第44回糖尿病学の進歩その1です。
今回は、2型糖尿病の病態や外来インスリン治療に関する情報を中心に、職場の報告書向けに
まとめた内容です。
順天堂大学医学部内科学・代謝内分泌学講座准教授弘世 貴久先生
「SU薬2次無効:2型糖尿病の外来インスリン導入」
・ 2型糖尿病のSU薬2次無効時のインスリン外来導入のコツは、
①低血糖を起こしにくい開始・増量スケール
②インスリン導入後に血糖コントロルが悪化し難い方法
③生活にインスリン療法を合わせられる方法
④注射回数が少ない方法(早期導入が可能)
⑤コントロール不良の場合、現治療をベースに治療のアップグレードを行える方法、
であると述べられた。
・2009年にOHAでコントロール不良の患者に,
1日1回持続型インスリンインスリンデテミル)皮下注の追加と,
1日3回超速効型インスリン(インスリンアスパルト)の追加と,
1日2回二相性インスリン(二相性インスリンアスパルト30)を追加するのを比較した
4-T studyの結果、1日1回の持続型と1日3回の超速効型を加える方が
血糖コントロールが良好で,1日1回持続型の方が低血糖エピソードや
体重増加も少なかったとしている。
・ BOT:basal-supported oral therapyでは経口薬を併用して、Basal Insulin
(持効型溶解インスリン)を1日1回都合に合う時間に注射し、
空腹時血糖値が110mg/dl以下になるように増量する。
・ 次に空腹時血糖値が低下してもHbA1cが低下しない場合には、basal-plus法で
Bolus Insulin(超速効型)を1回から上乗せすし、basal-bolus法にstep upしていく。
・ まず、BOTで必要な基礎インスリン量を1‐2回で決めて、足りない追加インスリン量を
段階的に決めていくstep up法。
・ 目標血糖コントロールができればBolus Insulinの3回打ちでなくてもよい。
・Basal/Bolusを1:1に近づけると、低血糖が減少して、コントロールが改善するとの
報告あり。
「持続血糖モニター(CGM)を用いた糖尿病治療」
・ 日本人における耐糖能正常者、境界型、2型糖尿病患者の血糖変動を持続血糖
モニター(CGM Continuous Glucose Monitoring)で確認した結果を提示。
・ 近年、食後高血糖は動脈硬化のリスクファクター
・ 食後高血糖を診断する上で、日本人の耐糖能正常者、境界型、2型糖尿病患者の
血糖変動を正確に把握。
耐糖能正常な24名(医師・看護師)を対象にCGMを施行した結果、
4日間の平均血糖値の中央値は101.0mg/dL、SDの中央値は16.5mg/dL、
正常者の血糖値は約100mg/dLを中心とした極めて狭い範囲を推移し、
食後血糖上昇のピークは食事開始後約40~50分、血糖上昇幅は朝食後が約20mg/dL、
昼食ならびに夕食後が約40mg/dL前後とのことであった。
・ 耐糖能正常・境界型・食事療法のみの対象者では、食後の血糖上昇が目立つようになり、
食事開始から60分以内に最高値に達し、食後血糖の最高値は180mg/dL近辺まで
上昇するがすぐに低下する。
・2型糖尿病で教育入院の食事療法のみの対象者では、食後の血糖上昇は顕著で、
血糖の最高値は食事開始から約60分で到来し、200mg/dL台後半にまで達し、
その後も血糖値は約1~2時間200mg/dL以上の高値を示す。
・ 耐糖能正常、境界型、食事療法のみを行っている糖尿病対象では、耐糖能正常者では
IDFのガイドラインの目標値である食後2時間血糖値140mg/dlに全く抵触せず、
境界型では食後2時間経過すると血糖値は低下し、ほぼクリアし、
2型糖尿病では、朝食・昼食後・夕食後の2時間血糖値はすべて、
管理目標値に合わないとの報告であった。
・ 糖尿病患者における血糖変動パターンを耐糖能正常者のパターンにいかに近づけるかが、
糖尿病における血糖コントロールの究極の目標で、
その血糖変動を耐糖能正常者のような、食後高血糖がほぼ皆無で
低血糖もない状態にまで、正常化することが、糖尿病に起因する合併症を完全に
予防するために必要なのではないかとのことであった。
それにしても、なんごろくの糖尿病はすごい情報量です。
その2 以後でまとめようとしていたことも・・・書いてある^^;
ヾ(*'-'*)