>>317(箱)氏 その2
目次
#14
450「只今帰りまし…」
ショップルームからルームグッズの置いてある部屋への扉を開けたまま450が固まった。
部屋を出たときには間違いなく何も無かった。
しかし今450の目の前には、紛れもなく不気味な石の像が12個聳え立っている。
そしてその中心には体育座りをして和んでいる……箱。
箱「はぁ……落ち着くなあ……」
450「………………………………………………とうっ」
450がジャンプする。そして空中でくるっと回転すると
450「450………………きーーーーーっく!!」
凄まじい飛び蹴りが箱に直撃した。
べこき
箱「おめがあしっどっ!?」
錐揉み回転をしながらぶっ飛ぶ箱。
どんがらがっしゃーんと壁にぶつかる。
そして幾つかのバランスを崩した石の像が、とどめとばかりに箱に向かって倒れる。
箱「ぎゃああああああああああああああああ」
マイルームは、地獄であった。
箱「な、なにするんだよ450!! いきなりTODOME-FINALはないだろっ!!」
石像の山から這い出した箱が抗議する。
450「そ、それは私の台詞ですっ!!なんですかこの不気味な像の森はっ!!また無駄遣いですかっ!!」
箱「えー、和まない? ブルースさんのミッション周回してやっと12こ集めたんだよ」
450「和みませんっ!」
箱「じゃあ、回転させ……」
450「させません!!」
箱「じゃあ、このてっぺんにオキクド……」
450「オキクドールの代わりに私が呪いますよっ!」
箱「じゃ、じゃあどうすればいいのさ!」
450「撤去してください」
箱「………………………………やだ」
450「してください」
箱「やだっ!」
珍しく450に反抗する箱。苦労の結晶のこの像の撤去にいまいち従えないようだ。
450「……………………むーっ!!」
箱「……………………むむむーーーっ!!」
顔を突き合わせてにらみ合う二人。律儀にも箱は、しゃがんで450の顔の高さに合わせている。
450「……じゃあっ、私が勝手に片付けますっ!!」
そういってナノトランサーに像を入れる450。
箱「さ、させるかあ!」
450を止める箱。
450「きゃっ!? もうっ、邪魔しないでくださいっ!」
ぽかぽかと箱を叩く450。
わーわーきゃーきゃどたんばたんと床の上で乱闘する二人。
ふと気付くと、箱が450を押し倒したような格好になっていた。
箱「う……」
450「あ……」
なんとなく目が合う。
時間が止まったインテリアルーム。像の呪い…ではないはずだ。
ふと、450が頭を横にして目を逸らす。
箱「………………………」
箱の手が、450に伸び…
ピピピ ピピピ ピピピ
450「びくっ!?」
箱「あ、ビジフォンがなってる。でないと」
超棒読みでそう言うと、かくんかくんした動きでベッドルームに行く箱。
450「………………」
さっきまでの状況の余韻でどんどん顔が赤くなる450。
それを振り払うためにそそくさと像をナノトランサーに仕舞い始める。
プシュー
扉が開く。
箱「あのね、ルウ教官が用事があるって言うから出かけてくるね」
450「……はい、行ってらっしゃいませ」
プシュー
箱が出て行った扉を見ながら、ふぅーっと大きく息を吐き出し、その場にへたり込む450。
そして
450「あ、あの人は……………っ!」
ルウへの怒りの炎を燃やす450の後ろには、
オーッホッホッホと無表情で笑うルウのイメージが炎と共に浮かんでいた。
トップへ戻る
箱「あのさ、これお願いしたいんだけど」
450「ギイガライン1つに…………アゲハセンバ5つ?」
450「ご主人様、防具はGRMのばかりじゃありませんでした?」
箱「え? あ、うん。そうなんだけど、知り合いが欲しいって」
450「…………どういう方なんですか? …………私には関係ないですけど」
箱「えっと、ニューマンのウォーテクターの女の子。眼鏡がよく似合うんだよね~」
箱「でね、今度HIVEに一緒に行こうかとか言われちゃって、それで防具が欲しいんだって。えへへ~」
450「……………………………………………………………………わ か り ま し た」
箱「うん、じゃあお願いね」
~一晩明けて
箱「ねえねえ450、昨日の合成はどうなった?」
450「はい。まずはモノメイトです。申し訳ありません」
箱「うっ… で、でもあと4つもあるから……」
450「次もモノメイトです。申し訳ありません」
箱「[´・ω・`] ま、まだ3つもあるさっ!」
450「またもモノメイトです。申し訳ありません」
箱「確率確率。まだ2つもあるさあ」
450「モノメイトです申し訳ありません」
箱「……………………………………[´;ω;`]ウッ」
450「最後もモノメイトです。ついでにギイガラインもモノメイトです」
箱「_| ̄|□」
箱「しくしく」
とぼとぼとベッドに潜り込む箱
450(……………………プイッ)
ちょっと怒気を孕んだ表情でそっぽを向く450。
ふと、450は考える。
450(……………………今度、眼鏡かけてみようかなあ……)
ご主人様のレベル L70(キャップ上限)
パシリの生産レベル L100
その差30
こういうことじゃね!?
[ ´・ω・`]<ボク、L35ダヨ
( ゚-゚)<ジャア 私トノレベル差ハ 65デスネ
[ ´;ω;`]<…
トップへ戻る
#15
店員「まあ!お似合いですよ~」
450「そ、そうですか?」
450が試着室から出て、店員と話をしている。
俗に言うチャイナ服というのだろうか、紅く、
袖は半袖、裾が膝の遥か上にあり、横にはスリットがある。
450「じゃあ、これもお願いします」
店員「はい~ ありがとうございます」
450は再び試着室に消える。
箱「あ、あの、因みにこれ、お幾らなんでしょう…?」
戦々恐々と箱が尋ねる。
店員「はい~、3万5千メセタになりまぁす」
箱「え、ええええええええええっ!!」
愕然とする箱。さんまんごせんめせたといえば、ブルースさんのミッションを
5回はクリアしないと手に入らない。
箱「うう………僕のお小遣いが…」
450「どうされました?」
何時もの表情の450が、何時もの服装で試着室から出てきた。
箱「これ、さんまんごせんめせたなんだって…」
450「そうですか」
箱「うん」
450「何かご不満でも?」
僅かに微笑みながら、意地悪そうに箱を見る。
箱「……ありません」
そして、箱の持つ箱がまた一つ増えた。
今回二人は、前回の仕事の後の約束どおり、ショッピングモールに買い物に来ていた。
本来ならば穏便にすむ、所謂「デート」的なものであるはずだったのだが、
箱の軽率な行動が引き金となり、まさしく懐の地獄絵図と化していたのだ。
自業自得だね… うん。
450「さ、次はお食事にまいりましょう」
箱「……ど、どこに?」
450「えぇと、ここがいいです」
と、ナノトランサーから何か紙を出す450。
箱「ん? ……え、これってもしかして」
450「はい、先日開店したニューデイズ料理のお店です」
箱「こ、ここって結構高いとか聞いたんだけど…」
450「ええ。知ってますよ」
当然と言わんばかりの450。
箱「……ここに、行くの?」
恐る恐る尋ねる箱。
450「はい」
箱「うぅ… 本気?」
450「お嫌ですか?」
箱「できることなら…」
450「はぁ…… 私もあの物体にキスを迫られたときは凄く嫌だったんですよね…」
頬に手を当て、ちょっと斜めに上目遣いで箱を見ながら、溜息混じりに言う。
箱「うぅ… わかりました…」
箱が折れた。
450「ふふ、よろしい。 さ、行きましょう」
荷物で前の見づらい箱を先導しながら、何時もより少し楽しそうな表情で歩く450。
暫らくして、目的の店に到着した二人。窓際の、宇宙が良く見える席につく。
箱「…あ、あわわわわわわわわ」
渡されたメニューを見て、箱が戦慄いた。
450「? なにを震えになっておられるのですか?」
箱「ぜ、ぜぜぜぜぜぜろが2つくらい多い…」
450「そうですね」
箱「げふぁ…」
あまりの数値にテーブルに突っ伏す箱。
450「も、もうっ、恥ずかしいことしないでくださいご主人様…っ!」
小声で注意する450。と、ウエイターがやってきた。
ウエイター「ご注文はお決まりでしょうか?」
450「はい。私はこの、シェフのお任せコースを」
箱「……僕は水でげふっ」
プシュウウウウウ 箱の脳天にハウジロドウが生えた。
450「お任せコース2つで」
何事も無かったように注文する450。ウェイターがちょっと焦っている。
ウエイター「は、はい。かかかかしこまりました」
ウエイターが去ると、再び450が小声で箱に話し掛けた。
450「もう、ご主人様、もう少しムードというものを大切にされてはどうですか…」
少し怒りながら言う。
箱「だ、だってさぁ… 僕は、水で…いいのに…」
450「だーめーでーす! ご主人様と一緒がいいんです…」
後半、ちょっと照れる。
箱「じゃあ、二人でみz」
めごす
珍妙な音に回りの客が一斉に発生源を見ると、頭にハウジロドウを二本刺した蒼い箱が死んでいた。
450(もう……馬鹿……)
軽やかに食事を進める450とは裏腹に、箱のほうはおっかなびっくりだ。
食事が終わり、店を出た頃には、もう箱はミッションを5つ6つこなしたほど疲れ果てていた。
そして地獄はまだつづく
しばらくして、二人は再びショッピングモールの通りにやってきた。
くたくたの箱がベンチに座り、その前に立ちメモ帳を見ている450。
450「さて、次は映画館に…」
次の予定を決める450に、とうとう箱が不満を漏らした。
箱「ええ~~~~ まだ行くの? もう帰ろうよ~」
しかしあっさりと却下される。
450「だ・め・で・す」
右手の人差し指を立て、左手を腰に当て、一文字一文字釘を刺すように言う。
450「今日は一日私にお付き合いしてくださる約束じゃないですか。だから最後までお付き合いしていただきます」
箱「はう… でももう10万メセタくらい使ってるよ… 僕のお小遣い、何ヶ月貰えなくなるんだよ~」
げんなりする箱。
450「そうですね、半年は貰えないですね」
箱「[´;ω;`]」
涙目でゴメンナサイと訴える箱に、やれやれという表情の450。
450「はい、これを」
そう言うと、ナノトランサーから小さな袋を取り出した。
箱「なに?これ?」
450「これは以前ブルース様の協力ミッションで初めてBレベルでSランクがとれたということで私にくださったメセタです。お忘れですか?」
箱「……ああ、そういえば」
450「これは高属性メイガが出来た時、ご主人様がその時の稼ぎを調子に乗って私に全額あげるといった時のメセタです」
箱「……そんなこともあったねえ」
450「これは初めてメイガが売れたとき、売上を二人で分けようと仰ったときの分、これは…」
数々の思い出と共に、メセタの入った袋を取り出す450。
450「これで補填します。一ヶ月くらいは反省期間ということにします」
箱がほっと胸を撫で下ろし、そしてふと聞く。
箱「…ねえ、どうしてこんなに残ってたの?」
450「え?」
突然の問に返答に詰る450。
450「べ、別に… 特に意味は… 私はそれほどお金使いませんし…」
箱「あ、そうなんだ」
あっけらかんと450の話を聞く箱。
更に450の言葉は続いた。かろうじて聞こえるくらいの小さな声で。
450「そのまま貯めてても良かったんですけど、一度お洒落とかしてみたかったし…」
450「どうせ使うなら、何か残るものにしたかったですし…」
箱「……なるほど」
本当に理解しているのかどうか怪しいが、箱が頷く。
450(だから、今回は、いい機会だったんです……)
ぽふっと箱の横に座る450。
450「でも、また明日からは無駄遣いはしませんから」
ちょっと笑顔。
箱「…でもさ」
450「はい?」
箱「時には、『無駄』なことも必要だと思うんだ」
450「え?」
箱の言葉に不思議そうに箱を見る450。
箱「だって、450っていつもなんか張り詰めてるような気がしてさ。時々は緩めたほうがいいと思うんだ」
糞真面目にそんなことを言う箱に450がくすりと微笑む。
450「ふふ、それが今日じゃないですか」
箱「……あ、そうか」
ぽんと手を叩く箱。
そんな箱を見ながら450は思う。
450(今まで、考えもつかなかったことですけれど…)
箱と一緒に暮らすようになって、自分は随分変わったなと思う。
微笑むなんて以前はできなかったことだ。
嫉妬なんてするとは思っても居なかった。
そんな変わった自分を思うと、なんだかちょっと恥ずかしいけれど、嬉しい。
そんなことを考えていると、突然箱が450をひょいっと抱き上げ、自分の膝の上に座らせた。
450「な!? えっ!? ご、ご主人様!?」
混乱する450に箱は「どうぞ~」と言う。
何がどうぞなのか解らない450に、別の声がした。
「すみませんねぇ…」
450の座っていた所に老婆が座る。
「ガーディアンズの方ですか?」
箱「はい。この子が僕のPMなんですよ」
雑談をする箱に450が小声で抗議する。
450「ご、ご主人様、は、恥ずかしいですから……っ! 私立ってますからっ!」
少し脚をじたばたするが、腰を箱の腕にしっかりと拘束されて抜け出すことができない。
そんな450に箱が耳元でそっと囁いた。
箱「ちょ、暴れちゃ駄目だって。おばあさんが行ったらまた下ろすから」
それを聞くとだんだんと450の抵抗が止む。
そして頬をが徐々に紅色に染まっていくのが450自身でも解った。
450(これは……もしかして結構ラッキーな状況なんじゃ……)
箱とおばあさんの会話をそっちのけで幸せな現状に浸る450。
背中を箱の胸に預けて、手を箱の手と重ねてみる。
と、ふと声が聞こえた。
女1「ねえ、あれ似てないキャストの親子ね~」
女2「えー、誘拐犯じゃないの?」
女1「誘拐犯がこんなところで雑談なんかするはずないじゃ~ん」
――ご主人様、離していただけませんか。今あそこにラフォイエ叩き込みますから。
もンのすごいオーラを放ちつつ二人の女性の方を睨む450。
その頭上では、箱とおばあさんのほのぼのとした世間話が繰り広げられていた。
ほどなくして
「あら、もうこんな時間。そろそろ失礼しますね」
そういっておばあさんが立ち上がる。
箱「あ、はい。お気をつけて」
箱も立ち上がる。450も…立ち上がれる筈もなく、まるで人形のように箱に抱かれたまま宙に浮いている。
そして会釈をしておばあさんと別れると、再びベンチに座る。
450「さ、さあご主人様、私を下ろしてくだ…」
「よお、こんなところで何してるんだ?」
空いたベンチにどっかと座った人――ライアだった。
450(うっ、ライア教官…)
突然の乱入者に眉をひそめる450。
箱「あ、教官。ど、どうも」
おどおどと挨拶する箱。
ライア「最近あたしの手伝いに来ないね。なんかあったのかい?」
じろりと睨むライア。
箱「あ、えと、その…最近ブルースさんのミッションを受けることが多くて」
確かにあのミッションは現在人気があるミッションだ。
決してライアとのミッションが、レベル60になったので受ける気が失せたとか
いい加減飽きたとかわざわざやるメリットがないとかそういう理由ではない。
ライア「ふぅん。 まあいいさ。 ところで、それ以外はあんた暇してるよね?」
箱「は、はあ。大体は…」
ライア「ちょっとツラ貸しな」
そういうとベンチから立ち上がるライア。
箱「は、はぁ」
そう言って450を抱えたまま立ち上がる箱。
ライア「あ、PMは来なくていいから」
450「え?」
ライア「ちょっとね。PMのアンタにゃ関係のないことさ」
450「は、はぁ」
少しカチンとくるものの、なんとなくといった感じで同意する450。
箱「じゃ、じゃあ、いってくるよ。450は先に部屋に帰っててもいいよ」
450を床に下ろし、ライアについていく箱。
450「はい… あ、あのっ!」
耐え切れずに二人を呼び止める450。二人が振り向く。
450「あ… その… お気をつけて」
にっこりと微笑んで手を振る箱。そして二人はその場から居なくなった。
一人残された450は、楽しい一時を邪魔された不快感よりも、何か言い知れない不安で一杯だった。
トップへ戻る
#16
何時ものように目が覚める。
何時ものように少し布団の中でもぞもぞしてから少し伸びをして、起きる。
何時ものように歯を磨き、顔を洗い、パジャマを脱いで身嗜みを整える。
「ご主人様、起きてください。朝ですよ」
何時ものようにベッドで寝る箱を起こす。しかしそこに箱は、居なかった。
「あ………… そっか。昨日ライア様と出かけたんだっけ」
緊急用のハウジロドウを仕舞うと、部屋の中をぐるりと見渡す。
箱が一晩部屋を空けることは滅多に無い。
軽い喪失感を感じつつ、450は一人分の食事を作る。
もぎもぎ
「………………なんだか微妙な味……」ぽつりとそう呟いた。
―何か、物足りない。
―二日目
今日も箱は帰ってこなかった。
(おかしいなあ………… ま、まさかっ!!)
