>>317(箱)氏 その1
目次
#01
プシュー
箱「ただいま」
450「おかえりなさいませ。ご苦労様でした」
何時ものように礼儀正しい仕草と台詞で迎えるパシリ
箱「ええと…」
450「今日の売上です。
そう言ってメセタを渡してくれる。何時ものように稼ぎは少ない。
450「値段交渉されたので3割引にしておきました」
箱「え、勝手に…」
450「今時相場の値段じゃ売れませんよ」
箱「…はい…仰る通りです」
相変わらず妙な所で優秀なお方ですね。原価割れしてませんか?
箱「…ところで仕込んでおいたメイガの出来はどう?」
450「光10%と12%が出来ました。たいした属性じゃありませんね。店に並べますか?」
箱「いや作ったのおま… お願いします」
と、ふと思い出す。
箱「あれ、そういえば3つ仕込んだんじゃなかったっけ?」
450「モノメイトですが要りますか?」
箱「ありがとうございます」
パシリのくれたモノメイトは少ししょっぱかった。畜生、美味いぜ。
もさもさとモノメイトを食べていると、
今日の探索で他のガーディアンズとの雑談で聞いた話を思い出した。
箱「…ところで、最近ね、街とかでとっても仲の良いガーディアンズとパシリの話をよく聞くんだよね」
450に何を期待したのかわからないけど、話してみる。
450「他所は他所。うちはうちです」
箱「…仰る通りで」
相変わらずだ。基本的にうちのパシリはいつもこうだ。
仕事先でキャッキャウフフしているガーディアンズとパシリを見ていると正直羨ましくなり、
あまりよろしくない想像をしてみるが、
マイルームに帰ると決まってその想像は砕かれて掃除してくれる。パシリ自身が。
箱「……」
450「何かご不満でも? 戦闘中のレスタだけでは満足できませんか?」
450「なんでしたらアグディールばかりかけましょうか?」
箱「いえ、レスタで十分でございます」
…正直今のレスタ頻度から減らされると正直死活問題だ。
いやありがたいんだけどね。
450「……」
箱「……」
450「ところで」
珍しく話を振ってくる。妙に緊張するなあ。
箱「は、はい、なんでしょう」
450「ライセンスの更新はされましたか?」
ああ、そのことですか。
昨日しつこいほど念を押してきたのは誰だったかなー
450「何か?」
箱「何でもありません。勿論済ませてきました」
450「そうですか」
箱「そうですね」
450「……」
箱「……」
妙な雰囲気がマイルームに充満する。
頼む、今ばかりはお客様来ないでください。いやマジで。
450「…これからもいssy」
箱「はい?」
450「なんでもないです。次のメイガの属性は何にしますか?」
なんだかよく解らないけど、とりあえずメイガを作ろう。
正直聖地は地獄だ。先日パシリとライアさんと3人で突撃したが、
60回以上の死亡回数は正直へこむ。
ていうかCランクという散々な成績に対して戴くライアさんの説教がへこむ。
とりあえず注文をしておこう。
箱「じゃあ、今回も光でお願いします」
450「グラフォトンの在庫がありませんけど」
あ、そうか。最近使いまくってたからなあ。
箱「取ってまいります」
450「……」
パシリがじっとこっちを見てる。僕また何か悪いことしましたかー?
箱「…?」
450「……」
箱「…あ、レスタお願いできますか」
450「解りました。では参りましょう」
今日のパシリのレスタの頻度が少しだけ多かった気がした。
450ネタがあまり無い気がしたので投下してみた。特に反省はしていない
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#02
ライア「大体アンタはね…」
教官の説教がかれこれ30分は続いている。
リニアライン通路の床が凄く冷たい。
触覚センサーではなく、なんというか…いわゆるココロに。
始まりはほんの出来心だった。
メギフォトンが欲しかったので、どうせ行くなら連絡通路Sだろってことで
たいした闇防具もないのに突撃したのがいけなかった。
因みに死亡回数は僕が13回、450が8回、教官が18回だ。
皆のHPがピンチになったので撤退しようとしても敵に突っ込む教官。
教官は「ガーディアンズたるもの敵に背を向けるな」ということを身を持っておしえてくれているに違いない。
箱「はい、ごもっともです。はい。」
正座をしながらぺこぺこ頭を垂れる。
そういえばライア教官と知り合ってから、やけに頭を下げる回数が増えた気がする。
450「…」
僕の450も一緒に正座して説教を聞いてくれている。
しかしなんか無表情だ…あ、こいつスリープモードにしてるんじゃないのか?
ライア「聞いてんのかッ!!」
教官の拳が脳天に炸裂した。
でも聖地で喰らった時ほど痛くなかった。頭頂部の装甲がへこんだけど。
ふと見ると説教を続けている教官の頭の上に、赤いアイコンが灯っていた。
あれは攻撃力低下状態…むろんFFの俺じゃない。まさか…
隣で正座している450を見ると、やれやれという顔をしている。
おまいか、教官にアグディールかけたのは。
相変わらず妙な所で優秀なお方ですね。バレたら折檻されるのは僕なんですけどね。
それから2時間ほどして僕たちは解放された。
早速マイルームに戻って作戦会議だ。
プシュー
箱「ただいま」
450「おかえりなさい」
今日も先回りされたか。因みに僕は僕一人しかいない自分の部屋を見たことが無い。
必ずといっていいほど450が部屋にいる。一緒に出かけていたときもだ。
なんというか、ガーディアンズってプライバシーってないよね。
箱「えーと、今日の家族会議の議題ですが…」
450「…家族ですか?」
箱「あ、いえ、冗談です。」
450「…そうですか」
すみませんね、こんな箱と家族なんて心外ですよね…はいはいそうですとも…
箱「やっぱり高属性の闇防具が必要だと思うんです」
450「そうですね。そうすれば…」
そうすれば… なんですか?その続きをちょっと期待していいんですか!?もしかして!
450「いい値段で売れますね」
箱「売るのかよ!」
450「空気を和ませるためにボケてみただけです。本当に売るわけないです」
箱「…」
ねえ、箱って期待しちゃだめなの?だめなの?
450「とりあえずメギフォトンもあることですし、メイガラインでも作ってみますね」
箱「あ、はい、お願いします」
450「これでご主人様が死ににくくなればいいんですが…」
箱「…え?」
いきなりの台詞にちょっと驚く。 箱…期待していいよね!いいんだよね!
450「ライア教官が居なくても行けるようになってくれればいいんですよね…」
箱☆超☆期☆待!!
ついにフラグたった!? 僕もキャッキャウフフできますか?できますよね!
星霊様ありがとう! 箱、生きてて良かったよ!!!
異常なテンションと相応の緊張を帯びつつ、450に聞いてみる。
箱「そ、それって、もしかして二人っきr
450「ライア教官って苦手なんですよね。すぐに暴力に訴えますし」
450「へこんだご主人様の装甲治すの私なんですから…」
箱「………寝ますわ」
450「? 解りました。お休みなさいませ。良い夢を」
照明が消えた部屋の横で、450がメイガラインの製作に勤しんでいた。
450「……高属性なのを作ったら、二人だけで潜れるかもしれないんですよね…」
誰に聞かせるわけでもない独り言を呟いて、いつもにもまして真剣に製作を進める450だった。
次の日、完成したメイガ闇50%に喜ぶ箱。通路に突撃する3人。
そして一人メギドで死にまくった箱に説教をする教官。
それを眺める450の溜息が、冷たいリニアライン通路の壁に吸い込まれていった。
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450「課金したんじゃなかったんですか?」
箱「…ごめんなさい。ふかしまんの新しいのが食べたくて…」
450「…わた もといPSUの魅力は新しいふかしまんに劣ると。」
箱「当z …いえまさかそのようなことは…」
450「…そういえば」
箱「は、はい、なんでしょう」
450「私に★8斧と★8槍の基盤がセットされてるんですが」
箱「ちょwwwおまwwwwそれ2ndのパシリに挿そうとして共有倉庫に入れといた奴wwww」
450「素材もあったので知らない間にセットされていました」
箱「おまwww日本語でおkwwwwww」
450「成功率は…」
箱「いやああああああああ!!!言わないで!言わないで!!!」
450「これは難しいですね…」
箱「…モ、モノメイトですか?」
450「そうかもしれません。そうでないかもしれません」
箱「今わかりませんか?」
450「…ログインできないんですよね。 課 金 し て な く て」
箱「……明日課金します…ウゥッ」
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#03
450「只今帰りましt……何やってるんですか?」
箱「あ、おかえりー」
コンビニでスパイシーコルドバまんを買って来た450が、
帰って来た途端僕を眺めてそう言った。
箱「え、いや、その、なんというか、暇だったんで…」
今日はメンテナンス。更に延長のおまけつき。
あまりに暇だったのでマイルームでごろごろしていたのだ。
450「メンテナンスで暇なのは解りますが、インテリアルームの
こんなところに体育座りするのはやめてください。恥ずかしい」
↓
□
□ □
□ □
□ □
箱「だって、インテリアなんにもないんだもん…」
箱「だからせめて箱フィギュアとか陳列してみようかな~なんて思って」
450「ああ星霊様、こんな馬鹿が、グラール星系の恥部が、この世に存在して申し訳ありません…」
両手を組んで、神に祈るようなポーズであんまりなことを言う450。
箱が存在しちゃいけないのでしょうか。箱だって生きているんだ友達なんだ。
箱「あのね、ラッピーの居る風景失敗したの誰よ。パノン6連敗中なのは誰よ」
450「私じゃないことだけは確かですね。2連敗しかしてませんから」
箱「え…じゃあ完成したウォーキングパノンは…」
450「食べました」
箱「な、なんで食べんの!!せっかく出来たのに!」
僕は450に詰め寄った。当然だ、折角完成したものを食べられては
これから先、箱をやっていけない。
しかし450はそんな僕を気にもせず、何時もの調子で尋ねてきた。
450「……一つお聞きしたいのですが」
箱「はい?」
450「ご主人様は、美人キャストと闇属性の蜂の巣面エネミーと、どちらが好きですか?」
箱「そりゃ美人キャストでしょ」
当然だ。当然でしょう。僕だって箱です。男の子です。
450「…そういうことです」
箱「どういうことですか」
450「……つまり、パノンよりも……いいということです」
箱「何が?」
450「……わかりませんか?」
箱「……」
しばらく考える。パノンよりもオイシいインテリアがあると?
うーん、箱的には… あ、そうか!
箱「ああーーーーーっ!」
450「…!?(ビクッ)」
箱「オキクドールがあったか!」
450「……」
…
……
………
-パルム-
拝啓>みんな
僕は今パルムでディ・ラガンと戦っています。
勿論パシリと一緒です。450です。
今、僕の頭頂部装甲はへこんでいます。
グラール星系でも、杖は打撃武器として使えるようです。初めて知りました。
今、手持ちのメイトは残り少ないです。
今日のパシリはアグディールしかかけてくれません。
箱、とても悲しいです。箱は何か悪いことをしたのでしょうか?
