薬物治療の応答性や相互作用に影響を与える因子の一つとして、個人差を考慮する必要に迫られる場面が増えていますね。
Clopidorelによる抗血小板療法の応答性に影響を与えるとされるCYP2C19遺伝子多型の話題を中心に、
抗血栓療法の基本的な知識と薬物応答性や相互作用の考え方とこれらの情報の臨床適応について、
兵庫医療大学薬学部長の東純一先生のレクチャーをまとめてみました。
ゲノム薬理学
・Pharmacogenomics(PGx:ゲノム薬理学)は1998年頃初出。
薬物応答性や副作用発現と個人の遺伝子との関係を解明する研究分野。
・ Pharmacogenetics(薬理遺伝学)は遺伝に特化した分野
・個人ごとの薬物応答性は遺伝子の発現遺伝子多型やプロファイルを調べることにより推測可能となると考えられている。
・PGxの進展→治療成績の向上や投薬に伴うリスクの軽減など、個人の体質にあった薬物の投与(個別化医療)の実現につながる。
・ 新規開発薬の臨床試験で被験者の遺伝子多型情報が組み込まれるな
→今後の医薬品の研究開発プロセスにも影響?
・「The Pharmacogenomics Journal」創刊号に以下が記載。
「個人の薬物応答性の違いを予知し得る要因を無視して医薬品の処方が行われてきたことが驚きとなる、
そんな日々が来るのもそれほど遠い将来のことではない。」
・薬の効果に影響する要因: 内的要因(年齢・性別・体重・臓器機能不全・病因・病態・遺伝)
外的要因(食生活・併用薬・飲食物・ハーブ・喫煙・医薬品の特性)
・PGxは内的要因。
・遺伝子多型とは個体レベルのゲノムの違い。
SNPs (Single Nucleotide Polymorphisms)は1塩基置換で(例;・AATCGGTCC・・→・AATCCGTCC・・)
ヒトゲノム中に数百万(1000塩基あたりに1カ所以上)存在。
・特にアミノ酸置換を生じるSNPsではタンパク質の欠如や異常タンパク蛋白質の出現につながり、
罹患率・薬効・副作用などの個体差が生じる原因の一つと考えられている。
・薬物応答性の個体差に関与する遺伝子は、
①吸収・分布・代謝・排泄(ADME)に関わる薬物動態関連(PK:Pharmacokinetics)遺伝子
②薬物の作用部位や効果発現に関わる薬力学関連(PD:Pharmacodynamics、薬物標的)遺伝子
③臨床診断名確定(idiosyncratic drug
toxicityを含む)に関わる疾患関連遺伝子
・以上の遺伝子多型が遺伝子関連検査のターゲット。
・遺伝子関連検査の分類・・・日本医学会
「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」
・薬物応答性については人種間差がしばしば問題となる・・・PK/PDでのPGxの観点から有用な情報が得られている。
・Hepatic Cytochrome P450 Cocktail
Study (Clin Pharmacol
Ther 2008; 84(3): 347-61)
対象:20-45才の健康で非喫煙者の男性(ネイティブ日本人・一世/三世の日系人・韓国人・シンガポールの中国人・白人各100人)
介入:各CYP分子種の基質薬を投与してPKを観察。
各CYP分子の基質薬としてCaffeine (CYP1A2)・Losartan (CYP2C9)・Omeprazole
(CYP2C19)
・Dextromethorphan
(CYP2D6)・Chlorzoxazone
(CYP2E1)・Midazolam
(CYP3A5)を3日間投与のPK
結果:CYP2C9・CYP2C19・CYP2D6については代謝能のPhenotype(表現型)に対してGenotype(遺伝子型)が明らかに影響を与えている。
CYP1A2・CYP2E1・CYP3A4/5については影響が観察されなかった。
結論:代謝能の人種間差はCYPの機能喪失アレル保有者(後述のPM)の頻度の差であり、
特殊な生活習慣がなければ人種に関係なくGenotypeと代謝能は相関すると考えられている。
・ (例)CYP2C19:日本人では野生型のCYP2C19*1(*1)、変異アレルのCYP2C19*2(*2)とCYP2C19*3(*3)の2つが関与して活性を決定。
組み合わせにより代謝能は、