箱とライアがいちゃつく場面を想像…………できない。
(…………あの二人に限って……ありえないですよね……)
馬鹿な憶測に苦笑いを浮かべながら、部屋を掃除する。
「この部屋、こんなに広かったっけ…………」
―空間が、彼女を圧迫する。
―三日目
ちゃぶ台に頬づえをついて時間を持て余す450。
プシュー
唐突に開く扉。
「ご、ご主人様!?」
慌ててショップルームに走っていくと、そこには
沼子「あ、メイガライン売ってないかな? 闇とかあれば嬉しいんだけど」
お客様だった。
「あ、はい。4000メセタでございます」
―今日の売上は8630メセタ。喜んでくれる人は、居ない。
後半に続く
―四日目
プシュー
肩を落としてガーディアンズ本部から帰ってきた450。
お小遣いをはたいて箱の捜索を依頼しようとしたのだが、
何故かガーディアンズは適当にあしらうだけだった。
……不安が募る。
箱の声がしない。箱の姿が無い。箱の存在が、無い。
―夜、一人泣いた。
―五日目
箱が持っているパートナーカードのガーディアンズに一斉にメールを送る。
「うちの箱、しりませんか?」
10通程度の簡単な作業。
これに箱の運命を託すのだろうか。そう思うと涙が溢れてくる。
「早く帰ってきてください、ご主人様…………」
つがいをなくした比翼の鳥のように、450は震えながらベッドの上で布団に身を包んで座っていた。
そして箱の匂いに包まれながら彼女は眠りに落ちる。
せめて、夢のなかで箱に逢えるように。
―夢は、見ることができなかった。
―六日目
コロニー内の捜索から帰ってきた後、メールのチェック。
しかしメールの返事には、なんの手がかりもなかった。
ふと、箱に頼まれていた合成があったのを思い出す。
ギイガラインが、成功していた。
(……………………形見……)
ふと思いついた単語に背筋が震える。
その悪寒に耐え切れず、450はまたコロニー内の捜索に出る。
―箱に、会いたい。450はただそれだけを願っていた。
トップへ戻る
#17
―HIVE・ライア―
「はぁ、はぁ」
荒い息遣いがする。
不気味なHIVE内の壁にもたれかかるようにして箱が居た。
焼け焦げ、切り傷、へこみ。いろんな破損がぱっと見にわかる。
「教官とカーツさん、無事かなあ…」
5つの端末の同時起動の為、ライアがそのうちの一つに残り、他を箱が起動することになったのだが、
途中、再び倒れている人を見つけ介抱しようとしたところ、突然ディルナズン化。
最初の遭遇ではライアの叱咤で撃退できたのだが、今回はそのライアが居なかったのが災いした。
箱が攻撃を躊躇ってしまった隙を突かれ、そのままライアとはぐれてしまったのだ。
何度日が変わったのだろう。この異常な世界は外界を遮断する。
出来る限り身体を休めながら、襲い掛かってくるパノンやデルセバンを倒す。帰り道を探して。
しかし、最初の頭部への打撃で一部の頭部装甲が破損。
通信能力も低下してしまったのが現状を更に悪いものにしていた。
「…情けないなあ」
自分の甘さを後悔する。
「こんな所で壊れたら、誰にも回収されないよ…」
壊れるのは嫌だ。でも、万が一はある。
その時に回収されれば、この武器や防具を売れば多少なりお金になる。
そのお金で少しでも早く450を自由に出来たのなら、それはそれで本望だ。
例えその売る物の中に自分のカラダが含まれていたとしても。
「でもなあ、僕じゃあなあ。…逆に回収費用取られたりして」
笑えない冗談を呟いて苦笑いする。しかし今はそんなことでも喋っていないと辛い。
そして思う。どんなことをしてでも生き延びて、マイルームに帰るんだと。
まだ自分は、450になにもしてやれていない。彼女の自由までまだ相当のお金が必要だ。
だからまだ壊れるわけにはいかない。壊れるのは、450が自由を得てからだ。
「はは、ちょっと元気出たみたいだよ、450」
そう呟くと、バルディスを杖のようにして立つ。
ふと気付くと、まわりにはデルセバンの一団が居た。
「帰り……たいなあ」
その一言を踏み潰すかのように、デルセバンが箱に襲い掛かってくる。
白いフォトンが光跡を残しながら踊る。箱は、必死だった。
デルセバンの刃をかろうじて避けながら、なんとか4体ほどを片付ける。
しかし、多勢に無勢。限られた回復アイテムの数を考えると、そう無茶はできない。
「くっ、ここは…」
身を翻し、脱兎の如くその場を離れる。今は生き残ることが最優先だ。
今の箱にはそれしかなかった。後ろ指を指されるのには慣れている。
笑われようが、何をしようが、箱はただ生き残ることを考えていた。
暫らく走り、デルセバンの奇妙な鳴き声が聞こえなくなったあたりで、箱は脚を止めた。
「ここまで来れば…」
壁にもたれて気を抜く箱。しかし、HIVEはそんな行為を許す場所ではなかった。
「な!?」
次々と箱の周囲にワープアウトする物体。
手には杖。ガオゾランだ。それが3体も居る。
バルディスを構えようとする箱。刹那、フォトンが煌いた。
ブォン!
バルディスの柄が真っ二つになる。そして、ガシャンという金属質の音。
地面には蒼い鉄の塊。箱の胴から離れた右手がそこにあった。
「ぐ…!!」
バルディスを捨て、小剣を構える箱。
後ろは壁。逃げ場は、無かった。
―ガーディアンズコロニー
「あとは、3ヶ月経つか、貴女がこの書類にサインをすればOKです」
箱の部屋に見慣れぬ男が居た。
「そういうものは必要ありません」
少し怒気を含んだ声で、出された書類を拒否する450。
「それよりも、捜索はどうなっているのですか?」
と、男を睨みながら尋ねる。
「さあ?見たという報告は聞きませんね。こちらも捜索はしてるのですが」
眼鏡を直しながら白々しい言葉を吐く。
450の機嫌が更に悪くなる。
「わかりました。もうお帰りください」
やれやれという表情で部屋を出て行く男。
プシュー
扉が閉まる。
箱が居なくなって二週間が過ぎた。
450が行ける範囲は全て探した。しかし箱の行方はようとして知れない。
「ご主人様…」
ふと呟く。
これほど自分の無力が恨めしいことは無かった。
レスタの制限がかかった時以上に、自分がPMであることを呪う。
夜になるたびに、「もしかしたら」という気持ちが鎌首をもたげる。
しかしそれをどうにかして振り払う。
パートナーである自分がそれを認めたら、箱の生存を諦めたら、他に誰が箱を信じるのか。
そう、折れそうなココロを奮い起こさせる。
私は最後の砦。私が信じている限り、きっと箱は生きている。生きて、帰ってきてくれる。
そして再び450は部屋を出る。あてもなく、箱を探して。
―HIVE・ライア
(駄目だ… でも、何か、何か手が…)
箱が最後の光明を探そうとした時、ガオゾランの頭部にフォトン弾が炸裂した。
「えっ!?」
驚く箱。2体目、3体目のガオゾランも頭部への狙撃に怯む。
「君!今だっ!!」
女の声だ。箱は怯んだガオゾランに小剣で攻撃を加える。
フォトン弾の援護を受けながら、箱が攻撃を加える。
最後のガオゾランが霧散すると、箱が腰が抜けたかのようにその場に座り込んだ。
「大丈夫か、君」
声のするほうに頭を向けると、そこにはニューマンの女性が居た。
身長は箱のよりも低いだろうか。箱から見れば小柄な女性だ。
「あ、ありがとうございますです」
緊張が解けたのか、相手が女性とわかったからか、箱の落ち着きが一瞬にして無くなった。
「落ち着け。敵はもういないぞ?」
女性は少し微笑んで箱にレスタをかける。
しかし、そのレスタに切断された腕を戻すほどの力はなかった。
「ふむ、すまないな。腕の修復はできなかったようだ」
「あ、い、いえ、その、あ、ありがとうございますですます」
すぐ傍に女性を感じて、どぎまぎしながら箱が答える。
「ふふ、面白いな、君は。それにしても何故こんなところに一人で?」
女性は箱の横に座って尋ねる。
「え、えと、教官と、このHIVEに来たんですけど、途中ではぐれちゃって… あ、貴女は?」
今度は逆に箱が尋ねた。
「私か? 私はHIVEの調査の依頼を受けてここに潜入したんだが、どうも道に迷ってな
どうしたものかと途方に暮れていたんだ」
その答えを聞いて、箱がしょげる。
「あ、貴女も迷子だったんですか…」
「ああ。でもキャストの君なら外界との通信が出来ると思うのだが、やってみてはくれないだろうか?」
女性がそう尋ねると、
「す、すみません、僕の通信機能、故障しちゃってて… ほんとすみません」
ぺこぺこ謝りながら小さくなる箱。まあイメージの中でだが。
箱の答えを聞くと、女性が困ったような顔をする。
「そうか…困ったな。さて、どうしたものか…」
思案する女性。箱もそれに習い脱出方法を模索する。
「そうだ」
女性が手をぽんと叩く。
「元々ここは発電衛星だ。奥に通信機があるかもしれない」
頼りになるんだかならないんだかいまいちよく解らない提案だ。
しかし今はそれに頼らざるをえないのも事実。
「じゃあ、そうしましょうか」
箱が同意する。
「PMにメーザーカノンの合成を頼んでいてな。早く帰って確かめたいんだ」
「あ、僕もギイガライン頼んでるんですよ。もうできてるだろうなあ」
今までのヒリヒリとしていた場の空気がふっと和む。
今の二人にはこんな会話をしている余裕はないのだが、
こんな雑談でも絶望を少しでも消すことができるのならそれはそれでいい。
「450、ちゃんとご飯食べてるのかなぁ」
ふと呟く。
「ほう、君も450タイプのPMを? 実は私もなんだ」
意外な接点を見つけ、会話が弾む。
互いの450の話をしているうちに、二人に奇妙な親近感が芽生え始めた。
そしてお互いに想う。自分の帰る場所に帰るのだと。
敵を駆逐していく二人。そしてたどり着いた大型のワープポイント。
お互いに頷き、覚悟を決めてそこに突入する。
ワープアウトした先には、巨大なエネミー。ダルク・ファキスが鎮座していた。
「行くぞ、箱君!」
「はいっ!」
小剣の光跡と、フォトン弾がダルク・ファキスに襲い掛かる。
しかし、それを圧倒的な質量で迎撃するダルク・ファキス。
じわじわと削られる二人のHP。
「箱君、大丈夫か!?」
箱にレスタをかけながら尋ねる。
「な、なんとか。でも、もうあまり長くは…」
二人が一瞬気を逸らした刹那、ダルク・ファキスにエネルギーが収束し、放射された。
「なっ!?」
眼前が白く輝いたと思った瞬間、彼女の前に蒼いものが立ちはだかった。
轟音と灼熱。それが収まり恐る恐る目を開けると、そこには装甲が溶けかかった箱が居た。
「は、箱君!」
「だ、だいジョウブ デすカ?」
内部機能に異常をきたしたのか、箱の音声がおかしい。
「な、なんてことを!? き、君は馬鹿だ!!」
女性の目が潤む。
「は、ハヤくこうゲキを… !!」
二人の隙をダルク・ファキスは見逃さない。巨大な刃の右腕を振り下ろす。
「しまっ!?」
どんっ
「きゃあっ」
箱に突き飛ばされる女性。目の前の、自分が今まで居たところには巨大な刃と、
床に転がる小剣。そして腹から上の箱。
「こ、このおっ!!」
狂ったようにライフルを乱射する女性。それに怯んだダルク・ファキスは、闇の壁を展開する。
「う、うううっ!!」
闇の壁に押される女性。
しかし、何故か箱はその壁の干渉を受けない。
その偶然生まれたチャンスを箱が突いた。
「…サ、SUVウェぽン、キドう開シ!!」
腹から上しかなくなった箱が、シュトルムバスターを召喚する。
「は、箱君ッ!!」
壁が消え、箱に駆け寄ろうとする女性。
ふと、箱の声が聞こえた。
「イッ緒ニ オ互イの450のトコろに……カエりましョウ……」
