361 名前:EPX 10章「a decisive battle(前編) 5/5」[sage] 投稿日:2008/05/13(火) 22:32:46.48 ID:m0koaUhk [5/6]
死の直前に込めた意志でウィルスに干渉できる時間は、そう長くないだろう。
まして相手がハウザーなら、時間をかければ逆にSEEDの制御を奪われかねない。
視察に来るなら、ハウザーは必ずこの生産工場を訪れる。
それまでじっと身を潜め、彼がこの部屋に来る気配を感じ次第、直ちに作戦を決行する。
誘爆システムの解除、そして必要な分のガジェット起爆。
一瞬のうちに行えば、さすがに制御を奪われる暇はない筈だ。
残りわずかとなっていた抑制剤を服用し、じっと息を整える。
心の中で、繰り返し体内のSEEDウィルスにやるべきことを呼びかける。
自爆によって振りまかれるウィルスに、自分の意志を十分に乗せるために。
ハウザーはかつて、SEEDも使い方によっては人類のためになり得ると言った。
もちろん彼は口から出任せのつもりだったのだろうが。
「…皮肉なものね。私は貴方を殺すことによって、貴方の言葉を証明するのよ」
恐らくは最初で最後の、SEEDウィルスを真にヒトのために使う機会。
それを、既にイルミナスを抜けている私が、「SEEDの有効活用」を口にするハウザーに対して使う。
何とも皮肉な話だった。
一方で別の妄想も、脳裏に浮かんでいた。
間一髪のところで、私に差し伸べられる救いの手。
常に私を慕い、後ろをついて来ていた、私の無二の相棒。その成長した姿。
こんなことを考えること自体、まだ未練がある証拠だと、再び自分を叱りつける。
迫り来る、死の足音。心が挫けないよう、固く目を閉じる。
やがて、入り口の扉が開いた音を耳にした時には、思わず心臓が跳ね上がる心地がした。
覚悟の時は、今。
イルミナスより渡されていた、自決用の小型爆弾を飲み込もうとしたが、その手がぴたりと止まる。
私はまだ、妄想を見続けているのか?
ありえないはずのその光景は、自分が夢を見ているかと錯覚するに十分なものだった。
懐かしい、しかし一回り大きくなったシルエット。
臆することなく真っ直ぐに自分を見つめてくる、よく見知った眼鏡の奥の瞳。
一目で成長の程がうかがえるその姿に、私は目元が潤むのを必死に抑えなければならなかった。
私の相棒、GH-412。彼女は、間に合ったのだ。
362 名前:EPX作者[sage] 投稿日:2008/05/13(火) 22:36:13.39 ID:m0koaUhk [6/6]
ついに再会を果たした、半端者の主従。
GH-412は、果たして彼女の主人を止めることができるのか。
中編へと続きます。
363 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/13(火) 23:11:36.61 ID:hYMN+z+7
うわ、もう少しで終わるのかと思いきや「前編」ときたか…
しかも「中」編へ続く…
面白いんだけど、自分の設定とキャラクターにそこまで思い入れがあるなら
他の投稿方法をとった方がより高い評価と敷居をゴニョゴニョ
スレッドはみんなで使ってね
364 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/13(火) 23:57:39.87 ID:m8RLGvZz
途中で投稿方法を変えると携帯の人とか困るから、ここまで来たらこのままで良いんじゃないかね。
最後にzipで一括うpとかもしておくと良いかとも思うけどね。
365 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/14(水) 01:34:57.09 ID:U3UkKYAg
>>364に同意~
ここまで来て他に変えてとかってのは、
正直困るからこのまま最期までやって欲しいな~
366 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/14(水) 10:12:48.00 ID:pkhgTSBy
ただでさえ超過疎だから
スレ投下のが良いかな、とは1意見
367 名前:EPX作者[sage] 投稿日:2008/05/14(水) 20:15:37.42 ID:BM/baiaC [1/9]
>363
もっともなご指摘に、何だか色々な意味で恥ずかしさをおぼえ、
残りはうpろだにまとめてあげて終わらせようかとも思いました。
ですが、後2回分でもあることですし、>364~>366さんの意見もありますので、
このままあげてしまおうと思います。
今後、二度とこのような無謀な長編は投下しませんので、
今作だけは皆様方、堪忍袋の緒をきらさずこらえていただけるようお願いいたします。
368 名前:EPX 10章「a decisive battle(中編) 1/7」[sage] 投稿日:2008/05/14(水)
20:17:23.90 ID:BM/baiaC [2/9]
かつてのマスターとはかけ離れた姿。
それでも、紛れもない私の主人。丸玉の状態から私を育ててくれた、あのマスターだった。
再びマスターにまみえることができたというだけで涙が溢れそうになるが、ぐっとこらえる。
私がマスターを取り戻すには、まだやらねばならないことがあったからだ。
「…会いたかったです。マスター」
どう声をかけようかしばし迷ったが、結局は正直な気持ちが口をついて出た。
「ここへ、何をしにきたの」
マスターのいらえは感情が感じられず、普通ならばすげない反応と思われるものだった。
顔すらも布を巻いて覆い隠し、表情が読み取れなかったが、私は何も気にならなかった。
マスターがマスターとして今、ここにある。それ以上、何も望むことはない。
「もちろん、連れ戻しにです。ガーディアンズに」
「私は戻れない。それだけの罪を犯してきたのだから」
「いいえ、戻れます。どんな罪を犯そうと、それを償う気持ちがある限り」
「罪を償う。そんな都合のいいお題目に酔いしれる内、結局己の幸せに帰結するのは、私が許せない」
「ありません。マスターなら、そのようなことは」
「ヒトは、弱いものよ…ついさっきだって、私はもう少しで挫けるところだった」
マスターが何に挫けるところだったのか、それは気になったが。
私の返す言葉は、決まっていた。
「ヒトは、一人では弱くて当たり前なのです、マスター。私も一人では弱いままだった。
ガーディアンズで見つけた、多くの仲間…それに支えられて今、私はここにいるのです」
「…あなたは、見つけたのね。心許せる仲間を」
「はい。マスターにも、私がいます。マスターが挫けそうな時は、私が支えます」
「言うようになったわね。『私がついています』とは昔から言っていたけど。
『支える』なんて言ったのは、これが初めてよ」
しばし、沈黙が部屋を支配する。
Aフォトン爆弾『ガジェット』の駆動音が静かに響き渡る。
「…これから私が、ここで何をしようとしていたか…聞きたいかしら」
やがて口を開いたマスターに、私は黙ってうなずいて返す。
369 名前:EPX 10章「a decisive battle(中編) 2/7」[sage] 投稿日:2008/05/14(水)
20:18:53.89 ID:BM/baiaC [3/9]
マスターの話によって、私はマスターの身に起こったこと、何をやろうとしていたかを知らされた。
私の予想を大きく上回る、苦難と試練の連続。
それに今まで独りで耐えてきたことを考えただけで、マスターの胸に飛び込んでしまいたくなる。
が、今ここでそんな甘えを見せては、マスターは決して救われることはないだろう。
感情のまま泣き声を張り上げた所で、マスターの心が癒されることはない。
「……マスターは、間違っています」
マスターが、心の奥底で望んでいる筈の言葉。意を決して、口にした。
「マスターは、独りで事を成そうとしています。だから、命と引き換えにしかハウザーを倒せない。
ガーディアンズの力を合わせれば、ハウザーにも勝てます。相討ちを狙う必要もありません」
「私に、自らの責任を他人に押し付けるようなことをしろと?」
「ガーディアンズを、他人と思わなければいいだけのことです。
それに、力を合わせた結果導き出されるものも、れっきとした自分自身の力です。
私は、それを学んできました。一つの小さな命を…心を失うのと引き換えに、学びました。
マスター、これだけは言わせて下さい。
理想とは、人と分かち合って薄れるものではありません。むしろ、より強固なものへと変わりうるのです」
じっと私を見つめるマスター。
表情は伺えないが、私にはマスターが、目を細めて喜んでくれているように感じられている。
また、沈黙が続く。
私はただ耐え、マスターの出方を待つ。
「…あなたの言いたいことは、分かったわ」
再び沈黙を破ったマスターの言葉に、何かをふっきったような力強さが感じられた。
「ならば、証明してちょうだい。あなたがそうやって築いてきたものの力を。
私を止め、私に代わってハウザーを倒しうる強さを、あなたが手に入れたという証を」
私は、返答の代わりに、今まで絶えずかけていた眼鏡を、自らの手で外した。
「マスター…この眼鏡は、私がマスターに憧れてつけたものです。
常に、マスターの後をついていこうとした心の表れ…私は今、敢えてこれを外します。
マスターを救うために、マスターを越える…その決意の証として」
「そして、今こそ私は、誓いを果たします」
ナノトランサーから取り出した、二振りの小剣。
封印を解かれた真紅の刃は、私の小剣を振るう動きに合わせて幻想的な赤い羽を舞い散らす。
「『Dear My Partner』この文字と小剣に込められた、マスターの思いに応えるため。
マスターの心の半分たる私の力をもって、マスター…貴女を、止めて見せます」
370 名前:EPX 10章「a decisive battle(中編) 3/7」[sage] 投稿日:2008/05/14(水)
20:20:21.43 ID:BM/baiaC [4/9]
ガジェット生産工場からはなれた、基地内の一角。
その小部屋で、私とマスターは相対していた。
ガジェットの傍では万一を思って全力で戦えないだろうとマスターが言い出してのことだった。
互いに双小剣を構え、じりじりと距離を測ったまま時計回りに歩を進める。
半円を描いたところで足を止め、次の瞬間。
私とマスターの双小剣が、円の中央でぶつかりあっていた。
フォトンの干渉波がきらめく中、私は赤い羽を舞い散らせて次々と刃を繰り出す。
それをことごとく阻むマスターの双小剣は、しかしそれもこちらの身体に届くことはなかった。
手数が勝負の、双小剣のぶつかり合い。
赤と紫の二色のフォトンは、一歩も譲り合うことなく幾筋もの軌跡を絡み合わせていた。
やがて、マスターの攻撃にわずかな歪みが生じる。
キャスト特有の精密な動作を身上とする私の攻撃が、
そのわずかな隙に付け入ろうとマスターの左脇腹に延びていく。
が、それが届く前に、マスターは私の腹部を蹴り飛ばし、距離を取っていた。
ラインによるフォトンの干渉波が、蹴りのダメージをほぼ無効化する。
互いに離れて仕切り直しかと一瞬気を抜きかけたが、本能によって咄嗟に武器パレットの変更を行う。
出現したマドゥーグに、すぐさまテクニックの行使をさせる。
繰り出した火球は、間一髪のところで相手の火球を相殺していた。
右手に小剣、左手にマドゥーグをセットしたまま、二人で平行に部屋の中を駆け巡る。
飛び交う火球が或いは脇をかすめ、或いは互いにぶつかり合って爆音と共に視界を塞ぐ。
何度目かの火球の激突にタイミングを合わせ、私は小剣を手にマスター目掛けて懐に飛び込む。
「舞転瞬連斬!」
「飛懐蹴破斬!」
炎の幕を割って入ってきたマスターが、横回転の末体重をかけた小剣を振り下ろすのが垣間見えた。
フォトンアーツによって一時的に強化された脚部がマスターの刃とぶつかり合い、押しのけあう。
息をつく間もなく、マスターは大振りの槍を取り出し、頭上でひと回しした後真っ直ぐに突いてくる。
対して私は武器を双剣に切り替え、2本の刃で槍による鋭い一撃を脇へとそらす。
そのまま再び、フォトンの光の交錯が二人の間に繰り広げられる。
2本の刃で攻撃と防御を使い分ける私に対し、マスターは或いは刃で、或いは柄の部分で防ぎ、なぎ払い、
突き崩そうとしてくる。
やがて頭上に振り下ろされる槍を、交差させた双剣で受け止める形で二人は足を止めた。
371 名前:EPX 10章「a decisive battle(中編) 4/7」[sage] 投稿日:2008/05/14(水)
20:21:42.66 ID:BM/baiaC [5/9]
「ここまで成長していたなんてね。驚いたわ…本当に」
マスターが槍を引き、後方に飛びすさる。
もしかすると、これで終わるのかと一瞬思ったが、さすがにその考えは甘かった。
「だけど、成長しているのはあなただけじゃない」
そう言ってマスターが取り出したのは、三叉に分かれたフォトンの刃を取り付けた、手甲のような武器。
双鋼爪と呼ばれるそれをマスターが装着しているのを見て、私はある違和感を思い出していた。
440の映像記録でも、最後にマスターは双鋼爪を取り出していたが、私の知る限り。
マスターは鋼爪や鋼拳といった、素手に近い武器で敵を引き裂いたり殴りつけたりする武器は好まなかった。
そうであったが故に、私自身もその手の武器には詳しくなく、当然扱いにも長じていない。
あの時は、映像の中のマスターに対する懐かしい思いが大半を占めていたが、今思えば確かに疑問だった。
「生き残るため、こういう武器も使わざるを得なかった。あなたにこれが受け切れるかしら」
言い終わるや否や、懐に飛び込んでくるマスターの動きは、私の所有するデータにないものだった。
双方向からの爪の攻撃に加え、蹴りも含めた変幻自在の連続攻撃に翻弄され、
さらに下方向から振り上げられる爪の一撃に空中へと打ち上げられる。
体勢を整える間もなく、後を追って跳躍してきたマスターの一撃で強く地面に叩きつけられてしまう。
立ち上がろうとする私に、マスターの更なる追撃が容赦なくふりかかる。
突き出した両の手から放たれる、球状に圧縮されたフォトン弾。
身体のひしゃげるような感覚と共に、私は後方の柱に打ち付けられるように吹き飛ばされていた。
「【連斬星弾牙】…単体の敵用に特化した双鋼爪の奥義。生き残れたなら、覚えておきなさい」
柱を背に身を起こした私の身体に、鋭い痛みが走る。
今の技で大きなダメージを受けたのは確かだが、それとは別に、異質の痛みがあった。
身体の内部で、自分に対して反乱を起こされているような、不快な痛み。
原因は明らかだった。
ヤマタミサキ。敵の自滅をうながす感染効果を付与する武器の一撃を、私は受けてしまったのだ。
このままじわじわと命を削られる状態で、まともには戦えない。
私はすぐさま武器パレットを切り替え、状態異常治癒テクニック「レジェネ」を使おうとする。
「そんな暇を、私が与えると思う?」
冷たく言い放つマスターが、いつの間にか持ち替えていた杖を振り下ろした。
途端に、私の周囲一帯に降り注がれる、白色に近い輝きを放つ雷の槌。
地面への着弾と同時に稲妻を周囲に撒き散らす雷系の範囲テクニック「ラ・ゾンデ」は、
私の多少の回避も物ともせずに、周囲ごと私を巻き込んでしまう。
372 名前:EPX 10章「a decisive battle(中編) 5/7」[sage] 投稿日:2008/05/14(水)
20:22:40.21 ID:BM/baiaC [6/9]
幾度となく降り注がれる、雷の槌。
転がり回って直撃だけは避けるものの、感染による侵食作用と併せ、確実にダメージは蓄積していた。
何としても、マスターの攻撃をしのいで回復処理をしなければならない。
そんな私の目に映ったのは、先ほどしたたかに背を打ちつけた、部屋を支える柱の一つだった。
咄嗟に私はその柱の影に飛び込む。
範囲系テクニックといえど、視界をふさぐ柱の向こうの敵を巻き込むことはできない。
事実、やむことなく注がれていた雷の槌は、私が柱の影に隠れた途端ぴたりと止んでいた。
ほぅ、と一息を入れ、おもむろに回復杖を取り出す。
そんな私の背後から、柱越しにマスターの悲しそうな声が届いた。
「それで、防いだつもり?」
眼前に突きつけられたそれを見て、私はようやく思い出した。
440の映像記録で、キャストfGと戦った際に見せた、マスターのある戦法を。
柱の影に隠れて射撃を防いだ上で、マスターは何をしていたか。
ふわふわと漂う、黄色く発光する稲光をまとった光の球。
すでに柱を回りこみ、私の周囲で今か今かとその瞬間を待っていた。
私が柱の影から飛び出す前に、それは眩い光を放って爆発していた。
障害物をも回り込む、高性能の誘導弾とも言える雷系のテクニック「ノス・ゾンデ」
一度映像記録で見ておきながら、私はむざむざ同じ手をくらってしまったのだ。
回復もできないまま、身体の損傷も限界にきていたところにこの一撃は致命的だった。
急激に視界が暗くなり、身体の力が抜けていく。
震える足を何とか踏ん張り、柱によりかかって倒れることを拒否するが、
無慈悲にも2回目の雷球が視界をよぎった時、私は悟った。
この一撃に、耐えることはできないと。
ノス・ゾンデの破裂する音が、不自然な程遠くで聞こえたような気がした。
足の感覚がなくなり、ずるずると背中を擦る柱の感触も消えていく。
一瞬尻餅をつく感覚が脳を刺激するが、それもすぐに掻き消えていった。
真っ暗な空間に一人取り残されているような感覚だけが、ぼんやりと残されていた。
それもすぐに曖昧になり、やがて意識も大いなる闇の中に飲まれていった…。
373 名前:EPX 10章「a decisive battle(中編) 6/7」[sage] 投稿日:2008/05/14(水)
20:23:40.46 ID:BM/baiaC [7/9]
412は、本当に成長していた。
様子から見て、キャストへの強化措置を受けたのは明らかだが、そこから手に入れた強さは、
まぎれもなく412自身のものだった。
私と同じ、WTの機能を付与することを選んでくれたことも嬉しかった。
私の後をついてくるだけでなく、私を越えると言い切った時には、思わず抱きしめてやりたくなった。
戦い方も単なる私の猿真似でなく、WTとして真摯に鍛え上げ、自分なりに物にしたことは明らかだった。
私の一方的な【約束】を【誓い】にまで昇華させ、ここまで追いかけてきてくれた。
それだけで、十分だった。
誰に対しても恥じることない、自慢の相棒と胸を張って言えた。
「本当に…よく、ここまで…」
最早動くことのかなわない、412の冷たい頬をそっと撫でる。
あと、一歩。
私を止める、あと一歩が足りなかったことを責める気持ちなど毛頭なかった。
待っていて、412。あなた一人を、逝かせはしない。
ハウザーの野望を道連れに、私は私の道の最後の一歩を踏み出すから。
向こうに行ってから、好きなだけあなたの文句を聞いてあげる。
さびしかったでしょう、辛かったでしょう、痛かったでしょう。
思う存分、私にぶち撒けて構わないから。
先ほどまで、死の恐怖に必死に耐えながらどうにか覚悟を固めていたのとは、まるで違っていた。
向こうで412が待っている。そう考えると、死ぬのもそう悪くはないとすら思えてしまう。
そういう意味では、412の言っていた「一人では弱い」という言葉も、真理をついていたのかも知れない。
柱にもたれかかった格好の412を、静かに寝かせてやる。
眠ったような顔の412の顔を思い残すことなく見つめたあと、すっくと立ち上がる。
後は、やるべきことをやるだけだ。
そう心の中で呟き、412に背を向けようとした時のことだった。
412の首にかかっていた、見覚えのないお守りのようなもの。それが、異常な光を放ちだした。
何事かと見入る私をよそに、そのお守りはますます光を強め、ついには音を立てて砕け散った。
その次の瞬間、私は目を疑った。
完全に機能を停止していたはずの412が、ゆっくりとその身を起こし始めていたのだ。
374 名前:EPX 10章「a decisive battle(中編) 7/7」[sage] 投稿日:2008/05/14(水)
20:25:06.87 ID:BM/baiaC [8/9]
目を覚ますと同時に、私は自分の身に起こっていたことを思い出していた。
私は、マスターとの戦いに敗れ、その機能を停止した筈だった。
それが、今こうして、身体に何の損傷もない状態で身を起こすことができている。
「な、何故…完全に、機能を停止していたはずなのに」
マスターの狼狽する声を耳にしながら、私はある物に目をとめた。
fGが言っていた、母からもらったお守り。それが、見る影もなく砕け散っていた。
散乱している中身の破片を一つ手に取り、私は思わず息を呑む。
「これは…スケープドール…」
ナノトランス技術を利用した、最新の携帯医療装置。
所持者の命を奪うほどの傷や損傷を、自動的に完全回復させて砕け散るというこの道具は、
ガーディアンズでも然るべき階級の者が、大規模な作戦の際にのみ携帯を許される程の貴重品だった。
この小さな人形のような道具が、私の命の身代わりになったことは明らかだった。
ありがとう。貴方のおかげで、私はもう一度チャンスを与えられた。
母からのお守りを惜しげもなく託してくれたfGに、私は深く感謝した。
同時に、私の背中を押すいくつもの大きな思いが私を突き動かす。
「これが、私の得た強さです」
なおも狼狽の意を隠せないマスターに、私は立ち上がって言った。
「私一人なら、あの時点であなたに敗れていたでしょう。でも、私には彼らがいる。
私を隊長と慕い、彼らよりあなたを取ることを選んでなお、その帰りを待っていてくれる彼らが」
「あなたが…隊長ですって」
「ええ。でも、最初は周りを全く見ず、独りで空回りしているだけだった。
独りで戦うことだけが、自分の強さと疑わず。
そうしなければ、マスターに追いつくことはできないと思っていたのです。でも」
「本当は、逆だった。
マスターに足りない唯一のものを手に入れることで初めて、私はあなたの前に立つことが許される。
そうしてマスターにないものを補うこと…それこそが、唯一無二の相棒として必要なことだったのです」
「戦いはこれからです。私は、彼らが私に託してくれた力を駆使して、今度こそ。
あなたを、越えてみせます」
375 名前:EPX作者[sage] 投稿日:2008/05/14(水) 20:33:16.17 ID:BM/baiaC [9/9]
一度はマスターに敗れた、GH-412。
しかし、仲間の思いに背中を押され、再び立ち上がります。
今度こそマスターを止めることはかなうのか。そして、二人を待つ運命は。
次回、最終回。ご期待ください。
376 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/14(水) 22:06:59.26 ID:3kp6u3YF
あえて言おう!