星霊様、僕は幸せになれるのでしょうか? 哀れな箱に幸せをください…オネガイ
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#04
幸運というのはどこに潜んでいるのか解らない。
箱「……」
そしてその幸運は、時として悪魔の囁きの如く箱を誘惑するのである。
箱「……ぬうー」
箱は珍しく彼のマイルームで深刻な顔をしていた。
その手には、最大身長の彼からしたらあまりに小さいPM用のデバイスがあった。
箱「確かに、星霊様に幸せをくださいって言ったけど…」
箱「……マジで? これいいの?倫理的に」
経緯はこうだ。
今日、ニューデイズでふとあるパーティに入り、
ヒューマンの男性と2人+その男のパシリで探索をし、それが終了した時のことだ。
ミッションも終わり、出口直前のエリアでなんとなく雑談していると、パシリの話になった。
男「なぬ、おまいもパシリと一線を超えたいと仰るかッ!!」
箱「いやいやいやいや、そんなこと言ってませんって。もうちょっと優しくしてほしいなあと」
男「オン・ザ・ベッドで?」
箱「いやいやいやいやいや普通の生活でですよ!」
男「なんだ」
男「でも解る、解るぞその気持ち! 男たるものやっぱり可愛い女の子に優しくしてもらいたいよな、箱!」
バンバンと箱の肩を叩きながら男が言う。
箱「…ですねえ」
男「俺なんて、俺なんてなあ、>>447-452なことがあってなあ」
箱「……(ソニチ恐るべし…)」
男「更に教官に邪魔されるは教官に邪魔されるは教官に邪魔されまくったんだぜ!」
男の目に涙が滴る。これが男泣きという奴であろうか。
箱「教官に邪魔されまくってるんですね… っていうか段取りが悪いだけじゃ…」
男「よし、決めた!」
男は箱のツッコミを無視してそう言い、きょろきょろと辺りを見回す。
彼のパシリが少し離れたところで花を眺めているのを確認すると、
箱の肩に手を回し、小声で言った。
男「おまいにこれをやろう。」
箱「なんですかこれ」
男「これはな、俺がイヤッフォォォォォウオークションでゲットした、PM用のデバイスだ」
箱「デバイス? 何の?」
男「フフフフフ、これはPMデバイスERO。しかも2個目だ。
これをパシリに使うともうなんだ、パシリが倫理的に問題ある行動を倫理的におkしてくれるステキアイテムだ!」
箱「えええええええっ、ちょ、それはまず・・・」
男が慌てて箱の口を手で抑え、440のの様子を伺う。
440はちょっとこっちを見るが、男が愛想笑いを返すとクスリと微笑んで
再び花をつんつんし始めた。
男「これはお前を同志と認めたから託すんだ。いいな、決して教官と待ち合わせした後に使うなよ」
箱「え、でも、あの、えーと」
男「じゃあ俺は行くぜ。おーい440、次いくぞー!」
440「はーい、わかりましたぁー。 では箱さん、また会いましょうね」
男「じゃあな、箱。俺達は聖地奪還にいってくるぜ!」
箱「え、ちょっとま…」
男「お前もお前の聖地に行けるといいな!! グッドラック!」
男は異常にさわやかな笑顔を浮かべ、親指をぐっと立て、
キラーンと歯を輝かせた後に、箱をキックした。
440「あれ、箱さんキックしちゃったんですか? 彼と聖地まで行くんじゃないんですか?」
男「ああ… 男ってやつはな、全てを賭けてヤらなくちゃいけない時があるんだぜ…」
440「そうなんですかぁ…まさに男の浪漫ですねえ…」
男「箱… 死ぬんじゃねえぜッ!」
彼らが見上げた空はさわやかに青く透き通っていた。
一方、ガーディアンズコロニーのショッピングモール。
450がメモを片手にきょろきょろしていた。
450「ええと、まずはラストサバイバーの基盤と、ユピテリンが3個。あとは…」
ざっと眺めたメモの、終わりのほうが目に入った450の足がふと止まる。
450「……パノン…ゼリー……?」
そこには「オネ[-人-]ガイ」という顔文字とともにそう書いてあった。
450「…はぁ…」
溜息がひとつ。
450「全然懲りてない… まったく、パノンなんかのどこがいいのか…」
450「可愛いかもしれませんが、敵は敵。それにどう考えたって私のほうが…」
そう呟きかけて慌ててメモを持った手で口を抑え、きょろきょろと周りを見る。
セーフだ。聞いた者はいないようだった。
450「コホン」
咳払いでそれまでの言動を打ち消し、丁度目の前にあった素材屋の扉をくぐった。
「あれ、450ちゃん?450ちゃんじゃないですかぁ!」
そんな声が店内に入った450を迎えた。
450「え? あ、410さん」
唐突にかけられた声に驚くも、すぐに状況を理解する450。
410「お久しぶりですねー。半月ぶりくらいですか?」
彼女(410)はこの450と同時期に進化したパシリだった。
近い場所に住んでいる主人に配備されたのか、こうして街中で時々出会うことがある。
450「ええ。うちの箱が最近合成にハマっちゃって… その足りない素材や基盤を購入しにきたんです」
410「あ、うちのご主人様もそうだよー。これでもね、私結構成功率がよくて褒められるの」
450「410さんは合成が得意でしたからね」
410は打撃武器製作のエキスパートだ。これまで幾つか星の数の多い武器を作ったと聞いている。
410「あ、ごめん。450ちゃんは合成がちょっと苦手だったんだっけ…」
450「気にしないで。私を法30、防70に育てたあの箱が悪いんですから」
410「…うん… でも、それってさ」
450「…?」
410「防具を沢山作りたかったんだけど、450ちゃんに進化もさせたかったからじゃないのかなぁ?」
450「…?? どういうことですか?」
410「だからね、確実に防具を合成を成功させることよりも、450ちゃんのほうが欲しかったんだよ」
450「……」
ちょっと思考。 暫らくしてふと気付く。
450「まさか。う、うちの箱に限ってそんなことは…」
450「た、単にレスタマシーンが欲しかっただけですよ。友達居ないし」
当の箱がこの場にいたら「の」の字を書いて拗ねかねない台詞で
410の予想を取り消す450。
410「えー、そうかなぁ? 箱さん、優しそうじゃない?」
450「…お馬鹿なだけです」
410「まあでも、ちょっとはご主人様に優しくしてあげないと駄目だよ?」
410「450ちゃんそういうの苦手かもしれないけど」
450「……考慮してみます」
410「うん、がんばってね。じゃあ私もう行くね。ばいばーい」
450「はぁ… ではまた」
元気に手を振り去っていく410。
ぽつんと素材屋に残された450の頭の中で、410の言葉がぐるぐると回っていた。
プシュー
箱の部屋の扉が開き、何者かが入ってきた。
それは、深刻な顔つきで、何かを考えながらてくてくとインテリアルームに、
そして箱の部屋に入っていった。
「きゃっ!」
「うわわっ!」
二つの声が綺麗にハモって、どすんという音と共に二つの姿が床に重なる。
450「な、なんですかご主人様、床に座って…」
箱「そ、そっちこそ、帰ってきたのなら一言いってくれればいいのに…」
450「あ、はい。只今帰りました」
箱「あ、お、お帰りなさい」
ふと、箱が床に転がった小さな直方体に気付く。
箱「qあwせdrftgyふじこlp お、遅かったね、な、何かあったの?」
慌てて直方体を後ろに隠しつつ、箱が立ち上がる。
450「…?」
怪訝な表情で不信な態度の箱を眺めながら、450も続いて立ち上がった。
箱「と、ところでさ、頼んでたものは?」
450「はい。これです」
箱「えーっと、ラスサバ基盤とユピテリンと他色々… あれ?」
450「どうしました?」
箱「……えぇと、パノンゼr」
450「買ってませんよ、そんなもの」
箱「[´;ω;`]」
450「はいはいそんな顔しても駄目です…そもそもご主人様は表情が出づらいヘッドタイプなんですから…」
箱「…ごめんなさい。でもよく表情が解りましたね」
450「ご主人様が単純だからです。さて、夕ご飯作りますから準備お願いします」
箱「うん」
キッチンに向かう450、のそのそとそれに続く箱。
ほどなくして箱はテノラ社製の机「ダイ・チャッブ」を展開して準備を進める。
以前モトゥブで買って来た逸品だ。
どんなに乱暴に扱っても、フォトンの力で上に乗せたものはこぼれない。
箱「……」
ダイ・チャッブを前にし、あぐらをかいた箱は、深刻な顔をして再び例のデバイスを取り出し、眺める。
450は小さな身体をきびきび動かして食事を作っている。
そんなけなげな姿を見ていると、箱は箱の中に罪悪感がもわもわと沸いて来るのを感じた。
白箱(駄目だよ、450に手を出すなんて駄目だよ!! 450が傷つくかもしれないじゃないか!)
黒箱(何いってやがる、450だってオンナだぜ? お前のことを待ってるに決まってるじゃないか!)
白箱(そんなのは男の勝手な言い分だよ! ダメダメ!ダメ、ゼッタイ!!450とはこれからずっと一緒にいないと駄目なんだよ!)
黒箱(いーーーんだよ。長い付き合いだから、身も心も一緒になる方がいいんだよ!)
箱の心の中で白と黒の二色の箱が言い争う。
そんな混沌とした口喧嘩の騒音をかき消すように
チリンチリーン
と自転車のベルの音が響いた。
白と黒の動きがとまり、その音の主の方を注視する。
一人の男が自転車をこぎながら、二人の箱の前に止まって、二人を見て言った。
男「倫理的におk!」
箱「……やっちゃおうか…」
とうとう箱を決心という名の下心が支配した。
ともあれこうなったら行き着くところまで行くしかないはずだ。
このアイテムを手に入れたのが星霊様のお導きだというのなら、
これから起こることはきっと僕と450にとって良い事に違いない!!
妙な方向で気合を入れていると、ほどなくして嗅覚センサーにいい匂いが漂ってきた。
450「お待たせしました。スパイシア・ペロリーメイト入りと、コルトバスープです」
相変わらず料理は妙に上手い。450は家事洗濯が妙に得意だ。
きっと良いお嫁さんになれるだろう。…いや、まあ、僕のオヨメサンになったりして…エヘー
浮かれまくる内心を必死でなだめ、努めて冷静な態度を取る箱。
箱「今日も美味しそうですね」
450「当たり前です」
そんな何時もの会話をした後、正座をして二人の食器に料理をよそい始めた450。
隙はないか…隙はどこだ…
獲物を狙うアリクイのような視線で箱は食事を進めながら450の気配を探る。
が、そんな隙ができよう筈も無い。このパシリは妙に優秀なのだ。箱などとは違って。
箱「(むう~~困っ)げふっ、げふんげふんげふん ゴフッ!!」
突然箱がむせた。慣れない事をしながら食事をしていたからだろう。
450「もう…… だいじょうぶですか? 今水と布巾持ってきます」
箱(ちゃ、ちゃああああああああああああんす!!!)
早かった。あまりに早かった。Sランクの敵よりも早かった。
普段から想像もつかない速度で、箱が例のデバイスを450のスープの入ったカップに入れる。
450「もうちょっと落ち着いて食べたほうがいいですよ」
450が帰ってきて水を差し出した。
よし、バレてない!僕グッジョブ!!ありがとう>>775の人!!
箱「す、すみません。 ちょっと考え事してて」
450「…慣れない事をされないほうがいいと思いますが…」
箱「すみません…」
450はそそくさと箱や机に飛び散ったスープの飛沫を拭いていった。
箱「……」
なんだか妙に照れくさい。っていうかなんか今日は450がやけに優しい気がする。
箱(こ、これはもう箱的に期待度二倍にばーーーいッ!!ってことなんですかーーーッ!!)
箱の期待は、これまでになくうなぎのぼりで上昇していくのであった。
しばらくして、布巾を片付け終えた450が再び席につく。
そして静かに食事を再開した450が、いきなりデバイスの入ったカップを小さな口に持っていった。
箱(い、いきなりきたぁぁぁぁ!!)
箱の目には、まるでスローモーションのように映る450の動き。
450とカップ距離が近づくにつれ、箱の妙なテンションもどんどん上がっていく。
ついに白いカップと、450の薄いピンクの唇が接触した。
その唇がかすかに動き、コルトバスープを食べていく。
細い喉がこくりと動いたのを確認した箱の身体がカタカタと震え始めた。おそらく緊張で。
箱「ゴゴゴゴゴゴゴゴチソウサマママママ」
450「…? もうよろしいのですか?」
箱「うううううんんん、ももももう寝るね」
450「はい、お休みなさいませ。良い夢を…」
あまーーーーーーーい!! 夜はこれからなんですよ450さん!
箱の夢は夜咲いちゃうんですってば!!
ぎこちない動作でベッドに横たわった箱を訝しげに見ながら450は片付けを始めた。
そして、数時間が過ぎた。
真っ暗な室内のベッドの上で、時折もぞもぞと動く大きな影。…箱だ。
箱(う、ううーん…眠れない…)
スリープモードに入ろうとするも、なかなか入れない。
箱の中の何かが拒否をするのだ。
箱(…今…何時だろ?)
ふと考える。あのデバイスは即効性じゃなかったのだろうか。
箱(…もしかして、騙されたとか…)
心の中でがくーんとくる箱。
やっぱり箱は箱。過度に期待を持ってはいけないのかもしれない。
箱(ハァ… 幸せが欲しいなァ…)
今度こそ寝ようと、もぞもぞと身体をくねらせて布団の中に身体を潜らせる。
と、その時だ。
コツ… コツ…
何かの音が、暗い部屋に響く。音からして、おそらく足音だ。
箱(んあ? え?誰? まさか…泥棒とか…!?)
箱の身体に緊張が走る。武器は無い。しいていうなら拳くらいなものだ。
しかし相手がキャスト、いや万が一ビーストだっりしたら…敵う自信はあまりない。
箱は身を強張らせ、相手の出方を待つしかなかった。
すると、そっと箱の身体に何かが触れた。
それは暖かく、柔かいものだった。
箱(!?)
予想外の感触に、びくりとする箱。
その時、部屋中に張り詰めた緊張の糸を断ち切る声がした。
「ご、ごしゅじん…さまぁ…」
箱「へ?」
声の主、足音の主は箱にとって想像もできない…
いや、ココロのどこかで予想していた相手……450だった。
箱「え、あ… え?えぁ?」
450「ごしゅじんさまぁ…」
450の潤んだ双眸にココロを捕まえられ、パニックを起こす箱。
そんな箱を意に介さず、450は箱の寝るベッドに登り、箱との距離をどんどん縮めていった。
450「わたし、わたしぃ、なんだか変なんですぅ…」
箱(え、こ、こここれはもしかして!?)
箱の中で、一つの考えがまとまる。
箱(こ、これはもしかしてあのデバイスの効果って奴!?)
まるでその問に答えるかのように、450の身体が箱の腕の中に収まる。
箱(それは最大身長の箱にとってあまりに小さすぎた。小さく、柔かく、軽く、そして繊細すぎた。
それはまさに450だった…)
昔読んだ漫画のフレーズをパクって、わけのわからないモノローグをしつつ、
聖地のオルアカのように口をパクパクする箱。いや口らしい口はないんだけど。
もはや正気というものが箱のなかにあったのかどうかはわからない。
小さな身体に相応な、控えめに膨らんだ胸が箱の身体にそっと触れる。
これまで女性との接触いえば、ライア教官の鉄拳かルゥ教官の毒舌くらいしか
経験したことの無い箱の身体に、今まで感じたことの無い感触が広がっていった。
箱(や、やわらかいなぁ… これがおんなのこなのかぁ…)
天国に上る気持ちとはまさにこういうことなのであろうか。
未知の感触に、箱は夢心地で呆けていた。見た目の表情は変わらないけど。
450「あぁ… ごしゅじんさまぁ…」
吐息と共に零れる450の声。
彼女の小さな手が、箱の外部装甲の上を滑る。
彼女の頬が、箱の胸に押し当てられる。
450の瞳がすっと閉じられた時、箱に限界が来た。
箱「よ、よ、450… ぼ、僕…」
感極まったのか、突然箱がぎゅうっと450を抱きしめる。
450「はぁ…」
450が吐息を漏ら……
……あ、あれれー?おかしいなぁ~~
これはもしかして吐息っていうよりー、溜息ーって奴ですか?