ボスエリアは、爆煙と爆音に包まれていった。
女性は、最後に断末魔の声を聞きながら、気を失った。
ピポン
「…あ……メール?」
ビジフォンに突っ伏したまま寝てしまっていた450が、メール受信の音に目を覚ます。
目尻には涙の跡。今日も泣きながら眠っていたのか。
コンソールを操作してメールを開くと、そこにはまるで感情の篭っていない一文。
「あなたの主人の一部を回収しました。本部のモルグまでお越しください」
とだけあった。
「あ………ああ………………」
愕然とした表情。声が出ない。希望が、がらがらと崩れていくのが450本人にも解った。
「う、嘘…………」
どうにか搾り出す一言。これは、嘘だ。きっと、嘘だ。嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘…………
頭の中で「嘘」という言葉がぐるぐると回る。
もはや涙は涸れたのか、不思議と涙が出てこない。
そして450は、ビジフォンを閉じると部屋を出た。
もしかしたら別人かもしれない。この目でそれを確かめるまで、まだ希望は捨てたくない。
最後の、最後の希望の欠片を求めて、450はガーディアンズ本部へと向かった。
―モルグ
冷たい金属質の床と壁に囲まれた一室。
壁には、人が一人入るくらいの引出しのようなものが敷き詰められていた。
ギィィィ
重い扉が開く音。
それに続いてカツカツと足音がして、男とPM…450が入ってくる。
「こちらです」
無感情な声でコンソールを操作すると、壁の引き出しの一つがせり出てくる。
450が恐る恐る近づく。そして、震える手でシェラフのようなもののファスナーを下げる。
そして、その中に入っていたのは、蒼い塊。
装甲は半ば溶け、ところどころ黒焦げになっている。
「うぅ………っ」
涸れたと思っていた涙が零れてくる。
そこにあったのは、まぎれもなく箱…箱だったものだ。
頭部と胸、そして左腕。ただそれだけ。
目からは光が消え、何の反応も無い。
「ごしゅ…………じんさま…………」
かすれるような声で呼んでみる。 反応は無い。
「ご主人様………ご主人様…………」
もう一度、呼んでみる。 しかし、箱にはその声は届いていなかった。
「ご主人様ぁ………ご……しゅじん……さまぁ…………」
止まらない涙。止まらない呼ぶ声。ゆさゆさと箱を揺する。
「ごしゅじんさまぁぁぁぁぁ!!」
募る想いを吐き出すように箱の胸に顔を埋めて叫b
「うわああああああっ!!ごめんなさい!!ごめんなさいっ!!今起きますからハウジロドウはゆるしてっ!!」
残った左腕を軋ませて必死にガードする箱。
「………………」
伝う涙はそのままにひきつった顔で固まる450。
「………………あ、あれ?」
ガードを緩めつつ恐る恐るまさに今振り下ろされる筈のハウジロドウを探す。
「…………………………ここ、どこ?」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
絶叫の450。
「ひえええええええええええええええええ!?」
それに驚く箱。
「お、オバケええええええええええええええええっ!!! …ふぅーーーー」
箱を指差したまま卒倒して後ろに倒れる450。
「え、え、オバケ!? オバケこわいいいいいいいいいいいいいいい!!」
左手で頭を抱えて小さくなる箱。
その時、モルグの扉が開いた。
「な、なんだ今の絶叫は!! 絶叫の騎士か!!」
「オバケだと!? ガオゾランがテレポートアウトしてきたかああああああっ!!」
「いや、俺ゾンビだって聞いた!!バイオハザード発生!?」
ガーディアンズ本部のスタッフだ。
「…………え?」
何事かと声の方向を見る箱。
「「「いたあああああああああああああああっっっ!!!」」」
「え?え?」
ジャキジャキジャキジャキ
何事かと呆然とする箱。銃器を構えるスタッフたち。
「目標、妖怪ハコモドキ!! 撃てぇぇぇい!!」
「え?え? えええええええええええええ!?」
その日、ガーディアンズ本部のモルグには、
朝の天気予報を無視した銃弾の雨が、450が目を覚ますまで降り注いだ。
トップへ戻る
#18
―数日後
ケース1:とあるニューマンと450の場合。
「く、くくく、本当に面白いな君は」
ガーディアンズの病院の一室。
部屋の隅では450が2体、ほうじ茶とコルドバういろうを食べながらなにやら談笑している。
ベッドに寝る箱を見ながら、ニューマンの女性がくすくすと笑っていた。
「笑い事じゃないですよ。本気で死ぬかと思ったんですから」
ベッドに横たわる箱が答える。
「いや、すまない。で、新しい体に?」
ベッドの横にある椅子に座りながら尋ねる。
「えーと、その、なんというか。お金がなくて… 胴体パーツだけを換装して、
あとは回収されたうちで使えるパーツで補ってもらうことにしました」
「そうか。それにしても、君は案外無茶をするな」
ふっと微笑む女性。
「え? いや、その、あのときは夢中で…」
左手で頭をかく箱。
「まったく、君は実に馬鹿だな」
またくすくすと笑う女性。
「あのときはもう死んだのだと思ったけど、君の生きるという執念は凄いな」
「そ、そうですかね?」
珍しく褒められたからか、照れまくる箱。
「…そういえば、まだお礼を言っていなかったな」
そう言って椅子から立ち上がり、
「……ありがとう」
箱の頬にすっと唇を寄せる。
「むあ!?」
突然の出来事に驚く箱。
ギンッ!!!
その箱に視線…というか殺気が放たれる。
びくっとしてその殺気のほうを視線を移すと、
その先には正座をして湯呑みを持ってこちらを睨む450と、それに怯える450が居た。
「さ、そろそろ帰ろうか450」
女性が少し照れながら怯える450を促す。
「じゃあな。御大事に」
「あ、ど、どうもありがとでした」
箱に見送られ、女性は最後に微笑を残し、450を連れて部屋を出て行った。
「……………………あ、あははは」
キリキリとぜんまい仕掛けの人形のように首を回転させる箱。
「……………………あら、いかがされました?ご主人様」
珍しくにこにこと微笑みながら箱のほうに歩いてくる450。あ、青筋…
「え、あ、あの、その、ぼ、ぼくはなにもしてないよ?」
上半身だけの箱はもはや震えるしかない。震えたまま450を迎える。
「…………ふふ、そうですね、ご主人様はなーんにもされていませんよね」
めごす
「んぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!」
絶叫が、静かな病院に響き渡った。
ケース2:とあるニューマンと440と+1の場合
「よう、箱!今回は災難だったらしいな!…って、お前何頭にハウジロドウ刺してるんだ?」
ニューマンの男が440を従えて病室に入ってきた。
「え?あ、あはははははは、ちょっとすっ転んじゃって…」
頭からオイルを垂らしながら箱が答える。
「ねえ、ご主人様、あのハウジロドウモギモギしていいですか?」
「…モギるのはいいが人様のはやめときなさい」
「…は~い」
残念そうにしゅんとする440。
「おっと、忘れるところだった。これお見舞いだ」
そう言って440の帽子の中から黄色い何かを取り出すニュマ男。
「わ、わ、なんですかこれ!!」
驚く箱。
「「ラッピー!!」」
ニュマ男と440が綺麗にハモる。
「かわいいでしょー? すごくかわいいでしょー?」と440。
「こいつレア落とすんだぜぇ?さっそく殺ってレアアイテムゲットだぜ!!」とニュマ男。
お互いの台詞を聞いて、不満そうにお互いに抗議する二人。
「こんな可愛いラッピーを殺すなんて酷いです!!」
「何言ってんだ、今の箱にとっての一番の見舞いはレアアイテムなんだよ!!」
「ご主人様のわからずや!! モギモギッ!!」
「あーっお前なにモギってんだ!それこの前ゲットしたマジムラじゃねーか!!」
「ご主人様さっき人様のじゃなかったらモギっていいって仰ったじゃないですかっ!!」
「てめーっ、モギっていいものとよくないものがあるだろっ!!」
わーわーぎゃーぎゃーどたんばたんと口論…っていうか暴れる二人。
ぴ、ぷしゅー
突然糸が切れたように倒れる440。
「病室では静かにしな」
そんな声が聞こえた気がした。
「またアイツか…」
ニュマ男が呟く。
「アイツ?」
乱闘から(気分的に)避難していた箱が??な顔をする。
「あ、いや、なんでもない。今日はそろそろお暇するわ。んじゃまたな。御大事に」
動かない440を引きずって部屋を出る2人。
「あら、もうお帰りになったんでs…」
花瓶に花を生けにいっていた450が戻ってきた。そして入口で固まった。
「あ、お帰り」
箱の頭の上に止まってピヨピヨ鳴いているラッピー。
そして滅茶苦茶に散らかった病室…
「…大怪我して安静にしてないといけないというのに………………何ですかこのザマはッ!!」
450のこめかみがピクピクする。
「え?え? んぎゃああああああああああああああああっ!!」
そして、再びナースステーションから何人か走ってきたのであった。
ケース3:あるヒューマンと440の場合
「…お前、入院してるんだよな?」
呆気にとられた表情で箱を見るヒューマン。
「は、ははは」
引きつった笑いで答える箱。
「…なんで頭からハウジロドウとメイロドウ生えてんの? 新手のキャスト用パーツ?」
箱の頭を指差すヒューマン。ふと頬を染めて恥ずかしそうに俯く450。
「ちょっと寝返りうったときにベッドから落ちちゃって… ははは」
オイルがぴゅーっと出る。
「まあ、なんだはやく怪我治せよ」
「はあ… がんばります」
いや頑張っても無理なものは無理なのだが。
「それにしても」
男が箱と450を交互に見る。
「なんか……恋人みたいだよな」
「えっ?」
さっと頬に朱が走る450。
一方箱は
「えーーーーー、やだなあ、僕に恋人とかいませんよお」
あははと笑っていた。
「そうか? …あ、いや、なんだ、そろそろ俺帰るわ。いくぞ440」
なにやら感付いた男が慌てて帰り支度をする。
「はい、ご主人様。では失礼します」
ぺこりと頭をさげるリボンのついた440。
そして病室の出際に…
「その…なんだ… 御大事にな… 特に命」
深刻そうな顔でそう残していった。
「?どうしたんだろ? ………………ハッ!?」
なにやら得体の知れない気配に気付く箱。
「え、あ、あの、450さん、ど、どうしたのかな?」
カタカタと振るえながら450を見る箱。
「………………いーえ、何でもありませんよ?」
笑顔で答える450.こめかみに浮かぶ青筋のアクセントがよく目立つ。
めごす
もう、ナースステーションからは誰も来はしなかった…
ケース4:ある男と440の場合
病室に突然元気な声が響いた。
『箱!元気に450とヤってるか!!』
ゴスッ
『な、なにすんだいきなりッ!!』
「ふふっ、お見舞いの第一声にはあまりそういうのは言わないほうがいいですよ♪」
強力に突っ込む440。確かに450がいなくて幸いであった。
「あ、ども、『』さん。お久しぶりです」
『ちょwwwwおまwwwwwなんだその名前wwwwww』
「だ、だって、なんて呼べばいいのか解らなくて…すみません。エロデバさんのほうがよかったですか?」
しょげる箱。頭にはメイロドウ、ハウジロドウに加え、クロサラが刺さっている。
『いや、それは勘弁してwww まあ、俺の作者がそのうち適当な呼び名つけるだろうから今回はそれでいいか……でだ』
深刻そうな顔になる『』。
「は、はあ、なんでしょう」
『お前、手足をパシリにモギられたって本当なのか?』
「は?
