎてぇなぁ…」 スネ夫「そうだねぇ…」 一同持ち寄った水着とビーチセットに目をやり、ため息をつく。 ---- ここはとある森の中。1人の少女と、大きなキノコを被ったような不思議な生き物が歩いている。 ??「なかなか新種って見つからないもんだねぇ?アミーゴ。」 「うきゅー…」 その時、どこからか叫び声が聞こえてきた。 「うわーー!!」 少女は突然の状況にも慌てる事無く、冷静に声の位置を上と特定する。 「…標的は4つ!お願い!アリくん!!」 腰のベルトから1つのカプセル型のボールを取り外し、それを空中に投げる。するとその中から大きな蜘蛛のような生き物が飛び出してきた。 「大きな蜘蛛の巣を作って!!」 すると4本の木に、糸を吐き出し、一瞬で大きな蜘蛛の巣を作り出した。 その上に、のび太達四人が落っこちるが、蜘蛛の巣のおかげでケガはしなかった。 少女はそれを確認すると、また腰から1つのボールを取り外した。 ---- 「みんなごめん!遅くなっちゃった!」 そこに遅れてやってきた青狸こと、自称猫型ロボットのドラえもんが机の中から勢い良く飛び出してきた。 一同から遅いなどと言われながら、太い胴回りにカラフルな浮き輪をはめて、腰の四次元ポケットからドアを取り出すドラえもん。 さっきまでうなだれていた少年達の目は、希望に満ちて輝いている。 ドラえもん「じゃあ行くよ。」 一同「オーストラリアの海へ!!」 一斉に勢い良くどこでもドアになだれ込む。その拍子に、ドアがきしんで、変な空間が出来る。その不思議な空間の入り口に、ドラえもん以外はみんな吸い込まれてしまった。親友ののび太も。 ドラえもん「なんだこりゃ!?」 最後に残ったドラえもんは、みんなを放っておく訳には行かず、勇気を出して飛び込んだ。 誰も体験したことの無い、冒険の世界へと。 ---- 少女「バーちゃん、4人を降ろしてあげて。」 またボールから赤い光が出て、それが大きな鳥になった。 その鳥は羽ばたいて、4人の元へ向かった。 のび太「…あ~、なんだこれ?ってうわ~!!デッカい鳥だぁ!!」 蜘蛛の巣にビビって、見たことのない鳥にビビる少年のび太。ビビりっぱなしである。 他の3人も同じように驚いている。そこへ、下から声が聞こえた。自分達と同い年ぐらいに見える帽子を被った少女が大きく手を振っている。 少女「お~い!大丈夫?その子が降ろしてあげるからね!大人しくしててぇ!」 危険はないと分かりみんな少し安心して、五分後には地面に降りていた。 のび太「どうもありがとう、おかげで助かったよ。」 その隣にはさっきの鳥がいる。 そこで、平静を取り戻したスネ夫が、突然、 「あっー!ポケモンだぁぁ!!」 そう叫ぶ。そしてみんなも改めて気づいた。目の前にいるのは、紛れもなく人気ゲームのキャラクター、ポケモンだったのだ。 のび太「なんで?!どうしてポケモンがいるの!?」 何に一同が驚いているのかわからず、少女は首を傾げた。 ---- そこにスネ夫が質問する。 スネ夫「これはポケモンのピジョットに、アリアドスに、キノガッサだよね?どうして君はポケモンを持ってるの?」 少女「どうしてって…私はトレーナーだし、ポケモンを連れているのは当たり前でしょ?」 スネ夫「だって!ポケモンは…」 スネ夫が意見しようとした時に、また上から叫び声が聞こえた。 ドラえもん「うわぁぁぁぁ!誰か助けてぇぇぇぇ!!」 機械のはずなのに顔を鼻水と涙でべちょべちょにしながら降ってきたドラえもん。 さっきのび太達を助けた少女は、"ある事"に気を取られ、ドラえもんを助ける事はなかった。 バサバサバサッ ドラえもんが落下してきた。木の枝がクッションになったらしく、大したダメージにはならなかったらしい。 すると真っ先にのび太が声をかけようとする。 ドラえもん「いてて…」 のび太「ドラえも「新種だ!!」」 のび太の声は、目を輝かせた少女によって遮られる。 のび太「君、違うよ!ドラえもんは…」 少女「外見からして…狸ポケモン!!」 ---- 少女にのび太の声は届いていない。そしてその一言にドラえもんはキレた。 ドラえもん「狸じゃない!ネコだ!ネ・コ・が・た!!」 少女「しかも喋った!!見かけによらず知能は高いのね…」 少女の声はドラえもんにはもはや挑発にしか聞こえない。 ドラえもん「もう怒ったぞ!!」 ドラえもんも戦闘態勢である。のび太達の姿はもはや目に映っていない。 少女「行くよ!アミーゴ!!」 少女はキノガッサを繰り出す。 ドラえもん「ポケモン!?」 ドラえもんはポケモンの登場に面食らって怯んでしまう。 少女「隙アリ!アミーゴ!キノコの胞子!!」 キノガッサのかさから出てきた綿のような胞子がドラえもんにかかり、ドラえもんは眠ってしまった。 少女「みねうち!」 キノガッサの拳がドラえもんのわき腹を捕らえる。するとドラえもんは叩き飛ばされ、すぐそこの木にぶつかった。 少女「そろそろかな…モンスターボール!」 恐ろしく手際良く攻めた少女がボールを投げようとしたとき、誰かに後ろから手を掴まれた。のび太だ。 のび太「あれは…ドラえもんはポケモンじゃなくて、僕達の友達なんだ!」 ---- …それから、起きたドラえもんとのび太達は少女に事情を説明した。 少女「じゃあ…あなた達は違う世界から来たって事?」 ドラえもん「どうやらそうみたいだね。しかもポケモンの世界へ…」 さっきの戦闘から少し経って、のび太達6人はすぐそこにあった原っぱで円になって話している。 のび太「…そしたら僕達はどうやって帰ればいいの?」 ドラえもん「わからない…どこでもドアもどこにあるのか…」 ジャイアン「それじゃあ俺達帰れねーじゃねぇか!!」 スネ夫「うわ~ん!助けてママン!」 しずか「困ったわねぇ…」 のび太達の事態は深刻である。 すると、話を聞いていた少女がある提案をした。 少女「ねぇ?今すぐ解決策が見つからないなら、私の町に来ない?知り合いに頼めばしばらくは宿も確保出来るだろうし。」 この提案はのび太達にとってありがたい事だった。宿の確保はドラえもんの道具で出来るが、それだけでは何の解決にもならず、人がいる町に行って何かしら情報を得る事が必要だったからである。 ドラえもん「本当!?助かるよ!」 のび太「ところで君が住んでいる町って、ここからどれくらい離れてるの?」 のび太が尋ねる。 ---- 少女「そうだなぁ…空を移動すれば夕暮れまでには着くと思うんだけど…君達はポケモン持ってないんだよね…」 少女は困ったような表情を見せる。 のび太「移動なら大丈夫だよ!ね、ドラえもん?」 ドラえもん「うん!」 この二人のやり取りを、少女は不思議そうに見ている。すると、ドラえもんがポケットからタケコプターを取り出した。 少女はポケットの中からの不思議な道具の登場に驚いている。 少女「それは何?」 すると、少女の隣りに座っていたしずかが、頭につけて見せた。 しずか「こうするの!」 そうして、タケコプターのボタンを押す。するとしずかが空に浮かんだ。 少女「うわっ!飛んだ!」 周りの四人も同じように空を飛ぶ。 のび太「ね!大丈夫でしょ?」 ジャイアン「はやく町に行こうぜ!」 のび太やジャイアンに急かされ、少女も準備を始める。 少女「そうね!行こうか。バーちゃん!」 少女はモンスターボールからピジョットを繰り出し、背中に飛び乗る。 のび太「そういえば…名前聞いてなかったよね?僕のび太!」 少女「私はリーフ!マサラタウンのリーフよ!」 ---- その言葉に驚いたのび太が訪ねる。 のび太「それじゃ僕達が向かってる町って…マサラタウンなの?」 リーフ「そうよ。なんで知ってるの?」 のび太「話せば長くなるんだけどさ…」 それからのび太達はいろいろな事を話した。自分達の自己紹介、ポケモンが自分達の世界では"ゲーム"として存在する事、さっきの原っぱでは話さなかった事も沢山話した。 そして、話をしている内に日が落ちてきた。 スネオ「ねぇリーフ、マサラタウンはまだ?」 