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セカンド その9 - (2007/07/22 (日) 01:53:12) のソース
[[前へ>セカンド その8]] #のび太サイド 「……よし、皆準備はいいか?」 ジャイアンが僕、ドラえもん、静香ちゃんの三人に問う。 「うん、いいよ」 「ええ、問題無いわ」 僕と静香ちゃんは答えたが、ドラえもんはしかめっ面をしただけだった。 因みに、今は深夜。 僕達はここ、ギンガ団アジトの前に居る。 本当は明日襲撃する予定だったのだが、ジャイアンの提案で覆されてしまった。 事は一時間前に遡る―― 「なあ、襲撃は今夜にしないか?夜ならアジト内の警備も手薄な筈だぜ。 それに……俺達、昨日と今日で大分強くなったじゃねえか」 唐突に提案するジャイアン。 僕は賛成したが、ドラえもんはやっぱり反対だった。 「ダメだよ!静香ちゃんは今日襲われたところでまだ精神が不安定なんだ! 早くても明日じゃないと……」 「いや、遅くても今日じゃないとダメだ!もう我慢できねーよ……」 「だから静香ちゃんが――」 ドラえもんの言葉は途中で止まった。 今まで黙っていた静香ちゃんが、急に立ち上がったからだ。 「もう……やめて……」 ---- 熱弁していたドラえもんとジャイアンがしぶしぶ座る。 それを見た静香ちゃんは一呼吸置き、言った。 「ドラちゃん、私の事はいいの。心配してくれてありがとう。 私は今日でも問題無いわよ、武さん」 その静香ちゃんの言葉を合図に、僕達はポケモンセンターを出た。 そして飛行タイプのポケモンを出し、それに乗る。 僕達は夜空を翔け、トバリシティへ向かった―― ――そうして、今僕達はこうしてアジトの前に居るというわけだ。 「じゃあ、行くぞ皆!」 ジャイアンが僕達を先導してアジト内に入っていく。 ワンテンポ遅れて静香ちゃん、ドラえもんも小走りでその後を追う。 僕も躊躇する事無く、吸い寄せられるようにアジトの中へ入っていった―― ---- 僕達が侵入して間も無くの事だ。 「侵入者だー!侵入者がいたぞー!」 アジト内に響く下っ端の声。 それを聞き、目を凝らしたジャイアンは舌打ちをする。 大勢の下っ端達が雪崩のように押し寄せてきたのだ。 「随分と手荒い歓迎だこと」 静香ちゃんがエンペルト、そしてロズレイドを繰り出す。 下っ端達もそれぞれのポケモンを出すが、虚しくすぐにやられてしまう。 間髪入れず、エンペルトのバブル光線が放射されたのだ。 「のび太さん達は先に行って!ここは私一人で十分」 二匹のポケモンを駆使し、相手のポケモンを次々と倒しながら静香ちゃんは言う。 「……わ、わかった」 僕はそう短く告げ、ドラえもんとジャイアンと共に走っていった。 ---- 「で、これからどうするよ」 息を切らせながらジャイアンが問いかける。 「んー、どうしようk……」 答えようと思った僕の言葉は途中で止まった。 というより、止まることを余儀なくされた。 また……下っ端達がやってきたのだ。 「鬱陶しいね……」 額の汗を拭いながら、ドラえもんはそう吐き捨てる。 「へっ、丁度いい!ここでウォーミングアップといくか」 ジャイアンがボールを構える。 「え?ジャイアン、どうするの?」 「お前は先にいけよ。コイツ等は俺とドラえもんに任せてくれ」 胸をドンと叩き、任せてくれといったような表情のジャイアン。 僕はコクリと頷くと、傍にあったワープパネルに乗った。 「……ここ、どこだろう?」 薄暗い部屋に辿り着いた僕は、暗闇に向かって呟く。 そして、僕が数歩歩いたその時だった。 「よう、のび太」 「え?スネ夫……?」 ---- 暗闇の中から現れたのはスネ夫だった。 「スネ夫、久しぶり……」 そう言ってスネ夫の方へ駆けて行く僕だったが、それは虚しく遮られてしまう。 スネ夫の傍らのポケモン、ゴウカザルによって。 「僕がギンガ団に入ったって事はもう知ってるよね?」 一歩、また一歩と退く僕に、スネ夫が問いかける。 僕はそこで後退を止め、言った。 「知ってるさ。どうしても……やらなくちゃいけないの?」 その言葉を聞いたスネ夫は、ゴウカザルに指示を出す。 それと共に、物凄い威力の炎が僕の居る所を襲った。 「くっ!」 苦しい呻き声を上げ、辛うじて避ける。 そのまま、僕は宙にボールを放った。 それがバトル開始の合図となる―― 「さあ行けドラピオン!