ビシャーン
ドアが思いっきり開け放たれる。自動ドアなんだけどね。
「わ、私そんなことしませんっ!!」
一瞬固まる2人。
「失礼しますっ!」
ビシャーン
ドアの閉まる音と共にすぐに居なくなる450。
『なあ……』
扉のほうを見ながら呟く。
「はい?」
『お前、結構大変だろ?』
「はあ、それなりに…」
と、我に返る『』。
『って、モギられたって聞いたぞ?おかしいな?』
「そんなことないですよう。一体誰に聞いたんですか?」
『いや、こいつに…』
「ハァハァ…箱さん…可愛美味しそう…」
突然の獲物を狙うその視線に怯える箱。
『ちょっと待てェェェェ!! お前、お前それだけはやっちゃいけねえっ!!人…じゃないパシリとしてッ!!』
「ハァハァ… じゅるり…」
『こ、こいつはやべえええええッ!!箱ッ、今日はもう帰るわ!んで、これは見舞いの品だ!じゃあな!』
包みをベッドに投げ、涎を垂らす440を抱えて走り去る『』。病室には呆気にとられる箱が残された。
「病院では静かになさってください! もう…やっと今日から面会が可能になったのにいきなり騒々しいですね…」
溜息をつきながら戻ってくる450。
「あら?」
ベッドの上にある包みに気付く。
「なんですか、それ?」
「さあ?」
ぺりぺりと片手で器用に封を開ける箱。
中から出てきたのは…
"美人女医ルウ先生シリーズVol.6~あ・ぶ・な・いお注射 デガーナ☆カノン~【通常版】"
ガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンと固まる箱。
怒りでわなわなと振るえる450。
「い、いや、これは、その、さっきの!」
「言いぃぃぃぃ訳無用ゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
「ひええええええええええええええええええええええ!!!」
病院に断末魔の悲鳴が木霊する。
箱が無事退院できるのは、一体何時になるのだろうか……
トップへ戻る
#19
―箱が退院して数日が経ったある日。
プシュー
「ただいま帰りました」
450が買い物から帰ってきた。
「あ、おかえり」
ちゃぶ台の前に座った箱が珍しく真面目な顔で450を迎えた。
と、450がふとそのちゃぶ台の上に乗った瓶を見つける。
「あら、それはいかがされたのですか?」
ナノトランサーから冷蔵庫に食材を入れながら450が尋ねる。
「ああ、これ? 『』さんが退院祝いだってさっき持ってきてくれたんだよ」
『』からの差し入れ… なにやらいや~な予感をしつつその瓶を見る。
瓶にはラベルが貼ってあり、それには
【ミズラキ銘酒 怨魔ごろし】
と書かれていた。
「お酒ですか?」
立ち上がって、フリルのついたエプロンをつけながら尋ねる450。
「うん」
こくりと頷く箱。
「そういえば、ご主人様はお酒はお飲みになるのですか?」
キッチンに移動しながら再び箱に尋ねる。
「んーん。呑んだこと無い。450は?」
「私も…呑んだことは… 今夜、呑んでみましょうか?」
キッチンから顔を出して三度尋ねる450。
「え?呑むの? …うーん………………まあ、いっか」
酒瓶をいじりながら、少し悩んで箱が答える。
「はい。じゃあなにかおつまみを用意いたしますね」
そう言って、キッチンに消えていった。
―食後
「あー、美味しかった」
「当たり前です」
何時ものやりとり。
「さて、お酒あけよっか」
「はい」
封を開け、とくとくと二人のコップにお酒を注ぐ箱。
「ありがとうございます。 では、頂きます」
「いただきまーす」
コクコク
450の細い喉が動き、酒を飲み下す。
「ふー、案外美味しいですね…… あら?」
「え?」
箱のコップを見た450が違和感を感じる。
「ご主人様、お飲みになりました?」
「あ、う、うん。呑んでるよ。はい、どんどんどうぞー」
再び450のコップに酒を注ぐ箱。
「あ……ご主人様ばかりに注いていただくのは…」
「いーのいーの。今日は無礼講無礼講」
「そう…ですか? ありがとうございます。ん…」
コクコク
「ふー」
ふと、再び箱のコップを見ると、やはり入った酒が減っていない。
「ご主人様」
「え、何?」
裂き干しコルドバ肉をマヨネーズに付けながら箱が450を見る。
「お酒、呑んでます?」
「え、あ、う、うん」
視線を外しながら答える。そんな反応では嘘がモロバレだ。
「嘘でしょう」
ジト目で箱を睨む450。自分で自分のコップに酒を注いで、一気に飲み干す。
「う… ごめんなさい… なんか臭いがきつくて…」
しょんぼりする箱。
「わらしとお酒が呑めらいって言うんれすか? それとも先にわらしを酔われてあんなころやこんなころを…」
ジト目をさらにジトらせて妙な喋り方で箱を追い詰める450。
「わ、わかったよ、呑みますよ…」
ちぴっ
一口酒を飲む箱。
「う」
箱の動きが止まる。
そして徐々に顔が赤くなってきた。
「?」
「う、う、うううう」
「???」
突然顔を真っ赤にした箱が、がばっと顔を上げて450を見ると
「ふーじ…じゃないよーんごーまるちゅわーーーーん!!」
呂律があまり回っていない叫び声を上げながら、ル●ンダイブで450に飛び掛った。
「えーーーーーー!? な!?な!?なに!?なにーっ!?」
あたふたと護身用のハウジロドウを構える450。でも顔はちょっと嬉しそうだ。
と、その刹那
「はう」
奇妙な鳴き声をあげると、そのまま床に墜落した。
「ご、ごしゅりん…らま?」
恐る恐る手にもったハウジロドウでつんつんしてみる。
…んが、反応は無い。
「こ、壊れちゃった? ん、んしょ」
箱をひっくり返すと
「スカー スカー ウェップ」
箱が……寝ていた。 それはもう、完璧に…
「……酒……弱すぎ……」ぺしっ
とりあえず箱にツッコミを入れると、450は一つ溜息をついて、一人寂しく再び酒を呑み始める。
暫らくすると、それなりに酒が回ってきた450が箱を杖でつつきながら愚痴り始めた。
「もー、ごしゅりんらまのあほー、もうちょっとつきあってくれれもいいらないれすか…」
ツンツン グビグビ
「らいらい(大体)ごしゅりんらまはろんかん(鈍感)すぎまふ。こんならぶりーなおなのこが
がんらっれ(頑張って)ちょこちょこあぷろーりしてるのにれんれん(全然)きづいてくらさらない…」
ツンツン グビグビ
「おいこらはこー、きいれますかー! ここり、あんらのことがらいすきれらいすきれしかたらいぱしりがいるれすよーー!」
ゲシゲシ グビグビ
呑み方は上品なのだが、やってることと言ってることがかなりアレだ。
「まっらく、あらしがいつもいつもどんらけしんぱいしれるかわかってないれしょ? このあいら(あいだ)もないら(泣いた)んですよ?ぐしぐし。」
ゲシゲシ グビグビ
「…こんなにあらしがごしゅりんらまのことをおもっても、ごしゅりんさまのおこころはいつもそっぽむいれまふ」
「からし(悲しく)くって、れすなく(切なく)て、いつもいつもなきそうになるんれすよ」
ゲシゲシ グビグビ
「はこー! あほー! ばかー! もっとあまえさせろー!」
ボフボフ
ベッドの上の枕を取り横たわる箱の横に座り、今度はそれで箱の胴体を殴りながら抗議を始める。
と、ふと箱の顔に目が行く。
切れかけの蛍光灯のようにぼんやりとチカチカ点滅する目。多分これが酔いつぶれている状態なんだろう。
口元にはマヨネーズがついている。さっき食べていた干しコルドバ肉に付けていたものだ。
「もー、だらしないれすね…」
ポケットからハンカチを取り出し、箱の口元にそれを持った手を近づける。
「…………」
と、ふとその手が止まった。
「…………」
部屋の中の時も止まったようになる。
少しして、ハンカチの持つ手が箱の顔から離れた。
その代わりに近づいてきたのは、450の小さな頭だった。
「…………これって、酔ってるから…… うん、きっとそうら……よってるんら、あらし……」
(それに、ごしゅりんらまも、ぶれーこーっていってらし……)
450の唇が少し開き、その間から彼女の小さな舌がおずおずと現われる。
精一杯伸ばしているからか、ぷるぷると振るえる450の舌先。
いや、彼女の身体も震えているからだろうか。
箱に横から覆い被さるようにして、徐々に距離を縮める450。
そして、そっと目を瞑り…………
「ん…………っ」
ぺろっとマヨネーズを舐め取り、舌と共に口の中に収める。
「ん…………ハァ…………」
大きく息を吐き出すと、目を開ける450。
そして、これまでになく近づいた二人の距離を認識してしまう。
「………………ごしゅりん……らま…………」
450の顔が赤いのは、アルコールのせいなのか、それとも他の理由なのか。
そして左手をそっと箱の頬に置く。そして箱の頭を少し斜めにして、自分の方を向ける450。
(よってるせい、これはよってるせいらから、わらしにはなんのせきりん(責任)もないのれす…
しいていうなら『』さまが悪いのれす…)
いわれない責任を転嫁される可哀想な男。
…いや、もしかしたらこれもあの男の計算なのかもしれない。あの男、恐ろしい子!
と、そんな話はさておき、450の中ではどんどん何かが盛り上がってきていた。
そして、そのまま目を閉じ、箱の頬に添えた左手をガイドに、再び徐々に顔を近づけていく。
静かな、とても静かな夜。邪魔するものは何もない。
あと5センチ。
ゆっくりと短くなる二人の距離。
あと4センチ。
(ごししゅりん……らま……)
あと3センチ。
(わらしの、わらしの想い……)
あと2センチ。
(うけろめれ…………くらはい…………)
あと、1センチ。
(……………………)
ふと、450の動きが止まる。
(……………………)
左手を頬から離し、すっと座りなおす。
(………………やめら…………)
ふっと目を開く。
(ごしゅりんらまが…………こんなじょうらいれキスしれも………… いみないれす…………)
少しだけ、悲しそうな目。
(ごしゅりんらまも、わらしも、ちゃんとしたきもちのときじゃないと、いみないれすから…………)
ペチン
優しく、とても優しく箱の頬を平手で叩く450。
「…………れも、いつまれも、まちませんろ?」
そう言うと、クスリと微笑む。
と、その時
「………………んあ~~? 何か言ったばっ!?」
突然目を覚ました箱の口に酒瓶をブッ刺す450。
ごぶん、ごぶんと酒が減る。
「あ、あぶらかった…」
ふぃー と冷や汗を拭う450。
一方箱はといえば…
「むをををををををををををを…………」
唸っていた。そして絶叫。
「てめえらの血はなにいろらーーーーーーーーーーー!!」
「…多分黒れす」
それに冷静につっこむ450。
「たわらば!」
ばたーん!
450に秘孔…ではなく冷静にツッコミを入れられ再び大の字にぶっ倒れる箱。
「はぁ…………」
溜息一つこぼすと、コップに残った酒を飲み干す450。
そして、箱の横に来て
「おやふみなさい、ごしゅりんらま……」
と、一言呟き、箱の腕を枕に箱に寄り添いながらそっと目を閉じ、夢の世界へと旅立ったのであった。
トップへ戻る
#20
カチ カチカチ
暗い部屋。デスクライトの光がほんのりと灯っている。
カチカチ カチ
しん…とした部屋に、ビジフォンを操作する音だけが響いている。
「……これが例のデバイスの出所ですか……」
450の声だ。
箱は……ベッドで枕を抱いてすやすやと寝ていた。
「…………それにしても…………なんですかこれ……」
画面にはとあるネットショップのサイトが映っていた。
「……こんな商品って大丈夫なのかな……」
そこに並んでいたのはPM用デバイスだった。
デバイスANE、デバイスRORI、デバイスTUN、デバイスDERE
いろいろと怪しげなデバイスが並んでいる。
「とりあえず、ここはブラックリスト入りですね……」
と、ふと450の手が止まる。
「………………これって……」
買い物カートに商品が一つ入る。
そして、めでたくこのサイトはブラックリスト入りとなり、箱の閲覧は不可能と相成ったのであった。。
―数日後
プシュー
「ちわー オルアカ印の宅配便ですー」
その声を聞いてエプロンで手を拭きながら450が出てくる。
「ご苦労様です」
「ええと、箱さんちの450さんで間違いないですか?」
伝票を確認しながら450に尋ねる業者。
「はい」
「ではこちらにサインを。で、代金は9800メセタですね」
「はい」
さらさらと達筆でサインをして、9800メセタを渡し、小包を受け取る450。
「ありあとしたー。 またのご利用をー」
プシュー
「………………届いちゃった……」
小包を凝視する450。と、突然隣の部屋から声がした。
「450ー、誰だったの~?」
箱だ。
びくっとする450。
慌てて小包を後ろに隠すと
「い、いえ、単にお客様がおいでになっただけです! 決して宅配便とかじゃないです!」
と、答える。
「あ、そうなんだ。何か買ってもらったかなあ?」
プシュー
扉が開いて箱がショップルームに入ってくる。
「い、いえ、特に何も!」
「なんだ、残念だなあ」
という言葉を残して再び元の部屋に戻っていった。
「ふぅ……」
一息付いた450は、カウンターの後ろに隠れ、がさがさと包装を開ける。
(危ない危ない… これはご主人様には見せられませんからね……)
そして、中から出てきたのは、小さな直方体。
その表面に書かれていたのは…
―PMデバイスHARI―
使えば、素直になれるという、魔法のデバイスであった。
―次の日
「じゃあ、今日はニューデイズのほうに行ってくるね」
「はい。お気をつけて」
「じゃあ、いってきます」
「いってらっしゃいませ」
プシュー
箱が出かけた。
シュバッ!! バババッ!!