EM (extensive
metabolizer)(*1/*1)
IM (intermediate
metabolizer)(*1/*2,*1/*3)
PM (poor metabolizer)
(*2/*2,*2/*3,*3/*3)
日本人には存在しない変異アレルのCYP2C19*17(*17)が関与したUM
(ultrarapid
metabolizer)(*1/*17,*17/*17)。
・ Omeprazoleの場合、PMではCYP2C19の代謝物の水酸化体の血中濃度が低くなる可能性が示されている。
PGxからみた抗血栓療法の個別化適正投与
・「血栓症」とは血栓によって血管が詰まって発症する疾病の総称。
・ 血栓症(脳梗塞・心筋梗塞(MI: Myocardial
Infarction)・深部静脈血栓・肺塞栓など)を発症させないようにする・・・抗血栓療法
抗血小板療法と抗凝固療法。
・ 血小板には血管内の血流速度と血液粘度によって生じる摩擦力(ずり応力)がかかっていて、
ずり応力が大きい動脈での血栓形成には血小板の働きが重要で抗血小板療法を用いる。
・ ずり応力が小さい静脈では凝固因子の働きが重要で抗凝固療法を用いる。
・ 血小板と凝固因子は相互に影響しあって血栓を形成するので、抗血小板薬と抗凝固薬が同時に必要になることもある。
・ 形成した血栓を溶かす治療は線溶療法である。
(1)抗血小板療法の個別化適正投与~Clopidogrel
・
Clopidogrelは肝臓でCYP2C19の代謝を受けて生成される活性代謝物が血小板凝集抑制作用を発揮するプロドラッグ。
・Clopidogrelの活性経路は
①腸間膜で全体の約50%が吸収。
この吸収にはP糖タンパク質のABCB1 (ATP-binding Cassette sub-family B member
1)トランスポーターが関与
②吸収された薬剤の約50 %のうち85%はエステラーゼによりカルボン酸誘導体として加水分解されて失活し、
残りの15%はCYPにより2段階の代謝を受ける
③1段階目はCYP1A2・2C19・2B6により2-oxo-Clopidogrelに変換され、2段階目でCYP2C9・2B6・3A4/5・2C19により活性代謝物となる
④血小板のP2Y12受容体に非可逆的に結合し抗血小板作用を示す。
・ Clopidogrelの有効性低下の個人差について懸念される報告が続いている。
TRITON-TIMI 38
:Prasugrelの有効性と安全性の評価試験(N Eng J Med 2009;
360:354-62)
Clopidogrelを投与された急性冠症候群(ACS:Acute Coronary Syndrome)患者1477例のコホート集団を対象に、
CYP2C19の遺伝子多型とClopidogrelの有効性が検討。
(結果)CYP2C19の機能低下アレル保有群は非保有群に比べて、心血管死・MI・脳卒中が相対的に53%上昇
12.1%対8.0%,HR(Hazard Ratio:ハザード比):1.53,95%CI (Confidence
Interval):1.07-2.19,P=0.01
TRITON-TIMI 38は2008年12月22日にNEJM.orgで発表
→2009年1月26日に米国医薬食品局(FDA)はClopidogrelの効果減弱の個人差について、
遺伝的要因や併用薬(特にPPI)の影響を早急に研究すべきであるとの見解を示した。
・ PPIとの併用によるClopidogrelの効果減弱に関しての報告もあり。
2009年1月28日にCMAJ誌のオンライン版(CMAJ
2009; 180(7):713-8)
PPIによるCYP2C19直接阻害によってClopidogrelの活性代謝物の生成が減少する可能性が示唆された。
急性MIの退院後Clopidogrelを開始した66才以上の13636例が対象のコホート内症例対照研究
(結果)PPI併用例では退院後90日以内の急性MI再発リスクが増大した(調整Odds
Ratio:1.27,95%CI:1.03-1.57)
このうちPantoprazoleにはリスクの増加を認めなかった(調整Odds Ratio:1.02,95%CI:0.70-1.47)。
→ 2009年11月17日にFDAは製造販売元が提出したデータを解析して、
