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ポケモンとのび太とノートと その10 - (2007/02/17 (土) 17:14:17) のソース

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一方、ゲート前にはのび太とジャイアン、及び大量のとけるを使った
みがわりドーブルが待機していた。 
そこにアンノーンが飛んできて、見張りを消したことを知らせる。 
のび太「突撃OKだって。 
もう行く?」 
のび太が聞いた。 
ジャイアン「行くか………。」 
ジャイアンも同意する。 
のび太とジャイアンは静かにゲートを開けた。 
やはり中には誰もいない。 
のび太とジャイアンはそそくさとゲートを抜け、
ドーブル数匹とアンノーンに先を偵察に行かせる。 
五分後、アンノーンとドーブルが帰ってきた。 
ドーブルは二匹程減っていた。 
のび太が先に進んでいいか聞くとアンノーンはよいと答えたので
そのまま先に進むことにした。 
コガネ内部にもやはり雨は降っている。 
そこには誰も居なかった。恐らくドーブルに消されたのであろう。 

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今回二人に突入させたのは最終決戦の戦いを有利に進めるため。 
故に奴らに人の侵入がバレるのは得策ではない。 
ここ一週間のドーブル作戦もこの侵入の為の布石。 
人員を削るのはオマケにすぎない。 

二人は建物の影に隠れながら先を進む。 
雨と緊張の為か疲労が大きい。 
ここ数日の連続戦闘もたたっているのだろう。 

ジャイアン「そろそろラジオ塔の前だな………。」 
ジャイアンが小声でのび太に言いのび太は頷く。 
ジャイアン「俺はここでもしもの為に待機する。 
のび太、とりあえず行ってこい。 
何かあればすぐ駆け付けるから。」 
のび太「うん。」 
のび太はそう言い二人は別れた。 

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多分スネ夫にしても、ここまで誰にも見付からず侵入できているのは
計算外のラッキー。 
もしかしたらスネ夫の報告以上にロケット団の連中は熱中症で
倒れてるのかもしれない。 
ここまで上手くいくからには最後まで完璧にしたほうがいい。 

雨の降り頻る中、ジャイアンは息を殺していた。 
大量のドーブルと一緒にいると目立つのでそれらは路地の死角に全て隠してある。 
ジャイアン『のび太と別れてからもう10分程………。 
塔の中からは誰も出てきていないな………。』 
ジャイアンの役目は、突入のサポートするためラジオ塔の動きを監視すること。 
ただ監視するだけならアンノーンにも出来るが
この任務は場合によっては敵の足止めもしなければならない。 
そこで適任を考えた結果、一行の中で最も戦闘能力の高い
ジャイアンが選ばれた訳だ。 

しかし、悲しいかな、ジャイアンは飽きっぽい。 
この単調な作業に飽きてきた。 
余りに変化のない状況に欠伸をした時だった。 
ジャイアンの2.0の視力はラジオ塔から二つの人影が出てきたのを捉えた。 

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ジャイアン「あいつらは…………。」 
ジャイアンは必死に記憶の糸をたぐりよせた。 
ジャイアン『確か男がコウ。 
女の方はどっかの町の名前だったな………。 
ヒワダだっけか?』 
ジャイアンは監視を続け近所の子供達にも「地獄耳」と
恐れられる驚異の聴力で二人の話を聞く。 

コウ「……部下からの連絡が途絶えました。 
また消されたようですね。」 
コウが耳から通信機のような物を外し言う。 
キキョウ「あんたやトシミツ様の言う通りあのドロドロは町中に侵入してきたようね。」 
ジャイアン『ドロドロ………? 
あ、スネ夫のドーブルの事か。』 
ジャイアンは素早く思考を働かせ考えた。 
しかし、話を聞くのを怠った訳ではない。 
とりあえず、ラジオ塔から幹部の二人が出てきたのをアンノーンに伝え、
のび太に伝令させる。 

コウ「しかし、トシミツ様の言う事に間違いはないんでしょうね? 
もし間違っていれば連中の駆除どころか私らが消されかねない。」 
コウが心配そうに言う。 
キキョウ「大丈夫よ。 
トシミツ様の言うことに間違いはないわ。 
とりあえず駆除に向かいましょ。」 