wktkがとまらねえ!
377 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 15:59:52.85 ID:K/GuCdjN
面白いからいいんだけどね、自分でも言ってるけど長すぎです
長くなっていいなら、いろんな場面が盛り込めるわ好きな所で切れるわで
面白くできるのは当たり前かも
378 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 16:45:10.97 ID:PakZGzpw
面白いんだからいーんじゃない?
書きたい物が膨らんじゃったならしょうがないと思うけどなぁ
379 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 18:36:49.83 ID:0aVyST0q
[1/2]
ちょいツン気味な>377の長編に期待汁!
って、ばっちゃが言ってた
それはそうと俺もwktkが止まらねぇ!
377も頑張れ!主に俺の為に!
380 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 18:44:26.28 ID:P/i22ZtP
当たり前とは言うけど、人に理解して貰えるように適切で正確な言葉を選んで書こうと思えば、それなりの知識も時間もかかるだろうに
面白くできるのは当たり前、と簡単に言うには、どうかと思う出来だとは思うけどなぁ
俺も短いやつなら何度か書いて投下したことあるけど、長いやつは1話分書くのに5時間かかった上に、意味不明な文脈になったからやめたw
まぁ、俺がバカでアホなだけなんだろうけど('ω')
381 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 19:57:11.76 ID:0aVyST0q
[2/2]
>380
いやここは一つ>377にお手本を示して貰おうじゃないか
当然、自分では書けないのに
「長ければ面白く書けるのは当たり前!」
なんて言わないだろうしさ!
面白くて長いSSって言うかLS!期待してるぜ!377!
382 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 19:58:21.56 ID:S3G1sUzj
>>377
ダレさせないってだいぶ技術が居る事だと思うけどなぁ。
まぁ、期待して待ってるぜ!
383 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 20:17:20.78 ID:19UBCO9p
そんな気張らずに書きたいものを書けばいいと思うよ。
話がごちゃごちゃになりそうだったら、
ノートなんかにキャラクターのイメージとか話のイメージとか殴り書きしてイメージを固めていけばいいと思う。
…と言っても自分もそんなに数かいてないから偉そうな事いえないけどなぁ。
384 名前:EPX 10章「a decisive battle(後編) 1/4」[sage] 投稿日:2008/05/15(木)
22:01:35.77 ID:icIXj89u [1/10]
立ち上がった412は、何故か上級回復テクニック「ギ・レスタ」を使ってきた。
戦闘不能者を蘇生させるほどの強力な回復テクニックだが、今ここで使う必要があるのだろうか。
412の思惑はともかく、再び双鋼爪を装着する。
紫の飛沫を撒き散らしながら、412目掛けて間合いを詰める。
【連斬星弾牙】少なくともこの技を破らない限り、412に勝ち目はない。
412は、一歩退いたかと思うと、いつの間にか持ち変えていた双剣を低く構えていた。
私の見たことのない構えだった。
脇に抱え込むようにしていた双剣の一方を、私の最初の一撃に合わせて勢いよく体ごと突き出してきた。
槍のように突き出された双剣を、竜巻のようなフォトンの渦が覆い包む。
私の爪による飛沫をまとった斬撃の全ては、双剣を覆う膜に弾き返されてしまう。
さらに一瞬の溜めを置いた後の一撃が、私を後方へと押し飛ばしていた。
吹き飛ばされながらも体勢を整え、着地と同時に両の手を脇に添え、フォトンを圧縮させていく。
【連斬星弾牙】締めの一撃であるフォトン弾を放とうとした時、私は見た。
412が双剣を振り下ろした軌跡に沿って迫り来る、巨大な斜め十字のフォトンの刃を。
巨大な十字の刃は突き出したフォトン弾を飲み込むようにかき消し、さらに双鋼爪本体をも打ち砕いた。
私の見たことのない、双剣の奥義。
412がこんな技を身に着けていたことに、驚きを隠せなかった。
「ガーディアンの技は、日々進歩しています。マスターがいなくなった、その後も」
砕かれた双鋼爪の破片を呆然と見つめる私に、412が双剣を振り下ろしながら語りかけた。
「今の技は、『クロスハリケーン』…部下のfFが私に託してくれた、双剣の新奥義です」
「あなたに…託した?」
正直、412の言ったことはまだ理解しきれていなかった。
「ガーディアンズの規約を破ってまで、彼らは私にPAディスクを渡してくれたのです。
改めて言います。今の私は、独りで戦っているのではありません」
「…借り物の力で、私を倒せると思わないことね」
仲間の力を借りて戦う。言葉とは裏腹に、私はそう言い切った412に何ともいえない頼もしさを感じていた。
が、手を抜くわけにはいかない。
私は手近な柱の影に隠れ、ノス・ゾンデによる遠隔攻撃を図った。
一度は412の命を奪いかけた、このテクニック。これすらも、412が破れると言うのなら。
385 名前:EPX 10章「a decisive battle(後編) 2/4」[sage] 投稿日:2008/05/15(木)
22:02:17.55 ID:icIXj89u [2/10]
「fT。貴方のPAディスク、使わせてもらうわ」
駆けながらナノトランサーからディスクを取り出し、セットする。
そのまま片手杖を取り出し、柱の前で足をとめる。
柱の左側から回りこんできた雷球に素早く反応し、反対の右方向から柱の向こうへと飛び込んだ。
柱を背に杖を構えたままのマスターと目を合わせる。
雷球はすぐに柱を回りこんでこちらを追尾してくるが、その前に私は杖を突き出していた。
構えた杖を中心に、眩いばかりの白色光が放たれる。
白色光は私の身体をすっぽり包み、周囲へと広がっていく。
柱の向こうから回り込んできた雷球は、私の放つ光の奔流に包まれて空しく消滅した。
光の衝撃波はそのままマスターをも巻き込み、柱に磔の状態へと追いやる。
光属性、唯一の攻撃テクニック「レグランツ」
自らも光の衝撃波にさらされ、傷を負う事を厭わない精神力を持つものだけが行使できる、特殊テクニック。
その絶え間ない光の奔流は、完全にマスターを柱へと固定し、ダメージを与え続けていた。
やがて、柱の方が衝撃波に耐え切れずに瓦解した。
瓦礫の中からマスターが身を起こす間に、私は再び双小剣を取り出す。
「勝負です、マスター」
真紅の双小剣が舞い散らす赤い羽の渦を突っ切り、マスターの懐に飛び込む。
対抗して双小剣を取り出し、正面から切りつけるマスターが私を捉えることはなかった。
自分でも制御困難な、空中での複雑な軌道修正に内心悲鳴を上げながら、それでも果敢に斬りかかる。
すっかり翻弄されている様子のマスターの背後に、さらなる一撃を繰り出す。
背後からの一撃すら防ぐマスターを視界に納めたまま、上空後方へと退避した。
「それも、新奥義ね…どうやら、予測困難な軌道による一撃離脱の奇襲攻撃。でも」
マスターが片手杖を取り出すのを、空中から視認する。
「逃げたつもりでしょうけど、忘れないで。私はWT、遠距離攻撃もお手の物よ」
私の着地に合わせて、恐らくは強力な単体テクニックを叩き込むつもりだろう。
逃げ場はない。このまま私が何もせずに着地するのなら。
φGから授けられた、双小剣の奥義【連牙宙刃翔】
その真価は、この一見攻撃後の予備動作と見える、後方への退避から発揮される。
極めて強力、かつトリッキーなこの技に、さすがのマスターも裏をかかれた様子だった。
左右に携えた、浮遊しながら膨大な量のフォトンリアクターを纏わせる双小剣。
それを、一気に解き放った。
386 名前:EPX 10章「a decisive battle(後編) 3/4」[sage] 投稿日:2008/05/15(木)
22:03:02.37 ID:icIXj89u [3/10]
真紅の刃が圧倒的な量のフォトン光に包まれながら、真っ直ぐに私目掛けて襲い掛かる。
防御のためにかざした私の双小剣をいとも容易く斬り裂き、私の身体を激しく撃ち貫く。
ラインによる干渉波が大きく私を後方に弾き飛ばし、ぶつかった壁をも打ち砕く。
すさまじいばかりの、双小剣の新奥義。
412の一撃は、私を壁にめりこませ、身体の力を根こそぎ奪うに至っていた。
ラインによる干渉波が身体を両断されることから防いだ一方で、その衝撃は全身を駆け巡り、
指一本動かすこともかなわないくらいに私の身体を痛めつけていた。
薄れ行く意識を、死力を尽くしてつなぎとめる。
まだ、まだ自分は戦い抜いていない。
ここで倒れて納得のできるほどに、自分は力を出し切っていない。
瓦礫が巻き上げる煙の向こうで、自分を呼ぶ声が雄叫びとなって響く。
最後の決着を、つけようと言うのだ。
ならば、応えなければならない。
震える手に渇を入れ、ナノトランサーから槍を取り出す。
残された力を振り絞り、最後の一撃を放とうと、壁にめり込んだ姿勢のまま呼吸を整える。
煙の向こうできらめく、真紅のフォトン。
二筋の赤い閃光と化して迫り来る、その影の中心目掛けて、渾身の力を込めて槍を突き出した。
確かな手応え。致命傷ではなくとも、これで412は動きを止めざるを得ない。
後は、それを引き抜いてから止めの一撃を見舞うのと、412の反撃のどちらが早いか、その勝負の筈だった。
ところが、煙をかき分けて迫る412に、勢いの衰えは全くなかった。
代わりに、我が目を疑う光景がそこにあった。
脇腹を貫いたその傷口を、白い光が覆ったかと思うと、一瞬の間に癒してしまっていたのだ。
その光に、見覚えはあった。
それは、先ほど412が行使した回復テクニック「ギ・レスタ」と全く同じ光だった。
ギ・レスタに、多少の自動回復能力があることは知っていた。
だが、所詮それは雀の涙程度で、これほどの傷を一瞬で癒す力は無い筈だった。
まさか、これも私のいない間に開発された、私の知らない能力だと言うのか。
そんなことを考えている間に、412の小剣の一方が下方から突き上げられていた。
宙高く舞い上がる、私の槍。
そして、もう一方の小剣が、真っ直ぐ私の喉元へと伸びてくる。
412の刃は、私の喉元につきつけられる形で止められていた。
387 名前:EPX 10章「a decisive battle(後編) 4/4」[sage] 投稿日:2008/05/15(木)
22:03:46.60 ID:icIXj89u [4/10]
マスターの、最後の一撃。まさかの反撃に、私は完全に不覚を取っていた。
守ってくれたのは、GTの授けてくれた回復テクニック「ギ・レスタ」。
彼と、そして他の皆の助けがあって今。私は、こうしてマスターとの決着をつけることができたのだ。
私は真っ直ぐにマスターの瞳を見据え、成り行きを見守る。
マスターがこれで納得しないというなら、納得するまで戦うまでだ。
例えマスターが私の命を奪おうと、私がマスターの命を奪うことは有り得ない。
マスターを殺してしまっては、私がここに来た意味がないからだ。
しばしの沈黙の後。
マスターが、ゆっくりと手を伸ばし、喉元に突きつけている小剣に触れた。
されるがままに任せる。例え、このまま小剣を奪って私を刺そうとも、それがマスターの意志ならば。
「…『Dear…My…Partner…』」
マスターは、静かに私の指を開き、柄に刻まれた文字をなぞりながら、囁いた。
「ありがとう。約束を…いえ、誓いを、果たしてくれて。そして…言っていいかしら」
固唾をのんで、マスターの唇の動きに全神経を注ぐ。
心臓が高鳴り、手足が震え、息苦しささえどうでもよくなり、ひたすらにマスターの言葉を待つ。
そして放たれた、マスターの一言。
「…ただいま、412」
その瞬間、私は何もかもかなぐり捨ててマスターにしがみついた。
待ち望んだ言葉に対して用意していた一言もいえず、ただひたすらに声を上げる。
440を失った時も、マスターの病を知った時も我慢していた涙は、今や後から後からあふれ出し、
とめどなくマスターの胸を濡らしていた。
マスターが、そっと私の頭に手を乗せる。
その懐かしい、暖かい感触が一層私の声を張り上げさせる。
「おかえりなさい、マスター」
その一言すら泣き声にまぎれて言えないでいる私を、マスターはいつまでも優しく抱きしめていた。
私の任務は、完了した。
いや、任務でも、役目でもない。
私は、私自身の意思をもって。
ついにマスターを、この手に取り戻したのだ。
388 名前:EPX 第三部エピローグ 1/4[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 22:05:08.47 ID:icIXj89u
[5/10]
あの後、私達は丁度基地から脱出しようとしていた師匠とめぐり合い、その助けあって帰還を果たした。
すぐさま基地に引き返そうと総裁室に向かう師匠を尻目に、私はにマスターを集中治療室へと運んだ。
シドウ博士の治療を受けたマスターは、どうにかSEEDフォーム化は免れることができた。
が、やはり今まで服用していた薬の副作用のため、余命はいくらも残されていないとの結論だった。
それならそれで、残された時間をマスターと精一杯過ごすだけだ。
判決を待つ謹慎中の身であるマスターだが、私は片時も離れることなく付き従っていた。
互いのいない間のことを、語り合う。幾晩費やしても、尽きることがなかった。
マスターに関する、非常に悲しい事実が一点判明した。
マスターの身体は、既にSEED侵食と薬の抗作用のあおりを受け、見る影もないほどに崩れていたのだ。
黒とも茶色ともつかない斑紋が身体中を覆い、肌はぼろぼろにささくれ、干からびている。
およそ人相の変わり果てたその姿をマスターと見分けられるのは、私以外にはいなかったろう。
常に黒づくめの格好で肌を隠していたのは、ウィルスの感染を防ぐだけが目的ではなかったのだ。
それでもマスターは、二人だけの時は顔を覆う布を外し、素顔になってくれる。
その姿で私が何ら嫌悪の念を抱かないと、信じてくれているのだ。
マスターの療養を兼ねた謹慎中に、ガーディアンズでは次々と明るいニュースが飛び込んでくる。
イルミナスの壊滅。それと提携していた、GRMの一斉摘発とそれを継ぐ新社長の話。
かつてのお尋ね者、イーサン・ウェーバーのガーディアン復帰…これはまだ噂話の域を出ないが。
何より、マスターの宿敵であったハウザーが、師匠との死闘の末、見事倒されたという話。
ガーディアンズが、グラールの平和を守るに足る存在だと、マスターにも証明できたのだ。
もっとも、マスターは喜ぶ一方で懸念も抱いていた様子だった。
ハウザーは、本当に死んだのか。或いは、その背後にある何者かが残ってはいないか。
今は考えないようにと、マスターに勧める。
例え、その何かがあったとしても、今のガーディアンズならばきっと大丈夫だと私は確信している。
マスターも、穏やかな顔で同意してくれていた。
それらの情報を持ってきてくれたφG、それに他の第2小隊の仲間達も見舞いに来てくれた。
私が元PMだったと知ると皆一様に驚いていたが、それで失望する者は一人もいなかった。
イルミナス壊滅作戦での武勇談をfFが面白おかしく語る中、私はそっとfGに謝罪する。
母のお守りを壊したことを、fGは黙って微笑んで許してくれた。
元部下達とマスターの親交もつつがなく結ぶことができて、幸福感に満たされていた毎日。
そこに、突如水をさすものが立ちはだかった。
いや、水をさすなどと生易しいものではない。これまでの気持ちを一気に覆すに十分な事実。
「死刑」マスターに下される判決は、そう定められたのだ。
389 名前:EPX 第三部エピローグ 2/4[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 22:06:09.47 ID:icIXj89u
[6/10]
私が正式な裁きを受けた場合、死刑になることは分かりきっていた。
412は総裁に直談判までかけたらしいが、総裁一人の裁量でどうにもなるものではない。
私はパルムの囚人解放という、太陽系警察に真っ向から喧嘩を売るような真似もしでかしているのだ。
それを許していたら、グラール全体の秩序に関わる。見逃すべきではない。
或いは総裁は、途中から412に私の捜索を諦めるよう促していたことから、分かっていたのかも知れない。
私がイルミナスの然るべき立場にいたならば、それなりの情報と引き換えに刑を減じる、
いわば司法取引に似た処置が可能だったろうが、私は既に、かなり前からイルミナスを抜けていた。
死刑を免ずる程の情報は得られないだろうと判断してのことだったのかも知れない。
412は激昂のあまりイーサン・ウェーバーの件を引き合いに出すという暴挙にも出たらしいが、
逆に、彼については内部での問題として、ガーディアンズに裁決を任せてもらう代わりに、
私の件は太陽系警察に委ねざるを得なかったのだとも思える。
邪推をすると、総裁はモトゥブの同胞を殺めた私を最初から生かしておく気はなかった、という見方もある。
だが、それではさすがに412が哀れだ。
最初から、私を殺すつもりでいた総裁に踊らされた形となる。そうではないと信じることにする。
膝の上にすがりついて泣く412をなだめながら、窓から漏れる月明かりの元、ぼんやりと考える。
私は、不幸だったのか、と。
心ならぬ大量殺戮に手を染め、自身も病に侵され、女として見る影もない容貌に変わり果て。
それでいて、結局何一つこの世に残すものなく死んでいく。
人が耳にしたら、誰しも辿りたくない不幸な道だと忌み避けるだろう。
だが、私自身は、あまりその言葉に実感を感じていなかった。
何故だろうか、と考える私の手に、泣きつかれて眠っている412の頭が当たる。
ああ、この子のおかげだ、と合点がいく。
あのまま独りで死んでいたら、きっと不幸なまま終わっていたろう。
だが、この子が来てくれた。
目を見張る成長を遂げ、私を越える心と力を手にした姿を、見せてくれた。