どくびし!」 「燃やし尽くせゴウカザル!フレアドライブだあぁっ!」 僕の指示に従ってどくびしを撒いたドラピオンに、炎の塊が突っ込んできた。 ---- 「まだ倒れないよ。雷の牙だ!」 辛うじてゴウカザルの攻撃を耐えたドラピオンが、電気を纏った牙で反撃する。 でも、次の攻撃を受けて耐えられる筈が無かった。 「次はヨルノズクだ!」 「蹴散らせぇ!フレアドライブッ!」 再三フレアドライブを行うゴウカザル。 ヨルノズクは何とか耐え、それを見た僕は薄ら笑いを浮かべた。 「スネ夫、まさかフレアドライブの追加効果は忘れてないよね? 何度も行った反動で、ゴウカザルの体力はかなり減っている筈だよ。 ……エアスラッシュで決めろ、ヨルノズク!」 刹那、放たれる空気の刃。 「くそ……戻れゴウカザル」 スネ夫がゴウカザルをボールに戻す。 次に出てきたのはビークインだった。 「どくびしの効果で、毒状態になってもらうよ!」 スネ夫のビークインが毒に侵される。 「そんな事ぐらいわかってるよ……ビークイン、つばめがえしだ!」 ---- 「ギャロップ!」 僕の一声と共に、投げたボールからギャロップが現れる。 「これで決めるよ……フレアドライブだあッ!」 ギャロップが赤い炎を帯び、ビークインに突進する。 スネ夫はすぐさまビークインを戻したけど、次のボールを出す様子は見せない。 「……はは、合格だよ。のび太」 突然笑い出したスネ夫が言う。 僕には何の事だかさっぱり分からなかった。 「僕はギンガ団に加担する気なんてさらさら無いよ。 ただ……ちょっとお前の実力を試したくてさ」 「はぁ?」 何と言うか、一気に気落ちした。 「……一体どうなってるの?」 「詳しい事は後で話すよ。とりあえずここを出よう」 いきなりすぎて状況を把握しきれない。 スネ夫は頭に疑問符を浮かべている僕を他所に、先に部屋を出ていった。 皆の手持ち のび太 ライチュウLv48、ヨルノズクLv46、ギャロップLv47、ドラピオンLv46 ドラえもん ムクホークLv49、ムウマージLv47、ヌオーLv45、バリヤードLv42、ウソッキーLv40 静香 エンペルトLv51、ミミロップLv48、ロズレイドLv50、パチリスLv46 スネ夫 ゴウカザルLv48、クロバットLv46、ビークインLv45、ドククラゲLv43、ドータクンLv42 ジャイアン ラムパルドLv50、マスキッパLv47、ギャラドスLv45、ドンカラスLv43 ---- #ドラえもんサイド 「よし、後はこのボタンを押せばいいだけだな」 ジャイアンが機械のボタンを押す。 すると、瞬く間に三匹の伝説のポケモンは消えてしまった。 「じゃあ、戻ろうか。さっきの下っ端の話によると、かなりヤバイ状況らしいし」 僕はジャイアンを先導して部屋を出る。 下っ端の話によると、出木杉がアカギを倒し、幹部達を連れてテンガン山へ向かったらしい。 そこで出木杉が伝説のポケモンを復活させ、この世界を―― 「おい、何してんだよ。さっさと行くぞ」 さっきまで僕の後ろに居た筈のジャイアンが、いつの間にか僕を先導していた。 僕はボールを懐に戻し、その背中を追いかける。 やっと出口に辿り着くと、そこには静香ちゃんが居た。 「良かった、二人とも無事だったのね。 ……あれ?のび太さんは?」 「のび太は……スネ夫を連れ戻しにいってるぜ」 「そう……じゃあ、ひとまずポケモンセンターに戻りましょう」 僕達は静香ちゃんと共に、ポケモンセンターへ向かった。 幾分滑稽に見えるアジトに背を向けて。 ---- 「のび太君を悠長に待ってる場合じゃないし……仕方ないか」 これからの事を話し合い、外に出た僕達。 相棒のムクホークを出し、満月の浮かぶ夜空へ繰り出す。 のび太君とスネ夫君は、恐らく後で来るだろう。 今は先にテンガン山へ向かわないと。 「よし、行こう!」 僕がそう言い、ムクホークにテンガン山へ向かうように指示したその時だった。 「おーい!みんな、待ってよー!」 「の、のび太君?」 アジトの中から飛び出してきたのは紛れも無くのび太君だった。 のび太君もヨルノズクに乗り、此方へ来る。 「無事だったのね……スネ夫さんはどうしたの?」 静香ちゃんが即座に質問する。 「スネ夫は後で来るってさ。話はスネ夫から全部聞いたよ。 出木杉がテンガン山で伝説のポケモンを復活させようとしている事。 