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 まだ少し暑さの残る、十月上旬のある日。
 GRMの第5研究棟内の通路を歩く、新型PMの姿がありました。
 外見はどう見ても少年にしか見えませんが、その身長は90Rpほど。
 すれ違う研究員の幾人かは、このPMとすれ違う際に声をかけ、挨拶していきます。
「やぁ、『ソル』。今日もお散歩か?」
 また一人、古参の研究員が挨拶がてら、PMに声をかけます。
「はい、中庭まで」
「今日の外は日差しが強いから、熱管理には注意しろよ?」
「分かりました。それでは」
 軽く会釈をして、そのPMは再び歩き出します。

「そうか、日差しが強い日は、熱管理に注意が必要なのか…」
 僕は情報を整理しながら、「お散歩」を続けます。
 初めまして、僕の名前は『ソル』。
 世間じゃショタ型とか言われている、GH-470こと少年型パートナーマシナリーの先行量産試作機です。
 僕達の生みの親は、パシリを一手に製造しているGRM。特に、PM研究部門の研究主任が僕の『とうさん』と言ってもいいと思います。
 既に名前がつけられていますが、これは研究棟内での判別に使う識別呼称です。
 識別呼称の由来は、『息子』という単語からの連想からだそうで、息子→son(息子)→sun(sonに似た音)→sol(sunと同じ太陽という意味)→ソル、という、ちょっと安直な連想です。
 ソルは太陽を示す古い言葉だそうですが、本当かどうかは僕には分かりかねます。まだ、データが足りないようですね。

『業務連絡。GH-XY1、研究主任がお呼びです。速やかに運動訓練を中止し、研究室に出頭して下さい』

 あ~あ、今日の「お散歩」はここまでか。
 僕の日課、研究棟内の散策は、運動訓練の一環です。
 今日は、中庭の噴水まで行って、魚に餌をあげようと思ったのに…。
 でも、『とうさん』が僕を呼ぶなんて…今日は予定が無いはずなのに、何か、駆動試験の追加でも来たのかな?
 しょうがない、戻ろう。

 くるりと後ろを振り向くと、緑と青の塊が目の前にいます。
「「わっ!」」
 聞こえたのは僕と女の子の声。
 直後に、僕の肩に何かが触れて、頭上を通り過ぎて行きました。

 すたんっ!

「は~、危なかったぁ、急に止まらないでよね!」
 背後から聞こえた声と着地音に振り向くと、そこにいたのはGH-412です。
 ちょっと変わっているのは、デザインは似ているけど、眼鏡が412の標準タイプじゃないこと。

『PMメンテナンス部より通達。検査主任、速やかに総合運動場に出頭して下さい』

「あ~もう、分かってますよぅ!こっちだって忙しいんだからね!」
 スピーカーに向かって怒り出す412。
 あれ?パシリなのに、検査主任、ですか?
「あの、君…」
「何よ、用件は手短に!」
「えと、あの…君、パシリなのにPM検査主任なの?」
「そうよ!じゃね!」
 うわ、凄い勢いで走って行っちゃった…

『PMメンテナンス部より通達。検査主任、速やかに総合運動場にお越し下さい』
『うるさ~い!今、着いたわよ!!』

 あ、さっきの412の声がスピーカーから聞こえてきた。

『検査主任、棟内放送に割り込まないで下さい』
『うるさいわね!今日は3時間遅れるって、1週間前から言ってあったでしょ?!まだ40分以上時間があるわよ!!
 あんまりグダグダ抜かすと、ここのマシナリーとキャスト、制圧して暴走させちゃうからね!』

 なんか物騒な会話が聞こえてきますが、とりあえず聞こえないことにします。
「はっはっは、相変わらずだなお嬢ちゃんは」
「あれ?とうさん?どうしてここに」
 外見は老けてますが、50にまだ手が届いていない男性ヒューマン。僕の『とうさん』でPM研究所の研究主任の一人です。
 パートナーマシナリーの初期開発陣の一人で、PMの生みの母と言われた女性と同僚だった人です。
「お前がなかなか来ないので、気晴らしがてら来てみたんだ。
 今後のお前の予定が決まったのと、会わせたいパシリがいたのでね」
 あの、今すごーく、いやな予感がしたのですが…
「とうさん、もしかしてそのパシリって、さっきの物騒な放送していた412のことじゃ…」
「おや?一人にはもう会ったのかね」
 ニコニコしながらそう言ったとうさん。
「かわいい娘だったろう?」
 それを聞いた瞬間、記憶野から映像データがフラッシュバックします。
 彼女が僕を飛び越えた瞬間に、スカートの中が丸見えになった映像です。
 僕は顔が赤くなり、あわててそのデータを永久抹消します。
「と、と、とにかく、廊下で立ち話も問題がありますから、どこかに移動しませんか、とうさん」
「ふむ、そうだな。どうせなら、中庭の噴水まで行ってみるとしよう。運動訓練を中断させる必要は無かった訳じゃからな」
「はい、わかりました」