他でもない、この子に止めてもらうことで裁きを受け、罪を清算できる。こんなに嬉しいことはない。
私は、幸せなのだ。
願わくば412には、私の道を継いでこれからも力強く生きてもらいたい。
だが、最早私を越えたこの子に、余計な口を出すべきではない。
412が選ぶ道ならば、黙って選ぶがままにさせてやろう。それが最後の、親心というものだ。
「それに、こう見えて頑固だしね、この子…私に似て」
390 名前:EPX 第三部エピローグ 3/4[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 22:06:57.14 ID:icIXj89u
[7/10]
マスターの刑が執行される、当日。
公開処刑場には、溢れんばかりのヒトが集まっていた。
中でもビースト達は、マスターが中央の処刑台に引き出される前から興奮のしどおしだった。
同盟軍を臨時に束ねているフルエン・カーツ大尉は、せめてもの便宜として、
マスターを元ガーディアンズの一員としてでなく、
既に死亡しているイルミナス工作員の別の一人として報告書を偽造していた。
これによって、マスターはガーディアン全体に不名誉な汚点を残すことはなくなったが、
代わりにマスターは、どこの誰とも知らない馬の骨として処刑されるのだ。
マスターを知る私にとっては、腹立たしいくらいに虚しい便宜だった。
刑場に付き添い、今も傍らにいてくれている師匠が、もう一度確認をしてくる。
本当に、いいのかと。
私は、既に決めたことです、ときっぱり返事をした。
私は、マスターの最期をこの目で見届ける。
見届けた後、私はマスターの後を追い、初期化してもらう。
その上で、永久に廃棄処分してもらう、と。
マスターは、或いは私に生きて欲しいと願っているかも知れない。
だが、もう決めたのだ。マスターを、独りでいかせはしないと。
最期まで忠節を尽くし、供をする。PM冥利というものではある。
だが、そんな概念などどうでもよく、ただ私は思うのだ。
誰にも真実を知られず、ひっそりと死んでいくマスター。
一人ぐらい、あの人の真実を知り、最期まで運命を共にする者がいてもいいじゃないか、と。
マスターは昨夜、そんな私の話を聞いて少し悲しそうな顔をしたものの、黙ってうなずいてくれていた。
私の決めた道を、尊重してくれたのだ。
第2小隊の皆への挨拶も、済ませておいた。
或いは涙し、或いは憤慨して止めようとするが、私の意思が固いと見て取ると、やがて諦めてくれた。
常に思慮深い、部隊の押さえ役であったfTが、皆を説得する役に回ってくれたのだ。
せめてもの手向けとして、彼ら全員とカードの交換をする。
私のカードが消灯する時、彼らには伝わるだろう。私の処分が、つつがなく済んだことを。
391 名前:EPX 第三部エピローグ 4/4[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 22:07:38.74 ID:icIXj89u
[8/10]
やがて、マスターが処刑台に引き出されてきた時には、場内の興奮は頂点に達した。
口々にマスターを罵り、唾を吐き、物を投げつける。
そのいくつかがマスターの顔に当たり血を流させるが、それで容赦するものではなかった。
マスターは、刑法によりあの変わり果てた顔を衆目に晒していた。
その容貌が、カーツ大尉の報告書偽造を容易なものにしたのは確かだが、
それで同情の余地が入ることはなく、むしろこの凶悪な犯罪にふさわしい顔として、
彼らの心に余計な火をつける結果となっていた。
ありったけの声で叫びたくなるのを、必死にこらえる。
誰も、マスターの真実を知らない。どんな思いで自分の罪と向き合ってきたのか、それすらも。
だが、マスターは全て覚悟の上だった。
自分に向けられるありとあらゆる罵詈雑言の全てを受け入れた上で、刑に服すると。
それで少しでも彼らの溜飲が下がるなら。このような犯罪に然るべき罰が下されることを示せるのなら。
マスターは、残り少ない命を、最期まで使いきろうとしているのだ。
マスターから預けられた、マスターのパートナーカードが久しぶりに点灯している。
このカードの点灯、それが再び消える瞬間。そして、その理由の真実。
恐らくは誰も気付かないだろう、虚しい明滅。せめて私一人だけは見届けたい。
いよいよ刑が執行されるにあたって、ようやく場内も静まりだす。
執行官が、最期に言い残すことはないか、マスターに尋ねる。
マスターは静かに首を振った後、毅然とした態度で空を見上げていた。
視線をたどり、私も空を見上げる。
澄み渡る、青い空。
きっとマスターは、あの時以来こんなに澄んだ空を目にしてはいなかったのだろう。
人目を忍び、闇にまぎれて地を這い回るマスターが久しぶりに見る、抜けるような青い空。
刑に服する、まさにその瞬間にそれを目に焼き付けるマスターの気持ちは、どんなものだろう。
考えると、どうしても涙が溢れ出てしまう。
視界がにじむ中で必死に目をこらす私に、ふとマスターがこちらを向いたような気がした。
遠目の上、涙でぼやけているにも関わらず、いや、だからこそ、その時見えたのだ。
マスターが、かつての綺麗な顔立ちのまま優しく微笑みかける、思い出の光景が。
感極まって意識が薄れ行く中、背後から師匠の声が遠くに聞こえたような気がした。
よく、がんばった、と。
392 名前:EPX 終幕「総裁への報告書」[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 22:09:26.14 ID:icIXj89u
[9/10]
以上をもって、一人のガーディアン、およびそのPMに関する報告を完了する。
かつての弟子を初期化するにあたって抜き出した記録の全てを、ここにまとめたつもりである。
今度の大規模な作戦に向けてキノコ狩りに従事する中、私はしみじみと考える。
無罪放免として華麗なる復帰を果たした、かつての英雄。
総裁の片腕として一躍脚光を浴びることになった、私。
それらの影に埋もれ、歴史の屑と果てた、知られざる一人のガーディアンのことを。
私や、イーサン・ウェーバー。彼女と何の違いがあったろうか。
同じガーディアンとして目指すものに、何ら変わりはない筈だった。
そういう意味では、彼女はもう一人の私-Another You-と言ってもいいのかも知れない。
さて、彼女自身が言っていたことだが、彼女は本当に、この世に何も残せなかったのだろうか?
それを語るにあたって、ある筋から聞いた逸話をここに記す。
ガーディアンズに憧れる子供達。
口々に、自分は将来何になるか語り合う。
ある子供はfFになって武器を振るいたい、またある子供はfTになって自在に法撃を操りたい、と。
しかし、ある一人の子供が、力強く語ったそうだ。
自分は、WTになりたいと。
かつて燃え盛る草原に取り残された自分を守ってくれた、力強くも優しさに満ちた背中に憧れて。
自分は、弱い者を守れるガーディアンになりたい、と。
私は総裁に、私が弟子と交わした約束を一点、敢えて破ることを提案したい。
かの子供がガーディアンとして成長するまで、このPMのコアを廃棄することは保留すると。
成長した彼と、このコアが出会った時。私は期待してしまうのだ。
二度とまみえることのない、かつての主従の再会、そして受け継がれ、紡がれる道という、奇跡を。
その時のことを考え、この報告書は厳重に保管しておくよう申請する。
そして、願わくばこの報告書は、秘密ではあっても、機密とはしないでおくことを。
そうすればいつか、成長した彼、或いは他の誰かががこれを手にし、知ることもあるだろう。
一人の、信念に殉じたガーディアン、そして最期までそれに尽くした、忠節無比のPMの真実を。
-アンドウ・ユウ-
393 名前:EPX作者[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 22:14:32.95 ID:icIXj89u [10/10]
以上をもって、EPX ~Another You~ を完結とします。
呆れるほどの長編であるにも関わらず、応援や感想の言葉を下さった方々。
肌に合わない長編に堪忍袋の緒を切らさず、最後まで理性的に見守ってくださった方々。
勝手な引用を快く許してくれたばかりか、思わぬゲスト出演まで果たさせてくれた方。
スレのため、敢えて苦言を呈してくださった方々。
全ての方に、心から感謝の言葉を贈ります。
本当に長い間お付き合いいただき、ありがとうございました。
394 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/16(金) 02:14:43.37 ID:2FnIdN0b
[1/2]
>>393
最後の最後で引用するのもアレだが、短編にて労いの一言を
395 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/16(金) 02:15:56.21 ID:2FnIdN0b
[2/2]
-Another Ending-
俺は今、412とコロニーの通路を歩いている。
買物の予定も何もないが、俺達はやらなければならない事があった。
もう1人の自分自身との挨拶を。
耳がどうにかなりそうなくらいの喚き声がこの場を支配している。
俺達のような現場の人間ならどうという事もないが、相手は一般人。
人を殺すその瞬間を公開すると言うなら、興奮して当然と言うものだ。
おまけに処刑されるのは、あの忌まわしきイルミナス…倍乗せと言うわけだ。
だが、俺達は知っている…処刑される人物の真実を。
こんな1枚の紙切れに頼らなくとも。
主人「分かるもんだろ…412? 同じ趣味の使い手の匂いって言うのがな」
412 「はい…どんなに頑張っても、PM時代の癖と言うのも中々抜けません」
412の"もう1人"は、今や輝けるポジション…いや、あの豚の片腕ではある意味不幸と言うべきか。
ともかくガーディアンズのエースと言われる1人の男の横で震えている。
412はそれを見て、声もかける事なく、ただ黙って頭を深く、そして静かに下げていた…。
俺はもう1人の自分自身を見つめていた。
それは最早人間とは言えないほどの異形のモノとなっていたが、俺には分かる。
例え他人に理解されない道であろうと、意地を貫き通した1人の戦士であると。
"もう1人の俺"もこちらを見つめているが、気付いてはいないだろう。
そんな事に構わず軽く敬礼をしながら、すぐに出た言葉は…。
主人「お疲れさん、~~~」
-完-
396 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/16(金) 10:09:55.31 ID:/Gv93VGq
※長編作者に対する一切の批評を禁じます。
397 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/16(金) 18:55:33.56 ID:hYhPl54j
批判禁止では無くて批評禁止ですか。
書き手にとって批評って気になる物だと思うけどね。
398 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/16(金) 19:27:14.02 ID:2Wno2RrN
いい作品に長さは関係ない!
良かった!いいものをありがとう!
EPXの作者殿!
399 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/16(金) 20:09:07.91 ID:B4CbL0QX
EPX作者様本当にお疲れさまでした!
楽しみに見させて頂いていましたよ~
感動をありがとー!
400 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/16(金) 21:00:20.67 ID:hKG/k6L7
>>398
同意。
長かろうが、短かろうが、面白い作品は面白いもんだ。
読み手は気に入った作品だけ読めばいい。
内容云々の批評でなく、ただ長いというだけでの批判するのはいかがなものかと思う。
書き手がいなくなったら、楽しむことも出来ないしな・・・
>>393
お疲れ様でした。非常に楽しめました!!
また機会があれば別の作品を投下してくださいな。
>>395
確かこのヒュマ男はレオには気に入られているが
ライアとは全く気が合わないんだっけかな?
それにしても豚は失礼だろう・・・
豚にwww
おや、誰か来たようだ。ちょっと見てくるノシ
401 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/16(金) 23:49:37.64 ID:bigvBPyt
素直に面白かったと思うよ。お疲れ様!
遅筆な自分ももうちょっと早く書けたらなあw
>>400
どうした、>>400!返事をしろ!>>400!>>400ーーーー!!
402 名前:Not a Drill 1/8[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 01:03:38.12 ID:9kK4qigT
[1/9]
「あなたが好きです」
はう!
わ、私の事が好き!?え?え?え?
えええええええ!!!?
思考停止→(10秒経過)→再起動。
あなたが好きです。あなたが好きです。あなたが好き以下略(リピート)
冷静になろう。冷静に。えっと私の事が好きって事は当然そういう事でえーっとえーっと。
それが三日前の話。
今思い出しても火から顔が出る位(恥ずかしさの余りの言葉の間違い)恥ずかしいのだけど、
唐突に告白されてしまった。
本当に突然の事で嬉しいやら、恥ずかしいやら、どうしたらいいのかでもう大混乱。
しまいには腕をぶんぶん振り回すわ、口はパクパク空気を求めるわでもう大変。
当然返事が出来る訳も無く。
一人だったらどうにもならなかっただろうけど、
しっかり者の私のPMのリリカがどうにかその場を収めてくれた。ありがとう。
そして今私の手に握られているのは、その時リリカが貰ってくれたパートナーカード。
コレを見ているだけでその時の事を思い出して…。
はわわわわわわ!!!
403 名前:Not a Drill 2/8[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 01:04:14.23 ID:9kK4qigT
[2/9]
「はわわわわ!」
マスターがまた混乱しています。
困ったもので本日13回目。ちなみに通産129回目。
その様子がとても可愛かったのでとりあえず放置プレイして楽しんでいたのですが、
いい加減踏ん切りをつけた方がいいと思うので背中を押してあげる事にします。
「マスター、折角パートナーカード貰ったのですから、一応挨拶位はしておいた方がいいですよ」
私は手に持ったお茶をマスターの前に差し出し、自分の分を飲む。
美味しい。仕事(マイルームの掃除)の後のお茶はやはり格別ですね。
マスターの方を見ると、私の言葉が効いたのかパトカを取り出しポパピプペ。
『デートしてくれますか!?』
ぶはっ!(←お茶を噴出す音)
ど、どうしていきなりそういう直球投げるかな!?マスターは!
「ど、どぼじよう…動揺して私ったらとんでもない事をーーー!!」
メールを送って冷静になったマスターは頭を抱えてゴロゴロしだします。
か、かわいい…!
ってそんな事言ってる場合じゃない!
「マスター!とりあえず今のは間違え…間違えってのも相手に悪いですよね、えーっととりあえず謝罪のメールを!」
私も混乱していて何を言っているか理解不能。
ピンポーン。
マスターのパトカが着信を知らせる音。
とっても嫌な予感がします。
『勿論ですとも!』
その後、詳細に日付の相談とか来てしまったのでした。
404 名前:Not a Drill 3/8[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 01:04:46.15 ID:9kK4qigT
[3/9]
「ど、どぼじよ゛う…」
チャブ・ダイに突っ伏した私の言葉が部屋に響く。
正面にはちょこんと正座してお茶を飲むリリカ。
「とりあえず、行くしか無いですね」
ずずず…。そう言ってまたお茶を一口。
「そ、そんないきなりレベルが高い事!や、やっぱ最初は交換日記とか
教室の端っこと端っこで思わず目が合っちゃって恥ずかしくてお互いに
はにかみながら手を振ったりとかそういうプロセスを経てからぁあぁあぁ!!!」
お茶を置いて、チャブ・ダイを右手で一発。うわ、痛そう…。
「マスターは何時の時代の人ですか!こうなったら腹をくくってバッチリ決めて!バッチリ行って来るべきです!」
言い終えるとすっくと立ち上がり、ずびし!と私のほうを指差しながら決めの一言。
「そもそもマスターの好みど真ん中じゃないですか!あの人!」
「………」
「………」
場に訪れる沈黙。
私の沈黙が気になったのか、リリカは首を傾げながら聞いてくる。
「あの…?マスター?えっとまさかとは思いますけど、顔、覚えてない…?」
こくこく、しっかりと二回首を縦に振る。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ」
頭を抱えた盛大なため息。
「はぁ…仕方ないですね。ちょっとこっちに来て下さい」
そう言っててくてくとビジフォンの側に移動。
「実はコレあまりやりたくないのですけど…マスターの為とあれば仕方ありません」
リリカはビジフォンに繋がれてるケーブルを一本引き抜くと、自らのコメカミあたりに突き刺す。
「うーん、やっぱりあまり気分のいいものではありませんね…」
はわわわわ。頭からケーブルが出ています。はうぅ。痛そうぅぅぅぅ…。
「いいですか。よく見ててくださいね」
ビジフォンに目をやると、その時の画像が流れる。
整った顔立ち、すらりとした長い脚、その姿はまさに理想の白馬(が似合いそうな)の(私の)王子様!
こんなチャンスが次に来るのなんて…いやきっと二度と来ない!
なんだか急に元気になってくる。
「私、頑張るよ!」
405 名前:Not a Drill 4/8[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 01:05:22.27 ID:9kK4qigT
[4/9]
約束の日まで後三日。
自分の姿を鏡で見て、地面に埋まりたくなる。
こうなれば自分で穴を掘ってでも…!