箱「へ?」
間抜けな台詞に、450が何時もの声で答える。
450「満足されましたか?」
一体何事かと、カタカタと振るえながら恐る恐る腕の中の450の顔を覗き込む箱。
そこには、あの潤んだ瞳の450……
…ではなく、何時もの、何時ものクールな眼差しの450がそこに居た。
十数分後…
箱「ごめんなさい…」
マイルームの床に、箱が正座をしてうなだれている。
その前には450が、何時もの表情で…
いや、僅かに不機嫌な表情を混じらせ、腕組みをして箱を見ている。
箱「ごめんなさい…」
何度目の「ごめんなさい」なんだろうか。
箱はただそれを繰り返す。口調からして、かなり落ち込んでいるのがよく解る。
箱「ごめんなさい…」
繰り返される謝罪の言葉に、450がやっと口を開いた。
450「具の少ないスープに、こんな固形物が入っていたら気付くのは当然でしょう」
450の手の中には、例のデバイスがあった。
箱「…ごめんなさい…」
溜息を一つ挟み、450が続ける。
450「何かと思って、検索したら… こんなもので何をするつもりだったんですか?」
箱「……ごめんなさい…」
二つ目の溜息。
450「…言えないようなことを……しようとされてたんですか?」
箱「うぅ… …ごめんなさい…」
箱がまた謝る。流石の450にも、限界というものがある。
450「たしかに、PMと『そういう』関係になるガーディアンズもいると聞きます」
450「たしかに、私にも『そういう』機能が無いとはいいません」
450「……ご主人様は、そういう関係がよろしかったのですか?」
ブンブンと必死で首を左右に振る箱。
450「はぁ…」
三つ目だ。
450「それなら何故こんなものを…」
箱「…それは…なんというか、魔がさしたというか… その…ごめんなさい…」
情けない…情けなさ過ぎる。
自分のPM相手にさっきから謝ってばかり。ていうかいつも低姿勢。
これが自分の主かと思うと……
呆れ果てる寸前の450の脳裏に、ふと唐突に昼間のことが思い浮かぶ。
410「確実に防具を合成を成功させることよりも、450ちゃんのほうが欲しかったんだよ」
…私が…欲しかった…?
この世界においての、合成の比重はとても高い。
中途半端に育成されてしまったがために、PMデバイスZEROを与えられ、
初期化されたPMの話も何度か聞いたことがある。
私は、今まで何度合成を失敗しただろう。
きっと、失敗するたびにご主人様は落胆していた筈だ。
でも、今まで「私」の合成能力について不満を言ったことは一度も無かった。
…そんな……まさかそんなこと…
私なんかより、優しいPMなんて沢山居る。
私なんかより、可愛いPMなんて沢山居る。
それなのに、ご主人様はPMデバイスZEROを買う素振りすら見せたことが無い。
450は再び、大きな身体を小さくしてうなだれる箱を見る。
ふと、この姿に進化した時のことを思い出した。
ヒヨコの姿から、突然この姿になって腰を抜かした最大身長の箱。
こんな大きな身体で情けない…と思ったものだ。
こんな主人の下でこれから生活していかなければならないのか…と落胆もした。
でも、そろそろと差し伸べられた大きな手、「こ、これからも、よろしく…」と言った声。
それらに安心感を覚えたのも事実だ。
本心を言えば、そこまでして私を求めたという行動は嬉しくないわけじゃない。
でも… その方法に納得することができない。
450「今回は…」
暫らく続いた沈黙を破り、450が口を開いた。
450「今回は、許します」
箱「…ごめんなさい」
箱が相変わらず俯いたまま繰り返す。
450「もう、謝られなくても……いいです」
箱「…ごめんなさい」
450「だから謝らなくていいです」
箱「はい…」
箱の謝罪ループにピリオドを打って、450が続けた。
450「今回は、ご主人様の気の迷いということにしておきます」
箱「はい…」
450「今後からは、ちゃんと言っ…」
はっとして、零れ落ちそうになったココロを慌てて拾い直す450。
箱は「?」な表情を浮かべている。どうやら聞いてはいなかったようだ。
450「コホン …今後は、事前に冷静になってよーくお考えください」
箱「はい…」
もしここに第三者が居たならば、
「それって考えた後ならOKってことなんじゃないのかよ」
とツッコミを入れたくなるような台詞であるが、
無論450も箱もそこまで考えてはいない。
450「…それでは…」
450は思う。きっとこのままご主人様に任せていたら、
たとえここで許したとはいえ、二人の関係はぎくしゃくするだろう。主にご主人様の方が。
だから、私がちょっとだけ勇気を出すことにした。
箱「はい…」
まだ何か言われると思った箱が再びしょげる。
450「…ぱ…」
箱「ぱ?」
しかし…意外にも勇気が必要だ。ちょっとどころでは済まなかった。
でも、私がなんとかしないといけない。
これは使命だ。パートナーマシ―ナリーとしての…
いや、これはこの箱のPMをやっている「私」の使命なんだ。
450「パ…」
も、もうすこし…っ いけっ私!!
450「ぱ、ぱぱーん!ぱぱーんっ!」
いきなりの出来事に呆気に取られ、ぽかーんとする箱。
恥ずかしさで、バンフォトンよりも真っ赤な顔をする450。
450「お、おめでとうございます。ラストサバイバー、ちょ、丁度今完成しました。属性は10%です」
中途半端にクールな口調とは裏腹に、オーバーヒートしそうなくらい真っ赤になりながら、
箱の目の前に出来上がったラストサバイバーを差し出す450。
箱はまるで状況が理解できず、必死に現状の把握をしようとしている。
時はまだ夜明け前。二人は時が止まったかのように微動だにしなかった。
数分の後、なんとか一部を把握した箱が先に動く。
箱「あ、ありがと…ぅ」
450「い、いえ。仕事ですから」
本当は、打撃100パシリを持つガーディアンズにお願いして作ってもらおうと思っていたのだが、
そんなことは箱の頭には微塵も残っていなかった。
手渡された小剣を俯き加減で眺めながら、箱は呟いた。
箱「もう、寝ようか?」
450「…はい」
450が答える。更に箱が続けた。
箱「きょ、今日は、450がベッドに寝ていいよ…」
450のココロに必死で答えようとした箱の台詞だった。
それがなんとなく解った450は、照れからか回れ右しつつ、極めてクールな口調で答える。
450「…駄目です。PMが主人を差し置いて、主人よりいい場所で寝るわけにはいきません」
箱が少し寂しそうに
箱「あ、そ、そっか… そうなの…」
と呟く。
しかしその呟きが終わる前に、後ろを向いたままの450が続けた。
450「……一緒の場所なら……別にいいです」
一瞬の間を置いて、箱が照れくさそうに頭を掻いた。
その夜、初めて二人は床にひいた一つの布団で寝た。
ぎこちない、あまりにぎこちない空気が流れたものの、
何時の間にか二人は眠りについていた。
明日から、また同じような日常が始まる。
相変わらずクールな450。妙に低姿勢の箱。寝る場所も別々に戻った。
特に何も変わり映えしないこれまでの何時もの生活。
変わったといえば、二人の記憶装置に少しだけデータが増えた程度だ。
しかし、二人のココロの距離は、二人が気付かないほど少しだけ近づいた…筈だ。
それは箱の願いを聞き届けた、星霊様の導きであったのだろうか。
それともPMデバイスEROの予定通りのプログラムであったのだろうか?
どちらにしろこの超レアアイテムは、
今日もグラール星系のどこかでドロップされて……いるかもしれない。
おしまい
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#05
ぱら…
一定の間隔で、紙をめくる音がする。
ぱら…
音の主は、450だった。
ぱら…
ショップカウンターの内側の影に座りながら、450は雑誌を読んでいた。
-月間パートナーマシーナリー通信- 略して「月間パシ通」。価格は260メセタ(税込)。
主人達も知らぬ、パシリの間で密かに出版されている雑誌だ。
450「……」
ショップに客が来なく、暇を持て余していたのだろうか。
何時もの表情で機械的にページをめくる450。
450「……?」
ふと、450の手が止まる。
その視線の先に、ある記事があった。
『合成を上手に成功させる、私の秘訣!』
450「……」
そこは、読者パシリの投稿で構成された、
所謂「私のゲン担ぎ・ジンクス」が羅列されたページだった。
「私は合成の前にラッピーの居る風景のラッピーを撫でてます。成功率は9割です!」
とか
「私は合成の前にご主人様に頭を撫でてもらうんですよー! 成功率はきっと上がってる…筈です!」
など、理論的にまるで説明できそうにもない文章が並んでいた。
450「……そんなことで成功したら、苦労はしません…」
ちょっとだけ翳りを帯びた表情で450が呟いた。
いくら箱が気にしていなくても、やはり「法30」に割り振られた能力が
450にとってコンプレックスになっていたのだ。
450「はぁ…」
一つ溜息で区切りを打って、450はまたページをめくり始めた。
と、刹那
ぼふん!!
450の顔が、表情はそのままでみるみる赤くなっていく。
450の視線のその先には…
【綴じ込み付録!パシリと主人のムフフ☆体験!!】
今までのバックナンバーにはなかった付録が、450の視界の中にあった。
450「…」
ぷるぷると振るえる手に、かろうじて命令を与え、雑誌を閉じる450。
450「…わ、私には、関係のない ことですね。興味無しです」
努めて冷静に装ってはいるが、
最近の450の場合、普段が普段だけに一度感情が爆発すると良く目立つ。
ちょっと前までの450ではなかったことだ。
気を逸らす為に店番に戻るが、相変わらず客が来ない為、ついつい雑誌が気になってしまう。
そんな妙な時間が1時間程経ったであろうか、ついに450が耐え切れなくなった。
床に落ちていた雑誌に恐る恐る手を伸ばし、綴じ込み付録のページを開く。
450「これは、情報収集…情報を収集するための仕事なんです。だから、いいんです…」
珍しく言い訳を呟きながら、再びカウンターの内側に座った450が
綴じ込み部分に手を伸ばす。「…まー」
450「情報を収集するためなんです。これは必要な行為なんです…」
ブツブツと自分を納得させる台詞を呟く450。
ぴり…
切れ目が生まれる。「…だいまー」
450「……」
真剣な表情で450の手が動く。
今まさに、450の手によって袋綴じが開けられようとしていたその時。
「ただいまーー、450、いないの~?」
450「ひゃあっ!!」
スパァン!!
ぼわっ!
「わわっ!」
一瞬の出来事だった。
突然の声に驚き、凄い勢いで本を閉じる450。突然発動したギ・フォイエ。
そして灰と変わり果てた雑誌。いきなりの炎に驚く箱。
箱「ど、どうしたの? 今何か燃えたけど、大丈夫?」
慌てて箱がカウンターの後ろに回ってきた。
450「はい、大丈夫です。なんでもありません」
あっというまに何時もの表情に変わった450が、
服に少しかかった灰を払いながら立ち上がる。
450「お帰りなさいませ。探索はいかがでしたか?」
箱「あ、うん。 ええとー ええとー」
箱の挙動がおかしい。 こういう時は、必ずといっていいほど何かある。
主に「問題」が
450「……なにか、隠してらっしゃいますね…」
箱「あ、う、うん… えぇと… あの…その…」
450「…仰ってください」
何時ものようにクールな物言いだ。それが箱の言葉を押しとどめているのか。
箱「えぇっと、実は、お願いしたいことが…」
450「……なんで……」
450にさっきの綴じ込み付録のタイトルが思い浮かぶ。
そして、それに呼応するかのように、自らの「あの」台詞が…
「…今後は、事前に冷静になってよーくお考えください」
確かに私はそう言った…らしい。覚えは無いけどメモリーに残っている。
でも覚えがないから言っていない筈。きっとご主人様が勘違いしてるんだろう。
でも、例え勘違いでも、ご主人様にとって「真実」であったら、
この挙動不審もおかしくはない…と、いうことは…ま、まさか、お願いって…
そんなことを一瞬のうちに考え、言葉を続ける。
450「…すか…?」
450は、自分の身体が徐々に熱くなっていくのに気付いた。
AIがフル回転しているのだろうか。おそらく、このまま抱き…
箱「あの…… これ……」
450の思考の邪魔をして箱が何かを差し出した。
それは、何か甲羅のようなものと、基盤。
450は呆気に取られて答える。
450「…これは…?」
それは、ラプチャシェル3個と基盤/ラプチャだった。
箱「あの…作って、もらえないでしょーか…?」
450「……」
なんというか、馬鹿馬鹿しい。
このやり取りが…というよりも、あんな雑誌の記事に影響された自分が馬鹿すぎる。
箱「あ、嫌ならいいんだよ。 売ればお金になるし」
450「……解りました。すぐに作ります」
箱「あ、うん、お願いねー」
てくてくとインテリアルームへの扉に向かう450の背中に箱が一言かける。
箱「あ、成功率はいくつだっけ?」
450「……2%です」
プシュー
450のクールな声を残して扉が閉まった。
箱「あ?あ、え、ちょ、ちょっと、作るのやめた!!中止するってば!!」
どんどんと扉を叩く箱。
今まで通り、まるで変わりの無い箱。
変わったのは、彼を心配していた450の方だったのかも…しれない?