リーフ「もうすぐそこだよ。ほら!見えてきた。」 リーフが指差す方向に、緑豊かな町が見える。イメージ通り静かな町が。 ジャイアン「うぉぉー!俺が一番乗りだぜ!!」 ジャイアンがスピードをあげて飛んでいく。 スネオ「うわっ!待ってよジャイアーン!」 のび太「ずるい!僕も!」 三人が我先にと競って飛んで行くのを、後ろの三人は笑って見ていた。その三人も、ジャイアン達が町に着いてすぐに着いた。 リーフ「ありがとうバーちゃん!」 リーフがピジョットをボールに戻す。時間はまだ夕暮れだが、外に人の姿は見えない。この町ではなかなか夜は人が出歩かないのだ。 リーフ「それじゃ研究所に行こう!」 ---- のび太「僕たち研究所に泊まるの?」 リーフ「泊まる場所はちょっと違うな、私の用事で、今度の調査結果を報告に行くの。それに研究所なら何か君達の事もわかるかも。あまり期待は出来ないけどねっ。」 リーフは少し苦笑いしながら丘の上の研究所へ続く一本道を歩き始めた。その後ろをのび太一向がついて行く。 小さな街なので、研究所には早く着いた。リーフは慣れた様子で研究所に入って行く。のび太達も"お邪魔しまーす。"と研究所に入る。当然の事ながら中は広く、不思議な機械も沢山並んでいた。 リーフ「オーキド博士!今回のレポート持って来ましたよー!!」 リーフが大声で博士を呼ぶと奥の扉が開き、ゲームとあまり見た目の変わらないオヤジ、オーキド博士が出て来た。 オーキド「おぉリーフ!ご苦労じゃったの。…おや?その少年達と…あれは…新種のポケモンかっ?!」 博士がドラえもんに飛び付く。 オーキド「スゴいじゃないかリーフ!新種を見つけて、捕まえてくるとは。この見た目…青狸ポケモンかの?」 その後、さっきのリーフと全く同じ反応をするオーキドに一同は大笑いし、のび太がオーキドにもリーフと同じ説明をした。 ---- オーキド「うーむ…で、何故かこの世界に迷いこんだと?」 ドラえもん「はい。こっちの事はゲームの中でしか知らないんです。」 オーキド「うーむ…残念だがワシにも全くわからんのぉ。」 オーキドもさすがにお手上げのようである。 リーフ「うーん…そうだ!博士、マサキさんなら何かわからないかな!?」 確かに転送システムを管理するマサキなら、何か手掛かりを持ってるかもしれない。マサキのいるハナダへ行くには時間も遅いので、明日リーフが行く事になった。 ドラえもん「博士、ありがとうございました。じゃあ僕たちは…」 ドラえもんがそう御礼を言って研究所から出ようとしたとき、 オーキド「あ~、ちょっと待ちたまえ!異世界からの客人達にいいモノをやろう!」 のび太「いいモノ?」 ジャイアン「食い物でもくれるの?」 オーキド「はっは、食べ物じゃあ芸も無かろう。着いて来たまえ。」 オーキドはそう言って奥の部屋に入って行った。みんなが着いて入って行くと、中には沢山の大きなタマゴがあった。 しずか「これってもしかして…」 スネオ「ポケモンのタマゴ?!」 オーキドが自慢げにうなずく。 ---- オーキド「この沢山のタマゴはな、リーフや他のマサラ出身のトレーナーが新米トレーナーへのプレゼントとして寄付してくれたんじゃよ。」 のび太「へぇ~…」 みんな部屋に並べられたタマゴを見る。 オーキド「君らもおそらくすぐに帰れるというワケにはいかんじゃろう。せっかくなんじゃから好きなタマゴを選びたまえ。中身はお楽しみじゃ!これがワシからのプレゼントじゃよ!」 ジャイアン「やったぜ!ありがとう博士!」 みんなそれぞれ好きなタマゴを選ぶ。 のび太「うわっ!このタマゴスゴく重いや!」 のび太が手に持っているのは緑と茶色が混じったようなタマゴ。そこにジャイアンがやってくる。 ジャイアン「なっさけねぇなぁ、のび太!このタマゴは俺が貰うぜ!」 のび太「あっ!ずるいよジャイアン!」 のび太は持っていたタマゴをジャイアンに無理矢理奪い取られ、仕方なく他のタマゴを探して部屋の奥に進む。