「マスター!床を掘らないで下さい!」
「うぅ…うぅ…だって…」
「だってもヘチマもありません!
マスターがチンチクリンなのは今に始まった訳では無いのですからそればっかりはどうしようもありません!
ついでになんですか!このメールは!『私のいい所を教えてぇ!!!』自分の事は自分が一番分かってる物でしょう!?」
「だってだってぇぇ!!私の何処がよかったのかわからなくて怖かったんだもん!!」
私は恥ずかしげもなく涙を流す。
怖いのだ。誰かに好きと言われて、自分のいいところが分からなくて、でも誰も答えてくれなくて。
「大丈夫です!」
私は泣き顔のまま、大きな声で大丈夫だと言ったリリカを見る。
「マスターのいい所は私が知っています」
私の、いい所を…知ってる…?
「ど、どこ…?」
何処だろう?私にはよくわからなかった。
背も大きくないし、胸もあんまり大きくない、当然そうくればあまりお尻も大きくない。
顔も美人と言うよりは童顔だし、自分の好きな部分というのは無かった。
「全部です」
「ぜ、ん、ぶ…?」
「そう、全部です。その栗色の髪も、つぶらな瞳も、ちょっと控えめな胸も。
出来損ないの私みたいなPMを育ててくれたその優しさも、全部が全部マスターのいい所です」
言葉を区切る。
「そんなマスターが、私は大好きです」
またちょっとの沈黙。
「だから…そんなに自分の事で泣かないでください」
そう言ってリリカはちょっと目線を逸らす。その目にはちょっと光るものがあった。
ごめん、ごめんね。私はあなたのマスターだもんね。
自分の大好きなマスターが、こんな事で泣いてたらPMのあなたも悲しいよね。
うん。わかった。大丈夫。
気付けば涙は止まっていた。
私はリリカを抱きしめながら。ごめんね、と言った。
それでも不安な物は不安だったりする。
長年持った劣等感はそう簡単には拭えない。
また愚痴愚痴言い出しそうになった所で間髪入れずにリリカはこう言う。
「努力しましょう!あと三日しかないですけど、やれるだけの事はやりましょう!」
406 名前:Not a Drill 5/8[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 01:05:54.89 ID:9kK4qigT
[5/9]
それから地獄の日々が始まった。
食事制限は勿論の事、鏡に向かって笑顔の練習100回とか、
普段のトレーニングよりも多い腕立て伏せやらなんやら。
なんでも胸の筋肉を動かすと胸が大きくなるとか。
絶対ついでにトレーニングさせられてる気がする…。
三日間のリリカによる地獄の日々をやり遂げて、ちょっとだけかわいくなったような気がする。
ほんとにちょっとだけ。
鏡に向かって笑顔。あれ?私こんないい顔で笑えたっけ?
そんな事を考えてると、リリカの声。
「マスター寝ましょう!すいみん不足は美容の大敵です!」
そう言われて布団に潜ってみたけれど…。
本番は明日。
ホンバンハアシタ…。
「ぜ、全然寝れなぁぁぁぁい!!!」
「ま、マスタぁぁぁぁぁ!!!」
そう、私は緊張のあまり全然眠れなかったのだ。
小鳥の囀り聴こえる爽やかな朝。
リリカが隣に居てくれたからだろうか。
あまり寝てないにも関わらず目覚めは快適で、もうあまり怖さは無かった。
やるだけの事はやった。そんな満足感が自信に繋がっているのかな?
後はとっておきの服でバッチリ決めて、バッチリ行くだけ。
そんな事を考えてると部屋に置いてあったハシラドケイが時間を告げる。
一回、二回…きっちり十回。
え!!もう10時!?約束の時間は確か10時。
大慌てて布団から飛び出す。
その勢いに隣で寝ていたリリカも目を覚ます。
リリカも時計を見て起きてしまった事の重大さに気付いたのか、もの凄い勢いで行動を開始する。
ナノトランサーから昨日二人で決めたとっておきの服やアクセサリーを出して私に手渡してくれる。
「マスター!行かないよりは行った方がいいです!」
言われて私が着替えをしたり、メイクをしたりしている間にリリカは軽い朝食を作って手渡してくれる。
「何も食べないよりはいいです」とコルトバを挟んだサンドウィッチ。
慌てて作ったからだろう、形は歪んでいたけど美味しかった。
準備を終えてマイルームから出ようとした時。
リリカに急かされる様に準備をしたけど、約束の時間はもう過ぎている。
待っている訳が無いよね。
そんな事を考え始めてしまった時。
私の手が引っ張られる。
「マスター!先ほども言いましたけど、行かないよりは行った方がいいです!」
リリカが私の手を引いて、凄い勢いで走り出していた。
407 名前:Not a Drill 6/8[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 01:06:20.30 ID:9kK4qigT
[6/9]
よくよく考えれば、私が付いて行く必要は無かった。
寝坊してしまったマスターはそれに負い目を感じて、きっと動けない。
だったら勢いで連れ出してしまえ。
考えての行動では無かったけど、きっとそういう事なんだと思う。
私はマスターの手を引いて走った。
準備の終わったマスターの手を引いて、マイルームから飛び出し、通行人に声をかけてどいて貰い、
今にも出発しそうなシャトルにもう一人乗る人が居る事を示して待ってもらったり。
マスターはそれでも何度か転んでしまったり、人にぶつかったりしてしまった。
身体は無事だけど、ちょっと人目には見られない姿になってしまったのが悲しい。
マスターの努力が報われますように。あとはそう願うだけ。
もし仮に格好だけで引いてしまうような奴なら…
そんな奴にマスターは任せられない。
これは奴への試金石だ。私はそう都合よく解釈する。
―――――そして私たちは約束の場所に着いた。
408 名前:Not a Drill 7/8[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 01:06:50.96 ID:9kK4qigT
[7/9]
約束の場所。
パルム中央広場の柱の下。
30分遅れてしまったにも関わらず、彼はちゃんと待っていてくれた。
「ごめんなさい…私、寝坊しちゃって…」
思わずうつむいてしまう私。
長い沈黙。
それはそうだろう。慌てて家を飛び出して、急いでここまでやってきた。
その間に転んだり、人にぶつかったりして髪はくしゃくしゃ。
無理して履いたちょっと大人っぽい靴のヒールは折れてしまっていた。
嫌われちゃったんだろうなぁ…。
今まで頑張って来たけど、やっぱり私にはチャンスなんて来なかったんだ。
そんな風に思う。
「あの…ごめんなさい、私帰ります」
そう言おうと思った矢先だった。
彼は私の頭に手を乗せて、優しい声でこう言った。
「いつものままで良かったのに」
初めて認識した彼の声。告白された時とはちょっと違う優しそうな声。
思わず笑顔になってしまう、私。
その優しさが嬉しかった。
顔を上げて彼を見る。
彼は私が今までに見たことのないような笑顔で笑ってくれていた。
409 名前:Not a Drill 8/8[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 01:07:27.85 ID:9kK4qigT
[8/9]
マスターが笑った。
それだけで私は満足だった。
後は二人だけの世界だ。私はマイルームに帰ってマスターの帰りを待とう。
きっと聞いてるだけで笑顔になってしまう話を持ち帰ってくれるはずだ。
「それではお邪魔虫はいなくなりますね」
私はちょっと意地悪く笑いながらそう言ってその場を後にしようとする。
一歩歩き出した所で言い忘れた事を思い出した私は、振り返って彼に向かってずびし!と指を出す。
勿論もう片方の手は腰に。
「マスターを泣かせたら許しませんからね!」
彼は少しきょとんとした顔をしていたけど、すぐに微笑んでこう言った。
「勿論。君のマスターを泣かせたりするような事はしないよ」
うん、合格。きっと大丈夫だろう。
その返事に満足した私は今度こそその場から去る為にくるりと向きを変えて歩き出す。
ふと空を見上げると、今日の空はいつもよりも青く見えた。
所々に見える白い雲は邪魔なんかじゃなく、その青さを更に際立たせてとても綺麗だった。
ふふ。今日は絶好のデート日和ですね、マスター。
410 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 01:10:45.93 ID:9kK4qigT
[9/9]
とある曲を聴いていたら妄想が膨らんで来て勢いで書いてしまった。
妄想が膨らみ過ぎてこんな長さに。
正直、すまんかった…orz
411 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 01:42:29.94 ID:Zit+hbqo
>>400
一応、ビス男である
炎の絶対防衛線で散々に馬鹿にされたこともあり、ライアに対して不信感を露にしている設定
ライア好きにはすまんが
412 名前:超極秘任務 1/4[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 11:03:03.53 ID:EVILzf2/
[1/7]
「ガーディアンズライセンスを確認しました。」
俺の顔を見てミーナが笑う。いや確認してなかっただろ今。
「顔パスってやつですよ、顔パス。もう覚えちゃいましたもん。」
コンソールに軽くよりかかりながら、慣れた手つきで片手タイプを披露する。一応緊急の
極秘任務があるという呼び出しを受けて俺はここに来ているはずなのだが…
「えーと、マリオンさんはこのまま総裁室へ向かってください。
総裁から直接ミッションの説明があるそうです。」
はずむ様な声。緊張感のかけらも無い。
「なあミーナ、一応ほら…仕事だし…」
「ふふん~。ほどよく楽しむのも、お仕事を上手にこなすコツなんですよ。
私はお仕事を上手にこなす為に、わざとこうやって楽しそうにしているんですよ?」
「な、そうだったのか・・・!」
「はい。あ、ほら。こんな所で無駄話してるから、あそこで総裁が怖い顔で待ってますよ。」
「わあああ!うわあああ!うわあああっ!」
「星霊の導きがありますように♪」
「星霊に呪われろ!」
奥のエレベータ前に仁王立ちするツインテールの悪魔と目が合わない様に下を向きながら
俺は悠々と総裁室に向かって駆け出した。
413 名前:超極秘任務 2/4[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 11:15:22.27 ID:EVILzf2/
[2/7]
「アタシがこんな事を言うのも何だけどさ。」
直立低頭の姿勢で固まった俺の方を見ずに、ライア総裁はいつも通りのくだけた口調で
話し始めた。
「総裁っていうのは、すごく偉い立場の人がなるモンだと思うんだよ。
だから、アタシは何度も無理だって断ったんだ。」
「はっ!」
「ガラじゃないのも自分で分かってるけどさ、アタシ確か最初の研修でアンタに言ったよな?」
瞬時にいい度胸をした新人だった俺の当時が思い出される。
「とりあえず総裁室へ行くか。続きの話はそこでしよう。」
最後まで俺の顔を見ずに、ライアは踵を返し転送エレベータへ乗り込んだ。
俺もこれに乗るのか。この空気で。
「早く乗りな。緊急ってワケじゃないが急ぎの任務なんだ。」
少し和らいだ声に一縷の望みを託し、俺は二つ深呼吸をすると
目を閉じてエレベータに飛び込んだ。
414 名前:超極秘任務 3/4[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 11:34:31.86 ID:EVILzf2/
[3/7]
エレベータの中で蹴られた尻をさすりながら、俺はライアの後に続いて
総裁室へと入った。
中にはメガネの男が1人、ルウが3人、そしてルミア・ウェーバーの計5人が
長椅子へ順番に行儀よく座っている。
全員の視線を受けながら、俺は長年培ったガーディアンズとしてのカンで
この任務が相当に手のかかるシロモノだと悟っていた。
恐らくメガネ以外の4人を連れての任務になるのだろう…。ルウx3+ルミア・ウェーバー。
如何なる手練と言えど眉間を押さえたくなるメンバー構成である。
もうやけくそになって俺はライアへ質問を浴びせかけた。
「こりゃ一体何の任務ですか?俺はルウシリーズのメンテナンスライセンスも
指導教官のライセンスも持っていませんよ。まさか全員同行しての任務じゃないでしょうね?
特にルミア・ウェーバーは…」
「黙りな。」
「はい。」
ルミア・ウェーバーの貫く様な視線を頬に感じながら、俺は任務の説明が始まるのを待った。
「実は…だな。」
ぼりぼりと頭をかき、急に声のトーンが落ちるアイアンメイデン・ライア・オブザフィアー。
耳が赤い。心なしか頬も赤く染まっている。視線が泳ぎ、まるで人間が照れている時の様な
仕草をしてみせる。
「照れてんだよ!アタシは人間だっ!」
どこからともなく丸メガネを掴んでこちらへ放り投げる。
俺はヒットした眉間をさすりながら、ライアの聴き取りづらいぼそぼそ話に耳を傾けた。
415 名前:超極秘任務 4/4[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 11:59:43.78 ID:EVILzf2/
[4/7]
「最初はこっちのルウに頼んだんだけどさ、あまりその手の情報に対する
蓄積がなくて…売っている店の一覧と各店の所在座標だけ割り出してもらったんだ。
で、モトゥブ支部のルウならビーストの文化に接する機会も多いわけだし、より多くの情報を
蓄積しているだろうってルウが言うから、モトゥブ支部のルウに連絡を取って
実際に探してもらったんだ…けど、モトゥブ支部のルウも」
「厳密にはダグオラ支部のルウです。」
3人いる内の、真ん中に座るルウが軽く手を上げて訂正する。
「あー、うん…どうせ支部は惑星に一人ずつしかいないんだからモトゥブ支部でいいよ…
で、探してもらったんだけど、現在装着しているパーツは既に生産が中止されている事が
分かったんだ。子供の頃からずっとつけてる年期物だからね…仕方ないと思ったよ。
で、仕方ないから形状の似たものを探してきてくれる様モトゥブ支部のルウに頼んだんだけど
確かにモトゥブ支部のルウはビーストの文化と歴史には詳しかったんだが、その…」
「本部ルウが列挙した店舗のうち、モトゥブに存在する店舗全てについて現地調査を行いましたが
該当するパーツに類似したパーツを現在取り扱っている店舗は存在しませんでした。」
真ん中のルウが続ける。
「同様にパルムではワタシが、クライズ・シティ内の店舗は本部ルウが現地調査を行いましたが
結果は同様でした。」
手前のルウが手を上げて補足し、奥のルウが続いて手だけを上げる。
「それで、ルウさんじゃダメだっていう事で私が呼ばれたんですよ。」
腕組みをしたルミア・ウェーバーが、先ほどの視線を向けて不機嫌そうな口調で締めた。
「ライアさんの髪留めが、かたっぽ折れちゃったんです。
それで、似たような髪留めが売ってないか、グラール星系中を探してるんです。」
「そ、そういう事だ…」
胸を張って説明するルミアの後ろで、ライア手を後ろに組んで子供の様にもじもじとしていた。
「マリオンさん、まずこの機密保持契約書にサインして下さい。
今回の任務について決して誰にも口外しない事。購入時は『私物』として購入する事。
包装はそのままにせず、必ずこの連絡用ナノトランサーディスクへ入れ替えてから
総裁室まで持ってくる事。いいですか?!」
ルミアの買ってきた髪留めは、ルミア自身がつけている物と色違いのお揃いだった。
自身の譲れぬプライドと、予期せぬ事態下での人材不足に困り果てたした総裁は
教習生である私に望みを託し、最後の賭けに出たのだった。
をはり
416 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 12:04:21.48 ID:EVILzf2/
[5/7]
素直に5ページにすればよかった…
ライア嫌いが多そうなのでフォローのつもりでした
読みにくかったらすみません
417 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 12:05:31.67 ID:EVILzf2/
[6/7]
×:教習生である私に望みを託し
○:教習生である俺に望みを託し
長文は苦手よ
記憶領域が少ないの私
418 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 12:07:36.67 ID:uopJEgpr
総裁になってから急に好きになったぜ!
そして君にはまだ任務がある。
パシリの出番を(ry
419 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 12:16:19.77 ID:EVILzf2/
[7/7]
しまった!ここライアスレじゃねえパシリスレだ!
またいずれ、今度はパシリ話で投下します!
420 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 14:19:49.53 ID:WV8FhHQh
>>419
『パシリ』違いかと思ったらw噴いたじゃないかw
>ルウが3人、
あとこれもさらっと書いてあって噴いた。いや間違ってはいないが…
421 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/17(土) 23:50:22.83 ID:CxyWgQjT
>>419
PM 「ライア総裁だって女の子なんですから、可愛いものに目が無いはずです」
御主人「そうか…マシナリーでも女の子だな。どんなのがオススメだ?」
PM 「そうですねー・・・パノンとかジャゴとか?あ!ポルティもいいです」
御主人「… … …」
こうですか?
422 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/18(日) 01:24:28.21 ID:zjABMUb/
[1/2]
>>421
ショタパシリ、ポルティ見て「僕もかわいくなりたいなぁ」とか言い出すからな。
「お前の方がかわいいよ」とか言ってウホッ的な展開になっても困るし
どう対処していいか悩む
423 名前:性転換デバイス 1/4[sage] 投稿日:2008/05/18(日) 10:57:05.02 ID:k3liM3YT
[1/5]
「私は別に構いませんよ?」
ほわんといつもの笑顔を浮かべるGH 434。くっ、GRM社め。
大変に邪悪で私的な理由によって、EXデバイス470の適用を提案してみたはいいのだけれど
この子はこれっぽっちの警戒心も猜疑心も抱く様子をみせず即答して見せやがるので、一応
自分のあまり多くない知識を総動員して、性別設定が変更される事についてこれでもかという位
くどくどと説明をしてやったのだけど、その答えがこれ。
「心配しなくても大丈夫ですよ、フレデリカ様。
新デバイスのについての情報は随時本社からアップデートを受けておりますので
抵抗感ですとか不安ですとか、そういったメンタル面でのご配慮は必要ありません。
私がマシナリーである事をお忘れですか?」
「そうだけど、あんた結構普通に怒ったり泣いたり、機嫌悪くなったりするから・・・」
「そ、それはフレデリカ様のパートナーをつとめさせていただいた結果学習した反応ですからっ。」
ちょっと動揺してみせる434。
普段の仕草ややりとりがあまりに人間的なので、つい考えない様にしてしまいがちだけど
この子はキャストではなく、あくまでマシナリー。この反応も”作られたもの”なんだろう。
「とは言ってもやっぱりフクザツだなあ・・・」
「でしたら、お止めになりますか?」
「それはない。」
「ですよね。」
渡されたEXデバイス470を胸に抱えたまま、少し困ったように首を傾げている。くっ、GRM社め。
424 名前:性転換デバイス 2/4[sage] 投稿日:2008/05/18(日) 10:57:40.89 ID:k3liM3YT
[2/5]
「よし、決めた!やろう!」
「はい!」
「思うところがあるかもしれないけど、恨みっこはなしね!」
「はい!」
「どうしてもイヤだったらすぐ434型に戻してあげるから、遠慮せずに言いなさいよ!」
「はい!」
覚悟を決めて、EXデバイスを取り付ける事にする。
さあ。えっと。うん。これってどこにつけるんだろう?