OmeprazoleによってClopidogrelの活性体生成が45%、抗血小板作用が47%減弱すると判明・・・2剤の併用を避けるよう勧告。
→2010年3月12日、FDAは薬物代謝酵素に変異を持つ患者ではClopidogrelの効果が得られにくいことを「使用上の注意」に追加
医師は担当患者に遺伝子検査を行ってPMの場合にはPPIを代替薬に変更することとした。
→2009年5月のPMの効果減少に関する注意書きは代替薬使用を促す強い警告へ。
→2010年4月27日、日本でもClopidogrelとOmeprazoleの添付文書が改訂・・・2剤は併用注意に変更。
→2剤併用が問題となる患者
:ステント血栓発症抑制のためにClopidogrelとAspirinの併用が推奨されている薬剤溶出ステント(DES)留置患者。
両薬剤併用での上部消化管出血の頻度はまれではなく、出血リスクの高い患者にPPIを処方する意義は大きく、
臨床現場ではClopidogrelとAspirin併用例の多くでPPIが処方されている。
→2010年10月、ACS・心房細動(AF:Atrial Fibrillation)患者ではCYP2C19の機能喪失アレルの保有状態にかかわらず、
プラセボと比較してClopidogrelの効果は一貫して影響を受けていないとする前向き試験の報告(N
Eng J Med 2010; 363:1704-14)。
(2剤併用の臨床転帰への影響は無いとする報告)
→2010年11月、COGENT試験、N Eng J Med 2010;
363:1909-17
対象:抗血小板薬2剤(Aspirin+Clopidogrel)併用療法の患者
デザイン:Omeprazole投与追加群とプラセボ群を比較したランダム化比較試験
結果:複合消化管イベント発生率はOmeprazole群1.1%、プラセボ群2.9%(HR:0.34,95%CI:0.18-0.63,P<0.001)
複合心血管イベント発生率はOmeprazole群4.9%、プラセボ群5.7%であった(HR:0.99,95%CI:0.68-1.44,P=0.96)。
→ フランスの223施設でMI患者3670名を対象とした観察研究(Circulation 2011;
123(5):474-82)
PPIの種類やCYP2C19の遺伝子型にかかわらず両薬剤の併用は心血管イベントや死亡リスクに影響しなかった。
→ 66才以上の脳卒中患者2765名を対象としたコホート内症例対照研究(Stroke 2011 Jan;
42(1):128-32)
PPIの併用で脳卒中再発による入院(調整OR:1.05,95%CI:0.60-1.82)と全死亡(調整OR:1.84,95%CI,0.88-3.89)は増加しなかった。
(2剤併用の臨床転帰への影響はありとする報告)
→PCI施行後のClopidogrel服用患者を対象としたメタアナリシス(JAMA 2010 Oct
27; 304(16): 1821-30)
CYP2C19変異アレル1つ以上を有する患者は野生型患者と比べて
心血管死(HR:1.57, 95%CI:1.13-2.16,
P=0.006)
ステント血栓(HR:2.81, 95%CI:1.81-4.37, P<0.00001)
・Clopidogrelの臨床効果の個人差は遺伝的素因によるとされてきたが、その遺伝子の特定や活性化の分子メカニズムは不明のまま
検証され続けていたため、相反する報告が続いた。
・
2010年末から翌年にかけて、Clopidogrel活性化に関わる新分子PON-1(Paraoxonase-1)が浮上。
PON-1は脂質酸化物を分解してリポ蛋白の酸化保護作用を示す抗酸化酵素。
PON-1はClopidogrel活性化の2段階目の2-oxo-Clopidogrelからチオール活性代謝物への加水分解に関与し、
ここが活性化の律速段階とするというメカニズムがin
vitroメタボロミクスプロファイリング技術によって発見。
・ ステント留置後にClopidogrelを投与された冠動脈疾患患者を対象としてPON-1のQ192R多型の臨床意義を調べた研究では、
PON-1 QQ192患者はRR192患者に比べてステント血栓形成のリスクが高く(P<0.001)、PON-1活性とClopidogrel活性代謝物の
