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鋼の雫-Advance

A.M.08:03分
-軍研究施設・ヘリポート-

-はは……思った通りだ……。あの451……いつか殺す。
やはり、だ。俺が予想した通りの事が、起きた。
だから、ヘリポートには来ない方が良いと思ったんだ。
ハンクを俺の足元にもたれ掛けさせ、俺は両手を上げながら打開策を考えた。

-ドサッドサッ!
「キャッ!」
「あいたっ!」

可愛らしいけど憎たらしい、そして忌々しい天使もどうやらご到着したみたいだ。
「よう、遅かったな」
「遅いもクソもないわよ!たかだか2秒3秒の差じゃない!」
「俺に至っては、永遠に感じたがな-」
「永遠んぅ?-って、あんた両手上げて何してるのよ」
「お前は周りの状況が理解できないのか?」
「-周り…?」

-ジャキ、ジャキ、ジャキッ!-カシャン!
あたし達の周りを囲う大量のキャスト達-。みなライフルを手に構えその銃口をこちらに向けている。
「……そう言う事ね」
「そう言う事だ。誰かさんの軽率な行動のせいでな。否、初めからこう言う作戦だったのか?」
「……べ、別にあたしはそんなつもりじゃ!」
「ふん-。口先だけなら何とでも言える」
「………、ごめん」
「お、お二人とも!口論している場合じゃ無いでしょうに!」
「…そうだな…、さて、どうしたものか…」

-と、キャストを掻き分け年老いた老人が俺達の方へやってきた。
後、側近っぽいキャスト。

「-報告に由れば、侵入者は2人、という事になるが…この2人がそうなのか?」
「その通りで御座います。栗色の髪をしたニューマンと、GH410。間違いありません」
「そうか、そうか-………。良くやったぞ、ブリザードクイーン」

老人は歪んだ顔を更にニヤリと笑い歪ませ、451の方を見た。
-何だと?

「なっ-!?クソジジィ!何言ってんだ!?」
「何?何とは、何だ?私とお前で侵入者を捕らえる為に張った罠の成功を祈っているんじゃないか」
「罠?クソジジィ-……。あたしはあんたと手を切ったって……-?」
あたしはそこまで言うと、背中に冷たい視線を感じた。
ゆっくりと後ろに振り向く-。

「-ふん……やはりそう言う事か…道理で都合が良すぎるわけだ」
「-451さん………」
あたしの事を、冷たい目で睨む2人……。
やられた……完全にクソジジィにはめられた…。

「だ、騙されないでよ!馬鹿ニュマ男も、410も!あたしはそんなつもりじゃ………!」
-あたしは必死に弁解する。

「もう黙れ。この状態でお前を信じる事には無理がある」
「………ごめんなさい…」
最早あたしと目を合わそうともしない2人。

「……そんな……」
力なくその場にへたれ込む。
暗闇の中でやっと見つけた小さな光が…遠のいて行く…。

「451を確保しろ」
「はっ-」

-あたしの事を拘束するキャスト。
-なんか、もうどうでもいいや…。

「ふん-兵器の分際で、叶いもしない夢を持つからこんな事になるのだ」
「仰るとおりで御座います」

-ピキッ。
老人とキャストの一言に、俺は怒りを感じた。

「-所で……、貴様達を処分する前に1つ2つ質問があるのだが」
「-何だ」
「お前、名前は」
「-言えば助けてくれるのか?」
「無駄な口を叩くな-。今すぐ殺しても私は一向に構わないのだが」
「チッ-。短気なジジィだ」
「名は?」
「……清影 牙」

-ブワッ!
強風が俺達を強く打つ。

「ふ……ふふふふふふ……!」
「如何なさいました?」
「……下品な声で笑うんじゃ無い……。気分が悪くなる」
老人に聞こえないように俺は呟く。

「ふはははははは!やはりか!やはり”貴様”か!キャストの報告を受けた時は”まさか”と思ったよ!」
「………ふん」
老人から顔を逸らす俺-。ステラが心配そうに俺の事を覗き上げていた。
「アギト……さん?」
「黙ってろ、ステラ」
「………はい」

「一体、如何なさったのですか?」
側近と思われるキャストが、笑い続ける老人に問う。
「ははは……貴様、知らないのか?栗色髪のニューマン、名は清影牙-別名”盲目の鮫”で有名なあの、マヌケを!」
老人の言葉に、驚愕の表情を隠せないキャスト。
「な……なんと…。それは真ですか?このニューマンがあの”盲目の鮫”とは……」

「………酷い言われようだな」
俺はフゥ、とため息を吐き今まで上げていた両手を下げた。
もう上げてなくても良さそうだ。-相変わらずキャスト達は微動だもせず俺達に狙いを定めているが。
「あ、アギトさん……?盲目の鮫……って?」
ステラが震える声で俺に質問をしてくる。
「………ステラ、世の中には知らない方がいい事もある…」
「そ、そうですか……」

「なんだ、そこの410、貴様、盲目の鮫を知らんのか?」
-嫌なジジィだ。何でそういう事は聞こえるんだ?