するとあるひとつのタマゴが目に止まった。そのタマゴは真っ白で、少し動いたようだ。タマゴを持ち上げると、ほんのり暖かかった。 のび太「僕、このタマゴにしよう!」 のび太がタマゴを持ってみんなの元へ行くと、みんなすでにタマゴを持っていた。 ---- みんなのタマゴを見てみると、ドラえもんは黄色いタマゴ、しずかはピンクのタマゴ、スネオは茶色のタマゴ、ジャイアンは例のタマゴを持っていた。 オーキド「みんな選んだかの?それじゃあリーフ、みんなを連れて行ってあげなさい。」 リーフ「はーい、博士。」 リーフがのび太達がいた部屋とは違う部屋から出て来ると、手には緑色のタマゴを抱えていた。 リーフ「博士、この預けてたタマゴ持って行きますね。」 オーキド「おぉそれか、わかった。」 リーフ「じゃあみんな、私について来て。」 リーフに言われるままについていくと、研究所の裏にコテージがあった。 リーフ「ここはトレーナーが少しの間滞在したりするための場所なの。最近はあまり使ってないから、泊まるのは私達だけ。自由に使っていいのよ。」 しばらく使っていない割には、中は綺麗に掃除されている。 みんなでタマゴを見せ合ったりして話していると、コテージのドアが開いて、研究所の助手らしき女の人が入って来た。 リーフ「タマキさん!またご飯作ってくれるんですか?」 助手の名前はタマキさんと言うらしい。 タマキ「そうよ、みんな疲れてるだろうから、たくさん食べてね!」 ジャイアン「やった!俺腹減ってんだぁ!」 タマキさんは綺麗な人だ。リーフも泊まったときにはお世話になるらしい。 ---- みんなでタマキさんが作ってくれた夕飯を食べて、お風呂に入った。 そしてコテージの談話室で、リーフからポケモンについていろいろ聞いたり、タマキさんが研究所の事を話したりしてくれた(コテージの掃除もタマキさんがやってくれているらしい)。しばらくしてタマキさんも帰った。 のび太「僕疲れちゃった。眠いや…」 ドラえもん「もうこんな時間か。みんなそろそろ眠ろうか。」 時間は12時を少し過ぎている。 ジャイアン「俺も眠い…」 スネオ「僕も…ってあれ、しずかちゃん何してるの?」 スネオの言葉でしずかの方をみると、しずかが敷いた布団の中に何かを入れている。 しずか「タマゴも抱いて寝ようと思って。暖めると早く生まれそうじゃない?」 のび太「そうか!頭良いねしずかちゃん。」 そしてみんな真似して、タマゴを抱いて寝たのだった。 次の朝… のび太「ふわぁ…おはようドラえも…ってアレ?みんな居ないぞ?」 のび太が起きると、部屋にはのび太しかいなかった。外に出てみると、みんな研究所の庭を掃除している。それをボーッと見ていたのび太にドラえもんが話しかける。 ドラえもん「のび太君、遅いじゃないか!もうみんなとっくに起きて研究所の仕事を手伝っているんだよ。」 ---- ふと視界にジャイアンが入ってきた。タマキさんが荷物を運ぶのを手伝っているらしい。心なしかジャイアンの顔がニヤついてみえる。 のび太「ごめん。僕も何か手伝う事ないかな?」 ドラえもん「どうだろう…リーフちゃんに聞いてみたら?こっちは人手も足りてるし。」 のび太はドラえもんが"リーフちゃんは研究所の中にいるよ"と言ったので、研究所に入ってリーフの姿を探す。 のび太「あ、いた。リーフちゃん!」 リーフ「おはようのび太君。どうしたの?」 のび太「おはよう。みんな仕事してるからさ、僕も手伝う事ないかなぁって。」 リーフ「じゃあちょうどよかった!私と一緒にハナダのマサキさんの家に行こうか!」 のび太「わかった!ドラえもんも一緒に行けるよね?」 リーフ「大丈夫だよ。じゃあ準備して出発しようか!」 のび太「うん!」 こうしてリーフとのび太とドラえもんは、ハナダのマサキの家へ行く事になった。リーフがバッグにタマゴを入れているのを見て、のび太もドラえもんもタマゴを持って行く事にした。 移動は空を飛ぶピジョットとタケコプター。