そして、ギンガ団のボス……アカギが出木杉に倒されたこともね」 「なら話は早いぜ!俺達と一緒に来いよ!」 ジャイアンがフッと笑みを浮かべ、暖かくのび太君を迎える。 僕達は決意を固め、トバリシティ上空を飛んでいった―― ---- ※ここからは三人称で進みます 「……洞窟から出たらこんな所に出るのね」 テンガン山の内部を歩き、やがて雪原に出たのび太達。 ジャイアンとドラえもんは平気そうだが、のび太と静香は相当疲れていた。 「はぁ……もうダメぽ」 息を切らしながら、のび太が情けない声を漏らす。 そんな時だった。 「やっぱり来たのね、アンタ達」 少し休んでいた四人の前に現れたのはギンガ団幹部、マーズ。 それを見て、ジャイアンは懐のモンスターボールを手に取る。 「……待って、武さん」 ジャイアンを遮り、静香が一歩前へ出た。 首で皆の方を一瞥し、言い放つ。 「この女は私に任せて。 恐らくこの山には他に二人の幹部がいる筈よ。 だとしたら、一人一殺でいかないと出木杉さんまで辿り着かない。 それに……体力の無い私がいても足手まといになるだけよ」 それを聞いたドラえもんは止めようとしたが、言葉が出なかった。 静香の表情には、何かを決意したような――そんな力強いものがあったのだ。 「じゃあ、静香ちゃん……頑張ってね」 のび太が照れくさそうに言う。 そんなのび太の顔を見た静香は、フッと微笑んだ。 「ありがとう、のび太さん」 ---- のび太達を見送った静香は、ボールを二つ取り出す。 「行きなさい!エンペルトとミミロップ!」 雪原に、静香の従える二匹のポケモンが現れる。 「ダブルバトル、ということなのかしら」 マーズも躊躇する事無く、二つのボールを放った―― ―――――――――― やりのはしら。 テンガン山の山頂であるここは、そう呼ばれていた。 沢山の柱があり、床に刻まれた紋章がシンオウ地方の深い歴史を感じさせる。 この場所に一人の少年が現れたのは、つい先程の事だった。 激しい強風を肌で感じ、嫌らしい笑みを浮かべる。 (恐らくもうすぐ野比君達が来るだろう。 山中に配置した三人の幹部が足止めしている間に……とっとと復活させようかな) 少年、出木杉は床に刻まれた紋章に近づく。 「赤い鎖……これを使えば……」 出木杉が、湖のポケモンから作り出した赤い鎖を天に翳す。 それと同時に、空から一筋の光が降ってくる。 その光は紋章のある所に直撃し、巨大な二体のポケモンの姿を形取る。 片方は、時間ポケモンディアルガ。もう片方は、空間ポケモンパルキア。 両方とも、このシンオウ地方において神と称されたポケモンだ。 ---- テンガン山中腹、雪原内。 「ブニャットとラフレシア……ね」 静香がマーズのポケモンを一瞥し、呟く。 「蹴散らしてあげる!ブニャット、催眠術!」 ブニャットの催眠術により、エンペルトが眠ってしまう。 だが、静香は気にする様子も見せずミミロップに指示を出した。 「ラフレシアに炎のパンチ!そして……」 「何!?」 マーズは驚く。 攻撃を放ったミミロップの横で、エンペルトが目覚めたのだ。 「状態異常を治す木の実……ってところかしらね」 歯噛みするマーズ。 それを見て、静香は勝ち誇ったような顔をする。 エンペルトの渾身の一撃、ハイドロポンプはブニャットを一撃の下に降した。 「まだ終わってないわ……ラフレシア!」 マーズの一声と共に、ラフレシアが動く。 エンペルトに眠り粉をかけようとするが、虚しく外れてしまった。 「どうやら運も私の味方のようね」 静香は依然、余裕の笑みを見せていた。 ---- 「行きなさい、チャーレム!」 マーズがチャーレムを繰り出すも、出てきた直後にミミロップのピヨピヨパンチが飛んでくる。 (……よし!) 心の中で安堵するマーズ。 静香のミミロップが甘えるを使ってこなかったのは嬉しい誤算だった。 そのお陰で、ピヨピヨパンチを受けたチャーレムが本来の攻撃力で攻撃出来る。 「とびひさげりっ!」 マーズの狙いは、エンペルトただ一匹だった。 彼女が踏んだ通りならば、エンペルトが静香のパーティの主力。 ここで潰しておけば、後々楽になる筈。 「お願い、エンペルト……!」 静香の願いも虚しく、チャーレムの攻撃によってエンペルトが倒れる。 その上、ラフレシアの眠り粉でミミロップが眠ってしまった。 「形勢逆転……ね」 静香は焦っていた。 (私の残り控えポケモンはロズレイドとパチリス。 ミミロップには薬を使うから、このターンは動けない。 