次の教育講演は、warfarin 。
聴講後に調べた + α の内容を加えてありますので、ご容赦を。
「Warfarin 療法の実際」
座長:猿田享男先生(慶應義塾大学)
EL4-1 「Warfarin 療法の実際(基礎)」
講演:高橋晴美先生(明治薬科大学薬剤学)
EL4-2 「Warfarin 療法の実際(臨床)」
講演:上塚芳郎先生(東京女子医科大学医学部循環器内科)
● 基本的事項
- 血液凝固には,肝臓のビタミン K サイクルによる凝固因子の活性化が重要。
- WFはビタミンKサイクルの律速酵素 vitamin K epoxide reductase complex subunit 1(VKORC1)を阻害することにより抗凝固効果を発現。
- WFは光学異性体の等量混合物(ラセミ体)であり抗凝固作用をもつのは主にS-WF。
- S-WFの代謝には CYP2C9
- WF応答性個人差の原因として年齢,体重,併用薬,食事、VKORC1(NEJM 352:2285-2293, 2005)及びCYP2C9の遺伝子多型。
- CYP2C9 遺伝子多型は* 2 と* 3 :WFの維持投与量や感受性、導入期の過剰効果や維持量到達までの時間の延長に影響を及ぼすことが報告。
- 日本人では、CYP2C9 *2(Arg144Cys; C430T)アレルを有する被験者の報告はない。
- 日本人の CYP2C9の活性予測には* 3(Ile359Leu; A1075C)を考慮。
- vitamin K epoxide reductase complex subunit 1(VKORC 1)の遺伝子多型3673(-1639)G>Aが,WF維持投与量に影響を与える。
- CYP2C9 3/3の症例ではWF維持投与量が0.5mg/dayと極めて低い
- VKORC1 3673(-1639)G>A多型のGアレルを有する症例ではWF維持投与量が高い。
- CYP2C9とVKORC1で、WA維持投与量の個体間変動の約60%まで説明可能。
- ワーファリン使用量の決定因子の効果の大きい順に①VKORC1遺伝子多型,②体表面積,③CYP2C9*3遺伝子多型,④年齢,⑤CYP2C9*2遺伝子多型
● 高橋先生 の研究の要旨
「 ワルファリンのpharmacogenomics 」
アジア人(中国人108名)を対象として行われたワルファリン(WF)の前向きgenotype試験(CYP2C9とVKORC1遺伝子型をWF導入前に解析し、導入量を設定)により得られた患者試料についてS-ワルファリン血中濃度、Normal Prothrombin(NPT)活性を測定し、over-anticoagulation(INR≧4)を起こすメカニズムについて検討した。その結果、INR≧4の寄与因子としてS-WF血中濃度(CYP2C9*3変異と体重が影響)、IC50(VKORC1遺伝子型が影響)とWF投与前のNPT活性(NPT0:年齢、体重が影響)の関与が明らかとなった。また、VKORC1変異はNPT0ではなくIC50に影響し、野生型患者のWF感受性低下を起こしていた。
- FDAは米国のWFの添付文書にWF投与量の影響因子として追加
- WF治療におけるgenotyping の有用性は、WF維持量という報告あり。
- WF治療の導入期のINR コントロールという観点からは、INR測定のみの治療に比較して優位性がみいだせなかった。
- 抗凝固効果が安定するまでの時間、出血リスクの予測性、cost-benefit に関して、両遺伝子診断の臨床的有用性は?
- WF導入アルゴリズムの確立が望まれている。
上塚先生が教えてくださった WF の維持量の調整を手伝ってくれるお助けサイト。
washington 大学や NIH が運営するweb site。
身長・体重・治療開始前INRや内服スタチン名などの情報を入力すると,WF使用量を推定.
VKORC1やCYP2C9の遺伝子型を入力する欄がある。
アメリカではすでにcommercial baseで調べてくれるサービスがあるらしい。
こんな情報も入手 ~♪
ヾ(*'-'*)
最終更新:2009年12月10日 22:07