しかし、リーフがタケコプターを使ってみたいというのでのび太がピジョットに乗る事になった。 のび太がピジョットに乗って怖がったのは秘密だ。 ---- 空を移動し始めて二時間ほど、ハナダシティが見えて来た。 のび太「ここがハナダシティかぁ…」 ハナダに到着して、三人で歩いていると急にドラえもんが転がって笑い出した。 ドラえもん「うひゃひゃひゃ!止めて!くすぐったい!」 すると、のび太がドラえもんのポケットが光っているのに気がついた。 のび太「ドラえもん!ポケット見て!」 ドラえもん「うひゃ…え?ポケットって…やった!タマゴが孵ったんだ!」 ドラえもんのポケットから飛び出したポケモン、それはヒトデマンだった。 リーフ「よかったね、ドラちゃん!ちょっとそのヒトデマンかして。」 リーフはそういってドラえもんからヒトデマンを受け取るとポケモン図鑑を取り出し、何か調べている様子だった。 リーフ「この子が今使える技は、体当たりと、かたくなるね。でも、まだ戦えないから注意してね?ポケモンセンターでトレーナー登録をして、カードを貰わないとね。」 どうやらポケモン図鑑ではそのポケモンのレベルや使える技などがわかるらしい。 のび太よりはやく自分のポケモンを手に入れたドラえもんを、のび太は羨ましく思った。 ---- のび太「いいなぁ…ドラえもん。僕のタマゴも早く孵らないかなぁ。」 のび太も自分のタマゴに目をやる。 リーフ「のび太君、生まれる早さはタマゴによって違うんだよ。焦らない焦らない!」 のび太「うん…」 のび太はリーフの言葉で少し安心したのだった。 それからポケモンセンターでドラえもんのトレーナー登録を済ませ(センターでもドラえもんがポケモンと間違えられたのは内緒だ)、再びマサキの家を目指して歩く。 橋を渡り少し歩くとすぐそこのハナダの岬に、ポツンと一軒、家が建っている。マサキの家だ。玄関まで行きリーフがマサキを呼ぶ。 リーフ「マサキさーん、居ませんかぁ?私です、リーフです!」 しかし、リーフがいくら呼び掛けても返事がない。三人が立ち尽くしていると、不意に後ろから声をかけられた。 ?「リーフちゃん!」 後ろを見ると、そこに立っていたのは一人の青年だった。 リーフ「ニシキさん!」 ニシキと呼ばれたその青年は、ここ一か月まるでマサキと連絡がとれなくなり、カントーに来たついでに訪ねてきたという。 ニシキ「そっか。ここにも居ないのか。ジョウトの実家にもいないみたいだし、どこ行っちゃったんだろう…」 そう言ってニシキは別の用事があるからと言って去って行った。 ---- ニシキが去って、のび太達も仕方なく帰ろうとしたとき、リーフがある事に気がつく。 リーフ「…窓ガラスが割れてる!」 リーフが身軽に塀を乗り越え中を覗くと、部屋中が荒らされている。ただ事じゃないと思い、リーフが中に入る。その後をドラえもん、のび太と続く。 リーフ「おかしい…マサキさんは部屋は綺麗にしてるのに…。一体何があったんだろう…」 リーフが部屋を見ていた時、のび太が机の上にあるモノに気がついた。 のび太「これは…鈴?」 リーフがいうには、これは"やすらぎの鈴"らしい。他にもいくつあり、一つくらい良いだろうとのび太は勝手に貰った。 ポケットに鈴を入れると、鈴のあった机の下に小さな青いディスクがあるのに気がついた。 のび太「ねぇリーフちゃん、このディスクは何?」 リーフ「かして。…うーん、何かは分からないけど、手掛かりになるかも。パソコンで再生してみようか。」 リーフがそう言ってディスクを再生してみようと試みるが、パソコンのコードが切れていて動かない。何かの拍子に切れてしまったようだ。 ---- その後は手掛かりになるようなものは何も手に入らなかったので、後は警察に任せて三人はマサキの家を後にする。 市街地に行く道で、ドラえもんはヒトデマンをボールから出して眺めたりしていた。のび太は少し寂しかった。それを表情で感じ取ったリーフが、あるものをのび太に差し出した。 リーフ「これあげる!」 