「……………」
「今!私は非常に気分が良い!冥土の土産に教えてやろう-」

「黙れ」
俺は即座にナノトランサーからウォンドを取り出し、老人に向かってウォンドを構えた。

-ガチャガチャガチャッ!俺の周りに数体のキャスト。完全な零距離。
「お前がテクニックを放つのと、このキャスト達が一斉にライフルの引き金を引くの-どちらが早い?」
「-ふん…。”冥土の土産”ってのは大抵、負ける事になる悪役が言う台詞だぞ?」
「誰がどう見ても、私の勝ちは揺らがないと思うがな」
「-チッ」
俺は静かにウォンドをしまう。
「-さて、話がずれたな………410、貴様の隣に居るそのニューマンはな-世界的に有名なハッカーさ」

-…………………ォ。

「ハ、ハッカー?」
「そうとも-……”愚か過ぎるハッカー”として、有名なのだ」
「愚か…過ぎて…?」

-………ォ……ォォォォ。

-ニヤリ。

「そうとも-。”見てはいけない”とされている、政府の禁断のファイルに手を出し、その強烈な内容に耐え切れず
自分の両目を自分で抉り取り-、病院にて治療後、逮捕された世界一”愚か過ぎて”有名なハッカーさ!」
「自分の目を……抉る……?-、嘘!アギトさんにはちゃんと目が-」
「良いよ、ステラ。無茶するな」
必死に弁解しようとするステラを俺はなだめる。

「如何考えても義眼だろうに-。ククッ……しかし私は運が良い……。こんな所で鮫に逢えるとはな……。
無期懲役を言い渡され、刑務所から脱獄したと聞いたが……。はは…全く私は運が良い」
「-フン」
「どうだ、鮫よ。1つ取引をしないか」
「-……取引だと?」

「そうだ-。貴様、私の配下に加われ。-世間では”愚か”と呼ばれている貴様だが、私はそうは思わん。
貴様が私の配下に加われば、命だけは助けてやる」

-………ォォォォォオォッ!

老人が放った言葉を聞いた俺は、ニィ、と顔をにやけさせ答えた。
「-ふん…言う事が益々悪役染みて来たな…。残念だが俺は此処で死ぬ気もないし、貴様の配下に加わる気も無い」
「強がるだけ無駄だ-。貴様にこの包囲は突破出来まい」

ハァ、と俺は1つため息を吐く-。

「正直、お前みたいな無能の上司を持つキャストが可哀相だ。敢えて教えてやるが、ご老体…何か聞こえないか?」
「何だ?負け惜しみなら-」

-ブオオオオオオオォォォォッ!

「-な…………ァッ!?」
「-えっ!?」

「ふふ、貴様の無駄な長話に付き合った甲斐が在ったな-。余計な事まで喋られてしまったが」
「ばぁッ……馬鹿ァナァッ!?…-いつの間にッ!?」

-そう、このクソジジィの目に入ったのは……昇る太陽の光を受けて青く輝くG/フライヤー。
-ホバリングするG/フライヤーを目に、このクソジジィは何を思ったか…。

「伏せろ」

無機質な声がフライヤーのスピーカーから流れる。
ハンクをステラに任した俺は、ラインシールドの出力を最大まで上げ、走り出す!
フライヤーに気を取られていたキャスト達は451を拘束する事を忘れて忘れていたのだッ!
-だがキャスト同様に、451もフライヤーに気を取られていた。
「-えっ…?」

俺は451を両手で抱き抱えると、満身創痍の体に鞭を打って盛大に”わざと”ブッ転ぶ!
「ッ…この!心配かけさせるんじゃねぇよ!脳味噌筋肉女!」

-その刹那。

「-うッ.....撃てェ!!フライヤーを撃墜するんだァァッァァァァッ!」
老人の狂ったような声がキャスト達に命令を下す。
-無駄だ、間抜けめ。化けて出るなよ。


-ガガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガッガガガガガッ!
フライヤーに搭載されたフォトンバルカンがキャスト達に向かって爆炎を吹くッ!
そして大量に吐き出されたフォトンの弾丸は、目前にいるキャスト達を次々と屠って行く!

