遅ればせながら、Beers Criteria 日本版について今井先生と渡辺先生のお話を聴いてきました。
演題・講師:
「高齢者に避けて欲しい薬のリスト-Beers Criteria 日本版 を
薬剤師が現場でどう活用するか」(仮題)
国立保健医療科学院 疫学部 部長 今井博久先生
「高齢者施設での使用経験」(仮題)
医療法人社団吉美会吉備高原ルミエール病院 薬剤科 主任 渡邉智康先生
今井先生のお話は、
こちらにも、
Beers Criteria 日本版の
リストの一部もあります。
アグレッシブで引き込まれるお話。
薬剤師の受身の疑義紹介に厳しいお言葉も!
今井先生が示されておられるとおり、このリストは専門家による“コンセンサス”であり、“エビデンス”ではなく、これから現場の専門家によってさらなる検討が必要であったそうです。
にもかかわらず、メディアによって一般の目にさらされることになり、かえって患者に不安をあおるという結果になったそうです。
(日病薬誌の2009年1月号にも、慶応大学薬学部社会薬学の福島紀子教授による総説が掲載)
渡辺先生のお話は、
こちらにも軽く。
高齢者の薬の問題は、医療者なら今までも、皆何か感じることがあったのではと思います。
私は、昨年亡くなった祖母が数年来飲んでいた薬にずっと不満があった・・・でも、老々介護の上、孫の言葉は親世代の都合とは合わず・・・、未だに心にもやもやとしたものが残っています。
とはいえ、リストに上げられた医薬品をそのまま信じてよいのか???
少し調べてみました。
○ 今井博久,Mark H. Beers,Donna M. Ficks,庭田聖子,大滝康一.高齢患者における不適切な薬剤処方の基準─ Beers Criteria の日本版の開発.日本医師会雑誌.2008;137(1):84-91.
(
http://d-inf.org/t/nichii_137(1)_84-91.pdf )
○ Fick DM, Cooper JW, Wade WE, Waller JL, Maclean JR, Beers MH. Updating the Beers criteria for potentially inappropriate medication use in older adults:results of a US consensus panel of experts.
Arch Intern Med. 2003;163(22):2716-24.
斉尾武郎.Beers Criteria日本版への疑義:未熟なコンセンサスガイドライン. 臨床評価 2008; 36(2)467-72.
(
http://homepage3.nifty.com/cont/36_2/p467-472.pdf )
私も、
リストを講演の中でも提示された時に、長期作用型ベンゾジアゼピン系薬より短期作用型ベンゾジアゼピン系薬のほうが安全なのだろうか?と疑問を感じました。
それは戸田Dr の指摘の通り、依存性の問題はよいのかという点と、日本の住宅の段差の点。
バリアフリーが転倒骨折を防ぐというエビデンスがあるのか?
とある介護施設から、逆に老化を早めるという情報提供もあったように記憶していますl。
フロアからの質問を伺っていると、Beers Criteria 日本版を渡邉先生のように、疑義紹介に使用している施設がすでにあるようでした。
safety に関する情報は、疑わしいものは、とりあえずなるだけ避ける努力をするのが医療の原則。
でも、薬剤師視点からも、Beers Criteria 日本版を評価をして、妥当ということであれば、現場に導入つまり疑義紹介してもよいかと思います。
まぁ年度内に、詳しい書籍が医学書院から出るようですので、クリティカルに読んで、私なりの薬剤師視点を加えて、自施設に導入すべきかを評価したいと思います。
とはいえ、65歳以上の患者さんは、うちの診療所には、ほとんどいらっしゃらないんですけどね。
退職される方に、不要な薬をやめるように促して、将来に備えていただこうかしら~と思案しております。
不要な薬・・・なんだかこの視点から考えると、高齢者云々は関係なかったりしてね~^^;
その上、ちゃんと診療して処方されて、ちゃんと調剤(疑義紹介済み)された薬を飲めば、予測できない副作用は別として、safety には最大限配慮されているはず???
これができていない事実があるから、Beers CriteriaもBeers Criteria 日本版も発表されたのでしょう。
この事実は、薬剤師として真摯に受け止めたいと思います。
ヾ(*'-'*)
最終更新:2009年11月02日 09:53