 通路を規定コースで歩き、中庭に出ます。
 早速、噴水に駆け寄ると、中で飼われている魚達が僕の方に寄ってきます。
 魚というのは、足音を感知して僕だと認識できるという話を、最初にここに来た時に研究員から教えてもらいました。
 ナノトランサーから食堂でもらったパンくずを取り出し、量を加減しながら与えます。これが、指先の訓練になるそうです。
「餌をやるのは楽しいかね?」
 とうさんがゆっくりとやって来て、僕にそう尋ねます。
「はい。魚達が食事をする光景は、とても楽しそうに見えます」
「そうかそうか、楽しそうに見えるか」
 噴水の縁に腰を乗せ、とうさんがのんびりと僕の様子を観察しています。
 餌のパンくずはすぐに無くなりました。
 あんまり餌を与えると、病気になりやすくなるという話なので、持ってくる量は加減しています。
「はい、今日の分はおしまいだよ」
 僕の声が理解できるはずは無いのに、魚達は三々五々と散っていきます。
「さて、ソルよ。お前の稼動試験はもうすぐ終了する」
 とうさんは、僕の餌やりが終わるのを見計らって話し始めました。
「基礎データはほぼ収集が完了したので、今後は実践データを収集する事になっている。
 そこで、お前をガーディアンズのPMとして登録し、どこかの隊員に主人となってもらって、GH-101からの経過を見たいと思っている」
「え?僕が実践投入ですか?基本躯体システムは組み込まれてませんが」
 基本躯体システムとは、赤玉ことGH-101から400番台に躯体を進化・成長させる機構のことです。
 僕の場合は最初からこの姿で作られているので、そのシステムが元から組み込まれていないのです。
「だから、それを組み込んで、という事になる。
 既に、モニターの募集を行った。まだ選考段階だが、相応の人数が募集してきた。
 もっとも、『ショタパシリを愛でる会』とやらの会員が多くて、少々難航しているがね」
 僕の背筋を、冷たい物が流れたような気がしました。
「それで、実際に僕が投入されるのは何時ですか?」
「暫く先の話になる。先ずは、基本躯体システムを組み込んで調整しなければならないし、お前自身も製品仕様にリメイクする必要があるからな。
 量産機にお前の意識体データを移しても、稼動記録転送システムを組み込む余裕が無い構造をしておるから、仕方が無いといえば仕方が無い。
 …そうそう、聞いておかねばな。
 ソルは、主人が男性のほうがいいかい?それとも女性かね?」
 う、いきなり究極の2択ですか?
「…即答する必要がありますか?」
「2、3日は余裕があるから、じっくり考えて見なさい。
 お前のデータが、これから生まれてくる弟達に還元されることを忘れなければ、特に問題は無いからの」
「…………それなら、女性の方がいいです。異性タイプとの生活情報は、多いに越したことは無いと思われますから」
 あんまり熟考しませんでしたが、同性タイプ同士よりは環境が複雑で、得られる生活情報は多いでしょう。
「よろしい。選考基準の参考にさせてもらうとしよう」
 さて、一体どんな人物が僕の主人になるのか、楽しみです。
「―――ここにいたのか、研究主任」
 突然、とうさんに声をかけてきた人物がいます。
 身長は180Rp位でしょうか、薄く日焼けした肌に贅肉の少なそうな標準体型の男性ヒューマン。
 季節外れのコート姿なので、見ていて少し暑苦しいです。
 特徴的なのは、ポニーテールに結った暗い紫色の髪の毛と琥珀色の瞳です。
「ああ、間に合ったのかね」
「なんとか。ガーネッタのデータ収集日と、対策室の勤務日程が、ここまでブッキングしなけりゃもっと楽だったんだが、仕方ない。
 お陰でロザリオがご機嫌斜めだよ。
 対策室オペレータールームに半日缶詰なんて、あいつの性に合ってないな、やっぱり」
「そうかそうか。では、先ほどの放送は耳に…」
 うんざりした表情を浮かべる男性。
「ああ、嫌ってほどしっかりとな。
 冗談が冗談に聞こえないのが、あいつの怖いところだよ」
 そう言って苦笑する男性。
「あの、この方は誰なのですか、とうさん」
「おお、紹介がまだだったな。この男は、さっきお前が会った412の主人で、『対PM対策室』のガーディアンズ側の隊員だよ。