おしまい
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箱「……」
【※箱の視線】ttp://www.psu-wiki.info/upbbs/data/amiami.jpg
箱「あ、あのー」
450「何か?」
箱「ひっぱっていい?」
450「何をですか?」
箱「ええっと… 紐?」
450「紐ですか?」
箱「うん」
450「……どうぞ」
箱「い、いいの!?」
450「ご主人様さえよろしければ…」
箱「じゃ、じゃあ…」
する…するる
箱「ほどいちゃった…」
450「……はぃ…」
箱(どきどき…)
450「……これで…お止めに…なるのですか?」
箱(ぶんぶんぶん)
箱(ごくり…)
450「……」
するする…ぱさっ
______ _______
O
o __
___。__( ()
| .|  ̄ ̄
/\[´;ω;`] .| …夢かい…
//\\ コ
// \\_ ヽ |
// //|_| .|
\\ // |
\\// ̄ ̄ ̄
\/
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箱が雑誌を読んでいる。
箱「へ、へぇぇぇ、パシリって、一緒に寝るとあったかいんだ…」
箱「こ、今度僕も試してみようかなあ…」
~数日後
箱「450ー、450ー」
450「何か御用ですか?」
箱「今晩、寒くないかな?」
450「寒いでしょうね。もう11月ですし…」
箱「で、ででで、」
450「?」
箱「ででで、でね」
450「はい」
箱「ある雑誌にさ、夜寒いときはパシリにお願いするとあったかく寝れるってあってね」
450「…はぁ」
箱「で、でね、今夜お願いしようかな~~~と」
450「……わかりました」
箱「え、いいの!?」
450「はい」
箱(や、やったぁ!!)
~その夜
, ノ)
ノ)ノ,(ノi ゴォォォォ
( (ノし クスンクスン
┐@) t=t ノ __ ____
..|(| (...v:)) <ギフォイエギフォイエ | |/ / ♯\__
 ̄|ノ/'''‡ ̄7) .| ./ / ※ ♯ ※\____
o/ /ノ /,|_/ / ♯ ※ ♯ ./ /|
 ̄TT ̄ /__/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄,/
↑ビジフォン |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
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#06
それは、ある日の夕食の時だった。
箱「あ、あのさ、明日、温泉いかない?」
珍しく、箱がそんな提案をした。
450「温泉…ですか?」
コルドバヌードルを食べる手を休めて、450が答える。
箱「うん。なんでも、ニューデイズに温泉があるんだって。
今日オープンカフェで話してた人がいてね。
で、最近ずっとモトゥブ周回だったじゃない? 気分転換っていうか」
450「はあ。私は構いませんが…」
というか、主人に行くと言われたら付いていくのがPMの役目であるわけで、
一々伺いを立てる主人というのも珍しい部類だ。
箱「じゃあ、朝イチでいこうよ。今日は早めに寝てさ」
450「はい。解りました」
食事が終わり、暫らくして箱がベッドに入るのを確認した後、450が後片付けを始める。
しばらくして、エプロンで手を拭きながら、ビジフォンの前に移動した450が検索を始めた。
450「温泉…おそらくクゴ温泉のことでしょうか…」
450の問に答えるように、クゴ温泉のデータが画面に映る。
450「紅葉が綺麗…ですか。ご主人様にしては風情があるチョイスですね。 …ふふ」
珍しく目を細めて微笑む450。と、ふと450の手が止まった。
450「……これ…混浴なんじゃ…」
じろりと振り返り、ベッドの上で寝ている箱を見る。
が、溜息を一つして再びモニターに視線を戻した。
混浴…そんなものが目的なら苦労は…もとい、そんな度胸がご主人様に限ってあろう筈もない。
ただ単に温泉と聞いて、行こうと言ったにすぎないだろう。
450「……まぁ、別にいいですけど…」
ちょっとだけ頬を赤らめ、ふと何かを考えついた450はそそくさとバスルームに向かった。
2時間ほど経って、やけに外装が綺麗になった450がバスタオルを巻いて出てくる。
が、どうも足がおぼつかない。長湯で体温が上がりすぎ、人間で言うところの、のぼせたのだろうか。
450(うぅ… でも…これくらい綺麗にすれば…)
そのままふらふらとした足取りでドレッシングルームに向かう。
そして、ドレッシングルームにあるクローゼットを開けた。
450「どれにしよう…」
クローゼットの中には、450が何時も着ている服と同じものが何着も並んでいた。
それを一つ一つ吟味しながら、450が悩み始める。
450「うーん… これはちょっとへたってるかな…」
傍からみれば、どう見ても同じつくりの服なのだが、
450からすれば何かが違うのだろう。じっくり一つ一つ吟味をしている。
450「…これに…しようかな」
30分ほどかかってやっとチョイスした黒いスパッツを穿き、
バスタオルを取って鏡を見る450。
450「うぅ…ちょっとこれは…光沢がありすぎて、えっちぃかも…」
それはそうだ。上半身はブラだけ、下半身はスパッツだけの格好で、
お尻を突き出すような格好をすれば普通にエロい。
450「…ま、いっか…」
なんだか妙に納得しつつ、450は次の衣装の吟味に入った。
~そして~
箱「うわぁっ!!」
箱の素っ頓狂な声で450は起こされた。
450「ふぁ… あ…おはよーございまふ…」
ぽわ~んとした顔で答える450。
それに対し、焦りまくる…というよりは顔を真っ赤(因みに外装の色はブルー)にしている箱。
手で顔を隠しているが、指の間からしっかりとこっちを見てるのは、
まだ寝ぼけている450でもよくわかった。。
450「…??」
段々とはっきりしてきた頭で、自分の現状を確認する。
まわりに散らばる衣装。その中心にいる自分。どうも服を選んでいる間に寝てしまったらしい。
その自分は…スパッツと…白い肌。 他には、何も身に着けていない。
450の中でみるみる現状が整理されていく。と、同時に顔も赤く…
450「きゃああああああああああっ!!」
箱「えぁ? げふっ!」
箱の耳をつんざく悲鳴がして、箱の顔面に何かが直撃する。
450がナノトランサーから預けてあるアイテムを箱に向かって投げたのだ。
450「えっち!へんたい!すけべ!えろえろきゃすと!ヒューガ的な何かーーーっ!!」
箱「ちょっとま げぶっ! かぼっ! だぶっ!! るせいばっ!!!」
マシンガンのように飛んでくる武器、防具、素材。
あ、これはこの前できた光30のサバエザシ。うわー、凄く綺麗なフォトンの刃だ~
さすが切れ味いいねー さっくりと頭に刺さってるよー
450「ばかばか!えろ箱!!鈍感!倫理的にギリギリアウトーーーーーーーっ!!」
飛んできたもので箱が埋もれ尽くした頃、やっと450が落ち着いた。
そして、現状に気付くと慌てて身嗜みを整え、アイテムの山の中から箱を発掘する。
しかし発掘された箱はまるで反応がない。目の光が消えているのだ。
450「う…やりすぎちゃったかも… ん…んしょ」
すぽん!という音と共に頭に刺さっていたサバエザシが抜けた。
450「ご主人様? 大丈夫ですか? ご主人様?」
箱の反応はなく、みるみる450が青ざめる。
450「ご主人様!ご主人様!!目を開け…じゃない目を光らせてください!ご主人様っ!!」
目尻に光るものを浮かべつつ、懸命に箱を揺する450。
暫らくの後、箱の目が切れかけの蛍光灯のようにパチパチと点滅して、点灯した。
箱「う、うぅ…」
450「ご主人様ぁ… だ、大丈夫ですか?」
箱「あ、う?うん。あれ?僕、何してたんだろう?」
450「え?あ、えと…」
どうも箱の記憶が混乱しているようだ。
おそらく頭に刺さったサバエザシのフォトンの力で上手い具合に記憶がすっとんでいるようだ。
450「申し訳ありません…私がナノトランサーをひっくり返してしまいまして…」
箱「あ、そうなの? うーん…なんだか…」
450「な、なんだか?」
箱「とっても綺麗なものを見たような気が…」
450「き…綺麗…ですか?」
箱「うん。なんだろう? 確か透き通るように白い…」
と言いかけたところで
450「あっ!早くニューデイズに行かないと温泉に到着するのが遅れてしまいますよ!」
450「さ、急ぎましょう!」
と、450がまくし立てた。
きょとんとしながらも、流石に現在最優先するものは解っていた箱が答える。
箱「あ、そうだね。じゃあいこうか~」
450「は、はい。早速出かけましょう」
妙な汗を背中に感じながら、とりあえず胸を撫で下ろす450。
450(もう… 今日は大星霊なのに、いきなりツイてないです…)
寝不足でだるい身体を動かして、450は箱と一緒にスペースポートに向かった。
果たして、ニューデイズでは一体何が二人を待っているのか?
箱は、450は、大人の階段を昇ることが出来るのか!?
…転げ落ちなければいいんだけど… おしまい
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#07
箱「え? 今なんて言ったの?どういうこと?」
450からのあまりに意外な言葉に、驚く箱。
450「当分の間、探索に同行できません、と言ったのです」
箱の問いに450が答える。
その答えに、箱が呆然とした表情になる。
箱「な、何かあったの?」
心配そうに尋ねる箱。しかし450はまるで箱を突き放すように答えた。
450「極秘事項です」
箱「僕にも教えてくれないの?」
450「極秘事項ですから」
箱「…何か、困ったことがあったら相談に…」
450「…極秘事項です」
箱「あ、うん、わ、解ったよ… ちょっと、出かけてくるね…」
450に背を向け、とぼとぼと部屋を出る箱。
箱を何時も送り出す450の声はなかった。
プシュー
扉が閉まると同時に、450の目から涙が零れ落ちてきた。
そのままその場にへたり込むと、声にならない嗚咽を漏らし始めた。
顛末は実に単純なことだった。
この星系で450をパートナーとしているガーディアンズから、
450の行動について、突然苦情が噴出したのだ。
これに関してGRM社は、450系の一斉点検をすることになった。
当然同時に点検することは無理があるため、順番となっているのだが、
順番待ちをしているPMは、特に事情を知らない主人に対して緘口令が本社から下りたのだ。
当然、普段から能天気に過ごし、不平もあまり言わない箱が気付かないのは当然であった。
450「うう、ごしゅじんさま…ごめんなさい…ごめんなさいぃ…」
ぽとぽとと床が丸く濡れていく。目の前に居ない主に向かって、
450は何度も何度も繰り返していた。
PMは基本的に仕えた主人に対して従順であり、それが全てだといっても過言ではない。
事実、平均以上にPMを溺愛する主人も居れば、PMも居る。
しかし、今回の件はそれらを覆す出来事だった。
主人を超える絶対的な支配者。そう、それがGRM社である。
絶対に裏切りたくない相手を、欺かなければならない。
その強制プログラムへのせめてもの反抗が、涙となって顕現しているのか。
でも、この姿を箱には、箱にだけは見せられない。見せたくない。
一線を超えたら…きっと私はあの人から離れられなくなる。
必要以上の接触は、お互いを危機に晒す。それがガーディアンズだ。
せめて、見られないように…
力なく立ち上がり、とぼとぼとドレッシングルームに向かう450。
せめて、本社からの迎えが来るまでは…誰もこの部屋に入ってこないで欲しい。
プシューと音を立て、450を迎えるドレッシングルーム。
その中で、一人座り込む450。
いつかまた、あの箱の笑顔と共にグラール星系を歩くことが出来ることを祈って
彼女は静かに瞼を閉じた。
とぼとぼと箱が歩いている。
悪いことは重なるもので、部屋から出たもののどうしようかと考えながらコロニーを歩いていたところ、
ライア教官に見つかってしまい、ついさっきまで研修という名目で、
無理矢理ミッションに連れて行かれていたのだ。
この箱の場合、戦闘能力は平均的なのだが、
生来の弱気な性格の為、大抵ミッション達成ランクはC。
さらにその性格がライアの機嫌を損ねるのか、毎度毎度説教を喰らっていた。
今日もまたその説教を喰らい、450の件もあいまって一層肩を落としているようだ。
箱「…450、ちょっとは元気になったかなあ…」
そう言って握っていた手を広げると、300メセタほどのお金があらわれた。
箱「…はぁ…今日もこれだけかぁ…」
余談だが、この箱の財政は芳しくない。
達成ランクはCが多く、収入の大半は高額な合成関係に費やされ、
他のガーディアンズのように貯金がまるでできないのだ。
そんな風に落ち込んでいる箱の傍を、
またガーディアンズがパートナーのPMと一緒に和気藹々と通り過ぎていった。
ふと、少し前に聞いた話が頭をよぎる。
「GRM本社に突撃して、莫大な金でPMを買い取るガーディアンズがいる」
箱「はぁ…」
また溜息をつく。
それもそうだ。この箱にとって、そんな行為は夢のまた夢なのだ。
正直なところ、ガーディアンズを早く辞めたいのが箱の本音だ。
しかし、生まれたパルムでキャストの恥と言われ、モトゥブではちびビーストに齧られ、
ニューデイズでは「だって箱だし」と蔑まれ、
逃げに逃げて、やっと落ち着けたのがこのコロニーであり、
なんとか生活がやっていけるのもガーディアンズだからなのだ。
今、ガーディアンズを辞めるという事は、箱にとってまた「逃げる」ことになってしまう。
それに…
箱「…なんとかしてあげたいなあ…450…」
もはや箱にとって、帰る場所が出来てしまった。
確かに450に苦労はかけっぱなしだ。450だって辛いんだと思う。
しかし、知らない間に箱にとって450の存在は、かけがえの無いものとなりつつあった。
そうこうしていると、ふと箱の足が止まる。
そこはルームグッズのショップの前だった。
箱「…何か、買っていこうかな」
再び持っているメセタに目を落とす箱。何か買えば、今日の収入はほぼゼロだ。
また450に無駄な買い物だと言われるかもしれない。
少し逡巡した後、箱は店の扉をくぐった。
暫らくしてマイルームの扉の前に居る箱の手には、メセタの変わりに一つのプレゼントの箱があった。
箱「これで少しでも元気が出てくれたらなあ… でも、こんな安物の花じゃ、ダメかも…」
ちょっと苦笑いを浮かべ、マイルームの扉を開く。
プシュー
扉が開くと、箱は何時もより少し元気な声で言った。
箱「ただいまーっ!」
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#08
「くちんっ!」
小さなくしゃみが、燃えるように紅い森に木霊した。
箱「大丈夫? 風邪?今日は帰ったほうがよくない?」
450「ぐす…いえ、問題ありません。普段引き篭もりがちのご主人様が折角遠出をする気になったのです。
ちゃんと帰宅までサポートするのがPMの努めですから」
引き篭もりといわれて「の」の字書き作業に入った箱を尻目に、
450には密かな気合が入っていた。
450(折角人工皮膚を見られてもいいように念入りに洗って、服も一番いいのを選んだのに…
このまま温泉に入らずに帰るなんてできるもんですかっ!)