のび太「これは?」 のび太に差し出されたのは空っぽのゴージャスボール。 リーフ「タマゴが孵ったらそのボールに入れてあげたら?よくなつくよ。」 のび太「ありがとうリーフちゃん!」 ドラえもん「よかったねのび太くん!」 のび太「うん!」 のび太は笑顔でポケットにゴージャスボールをしまった。 その後ポケモンセンターに到着した三人はディスクの再生を試みるが、センターのパソコンではエラーにしかならず、研究所に持って行く事にした。 マサラに戻る移動中、リーフは焦っていた。のび太にボールをあげたときも、内心マサキが心配で気が気ではなかった。 リーフ"何か…嫌な予感がする…" リーフはピジョットで猛スピードで飛んで行く。そのスピードは、タケコプターでは見失わないのが精一杯だった。 ---- 一方その少し前、マサラタウン しずかとジャイアンとスネオは、一つのタマゴをジッと見つめている。 すると、タマゴが揺れてヒビが入り少しずつ割れてきた。 ジャイアン「孵るぞ!」 スネオ「何が産まれるのかな?!」 しずかは何も言わずにタマゴを見つめる。すると殻が大きく割れて、中からピンクいポケモンが現れた。 スネオ「ラッキーだ!」 ジャイアン「しずかちゃんよかったなぁ!一番乗りじゃんか!」(実はドラえもんのほうが早い) しずか「うん!可愛いコで嬉しいわ。よろしくねラッキー!」 しずかは孵ったばかりのラッキーを抱えて嬉しそうにしている。ジャイアン達はそれを羨ましそうに見ていた。するとその時、スネオの持っていたタマゴもヒビが入った。 スネオ「やった!僕のタマゴも孵るぞ!!」 だんだんヒビが大きくなり、中から可愛らしい六本の尻尾を持ったポケモンが孵った。 スネオ「ロコンだ!美しい…僕にピッタリだねぇ。」 スネオも嬉しそうにロコンを抱える。 しかしジャイアンは面白くなかった。 ジャイアン「なんで俺のタマゴだけまだ孵らねぇんだよ!」 ジャイアンは一人、部屋に入ってタマゴと睨めっこを続けるのだった。 ---- ジャイアンが部屋にこもって二時間ほど。しずかとスネオが研究所の庭でポケモンと遊んでいると、のび太達が帰ってきた。 真っ先にピジョットで帰って来たリーフは、急いだ様子で研究所に入って行く。 しずか達がどうしたのかと思っていると、遅れてのび太とドラえもんが帰って来た。 スネオ「何かあったのか?」 ドラえもん「いろいろとね…」 そこでのび太がしずか達のポケモンに気がつく。 のび太「あっ!しずかちゃん達のタマゴも孵ったの?いいなぁ~。ラッキーにロコンかぁ。僕のはいつ孵るかなぁ?」 ドラえもん「のび太くん、さっきリーフちゃんに言われただろ!人それぞれだよ。」 のび太「うん…」 そんな会話をしていると、コテージからジャイアンの雄叫びが聞こえて、すぐにジャイアンが出てきた。 ジャイアン「うっ!産まれたぞぉぉぉ!スネオ!来い!!」 スネオは軽々とジャイアンに引きずられ、コテージに連れて行かれた。 スネオ「痛いよジャイアン!何なのさ一体?」 ジャイアン「見ろ!俺のヨーギラスだ。カッコいいだろ? ジャイアンは、とうとう生まれた自分のポケモンを自慢したかっただけだった。 スネオ「さっすがジャイアン!タマゴを見る目があるねぇ!」 さすがスネオ。お世辞は一流である。 ---- ジャイアン「ヨーギラス、よろしくなっ!!」 ジャイアンは、"強くなる"ポケモンが手に入ってとても嬉しかった。 そんな光景を、タマキが研究所の窓から見ていた。 タマキ「よかったですね、博士。子供達も喜んでますよ。」 オーキド「トレーナーの第一歩は自分のポケモンを手に入れた時。その喜びはとても大きいものなんじゃよ。異世界の子供でも、それは変わらないんじゃろうなぁ。」 タマキ「そうですね、博士。」 タマキもクスリと笑う。 助手「博士!例のディスクの再生準備が出来ました!」 その一言に場の空気が張り詰め、和やかなムードは無くなる。リーフも真剣な目でスクリーンを見つめる。 