ポイント
・最新のリウマチ治療:長期の機能的寛解(日常生活動作障害なし)~その達成・維持のため~
・薬物療法の進歩→高い目標設定
1.診断(分類)基準の改訂:2009.10
ACR/EULAR
・平均罹病期間7.7年の患者さんから作成。
・現在、RAの診断法として世界で一般的に使われている診断基準。
・関節症状は6週間以上持続しなければRAと診断できない。→感染症の腫脹除去のため
診断未確定の炎症性関節炎をRAと診断するためには、
(1)少なくとも1カ所の関節で滑膜炎(腫脹:診察あるいはMRI/超音波)の存在
(2)関節炎の原因として他疾患では説明ができない。
*上記(1)(2)を満たし、RAに典型的な骨びらん(RAに典型的な罹患関節および関節内の
部位)を認めた場合、RAと診断
* 上記(1)(2)を満たすけれどもX線で骨びらんが見られない場合には、
以下4項目の最高点の合計が6点以上あれば、RAと診断
*腫脹または圧痛関節数
*血清反応:RF, CCP抗体
*罹患期間
*炎症反応
American College of
Rheumatology/European League Against Rheumatism (ACR/EULAR) consensus statement
on definition of remission in rheumatoid arthritis can be found inArthritis Rheum 2009 May
15;61(5):704
・「左右対称性」は、MCP関節、手関節以外では他の疾患との鑑別に有用性が認められず削除。
・「朝のこわばり」は、1h未満の持続が多く、他疾患との鑑別に有意差が出なかったため削除。実臨床では重要な炎症性関節炎の所見。
・リウマチ結節は早期RAの患者さんでは頻度が低いため、削除。
2.明確な治療ゴールの設定:臨床的寛解(少なくとも低疾患活動性)-早期に導入、かつ維持-
・治療目標と達成のための日常評価
治療目標=長期の機能的寛解(日常生活動作障害なし)
臨床的寛解(疾患活動性の制御)達成と維持
→炎症反応正常+臨床的滑膜炎なし・・・QOL低下なし(機能的寛解)
→Bio-free、Drug-free、治癒?・・・生命予後の改善?
・EULAR recommendations Jun. 2009
すべての患者において、できるだけ早期に「寛解」もしくは「低疾患活動性」を達成することを
目指した治療が必須。
治療目標(寛解or低疾患活動性)が達成されるまでは、頻繁に(1~3ヶ月ごとに)
厳密なモニタリングを行い、最適な治療を適応していくことが必要
※ 用語
米国リウマチ学会(ACR:American College of Rheumatology)で作成された関節リウマチの臨床症状の改善度の基準であり、20%改善率、50%改善率、70%改善率の3種類があります。各々の患者において、以下の7項目のうち,①疼痛関節数および②腫脹関節数の20%以上の改善を必須条件として、さらに③―⑦の5項目中3項目以上で20%以上の改善が認められた場合にACR 20%以上の改善ありと判定され、ACR 20%改善率はその改善例数の割合を示したものです。50%、70%についても同様に判定します。
①疼痛関節数
②腫脹関節数
③患者による疼痛の評価
④患者による全般評価
⑤医師による全般評価
⑥患者による日常生活動作の評価
*ACR20は薬剤が有効であること、ACR50は薬剤が著効を示すこと、ACR70は病気がほぼ寛解したことを示す指標
【DAS】:関節リウマチ患者の活動性と治療法の有効性を評価
DAS(disease activity score)はEULAR(European League Against Rheumatism;ヨーロッパリウマチ
連盟)が推奨する評価法で、疾患の活動性の絶対値が算出できる。DASは(1)Ritchie関節指数、
(2)腫脹関節、(3)患者による全般健康状態(VASによる)、(4)ESR(またはCRP)の4項目を測定し、
公式により算出する。従来のDASは煩雑であるため、日常の診療で用いやすいように評価する関節を
28関節に絞り込んだのがDAS28である。DAS28では圧痛は有無だけを評価する。EULARの改善基準は、このDASが基本となっている。治療前に対する治療後のDAS値の二つを組合わせて、治療効果をgood、moderate、no responseの3段階で評価している。
【Sharp法】:関節リウマチのX線画像により関節病変(骨びらん、関節裂隙狭小化)を評価