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ジャイアン『ヤベエな…… 
もう気付きやがった……。』 
ジャイアンは唇を噛む。 
奴らの言動から考えるに、ドーブル駆除ということはこれから町に
繰り出すのは間違いない。 
その場合のび太とは高い確率で遭遇するだろう。 
足止めしようにも、まさか幹部クラスが二人も来るとは思い浮かばなかった。 
連中も幹部ならあのスターミー野郎と同じくらいの力量を持っているに違いない。 
自分がいかに強くなっていたとしてもカホウ二人分には恐らく勝てないだろう。 
しかし、このままではその戦力をもろにのび太が受けてしまう。 
行くべきか、黙するべきか。 
思考より体が先に動くジャイアンも、この葛藤に悩まされていた。 

コウ「まあ、やるだけはやってみましょう。 
キキョウさん、行きますよ。」 
コウはそう言い歩きだした。 
ジャイアン『ヤベエ! 
こっちに来た。』 
ジャイアンは息を潜め気配を殺した。 

ぴちゃぴちゃ。 
コウとキキョウの足音が聞こえる。 
ジャイアン『くそっ! 
見つからねえでくれ!』 
ジャイアンは強く念じお祈りのポーズをとる。 
ジャイアンの願いが通じたのか、その足音は次第に遠くなってゆく。 
ジャイアン『助かったか………?』 
ジャイアンはホッとした。しかし、 

「ピルルルルルルル。ピルルルルルルルル。」 

雨の中に渇いた電子音が響き渡った。 

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ジャイアン『な、なんだ!?』 
ジャイアンはあわてて自分のポケットを見た。 
そして、音の発生源が自分のポケギアであることが解り、すぐに電源を切った。 
ジャイアン『ヤベエ! 
絶対見つかった………』 
あれほど大きな電子音が響いたのだ。 
奴らが気づかない筈はない。 
ジャイアンは恐る恐る、物陰からコウ達がいた所を見た。 
ジャイアン『あれ………?』 
奴らは居なかった。 

ジャイアン『もしかして、雨で奴らにはこの音が聞こえずに、
先に行ってしまったのか? 
まさか俺様ラッキー!?』 
ジャイアンはそう思い、ホッと胸を撫で下ろした。 

しかし、ジャイアンの安心感は無惨に崩れ去る事になる。 
誰かの手がジャイアンの肩に触れたからだ。 

コウ「こんにちは。」 

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コウ「君はあの時の………。 
まさかこの戦線に参加していたなんてね。」コウがジャイアンの肩に
触れながら不気味に笑う。 

ジャイアン「うおあああああ!!」 
ジャイアンはコウの手を振りほどき、反射的にその場から逃げ出した。 
ジャイアン『ヤバイ……! 
ここは逃げるしかねえ!』 
慌てて逃げるジャイアンを見てコウが言う。 
コウ「つれないですね………。 
ねえ、キキョウさん。」 
キキョウ「逃がさないわよ………。 
アリアドス!くものす!」 
ジャイアンの退路にクモの巣ができ、逃げられなくなる。 

キキョウ「これで逃げられない………」 
キキョウは冷たく笑う。 
ジャイアンは絶望的な危機に頻していた。 
だがジャイアンにはスネ夫に言われたこういうときのための
最後の策が用意されている。 
ドーブルのテレポートだ。 

ジャイアン『ドーブル達がこっちに来るまで時間を稼がねえと……』 
ジャイアンは思考をフル回転させた。 

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ジャイアン「ちょっ、ちょっと待て! 
取引しねえか?」 
キキョウ「取引?」 
ジャイアン「ああ、取引だ。」 
上手い具合いに乗ってくれた。 
後は時間を稼ぐだけ。 
ジャイアン「あのドロドロの正体を知りたくねえか?」 
ジャイアンは会話で時間を稼ごうとする。 
ドーブル達とはクモの巣を隔てているが、
液体状になってる連中なら突破出来るだろう。 
ドーブル達もこの状況に気づいたかゆっくりとこちらへ向かってくる。 

ジャイアン「そもそもな、お前らが………」 
ジャイアンは無い頭を必死で駆使し、時間を稼ぐ。 
奴らは雨の視界の悪さでドーブルには気づいていないようだ。 

ドーブルとジャイアンまでの距離は確実に短くなる。 

あと30m 
20m……… 

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ジャイアンが絶対絶命のピンチに頻しているとき、
のび太はコガネのポケモンセンターにいた。 
のび太は口元を弛め、センター内に用意してある公衆電話の電源を切り、
辺りを見回す。 
ジャイアンを見て来いと言ったので、周りにアンノーンはいない。 