血漿中濃度が低いことが示された。
→PON-1がClopidogrelの生体内活性化と臨床活性の重要な因子である可能性が示唆?()。
・ 2010年11月のAHA2010(第83回米国心臓協会学術集会)でGRAVITAS試験の報告。
目的:Clopidogrel低反応性患者への投与量検討
対象:DES留置後にVerifyNowシステムを用いて血小板凝集率(PRU値P2Y12反応単位)測定患者5429例のうち、
PRU値230以上(PRU236を境に予後に差があったとしたPopular試験(JAMA 2010; 303:
754-62)などの結果による)
の高い残存血小板反応性(Clopidogrel低反応性)患者2214例
結果:6ヶ月後の心血管死・非致死性MI・ステント血栓症の発症率は、
高用量群(600mg投与後150mg/日を6ヶ月間投与)2.3%、
標準用量群(75mg/日を6ヶ月間投与)2.3%
で両群間に有意差無し(HR:1.01,95%CI:0.58-1.76,P=0.97JAMA 2011 Mar 16; 305(11):
1097-105)。
※ 血小板凝集能を測定できるVerifyNowシステムは今後日本でも活用されると推測される。
・2011年4月、ACC2011(第60回米国心臓病学会)ではCYP2C19やPON-1に関してGRAVITAS試験のサブスタディの
GIFT(Genotype
Information and Functional Testing)試験の報告。
CYP2C19の*2変異アレル保有群は非保有群に比べて、Clopidogrel 75mg・150mg投与群のいずれも
PRU値230以上の血小板反応性患者の頻度が高かった
(150mg投与群で、非保有群を1.0として、heteroのOR:1.62,
95%CI:0.93-2.85、homoのOR:11.20,
95%CI:2.02-62.09)。
心血管死・MI・ステント血栓のイベント発生頻度はhetero変異型よりhomo変異型の方が高かった
(調整HR:非保有群を1.0として、hetero:1.07(95%CI:0.91-1.25)、homo:1.67
(95%CI:1.09-2.56))。
CYP2C19の遺伝子多型がClopidogrelの反応性に影響を与えたのに対し、PON-1については全く影響を与えなかったと報告
→PON-1の臨床意義は本試験では否定的。
・ 2011年4月段階では、最新知見を含めてもClopidogrelによる治療は臨床効果の個人差の原因について混沌とした状況で、
決定的な結論は現段階ではまだ出ていない。
(2)抗凝固療法の個別化適正投与
・ 血液凝固カスケード系は、血小板や血管内皮細胞の生体膜リン脂質が障害されると極微量の組織因子(TF)が血漿中に露出し、
血漿Ⅶa因子とTFが複合体(Ⅶa・TF)を形成することで始まる。
以後4段階の酵素前駆体の活性化反応(①Ⅸ因子→Ⅸa因子②Ⅹ因子→Ⅹa因子③プロトロンビン→トロンビン④フィブリノーゲン
→フィブリン)が次々と生じる。
・ 肝において還元型ビタミンKがエポキシド体(酸化体)に変換される際に、ビタミンK依存性の凝固因子が活性化される。
・ VKORC1(vitamin K epoxide reductase complex subunit 1:ビタミンK依存性エポキシド還元酵素複合体1)は、
ビタミンKエポキシドを元の還元型ビタミンKへとリサイクルする。
・Warfarin(WF)はVKORC1の阻害剤であり、カスケード系のビタミンK依存性血液凝固因子であるプロトロンビン、
Ⅹ因子、Ⅸ因子、Ⅶ因子を間接的に阻害することによって抗凝固作用を発揮。
・WFは効果過剰では出血が生じ、効果不十分では血栓が生じるため治療域が狭い。また投与量には10倍以上の個人差あり。
→ 導入期の投与量設定や維持期の効果安定が難しく安全で有効なコントロールのために個別化投与のアルゴリズムの確立は重要。
→CYP2C9とVKORC1の遺伝子多型がWFの投与量に関連が強いとされ注目。
CYP2C9の変異アレルの*2と*3を有する患者では酵素活性が低下し、WF血中濃度は高く維持投与量は低くなる。
VKORC1の5’上流領域-1639G>AのGアレルを有する患者ではmRNA転写量が増え、WF血中濃度が低く維持投与量は高くなる。