「くちんっ!!」
再びくしゃみをする450。…キャストも風邪引くのだろうか…
暫らくしてエリア2も中盤にさしかかると、突如通信が入った。
「こんにちわー。よろしくお願いしまーす」
乱入者だ。
一人はニューマンの女性。もう一人はヒューマンの女性だった。
箱「あ、は、は、はい。ど、どうぞよろしく…」
目の前に居ない通信相手にわたわたと焦る箱。
そんな箱を見ながら、450が溜息を漏らす。
全く持って情けないというかなんというか。何時までたっても女性に対しての免疫がない。
私と一つ屋根の下暮らしているんだから、いい加減慣れて欲しいもものだ。
箱「あれ、どうしたの?450、行くよ」
450「あ、は、はい。今参ります。…ところで、お二人は?」
箱「ああ、なんでも準備してから行くから先に行っててってさ」
450「はぁ…」
ふと、450に少し不安がよぎる。もしかしてあの二人…
しかし、その不安はテンゴウグの登場により忘れさせられた。
箱「ぼ、僕が引き付けるから、フォイエ頼むよ、450」
450「了解しました」
久しぶりの指示に少し喜びを感じながら、450は杖を握り締めた。
暫らくして、中継地点に到着した箱達に、女性二人が言った。
「あ、私呼ばれたので抜けますねー」
「私も急用ができたので。ではー」
そそくさとパーティを離脱する二人。
箱「あ、おつかれさまー。ま、またよろしくー」
箱の言葉を最後まで聞かずに、二人は姿を消した。
箱「忙しそうな人だったねえ。じゃあ、行こうか」
450「……はい」
450は不満そうに答える。
さっきの二人はおそらく通り抜けに箱を利用したのだろう。
エリア3の終盤になってようやく戦闘に参加したことからも間違いない。
自分の主人が利用されたのだから、450の機嫌が悪くなるのも当然だ。
しかし箱がそこまで考えているはずも無い。
箱の性格を知っている450は何時もは黙っている。いちいちそんなことを箱に言いたくないからだ。
しかし、今回はそれまで上機嫌だっただけに、つい口を出してしまった。
450「ご主人様」
箱「ん?何?」
450「いいのですか?」
箱「何が?」
やっぱり何も気付いていない。
450「先ほどの二人、単に通り抜けのためにご主人様を利用したんですよ?」
箱「…え、そうなの!? よかった、無口だったのは僕の事が気に食わなかったからじゃないんだ」
少々頭痛を感じる450。こいつは絶対詐欺に逢うタイプだ。
箱「でも、まあいいじゃない。僕なんかでも役に立ったってことでしょ?」
450「そ、そうかもしれませんが!」
憤慨する450に、箱が続けた。
箱「それにさ」
450「?」
箱「まあ、えと、ほら、その 450がね…」
何時ものように何か都合が悪そうになるとぼそぼそとしてはっきりしない箱。
450「…解りました。ご主人様がそういうのであれば別にいいです」
どうせ何時ものことと、450が話を切った。
箱「…ごめんなさい」
なんだか訳もわからず謝る箱。
また謝る…と文句を言いたい450だったが、ともあれ今は目的がある。
うなだれる箱の手を取って、
450「さ、行きますよ」
と箱を引っ張り歩き始めた。
小さな450が、大きな箱を引っ張る妙な光景を見る人はいない。
450はこの幸せな時間を満喫しながら、次のエリアへと少しだけゆっくり歩いて行った。
―クゴ温泉―
箱「うう… やっと終わった…あれはズルいよ…」
オンマゴウグをどうにかして倒した二人は、
やっとクゴ温泉に到着していた。
450「全く…まさかハンドガンを持ってきていないとは思いませんでした」
箱「うう、ごめんなさい…」
空を自由に飛びまわるオンマゴウグに相当苦戦したらしい。
箱「と、ともあれ倒したからいいじゃない?」
450「まあ、そうですけど…」
しかしすぐに450の気は別の方向に向いていた。
450(やっと、やっと到着… 身体、汚れてないかな…)
それはここで気にするべきことなのかどうかが甚だ疑問ではあるが、
ともあれ450の緊張は徐々に高まりつつあった。
450(さ、最初は、やっぱりお背中から流せばいいんだよね……)
箱「…450?」
450は答えない。少々自分の世界に没頭しちゃっているようだ。
450(も、も、もしもご主人様が「洗ってあげるよ(声色)」とか言ったらどうしよう…)
箱「もしもーし」
450(それでそれで、「胸、最近おっきくなった?(声色)」とかバレちゃったりして…)
箱「おーい」
450(そ、それでもって「450…綺麗だよ(声色)」とか言ってそのまま…倫理的な方面の問題になったら……っ!!)
箱「450さんってば」
返事のない450に、箱が肩をぽんぽんと叩いた。
450「ひゃああっ!!」
メゴッ… 静かな温泉に、そんな鈍い音が響き渡った。
箱「を゙を゙を゙を゙を゙を゙」
450「な、なななななんですかいきなりっ!!」
箱「顔は、顔はあかんて450さん…」
450「と、突然声をかけるご主人様が悪いんですっ!!」
箱「ご、ごめんなさい…」
装甲の隙間からだらだらとオイルを垂らしながら箱が謝る。謝る必要あるのかどうかが疑問だが。
箱「ええっと、と、ところで、脱衣所ってあるのかな、ここ?」
オイルを拭きながらキョロキョロと辺りを見回す箱。
450「ええと……あれではないでしょうか」
450の指差した方向にあるのは、どうやらドレッシングルームへのワープポイントだった。
そばにあった看板を箱が読む。
箱「ふむふむ、一人づつ別の部屋に転送されるみたいなんだ… んじゃ、いこっか」
450「は、はい」
ドレッシングルームに入ると、450はふうっと一息ついた。
そして、備え付けの鏡に身体を映しながら、服を脱ぎ始めた
450(傷とか、ないよね… あーーー、肩がちょっと焦げてる…)
450(うぅ、テンゴウグの馬鹿… よりによってこんな時にギフォイエ使うなんてぇ…)
ブツブツ言いながら、手でこしこしと焦げ目をこすると、少し目立たなくなった。
450(これで少しは目立たないかな… んしょ)
バスタオルを小さな身体に巻いて準備万端の450。
450(…よしっ、あとはなるようになれっ!!)
最後に一つ気合を入れた450は、最近大きくなったらしい胸を高鳴らせドレッシングルームを出た。
450「あれ?」
温泉には誰も居なかった。
450「もう、何をもたもたしてるんだろ… くちんっ!」
文句を言いながら流石にこの格好では寒いこともあり、先に湯船に入ることにする。
450「ふぅ…いい気持ち… ごぼっ!」
少し気の緩んだ450が湯船に沈んだ。
湯船は人間サイズで掘られている為、背の低いPMでは、気を抜けば湯の中に沈んでしまうようだ。
450「ごほっごほごほ…けほっ」
咳き込む450。
450「もう、ご主人様が来るのが遅いから…」
照れ隠しか、箱に責任転嫁すると、少し浅めの場所を見つけて湯船を移動する。
450「ふぅ… まだかな…」
肩の焦げ目を洗いながら、箱を待つ450。
と、しばらくして、独特の足音が響いた。
450(! き、きたーーーーーーーーっ!!)
火照った身体を更に赤らめて、450がおそるおそる足音の方に目を向ける。
箱「ごめんー、装甲外すの手間取っちゃって」
450「遅いですよご主じ…」
……450の言葉は最後まで続かなかった。
目は点に。唖然とした表情。そしてぼそりと一言。
450「デ、デガーナ……カノン……」
狂信者の杜を護る巨大マシーナリー。その左腕に装備された武器がなんでここに…
半ばパニックに陥りながら、必死に状況を整理しようとする450。
450(お、おとこのひとってみんなこんななの!? こ、こんなのみんな物理的に大丈夫なの!?)
450(こんなの…どう考えてもサイズ的に………え、ええええええええええっ!?)
箱「ん?どしたの? あれ、450バスタオル巻いて入ってるの?」
450「えぁ? あ、は、はい…」
なんとか正気を取り戻した450が胸元のバスタオルをきゅっと握り締める。
箱「駄目だよー、温泉なんだからそんなものつけて入っちゃ」
450「え?え?え?え?えええええええええええええ!!」
簡単に掻い摘んで言えば、「脱げ」ということだ。多分そうだ。
全く想像を超えた箱の発言に慌ててあとずさる450。
450「ちょ、ちょっと待ってくださいっ! ま、まままままだ心の準備というものがっ!」
慌てる450に、ありえないくらい普段通りの箱が答える。
箱「大丈夫だって。僕が450に酷いことするわけないじゃない」
450「で、でも、でもっ!!」
450としては絶好の機会…の筈なのだが、もはやそれどころではない。
ある意味命に関わる問題だ。450は、今ほど自分がPMだということを呪ったことはなかった。
箱「ほら、ね。だからそれ取って」
箱の大きな手がゆっくりと450の肩口に伸びる。もう駄目だ。後ろに逃げる場所は無い。
大人しくこの状況を、「アレ」を、受け入れるしかないのか…
450「うぅ…」
覚悟を決めたのか、目をきゅっと閉じて身体を強張らせる450。
箱「さぁ、450、僕を…」
450「や、やっぱり…」
箱「ん?どうしたの?」
450「やっぱり、私にはそんなの無理ですっ!!」
メゴッ… 静かな温泉に、再び鈍い音が響き渡った。
「を゙を゙を゙を゙を゙を゙を゙を゙を゙を゙を゙を゙」
450「……あ、あれ?」
一面の紅い空が450の目に入る。
そして、上半身をゆっくり起こして、あたりを見回す。
湯船の外、身体にかけられたバスタオル。
そして、顔を抑えて悶絶する箱。
450「ご、ご主人様、大丈夫ですか!」
少々頭がくらっと来て、身体が思うように動かない。
箱「いやほんと、顔は、顔はホントあかんて450さん…」
いつか見た光景。だらだらと顔からオイルを滴らせる箱。
450「私…一体…」
ぼんやりとした頭で呟くと、箱が顔を抑えながら言った。
箱「そ、装甲外すのにもたついちゃってね、んで、湯船のほうに来たら450がのぼせて湯船に沈んでて…」
箱「んで、慌てて引き上げて、ずっとこれであおいでたんだよ」
よく見ると、胸元には濡れた冷たいタオル、箱の横には薄い木の皮が落ちていた。
450「あ…申し訳ありません…」
PMともあろうものが主人に介抱されるなんて… 450は申し訳ない気持ちで一杯になる。
箱「んーん。構わないって。それより大丈夫?」
450「はい…」
そう答えてふと気付く。
450「あ、あの…」
妙に神妙な言いように箱も緊張する。
箱「は、はい?なんでしょう?」
450「あの……ひょっとして……ご覧になりました?」
顔を真っ赤にして、胸元のバスタオルを握り締め、うつむきかげんでおずおずと450が尋ねる。
ぼふんっ!
箱の顔が真っ赤になる。曖昧な問にこの反応…どうやら箱は…
箱「ご、ごごごごめん!で、でも、ちょっとしか見てないから!ホントだって!!」
450「……そうですか」
ほっとしたような、残念なような、複雑な気持ちで目を逸らす450。
と、箱が呟く。
箱「あ、え、えと、その…でも、あの ……キレイダッタヨ…」
語尾に行くほどどんどん小さくなる声で呟く箱。
しかし、その声を待ち望んでいた筈の450には届かなかった。ていうかまるで聞いていなかった。
450(夢…?幻覚だったのかな… ……ど、どこから…どこまで??)
450(…ま…まさか…まさかまさかまさか… まさかーーーーーーっ!!)