のび太『これで厄介な奴が死んでくれた。』 
のび太の顔が醜く歪む。 

ジャイアンのポケギアを鳴らしたのは彼である。 

そもそも、のび太にとって、ジャイアンの存在は、最も邪魔であり厄介であった。 

まず、奴らの中でドラえもんは、名前を知っていてラクに殺せる。 
スネ夫は、ポケモンの応用力、戦術力は高いがかなりのレベル不足。 
スネ夫が団員を拉致している間、のび太達は、送られてきたロケット団相手に、
経験値、及び戦闘経験を積んでいた。 
正直、現在戦闘という面では自分より圧倒的に弱い。 
故に奴はノートで殺せなくても、問題は、なんらない。 

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だが、問題はジャイアンである。 
明らかなる偽名(というかニックネーム)により、ノートでは殺せない。 
しかも、奴は、完全なるバトルマニア。 
手持ちの強さなど足下にも及ばない。 

故に、コイツを殺すにはチャンスと安全な策が必要。 

ノートや戦闘で殺せないなら違う方法を採ればいい。 
それは、ジャイアンをハメて、コガネで戦死させる事である。 

のび太「奴と幹部………。どっちが勝っても得をすんのは俺。 
決行まで、いい案が思い浮かばず、小手先の策となったが、
まさか、ここまでうまくいくとは思わなかったぜ。 
確実に流れは俺の方へ向いてるな。キシシシシ。 

もう、キツネ顔の注文も済ませた事だし、この街に用はないな。」 
のび太はそう呟き、うすら笑いを浮かべながら、ポケモンセンターを後にした。 

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一方、のび太の策に、まんまとハマったジャイアンに視点を戻す。 
ジャイアン「それでな、その青狸がな………」 
ジャイアンは相変わらず、時間稼ぎをしていた。 
しかし、生まれつきの頭の悪さか、まともな会話ができていない。 

黙って話を聞いていたキキョウも、流石に不信感を抱く。 
キキョウ「あんた………、何か話を先伸ばしにしようとしてない? 
なんというか、時間を稼いでるような………」 
目を細めてキキョウが訊く。 
ジャイアン「そそそそ、そんなことねえよ!!」 
ジャイアンは慌てて誤魔化す。 

ジャイアン『バレたか………。 
まあいい。 
ドーブルまで後10m程だ。 
この間合いなら、女の方の攻撃は受けても、男の方は間に合わない。 
要は逃げれりゃいいんだ。』 
ジャイアンはドーブルの方をチラリと見る。 
もう、すぐそこだ。 

ジャイアン『ふん。俺の勝ちだな。』 

しかし、ジャイアンが勝ちを確信したときだった。 

ボンッ、と音がして、液体状だったハズのドーブルが、本来の姿をさらけだした。 

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ジャイアン「なんで!? 
何故液体化したドーブルが……」 
予期せぬ突然の事に驚くジャイアン。 
その様子を見て、コウがクスクスと笑いだした。 
コウ「くくくくく…………。 
流石はトシミツ様。 
歳の功とは恐ろしい……。」 
キキョウ「しかし、危なかったわ………。 
全然気付かなかった。 
ありがとう。コウ。」 

雨の中で、コウと、キキョウの会話が飛び交う。 
ジャイアンはただ呆然としていた。 
ジャイアン「何故だ……?」 
意気消沈とするジャイアンに、コウが言い放つ。 
コウ「何が起こってるか分からないのかい。 
なら、向こうを見るといいよ。」 
コウは、そう言いドーブル達の方を指さした。 

ジャイアンはそれに従い、指さされた方を見る。 
ドーブル達の「とける」が次から次に解除されていっている。 
ジャイアンはしばらく、それに目を奪われていたが、じきにドーブル達の上に、
黒いモヤがかかっているのに気付いた。 
ジャイアン「あれはまさか………。 
くろいきり?」 

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コウ「ハッハッハ! 
そうだよ!まさに、その通り! 
ちなみに上を見てごらん。」 
コウが笑いながら、今度は上空を指差す。 
ジャイアン「あれはクロバット!」 
キキョウ「その通りよ。」 
キキョウが言った。 

そしてコウが説明を始める。 
コウ「あなた達の攻撃が、「とける」を使ったポケモンということは
予測はついていました。 
(まあ、トシミツ様は水の中で生きれる事からシャワーズか、
ベトベター推測してたんですけど。) 
だから、それを解除させる為に上空からクロバットにくろいきりを散布させながら
飛ばしたんですよ。」 
コウの言葉にジャイアンは唇を噛む。 