 以前は、ここの警備主任を務めていたこともあるし、最近は肩書きがやたらと増えたので、会う人それぞれが好き勝手に呼んでるよ」
「俺はこの1年、ずっとガーディアンズ機動警備部所属隊員の肩書きで通しているんだがな…
 ま、もう暫くしたら、肩書きがガーディアンズの機動警備部対PM対策室PM統括主任に一本化されるから、多い肩書きも今だけだ」
 そう言いながらも教えてくれたのは、ガーディアンズの機動警備部隊員、同対PM対策室PM統括主任、総務部設備管理課PM管理係現場担当官。
 それから、GRM側の対PM対策室PM統括主任、PMメンテナンスサービス部門整備主任補佐。
 まだある様子なのですが、教えてはくれませんでした。
 それにしても、その殆どがパシリに関連しています。ガーディアンズの隊員にしては、パシリ漬けの度合いが大きいようですが…。
「よろしくな、GH-XY1。それとも、ソルがいいのかな?」
「ソルでいいですよ、ミスタ…えっと、なんてお呼びすればいいのですか?」
「好きに呼んでくれ。よっぽど妙なのでなければ、俺は気にしないぞ?」
「…では、『教官』と呼ばせてもらってかまわないでしょうか?」
 何故か、不意に『教官』という単語が浮かびました。そしてそれが、この男性の呼称として、僕にはなんとなくしっくりしたので、了承を取ってみます。
「…『教官』、か。かまわないが…そういう呼び方をする奴は、お前が初めてだな…」
 感慨深そうに言う男性。
「では、改めて。教官、よろしくお願いします」
「ああ、よろしくな、ソル」
 握手を求めた僕の小さな右手を、大きな右手で握ってくれました。
 今まで僕が出会った数少ない外部関係者は同盟軍でしたが、大抵は握手なんてしてくれませんでしたから、ちょっと驚きです。
「そういえば、ジュエルズ達は元気かね?」
 僕達の挨拶が終わるのを待って、とうさんが話を切り出します。
「ああ。今日は全員メンテの日なんだが、業務の兼ね合いから時間をずらして、一人ずつやってる。
 お陰で今日の俺は、あいつらのご機嫌取りの為に、ここに缶詰―――おっと、そろそろ次のが来る時間だ。
 じゃあ、これで。検査室に行ってやらないと、あいつらがすねるのでね」
「大変だな、君も」
「好きでやってるんだ、大した事じゃないさ」
 軽く手を上げて挨拶の代わりにすると、立ち去ろうとしました。
「―――あ、父様!良かった、間に合った!」
 あ、さっきの412さんがやってきましたが、教官を見て『父様』と呼んでますが…
「ひさびさのポカミスだな、お前も。人前で父様は止めろと言ってるだろうが」
「…あ、そうでした。研究主任さんの前だから、つい気が緩んじゃった。
 …あれ?そこの新型くんは、前に話があったソルくん、ですか?」
「ああ、そうじゃよ、お嬢ちゃん。君に会ったという話は聞いてるよ」と、とうさん。
「そっか。さっきは急いでたし、他の二人の470と見分けがつかなかったから、誰が誰なんだか分かるまでは保留にしてたのよね。
 改めて、初めまして!
 型式GH-412、製造ロットPMGA00261C5D7-B5、識別名称はロザリオ・ブリジェシーよ」
 そう言って、僕に利き手で握手してくれます。
 握った手は柔らかくて、あったかくて、この距離だとちょっといい匂いがします。
「こ、こちらこそ、よろしく…か、開発コードGH-XY1、ソルです」
 目一杯緊張して、名乗り返しました。この時は緊張しすぎて、型式や製造ロットを言い忘れている事にも気づいていませんでした。
「…XY1?ふ~ん、じゃあ、私達の一番最初の姉妹はXX1だったのかな?」
 ロザリオさんが疑問を口にすると、とうさんはゆっくり頷きました。
「正解じゃよ。極々初期は、その開発コードじゃった。女性型パートナーマシナリー試作機、GH-XXシリーズ――――」
「お呼びかい?研究主任」
 中庭の入り口に、見慣れない型式のGHー4xxが立っています。
 明確な型式が不明に見えますが、現行のGH-410~450シリーズの特徴が入り混じった姿をしています。
 黒い髪、青い瞳と明るい肌色の人口皮膚以外は、オフホワイトで統一されたパーツや服を着ているので、かなり違和感があります。