「EXデバイス用スロットは背面上部中央、肩の少し下にあります。
スロットをオープンしますので、すみませんが、上着を脱ぐのを手伝ってください。」
「え?脱がないとダメなの?」
「はい。スロットを完全にオープンした状態にするには衣服が邪魔になります。」
「・・・いいのかこれ。」
「大丈夫ですよ。ほら、フレデリカ様とワタシは女の子同士ですし。」
GRM社め。女の子同士じゃない場合だってあるだろうに…
434のブラウスは相当に凝った作りになっていて、結局上はほとんど全部脱がせる格好になってしまう。
ぴきゅっ。ぴぴっじーきゅぴぴるっ。ぴぴ。ぴ。
髪の毛を自分で右肩にまとめて、434は不思議な作動音を鳴らした。
うぃん。
「はい。こちらがEXデバイス用スロットになります。
誤挿入はできない形状になっていますが、デバイスの上下を間違えない様にしてください。」
フォトン回路の模様がついた端子らしい部分を下にして、デバイスをスロットへ押し込む。
軽く背中を押された格好になって、434が少しよたつく。
425 名前:性転換デバイス 3/4[sage] 投稿日:2008/05/18(日) 10:58:25.92 ID:k3liM3YT
[3/5]
「デバイス確認。デバイスネーム:EXデバイス470。チェックOK。」
2秒ほど無表情になると、システムメッセージらしい音声を口から発して、ぱちくりとまばたきをする。
「ありがとうございます。デバイスが正常にセットされました。
適用を始めますので、少し離れてお待ち下さい。長い間のご利用、ありがとうございました。」
「え!!ちょっと待って!!」
思わぬ別れの言葉にぎょっとする。EXデバイスを適用しても記憶は消えないはず・・・だよね?
「心配しないでください。適用後もちゃんとフレデリカ様の事は覚えています。
デバイス適用時の事故に備えて、本社側PMセンターにも使用データがバックアップされています。」
「ああ・・・よかった。お別れみたいな事言うから。」
「はい。GH 434型としてのワタシとはデバイス適用時にお別れとなりますので」
「ええ?!」
「一応、愛着のある方向けにメッセージとしてお伝えする仕様になっているんです。」
「あ、ああ。なんかもう心臓に悪いなあ・・・」
スロットを丸出しにしたまま、くすっと笑う434。何かが胸に刺さる。
くそっ、GRM社め!くそっ!くそっ!!ああもう!!
426 名前:性転換デバイス 4/4[sage] 投稿日:2008/05/18(日) 11:00:22.07 ID:k3liM3YT
[4/5]
「やめやめ!EXデバイス適用中止!ほら、スロット開けて。」
「えっ?本当によろしいのですか?」
「うん。なんか、ゴメン。やっぱりあんたそのままがいいよ。何か434型に慣れすぎちゃった。」
「わかりました。EXデバイスの適用を中止します。」
ほわんといつもの笑顔を浮かべる434。全くもう。
ぴ。ぴぴ。きゅるるじじっ、じじっ。ぴきゅるぴ。うぃん。
背中のスロットが再度開き、EXデバイス470が顔を出す。
私はそれを取り出すと、434の肩をぽんぽんと叩く。振り向いた434にEXデバイスを差し出す。
「これ、食べていいよ。」
「ありがとうございます。ですが、今はおなかがいっぱいですので、後で頂きますね。」
ぺこりとお辞儀をすると、EXデバイスをことりとビジフォンの上へ置く。
「とりあえず服着よう。風邪引いちゃうよ。」
「はい。でも、マシナリーは風邪を引きませんよ?」
「いいから。ほら腕通して。」
「はい。」
スロットを自分の手でぺちんと閉じると、左腕をブラウスの袖に通して器用に服を着始める。
襟が曲がっているのもきちんと自分で直して、いつもの通りに両手を前に組むと、434はすっかり
元の434に戻った。
「ありがとうございます。フレデリカ様。」
「え?ああ、もうなんかゴメンね。やれって言ったり、やめろって言ったり。」
「いえ。ワタシは今とても嬉しいです。」
「何で?」
「同タイプで長期間利用して頂けるという事は、マシナリーとしてよい製品評価を頂けていると
考える事ができますので」
「・・・」
「434型のワタシに、フレデリカ様が愛着を持って下さっているという事が」
「あ''~~やめてっ!かゆい!何かかゆい!そういうのやめやめ!」
「はい。」
今までに見たことのない屈託の無い笑顔で、434は私を見上げながらくすくすと笑った。
くっ、GRM社め。
fin
427 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/18(日) 11:05:00.11 ID:k3liM3YT
[5/5]
EXデバイス470で、きっと誰もが感じた葛藤をSSにしてみました。
連続投稿ゴメンなさいです。書きたいエピソードが貯まりに貯まっていたので…
あとエロスは程ほどにします。
428 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/18(日) 11:29:59.27 ID:zjABMUb/
[2/2]
>>426
あー、GRMあくどいなぁ。
豚鼻といいなんといい。
429 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/19(月) 12:12:26.42 ID:klgYMmux
440 「御主人の部屋にPSPがありました」
御主人「440…それは…」
440 「説明して下さい。例のあれですか?私よりネコの方がいいのですか?」
御主人「それは違うぞ440。PSPでもガーディアン支部が出来るのでその為だ」
440 「そうなのですか!それではいつでも御主人と一緒ですね!!」
御主人「… … …」
440 「…御主人?」
御主人のポケットから落ちる一枚の紙。
雑誌の切り抜きらしいそれには女性キャストの写真が写ってる。
幼い顔立ちに対して豊満な身体。
記事にはこう書かれていた。
『ヴィヴィアンはまだ生まれたてのキャスト。アナタがやさしく教え込んでね』
御主人「ち、違うぞ440!待て!そのショットをしまえ!あっあぁー!!」
PSP版デモを見てつい書いた。
PSP版は合成廃止らしいけどPMはどうなるのかな・・・?
430 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/19(月) 22:11:54.23 ID:xBgeLx5h
>429
そりゃあそんな写真と一文を目にしちゃあ440が神様だってそうするだろうさw
PMがでるかどうかは厳しいとこだね。合成もショップもなしじゃあ・・・
それでも俺は望みを捨てない!けどね。
ところで、遅まきながらEPX作者さんお疲れ様。
先程読み終わったとこなんで、せっかくだから感想の一つもかいてみるw
長いわりによみやすくて、自分的にはよかったと思う。
あと、うまく言えんけど構成のうまさ?みたいなのも感じられた。
欲を言えば、できればこの主従には幸せになってほしかったな。
作品に文句つけるわけじゃないけど、主人もパシリもがんばったわりに報われなくて、チョト寂しかったからw
それにしても、ここまで「萌え」のないパシリSSも新鮮だったな。
「燃え」は大いにあったけどw
431 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/20(火) 01:39:43.07 ID:ZI+QcYGN
ヴィヴィアンと410が一緒に映った画像があったとか聞いた気がするよ。確認してないが。
折角の育成システム廃棄するには惜しいし、むしろ武器のカスタマイズとかもできるようにならないかなと妄想している。
でもなぁ…名前だけで良いから引き継げるようにして欲しかった、な…
>>427
何か久々に純粋にほのぼのしたパシリSSを読んだ気がするよ。ちょっと幸せになった、乙!
でもそれでもなお地味に胸に刺さる話だな…w(マシナリー云々とか
432 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/20(火) 03:35:24.68 ID:p3ybCJUX
[1/10]
空気読まずに進行の遅い長編の続きを。
今回は登場人物の心理に凝りすぎたかもしれませんが。
ここにきてようやく戦乙女のGH432にある一つの変化を書くことができます。長かったなー
433 名前:継承 II 君、死にたもうことなかれ(後編)1[sage] 投稿日:2008/05/20(火) 03:36:34.45
ID:p3ybCJUX [2/10]
「何時間かまではもたせてやる。この程度ならばいかようにでもできる…その間に方法を考えてみせろ」
オンミョージさんは冷たい瞳でネイ・ファーストを睨め付け、踏みつけて動けなくしています。一歩間違えば殺しかねない雰囲気ではありますが、時間稼ぎに問題はなさそうです。
とはいったものの…毎度ながらまるっきり何も思いつかないんですよね。
ネイさん何か考えつかないですか?あなたが一番ネイ・ファーストのことを知っているはずですから。
「知らない!みんなを傷つけて、あんな人大嫌い!いなくなっちゃえばいいの!」
しかし、ネイさんはネイ・ファーストのほうを少し見やると、目をそらして吐き捨てるように言いました。ますます激高し、ネイ・ファーストも暴言を放ちます。
「言ってくれたな!私もおまえが大嫌いさ!人間の男なんかにこびへつらってぬくぬくと暮らして、さぞかし幸せだったろうねえ、反吐が出る!」
わたくしは靴に小石が入ったような違和感を感じました。なんでこの二人はそこまで憎み合うんでしょうか?
ネイさんに嫉妬するファーストのほうはともかくとして、ネイさんのほうもファーストを異常なくらい毛嫌いしています。
ネイさん…あなた、何を隠しているんですか?
聞いても、ネイさんは黙ってうつむくばかりでした。
謎を見て取ったわたくしに気づいてか、オンミョージさんがアドバイスしてくれました。
「ひとつ教えておいてやろう。いつの世も妖怪が最も恐れたのは人間だ。人間の精神ほど強大でありながら、移ろいやすくおぞましいものに変貌して牙をむく脅威はない」
そ、そんなに怖いものですか?主はそんな感じがしないので、わからないのですが。
「他人を見てではそうそうわかるものではない。お前自身の心に聞けばよかろう」
なるほど。パシリの意識は若干の違いはありますがヒューマンを模して作られているはずですね。
434 名前:継承 II 君、死にたもうことなかれ(後編)2[sage] 投稿日:2008/05/20(火) 03:38:02.69
ID:p3ybCJUX [3/10]
………
こめかみをぐりぐりしながら少し考えてみて、なんとなくわかりました。
わたくしは能力が中途半端で、打撃武器も射撃武器も合成成功率はいまひとつですし、
それなりに自信のある戦闘のほうも主が強すぎるので実際のところ足手まといでしかありません。
他にも髪の色が気に入らないとか、背が小さいのは不便だとか、もうちょっと胸を大きくしたいとか…
考えてみますと、自分に対しての不満というのはあげだすときりがないものです。
わたくしでさえそうなのですから、『見たくない自分』が他にいるネイさんの場合は…?
なるほど、そういうことですか…誰よりも自分の弱さや小ささを一番よく知っているのは、自分自身。
他人には隠せる秘密でも、自分を欺くことはできないのですから。
オンミョージさん、一つお願いがあります。少しの間ネイ・ファーストの束縛を解いてあげてくれませんか。
「…いいだろう」
片方の眉をつり上げながらですが、少し考えた末に承諾してくださいました。
オンミョージさんが下がると、体を縛っていた見えない糸が解除されてネイ・ファーストは飛び起きました。
わたくしはルビーバレットを放り出し、武装解除して彼女の前に立ちました。
シールドラインまで解除しているので、下手をすると本当にバラバラにされるでしょう、一か八かの賭けです。
「はっ、何をするのかと思えば、自殺願望でもあるのかい!失せなよ!」
ネイ・ファーストはわたくしを爪で切り刻みます。わたくしはその場から動かず、それを全部受けました。
服はずたずたにされてしまいましたが、傷は浅く致命傷には至りません。やはり、ネイ・ファーストにはまったく良心が残されていないわけではないのです。
攻撃をためらいましたね?本当は殺したいなんて思っていないんじゃないですか?
「うるさい!おまえなんかに私の気持ちがわかってたまるか!」
たじろいだ様子を見せて顔を真っ赤にしていますが、ネイ・ファーストはそれ以上手を出してこずに、わたくしを無視してネイさんのほうへ悪意を向けようとしました。
435 名前:継承 II 君、死にたもうことなかれ(後編)3[sage] 投稿日:2008/05/20(火) 03:39:07.78
ID:p3ybCJUX [4/10]
「おまえが自分のことをばらされるのが怖いなら、私が言ってやるよ。おまえは私が早く大人になりたい、みんなに受け入れられたいと思い描いた理想像。
私が人を殺したときに私から逃げ出したのさ。だから良心のほうがまさっている良い子ちゃんなんだよなぁ!」
苦々しい顔をして、ネイさんはファーストを睨みました。
「そうよ…そしてお兄ちゃんに拾われて、お兄ちゃんたちとだけだけど私は人として生きるようになった」
「そうさ!だから私はおまえが憎くてしょうがないのさ!実際おまえだけが人間どもに受け入れられ、おまえがいれば私はいらなくなったわけだからな!」
ネイ・ファーストはネイさんに対してだけは容赦ないようで、先ほどのわたくしへのそれとはうって変わって素早い動きでネイさんを狙いました。
「そこまでにするのだな。自分の行いを棚に上げて言うことか」
オンミョージさんのカットが入り、ネイ・ファーストは再び見えない糸で縛り付けられました。
落ち着いて話ができるようになったところで、わたくしは本題に入りました。
ネイさん…正直に言ってください。あなたは理想から生み出された。だから現実を消したくてしょうがないんじゃないですか?
そして、そうやって自分を受け入れられない弱さがことの発端なのではないですか?
ネイさんは震えながらわたくしを見ました。目が泳いで、そうとう動揺しています。
「…そうよ、私は現実の私、ファーストがひどく弱くて醜く見えるから決別したの…あんなの、私じゃない」
弱いことの何がいけないんですか、最初から成功ばかりの人なんていないんですよ。
「でも、でもファーストは、何回も失敗して研究者たちの怒りをかったから…」
憎くて怒るのとは違うでしょう?できないことをできるようになってほしいから、愛しているから叱るんですよ。どれだけ辛くても、そこから逃げるのはその人を裏切ることなんです。
「その通りだ。ネイ・ファーストは叱られるべき人物から逃げたから歪んだのだろう。そこからも逃げだし理想だけでできたお前は、ファースト以上に歪んだ存在ということだ」
「やめて!やめて!」
オンミョージさんの容赦ない言葉に、ネイさんはぎゅっと目をつぶって耳を掌でふさぎながら縮こまりました。
436 名前:継承 II 君、死にたもうことなかれ(後編)4[sage] 投稿日:2008/05/20(火) 03:41:24.38
ID:p3ybCJUX [5/10]
まるで小動物のようなネイさんに追い打ちをかけるのは残酷に思えましたが、わたくしも意を決して手を掴み、耳から引き剥がしました。
逃げないでください!いくら目をそらしたって、自分をやめることはできないんですよ!
自分で言った言葉のくせに、なぜかわたくしの胸も傷を抉られたときのようにずきずきと痛みます。目尻まで熱くなってきました。
「ファーストの…本当の私の手は、もう洗い落とせない罪で汚れてるの!こうするしかなかったのよ!仕方ないじゃない!」
「ばかーっ!!」
はじめての、頭に血が上るという体験。
わたくしはおもわず叫びながらネイさんの頬を平手でひっぱたいていました。
頬を押さえて唖然としたネイさんだけでなく、ネイ・ファーストやオンミョージさんまでもが驚きに目を見開きました。
「投げ出さないでください!ネイさんは人として生きたかったんでしょう?
人を信じないで、自分を押し殺して、お兄さんまで騙して生きるなんて、悲しすぎるじゃないですか…!」
制限されているがゆえに、人の心はパシリにはどうにもできません。わたくしは強い無力感にいらだちを感じていました。
そのとき、足下のルビーバレットが突然強い気配を放ちはじめました。
拾い上げてみると、ルビーバレットの部品の一つが脈打つように紅の光を放っています。
ルビーバレットは構造自体はグラール文明のハンドガンと大差ありませんが、一つだけ未解析の部品があります。
銃の存在自体は伝説に残っているのですが、内部構造までは記録にないのです。
ブラックボックスと呼ばれるそれに今まで何人もの人がアクセスを試みましたが、ことごとく失敗したため、ガーディアンズではそのまま使用されています。
しかし、今ならば。わたくしはブラックボックスに意識を集中しました。
惑星マリス…ノーザ星人…ジリオニウム…
知られることのなかったデータがいくつも記録されていました。
あるべきところへと魂を運ぶ力を秘めた、神が人に与えた銃。それが、分かたれた魂を一つにせよと叫んでいます。
新たな使い手を何千年も待ち続けた、このルビーバレットの真の名は…
『ジリオン』!