相手のチャーレムとラフレシア……どう倒せばいいの?) 静香にとって、エンペルトを失ったのはかなりの痛手だった。 何せ、エンペルトは静香の手持ちの中でも屈指の強さを誇るポケモン。 まさかそれをバトル序盤に失う事になろうとは。 ---- 「お願い、パチリス!」 静香がパチリスを繰り出す。 それから静香の指示が飛ぶのにかかった時間、僅か一秒足らず。 「甘える!」 チャーレムはパチリスに甘えられ、攻撃力がガクンと下がる。 マーズは舌打ちをしながらも、的確な指示を飛ばした。 「チィ、厄介な……でも、まずはあのミミロップをやりなさい!」 攻撃力が下がったとはいえ、効果抜群のチャーレムの飛び膝蹴り。 それに加え、ラフレシアのエナジーボール。 ミミロップが耐えきれる筈も無かった。 マーズの顔に余裕の色が見える。 静香は仕方なくミミロップを戻し、ロズレイドを出す。 形勢は圧倒的に不利。 しかし、静香はまだ諦めてはいなかった。 「狙いをラフレシアに!」 静香の声が、パチリスをロズレイドを駆り立てる。 パチリスの怒りの前歯と、ロズレイドのじんつうりきがラフレシアを降した。 ---- テンガン山頂上付近、雪原内。 ここでは、ドラえもんとジュピターが対峙していた。 「やっぱり来たのね、狸さん」 「僕は狸じゃない!猫型ロボットだ!」 ドラえもんが怒鳴り、先に行ったのび太とジャイアンを見つめる。 やがて、二人の姿は洞窟の中へ消えていった。 降り続ける雪と共に、二つのボールが宙を舞う。 ドラえもんのボールからはヌオー、ジュピターのボールからはスカタンクが出てきた。 「どうやら先取点は僕のものらしいね」 スカタンクなら、ヌオーの地震攻撃で倒せる。 そう踏んだドラえもんは、僅かに笑みを見せた。 「スカタンク、つじぎり!」 スカタンクがヌオーに斬りかかる。 ドラえもんはその状況を楽観していたが、やがてその顔は青ざめていく。 「甘いのよ、狸さん」 ジュピターが小声で囁く。 ドラえもんのヌオーはあっけなく倒れていた。 スカタンクのつじぎり、その一撃で。 ---- 「ピントレンズを持たせてたのよ」 ジュピターがドラえもんに言い放つ。 「なるほど……だから急所に当たったのか」 ドラえもんは感心しながらも次の手を考える。 「いけっ、ムクホーク!」 ドラえもんの選択は、切り札のムクホーク。 その空を裂くような咆哮に、ジュピターは少したじろいだ。 「ムクホーク、ブレイブバードッ!」 ムクホークが空高く飛翔し、勢いよくスカタンクに突っ込む。 それはまるで、全てを貫く矢のような攻撃。 「この一撃で決めろ!」 再びドラえもんの声が響く。 ムクホークは更に加速し、最高速度でスカタンクに突撃した。 それによってスカタンクは力尽き、倒れる。 ジュピターは歯噛みする。 (あの鳥をどうにかしないとやばいわね……でも、どうすれば) ドラえもんのムクホークはかなり鍛えられている。 それ故、先手を取って倒さないと逆にこちらがやられる。 「ならこの子しか居ないわね……行きなさい、マニューラ!」 鋭い鉤爪を持ったポケモン、マニューラが現れる。 ---- (マニューラ……やばい!) 危険を感じたドラえもんが、ムクホークをボールに戻そうとする。 だが、ジュピターはそれを読んでいた。 「追い討ちっ!」 ムクホークがボールに戻る寸前、マニューラの鉤爪がその身体を裂く。 瀕死には至らなかったものの、その体力はかなり削られてしまった。 「くっ……やっぱり強いか!……ん?」 ドラえもんが次のボールを取り出したところで、ふと気付いた。 自分が優勢なのにも関わらず、浮かない顔をしているジュピターに。 (……どうしたんだろ?あの顔……何か迷っているような) 少し蒼白で、迷いの色が見え隠れしているジュピターの顔。 それを気にならずにはいられないドラえもんだったが、とりあえず次のボールを放つ。 「いけ、ウソッキー!」 ドラえもんにとっては最良の選択だった。 防御力の高いウソッキーなら、先手を取られても反撃の一撃でマニューラを撃破出来る。 (一旦戻した方が得策かしらね……) ジュピターがマニューラをボールに戻す。 だが、それもドラえもんの想定内の事だった。 「読んでいたよ!ウソッキー、ステルスロック!」 「くっ……」 見事に決まったステルスロックが、ジュピターにプレッシャーを与える。 [[次へ>セカンド その10]] ----