マサキ「イェ~イ!リーフちゃん、オーキド博士!元気にしてまっか!?マサキです!」 再生されたのは、陽気に喋る関西弁の青年マサキ。出だしからするにビデオメッセージらしかった。内容を進めて見るも、中身はマサキが発明したという新しい転送システムの説明と、この映像を写した最新型のカメラの自慢だった。 オーキド「しかし、これではあの状況の説明がつかないのぅ。」 オーキドはリーフから事情を聞いていた。オーキドがそう思い映像を止めようとした時。 異変が起きた。 ---- ビデオのマサキが別れを告げようとすると、マサキの背後に見えていた窓が大きな音をたてて割れ、黒服の三人組が現れた。 マサキ「なっ、なんやお前らは!?」 マサキが慌てる。しかし、マサキの問いに答える事なく黒服の三人は家中を荒らす。 リーフ"何か探してる…のかな。" リーフがそう思った矢先、三人の家の一人が叫ぶ。 黒服の男「ありました!例のディスクですよ!リンさん!!」 リンと呼ばれた黒服が、話し方からして下っ端であろう男を見て言う。 下っ端の手には、赤いディスクが握られていた。 リン「よくやったわ!さぁ、引き上げるわよ。」 リンがそう言ってマサキを無視して出て行こうとすると、マサキが目の前に立ちはだかるのが写っている。どうやらカメラはテーブルの上に置いて写しているらしい。 マサキ「そのディスクが目的とは…お前ら…、ロケット団やな?そのディスク、渡す訳にはいかん。返してもらうで!」 リン「マサキ…貴様に用はないが、邪魔をするなら…」 リンの隣りにいたさっきとは別の下っ端が、マタドガスを繰り出した。 リン「容赦はしないわよ。」 マサキ"今はこいつしかおらん、頼むで…"「イーブイ!」 ---- マサキはイーブイを繰り出し応戦する。 マサキ「電光石火や!」 イーブイが目にも止まらぬスピードでマタドガスに体当たりする。しかし、下っ端は慌てない。 下っ端「10万ボルト!」 マタドガスの体から発生した電撃が、攻撃後のイーブイに直撃する。 マサキ「イーブイ!くそっ…」 イーブイは体も痺れ、もう戦えない。マサキがイーブイをボールに戻すと、下っ端がマタドガスに次の指令を出す。 下っ端「煙幕だ!」 マタドガスの口や体から黒い煙幕が吹き出す。 マサキ「しまった!逃げるな…うわっ!」 ビデオの映像は煙幕で見えないが、ビデオの画面が震える。カメラに何か衝撃が加えられたようだ。 リンの声がする。 リン「次はホウエンの……ガガ…に行くのよ…マサキ…ガガ…連れて…なさい…」 映像は最後雑音が混じり、そこで途切れた。 映像が止まり、研究所の中に静寂が流れる。このビデオの内容からするに、マサキはロケット団に連れて行かれたのだろう。 オーキド「ホウエンか…遠いな。しかも詳しい場所もわからない…」 リーフ「博士!私が…」 オーキド「行ってはいかん!事態はよくわからんが…危険すぎる!」 オーキドも焦りを隠せない。オーキド「それに…わからない事が多過ぎる!」 ---- リーフ「でも!」 タマキ「リーフさん…ここは押さえて下さい。」 焦りが見えるリーフを、タマキが冷静に押さえる。 オーキド「とりあえず…何か分かるまで待つんじゃ。」 リーフ「わかりました…」 その様子を窓から覗いていたのび太とドラえもんは、ただならぬ事態である事を知った。 のび太「大変な事になってるみたいだね…」 ドラえもん「そうだね…でも、僕らには何も出来ないさ…」 ドラえもんも、のび太も悔しそうに唇を噛み締める。 しかし、一番悔しいのはリーフだった。 カントーのトレーナーにとって、マサキは非常に助かる存在なのだ。預かりシステムを管理し、カントーの全てのトレーナーがお世話になっているだろう。 もちろんリーフもその一人だ。数年前、初めてマサキとあった時にはマサキはポケモンと合体していた。それを助けて、それから何度かマサキの家を訪れていた。 自分のお世話になったマサキを、自分の手で助けられない。そんな自分に、リーフは腹をたてていたのだった。 