導かれるようにその名を口にした瞬間、何かがはじけ飛び、狼の遠吠えのような大響音を残して、赤い光弾が飛び出しました。
光弾は意志を持っているかのようにネイさんの胸に突き刺さり、ネイさんに当たったはずなのに、なぜかネイ・ファーストの背中から飛び出して行きました。
437 名前:継承 II 君、死にたもうことなかれ(後編)5[sage] 投稿日:2008/05/20(火) 03:42:31.24
ID:p3ybCJUX [6/10]
「私は、思い描く自分になれなかった。どれだけがんばってみても、私はみんなと同じにはなれなかった。
そのうち、もがく意味がわからなくなってきて、周りはみんな私を嫌っているように思えて、研究所の人間を殺して逃げて、
どこへ行ってもやっぱりみんな私が嫌いで、逃げて逃げて逃げて…」
「その悪意が自分自身の思いこみだとは思わないんですか。あなたが思うほど周りの人はあなたを嘲笑ったりなんてしませんよ」
「…どんなに取り繕ってみせたって、私は研究所の人間を皆殺しにした殺人鬼なんだ。
そのうえ、バイオモンスターまで量産して…誰かを憎んでいないと、からっぽで罪の意識しかない自分に耐えられなかった」
「罪を罪で上塗りして、楽になったんですか?」
「…」
「本当はわかっているんでしょう、あなたも人に愛されたい。でもそれができないからそんなことに逃避しているんだって」
「…」
「…怖かったの。謝っても許してもらえないんじゃないかって。
今あるお兄ちゃんとの幸せが、本当の私を知られたら全部壊れてしまうんじゃないかって」
「それでネイ・ファーストを一人で殺そうとしたんですか」
「自分一人で決着をつけるはずだった。知られるくらいならいっそ死んでしまいたかった」
「それがお兄さんを悲しませることになるとしても?」
「違う、私はお兄ちゃんが好き。悲しい顔なんてしてほしくない」
「それはとても利己的な考えです。自分が死んでお兄さんの悲しむ顔を見なければそれでいいんですか?違うでしょう」
「…」
「お兄さんのことを本当に思うのなら、約束してください。どんなに恥をさらすことになっても、生きてお兄さんにもう一度会うと」
「…」
438 名前:継承 II 君、死にたもうことなかれ(後編)6[sage] 投稿日:2008/05/20(火) 03:44:06.96
ID:p3ybCJUX [7/10]
ネイさんは起きあがると爪を外して、涙を浮かべながらおぼつかない足取りでファーストのほうへ歩いていきます。
「やめろ、来るな…おまえが私に優しくするな…!」
自分の肩を抱いて、ネイ・ファーストは戸惑いと怯えの眼差しをネイさんに向けます。
でも、ネイさんは本来の自分に腕を広げて歩み寄ると、優しく包み込みました。
「一緒にお兄ちゃんのところへ行こう、ネイ・ファースト…私も罪を償うから、そのままのあなたでいいから…
きっとユーシスお兄ちゃんたちならみんな受け入れてくれるよ」
「う、う…うわあああああああーん!!」
ネイさんに抱きしめられると、ネイ・ファーストはぼろぼろと大粒の涙をこぼして、泣きだしました。
自分を受け入れられたからとか、居場所ができたからとか、いろいろと思うことがありすぎて、
きっと自分でも何がなんだかわからなくなっているんだろうと思います。
涙まみれになって抱き合い、思いきり泣きじゃくってから二人はわたくしとオンミョージさんに何度も礼を言ってこの場を去りました。
オンミョージさんは、腕組みをしたままですが険しい表情を解いて、無言で二人を見送ってくれました。
「見逃してくれるのですね。オンミョージさん」
「もはや滅するまでもない。生きることが何よりの贖罪となろう…
ユーシスとやらがどのような者かは知らんが、一つでも支えができれば過ちは繰り返されまい。任務、完了だ」
439 名前:継承 II 君、死にたもうことなかれ(後編)7[sage] 投稿日:2008/05/20(火) 03:47:03.69
ID:p3ybCJUX [8/10]
「少し、疲れました。休ませてください…」
床に腰を下ろして、ルビーバレットを傍らに置きます。
今回はいろんなことにふれすぎたせいか、疲労が強いです。
首を下に向けて自分の胸を見ました。今はあの抉られるような痛みは感じませんが。
わたくしはあのとき何かを思い出そうとしました。わたくしもネイさんと同じように向き合いたくないものがあるのだと。
しかし、何なのかが思い出せません。よくよく記憶媒体をチェックしてみると、わたくしの最初の記憶はGH430であるときのもの。
それ以前の記憶は完全に抜け落ちているのです。削除された痕跡もなく、最初からなかったかのような…
そんなことができるのは製造元であるGRMと、主くらいのもの。
GRMに出向いたことはありませんし、技術者と会ったこともありませんので、主以外にはありえないということになります。
主はいったいわたくしに何をしたのでしょうか?
疑問はどうしようもなくふくれあがっていきます。主に従っていれば大丈夫という信頼が、わたくしの中で崩れていくのを止めることはできませんでした。
「あの…」
「何だ」
「わたくしは、嘘をつきました。ネイさんにはあのように叱ったのに、わたくし自身も主を疑って、真実を知ることを恐れています…
偉そうなこと言っても、本当は何もわかってなんかいないんですよ、わたくしは…」
不安になって、わたくしは思わずオンミョージさんに自分でも何が言いたいのかよくわからないまま口を開きました。
「答えを求めないなら言うな。道がなくとも歩めることは知っているのだろう」
オンミョージさんはそれ以上は何も言わず、姿を消しました。
それは正論なのですが…でも、頭の中でぐるぐると回り続け、結論など出せるはずのないこの思考を止めることができません。
じっとしていられない、でもどうしたらいいのかわからない。とても非合理的でした。
わたくしは、故障してしまったのでしょうか?
誰もいなくなった建物の中で、わたくしはぼろぼろにされた服のまま仰向けに寝転がって、
ステージ終了のテレポーターにも入らず、暗くなるまでただ呆然と天井にはりめぐらされたパイプを見ていました。
-「継承 III 死闘への鎮魂歌」に続く-
440 名前:幕間 awaken-其は聖なる御使いなりや-[sage] 投稿日:2008/05/20(火) 03:50:29.08
ID:p3ybCJUX [9/10]
そこは、宮殿だった。見る者に恐怖を覚えさせるほどの曇りなき純白で構成された宮殿。今までに存在したどの様式でもあるようで、そのどれでもない。
それは時も場所もすべてが不定なところに存在し、その姿さえも定かならざる『建造物という概念』であった。
「ようやく、か。遅かったわね…」
円卓の周りに配された椅子に腰掛け、亜麻色の髪をした女が口を開いた。何を見てというわけでもなくその事実を知って。
「あの子は同時に人間の業も背負うことになりました。こんなことがあなたの望みだというのですか?」
それに応えるのは、透き通るような空色の髪に細面の顔、宮殿と同じような純白のローブに身を包んだ、一見すれば女にも見える男。そして。
「同感ですなァ。貴女がわざわざ無垢なるものを汚すとは、本当に何を考えているのか察しかねますぞォ、ふふふほほほ」
奇妙に尾を引く声が響き、限りなく広がる純白に一点の黒が出現した。
不健康に長く伸びた細い腕と指、爛々と一つしかない目を輝かせた、闇の下僕であった。
しかし、亜麻色の髪の女と、ローブの男は警戒しなかった。襲ってこない、襲う意味がないのはわかっているからだ。
「ようこそ。お茶でも飲んでく?」
「挨拶に伺いましたのみゆえ、お気遣いなさらずゥ。ほほ…ギ・ル・ザークと申しますゥ。
最後にお二人とお会いしたのは闇の淵、エルシディオンを携えた少年と蒼い髪を束ねた青年としてでしたかなァ?」
女は穏やかな表情のまま遠くを見た。懐かしいものでも思い出すように。
「ふほほほ。無論、私ごときが貴女のものに手出ししようなどとは考えてはおりませぬよォ。しかし手を下さずとも自ら堕ちた場合は話は別ですなァ」
くぐもった声で、闇は嗤う。
「あの滅んだ星にしても、グラールにしても、そこに住まう愚かな人類はあなたがたよりはるかに闇に近いィ。
あのハウザーという男、実に面白い働きを見せてくれましたぞォ…ひゅーほほほほ!」
奇怪な声を残して影は姿を消し、何事もなかったかのように純白があたりを埋め尽くした。
「ハウザーも一つの可能性を示してくれたけどね。もう少し賢く立ち回ればよかったのに」
誰にともなくつぶやいて艶っぽい唇をカップにつけながら向き直る女に、待ちかねたように男が口を開く。
「あの通り『深遠なる闇』も形こそないものの健在です。まわりくどいことをして、かわいがっていたあの子が昇れなくなってもいいのですか?
それならいっそ、このまま迎えてもいいかと思うのですが」
「私を思って言ってくれてるのね、ありがと。でも、あの子にはそれをしてはならない理由があるの。あなたは何代目のルツなのかしら。まるで初代の修業時代みたい」
「からかわないでください」
にっこり微笑む女に、長髪を揺らしてルツと呼ばれた男はため息をついた。見た目の若さに似つかわしくない、年を経た者特有の寂しさと諦めの混じった表情を浮かべて。
「わかってはいるのですよ…無知と恐怖心、人の弱さが神を創る。理解しないまま導いても、そこには崇拝という名の思考停止しか残らない。
不便なものですね、人というのは…伝えることがこれほどまでに難しいとは」
「それがいいんだって、とあるジャーナリストは言ったわ。だから人類は私やあなたとは違う道を選んだの」
二人は同時に、冷め切っているが暖かいままの茶を飲み干した。
彼女が機械の少女に望むのは、信心深い下僕ではない。神を否定する者に他ならないのだ。
441 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/20(火) 04:01:15.07 ID:p3ybCJUX
[10/10]
恒例の微妙にわからない元ネタの解説です。
ジリオンは実は筆者もよく覚えていなかったとか(ry
「ルビーバレット」
PSOのレア武器。特殊な音のする拳銃で、一部で大人気であった。
1978年より放送されたアニメ「赤い光弾ジリオン」が元ネタになっている武器なのである(なお、オパオパはジリオンにも出演していたりする)。
ジリオンはもともと赤外線を出す銃で相手の胸につけたプロテクターを狙って当てると派手に音がするという玩具であった。
製造元のセガがスポンサーになって作られたアニメがこれで、さらにそれがPSOでネタ武器にされ、PSUに至るというわけである。
作中でのジリオンの使い方は、半分最終回ネタバレのようで実はそうでもない。
「ファンタシースター2における『大いなる光』」
この作品においては主人公たる者が持つことのできる、運命すら変えてしまう人間の力を『大いなる光』としているわけだが、
ファンタシースター2では(バグ技だけど)実際にプレイヤーの介入によってネイを最後まで連れて行くということができたわけで…
セーブ&ロードを繰り返すなども含め、すべての人間(プレイヤー)は運命すら変えてしまう『大いなる光』を持つというのはこういうこと。
と、思っていたら何でも科学で理由をつけてないと気が済まないような説明が常につくストミでもそういう展開になってきてたのが意外でした。
442 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/21(水) 01:11:48.18 ID:6xFllNGR
お久しぶりの戦乙女。ジリオンですねえ。
OPのピュアストーンの歌詞を思い出したりしたりして。
次は3ですか・・・大変ですが頑張れ戦乙女(と作者)
443 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/22(木) 18:41:10.41 ID:aV0+oOAi
ジリオン、見てたけど微妙だったなぁ。
なんつーか、赤い光弾って言われても、赤いからどうしたんだよっていうか。
別に特別な武器って扱いでもなかった気がするし。
444 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/22(木) 19:34:17.19 ID:7mHoKCvx
>>443
アニメを現役で見てたオサーンだが、ジリオンは特別な武器だったぞ。
エネルギー変換部がブラックボックスで(異文明のオーパーツ?)複製不可って設定だった。
ま、詳しくはwikiでも見てくれ。
445 名前:名無しオンライン[age] 投稿日:2008/05/23(金) 22:49:32.18 ID:dxV5QqJ0
保守。実はジリオンで消滅した敵は・・・が最終回のネタバレ部分。
このままだと次はロボピッチャですね(オイ)
446 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/24(土) 08:03:04.48 ID:irF69094
>>444
幼児の俺「一丁しかなくてもう作れないのはわかったけど、技術が廃れたくらい古いってだけじゃね?それ強いんか」
447 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/24(土) 11:55:35.58 ID:tTVxlVmy
[1/2]
ご拝読ありがとうございます。
清涼剤として短編も書こうかと画策中だったり。もりあげていこうぜー!
>>446
今見てみるとジリオン自体もけっこうつっこみどころの多いアニメなので、気にしてはいけませんw
実のところ旧千年紀やPSOもつっこみどころは…まあ、追及するだけ野暮ってもんです。
いまさらだけど20周年を祝いたかったとはいえかなり無謀なことやってるなあ、自分。
448 名前:有能なパートナー(1/2)[sage] 投稿日:2008/05/24(土) 14:33:33.04 ID:JbXxVMLU
[1/3]
「あ、いらっしゃいませー!ここはぶきのみせだ!、なーんて!」
「・・・って、あら、ご主人のフレのキャス男さんじゃないですか。ようこそ~」
「え?ご主人ですか?あー、今ちょっと・・・、ええ、奥でぐっすり寝てます」
「いやー、昨日遅くまでミッションに就いてたみたいで・・・、帰ってくるなり、
・・・ご飯食べて、お風呂入って、ゲーム朝までやって、それから寝付いたので・・・」
「え?ミッション全然関係無いじゃないかって?ごもっともw」
「それにしても今日は何の御用ですか?確か今日ご主人は非番なんですけど・・・、
え?自分も非番だから?シティにぶらぶら出かけてみようと誘いに来たんですかー」
「うわ、それってデートですか!?いやー、ニクイなーこのメカ顔!ボーマルタ!」
「いいですねー、今はパルム統一記念のお祭りやってますからねー
賑わう街中を二人でキャッキャ!ウフフ!と練り歩くわけですね、青春だなぁ」
「見た目屈強で歴戦な風貌のビス男とキャス男が腕を組み・・・、茶をすすり・・・愛を語らうわけですね」
「本当に気持ち悪・・・、え?もういいって?出直してくる?」
「あら、残念ですねー、ご主人暇人だからきっとホイホイついていきますよ」
「でも、そういうことなら仕方ないですね、またのお越しをお待ちしてますー」
「ん?あ、いらっしゃいませー!NHKにようこそ!、なんて(爆)」
「って、あら、ご主人が最近気にしているヒュマ子さんじゃないですか!」
「ガーディアンズ入りたての頃から何かと面倒見てきて、失敗を繰り返す貴女に『あいつはいつまでも
新入りのままだなぁ』と思ってたのに急激にメキメキと力をつけてきて、感慨深くなると同時に、
その真っ直ぐ寄せられる尊敬を好意と勘違いしてしまいそうになって、
時折苦悶しているご主人に何か御用ですか?」
「え?あれあれ?どうしたんですか、顔を真っ赤にして?」
「え?今日はもう帰る?あらー、用事が?じゃぁ仕方ないですねー」
「またのお越しをお待ちしてますー」
449 名前:有能なパートナー(2/2)[sage] 投稿日:2008/05/24(土) 14:34:17.77 ID:JbXxVMLU
[2/3]
「はい、いらっしゃいませー!ウフフ、お客さん、こーいうトコ初めて?」
「って、あら、いつもご主人に補助してくれてるニュマ子さんじゃないですかー」
「今日は一体どうしたんですかー?え?ご主人ですか?まだ爆睡中ですけど・・・」
「え?たまたま統一記念イベントのチケットが二つあるから?たまたま自分と休みがかぶったから?
日頃の頑張りをたまには労ってやろうと思って?勘違いしないでほしい?そういうのじゃなくて?」
「はー、相変わらずうんざりするような自己弁護ですねー、ツンデレってやつですか、
その流行りに乗っかろうとするあざとさに吐き気がしますねー」
「あ、いえいえ!何も何も!申しておりませんよ、ハイ!」
「ただ・・・、うーん、一足遅かったというか何と言うか・・・、ご主人どうやら今日は午後から
ヒュマ子さんと統一記念祭見に行くと言ってましたねー、確か」
「え?ええ、あの最近メキメキ実力をつけてきて、何か以前よりスタイルも良くなったよーな気も
してくるあのヒュマ子さんです、ええ、いつもご主人をうるうるした目で見てますよねー
ニュマ子さんと違って性格も従順だし、ご主人も一緒に居て安らぐのかも知れませんね」
「あら?どうしたんですか、泣きそうな顔して?もういいって?たまたま誘おうと思っただけだし?
別に他に代わりはいくらでもいるし?ですよねー、ニュマ子さんモテますもんねー」
「それじゃ、お気をつけていってらっしゃい、統一記念イベント楽しんできてくださいね!」
「あら、あ、ご主人おはようございます~~~ようやく起きましたね」
「朝御飯ってもう昼ですけど・・・準備できてますし、お風呂もすぐ入れますよー」
「え?来客???」
「・・・いいえ、今日は朝から誰も来ませんでしたよ?静かな休日そのものでした」
「それよりご主人、今日は統一記念で盛り上がってるシティに連れてってくれるんでしたよね?」
「私、楽しみだなぁ、きっと二人で回ったら楽しいですよ」
「ご主人、いつもお仕事頑張ってるから、非番の今日は仕事の連絡が入らないように、
携帯端末は置いていきましょうね、仕事の連絡や確認が入ったら面倒でしょう??」
「え、お前はいつも甲斐甲斐しく俺の世話を焼いてくれて、俺は幸せ者だって?」
「やだ、嬉しいな・・・、ご主人の幸せが、私の幸せですよ、・・・私が望むのはそれだけです」
「ええ、それだけなんだから・・・」
Happy end...
450 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/24(土) 14:38:44.07 ID:JbXxVMLU
[3/3]
久しぶりに触発されて書きますた。お目汚しスマソ。
451 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/24(土) 18:01:40.10 ID:n48jpLuo
全部パシリの台詞で進行するSS、これは新しい…
大事なモノの為なら白くも黒くもなれる、従順でありながら主導権は握っている
狡猾だけどひたむき、そんな二律背反がGRMの設計した魅力なのかもしれませんね
触発されたので私も短いのをひとつ書いてきます
452 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/24(土) 19:39:22.89 ID:FS3TZ2Hy
[1/7]
「どうすんだよ!俺やだよ会話できねえよ!」
「仕方ねえだろ!もう断れねえよ!」
二人のフォルテファイターが互いの肩を押し腕を掴み、互いを押し出しあう。
視線の先には数日前にガーディアンズへ復帰したカレン・エラの姿があった。
彼女が星霊の巫女である事は、ガーディアンの間ではもはや周知の事実だ。
「…私を呼んだのはお前の方か、黒いの。」
「は、はい!本日はお天気も麗しく…」
「何なんだお前たちは。好奇心で私を呼んだのか。巫女だから呼んでみたのか?」
「いえ!すみません、あの、大変失礼しました。…ほらお前も土下座しろよ!」
「い、嫌だよお前も土下座しろよ!何だよお前もって!何で俺だけ土下座なんだよ!」
「はぁ…」
ガーディアンズの変容ぶりに思わず眉間を押さえるカレン。漫画なら間違いなくこめかみに
血管マークが浮かんでいるであろうその表情には、不快感を隠そうという
453 名前:途中で送信しちゃったけど何ともないぜ 1.5/3[sage] 投稿日:2008/05/24(土) 19:50:10.24
ID:FS3TZ2Hy [2/7]
巫女らしいそぶりも無く
やがて彼らがこちらへ視線を向けるのを待ちきれなくなった様に口を開いた。
「お前たち、正直に言うが気分が悪いぞ。私は何の為に呼ばれたんだ?」
「あ、はい!あの、俺達まだ新米でして、是非ミッションへ同行して頂きたく…」
「新米なのは見れば分かる。軽い肩ならしのつもりだったがとんだ誤算だ。」
「それと、指導教官のご経験をお持ちだとお聞きしておりましたので
ひとつ相談がありまして!」
腕組みをしたまま目を閉じていたが、指導教官という言葉を聞いて少し眉を動かすカレン。
彼らには読み取れない感慨を少しだけ浮かべた後、手を腰に当てて二人へ向き直る。
「私が指導教官だったのはもう随分前の話だ。
今はミッション遂行以外のライセンスを持たない、ただのガーディアンズだぞ。」
「それでも結構であります!…じゃお前、後はしっかりやれよ!」
「お、おい!ちょっと待…」
黒ずくめのフォルテファイターが不意にもう一人の肩をぽんと叩くと、そのまま振り返らず
転送キューブに姿を消す。
「情けない奴だ。友達に私を呼び出してもらったのか?」
454 名前:再教育訓練 2/3[sage] 投稿日:2008/05/24(土) 20:03:19.13 ID:FS3TZ2Hy
[3/7]
「も、申し訳ありません。
俺まだカレン教官にパートナーカードを頂いていなかったもので…」
「だろうな。私もお前に見覚えが無い。」
「し、失礼は承知で、どうしてもカレン教官にご相談したいことが…」
「私は教官ではないと言っただろう。」
仕方なさそうにプランターの上へ腰を下ろし、何だ?と促すカレン。
声の細いフォルテファイターはぺこりと頭を下げると、後ろを向いて手をひらひらと振った。
どこから取り出したのか、コルトバジュースをこくこくと飲みながら
駆け寄ってくる小さな姿へ興味なさげに目をやり、飲んでいたものを豪快に噴き出すカレン。
無理もない。駆け寄ってきたのはカレン・エラその人だった。
ただしパートナーマシナリーサイズの。
「こういう顛末でして…ほら、オリジナルにご挨拶をするんだ。」
「お前がオリジナルか。想定していたより少し太いな。」
「よ、余計なお世話だ!一体どういう事だこれは!」
「その点については、このボクがご説明しましょう。」
ふわりと花と闇属性の香りが漂って、銀髪の青年がくるりと回りながら登場した。
455 名前:再教育訓練 3/3[sage] 投稿日:2008/05/24(土) 20:18:40.41 ID:FS3TZ2Hy
[4/7]
「新生GRM社では、ガーディアンズの実績データベースから過去の記録を参照し
優秀なガーディアンをモデルとしてパートナーマシナリーをカスタマイズする
特注サービスを提供する事にしたんです。
彼はそのβテスターのひとりなのですが、モデルとしたガーディアンの個性が余りに強く
少々持て余してしまっていた様ですね・・・。」
現役ガーディアンズでありながらGRM社の社長となったヒューガ・ライトが、自らの製品を誇るが如く
すらすらと宣伝じみた説明を並べる。
「そ、そんなもの、私に相談されても何も答えられないぞ!