-その時間僅か数十秒。

バルカンの音が止んだのを確認した俺はゆっくりと頭を上げる-。
大量に横たわるキャストの死体-。
その中には勿論-さっきのクソジジィの死体もあった。
「ちょっと、やり過ぎな気もするがな……」

俺がその地獄絵図に目を奪われていると横から、451が震える声で質問をしてきた。

「-あ、あんた……何であたしを助けたのよ………」
「-………助けちゃ悪いか?」
「-そ、そう言う事じゃなくて……」

「急げ-」
再び無機質な声が、俺の耳に届く。

451と会話をしていて気づかなかったが-いつの間にか目の前にはフライヤーが着陸していた。
俺達の前に居る一人のキャストの女性。純白のボディ・純白のロングヘアー。雪の用に白い肌-。
俺はあまりの美しさに、そのキャストにしばらく見惚れてしまった。

「何を呆けている-、仕損じたキャストがまだ何体か居る。面倒な事が起きる前に脱出するぞ」
「わ、解った…。すまん-」
「何……、礼を言うのは私の方だ-。何せ、英雄の手助けが出来るのだからな」
「英…雄?」
「とにかく話は後だ-早くフライヤーに乗れ!死神とステラはもう乗ったぞ!」
「わ、解った…!-、451、行くぞ!」
「え…え?な-キャッ!」
「五月蝿い!詳しい話は後だ!」

うろたえる451をお姫様抱っこし、俺はフライヤーに向けて走り始めた。

-ゴオオオオオオオオオオオォッ!
フライヤーのバーニアが爆熱を吐き出しながら唸るッ!

-ドシュゥゥゥゥゥッ!
一瞬にしてさっきまで俺達が居たヘリポートが小さくなって行く-。
俺達は何とか…、ハンクを助ける事に成功したんだ-。

-…余計なおまけ、まで連れて来ちまったけどな。

A.M.08:03分
-フライヤー内部-

「-、まさか本当にお前が来てくれるとは思ってもいなかった」
俺はフライヤーの補助席に座りながら、隣の女キャストに話しかけた。
後部座席ではハンクとステラ、451が3人揃って気持ちよく睡眠中だ。

「君から私にメールを送ってきておいて、その反応は意外だな」
フライヤーを操縦しながら、女キャストはそう答える。
キャスト専用のヘルメットから聞こえてくる無機質な声。

「それはそうだが……」
「私じゃ不満か?」
「………不満というより、不安だな」
「不安?」

「政府からでさえ恐れられているお前を、まるで扱き使っているみたいだ……クラウド9。
お前が”盲目の鮫”と言う愚かなハッカーの頼み事を見返りも無しに請けてくれると言う事も、少々都合が良すぎる」

「-……成る程。そう言う事か」
「それに、さっきの言葉だ。-お前は俺の事を英雄と呼んだ」

-後方から鳴り響くバーニアの音。

「………私など、君と比べれば月とスッポンさ」
「…何?」
「否…、気にしないでくれ。さっきのは偶々、口が滑っただけだ」
「おいおい、話をはぐらかさないでくれよ」
「君は一々細かい事に拘るんだな」
「そう言う性格だ。仕方ない」
「全く………、ならばこう言えば、満足か?」
「-?」

「-、誰かが誰かを助ける事に一々理由が必要か?」

「-チッ。巧く逃げたな……」
「ふふ-、それは褒めの言葉として受け取って置こう。-それより」
「?」
「君はワンオブサウザンドも一緒に連れて来た様だが……どうするつもりだ?」


「あぁ……、その事か。-あいつは、ウサギなんだ。だから、誰かが傍に居てやらないと駄目なんだ」
俺はふざけた様に顔をにやつかせ、答えた。


「ウサギ……?君の言おうとしている事が理解出来ないのだが-……」
「これは驚いた-。お前にも解らない事は在るのか」
「私が得意とする事は情報の操作及び、入手だ。残念だが生命体についてはあまり詳しくない」
「そうか………、なら、家に帰ったらウサギについて調べてみるんだな」
「善処しよう」
気のせいか-、俺はメットの下のクラウド9の顔が、微かに微笑んだような気がした。

「しかし-……、今回は本当に疲れた……」
「君も寝て構わないぞ。君の家に到着したら起こそう」
「…、ちょっとまて、フライヤーでニューデイズまで行く気か?」
「流石にそれは在り得ない。安心しろ、コネは在る」
「………目が覚めたら、刑務所の中、と言う事は無いな?」
「君は私をそう言う目で見ているのか。少し悲しいな」
「……、気分を害する為に言ったわけじゃ無い。-今日だけで2回騙されているからな…、許してくれ」
「ならば私を信じてくれ」
「…………、済まない。クラウド9」
「問題無い」

俺はそう言うと静かに瞼を閉じた-。

「全く………どうしたら君を裏切る事など出来ようか…。
君は世間ではマヌケだの盲目だの言われているが、私達ハッカーの中では”英雄”に近い存在なんだ。-誰もが憧れる様な、な。
そんな英雄を裏切るような事は、私には出来ないよ…」

私はコンソールをいじり、通信回線を開く。

「-こちらヴァルヴァドゥンク。…クラウド9か?」
「あぁ-、”盲目の鮫”を救出した。ニューデイズへ向かう。パルム、ラフロン高原の指定地で待ち合わせだ」
「-…了解した」

-ブツッ。
連絡を終えた私は通信回路を閉じると、操縦に集中した。

-今日は、朝日が綺麗だ。きっと夜は星がもっと綺麗だろう。





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