1971年にSharp et alにより提唱されたSharp法は、手および手首の骨びらんと関節裂隙狭小化のスコアから関節を評価する方法で、現在、臨床試験などにおいて頻用される。骨びらんの関節裂隙狭小化に関し、当初は27カ所を評価する方法であったが、その後、評価カ所などについて改訂を加えたものがいくつか発表されている。現在では、足も評価対象として加えたvan der Heidjeによるmodified Sharp法がもっともよく使われる。modified Sharp法では、片手の骨びらんスコアのmaximumは16カ所×5=80、片手の関節裂隙狭小化スコアのmaximumは15カ所×4=60となる。
【MHAQ】:質問項目数が少なく、患者自身が身体機能を自己査定する方式の実用的なQOLの評価方法。
MHAQの質問項目はADLに関する8項目のみであり、患者がそれぞれ項目の困難度を4段階で
自己査定する方式の簡便なQOL評価法である。
MHAQは,20質問項目からなるHAQ(Stanford Health Assessment
Questionnaire)を簡便にした方法であり、HAQとの相関は極めて高い(p<0.001)。
PincusらはADLの困難度と患者満足度が有意に相関したと報告している。
【RF値】:IgGのFc部分に対する自己抗体である。関節リウマチ患者の約80%において、
血清リウマトイド因子が陽性であるが、健康人でも認められることがある。
IgG-RFは活動性や関節外病変と相関する。
(コントロールされて低下、変化なしの両方の報告)
【抗CCP抗体】:(抗シトルリン化環状ペプチド抗体)
•RAで陽性になる。(感度80%台、特異度80~90%台)
•RFの陽性率の低い早期リウマチでも検出される。(感度50~70%、特異度80~90%)
•RF陽性になりやすい感染症や慢性肝疾患で陽性にならない。
•他のリウマチ性疾患では20%弱陽性。(RA overlapの可能性は?)
•関節予後に相関する。(陽性者は破壊が進行しやすい)
•活動性とは相関しない。(コントロールされて低下、変化なしの両方の報告)
【関節リウマチにおけるIL-6の役割】http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/imed3/lab_2/img/fig1.png
・IL- 6は、1986年に岸本らによって、その遺伝子がクローニング
・IL-1やTNFaと並んで、炎症性サイトカイン
・関節リウマチの病態には、様々なサイトカインやケモカインが関与
・RAの多くの症状はIL-6の作用により説明可能
・IL-6は抗体産生を誘導し、高γグロブリン血症やリウマチ因子を出現させる。
・肝細胞刺激因子として、急性炎症蛋白であるC反応性タンパク質(CRP)や血清アミロイドA(SAA)を誘導。
・SAAは、AAアミロイドの前駆タンパク質であり、二次性アミロイドーシス発症において、その過剰産生が問題となる。
・関節破壊やパンヌスの形成においても、IL-6は破骨細胞を活性化する。
・RAの関節外症状である全身倦怠感や食欲の低下、体重の減少、微熱なども血中IL-6の
上昇で説明が可能。
【SAAの転写調節機序をもとにしたトシリズマブの薬効解析】
・開発当初、サイトカインカスケードとしては、IL-6はTNFαの下流に位置すると
考えられ、その臨床効果に疑問が持たれていた。
・トシリズマブ投与により、速やかに血清レベルが正常化されるSAAの転写調節機序の
解析を元に、薬効機序の解析を行った結果、サイトカインの組み合わせ刺激による
SAAの相乗発現において、IL-6が必須。
・様々な解析により、IL-6シグナル下流の転写因子STAT3と、IL-1やTNFαシグナル下流の
NF-kB p65が複合体を形成。
・NF-kBシグナルは様々な刺激で活性化され、IL-1やTNFαの単独標的での阻害は不十分。
・トシリズマブは、特異的にSTAT3の活性化を抑制し、転写複合体の形成を阻害。
・トシリズマブはSTAT3とNF-kB p65のクロストーク阻害により薬効を示している
可能性あり。
【MMP-3】:MMP-3:マトリックスメタロプロテイナーゼ--3
•主として滑膜細胞や軟骨細胞で産生され、滑膜細胞や軟骨細胞、関節液に局在する。
種々の軟骨マトリックス成分に対して分解作用を示すと同時に他のMMPを活性化する
ため、注目されている。
•関節液および血清中のMMP-3値は、RA患者において有意な上昇を示し、
関節破壊の現場の状況を直接的に反映する指標といわれている。
・IL-6レベルと相関
※ 診断・治療に関する情報
最終更新:2012年11月22日 21:42