それにこんな話本部からも一切聞いていない。プライバシーの侵害だぞこれは!」
「動揺しても気の強い所は私にそっくりだな、オリジナル。」
「こらこら…オリジナルに失礼だぞ。」
「お前が私に似てるんだ!あとオリジナルオリジナル言うな!」
すっかり取り乱したカレンの姿につい吹き出したヒューガをにらみつけ、ついでに
流れる様な動作でナノトランサーから物騒なモノを取り出して物騒な位置に押し付けて
ふわりと微笑む。
456 名前:再教育訓練 4/3[sage] 投稿日:2008/05/24(土) 20:26:11.46 ID:FS3TZ2Hy
[5/7]
「ヒューガ・ライト。後ほどグラール教団から正式に抗議の意をお伝えします。」
「あっ!ず、ずるいですよカレンさん!ここはガーディアンズ同士でいきましょうよお。」
「お黙り下さい。これ以上私を個人的に侮辱する事は許されません。」
「い、言ってる事が無茶苦茶ですよっ!
あ、そうだ!イーサンタイプのカスタムマシナリーをプレゼントします!それで手を打」
「いるかっ!!絶対いらん!!」
「そう言わずまあ。ちょうど連れてきてるんですよ。」
「や、やめろ!!連れてくるな!!」
「やあカレン。久しぶりだな。オレ、とうとうオヤジに会えたよ!」
「きゃああああん♥」
予想外の好反応にたじろぐヒューガと声の細いフォルテファイター。
そういう仕様になっているのか、カレンマシナリーまでもが胸の前で手を組んでぽんやりとしている。
「あの、それで相談なんですが…」
「あ、ああ。済まないがちょっと用事を思い出した。相談はヒューガにしてくれ。」
「え、あの…」
「ほら、こっちへおいで。ゆっくり話を聞かせてくれ。そういえば妹は元気か?服はまたそれなのか?」
すっかりとろけた瞳でイーサンマシナリーの手を引き、カレン・エラは転送キューブへと消えた。
457 名前:再教育訓練 5/3[sage] 投稿日:2008/05/24(土) 20:42:11.67 ID:FS3TZ2Hy
[6/7]
「…予想外でした。カレンさんがあそこまでイーサンに…」
「俺も予想外です。」
転送キューブを見つめたまま、目の前で起きた出来事について語り合う二人。
カレンマシナリーは、どこから取り出したのかコルトバジュースをこくこくと飲みながら
二人が自分に気づくのを待っていた。
「で、結局お前は私の何を相談したかったんだ?」
「あ、はい。じゃなくて。何で敬語なんだよ。
まさにそれだよ。マシナリーなのに何か名前通り偉そうだから、どうしたらこう
立場を本来の状態へ逆転させられるか、どうすれば気に障らないかを
本人へ聞いてみようと…冗談で話してたらアイツが…」
「私にとっては気分のあまり良くない話だな。聞いて答えると思うか?」
「思いません…」
「そういう事だ。そんな下らない事よりも任務に集中しろ。自覚が足りないぞお前。」
「はい…精進します。」
頭を下げる声の細いフォルテファイターを見ながら、ヒューガは肩をすくめていた。
「性能的には申し分ないんですけどねえ…
どうしてレオさんタイプだけは人気が無いんでしょう?よく似てるのに。」
458 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/24(土) 20:44:03.94 ID:FS3TZ2Hy
[7/7]
考えないで書いたら色々ブレました
一応終わらせましたが、このNGはあぼーんでお願いします…
459 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/24(土) 21:46:27.43 ID:tTVxlVmy
[2/2]
>>458
面白かった!特にカレン(オリジナル)…w
あと、レオタイプは一部で人気が出そうですね。うほっ
460 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/24(土) 23:39:54.63 ID:bymR0j+g
ルウ 「ヒューマンの考える事は理解できません」
ルウタイプ「まったくですね」
面白かったです。ヒューガなら本当にやってくれそう?
461 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/25(日) 13:01:49.31 ID:CdIBFLDc
ルウの数が少ない→社長のコネでルウ相当のパシリを量産できないか→やってみた→
社長「これ、他のガーディアンズ相当のパシリも作ったら売れるんじゃね?」 って流れか?
462 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/25(日) 13:24:32.89 ID:kipTL1XL
んでもストミじゃGRMをカタにして基材仕入れますと言いたげに「・・・」やってたなぁ
463 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/26(月) 03:40:57.76 ID:M+TiEnKj
>>458
GJだが書きながらの投下はよくないな
ストーリーのメリハリが付けにくくなるし何より投下してしまった分は修正が利かないから誤字脱字なんかもでやすくなる
それに間にレスを挟むのを防ぐ為に長時間スレを独占することにも繋がるしな
だからメモ帳なんかに一度書きなぐってから修正して投下するのがいい
だから次はこれに注意して頑張ってくれ、期待してる
464 名前:EPX 後日談 1/5[sage] 投稿日:2008/05/26(月) 21:31:42.85 ID:/t0P1bEa
[1/6]
「ねえ、君。こんなところにいると、危ないよ」
見知らぬ少年のその言葉に、私はどう答えてよいか迷いました。
PMである私、GH-440より、どう考えても一般人であるこの少年の方が危ないのは、明らかでした。
私の主人は、キャストfG。以前は「命令に従え」「勝手なことはするな」がモットーの方でしたが、
ある人物との戦いに敗れてから、少しずつ変わっていきました。
数年経った今では、「ガーディアンズにふさわしい行動とは何か」を真摯に考えるようになり、
私に対しても徐々に自主性を許し、また求めるようになっていったのです。
そういうわけで、以前に比べて大分、私は自分の頭で物を考えることができるようになりましたが。
まだまだ想定外の事象とは、多々あるものです。
ここは、パルムの草原でも比較的安全地帯に近い場所。
主人はここで、新兵の実戦訓練に取り組んでいました。
私は同行はしたものの特にやることもなく、せっかくだから羽を伸ばしてくるといいと許可をもらい、
この草原の景色を堪能していたところでした。
そこに、突然私の前にでてきたのが、この少年です。
年は、12,3歳といったところでしょうか。
あどけない顔立ちの中、きらきらと輝く瞳が印象的です。
いかにも好奇心旺盛で活発な性質のようで、そのためでしょうか。
安全地帯に近いといえ、原生生物の出る危険のある、この一帯に入り込んできたのは。
背丈が少年よりわずかに低い分、私は年下の人間に見られているのかも知れません。
だから、自分のことを棚に上げて私を心配するような言葉が出てくるのでしょう。
そもそも私はヒトではなく、PMであること。それを説明するのは、困難なことに思われます。
ガーディアンズならともかく、一般市民である彼にそのことを分からせるには、
まずPMとは何か、から教えなければならないからです。
ひとまず私は、少年が何故ここにいるのか尋ねることにしました。
事情を聞いた上で、可能な限り速やかにここから退避してもらわなければなりません。
できれば、穏便に。
465 名前:EPX 後日談 2/5[sage] 投稿日:2008/05/26(月) 21:32:29.45 ID:/t0P1bEa
[2/6]
話によると少年は、ここでガーディアンの実戦訓練が行われることを聞きつけ、
それを見ようと両親にも内緒で一人、ここまでやってきたとのことです。
ガーディアンに憧れる子供は、このグラールに少なくありません。
少年の気持ちは分からなくもありませんが、それにしても危険すぎます。
ただちに引き返したほうがいいと忠告するのですが、困ったことに。
「ここに君がいるって分かったからには、それを見捨てていくわけにはいかないよ」
私は、主人が帰ってくるまでここを離れるわけにはいきません。
でも少年は、私がここにいるのなら自分もここに残ると言ってきかないのです。
私は、どうしたらいいのでしょうか?
困惑する私をよそに、少年は胸を張って言うのです。
ガーディアンズを目指すからには、まず弱い人を守ろうと言う気持ちがなければならないと。
志は大変立派なのですが、この少年はまだ知らないに違いありません。
自分の命を本気で狙われる、その恐ろしさと圧力を。
一度痛い目でも見ればすぐに悟るでしょうが、それが命取りにならないとも限りません。
私は、こうなったら一刻も早く主人が帰ってくるよう祈るしかありませんでした。
でも、えてしてこういう時ほど間の悪いことは起こるもので。
パルムに住む原生生物、ヴァーラが私達の前に姿を現したのです。
これで逃げてくれればよかったのですが、少年は私の前に立ちはだかって言うのです。
自分がひきつけておくから、今のうちに逃げて、と。
この辺りに出没するような敵なら、私でも苦労なく倒せるのですが。
このように前に立たれては、迂闊に攻撃もできません。
不思議なのは、少年は足を震わせ、恐怖に顔をひきつらせながらも逃げようとしないことです。
怖ければ逃げればいいのに、何故彼はそうしないのでしょうか?
「言っただろ。僕は、ガーディアンズになるんだって。
以前この草原で僕を助けてくれた人に、胸を張ってありがとうを言いたいから。
助けて欲しい時に見捨てられる辛さを、知っているから」
そう言って少年は勇敢にも、その辺の棒切れを拾ってヴァーラへと立ち向かったのです。
466 名前:EPX 後日談 3/5[sage] 投稿日:2008/05/26(月) 21:33:21.92 ID:/t0P1bEa
[3/6]
結果は言うまでもありませんが、少年の惨敗でした。
折りよく戻ってきた主人のライフルが、背後からヴァーラの急所をとらえていなければ、
今ここに気を失って倒れている少年は、そのまま命を失っていたかも知れません。
「申し訳ありません、ご主人様。みすみす一般人を危険に晒してしまい」
「いや、いい。大事無くて何よりだった」
主人は、気を失って倒れている少年に応急手当を施すと、そのまま少年を抱え上げます。
「これ以上襲われる前に、急いで安全地帯まで移動しよう」
道中、いきさつを話しながら、私は先程の疑問を主人に聞いてみることにしました。
「あの…その少年は、何故あんな無謀な真似をしたのでしょうか」
「無謀?君は、この少年の行動を、そう表現するのかね」
「間違っていましたか?『勝てないと分かって戦いを挑むはそれ【無謀】という』そう教わりました」
主人は、ふむ、と一息つくと、少年を両手に抱えたまま足を止めました。
「では、君にまた一つ、新しい言葉を教えねばならないな」
「新しい言葉、ですか」
「そうだ。この少年は、恐怖を知っていた。それでいて恐怖に押し潰されず、立ち向かった。
『恐怖を知りながらそれを克服しようと挑む、それ【勇気】という』覚えておきなさい」
主人は何故か、空を見上げて感慨深そうに語ります。
「勇気…それこそが、我らヒトの原点たるヒューマンの持つ、最大の武器。
そして、それぞれにヒューマンより優れた能力を持つ他種族が生まれながらも、
ヒューマンが今まで淘汰されることなく生き残った、大きな理由の一つだと私は教わったのだ」
「この、【勇気】という言葉には色々な概念があることを、私は学んだよ。
自分の侵した罪から逃げず、正面からそれと向き合う。それも勇気。
たった一つの大事なものを守るため、多くのものを失うことを覚悟しながら前に進む。これも勇気だ。
何より…」
「…自分の命が終わろうと言うのに、その原因を作った者を憎むことなく。
逆に、その者の未来を開くために戦うことの出来る者…それこそ、勇気がなくてはできないことだ。
いずれも、恐怖を知り、それを克服しようという強い意志が必要なのだ」
どうやら【勇気】とは、ご主人様が賞賛してやまない、とても大切な要素と見ました。
少年は、幼くして既にその【勇気】を持つ者…私はこの少年に、俄然興味が湧いてきました。
467 名前:EPX 後日談 4/5[sage] 投稿日:2008/05/26(月) 21:34:28.39 ID:/t0P1bEa
[4/6]
「さあ、ここまで来れば安全だろう。地元の自警団に連絡し、我々は退散しよう。
…私が彼と顔を合わせるのは、彼のためにならないだろうからな」
主人は、そう言って少年をそっと草原の上に降ろしました。
「彼のためにならない」その意味が分かりかねましたが、私はそれより気になることがありました。
「ご主人様。この少年は、ガーディアンズになれるでしょうか」
「…そうだな。そうあって欲しいものだ。彼女の意志を、無駄にしないためにも」
「ご主人様の言う、【勇気】を持つガーディアンに、ですか」
ここで、主人は意外な言葉を口にしました。
「……それについては、ひとつ不安がある」
「恐怖を克服することが勇気なら、彼には一点欠けているものがあるのだ。
『見捨てられる恐怖』…どうやらそれが、今もって彼を縛るトラウマとなっているようだ。
このままガーディアンズになったとしても、その恐怖に縛られていては。
退くべき時に退けず、命を落とす憂き目にあわないとも限らない」
「その恐怖を、克服することは難しいのでしょうか」
「本人が、それを恐怖だと自覚しない限りは無理だろう」
「ご主人様が、それを教えてさしあげるわけには」
「それはできない。何しろ…その恐怖を刻み付けたのは、他ならぬ私自身だからな」
主人とこの少年の間に、一体何があったと言うのでしょうか?
私には分かりませんが、主人がこの少年の未来を深く憂えていることはうかがえました。
慰めの言葉を考えている私は突然、思いもよらない言葉を口にしていました。
「…大丈夫ですよ」
私自身、何を思ってそんなことを言ったのか分からず、戸惑いました。
主人も、どういうことだ?と、いぶかしげに問いかけます。
「この少年にはきっと、頼もしいパートナーがつきます。
彼に足りないものを補い、導いてくれる…そんな気がするのです」
私は、何かを知っているのでしょうか?