白人:CYP2C9*2と*3のアレル頻度が高い(17%)にもかかわらずWF維持投与量が依然として高いのは、VKORC1のGアレル頻度が62%
と高いためであると考えられている。
日本人のCYP2C9活性予測には*3(アレル頻度2%)のみを考慮すればよく、日本人のVKORC1のGアレル頻度は9%程度である。
・ 導入期における遺伝子多型の影響についてのCase report
:GenotypeはCYP2C9*1/*3、VKORC1-1639AAで82才と高齢
WF導入投与量1mgでINRは4.5と高くなり、その後維持量が定まるまでに約150日要した。
・WF投与量決定の背景因子:VKORC132%、CYP2C916%、年齢9%、体重6%、相互作用4%と報告(Hum Genet 2007
Mar;121(1):23-34)
ただし、日本人でのWFの適正投与の指標はまだない。
・WF服用患者(PT-INR=1.5~3.0で安定)を対象としたCP2C9*3とVKORC1-1639G>A多型が及ぼす影響について観察研究
:CYP2C9(*1/*1)とVKORC1(AA)変異アレルを有する患者の 体重あたりのWF維持投与量は、
(*1/*3+AA)より高く(*1/*1+GA)より低かった。
:Gアレル患者はAアレル患者よりWF導入期間が長かった。
:CYP2C9*3/*3患者ではWF維持投与量は平均値0.5mg/dayと極めて低く(P=0.009)
:VKORC1-1639G>A多型のGG患者ではWF維持投与量は平均値7.25mg/dayと高かった(P<0.001)。
:VKORC1やCYP2C9の遺伝子多型情報と年齢(Age)・体表面積(BSA)などWF至適投与量を予測するアルゴリズム
WF投与量(mg/day)=4.248×(VKORC1-1639GG)+1.067×(VKORC1-1639GA)-2.416×(CYP2C9*3/*3)
-0.864×(CYP2C9*1/*3)+1.308×(BSA)-0.025×(Age)+2.263
(Eur J Clin Pharmacol. 2009
Nov;65(11):1097-103. Epub 2009 Jul 7.)。
:本研究で得られたWF維持量とINRの相関についてのランダム調査の結果では、
INR1.5未満の患者は(*1/*1+AA)で16.8%
(*1/*3+AA)で14.3%
(*1/*1+GA)では38.1%
Gアレル患者ではWFが効いていない症例の割合が高かった。
・ 適応外使用でBucolomeとWFの併用は、BucolomeがCYP2C9を競合的に阻害することで(意図的にPMを作ってWFの抗凝固作用を増強)、
WFの投与量を抑えることを目的としているが、リスクには十分留意する必要があり避けるべき処方である。
・ 直接トロンビン阻害薬(Dabigatran)が2011年1月21日に「NVAF患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」で承認。
→脳卒中リスクを持つ非弁膜症性心房細動(NVAF:Non-Valvular
Atrial Fibrillation)患者18113例を対象としたRE-LY試験で、
NVAF患者においてDabigatran
220mg/日投与群の脳卒中および全身性塞栓症予防効果はWF群に対し非劣性を示し
(RR(Relative Risk:相対リスク):0.91,95%CI:0.74-1.11,P<0.001)、大出血は少なかった。
Dabigatran300mg/日群はWF群に比べて脳卒中および全身性塞栓症の抑制に優位性を示し(RR:0.66,95%CI:0.53-0.82, P<0.001)、
大出血発生率は同等であった(N Eng J Med 2009;
361:1139-51)。
・ 今後、新しい抗凝固薬として、経口抗Ⅹa薬(Edoxaban)が登場する予定。
まとめ
・
遺伝子多型情報の活用は至適投与量決定の期間短縮・副作用回避・科学的根拠に基づく薬物治療・コンプライアンス改善に有用。
・ PGxで得られた知見は医薬品の選択や投与量の決定に大きな影響を及ぼす可能性が高い。
・ 将来的には「集団の平均値に基づく確率の医療から個人遺伝子情報に基づく確信の医療へ」とパラダイムシフトするであろう。
ヾ(*'-'*)