突然がばっと箱に向き直り、箱の腰のタオルの裾をめくり上げる450。
箱「な、なななななななななななな!?!?!?!?」
突然の450の行動にパニックを起こして股間を隠す箱。
めくった中身をまじまじと凝視する450。
確認すべきものはよく見えなかった…っていうか、自分の取った行動にはたと気付く450。
めくった姿勢で停止したまま、みるみるボディが赤くなる450… あ、白熱化。
箱「エッチ[*´;ω;`*]」
ぼそりとこぼした箱の言葉はすぐにかき消された。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
その甲高い悲鳴に、テンゴウグが飛び立ち逃げる羽音がする。そして…
メゴッ… 今日三度目の異音が、静かな温泉に響き渡ったのであった。
おしまい
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#09
「ご一緒にどうですか」
「ご一緒にどうですか」
最初の声に従うように、もう一つの声が続く。
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
ホワイトボードに書かれた文字を指示棒で指しながら、それを読む450。
450「私は左に行きますね」
箱「私は左に行きますね」
それに続く、正座をした箱。
450「ちゃんと仰ることができるじゃないですか」
両手を腰に置き、ふうっと息を吐く450。
箱「あ、う、うん。なんとか、どうにか」
申し訳なさそうにうつむく箱。
450(はぁ…)
溜息を漏らし、どうしたものかと悩む450。
現状を説明するには、少々過去に遡らなければなるまい。
それというのも、温泉からの帰り道から二人の間に奇妙な距離感が出来てしまったのだ。
帰り道から2日ほどの間、二人の間には会話が殆どなかった。
450からしてみれば温泉での出来事は痛恨の極み。
超星霊を越えるくらいの折角の大チャンスを、自分の不覚であんな形で逃してしまった。
それでも、なんとかガーディアンズとPMの関係を良好に保つために、
ちょこちょことアプローチをしてはいた。してはいたのだ。
しかし肝心の箱のほうは、まるで腫れ物を触るかのように、
前にも増して450にへりくだるようになってしまったのだ。
450(もう… ご主人様の馬鹿… 私の馬鹿…)
2つの情けなさで一杯になる450。
こんなことなら温泉なんかに行かなければよかった…
内心そんな後悔を繰り返して、数日が経ったある日のことだった。
箱が何時もに増して肩を落として帰ってきたのだ。
450「お帰りなさいませ…なにか、あったのですか?」
箱「う、うん…」
なかなか目を合わせようとしない箱。
450「悩み事でしたら、微力ですがお力になりますよ?」
箱「……」
黙っている箱。
流石に心配になってきた450は、なんとかしようと言葉を続ける。
450「ご主人様… どうかご遠慮なさらずに…」
そっと箱の手に触れる450。 久しぶりの接触に、少し頬を赤らめる450。
しかし今はそれどころではない。
箱「あ、あのね…」
ついに箱が口を開く。
450「はい…」
箱「今日、ブルースさんが、なんかテストプログラムを作ったんだって」
450「はい」
箱「でね、ガーディアンズも全員そのテストに参加することになったんだけど…」
450「はい」
箱「それ、2人以上じゃないと参加できないんだって…」
450「は、はぁ…」
箱「で、モトゥブの支部の前で参加者が集まるって聞いて行ったんだけど…」
450「まさか…」
箱「何も出来ずに帰ってきちゃった……」
450「……」
450は内心_| ̄|○となっていた。
どんな深刻な悩みだと思っていたら…いや、この箱からすれば深刻なのだろうが…
「…で、では、練習をいたしましょう」
ともあれ気を取り直した450がそう提案する。
馬鹿馬鹿しいことではあるが、主人の悩みの解消をするのもPMの努め。
箱「で、でも…」
躊躇する箱を無視してナノトランサーからホワイトボードを取り出し
ついでに指示棒と伊達眼鏡を装備。450先生の個人授業が開始されたのだ。
……ってアンタなんでそんなものを…
そんなこんなで、冒頭の授業風景となる。
450「これでいけそうですか?」
450が尋ねる。しかし、箱はなんとも頼りなさそうに俯きつつ首を左右に振る。
450「駄目ですか…」
箱「だって、おんなのひとが一杯で… 声出そうにも…緊張して…」
なんというか…
私だって一応とりあえず分類するとしたら女じゃーーーーーーーーーーっ!!と叫びたいのを
ぐっと我慢して、なんとかならないものかと思案する。
450「でも、私とはちゃんと会話できるじゃありませんか」
箱「え、だって…… …450は特別だもの…」
きゅぅぅぅぅぅぅんと450のココロが音を立てる。多分HDDを読み込む音だと思うけど。
450(え、?今なんて言った? 私は…特別?特別!!?? それって、それってもしかしてっ!!)
どぎまぎする内心をぐっと抑えつつも、期待感をだだ漏れにして、肝心な所を聞いてみる450。
450「わ、私が、と、特別とはどういう…」
箱「だって、450はタマタマ(※GH101)の時から見てるから、なんか安心で…」
450は初めての体験だった……失意体前屈。聞いてはいたが、まさか自分がしようとは想像もつかなかった。
嗚呼泥沼、まさにこの姿勢のまま、泥沼の中でスポットライトを浴びつつ沈んでいきそうなこの気分っ!
ああ、星霊様、このアホ箱に裁きを!裁きをお与えください!…でもあんまり酷いことしないでね…
箱「??」
450の内心も知らず、わけのわからない箱。
暫らくしてどうにか立ち直った450が話を元に戻す。
450「つ、つまり、私は見慣れているから平気だということですか?」
なんだか微妙にいい方向に軌道修正した表現をする450。
箱「う、うん」
450「うーん、どうしましょう…」
と、ふと450に案が浮かぶ。
450「そうだ、こうしましょう」
するすると自分の三つ編みを解いていく450。
なんだか妙に恥ずかしい。
今まで箱の前で解いたことの無かったものを解く。
自分が箱にどう見られるのか、心配でありどことなく期待もしている。
ほどなくして髪をといた450が箱の方をちらりと横目で見る。
(参考資料:ttp://moemi.mithra.to/~psu/uploader/src/psu0936.jpg 出典:>>292氏)
450「ご主人様? これで…」
450を指差しつつ、口をぱくぱくする箱…まあ口は無いけど。
450(うぅ……やめてくださいその反応… 余計恥ずかしいじゃないですか……っ)
更に頬を赤らめる450。たしかにかなり別人っぽい。
450「こ、これで練習すれば大丈夫ですよね?」
箱「う、うん… で、でも」
450「で、でも?」
箱「今から定期メンテだって…[ ´・ω・`]」
450「……」
そんなある木曜の朝の出来事であった。
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箱「あの、最近ほんとレスタかけてくれないですよね」
450「そうですね」
箱「どうしてですか?」
450「……機嫌が悪いからです」
箱「[´・ω・`]」
箱「どうすればレスタかけてくれますか?」
450「………」
箱「くれますか?」
450「……私に『好き』って言ってくれたら1回かけてもいいです」
箱「[ ゚ Д゚]」
450「さん、はい」
箱「[ ゚ Д゚]」
450「さん、はい」
箱「[ ゚ Д゚]」
450「さん、はい」
箱「……スキ…デス」
450「……わかってます。 ……ん…レスタ」
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#10
箱「[´;ω;`]」
450「い、いかがいたしましたご主人様!」
箱「[´;ω;`]」
450「ふむふむ、ジョギリで斬られる夢を見た… 何をですか?」
箱「[*´;ω;`*]」
450「? はっきり仰ってください」
箱「[*´・ω・]ボソボソ」
450「……(赤面)」
げしっ 照れ隠しで箱を軽く蹴る450。げしげしっ
箱「[´;ω;`]」
450「と、とにかく、ネタにされるような疑惑があるから悪いんです」
箱「ウン[´・ω・`]ウン」
450「…こ、こほん。 だ、だから確認してはっきりさせないと…」
箱「Σ[´・ω・`]」
箱「ハコハコ[[[[´;ω;`]]]]]プルプル」
あとずさる箱。普段とはまるで違う450が迫る。
450「さ、さあ… おとなしくしてください… もう逃げられませんよ…」
故石川賢絵的な目を宿しながら小さな450が大きな箱を追い詰める。
450「あ、主の疑惑を晴らすのがPMの努めなんです。これがお仕事なんです…フフフフフフ」
箱「いやーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
450「はぁはぁ… これで… ( ゚ Д゚)」
そこには装甲を剥ぎ取られ、一回り小さくなった何時もと同じ、装甲装備状態の箱が居た。
箱「[´;ω;`]」
450「は、箱だけに箱の中にも箱があるということですか…流石ご主人様…」
450「しかし、こんなことで私の気持ちは止められませんよ! えいえいっ!」
再び装甲を剥ぐ450。さらに一回り小さくなる箱。
450「……」
箱「[´・ω・`]」
どんどん剥ぎまくる450。
どんどん小さくなる箱。
そしてついにパシリと同じくらいの大きさになってしまう。
450「……」
箱「[´・ω・`]」
450「…フフ」
箱「?[´・ω・`]?」
450「これで…丁度いいサイズですね…」
箱「Σ[;・ω・]」
450「さぁ… お覚悟を決めてくださいね☆」
箱「いやあああああああああああああああああああああああああああ!!」
\________________________/
o
。
。 ヽ从/
ガバッ t=t / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ソ;゚-゚)ノ:. _ < ハッ!? ゆ、夢…?
r'⌒と、jミ ヽ \_________
ノ ,.ィ' `ヽ. /
/ i!./
(_,. //
く.,_`^''ー-、_,,..ノ/
`~`''ー--‐'
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#11
箱「ただいまー!」
やけに明るい声の箱を450が迎える。
450「お帰りなさいませ。今日はいかがでしたか?」
箱「あ、あのね、今日は4回も協力ミッションでS取れたよ」
どうやら順調に協力ミッションに参加できているようだ。
450「練習の成果が出てるみたいですね」
450が少し嬉しそうな表情を浮かべて言う。
箱「あ…でも…」
450「?」
箱「男ばかりのチームなんだけどね…」
450「…またですか」
成果はあまり出ていないらしい。また特訓しないと駄目なのかな…
と、450がなにかに気付いた。
450「ご主人様、それは?」
箱が後ろに持っているものを指差す450。
箱「あ、これ? あのね、これ、450にプレゼント。いつもご苦労様っていうことで」
溜息を一つこぼす450。
そして片手を腰に手を当て、もう片手を箱の目の前に出し、指を一本立てて言う。
450「ご主人様、無駄遣いは駄目といつも言ってるじゃありませんか」
450「それでなくてもご主人様の懐具合は芳しくないのですから…」
箱がしゅんとうなだれる。
箱「あう、ごめんなさい…」
注意はしたものの、450の内心はかなり嬉しいようだ。
箱の手に合ったプレゼントに手を添えて、
450「でも…… これはこれでありがとうございます」
と言った。
それにほっとする箱。続けて
箱「あのね、PMの服の専門店で、福袋セールやっててね。2万メセタで買って来たんだよ」
450「に、にまん!?」
二万といえば、コルドバヌードルの基盤が200個も買える。
それだけあれば何日食べられるだろう…
450「今回…だけですよ…」
と、箱をじろりと睨む。
箱「はい…」
さらにしょげる箱。
450「…じゃあ、開けさせてもらいますね」
箱「うん」
するするとプレゼントの箱を開封する450。その中から出てきたのは…
450「……………………………………………………なんですかこれ」
450が箱のなかから出てきた紺色の服のようなものを眺めながら言う。
箱「…………さぁ??」
450「『さぁ??』じゃありません、ご主人様、これが何かご存知なんでしょう!」
箱に詰め寄る450。450は慌てて弁解する。
箱「ほ、ほんとだって!福袋を適当に買って来ただけなんだよ!」
450がジト目で箱を睨む。まあ確かに箱が意図してこんなものを買ってくるわけが無い。
もしそうなら苦労はしていない…毎度のことながら…
ていうか、これは服というよりも…
450「これ、水着ですよ」
はっきりと『スクール水着』と言わないのは意図的なものなのであろうか?
箱「え、そうだったの!? なんだ、じゃあ普段着れないんだ…」
心底残念そうな箱。まったくこの箱ときたら、天然でたまにとんでもないことをやってのける…
450「とにかく、ありがとうございます」
と、プレゼントの箱に水着を仕舞おうとする450が、ふと視線を感じた。
何事かと視線の方向を見ると、箱がなにやら残念そうな顔をしている。
450「……………」
箱「……………」
450「……………………何ですか?」
箱「……………………え? い、いや、なんでもないよ」
そんなわけが無い。まったくもってこういうことには嘘がつけない箱だ。
450「……………………………………………………ご覧になりたいんですか?」
箱「え!? えと、あの、その……………」
450「……………………………………………………」
ジト目が箱に突き刺さる。
箱「えと… あー、まあー、なんというか……………………」
450「………………………………………………………………馬鹿」
箱には聞こえない小さな声でぼそりと呟く450。
頬を少し染めて、水着を持ってドレッシングルームに消えていった。
―数分後―
450は後悔していた。
確かに、下心はあった。ばっちり装備していた。
でも、でもだ。これは予想外に恥ずかしい。
450「うう…胸がきつい…」
水着の胸の辺りを指で摘み、伸縮させる450。
450の視界には、綺麗な三角形が大きくなったり小さくなったりしている。
とりあえず胸まわりは諦め、お尻の裾に指をくぐらせすっと通す。
450「……やめておけばよかったかなあ…」
そう言ってももう遅い。おそらく外では馬鹿箱が期待しながら待っていそうだ。
箱「450~ どう?サイズ合ってる?」
扉の向こうから箱の声がする。えぇい仕方ない、このまま行くしかない!