データの奥に潜む何かが囁くまま、私は言葉を紡ぎだします。
「もしも、『彼女』のことを言っているのなら、それは…残念だが、彼女は既に初期化され…」
主人はそこまで言って、ふと考え込みました。
468 名前:EPX 後日談 5/5[sage] 投稿日:2008/05/26(月) 21:35:24.89 ID:/t0P1bEa
[5/6]
「いや…そうかも知れんな」
「……?」
「今の君の言葉で、信じてみたくなった。例えデータ上で初期化されようと、残されるものはある、と」
「残されるもの、とは何でしょうか」
答える代わりに、主人は私の頭に手を置きます。
「…君は、初期化される以前の自分について、興味はあるか」
「…考えたこともありません、けど」
「よければ、私と一緒に探してみないか。今の君と昔の君をつなぐ、ある大事なものを」
あるものとは、一体何でしょうか。
以前の自分についての記憶がない私は、首を傾げるばかりでした。
「それを探すことが、私の君への償いにもなるし、彼等の助けともなるかも知れない。
おそらく『彼女』も、いずれ今の自分と以前の自分の狭間で苦しむことがあろう。
だが、その根底にあるもの…それを証明できれば、気付く筈だ。
今の自分も、以前の自分も、その根底にある同じものでつながれていることに。
以前の私なら笑い飛ばしていたものだが、今なら信じられる。PMにも、『魂』があることを」
「タマシイ」それが、今の私と以前の私をつなぐものでしょうか。
そして、主人の言う『彼女』を救う、鍵となるものなのでしょうか。
「まだ、当分あの二人の道が交わることは、ないだろう。
そして、交わった後も、それぞれを阻む物に苦しむことになろう。
それを乗り越える手助けを、私はしたい。君にも、協力してもらえればと思っている」
私が、以前の自分とつながる、根底にあるものを見つけ出す。
それが、少年と『彼女』なる人物を助けることになる。主人はそう言いたい様子でした。
主人の願いとあらば、断る理由はありません。
それにもまして、何故だか私も、同じような気持ちを抱いているようでした。
彼等の助けになりたい、と。
これも、もしかすると私の根底にある何かが作用しているのかも知れません。
「では、行こうか。決して楽な道ではないだろう。私も、君も、そして彼等も。
だが、諦めずに貫いた先で、私達は目の当たりにできると思うのだよ」
「何を、でしょうか」
主人は、陳腐な言い様だが、と前置きした上で、ぽつりと言いました。
「奇跡を」と。
469 名前:EPX作者[sage] 投稿日:2008/05/26(月) 21:36:51.39 ID:/t0P1bEa [6/6]
お久しぶりです。
その節は暖かい応援と数々のねぎらいのお言葉、ありがとうございました。
ハッピーエンドを望んでいた方には申し訳ありませんでしたが、
あれも一つの終わりの形と受け入れていただければと思います。
とはいえ、>430さんの言うように寂しいと思う気持ちも分かります。
だからというわけではありませんが、後日談として少し救いになる話を投下いたしました。
内容を見ると色々伏線を張っているように見えますが、
まさかまた長編が?と心配する方にはご安心を。
少なくとも私は、この少年についてのエピソードを紡ぐつもりはありませんので。
後日談は、あくまで後日談ということです。
470 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/30(金) 18:24:58.83 ID:qq7/0yXA
ホス
471 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/05/30(金) 18:34:29.31 ID:GMt7ECDA
>>469
連載お疲れ様、楽しませていただきました。
次の作品を楽しみにしておりますよー
472 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/01(日) 21:22:58.56 ID:G7HcMcaN
バルサミコ酢入りのパスタソースとやらを見かけて420を思い出した。
と言う保守。
473 名前:元ガーディアンズ 1/3[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 10:24:39.79 ID:21BKdxkm
[1/5]
ガーディアンズを辞めて一週間が過ぎた。
全てのパートナーカード登録を含むガーディアンズライセンスをミーナに返却し、長い間
時間を共にしたパートナーマシナリーにも別れを告げた。
全ての手続きを終えて本部を後にする私を、出口のドア前までついてきて見送る
GH 443の無表情な顔が今も忘れられない。
期待した様な感動的なシーンも別れを惜しむ会話もなく、手も振らずただ黙って
無表情で私を見送った443。
ガーディアンズを辞めた者だけにミーナが知らせる、ひとつの事実。
機密事項でも何でもない、ただガーディアンズ在職中には知らせないというだけのそれを
何故か、知った誰もが納得し、そして誰かに話す事もなく別の人生を歩み出すという。
474 名前:元ガーディアンズ 2/3[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 10:25:23.81 ID:21BKdxkm
[2/5]
時折、任務に出かけるルウをスペースポートの近くで見かける。
顔を覚えているのか、目が合うとぺこりと会釈をしてゆくが、決して話しかけてきたりはしない。
この立場になった今ようやく、彼女が街中での移動で時々遅れてくる理由を知った。
引退した数多くのガーディアンズが、シティの市民として暮らしていたのだ。
彼女はその全ての人々を人間よりも正確で薄れない記憶に刻み、該当する人物を
目にする度、そうして会釈を交わしてきたのかもしれない。
人の記憶はやがて薄れるが、機械に記録されたデータは「削除しない限り」薄れない。
キャストとマシナリーの中間的存在であるルウがそうである様に、ガーディアンズが苦楽を
共にしたパートナーマシナリーの記憶もまた、決して薄れる事はないのだ。
彼女らは一人のガーディアンズと過ごした時間を全て「記録」し、それらを「経験」として
経験を元に、次のガーディアンズへパートナーとして「着任」するのだとミーナは語った。
私についた443が、まだ玉っころの頃から何かとガーディアンズの世話を焼く振舞いが
妙に自然だったのは
GRM社による初期設定などではなく、人と同じ様に「経験」があったから。
寝坊したりわがままを言ったり、愚痴をこぼしたりだれたり怒ったり泣いたり。
そんな「人」の行動に「機械」を対応させる為に、人と同じ心理構築モデルを適用したという
ただそれだけの話だった。
475 名前:元ガーディアンズ 3/3[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 10:25:48.30 ID:21BKdxkm
[3/5]
「マシナリー」である彼女らと、私たち「人」。
もちろん、情動や行動を機能的に限定されたマシナリーは完全な「人」にはなり得ないが
そんな行動のフィルターを通してさえ、パートナーマシナリーは「パートナー」として
私たち人へ自然に接してくれた。
「彼女らも私たちと同様に、ガーディアンズに属して任務に就く「ガーディアンズ」なのです。
そう考えて、パートナーマシナリーとはお別れしてください。」
装備返却の際に売却代金として支払われる、かなりの額になるメセタをそのまま提示し
パートナーマシナリーを連れ帰りたいと申し出る引退者にはいつもそう伝えると
ミーナは話していた。
いつもの気楽そうな口ぶりはどこかへ飛んで消え、少し辛そうな表情をした彼女は
まるで別人の様だった。
ガーディアンズには決して見せない、見せられない彼女の素顔だったのかもしれない。
窓の側に腰掛けながら、今はもう遠くに見えるダグオラ・シティを懐かしく眺める。
たまにはシティへ出かけて、あたふたしているガーディアンズの手助けでもしてやるかな。
もしかしたら私と同じ様に、彼らの中にも世界を救うお手伝いをしながらも
何だか全然報われないスゲエ可哀想な奴が…
もしかしたらだけど、いるかもしれないからね。
476 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 10:31:30.24 ID:21BKdxkm
[4/5]
『本当にあったかゆい話』 最終話かもしれません。
クソッタレな世界ではありましたが、またいつか戻ってこれる事を信じて。
477 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 10:42:35.69 ID:21BKdxkm
[5/5]
読み直しててちょっと説明不足な点があったので補足
443(パートナーマシナリー)が無表情で何も言わず、ただついてきて見送ったのは
マシナリーとして情動・感情表現を制限されているからっていう設定だからです
マシナリーだから「寂しい」という感情表現は出来ないけれど、でも蓄積した経験から
自分の行動を決める対象としてのガーディアンさんが自分から離れるという事実に
対応した行動をそれとなく取ってしまったという、AIによる挙動のグリッチが現れたという感じで…
478 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 16:14:24.85 ID:cVL2lJXj
>>472
バ「サル」ミコスの事かー!
>>477
課金やめて早二ヵ月、うちのパシリは元気にしてるだろうか・・・
なんだろう目から汗が・・・
479 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 19:12:07.62 ID:uMakIIPy
俺も課金だけはしてあるけど最近やってないなぁ。
健気にいつ取り出されるかわからない、
デルピーを腹の中に抱え込んでいるのだろうなぁ…。
480 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 22:07:12.53 ID:7H7BEYZv
>>479
「ご主人さまが戻られるまでお腹の子は大切に守りますから」
とか変なこと想像しちゃったじゃないかw
481 名前:名無しオンライン[] 投稿日:2008/06/06(金) 17:11:27.17 ID:Oo4dxWyO
あ
482 名前:名無しオンライン[] 投稿日:2008/06/06(金) 18:14:29.31 ID:/fPuEhd8
g
483 名前:PMと私の10の約束[sage] 投稿日:2008/06/06(金) 22:55:02.64 ID:+/DuM4rH
1.私と気長に付き合ってください。
2.私を信じてください。それだけで私は幸せです。
3.私にも心があることを忘れないで下さい。
4.言うことを聞かないときは、理由があります。
5.私にたくさん話しかけてください。気の利いたことは言えないけれど貴方の気持ちは分かっています。
6.私をたたかないで。本気になったら私の方が強いことを忘れないでください。
7.私が年を取って古くなっても、仲良くしてください。
8.貴方にはガーディアンズがあるしフレもいます。でも、私には貴方しかいません。
9.私はどれだけ生きられるか分かりません。だから、できるだけ私と一緒にいてください。
10.私が死ぬとき、お願いです。そばにいてください。そして、どうか覚えていてください。
私がずっとあなたを愛していたことを。
484 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/06(金) 23:57:19.37 ID:4cZkJ5ME
6.は意外に知られてないよね
犬が「本気になったら」愛玩用の小型犬ですら大人も危ない
485 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/07(土) 20:52:54.60 ID:tg+ZuIS9
ハスキーとかだと、ちょっと気合入れて遊ぼうとされただけで市中引き回しみたいな目にあわされるしな
486 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/07(土) 21:14:01.93 ID:uDX7j8Jc
あのもこもこの毛並みに隠れたハスキーの筋肉はすごい
触ってて惚れ惚れする
487 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 09:44:43.56 ID:bPO//dtz
>>483
これテンプレに入れたいな
このスレ象徴してるよ GJ!
488 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 13:45:09.08 ID:c1yRNnLi
愛犬を亡くした次の年にそれが世に出てきて
見る度に、もっと一緒に遊んでやれば良かったと
泣きたくなるほどに後悔と自責の念に関わるのでダメ!
ちなみにパシリにも犬の名前つけてた!更に言うとハスキーでした!ついでに450でした!
489 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 04:06:28.08 ID:5sp3fRIW
ここで俺が単発に挑戦。
-HIVEリアクタールーム-
D・F 「ぶるぁぁぁぁぁぁ!!」
主人「よーし、第二形態来るぞー」
412 「はいっ、レスタもかけたし準備万端です!」
鉄子「こっちもいつでもオッケー!」
来るべき敵に備えていると、突然490さんがてこてこ歩き始めました。
数歩進んだ所で、突然こちらをくるうりと振り返るとぱかっと顔を開いて…。
鉄子「ど、どーしたの490?」
490 「私は貴方の人形じゃない」
三人『…はぁ?』
鉄子「…突然何言ってるのよ、アンタは私のパシリで」
490 「ダメ、マガシ君が呼んでる」
主人「マガシ君って、お前がマガシその物だろ」
412 「…それは言ってはいけない様な気がします」
すると490さんは突然、ふわりと浮かんで倒れこんでいるDFの方に飛んでいきました。
鉄子「ちょ、ちょっと490ー!?」
490 「ただいま」
「おかえり。」
D・F 「貴様の運命もこれまでだァァァ、じぃ~えいちよんひゃくじゅうにぃ!」
二人「な、なんだってー!?」
412 「え、ちょ、何で私なんですかぁ~!?」
490 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 16:48:22.98 ID:u6PNQdwb
またえらく懐かしいネタから引っ張ってきたもんだな…w
491 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/10(火) 01:44:12.34 ID:4O+MbkhM
やべぇ投下後に気付いた
412 「はいっ、レスタもかけたし準備万端です!
(ただし、鉄子さんに届かない範囲で…)」
にすりゃよかったぜ
492 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 19:31:13.55 ID:vlEmJle0
なんつーか凄い勢いで過疎ったなぁ
GBRで皆引退?
493 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 19:58:41.76 ID:teCNiGMt
>>492
ヒント:鯖落ち
494 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 11:05:54.23 ID:L7ePLiox
PSP版だと始めから好きなパシリを選べるらしい。
後は・・・解るよな?
495 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/16(月) 12:49:06.14 ID:kBEN6onW
PSP版へ移行?有り得ない
だったら続けてるよ
496 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/16(月) 20:22:18.59 ID:vITAKDSd
球数無いと磨けない武器強化仕様と言い、ソニチは『愛着』という概念を知らないらしい。
名前と型番だけでも読み込むだけで随分印象が違うのにな。(490とかは410とかにするとしても)
さて、PSU版パシリとPSP版パシリが喧嘩するネタでも考えるかな…
497 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/16(月) 22:19:19.81 ID:/524zCTM
>>496
傷物武器もあれはあれで愛着が出来るもんだぜw
ああ、これ取って苦労して作って強化したら3→4で折れたんだよなぁとか
いい仕様かどうかは別だけどなw
498 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 11:00:20.25 ID:zBT6AvbT
御主人「PSP版はパシリの服が着られるだそうだ」
パシリ「へえ、ペアルックですね。いいな」
御主人「あとはなりきりが出来るな。わんわんさうざんどプレイとか出来るぞ」
パシリ「…御主人は相変わらずですね」
御主人「まあオレは男性なので無理だが」
パシリ「そうですね」
御主人「PSP版は性転換しようかな?」
パシリ「…出来れば止めて下さい」
御主人「まあ一緒にプレイするフレいれば性転換しなくてすむか」
パシリ「そうですね…でも」
御主人「でも?なんだ?」
パシリ「御主人にリアルでフレいました?」
御主人「… … …」
パシリ「…すみません」
とりあえず書いてみた。
キャストなら親子マシーンが出来るのか…
499 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 11:12:49.79 ID:K3l7umkh
>>498
PSPだとパシリの服があるだと!?
わんわんさんどごっこが出来るだと!?
なんという新要素、まさにこのスレ向きじゃないか
500 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 12:25:04.23 ID:8Qhz27JO
[1/4]
>>499
言っとくけどPC版/PS2版にもPC用全パシリ服あるよ
PSP版の売りにしたいからアンロックしてないだけ
ヴィヴィアンとヘルガのデータも全部入ってるんだし、いい加減学ぼう
501 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 12:49:54.05 ID:/v+UwDkk
[1/2]
ヴィヴィアンとヘルガは見かけたが、パシリも有ったのか…
サイトのヒントキボン
502 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 17:09:33.45 ID:8Qhz27JO
[2/4]
>>501
いやいや、パシリの頭身を見るんだ
あとPSUのキャラクリシステムを思い出してみれ
ポリゴンデータってのは拡大縮小が出来るんだよ
やればPMに普通の服を着せ替える事もできるって意味
データは一緒なのよ
503 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 17:11:55.74 ID:/v+UwDkk
[2/2]
「やればできる」の話か
㌧
504 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 17:15:32.75 ID:8Qhz27JO
[3/4]
「やればできる」つっても、クバラブランドで店に置くか置かないかレベルだぞ
パシリ服の開放もイルミナス開発時点からPSP版の計画があって、その為にロックしていただけ
505 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 17:19:24.55 ID:DvZIRyBN
うちのキャス子に442の服着せたいなぁ
かわいいから連れ歩いてるけど、よ、よわすぎ…
506 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 18:36:37.83 ID:8Qhz27JO
[4/4]
キャストなんかサイズ調整できてもいいのにな
興味本位で、PM体型化処置を受けてみた。
視点が低い。景色が広くなったように感じる。
人の顔が見上げる位置にあるので、人と話していると首が痛くなる。
通りすがりのガーディアンズに知らない名前で呼ばれる。頭を撫でられる。
きょとんとしたショップのお兄さんの、なんとも言えない表情がおかしくて仕方ない。
ひと通りパートナーマシナリーの視点を楽しんだところで、ミッションへ出かける事にする。
体型による運動能力の差を考えて、コロニー連絡通路へ向かう。
私の姿を見て、ポーターのキャストが「びっくりしますよ」と悪戯っぽく笑う。
SEEDエネミーが大きく見えるという事なのだろう。キャストの私に予測できない未来はない。
武器パレットを確認し、今では見慣れた、フォトン汚染の進まない連絡通路へ足を踏み入れる。
「ぎにゃああああ!」
ぱ、ぱ、ぱのんが。ぱのんが!パノンがあー!!
足で蹴れるサイズだったパノンが、例えるなら部活の後輩くらいな身長で
首をかしげながら人懐っこそうに寄り添ってくる。
めん子(※パートナーマシナリーの名前)がよくパノンに包まれてきゃあきゃあ叫んでいるのを
和みながら見ていた私だったが、まさかコレほどの恐怖とは思わなかっ
みたいな体験が出来てもいいのに勿体無い事を
507 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/19(木) 01:47:51.92 ID:d14+fLZV
>>506
しゃがんでアップで見たポルティもとても怖かったです。
あれを可愛いと言うPMやガーディアンのセンスって・・・
508 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/19(木) 08:07:17.59 ID:PsiPWFcI
[1/3]
>>502
なんだ服ってかグラフィックデータがあるってだけか、そりゃパシリの見た目が表示されてるんだからそのデータはあって当然だわな
以前解析でキャラグラ改変のを見たが、表示されているキャラはいくつかのパーツ(髪、顔、胴体とか)を組み合わせて作られているからそれをいじる事でありえない組み合わせが作れたりする(パシリの頭に胴体ヴィヴィアンとか)
だがキャラグラがある=服として使用可能だがアンロックしてないだけ、というのはさすがに違うな
ちゃんと普通のキャラが着ることが出来る服という形で出る事が重要なんだぜ
>>506
キャラ小さくなって主観視点モードで戦えたらそういう体験も出来るんだろうな
まあ敵キモイで終わりそうだがw
509 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/19(木) 12:31:23.02 ID:r0JS+fFn
[1/2]
>>508
できるってば、検証したわけじゃないけどPSU的に考えると99.96%可能と予想
例えば、NPCの服が実はきちんとパーツ分けされてる事がウィッコの服装で証明されている
NPC服だって実は内部的にカラーバリエーションがあるかもしれない
ミクナスと同様に全身スーツという形で普通のキャラに着せられると思う
♂キャストならクバラで執事スーツを売り出す事もできるはず
とにかく、PSP版で新たに服データを作ったってのは無いと断言できる
そんな仕事のできるスタッフはもういない
510 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/19(木) 16:17:21.57 ID:PsiPWFcI
[2/3]
>>509
あぁいやすまん、それの結果なら知ってるんだ、無印時代にいじったキャラの絵を見たことがある
パシリの姿がロードされるまで普通のキャラ程度のサイズの青人形が表示されるだろ、でもロードが完了するとパシリのサイズに縮む
青人形のサイズがあのキャラに設定されている身長なんだがパシリの胴体パーツがあのミニサイズ固定なので強制的に小さいキャラになる
だからそのデータを無理矢理通常キャラに移植しても通常サイズのパシリ服になることはない
NPCパーツは基本的にそういう風に作られてるんだわ
511 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/19(木) 16:32:30.17 ID:PsiPWFcI
[3/3]
なんかややこしくなったので簡単に
PC服は設定された身長体格に合わせてグラを貼りつけている
NPCパーツは人形の頭と胴体を付け替えるようなもの
要するにPCとNPCは作り方の時点で違うんだわ
さてパシリスレで語るようなことじゃないのでこの辺で自粛しときます
512 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/19(木) 19:05:28.52 ID:r0JS+fFn
[2/2]
んー、ミクナスだけあらかじめ配布仕様になってたとは思いづらいけどなあ
まあ自粛ですね
513 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/19(木) 22:21:35.48 ID:Nxs3ry0c
>>509
PSP版の作成はセガじゃなくてアルファシステムだぞ?
514 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/19(木) 23:08:59.92 ID:Ep7BN07w
めんどくさいのは普段服のE3はPCとして作られてるであろうって事だな。
>>512
予めも何も、イルミナスで追加でPC服として色も追加してコンバートしただけだと思うが…
元々全部対応で作ってるという方がよっぽど思いづらいよ。
515 名前:捕らわれのPM[sage] 投稿日:2008/06/20(金) 00:36:25.69 ID:XhQHzkM5
パシリ「御主人様はどこだ!開放しろ!」
-いいだろう。会わせてやる。・・・貴様が崇拝している、その御主人の姿がこれだ。
御主人「ひゃあ!面白いのお!アドホック!!アドホックが面白いのおお!」
パシリ「・・そんな・・・」
-ユーザーを増やすためだけに作られたアドホックモードを喜んで遊んでる、このメス豚が
おまえの御主人様だよ!!ハッハッハッ!!
パシリ「・・・御主人さ・・ま・・・」
女騎士「カッパ寿司に行こうよ」を読んでたらつい。
今はかなり反省している。
516 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2008/06/20(金) 00:53:07.22 ID:u4Vkao28
その後、パシリは主人と一緒にアドホックモードを末永く楽しんだという。