これまで見たことも無いような速度でカウンターの裏に移動する450。
「ついに……この時が……」
真剣な表情でデバイスの入った箱を開ける。
そして取り出した説明書を読んでいく。
1:口からモギモギすることで効果が発揮されます。
2:効果時間は1~2時間程です。ただし個体ごとに効果に差が発生することがあります。
3:プレイを潤滑にお楽しみいただけるよう、PMにばれないように使用されることが望ましいでしょう。
「………………プレイ??」
何のことかさっぱりわからないが、とりあえず1~2時間もあれば、
目標は達成できる筈だ。
「……も、もしOKしてもらったら……どうしよう……」
「……さ、最初は、ニューデイズにデートに連れて行ってもらおうかなあ……」
「そして、そして…………」
どんどん加速していく450の想像……というか妄想。
30分程で…
「子供は…………2人がいいなあ…………」
既に甘い新婚生活が始まっていた。
ぽわ~んとした幸せそうな表情で頬を染めて、妄想界の住人になる450。
どれくらい経っただろう、突然扉が開いた。
プシュー
「はっ!?」
何時の間にかたれていた口元の涎をごしごしと拭うと
「い、いらっしゃいませ!」
と客に向かって言う。
「…………あ」
そこに立っていたのは、箱だった。
「あ、すみません!部屋間違えました!!」
回れ右をして部屋を出ようとする箱。
「え……あ、ご、ご主人様!合ってます!ここで合ってますっ!!」
あわてて箱の後部装甲を掴んで引き止める450。
「え?あ、よかった…… た、ただいま」
「お、お帰りなさいませ。お早いお帰りですね」
向き合って会話を交わす。ちょっと妙な空気。
「え? もう夕方だよ?」
箱がきょとんとして答える。
「え!?あ、申し訳ありませんっ!すぐに夕食をお作りしますね!!」
慌ててエプロンを付け、キッチンに消える450。
そして武器を片付けながら彼女に声をかける箱。
「ねえ、今日の夕食は?」
「スキヤキですよ」
「え、そうなの? やったぁ!」
幸せそうな箱。片付けが終わると、ビジフォンに向かってメールのチェックなどの日々の日課を始めた。
そして暫らくして二人の晩餐が始まったのだ。
「もにゅもにゅ ん~、美味しいねえ、スキヤキ」
そう言ってまた糸こんにゃくを鍋から取る箱。
「ご主人様、糸こんにゃくだけじゃなく、白菜もお食べください」
そう言ってさささっと箱の取り皿に白菜を入れる450。
「はぁーい。 ところでさ、今日一緒にミッションやった人に聞いたんだけど」
「はい」
「その人がね、肉とか豆腐とか入れるのがスキヤキって言うんだよ」
「………………………………………………………………そうですか」
どきりとする450が長い沈黙の後答える。そしてちょっと冷や汗がたれる。
「だってさあ、スキヤキって……」
箱の言葉を遮って、箱から目を逸らしつつ450が言う。
「はい。糸こんにゃくと白菜を甘辛く煮たものですね」
「だよねえ。そう言ったら笑われたんだよ。失礼だよねえ」
「……そ、そうですね」
内心で、ロビーアクション[O]の女性版をしながら、450がさめざめと思う。
(うう、申し訳ありませんご主人様…我が家の今の家計では、本当のスキヤキなど夢のまた夢…)
(で、でも、貯金はしっかりたっぷりありますからっ!これも全てご主人様の夢の為なんですっ!どんな夢か知りませんが…)
(あ、でも、こっそり無駄遣いしちゃった…あれでコルドバのスジ肉くらいなら買えたかも…うう……)
どんどんどんよりする450。
と、ふと450の視線が箱に向かう。
(………………そういえば………………)
何かを思いついたような450の目が、糸こんにゃくの触感を楽しむ箱を見つめていた。
トップへ戻る
IF Story... 01
狭い部屋に、カチャカチャという音がする。
粗末なベッド、粗末なサイドテーブル。
サイドテーブルの上には、場違いのように明るい色合いのプレゼントの包み。
色あせた室内には、一人、青のボディカラーのキャスト…箱がいた。
先ほどの音は、彼が装備を整える音であった。
ほどなくして、準備が終わった箱が座っていたベッドから立ち上がる。
そして、サイドテーブルに向かって、
「じゃあ、行ってくるね、450」
と微笑みかけた。
あの日と同じ。
プレゼントを買って、何時もより少し元気な声でただいまと言ったあの日と同じ。
それに答える声は、なかった。
箱は続ける。彼だけの450に向かって。
「うん、多分、今日は遅くなると思う。ニューデイズでね、マガシさんの手伝いをしないと駄目なんだ」
「はは、大丈夫だよ。相手は原生生物だし、なんとかなるって。 じゃあ、いってくるよ」
サイドテーブル…いや、プレゼントが置かれたサイドテーブルに向かって手を振ると、
箱は部屋から出て行った。
誰も居ない部屋は、主を無くし、再びまた静寂に支配をされた。
―ニューデイズ―
「そうだ。君にはこのエリアの原生生物の捕獲をやってもらう」
キャストの男がそう言った。
「は、はい。後は何時ものように…ですよね?」
答えたのは…箱だった。
「そうだ」
「わ、わかりました。いってきます」
「…」
わたわたとシャトルから外に出て、指示どおりのエリアに向かう箱。
それを見届けた後、ある兵士がキャストの男に尋ねた。
「マガシ様」
「なんだ」
「大丈夫なのでしょうか。あのような物を我らの組織に組み込んで…」
どうやら、彼は箱の弱気っぷりを知っているらしい。
マガシと呼ばれたキャストは、箱の出て行った扉を一瞥し、答えた。
「アレでも元はガーディアンズだ。駒にはなる」
それでも兵士は不満そうに続ける。
「アレの部屋から、ブツブツと独り言が聞こえるという話も聞くのですが…
壊れたキャストが役に立つとは思えません」
兵士の表情とは裏腹に、マガシがニヤリと笑う。
「なに、その点なら心配は無い。奴はどこも壊れてはいないからな。
奴はどうも溺愛していたPMを失ったらしくてな。パルムの草原を彷徨っていたのを拾ったのだ」
そして、視線を扉に向けて続ける。
「そこで、奴のプログラムを少々いじったのだ。簡単だったぞ?
奴の記憶にPMの存在を刷り込んだだけで、この俺を恩人だと言ったからな!」
邪悪な笑みを浮かべ、マガシは言う。
「弱きモノが、たかがモノを溺愛するからこうなるのだ。せいぜい使わせてもらうぞ…
フフフ……フワーッハッハッハァ!!」
―ニューデイズ・クゴ温泉方面―
紅葉の山の中を、一人の女性…ビーストのハンターが歩いていた。
その横には、とてとてとPMがついてくる。
「ふぅ…もうちょっとでオンマゴウグだね」
「はい。でも…今回は敵の数が少なかったような気がするのですが」
疑問を投げかけるPMに、女が笑いながら答える。
「あはは、あんたは心配症だねー。いいじゃない、敵が少ないほうが楽だし」
「はぁ… このあたりでイルミナスの兵士がいるという噂もあるんですよ。少しは緊張してください」
少し呆れるPM。
「それよりさ、とっととオンマゴウグ倒して温泉入りたいねー」
PMの心配をよそに、うーん、と伸びをする女。
ふと、PMが妙な表情を浮かべた。
155 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日:2006/11/13(月)00:43:18.48 ID:nM52PNUf
「温泉…ですか?」
「そーだよ。どしたの?」
PMの妙な反応に、訝しげな表情をする女。
「……いえ、なんだか前に温泉に行くことをご主人様と約束したような気がしまして…」
「約束?したっけ? アハハハ、あたし記憶力自信ないから、アンタがしっかりしてくれないといけないんだよ?」
深刻な問題を豪快に笑い飛ばす女。
PMは、再び呆れたような表情を浮かべた。
と、その時、突然女の眼差しが厳しいものへと変わる。
「しッ! 何か…来るッ!」
ブォンという音と共に大剣を取り出し、臨戦体勢を取る女。
同じく杖を構えて主に続くPM。
藪の向こうに蒼い何かを見たとき、女が叫んだ。
「行くよッ!450!!」
「はいッ!」
未来は誰にもわからない。
しかしせめて、未来を信ずるものに星霊様の加護が…あらんことを…
トップへ戻る
IF Story... 02
ガサガサと草むらが音を立てる。
「450、あっちから回り込んで!」
「了解しましたっ!」
ぴったりと合った二人の呼吸に、ターゲットは、徐々に追い詰められる。
いつものことだ。じきにターゲットは逃げ場をなくし、ご主人様に斬り伏せられる。
ターゲットが居るであろう方向から、途切れ途切れに飛んでくるフォトン弾。
しかし、450が避けるまでもなく弾丸は逸れていく。
馬鹿だな…とふと思った。
そんなあたりもしない弾を撃つなんて、自分の居場所を敵に教えるだけ。牽制にもならない。
「これが完全燃焼です!」
弾丸が飛んできた方向にラ・フォイエを叩き込む。
そうすれば…
「はっ!」
短い掛け声がして、金属が壊れる音がした。
刹那、静寂が訪れた。私は警戒を持続したままご主人様のほうに歩いていく。
草むらをわけて進むと、ほどなくしてご主人様の姿を見つけた。
「ふぅ、手間かけさせてくれるね。 さ、覚悟はいいかい?」
ご主人様の大剣が、蒼い何かに向けられている。
その何かは、左肩を抑えてうめいていた。その肩から先にはなにもない。
…なにかが、おかしい。
この場合、私はご主人様に従い、このターゲットの逃走を防ぐべきだ。
いつもなら、この一択。他の選択肢はご主人様の指示がないかぎり、ありえない。
しかし、今私の中にはそれ以外の選択肢が発生していた。
ご主人様を助けるために「女ビーストを撃退する」。
こんな選択肢が出てきた理由がわからない。
女ビースト、この場にそれに該当する人物は一つ。私のご主人様だ。
私が、私の主を撃退する? 理解できない。そんなことは絶対にあってはいけないこと。
「あんたの知ってる情報を流せば、命だけは助けてあげる。さ、どうする?」
ご主人様が迫る。何か…その男性キャストは何か呻き声をあげるだけだ。数字の羅列。数字?
「うぅ……450…450…」
確かにそう言っている。このキャストにも、PMがいるのだ。
私と同じ、GH-450タイプのパートナー。もうひとりの私。
そのPMのために、必死でPMの待つ自分の部屋に帰ろうとしている。このキャストはそういう人だ。
…なぜ、そう思うんだろう。
「仕方ない。あんたがあんな組織に関わったからいけないんだよ。自業自得さ」
振り下ろされる大剣。破壊されるキャスト。
いつもならこれでおしまい。今回もこれでおしまい。
…その、筈だった。
「450! あんた何やってんの!!」
ご主人様の大剣は、振り下ろされなかった。
私が、ご主人様の腕にしがみ付いたからだ。
「やめなさい! やめなさいって、450!!」
厳しい声で私に言うご主人様。早く止めなければ、私、ご主人様に何をやってるんだろう!