覚悟を決めた450が扉を開ける。
450「ど、どうでしょうか…」
つい胸の少し下で両手で両肘を持つような格好をしてしまったが為に、
やけに胸が強調されてしまう450。そうなると当然…
がたーん
箱が後ろにぶっ倒れた。
450「あ、ご、ご主人様!ご主人様!」
慌てて箱に駆け寄り、手で箱を揺する箱。
450「うう……………これって刺激が強すぎたってことなのかな……」
と、その時
プシュー
>>548「これいいなwww」
コンビニ袋を持った人が入口に立っていた。
450の時が止まった。
>>548「平らに伸ばして、両端を切る。スクール水着完成!」
ワーイと喜ぶ>>548の時も止まった。
どれくらい時が止まっていただろう。先に時が動き出したのは>>548だった。
>>548「すみません、部屋間違いました…」
プシュー
450、人生…もといPM生二度目の失意体前屈であった…
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#12
「はぁ…」 今日も450は溜息をついている。
「まったく…ご主人様、何が悲しくてこんなお仕事を…」
ここはガーディアンズコロニーのある幼稚園の一室。
そこで椅子に座って頬づえをついて溜息を漏らしている450。
そもそも、一昨日箱が奇妙な依頼を持ってきたのが全ての始まりだった。
「幼稚園で演劇のお手伝いのお仕事なんだってさ」
はあ?といいたくなるような仕事だ。
どう考えてもこれはガーディアンズの仕事ではない。
箱の話によると、受付嬢が個人的なつてからの依頼だという。
なんのことはない、戦闘力にいまいち信用がおけなく、
頼まれたら嫌だとはいえない箱の性格を知った上で押し付けたのだろう。
「はぁ…」
またも溜息が漏れる。
自分の台詞はあらかた覚えた。
なんだかんだいってキャストである。記憶能力はよっぽどのことが無い限り優秀だ。
そういえば箱は何をしているのだろう? おそらく雑用だとは思うけど。
「おやゆび姫…ですか…」
全くもって冗談にもならない。いくらPMが小柄だといって、おやゆび姫とは…
と、ふと壁にかけてある衣装を見る。
PMサイズの衣装…
一目見て「お姫様」を連想させる、フリフリの沢山ついた白いドレス。
どう考えても自分に合わない。こういうのは410タイプや430、440や420。
あと自分を除いた450タイプにしか合わないだろう。
「…そうだ…」
台詞データの入ったメモリチップを手にする。
知り合いの450タイプのPMに代わってもらおう。見た目は同じだし相手は子供。
まずばれることはないだろう。
椅子から立ち上がり、ドアに向かう。
そおっとドアを隙間ほど開けて外を見ると、出演者などの関係者が慌しく動いている。
湧き出てくる罪悪感を押し止め、こそこそと裏口のほうに…
「あ、450さん、どこいくんですか!?」
最悪だ…見つかった。スタッフの男性がこちらに駆けてきた。
「え、あ、あの、ちょっとご主人様に用がありまして…」
適当に誤魔化す。これなら別に不自然じゃない筈だ。
ところがその男には通用しなかった。
「それどころじゃないですよ。早く着替えてください。箱さんも進行覚えるのに大変なんですから!」
「は?」
これには450も流石に驚いた。
「もしかして、ご主人様も出演するんですか!?」
なんて無茶なことを…よりによってあの箱を観客の前に出すとは。
万が一台詞などあった日には目も当てられなくなるのはうけあいだ。
「はい。 台詞は特にありませんし、ほとんど演技も必要ないですから引き受けてもらいました」
とりあえず最悪の事態は回避したらしい。
しかし…これでまた逃げ辛くなった。主人が出演するというのに、PMが逃げるというのも問題だ。
…こうなれば仕方ない、辺り一面にラフォイエをぶっ放して…
450の脳裏に危険で危ない選択肢が浮かぼうかというところで、スタッフの男が言った。
「兎に角450さんも早く着替えてください。箱さんとの結婚式のシーンは上手く彼をリードしてあげてくださいね」
「…………………はい?」
男の胸倉を掴んで顔の前に引き寄せ、ギロリと睨む。
「何のシーンですって?」
…怖い。男が気圧される。
「あ、あの…」
「何のシーンですか? もう一度仰ってください。さん、はい」
まくしたてる450。
「け、けけけけ結婚式のシーンで…」
男の呂律がちゃんと回っていない。
「それならそうとはっきり言ってくださいっ!!」
男が解放された…と思った時にはもう450はそこには居なかった。
バタン! とドアの閉まる音。
そして、
「き、気合入ってるなあ…」
スタッフの男が、呆然と言ったのであった。
―控え室
鏡に映る自分を見る。
ちょっとくせのついた紫の髪。唇にはいつもはしないルージュ。
そして、彼女を引き立てる純白のドレス。
ちょっと見、別人でも通るくらいだ。
「はう…緊張してきちゃった…」
450が呟く。
劇に出ることに緊張しているのではない。
そう、彼女の中でのこの話でのメイン、結婚式のシーンに緊張しているのだ。
「たしか、古典のアンデルセン童話のお話でしたよね… この手のパターンは大抵最後は王子様とのハッピーエンド…」
真面目な顔で呟いている割には、ほんのりと頬が染まっている。
彼女が言う王子様、やはりここで妥当なのは…箱だろう。
「台詞でも最後は王子様と結婚するような感じですし…」
確かにおやゆび姫のラストは王子様と結婚してハッピーエンドを迎える。
それがいやがおうにも彼女の中の期待を加速しているのだろうか。
「も、もしも…うっかり『ご主人様』っていっちゃったらどうしよう…
でも駄目。我慢しないと…これもお仕事ですから…」
と、彼女の中で、純白のタキシードを着た箱と、エスコートされる自分が想像される。
「こ、このまま…ホントに結婚なんてことになったら…」
ありえない方向に展開する450の想像。
「ま、まさかこのお仕事全部がドッキリで、最後に婚約指輪を差し出されて…
『結婚しよう(声色)』なんて言われちゃったりしてっ!!」
両手を頬に当てていやんいやんする450。
人前では絶対に見せない異常な光景が、450ひとりきりの控え室で繰り広げられていた。
もはや止まることをしらない彼女の想像が、彼女の顔をどんどん紅色に染めていく。
と、その時、コンコンとドアをノックする音がした。
現実に戻される450。両頬を手でぴしゃりと叩き、何時もの表情に戻る。
「はい、なんでしょう」と応えると、扉の向こうから声がした。
「450~ そ、そろそろ始まるよー」
箱の声だ。
「あ、はい。今参ります」
一つ気合を入れると、しずしずと扉に向かい、そっと開ける。
「お待たせしました」
何時ものようにクールに。何時もより優雅に。450が出てくる。
……あれ?
450の頭に「?」が浮かぶ。
箱が…緑だ。箱の装甲が緑色になっている。
疑問に思いつつも、ここは箱にアピールを… が、箱はあさっての方向を見てブツブツ何かを呟いている。
少々抗議を含んだ口調で、
「あの、いかがされました?」
と尋ねると、やっと箱が気付く。
「あ、ごめん。そろそろ出番だって。いこっか」
450のことなどまるで上の空だ。
内心、もうっ!ちょっとは見てよ!褒めてよ!と思いつつも、
「…はい」と答える450。
―そしてついに、激動(?)の舞台の幕が開いたのであった。
つづくはず
劇が進行している。
450のちょっと機械的なものの、淀みない台詞。
流石に…というべきか、自らの役目を完璧にこなしていく。
450の中にも安堵の気持ちが生まれる。
初めての劇、しかも主役を上手くこなせるかと少し心配だったのだが、
うまくできているようだ。
子供達も興味津々と見てくれているようだ。ちょっと嬉しい。
さあ、次は私が攫われるシーンだ。ベッドに入る450。
そして下手から
「ゲコっ」
(………………………………………………………………はい?)
「ゲコゲコっ」
(……この声、なんだかどこかで聞いたことあるような…)
[;`・ω・´]「ゲコゲコっ」
(箱だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!)
450が固まる。ご主人様、あんた一体なにやってんですか…
勘のいい方なら既にお気づきであろう。
そう、おやゆび姫は王子様と結婚するだけではないっ!
序盤にヒキガエルと結婚させられそうになるのだっ!
大きい身体で必死にカエルのようにぴょこぴょこ…っていうかがっしゃんがっしゃん飛び跳ねて
450の寝る…むしろ固まっているベッドに近づいてくる箱
ナレーションが入る。
「ああっ、醜いヒキガエルがおやゆび姫を攫いにきましたっ!」
(ひ、人のご主人様捕まえて『醜い』とはなんですかっ!!!)
心中で必死に抗議する450。
しかし、彼女の思いを置いておいて、劇は進行する。
[;`・ω・´]「ゲコゲコゲコっゲコっ!」
ナレーション「これが噂の姫か! こんな美しい姫は見たこと無い!」
[;`・ω・´]「ゲコゲコっ ゲコゲコゲーコ」
ナレーション「よし決めた!連れて帰って俺の妻としよう!はっはっはー」
むかつく。なんかむかつく。
450の機嫌がどんどん悪くなる。
(そんな台詞ご主人様に言わせても別に構わないじゃないんですか!?
…そのほうが……………そのほうが…その…………ちょっとは嬉しいし…
ど、どうしてナレーターが言うのっ!なんでなんでっ!!)
そんな抗議も虚しく、ベッドの横まできた箱が立ち上がり、
ひょいっと450を小脇に抱え、えっさほいさと舞台袖へと引っ込んだ。
(おいこらちょっと待て馬鹿箱!!私は荷物ですかっ!
もっとこう、ロマンチックな抱き方があるでしょうに!!)
…が、そのまま退場する箱。そして舞台が変わる。
舞台裏で文句の10や20を言いたい450であるが、
主役&序盤のメインである450と箱にはそんな暇は無い。
あっというまにカエルの結婚式のセットが組まれ、その中心に鎮座する450と箱。
[;`・ω・´]「ゲコっ!」
一生懸命カエルの役を全うする箱。
真面目に役をこなそうとする姿勢は偉いのだが、
今の450の中ではそれが逆に気分を逆なでする状態になっていた。
[;`・ω・´]「ゲコゲコっ!」
ナレーション「さあ姫よ、私の妻となれー」
(くっそー、ナレーター邪魔っ! せめて、せめて本人にっ!)
内心、るるるーと涙を流す450。しかしこれもお仕事。最後までやらなければならないジレンマ。
さらに悪いことに、状況もしっかりとマッチしている。
傍から見ればヒキガエルとの結婚を嫌がるいい演技だ。
そして逃走。箱の見せ場も終焉を迎えた。
ついでに450のささやかな希望も終焉を迎えた。
そんな二人の思惑を置いてけぼりにして、ストーリーは進む。
劇も終盤にさしかかり、ついにおやゆび姫は王子様と出会うことになるシーンに。
開幕前の高揚感はどこへやら。すっかり冷め切った450。
でもちゃんと役をこなしているところが流石というか。
(はぁ…早く終わらないかな…)
そんな450の前に、ついに王子様が登場した。
「ああ、美しい姫様、こうして僕たち二人が出会ったのも神様のお導き。運命を感じずにはいられませんねぇ…」
(うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…)
内なる450がすごい表情になる。
450はこの手のナンパ男が生理的に大嫌いだった。
きらびやかな台詞を吐く割に中身が無い。得てしてこういうタイプはそうだ。
(こんなのが…王子様… もうやだぁ…)
正直逃げ出したい。この王子にラフォイエを叩き込んで逃げ出したい。
しかし…劇を見ている子供達を裏切るわけにはいかない。
箱がせっかく取ってきた仕事を途中で投げ出すわけにはなおさらいかない。
(がまんがまん…もうちょっとのがま… ひゃあっ!?)
気が付くと王子の手が450の顎を、くいっと上げていた。
目の前の王子の顔。ちょ、ちょっと、この展開は子供達の前では倫理的にNO!なのではっ!?
「え? ええ? お、王子様!?」
一応ちゃんと役には従う。けなげな450。
「さぁ、僕たちの愛を確かめるために、誓いの口づけを…」
迫る王子に、突如窮地に陥った450が焦りまくる。
(ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとまってーーーーーーーーーーーーーーーー!!
これって子供相手の劇ですよ!? キ、キキキキスは不味いのでは!?
っていうか、私の初めての相手はもう決まってるのにっ!!!)
そんな450を無視してどんどん接近する王子の馬鹿面。
耐える。耐える450。
ここでヒュ…もとい王子を突き放したら劇は台無しだ。
(うぅ… でも、せっかくご主人様が取ってきた仕事… わ、私が我慢すれば…)
いよいよ覚悟を決めざるおえなくなってきた450。進退窮まるとはまさにこのこと。
ふと助けを求めるように半目を開けて舞台袖を見る450。が、そこに箱は居ない。
(ば、馬鹿っ! 私がこんなピンチなのに何してるんですかっ! 馬鹿馬鹿っ!!馬鹿箱っ!!)
嗚呼あと数センチ。
(ごめんなさいご主人様… わたし、この物体に汚されちゃいます…… うぅ…)
きゅっと目を閉じる450。
刹那
がしゃああああああああああああん!!
