第1回 Student CASP ワークショップ in kobe

先週末に、母校で第1回 Student CASP ワークショップ in kobe の開催のお手伝いをさせてもらいました。
論文を3本使用という・・少々ハードな企画。

長丁場でしたが、大成功でしたよ。
大学側も、学長を始め、大勢のスタッフが見学に来られて、非常に関心の高さが伺えました。

WS 前後の 福岡 先生のチューターミーティングが、何よりの経験でした。
朝はプログラムの進行方法についての質問が飛び交うなか、自然と皆が動きやすいように的確な回答が生まれていくんです。

反省会も然り。
さっとチューターから意見や問題点を汲み出されて、的確なコメントとアドバイスを下さる。
私個人としては、1日で1番発言させていただいた時間でした。
(学生WS だから・・学生が発言しやすいように控えめにしておかないとね。)

プログラムは以下。
● 午前
EBM 概論・・・福岡 先生
PICOの解説・・・高垣 先生
RALESのGW
(ランチ)
● 午後
RALES GW
フィードバックセッション
時系列研究のGW
全体セッション

RALES 試験の私たちの班の吟味は(こちら)
The effect of spironolactone on morbidity and mortality in patients with severe heart failure. Randomized Aldactone Evaluation Study Investigators.

Pitt B, Zannad F, Remme WJ, Cody R, Castaigne A, Perez A, Palensky J, Wittes J.
N Engl J Med. 1999 Sep 2;341(10):709-17. PMID: 10471456 

2本目は、
Rates of hyperkalemia after publication of the Randomized Aldactone Evaluation Study.
Juurlink DN, Mamdani MM, Lee DS, Kopp A, Austin PC, Laupacis A, Redelmeier DA.
N Engl J Med. 2004 Aug 5;351(6):543-51. PMID: 15295047

RALES により重症心不全のアウトカムの改善を有意にもたらすことを示したsupironolactone と、同様のevidence を持つACE阻害剤との併用が推奨されてきた。
ただし、両剤の併用は生命危機をもたらす高カリウム血症が生じている可能性がある
・・・ということで調べられた時系列調査

【方法】1994-2001年住民ベースの経時的分析でスピロノラクトン処方率と救急にて高K血症による入院率をRALES発表前後で施行。130万超の66歳以上のカナダ・オハイオ州での処方判明データと入院記録をリンクしてみた。

【結果】
心不全で入院したACE阻害剤治療患者のなかで、スピロノラクトン処方率は1994年34/1000、2001年後半149/1000(P<0.001)
高K血症による入院率は1994年2.4/1000→2001年11.0/1000(P<0.001)で、死亡率0.3/1000→2.0/1000と増加 (P<0.001)。

イベント予測数と比較するとACE阻害剤治療の心不全老人の間で2001年の間に560(95%CI 285 - 754) の付加的高K血症関連入院オンタリオにおけるACE治療されている心不全老人の間で73(95%CI 285 - 754) の付加的入院死亡があった。
RALESの公表は心不全による再入院率・全原因死亡率の有意な減少との関連はない

【結論】
RALESの出版はスピロノラクトン処方率を急激に増加させ、高K血症関連合併症・死亡率を増加させた。
厳格な検査モニタリングにより適切なスピロノラクトン使用がこの合併症を減らすだろう。

著者は、以上の結果が出た理由を以下のように考察しています。
・ spironolactone 投与中に、血清K値を厳格にモニターしていなかった可能性あり
・ 高K血症を来たしやすい併発疾患(DM 腎疾患)を見逃した可能性あり
・ spronolactone の使用量は適切か?
・ 高K血症をきたしやすい薬剤との併用
・ 食事由来のK の上昇
・ RALES の対象患者を拡大解釈したか?

とはいえ、この文献には、血清K値も、CCr もないので・・・推測の域を出ないが、
RALES の対象患者への厳格なモニタリングが、RALES で高K血症が少ない原因の一つである可能性は高そう。

3本目は、
Spironolactoneuse andrenaltoxicity:populationbasedlongitudinalanalysis.
Wei L, Struthers AD, Fahey T, Watson AD, Macdonald TM.
BMJ. 2010 May 18;340:c1768. doi: 10.1136/bmj.c1768.PMID: 20483947

ダンディー大学のMEMOという薬剤疫学データベースによる解析。
カナダの解析とは別に、心不全の有無にかかわらずスピロノラクトン使用が増えても、高カリウム血症入院は増加せず、外来高カリウム血症は実際には減少。注意深い観察にて、高カリウム血症増加せず・・・とのこと。

WS の時に、このDB の解析は、「RALES の前後でなくて、カナダの解析の前後ちゃうん!」という意見も出ていました。
もちろん、学生さんの意見~すばらしい♪

実は、WS 後に、大学の実務家が頭を抱えたらしい・・・。
EBM WS がすばらしいこと、そして、これが医療の実態だということは、すごく理解された。
でも、どこに薬学的視点を入れるのか・・・と悩まれたそう。
すごく大切なポイントに気付いていただいたように思います。
薬剤師がEBM を学んでしばらく、誰もが直面すること。
でも、私は、薬学的介入のポイント・・・このWS には、ものすごく感じたのでした。
高垣先生の文献 select・・・さすがです。

☆ 気付き ☆
・ spironolactone + ACE-I or ARB 投与中は、血清K値と腎機能と のモニターを試みよう。
     ・・・もちろん、うちのPt は、重症心不全はおられません。
     とはいえ、両剤の成分由来のADEs ですから、safety は拡大解釈すべき。
・ これも、読みたい!
    収縮期心不全・軽症症状(NYHA II)でのセララ投与追加の臨床的アウトカム研究
     死亡リスク、入院リスクを減少させた
・・・     そう。
     Eplerenone in Patients with Systolic Heart Failure and Mild Symptoms 
     F. Zannad and Others
    November 14, 2010 (10.1056/NEJMoa1009492) 
・そして、Eplerenone + ACE-I or ARB 投与中も、血清K値と腎機能と のモニターでしょう!
・ ちなみにうちのDrは・・・血清K値と腎機能モニター済みですので、経過を確認するだけです・・・^^;

ヾ(*'-'*)
   

 

 

 

最終更新:2010年12月09日 13:15