しかし、私の口から出た言葉は、想像も出来ないことだった。
「お願いします、止めてくださいご主人様。この人を傷つけるのは…お願いします…!」
私は…壊れてしまったのだろうか。こんなこと、言う筈ないのに。
ふと、ご主人様がこぼす。
「…450……あんた、泣いてるの?」
「え?」
唐突な言葉に、ふと、頬を手で撫ぜてみる。…指先が、濡れていた。理由が…わからない。
「あ… ど、どうして… 私、私…」
メモリーの奥底に、私の知っている筈の無いぼんやりとしたデータの断片があった。
こんなの知らない。私じゃない。私は生まれてすぐにご主人様の所に配属されて……
「あ…あ…」
頭を抱えてうずくまる私に、ご主人様が私の肩を揺する。
「だ、大丈夫!? 450!!どうしたの?ねえ、どうしたの!?」
勝手に組み合っていくメモリーの断片。
……私じゃない私が、そこに立っていた。
―GRM社―
「駄目だな、これは」
白衣の男が呟く。
「いくら上書きしても、元のデータで上書きしてきやがる。ウィルスよりもタチが悪いな」
呆れ果てる男に、別の男が言う。
「450タイプの主人に対する忠誠レベルを少々高く設定しすぎたのかもしれませんね」
ずらりと並ぶカプセルに、450が一人づつ寝かされている。
そんな異様な光景の前で二人の白衣の男が話していた。
「まったく、設計ミスもここまできたら笑うしかないな。こりゃ長引くぞ」
やれやれといった表情の男に、もう片方も同じ表情で言う。
「でも、はやく主人の下に返さないと、またクレームが来まくりますよ」
「とりあえず思考パターンは今のままで、回復行動の回数を減らすように『戒め』をしておくか」
再びコンソールに向かって操作を始める男。
と、別の男が思い出したかのようにポケットを探り始めた。
「そうだ、忘れてました。これ使わないと駄目なんだ」
ポケットから小さな立方体を取り出すと、コンソールに向かっていた男がそれを見た。
「なんだ?デバイスZEROじゃないか。どうしたんだそれ」
「ええ。ナンバー350012の主人が失踪したようなんですよ」
最後に溜息を付け加えて男が言った。
「へえ、酷い主人もいたもんだ。よっぽどガーディアンズやるのが嫌だったんじゃねえの?」
呆れた表情を浮かべる男。
「で、なんでこれの出番なんだ?」
と、デバイスを指しながら尋ねる。
「なんでも、コスト削減の為に初期化して別のガーディアンズに配備するそうですよ」
「かーっ、不景気だねえ。うちの会社も落ちるだけってことないだろうな?」
呆れる男にさらに続ける。
「で、この役目、先輩にお願いできます?」
「なんでだよ。お前やりゃいいじゃん」
後輩の男は心底嫌そうな顔をして答えた。
「えー、やですよ。大抵のPMってこれ使うのに凄く抵抗するんですよ?先輩やってくださいよ」
「まったく、仕方ねえな」
後輩の手からデバイスをひったくり、一つのカプセルに向かう先輩の男。
「こういうのはな、とっとと無理矢理食わせればいいんだよ」
カプセルのフードを開けると、そこに寝ているPMの口に乱暴にデバイスを押し込む男。
「ん!?んんんっ!!」
その、言葉にならない言葉が、彼女の最後の言葉だった。
―ニューデイズ―
「ねえっ!大丈夫!?一体どうしたの!?」
ご主人様の声が聞こえる…
「あ…あう…」
知らないメモリーが私の中にある。私は、過去に別の私だったことがあるのか…
でなければ説明がつかない。私は、一度デバイスZEROを食べさせられたことがある。
そうだ…私は、私は主に捨てられたパートナーマシ―ナリー…
「違う!」
突然の私の強い言葉にビクッと身体を強張らせるご主人様。
違うそうじゃない。私のご主人様はそんなことしない。
臆病で、頼りなくて、不器用で、鈍感だけど、
あの人は絶対に私を捨てたりなんかしない。
でも…そんなの私のご主人様じゃない。そんな記憶は無い筈だもの。
私のご主人様は、ビーストの女性。がさつで大雑把。でも意外なほど優しい。そんな女性。
と、その時、ふと何かが聞こえた。
「……ぼ、ぼくは… 僕は…」
蒼いキャストの声。
「僕は…帰らなくちゃ…いけな…いんだ… 絶対、何があっても、僕の帰るべきところは…」
そう呟きながら、よろよろと立ち上がるキャスト。
私の目から涙が溢れる。
ああ…… ご主人様…私だけの…ごしゅじんさま……
私は、私は…ここにいます。あなたの、あなただけのパートナー。私は、ここに…
気が付くと、私はそのキャストに向かって必死で手を伸ばしていた。
それを必死で邪魔するビーストの女。
もうすこし、もう少しで届く。お願い、邪魔しないでご主人様…
「…君に…そっくりなんだ…」
はい… だって私ですもの。馬鹿ですよ…そっくりなんじゃないんです。
「……今、帰るから、450…」
はい。いつものように、お迎えします。だから、だから…
「はい…… お帰りなさ…」
ご主人様をお迎えする私の言葉は、
「SUVウェポン、起動開始!」
……かき消されてしまった。
放たれる無数のミサイル。
手を伸ばしたままの私を抱き上げて逃げるご主人様。
爆風が収まったその場所には、焦げたキャストの左腕が転がるだけで、もう、誰もいなかった。
ふと、手を見る。何かを求めて伸ばした手。何かにとどかなかった私の手。
そして、再び静まり返ったニューデイズの森に、私の叫びが響き渡った。
トップへ戻る
IF Story... 03
―GRM社、PMメンテナンス受付
一人の女ビーストが、技術者に噛み付いていた。
「どうなんだよッ!治せるのか、治せないのかはっきりしなっ!!」
胸座を掴まれたヒューマンの技術者がブンブン振り回されながら弁解する。
「だ、だから解らないんですよ!貴女の言ってるようなことは普通ありえないんですから!」
ニューデイズでの出来事の後、数日が経っていた。
女ビーストは、あの時異常な行動をとった450のメンテナンスのため、GRM社に来ていたのだ。
しかし、その結論は「不明」。まるで原因がわからないらしい。
「だからってね、はいそうですかって言えるかッ!!事実うちの子はそれで悩んでるんだからね!!」
まるで納得いっていない口調で更に迫る女ビースト。
技術者はなんとか説得を試みようと同じことを繰り返すが、彼女を納得させることはできない。
「…もう、いいんですご主人様」
二人のやり取りから少し離れたところで、うなだれていた450が口を開いた。
「申し訳ありません…私が不甲斐ないばかりに…」
そう伏せ目がちに呟く。
「あんたが悪いわけじゃないよ…」
やっと技術者を解放した女ビーストが450の下に駆け寄った。
「でも、あのキャストを見たとき、私、おかしくなったのは事実ですから…」
淋しそうな声。相当こたえているようだ。
「450…」
450の頭を優しく撫でる女ビースト。と、技術者が口を開く。
「もしかしたら、そのキャストに操作をされたのかも……しれませんね」
くしゃくしゃになった髪を整えながら、技術者が言った。
「操作?」と、女ビースト。
「はい。PMといっても突き詰めれば機械なわけですから、外部からの干渉を100%阻止する保証はありませんからね」
その言葉に、女ビーストが拳に力を込める。
「ってことは、原因はあのキャストか………ッ アイツをなんとかすれば、450も苦しまなくてよくなるんだね!?」
ギロリと技術者を睨む女ビースト。その迫力は相当のものだ。
「た、多分ですよ! 憶測ですからね!!」
その視線に気圧され、慌てて言葉を続ける技術者。
そんなやり取りを見ながら、450は、ココロの中でちくちくと痛むものを感じていた。
……あのキャストにまた逢いたい。逢って……逢って何をしたいのかよくわからない。
でも、逢いたい……
(でも、そう思うのは…………私が壊れているから……)
半ば無理矢理にその思いを押し止める450。今は、そうするしか、そうするしかないのだ。
と、悩む450に声がかけられた。
「450、あんたは部屋に帰ってな」
女ビーストだ。
「え?」
呆気に取られる450に、女ビーストが続ける。
「アタシはあのキャストをブッ倒してくる。あんたは部屋で待ってな」
相当の怒気を孕んだ目。今まで見たこともないような迫力。
「ま、待ってください。私も行きますっ!」
その言葉に慌てて答える450。
駄目だ、ご主人様一人で行かせてはいけない。きっと何か悪いことが、悪い予感がする。
が、女ビーストは450の意見を却下する。
「駄目だ。あんたは部屋で待ってるんだ」
しかし450は引き下がらない。
「いえ、私も行きます。私の使命はご主人様のサポートをすること。私も……行きます」
その目には強い意志が宿っていた。それを感じた女ビーストが折れてしまった。
「…………解ったよ……好きにしな。ただし…」
ただし…その後は解っていた。頷く450。
「わかった。がんばろうな」
笑みを浮かべて450の頭に手を乗せる女ビースト。
450は……ふと、疑問に思う。
自分の言ったことは、果たして本心だったのか。何か他に真意があったのではないか。
本当に「私」の言葉なのか、不安であった。
もしかしたら、私は私ではないのかもしれない。そんな不安が拭い去ることができなかった。
そして、二つの思惑と共に二人はニューデイズに向かう。
そこに求めるものがあると、信じて。
―とある場所
粗末な部屋。そのベッドにはぼろぼろになった箱が寝ていた。
装甲は所々焦げ、フォトンの刃による大小の傷。左腕は無い。
あの時喪失したまま、修理もままならず放置されていたのだ。
と、箱が呟く。
「で、でね、君にそっくりなPMと出会ったんだよ」
箱は、彼だけの450に向かって話していた。明るい声で。
相当の痛みはある。が、それを心配させまいと無理に明るく振舞っているようだ。
(あ、あれ…?)
唐突にごしごしと目をこする箱。尤も、キャスト故に効果はないのだが。
そして再び450を見つめる。が、異変は治らなかった。
(450の姿が…またぼやけて…見える…)
心配そうな表情の450の姿が、ぼんやりと見える。あの日から、そんなことが頻繁に起こるようになった。
(僕も…ガタがきちゃったのかなあ…)
実はこの箱は元々ジャンク品やバルク品、スクラップが多く流用されて組み上げられている。
それが原因か、パルムではゴミ扱いされたことなどしょっちゅうであった。
故に、彼がそう思うのも無理からぬことなのだ。
ふと、箱の記憶が途切れ途切れにフラッシュバックする。
目覚めたのはジャンクショップの粗末なベッド。
パルムででも、モトゥブでも、ニューデイズでも、見つからなかった己の居場所。
ガーディアンズコロニーに流れ着いて、ガーディアンズに末席で合格して、PMが配備され、
やっと得ることの出来た自分の居場所。
それがあのささやかなマイルームであった。
そして、450へと進化したPM。
ある日聞いた噂。彼に生きる目的ができた瞬間だ。
―お金さえあればPMに自由を与えることができるらしい。
そんな途方も無い目的の為に、箱は戦いを続けた。
制限される武器。圧倒的な敵の力。高額な物価。しかし箱はガーディアンズを辞めなかった。
自分が誰かの役に立てる。それが幸せだった。
それは、まるで自分には見えない未来を、PMに託すかのように。
(……僕が壊れる前に、450だけは自由にしてあげたいなあ…… でも、まだ足らないんだよなあ)
ふと、枕元に置いてあった端末を手にする。そして端末を操作して、自分の財産を見る。…少ない…
「ごめんね、450、沢山稼げなくて」
申し訳なさそうに呟く箱。微笑んで頭を左右に振る450。その姿は、やはりぼやけていた。
「ごめん、ごめんね…」
一人ぼっちの部屋で、箱はそこに居ない誰かに延々と謝りつづけていた。
二度と届きはしない手、言葉の代わりに、せめて想いだけは届いて欲しいと祈るように。
箱は、泣いていた。
そして彼が、マガシにニューデイズへの出動を命じられたのは、それからほんの数時間後のことだった。
―ニューデイズ
アテは無かった。ただ、前に遭遇したのがここだから。
たったそれだけの理由で、彼女達はニューデイズの森に来ていた。
「多分、ここに来たら会える気がするんだよね」
意味もなく自信ありげに彼女はそう言った。
アテもなく、歩く二人。変わり映えしない風景。
そんな沈黙を破るかのように、唐突に女ビーストが口を開いた。
「ねぇ、450。あんた、あのキャストと何かあったのかい?」
「え?」
突然ココロを抉るような質問を投げかけられ、動揺する450。
「な、なんでも…ないです」
目を逸らして話を逸らすように答える。しかし女ビーストはそれを許さなかった。
「今からあたしのやろうとしてることは、無事に済む可能性があるかどうかわからないんだ。
多分、あたしかあのキャスト、どっちかが死ぬかもしれない」
遠くを見つめながら続ける。
「だから、後悔のないようにしたいんだ。本当のこと、教えてくれるよね」
450が目を伏せる。地面に、零れた雫が痕を作っていた。
「ズルいやり方だと思ったんだけどね。こういう時にでも聞かないとあんた喋ってくれないと思ってね」
辛そうな表情で450を見る。と、450が口を開いた。
「あのキャストは…………もしかしたら私のご主人様だったのかも……しれません」
雫の痕が増える。肩を震わせながら、続ける。
「そんなことある筈ないんです!私のご主人様は貴女だけなんです!
でも、でも私のメモリーの中に、あのキャストの姿が……う、うぅ…」
女ビーストが膝をついて、450を抱きしめる。
「私、私、ご主人様以外にご主人様なんて居ないのに…どうして…どうして…」
450の頭を撫でながら女ビーストが優しく囁く。
「ありがと。よく言ってくれた。大丈夫、それはきっとアイツに操作された記憶なんだよ。
見てな、その呪縛を、絶対に、絶対に断ち切ってあげるからね……」
彼女の目に宿った炎は、怒りと悲しみで燃え上がっていた。
(違う…違うんです、あの人はそんなことしない…)
そう、450は言いたかった。言わなければならなかった。
しかし、それが声になることはなかった。450の中の何かが、それを押し止めた。
(この想いも、「操作された記憶」なんだ。だから、言ってはいけない。言ってはいけないんだ)
そう思うしかなかった。だから言葉を飲み込んで、ご主人様に、流れに身を任せたかった。
もしかしたら、450は疲れていたのかもしれない。
他のPMが経験したことのない経験に、彼女は耐えられなかったのかもしれない。
ただただ、誰も死なないで欲しい。そう思いつづけていた。
「ご主人様、死な…」
泣き顔で言いかけた450の口を、女ビーストが手で塞いだ。
「!?」
「シッ、なにか、いるッ!」
警戒する女ビースト。ふと、幾人かの話し声が聞こえた。
何時ものように大剣を取り出し、臨戦体勢を取る。
「イルミナスの尖兵…? 原生生物狩りか?」
さらに450に向かって続ける。
「奴らの中心にラフォイエを叩き込むんだ。あとは私がやる」
と声を殺して指示した。それに頷く450。
杖を取り出し、詠唱の後、爆炎が上がる。
刹那、女ビーストが飛び出し、怯んだ一人を袈裟懸けに切り伏せた。
混乱する部隊。横薙ぎされる大剣。上半身だけの兵士がまた数人地面に伏した。
「さぁ、かかってきな!あたしはガーディアンズだッ!!」
叫ぶ女ビースト。飛び交うバレット。そこは戦場だった。
どれくらいの時が過ぎただろう。
辺りの雑草は紅く染まり、血と死の匂いが立ち込める。
震える450。肩で息をする女ビースト。そして二人の前には、小剣を構える蒼いキャストが居た。
「はっ、失った腕は修理したってわけか」
キャストは答えない。
「あんたの所為で、うちのPMがおかしくなっちまってね。責任、とってもらおうと思ってさ」
返ってきたのは、沈黙。
「だんまりかい? それとも怖いのかい?」
女ビーストは見過ごしていなかった。キャストの脚が僅かに震えていたことを。
「臆病ってのはかわいそうだけど、あんたのやり方が気に入らないんだよね」
キャストが、口を開いた。
「僕は…僕は、この仕事が終わったら、報酬を貰うんだ… だから、邪魔は、させない…」
震える声。
しかしそれがビースト女の気分を逆撫でした。
「あんたの報酬なんて知らないねッ! あんたは、あたしのPMを苦しめる存在なんだ!