…すンごい音がした。
薄目を開けて状況を確認すると、王子様的な物体の頭に、照明が乗っかっている。
すぐに大騒ぎになる舞台。もはや劇どころではなくなってしまっていた…
―つづいちゃった…
―数時間後―
コロニーのショッピングモールをツカツカと歩く450。
その表情は…相当不機嫌であった。
その後を所在なさげについてくる箱。
「あのぉ…」
この空気に我慢できず、箱が声をかける。
「なんですか?」
顔だけでじろりと箱を見て、450が答える。ああ、不機嫌極まりない声…
「ご、ごめんなさい… 変な依頼受けちゃって…」
「別に気にしてませんっ!」
ぷいとまた正面を向きなおして歩き始める。
「あうあう…」
うろたえる箱。
確かにこんな依頼を受けてきたこと自体には450は怒ってはいなかった。
むしろ彼女の怒りどころは、箱をカエル役にしたスタッフと、変態王子、
そして貞操の危機(?)の時に助けてくれなかった箱に対して向けられていた。
「ごめんなさい……」
また謝る箱。
「謝って頂かなくても結構です」
歩きながら箱のほうを見ずに答える450。
「あう… ねえ、どうしたら許してくれるの?」
「…」
箱の問に、450の足が止まった。
「ご主人様」
相変わらず正面を見たままの450。
「は、はいっ!」
「ご主人様は最後のシーンの時、どこにいらっしゃったのですか?」
「最後のシーン?」
まるで理解していない箱。
「…キ…」
「キ?」
「キ、キスされそうになった時ですっ!」
450が振り向いて、怒りと恥ずかしさで顔を真っ赤にして言う。
「あ、え、えと、あの、その……」
「言えないんですかっ!?」
つい語気を強める450。
「あ、うあ、その…」
「言えないところなんですか?」
しかしすぐにクールな口調になるあたり流石450だ。
「ち、ちが…」
「じゃあどこなんですか?仰ってみてください」
ずいと迫る450。
「えっと…その…」
「仰ってみてください。さん、はい」
「……舞台裏です…」
しょんぼりとする箱。
「私が、あんな物体にキ…キスされそうになってるときにそんなところにいたんですか」
『キス』の部分の声がちょっと裏返る。
「…ごめんなさい…」
心底申し訳なさそうにする箱。
流石に450もだんだん可愛そうになってきた。
「……別に、いいですけど。うやむやになりましたし」
「ごめんなさい…」
と、ふと450が思いつく。
「……先ほど、『どうすれば許してくれるか』と仰いましたよね」
ちょっと意味深な表情で尋ねる450。
そんなことを気付きもせず、許してくれそうな雰囲気にちょっと嬉しそうに顔をあげる箱。
「う、うん。言った。言ったよ!」
「じゃあ、今度お買い物に連れて行ってください」
「う、うん!」
「その後お食事に連れて行ってください」
「うんうん!!」
「その後、映画に行きたいです」
「うんうんうん!!」
「必要経費は全額ご主人様のお小遣いから出しますよ」
「うんうんうn… え、ぼ、僕の!?」
「嫌なんですか?」
ちょっと身体を斜めにして拗ねたように箱を見る450。
箱は……渋々答える。
「……倫理的におkです…」
「ふふ」
450が少し微笑む。しかし当分お小遣い天引き宣告を喰らった箱はそれに気付きもしない。
と、450が何かを思い出す。
「………そういえばご主人様、何か忘れてませんか?」
「え?」
ぽかーんとして答える箱。
「ほら、先ほどの劇に関してです」
思い出した。そういえば箱からおやゆび姫に扮した自分の感想をなにも聞いていない。
「劇?劇のことで?」
「はい。よーく思い出してみてください。何かあるでしょう?」
(べ、別に「綺麗だったよ(声色)」とか言って欲しいわけじゃないですけどっ!
でもちょっと感想聞いてみたかったりみたくなかったり…)
やはり450も女性なのだろうか。そういうところが気になるらしい。
「なんだろう?何かあったっけ?」
が、そういうのに極めて鈍感なのが箱なのだ。
(あーもう、早く思い出してくださいっ!ここ、結構人通りもあるんですから!)
そんな450の祈りが通じたのか、ついに箱が動いた。
「ああー、はいはい。あれね!」
手をポンと叩く箱。
(そうそう、それそれ!)
期待に目を輝かせる450。
「ほんと照明が450に当たらなくてよかったよね」
にこにこして450の頭を撫でる箱。がくーんとくる450。
(まあ、私を心配してくれてくれてるみたいだから100万歩ゆずってよしとしてあげます…)
一応満足はした450。うんうん、箱も進歩してるようだ。
「でも…王子さんには悪いことしちゃったなあ… 痛そうだったし…」
と、申し訳なさそうな顔をする箱。
(あんなの心配しなくていいんです… …え?)
450がふと気付いた。
「あの、今なんて?」
「え? 何?」
急な質問にちょっと驚く箱。
「今、悪いことしたとか…」
「え? あ、しまった…」
慌てて口を抑える箱。しかしもう手遅れ。
「も、もしかしてあの照明って事故で落ちたんじゃなくて…」
驚きの表情で箱を見る450。
「あー、そのー、なんというか… 内緒だよ?」
人差し指を立てて、シーッとする箱。
驚きと、嬉しさ、意外さ、etc そんな感情が混ざり合い、腰が砕けてその場にへたり込む450。
つい、目尻に涙が溜まってしまう。彼女の嬉しさが、実体となって溢れたのだ。
「あ、ちょ、450? ごめん、怒っちゃった? 450に当たらないようにはしたから許してっ!!」
それを見て慌ててしゃがみこんで手を合わせて謝る箱。
「あ、ち、違います。怒ってません。怒ってませんから…」
慌てて目尻をこする450。
「馬鹿…ほんと馬鹿なんですから…」誰にも聞こえなさそうな、小さな小さな声で呟く。
もう、450のココロには嬉しさしかなかった。
お買い物はなるべく安いものにしよう… 食事はオープンカフェで安めに…
この箱さえ居てくれたら、自分は幸せなんだと思う450。
拭いた目尻がまた湿り始めた。
「じゃ、じゃあ、帰ろっか?」
立ち上がる箱。それに続けて立とうとする450。しかし…
「あ…」
脚と腰に力が入らない。
「どうしたの?」
「ぐす…申し訳ありません、駆動系の調子がよくないみたいです」
すまなさそうな苦笑い気味の笑顔。動けないのに、妙に嬉しそうだ。
「え?大丈夫? 運んでいってあげようか?」
存外に訪れた幸運。そういえば今日は大星霊だっけ…
たまにはご主人様に抱き上げてもらうのも悪くない。
贅沢を言えば、劇の時にしてもらえなかったお姫様抱っこがいい。
しかし、箱にそこまでの贅沢を言うのは酷だ。
「…はい。お願いします」
手を差し出してご主人様に抱き上げてもらうのを待つ450。
マイルームまでの距離はそれほどない。でも、それまでの間、存分に甘えよう。
久しぶりに、450は幸せを感じていた。
ひょいっ
450を小脇に抱える箱。
「へ?」
450は何が起こったのか理解できていない。
「じゃあ、いこっか」
にっこりと右腕に抱えた450を見下ろして微笑む箱。
「………………………………………」
嬉しさが、怒りに変わるとき、
その爆発力が相当のものだということを箱が知るのは、ほんの数日後であった。
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#13
450「ご主人様」その2へ
箱「はい?」
450「今日といい昨日といいその前といい(以下略)、私達450のレスタ回数が激減してるのに、
どうしていつも私を連れてミッションに行くんですか?今回も死にましたし」
450「しかも職業はFFのまま。わざわざスターアトマイザーまで持ち歩いて」
箱「だって…」
450「はい」
箱「なんだか安心するから…」
450「………」
げしっ げしげしっ←箱を蹴る450
箱「痛い!痛いです450さん!」
ルウ「何やってるんですか?」
箱「あ、教官」
450(……お邪魔虫…)
ルウ「あら、怪我されてますね。レスタ!」
箱「あ、ありがとうございますです教官」
450(ムカッ)
ルウ「どこかのPMと違ってピンチの時にはレスタしますから、安心してください」
箱「あ、ありがとうございますです!」
450(ムカムカムカムカ)
ルウ「(チラッ)フッ…」
450(!!!!!!!)
―以下イメージ―
ルウ「フフ… この箱は私のもの…キャスト男とキャスト女…似合っていると思いませんかパシリ」
450「な、なにを仰ってるんですか!ご主人様との付き合いは私のほうが長いんですよ!このロボ子!!」
ルウ「くすくす 貴女のようなちんちくりんが、あの最大身長の箱に似合うとお思いですか?」
450「そ、そんなの愛でカバーできますっ!」
ルウ「パシリがですか? ププッ」
450「う、うるさいですよこの鉄面皮!さっきから表情かわってないから不気味ったらありゃしない!!」
ルウ「最近こういう無表情ヒロインは市民権を得ています。そういう貴女は少々、これ…古くないですか?」
450「ひ、人の台詞を取らないでください!このおそ松くん!!」
ルウ「フ…フフフフフフフ」
450「フ…フフフフフフフ」
バックに戦う竜虎。
そして小さくなって震える箱。
―プラント奪還S
箱「メ、メギゴフッ!」(メギドで死亡)
450「ご、ご主人様っ! ルゥ様、援護をお願いしますっ!」
ルゥ「まったく、メギドくらい避けてください。 はあっ!!」
450「ご主人様! えぇと、ムーンアトマイザーは・・・」
敵全滅
ルゥ「ふぅ… 箱さんの具合はどうですか?」
450「メギドってます」
箱(メギド怖いメギド怖い…)←二人に任せて死亡中
ルゥ「ムーンアトマイザーはないのですか?」
450「(ムッ)私達PMには使用許可が下りていませんから…」←立ち上がる
―以下イメージ
燃え上がる炎
がおー(たぬき@450)
ぎゃおー(きつね@ルゥ)
ルゥ「あらあら、ムーンアトマイザーも使えないのですかパシリ。合成失敗してそれを作るのは得意なのに…ププッ」
450「くっ、ガーディアンズなら知ってるくせにっ! そういう貴女も使ってないじゃないですかっ」
ルゥ「私は最初から持ってないだけです」
450「なっ!? そこまでケチりますかガーディアンズ本部はっ!!」
ルゥ「大体貴女がレスタしないのが問題なのではないのですか? 箱さんも内心泣いているでしょうに…」
450「そ、それは散々ネタにされてるでしょうっ!使いたくても使えないのです!!」
ルゥ「あらあらものは言いようですね。ところで貴女」
450「な、なんですか」
ルゥ「最近ギイガ、テイロ、メイガ、メイガ、メイガと5連敗中だそうですね」
450「な、何故そのことを!!」
ルゥ「箱さんが嘆いておられましたよ… 最近450が冷たいとか、相手してくれないとか(誇張)」
450「う、嘘言わないでください!!相手ならちゃんとしてますっ!この前も大勢の前で緊張しないように練習してましたし!」
ルゥ「それは相手じゃなくて授業でしょう… ププッ、可愛そうな箱さん…やっぱりこの私が…」
450「じゅ、授業でも個人授業ならスキンシップに発展したってこの前パシ通に書いてありましたっ!!」
―イメージ終了
ルウ「フ…フフフフフフフ」
450「フ…フフフフフフフ」
箱(ふ、ふたりともすかーとでかおのよこにたたないでもらえないでしょうか…っ)
―HIVE内
箱「あちっ!あちちちちっ!!」
箱「ピキーン」←凍っている
450(うわぁ…面白いようにテクの被害にあってる…)
ルゥ(物理攻撃のダメージは0ばかりなのに…)
450(ハッ!?)
箱「あうあう、物理半減って卑怯だ…」
ルゥ(箱さんのHPが黄色に!)
450&ルゥ(ちゃーんす!!)
450&ルゥ「レスタ!」
箱「あ、ありがとです教官、450」
450&ルゥ「ジロッ」
―以下イメージ
きしゃーっ!!(ラッコ@450)
しゃぎゃー!!(カンガルー@ルゥ)
450「大体貴女ファイガンナーでしょ!? どうしてレスタできるんですかっ!!」
ルゥ「……………愛でカバーしているんですよ」
450「それ私の台詞ッ!!またパクった!鼻押しますよこのコピーロボット!!」
ルゥ「ププッ…届くんですか?貴女のちんちくりんな身長で」
450「こ、このっ!このっ!」(ピョンピョン)
ルゥ「どうしました?届いてませんよ」←必死に背伸びしている
450「くっ、胸の大きさなら勝ってるのにっ!!」
ルゥ「………そういうところに話を持っていく辺り、劣等感があるのではないのですか?」
450「フフフ… 一応言っておきますけど、ご主人様は私の胸を触ったことあるんですよ(照れニヤリ)」
450(私がGH101の時ですけど…)
ルゥ(なんですって? まさかあの奥手っぽい箱がそんなことを…)
ルゥ「フッ……きっと仕方なくだったんでしょうね。そんなちんまりしたモノを…ププッ」
450(うっ…!なぜそれを… 基盤挿す場所がわからなくてたまたま触っただけというのは秘密なのにっ!)
―イメージ終了
ルウ「フ…フフフフフフフ」
450「フ…フフフフフフフ」
箱(二人とも仲いいなあ…あんなに楽しそうに微笑んで…)
箱(ところでこのガオゾランの群れはどうすればいいのかなー やっぱり僕ひとりでやらないと駄目なんだろうなー)
―モトゥブ酒場
450「…ふぅ…」
カランカラーン
マスター「いらっしゃいませ」
ルゥ「あら?」
450「あ、ルゥ様」
ルゥ「450さん、珍しいですねこんなところで」
450「ご主人様のお迎えに。ルゥ様こそ、何かあったんですか?」
ルゥ「ええ。ガーディアンズの仕事です」
450「そうですか、ご苦労様です」
ルゥ「いえ」
―以下イメージ
くぇぇぇぇぇっ!!(キーウィ @450)
けこーーーーっ!!(名古屋コーチン@ルゥ)
ルゥ「ププッ 貴女にお酒は似合いませんよ…っておもったら、それフルーツジュースじゃないですか」
450「う、五月蝿いですね!お酒はあまり呑まないんですっ!」
ルゥ「それにしても貴女、そうしているとまるで…」
450「な、なんですか!」
ルゥ「主人に捨てられた野良パシリのようですね。 プッ」
450「お、大きなお世話です!!」
ルゥ「なんでも、新規クエが配信されたというのにフリーミッションに全然連れて行ってもらえないとか」
450「そ、それは私のせいじゃありませんっ!ブルースクエに篭りっきりのご主人様が悪いんですっ!」
ルゥ「主人に責任転嫁ですか? ああ、箱さん可愛そう…うるうる」
450「…ていうか、連れて行ってもらってないのは貴女もじゃないですか…」
ルゥ「……私のは連れて行ってもらってないんじゃありません。放置プレイなだけです」
450「うちのご主人様にそんな趣味はありませんっ!!」
ルゥ「箱さんになくても私にはあるからいいんです」
450「………そ、そういう趣味だったんですか?」
ルゥ「………そんなわけないでしょう」
450「………」
ルゥ「………」
―イメージ終了
ルゥ「フ…フフフフフフ フゥ……」
450「フ…フフフフフフフ フゥ……」
450&ルゥ「マスター、きつめの一杯ください……」
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