ジャイアン『くそっ! 
雨のせいでクロバットにもくろいきりにも気付かなかった……。 
恐らく今までいた見張りも、地上に注意を向けさす為の布石……。 
奴らはだから安心してあまごいをしたんだな……。』 
ジャイアンはチラリとドーブル達を見やる。 
ドーブル達とは「くものす」で分断されている。 
「とける」を解除されたドーブル達は「くものす」を抜けれず、
最早どうしようもない。 
絶望にうちひしがれるジャイアンに、コウが笑いかける。 
コウ「さあ、とりあえず君をどうしようかな。」 

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キキョウ「決まってる。」 
そう言い、キキョウが身構える。 
ジャイアンにはもはや、戦闘しか道は残されてはいなかった。 
ジャイアン「畜生!いけっ、ヘラクロス、オーダイル!」 
ジャイアンは、そう言いポケモンを繰り出した。 
キキョウ「そうこなくちゃ!」 
キキョウも腰のモンスターボールに手をかける。 
だが、ただ一人コウだけは動かない。 
キキョウ「コウ? 
どうしたの?」 
不審に思ったキキョウが訊いた。 
コウは笑いながら答える。 
コウ「キキョウさん。 
こいつは僕達が戦うまでもありません。 
巻き込まれないように、避難しましょう。」 
キキョウ「は?」 
コウはそう言い、キキョウを半ば強引に連れラジオ塔の方へ歩いて行く。 
ジャイアン「なんだ!?逃がしてくれんのか!?」 
ジャイアンが訊く。 
ジャイアンにはコウの行動の意味が解らない。 
尚も、コウとキキョウはラジオ塔を目指し歩く。 
そして、ラジオ塔の入口の前に行った時、コウが言った。 

コウ「逃がす?そんな馬鹿な。逃がしはしませんよ。気付いて下さい。
今は雨ですよ? 
ねえ、カホウさん。」 
ジャイアン「なっ!?」 
ジャイアンが気付いた時にはもう遅かった。 
ラジオ塔の頂上からカホウとスターミーと、大量の水が流れてきた。 

スターミーのなみのりは、ジャイアンとドーブル達、
及びそこにあった物全てを跡形も無く洗い流した。 

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ジャイアンがカホウの水に呑み込まれてから一時間後、
アンノーン達はその事をスネ夫に報告していた。 

アンノーン「ジャイアンがやられた。 
津波に呑み込まれて行方が分からない。」 

スネ夫「なんだって!?」 
スネ夫はアンノーンの報告に驚きを隠せなかった。 
スネ夫は暫し黙っていたが、やがて口を開いた。 
スネ夫「わかった………。 
とりあえず、ジャイアンを捜索してくれ。」 
スネ夫はそう言い、アンノーン達を追い出した。 

スネ夫「くそっ!」 
スネ夫は机にやるせない気持を全てぶつけた。 

アンノーンの話では、あの一撃はジャイアンを死においやるには
十分な威力だったという。 
確かにそうかもしれない。 
前回は、雨が降っていなくて、しかもポケモンが盾になってあの威力だったのに、
今回は雨の中でモロになみのりを食らってしまっていたらしい。 
ここまで響いてくるあの音から想像するに、
アンノーンの言うことに間違いはないだろう。 
一番の戦力であったジャイアンを失ったのは大きなディスアドバンテージだ。 

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しかし、言い方が悪いがジャイアンは死んでも作戦になんら問題はない。 
余りこんな言い方はしたくないがむしろ、人質にならない分、死んだ方が好都合。 
本当に死なれて困るのは、のび太だ。 

ドーブルの正体は奴らに見破られた。 
まあ、これは計算通り、というより好都合か。 
しかし、のび太に死なれてしまうと、全ては台無し。 
ジャイアンの死も、ドーブルの能力が知られたのも、全て無駄になってしまう。 

スネ夫「のび太が生きていれば……。 
でも、ゲームを脱出すれば生き返るとはいえ、ジャイアン……。 
くそっ!」 
やっぱり策より、友達。 
策は幾等でも後で変更できる。 
今はただ二人に生きていて欲しい。 

スネ夫はさっき、少しでもジャイアンの死を好都合と考えた自分に、
腹が立ってしかたなかった。 

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