「いいタイミングじゃな、ちょうどお前さんの話をしておった所だ」
「そうかい、なら、あたしからの説明は省いてよさそうだね。
 本当は先に片付けないといけない急ぎの用件があったんだけど、どうやらここで片付きそうだしね」
 やってきた彼女は、教官とロザリオさんに顔を向け、親指を立てた手で通路の方を指します。
「お二人さん、ジュエルズが検査室でやかましいから、さっさと行っておくれよ」
「おっと、そうだった。すまん、お前に迷惑かけたようだな、イヴ」
 教官が彼女を名前で呼びました。そうか、彼女はイヴって名前なのか。
「なぁに、これもあたしの仕事さね。でも、さっさと行ってくれると助かるねぇ」
「そうだな。
 それではこれで。行くぞ、ロザリィ」
「はい~。これで失礼しますね、皆さん」
 二人は軽く会釈をすると、足早に立ち去りました。
「で?例の新型ってのは、このぼうずかい?」
 僕の方に振り向き、値踏みするような眼で僕を観察しています。
「そういうことじゃ。
 ソル、彼女がさっきの話題の主、試作型PMのうちの一体で現在は新型部品の実稼動評価を担当している――」
「型式GH-400-X2、製造ロットPMLxxE.V.E.-X2nxxxx、識別名称はイヴだよ。
 色々と話は聞いてる。宜しくな、ぼうず」
 そう挨拶され、頭をくしゃりと撫でられてしまいました。
 製造年と改修経歴は秘匿情報なので教えてもらえませんでしたが、僕達PMの“最初の姉妹達”です。
「初めまして、開発コードGH-XY1、型式GH-470-X1、製造ロットPMLA01S.O.L.-X1、識別名称ソルです」
 握手をするために、いつものように右手を出そうとしましたが、彼女がその前に、いきなり僕に抱きつきました。
 もちろん、そんな事をすれば、彼女の胸の柔らかいふくらみが僕の胸に押し付けられる訳で…
 その刺激で感情デバイスがとある指示を躯体に出し、結果として循環系の圧力があがってきて、ある部位がこーふんしてきました。
 マズイです。 
 咄嗟に彼女から腰を離すように動くと、彼女に右手で素早く股間を掴まれてしまいました。
「ひぁっ!あ、あの、えっと…」
「反応正常、稼動状況は良好、こっちは問題無いね。
 研究主任、上からの緊急通達通り、こいつの稼動評価試験を行うからね」
 彼女のその言葉に、無言で頷くとうさん。
「そんな話は聞いてませんよ、とうさん!」
 つい声を荒げ、とうさんに問いただしました。
「そりゃ、まだしとらんからなぁ」
 ポツリと呟いたとうさんの言葉が、嫌にはっきりと聞こえました。
「まだ、って、そんな手落ちな!もしかして、だまし討ちって奴ですか?!ひどいよ、とうさん!」
 混乱気味の僕への説明に困った様子のとうさんを尻目に、イヴさんが僕をそのまま連れて行こうとします。
「さ、行くよ、ソル」
「行く、って、何処にですかぁ!」
 どういう訳か身の危険を感じた僕は、つい大声を上げました。
 そんな僕を、不思議そうに見るイヴさん。
「どこって…あたし専用の稼動評価試験部屋だよ。
 あんたのこの『パーツ』の稼動試験の相手になってやるんだから、ありがたく思いな」
 喋りながら、僕の股間を絶妙な加減で触り続ける彼女。
「緊急だけど、今回が最後の稼動試験なんだし、この評価次第で量産開始の時期が決まるんだ、ちょっとは気張りな。
 ――そんなに心配することは無いよ、初めてなんだから、やさしく『して』あげるさね」
「あ~っ!助けて!とうさぁ~…」
 僕は彼女に抵抗することも忘れ、とうさんに助けを求め続けながら、その場から引きずられていきました。

 ―――数時間後。あえて数時間後と言っておきます―――

 倫理的に表現の出来ない稼動試験が終了し、僕は何かを失った気がしました。
 試験にかこつけて、彼女に色々やらされた気がしますが、よく憶えていません。
 周囲の研究員達からは慰めの言葉を掛けられましたから、あんまりいい事じゃなさそうです。
 こんな調子の僕が、実践投入に耐えられるのでしょうか。
 僕のパシリ生は前途多難なようです……orz

 ―――おわり―――




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