そして昼、またタマキさんがご飯を作ってくれた。しかしリーフの姿は食卓にはなかった。 昼食を食べ終えてしばらくすると、ドアが開きリーフが入って来た。 ---- 入ってきたリーフに声をかけようとしたのび太には、心なしかリーフの目が赤く見えた。 リーフはのび太達に話しかける事なくコテージの二階へ上がり、すぐに降りてきた。 リーフ「ちょっと出かけてくる…」 そう言ってコテージを出て行くリーフ。その後をタマキが追う。 タマキ「リーフさん、待って下さい!」 のび太とドラえもんは事情を知っていた為、いてもたっても居られずその後を追っていく。ジャイアン達は何がなんだかわからないといった様子である。 タマキ「待って下さいリーフさん!」 タマキがリーフの手を掴んだのは、リーフがピジョットの入ったモンスターボールを取り出そうとした時だった。 リーフ「離して!私が行かなきゃ…」 ──パシンッ タマキがリーフの頬を叩く。「あなたが行ってどうするの?!あなたはまだ子供なの!危険過ぎます!!」 リーフ「……」 リーフは黙って下を向く。握った手が震えている。 タマキ「とりあえず、何かわかるまで待って下さい。分かり次第教えますから…」 リーフは無反応だったが、しばらくして小さく頷き、 リーフ「わかりました…」 そう言ったのだった。 そしてその晩夕食を囲むメンバーの中には、リーフの姿があった。 ---- みんなは夕食を食べながら、自分のポケモンと遊んでいる。 スネオ「やっぱり僕のロコンが一番綺麗だね!」 ジャイアン「俺のヨーギラスのほうが強くてカッコいいぜ!」 ドラえもん「しずかちゃんのラッキー、可愛いね!」 しずか「ドラちゃんのヒトデマンだって、不思議さなら一番よ!」 ドラえもん「……うん。」 のび太はみんなの中にいるのが嫌で、外で一人タマゴを抱えていた。 のび太"はぁ…早く生まれないかなぁ…" のび太はそんな事を思っていた。すると、後ろから不意に声をかけられた。リーフだ。 リーフ「何してんの?あ…タマゴ暖めてるのか。頑張るね!」 のび太「うん…」 リーフがのび太の隣りに腰をおろす。その時に、リーフもタマゴを抱えているのに気がついた。 リーフ「よいしょっと…。大丈夫!きっとすぐに生まれてくれるよ!」 そう言ってリーフがのび太のタマゴに耳を当てる。 リーフ「ほら!音が聞こえる!」 のび太「本当!?」 のび太も耳を当てると、中から確かに音が聞こえた。 のび太「本当だ…」 のび太が嬉しそうに耳を離すと、突然タマゴにヒビが入った。 ---- のび太「うわ!…ヒビが入った!!産まれそうだ…」 リーフ「いよいよだね…」 のび太もリーフも、タマゴをジッと見ている。ヒビが少しずつ時間をかけて大きくなり、タマゴが割れた。 のび太「生まれた!イーブイだ!」 のび太のタマゴから孵ったのは、イーブイだった。それも、 リーフ「スゴい…、白いイーブイ…色違いのイーブイなんて、やったじゃないのび太くん!よかったねっ!」 のび太「うんっ!」 のび太は生まれたばかりのイーブイを抱えて嬉しそうにしている。 その後すぐに、リーフのタマゴからもストライクが孵った。 二人のポケモンの誕生を喜びみんなの所に行くと、みんなからとても羨ましがられた。 ドラえもん「やったねのび太くん!」 しずか「可愛いイーブイね!」 ドラえもんとしずかが、のび太の腕の中のイーブイを撫でる。 スネオ"色違いなんて、僕はゲームでも持ってないのに…のび太のくせに!でも、僕にはロコンがいるもんね!!" ジャイアン"あいつのタマゴにすりゃーよかった!" 各々自分のポケモンを手に入れ、ポケモンの世界二日目の夜を過ごした。 それぞれのポケモン のび太 イーブイ ドラえもん ヒトデマン しずか ラッキー ジャイアン ヨーギラス スネオ ロコン リーフ ストライク、他。

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