ここで、その呪縛を断ち斬らせてもらうよ…ッ!!」
「やめてくださいっ!!」
ついに耐えかねた450が飛び出した。
「お二人が争うことなんてないんです!! もう止めてください!!私は、私は何も壊れてませんからっ!」
女ビーストの前に立ちはだかり、必死に止めようとする450。
「ご主人様、お願いです、あのキャストは悪い人じゃ…」
バチッ!という音と共に、450が膝から崩れ落ちた。
「あ………………あ………………ごしゅ…………じんさま…………やめ…………て」
女ビーストの手には、スタンガンらしきものが握られていた。
「ごめんよ。でも、あんたの呪縛を断つ為には、こうするしかないんだ……」
450を抱きかかえ、少し離れたところに寝かせると、キャストのほうを向き直り、一言、言った。
「さぁ、始めようか」
フォトン同士がぶつかり、戦いが始まった。
先手を取ったのはやはり女ビーストだった。
大剣を軽々と振り回し、キャストを追い詰める。
しかしキャストも必死に避ける。当たれば致命傷になりかねない。
降り注ぐ巨大なフォトンの刃を小剣でいなしつつ隙を伺う。
「ハッ、左手は飾りなのかい!? どうやら応急処置程度で、神経回路の接続が間に合わなかったようだね!!」
ブォン!という音と共に横薙ぎされる大剣。
バックステップでかろうじて避けるキャストだが、刹那斬り返しの一撃がキャストの左横腹を襲う。
「もらったよ!!」
凄まじい勢いの大剣。吹っ飛ぶキャスト。
「チッ」
手ごたえが感じられずに舌打ちする女ビースト。
キャストは、かろうじて小剣で大剣の刃を受け、そのまま身体を浮かせてダメージをいなしたのだ。
「うぅ」
身体を起こすキャストに、縦回転で女ビーストが突っ込んできた。
左肩をかすめてキャストの頭の横の地面に突き刺さる大剣。
そのままの勢いでキャストにマウントポジションを取った女ビースト。
「ツメが甘いね。策を弄するからこうなるんだ」
大剣から手を離し、双小剣を取り出す。
キャストが左腕で女ビーストの脚を掴む。なんとかこの体勢を脱出するために。
「なんだい、動くんじゃないか左腕。でもね、これで終わりだよ!」
「うわああああああああああああああああああああああっ!!」
キャストの右腕が女ビーストの顔を狙って動く。
「くっ!」
紙一重でのけぞる女ビースト、そのままキャストの右腕が…
「うわああああああああああああああああああああああああっ!!」
彼の左肩を襲った。
「何っ!?」
呆気に取られる彼女の耳を劈くように金属質の音がして、キャストの胴から左腕が離れる。
「あんたっ!?」
一瞬怯む女ビースト。その隙を見逃さず、彼女の脚の間で身体をよじるキャスト。
女ビーストの体勢を崩すと、そのまま上半身を起こして頭突きを叩き込む。
「あうっ!?」
頭を抑える女ビースト。脚にはキャストの執念とでも言おうか、左腕が噛み付いていた。
「くっ、あんた狂ってるよ!!」
距離を取るキャストにそう吐き掛けると、よろよろと立ち上がろうとする。
ふとキャストを見ると、右手には小剣ではなくハンドガンが。
「何!?」
「その腕には、爆薬を仕掛けてあるんだ。もう逃げられない」
脚に噛み付いた左腕に放たれるバレット。爆音が響き、もうもうと煙が立つ。
肩で息をするキャスト。ハンドガンを下ろすと、背を向けようとした、その時。
「待ちな!」
慌てて再び警戒するキャスト。
煙の中からは白いオーラを放つ、青い獣が現われた。
「くっ…」
「ぬかったね。こういうときのために、わざわざブラストバッジを交換しておいたんだよ!」
そう言うと、稲妻の如き速度でキャストに迫る。
「うあっ!!」
そして、キャストの頭を掴むとそのまま地面に叩きつけた。
二度、三度、繰り返される衝撃。装甲がひしゃげる。狂ったようにキャストを叩きつけるビースト。
青い獣と蒼いキャスト。二つの青が混ざり合うように動く。
何撃目だろうか、地面に叩きつけると、そのまま頭から手を離し、
片足を上げてキャストの頭部に狙いを定めるビースト。
「終わりだよっ!」
まさに脚が下ろされようとした瞬間、声が聞こえた。
「SUVウェポン…起動ッ!!」
黒い空間のボルテックスが、キャストの上に巻き起こる。
「何ッ!?」
ボルテックスの中から、巨大なパワーアームが顕現し、キャストに装備される。
「くっ!」
慌てて飛び退るビースト。しかしアームはそれを逃がさない。
青い獣を掴む巨大な腕。獣の動きが束縛される。
「は、はなせっ!」
その言葉と共に、獣の姿が元の女ビーストへと変わっていく。タイムリミットがきたのだ。
「し、しまった…ッ!?」
焦るビースト。しかし巨大な腕に掴まれ、もはや抵抗はできない。
「こ、これで…とどめだあっ!!」
巨大な腕の一撃が女ビーストを襲う。
「待ってくださいっ!!」
寸前で止まる拳。声の方向を見るキャスト。
その声の主は、450だった。
「もう、止めてください。どうしてお二人が戦わなければならないんですか…」
その言葉に力が抜けるかのように消え去るメテオバスター。
どさっという音と共に地面に投げ出される女ビースト。
「どうしてお二人が戦うんですか… お二人とも、私のご主人様なのに…」
涙でくしゃくしゃの顔と、震える声で450が言う。
「よ、450…あんた…」
息も絶え絶えに450を見る女ビースト。
「……」
無言で450を見るキャスト。その時、彼の中で変化が起こっていた。
ぼやけていた450の姿が、徐々に鮮明になってきたのだ。
はっきりとなる450の姿。それは、目の前に居る450であった。
「き…君は…」
呆然とするキャスト。今、彼の目の前に居るのは、紛れもなく…
「違うっ!!」
突き刺さる言葉。
「あんたの主人はこいつじゃない、あたしだっ! こいつは、イルミナスの兵士だっ!
そんな奴のPMがあんたなわけないっ!」
女ビーストがよろめきつつ立ち上がりながら片手剣を構える。
激しく頭を左右に振る450。
「違います、違うんです。きっと何かすれ違いがあったんです!この人は間違いなく私の…」
涙目で訴える450の言葉を阻んだのは、キャストだった。
「…そうだよ…君は僕のPMじゃない」
ぽつりと、そう言った。
「そんな!?違います。あなたは私の!!」
「違う! 僕の450は今僕の部屋に居るんだ。君じゃない。君じゃ……ないんだ」
視線を落として言うキャスト。
「…君は、君なんだ。未来を掴みたいのなら、僕を……消すしかないよ… 僕は君の…敵なんだ」
まるで搾り出すかのように言葉を紡ぐキャスト。
しかし、450は首を振る。
「違います! きっと私はあなたのPMだったんです!! 私は、私はそれを確かめたい…っ!!
だから、お願い…お願いですから…」
ぽろぽろと涙が溢れる。お願い星霊様、この想いを届けてくださいっ!!それだけが彼女の願いだった。
しかし、ゆっくりとキャストの右腕が動く。持っていたハンドガンを、450に向けて構えた。
「!?」
信じられないような表情の450。そんな彼女にキャストが言い放つ。
「もう一度言うよ。生きて未来を掴みたいのなら、僕を消すしかない!」
「そんな!そんなことあんまりですっ!! 私は、私はあなたの!!」
450の言葉を無視して、引き金にかかったキャストの指が動く。
と、その時、キャストの脇腹にフォトンの刃が深々と突き刺さった。
「あ……ああ……」
呆然となる450。
「が、ぐふ…」
彼の口からオイルが漏れる。
「させないよ… あの子は、私の… 私のPMなんだ…」
キャストがよろける。その表情は、苦痛に歪みながらも、どこか微笑んでいるようだった。
「ご、ご主人様っ!!」
駆け寄ろうとする450をキャストが制する。
「ぼ、ぼくは… 僕は、僕の…450のところに…行くから…」
脇腹の穴からオイルが漏れる。
「君も…君のご主人様のところに… 帰るんだ…」
よろよろとその場を去るキャスト。女ビーストはもう追いはしなかった。
「あ…あ…」
言葉が出ない450。
と、キャストが振り向く。
「……ばいばい、450…」
450が最後に見たそのキャストの表情は、とても満ち足りた笑顔だった。
―数日後、ある建物
「おーい、そっちはどうだー?」
「いや、駄目だ。もぬけの殻だな」
二人の男の声がする。
「畜生、マガシの奴、さっさと逃げやがったのか… じゃあ、俺、こっちの方さがしてみるわ」
「ああ、頼む」
片方の男、緑と白の服で身を包んだヒューマンの男が扉を開く。
「やっぱり誰も居ないか… ん?」
ふとサイドテーブルに目をやると、
粗末な部屋とは少々場違いな、古ぼけてはいるものの明るい色の包みがあった。
「なんだこれ?」
その包みに手を伸ばし、リボンを解く男。
中から出てきたのは、枯れて、もはや光らなくなったパープルフラワの鉢植えだった。
「なんだこりゃ? 枯れるまで放置するなんて酷い奴だな」
男は、枯れた花をそばにあったゴミ箱に包みと共に入れる。
「さて、マガシを追うとするか!」
男は部屋から出て行った。
もはや渡されることのないプレゼントを残して。
おしまい
トップへ戻る
番外編
[´・ω・] <ハコデモ アイシテ クレル?
|\ \
ロニコ コ
t=t
ソ ゚-゚)ノ <ソレガ シゴト デスカラ
.<|: :|ソ
レ| |レ
.∞
[´;ω;] <…
|\ \
ロニコ コ
t=t 。oO(440ニ テヲダシタラ モノメイトニ シマス
ソ ゚-゚)ノ
<|: :|ヽ[*・ω・] 。oO(ヤサシク シテネ
.レ| |レ |\ \
.∞ ロニコ コ
t=t 。oO(ダレモ キタイシテマセンガ
ソ ゚-゚)ノ
<|: :|ヽ[*・ω・] 。oO(ココハ ハコガヤルシカ
.レ| |レ |\ \
.∞ ロニコ コ
t=t 。oO(チョットダケ ミナオシマシタ…
ソ;゚-゚)ノ
<|: :|ヽ[*・ω・] 。oO(ヤッタ!! ボクヤッタヨ!!
.レ| |レ |\ \
.∞ ロニコ コ
トップへ戻る
[`・ω・] 。oO(ソウダボクハハコダッタンダ!! ココハ450ニ ハコノイゲンヲミセナイト!!
|\ \
ロニコ コ
キョロキョロ
t=t
ソ゚-゚)ノ <ゴウセイオワッタノニハコガイナイ…
.<|: :|ヽ
レ| |レ
.∞
て
| <450ー t=t そ
| ノ(゚-゚ソ
| .<|: :|ヽ
| レ| |レ
.∞
| ガオー ハコダゾー!!
| ヽ[=[ ゚Д゚]ノ t=t
|ミ. / / .ノ(゚-゚ソ
| ノ ̄ゝ .<|: :|ヽ
| レ| |レ
.∞
|
| ヽ[=[ ゚Д゚]ノ t=t
| . / / .ノ(゚-゚ソ
| ノ ̄ゝ .<|: :|ヽ
| レ| |レ
.∞
|
| ヽ[=[ ゚Д゚]ノ .t=t
| ./ / ノ(>_<ソ <キャーハコダワー
| ノ ̄ゝ レV)
| レ| |レ
.∞
|
| ヽ[=[ ゚Д゚]ノ t=t
| ./ / .ノ(゚-゚ソ <サテゴウセイガオワッテマスヨ
| ノ ̄ゝ .<|::|ヽ トットト トリダシテ クダサイ
| レ| |レ
.∞
| ブンブン
| [ .]ノシ <ガ、ガオーハコダゾーハコー
| ノ| |
|___[ニロロ =[ ゚Д゚] ロ←モノメイト
トップへ戻る
。oO(…
t=t (@)
ソ#゚-゚)ノ.| n
<|: :| ̄| [*・ω・]E) 。oO(>>198GJ!!!
.レ| |レ |\ |ア
.∞ ロニコ コ
トップへ戻る
t=t <>>262サマノ オッシャルトオリカドノナレアイハ キンモツデスヨ
ソ゚-゚)ノ
<|: :|ヽ[・ω・ ]
.レ| |レ |\ \
.∞ ロニコ コ
t=t
ソ゚-゚)ノ
<|: :|ヽ[;ω; ] <ボクラモ ダメナノ?
.レ| |レ |\ \
.∞ ロニコ コ
t=t
ソ゚-゚)ノ
<|: :|ヽ[;ω; ]
.レ| |レ |\ \
.∞ ロニコ コ
t=t <ワタシタチハジュウニンジャアリマセンカラ…
ノ(-゚.ソ)
<|: :|ヽ[;ω; ]
.レ| |レ |\ \
.∞ ロニコ コ
.t=t
.ノ(//ソ)
.<|: :|ヽ[`・ω・] <ナルホド
..レ| |レ |\ \
.∞ .ロニコ コ
トップへ戻る
ま、そのうち住人達の中でスレのルール(?)の取捨選択が行われていくんじゃないかと思うんだ。
>>> >>599後
[;・ω・] 。oO(450ニ バレナイヨウニチマチマトウコウ シナイト…
|\ \
ロニコ コ
>>> >>638後
<ハコー!
[;・ω・] 。oO(ハウッ450ガカエッテキチャッタ!!
|\ \
ロニコ コ
<~♪
[;・ω・] 。oO(ゴハンノマエニサイゴマデトウカスルネ
|\ \
ロニコ コ
>>> >>647へ
トップへ戻る
レス㌧! 450連れて通路A行ってきたぜ!
|
|
∧
∪
.ロ
.| | ]
| |
| |
ロ.ロ
| ̄ ̄ ̄ ̄
っ
t=t っ
. ヽノ v)ノ
. | j |
はやいとこ、せめて元に戻らないかな…450…
。oO(アブナカッタ…
|ヽロ´・ω・]
ロニコ コ
トップへ戻る
[`・ω・] 。oO(>>548 フンフン ナルホド
|\ \
ロニコ コ
[`・/凡_凡 <デキタ
| | .|
ロニコ| .|
\___/
| <450!プレゼント!!!
| [`・/凡_凡 t=t
|ミ. | | .| .ノ(゚-゚ソ
| ノ ̄ゝ| .| .<|: :|ヽ
| \___/ . レ| |レ
.∞
__ Ω
ロ=[ [´゙゚'ω゚']_ ノ===
 ̄ ̄ヽ ゙゙
ポタポタ
トップへ戻る
おk、ルウ教官のパンティラ画像ゲット
[ `・ω・´]
 ̄\ / / ̄ ̄ ̄ ̄/ t=t
 ̄ ̄| / ./ GRM / ノノノハハヽ
 ̄| |(__ニつ/____/ __ノ(゚ -゚_レ_______
田| | ))\ O O
ノ||| |  ̄ ̄ ⌒ ̄
||
||
ヽ||ノ ピュー
[ ´;ω;]
 ̄\ / / ̄ ̄ ̄ ̄/
 ̄ ̄| / ./ GRM /
 ̄| |(__ニつ/____/ _______
田| | ))\
ノ||| |  ̄ ̄ ⌒ ̄
こうですか!?わかりません!
トップへ戻る
>>351>>352
おk、何も考えないで書いてた。今度から気をつける…っと
[ `・ω・´]
 ̄\ / / ̄ ̄ ̄ ̄/ t=t
 ̄ ̄| / ./ GRM / ノノノハハヽ
 ̄| |(__ニつ/____/ __ノ(゚ -゚_レ_______
田| | ))\ O O
ノ||| |  ̄ ̄ ⌒ ̄
 ̄\ / / ̄ ̄ ̄ ̄/ t=t
 ̄ ̄| / ./ GRM / ノノノハハヽ モギモギ
 ̄| |(__ニつ/____/ __ノ( ゚ ロ゚レ_______
田| | ))\ O[´;ω;`]O
ノ||| |
トップへ戻る
その他
「なぁ、知ってるか?」
モトゥブの酒場で一緒に呑んでいた仲間のニューマンがそう言った。
「ん?何が?」
そう言って俺はつまみを口のなかに放り込む。
「オンナの怨念って、人形に篭るんだってよ」
おいおいホラー話かよ。この科学万能の時代に。
俺はククッと笑って酒を呑む。
「ほれ、ニューデイズの店にオキクドールってやつあるだろ?」
「ああ、あの不気味な人形な」
ニューマンはにやりと笑いながら顔を近づけてきた。
「あれにも宿ってるらしいぞお、怖いねェ、怨念って奴は」
「勘弁してくれよ、野郎と顔を突き合わす趣味はないんだ」
俺は苦笑いを返す。ついでに呪いとか怨念とかいうのも趣味じゃない。
「まぁ、ニューマンは信心深いからな。そういう噂もあるのは当然か?」
再び二人の周囲がいつもの雰囲気に戻る。
「ははは、そーだな。しかしな、ヒューマンのお前もちょっとはそういうこと信じてみたほうがいいかもよ?」
俺は椅子から立ち上がりながら答える。
「はは、考えとくよ。んじゃ、ここは支払っとくぜ」
「おう、またな!」
ニューマンの声を背に受け、俺は上げた右手をひらひらと振って酒場を出た。
プシュー
「おかえりなさいませ」
ふよふよと浮かぶPMが俺を出迎えた。
このまま寝るのもいいが、そのまえに一仕事―PMの餌をやっておこう。
「ほれ、喰えよ」
「モギモギ これ・・古くないですか?」
「はいはい、次これな」
「モギモギ これ・・古くないですか?」
何時ものように何時もの言葉のリフレイン。
もうちょっと気の利いたことを言ってもらいたいものだが、
PM相手にそれは贅沢ってもんだな。
そうやって機械的に餌をやっていると、突然PMが光りだした。
これが最終進化って奴か!
期待の中、その進化を見守る。
「ん…」
そこには、一人の少女が居た。カタログ通りだ。すげえなあ。
「……」
そしてPMが俺を凝視する。
「よう、俺が主人だ。わかるか?」
その言葉に答えるようにPMが微笑んだ。
「ああ…やっと逢えました…」
ん? 妙だな。聞いた話と少々台詞が違うが…
「ずっと、ずっと逢いたかったんですよ…」
おかしい。絶対におかしい。他の奴らのPMと雰囲気がまるで違う。
「お、お前、本当にPMなのか?」
緊張に耐え切れず、恐る恐るそう聞いてみる。
「はい。今は…」
今は?今はってどういうことだよ。今は…じゃあ…
「…『前』は違ったのか…?」
後から思えば聞かなければよかったと思う。しかしその時の俺は聞かずにはいられなかった。
「はい…私はずっと、ずっとずっと貴方を見てました…
貴方の歩く姿、話をする姿、お店で商品を買ってくれた姿。全部見ていました」
「全部…って…」
俺の脳が高速回転する。そして一つの記憶を呼び覚ました。
そう、忘れていた…いや、意図的に記憶の奥に封じ込めていた出来事。
それは、1年ほど前の出来事だ。俺のところにプレゼントが届き始めたのだ。
最初は、怪しむものの取っておいていた。しかしそれが連続し始めた頃には友人に相談し、
髪の毛が編み込まれたマフラーが届いた時にはもう駄目だった。
俺はすぐ家を飛び出た。そして一人暮らしを始め、ほどなくしてガーディアンズに入ったのだ。
引越しによってそのプレゼントはこなくなり、安心していた。
ガーディアンズの激務が過去を忘れさせてくれていた。
しかし、あの髪の毛からして、相手はヒューマンかニューマン、もしくはビーストだ。
キャストでは…当然PMなわけがない。
小刻みに震える俺を見ながら「彼女」はこう言った。
「わたし、身体を作りかえたんです。すべてをかえて、PMになって、あなたのそばにずっといたかった…」
かえた?こうかん?ど、どういうことなんだ…
「すべてをかえましたけど、まだもとのままのところがあります」
こんなことがあるのか?あっていいのか?PMは工場で作られた機械なんじゃないのかよ!
「のう と しきゅう です。 わたし、あなたのこどもがほしいんです」
腰が砕け、しりもちをついた。丁度PMの視線と同じ高さ。PMの目が、俺を見ている。
PMの目に俺が映っている。
「わたわたわたわたし あなたをををを あいしてててていますすすす」
表情が固まったままのPMが、妙な言葉遣いをしながら近づき、俺に馬乗りになる。
動けない。恐怖…いや、これが怨念なのかもしれない。
普通のPMにはない、いや、絶対にあってはいけないものだ。
「ささささああ わたわたわたわたしと ひとつつつつつつに」
そっと俺の頬に触れたPMの手が暖かく感じたのは俺の気のせいだったのだろうか。
「ひとひとひとひとつになって えいえいえいえんににににに」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
絶叫がマイルームに響き渡る。と、同時に、乾いた音が響いた。
紅い、果てしなく紅いものが部屋に飛び散る。
PMにある筈のない器官が、そのPMにあったという確かな証拠が壁に、床にペイントされた。
「ふむ、やっぱり失敗じゃったか… だから無理だといったんじゃよ。哀れな娘じゃの」
そんな言葉を最後まで聞くことが出来ず、俺の意識はなくなっていった。
貴方のPMは、本当にPMですか?
トップへ戻る
プシュー
主「いらっしゃいませー」
客「どんな素材あるかなーっと」
主「こち
パ「こちらです」
客「じゃあ、これとこれを。」
パ「全部で3600メセタです」
客「はいこれ」
主「ありがとうございましたー」
パシュン
主「…なあ、俺の居る意味なくね? 価格はギリギリまで抑えてあるし、俺のやれることって挨拶するだけじゃん」
パ「でもいないとお客様来ませんよ。検索に引っかかりにくくなりますから」
主「…・・放置しててもいい?」
パ「いいですよ。でも値引き交渉された時はどうします?」
主「……してくれませんか?」
パ「いいんですか?」
主「どうして?」
パ「私達の金銭感覚は、"ユーザーからムシるだけムシる"ですよ?」
主「……がんばります」
トップへ戻る
主「また失敗か」
パシリ「うぅ…ごめんなさい…」
主「まだ能力上げないといけないのか」
パシリ「モギモギ…そうですね」
主「何ガミサキ喰ってやがる!!!」
パシリ「だ、だって、ご主人様が能力上げるって言ったから…」
主「だからといって食っていいものと悪いものがあるだろうがっ!!」
パシリ「ごめんなさぃぃ~~ パシリって何でも食べちゃえるから…」
主「……そうか、そうだよな」
パシリ「はぃ?」
主「じゃあ、これ飲んでみ」
パシリ「水? はい…コクコク …!!」
パシリ「うぎゃああああああああああああああああ」
パシリ「ぐおおおおおおお~~~~~~~~~!!」
主「超神水。 猛毒に打ち勝つことで己の中に隠れ持っているパワーを
全て引き出すことの出来る素晴らしい水だ」
パシリ(どっからそんなもん手に入れやがった~~~~っ!!)どたんばたん
トップへ戻る
以前
主「いてて、450、ちょっと怪我治してくんない?」
450「もう…仕方ないですね…レスタっ!」
現在
主「いてて、450、ちょっと怪我治してくんない?」
450「これくらいの怪我、ガーディアンズのご主人様だったら平気でしょう?」
450「…でも一応 …イタイノイタイノトンデケー チュッ←傷口にキス」
主「( ´∀`)レスタなんていらないや…」
トップへ戻る
前略、母上様。
なんだかんだでパシリと致すことと相成りました。
主「…まあ、なんだ、唐突だが、いくぞ」
パシリ「ちょっとドキドキします」
主「ぬぎぬぎ」
パシリ「うわっ ガチガチに強そう!」
主「ほっとけっ! では、いただきます。むにむに」
パシリ「体の底から 力が抜けていきます」
主「むにむに」
パシリ「熱暴走し…てしまう…」
主「ん、んじゃ、いくぞ」
パシリ「一緒にがんばります!」
主「こういう時に気合入れんな! 萎えるだろ!」
パシリ「まあ ザコですね」
主「( ´;ω;`)」
パシリ「およばずながら援護いたします」
主「う、うお、これは…っ! やべ、もう…」
パシリ「なんか 弱すぎ!」
主「言うなっ!言わないでっ!! ぁぅ…」
パシリ「ちょっと 多すぎません?」
主「すみません。ご無沙汰してましたから… って、ほっとけや!えぇい、一気に突撃だ!」
パシリ「ご主人様が一緒なら怖くないの」
主「やっとそれっぽいこと言ったか… んじゃ失礼して…」
―倫理的に作業中―
パシリ「ああ もうダメかもしれない」
主「お、俺も…っ! うっ!」
パシリ「…」
主「あ、わりぃ、中で…」
パシリ「助けてください 毒が…毒が回って……」
主「これは毒じゃねえ!! むしろ、こう、なんつーか神聖なもんだ!」
パシリ「後ろががら空きっ」
主「え?ちょwおまwww」
パシリ「後ろから失礼しますっ」
主「な、何をする気だ!!」
パシリ「散りましょう」
主「何が!? ねえ何が散るの!?」
パシリ「突っ込みます!援護をお願いします!」
主「援護なんてしねえよ! ちょ、ま、待て…アッー」
前略、母上様。 現実は、厳しいです…
トップへ戻る
シャト「フゥゥゥゥ!!」
420「うにゃあああああっ!!」
主「…喧嘩すんなよ」(首根っこを掴んで持ち上げる)
シャト&420「うにゃああああああっ!!」
主「ぎゃああああああああああああっ!」
トップへ戻る