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1 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/07/26(木) 16:44:45.09 ID:FcCbg4Zg
合言葉は

 

  ( ゚д゚ )<倫理的におk      
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/     /
     ̄ ̄ ̄

[ ´・ω・`]<創作能力がしょぼいんだけど投下していいの?
( ゚д゚)<倫理的におk 尋ねる暇があったら投下マジオヌヌメ

 

[ ´・ω・`]<凄く長くなったんだけどどうすればいい? あとパシリ関係ないのは?
( ゚д゚)<空気嫁ば倫理的におk 分割するなりうpろだに上げるなりするんだ

 

[*´・ω・`]<エロネタなんだけど…
( ゚д゚)<ライトエロなら倫理的におk あまりにエロエロならエロパロスレもあるよ
ファンタシースターユニバースのエロパロ 2周目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1173107109/l50

 

[ ´;ω;`]<叩かれちゃった…
( ゚д゚)<叩きも批評の一つ。それを受け止めるかどうかはおまいの自由だ
m9(゚д゚)<でもお門違いの叩き・批評はスルーマジオヌヌメ するほうもそこを考えよう

 

[ ´・ω・`]<投稿する際に気をつけることは?
( ゚д゚)<複数レスに渡る量を書きながら投稿するのはオヌヌメできない。まずはメモ帳などで書こう。
m9(゚д゚)<あとは誤字脱字のチェックはできればしておいたほうがいいぞ

 

[ ´・ω・`]<過去の住人の作品を読みたいんだけど
( ゚д゚)<まとめサイトあるよ ttp://www.geocities.co.jp/nejitu3pachiri/
     保管庫Wiki ttp://www21.atwiki.jp/nejitu3pachiri/

 

( ゚д゚)<前前スレ
【PSU】新ジャンル 「パシリ」十一体目
http://live25.2ch.net/test/read.cgi/ogame3/1178116011/l50

 

( ゚д゚)<前スレ(既に落ちた)
【PSU】新ジャンル 「パシリ」十二体目
http://live25.2ch.net/test/read.cgi/ogame3/1184949669/
( ゚д゚)<次スレは容量が470kを超えるか、>>800を超えた辺りから警戒しつつ立てよう。

 

2 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/07/26(木) 19:50:57.08 ID:SYqnUgCE
乙ですだ!

 

3 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/07/27(金) 21:06:31.80 ID:Iu9EJ+Vw
みんな夏の祭典に追われてるのか知らないが
一人だろうと保守すんぜ!

 

4 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/07/28(土) 20:13:06.35 ID:F5MCISbj
ども、パパと412作者です。

 

ファミ通カップが始まった頃から作っていた長編がやっと書きあがりました。
イルミナスが出るまでは、たぶん長編になるようなネタが…あるな…書いてみないと判らんが。
ま、それも気が向いたらということで。

 

続きの投下が2,3日ごとになるかもしれませんが、保守も兼ねてという事で。

 

それではご拝読下さいませ。

 


5 名前:復讐者は姉妹と共に(1)[sage] 投稿日:2007/07/28(土) 20:14:12.95 ID:F5MCISbj
「出かけるぞ、ついてこい」
 今日はとある月曜日、珍しく出かけなかったパパが、店番をしていた私にそう言いました。
「今日は例のイベントに行かないんですか?」
 ファミ通カップとかいう、全員参加型の報酬つき訓練ミッションが始まって既に2週間目、ほとんどの人が通いつめていると言うのに、一体何処に行くつもりなんでしょうか。
「遠出をする準備をして、モトゥブで待ってろ」
「は~い。特に何か必要になりますか?」
「それは俺が用意するから問題ない」
 あ、そういえば、ここ最近は遠出なんてしてないから、パパもお昼ご飯なんて忘れてるかも。
「それじゃあ、急いでお弁当を用意しますね」
 私がそう言うと、パパは私の頭を撫でてくれました。
「…なら、少し頼まれてくれ」
「なんですか?パパ」
 朝もまだ早く、パパ以外に誰もいないので、そう返事をします。
「三惑星の料理で、折り詰めを作ってくれないか?」
「折り詰め、ですか?」
 私はちょっと面食らいました。
 普段はお弁当を用意するって言っても、コルトバサンドとかオルアカドッグ、オニギリとかの手軽な物のリクエストが多いのに、今日はどうしたのかな?
「ああ。
 そうだな、大体3、4人分くらいがいい」
「はい、3、4人分ですね。
 何か食べたい物はありますか?」
 一瞬、複雑な表情を浮かべて考え込んだパパですが、
「…辛すぎるものは避けてくれ、後はお前に任せた」
 と言うと、私と同じ目線の高さになるように座りました。
「お前、最近料理が上手になってきたな、あいつみたいに」
「えへへ、そうですか?」
 私が照れ隠しに笑うと、パパもうっすらと笑みを浮かべます。
「ああ」
「実は、ママのレシピで勉強してるんです。お客が来ないとき」
 パパは軽く首をかしげて少し考え込むと、何かに気がついたのか、ポンと手を打ちます。

 

6 名前:復讐者は姉妹と共に(2)[sage] 投稿日:2007/07/28(土) 20:15:38.96 ID:F5MCISbj
「………そうか、この間のニューデイズ風の煮物は」
 3日前の料理のことを、今頃になってやっと気づいたパパ。
 ちょっと遅すぎですけど、気がついてくれたので何も言わないでおきます。
「うん。ママの料理を練習して、上手に出来たから晩御飯に出したの」
「そうだったのか。すまん、言われるまであいつのレシピとは思いつきすらしなかった」

 

 まったく、一杯練習してがんばって作ってるのに。
 でも、練習してて困っちゃう点が一つだけあります。
 それは、お手本にしているママのレシピが根本的に間違ってて、とんでもない味になっちゃう料理がたまにあるってこと。
 料理の数々をいつも試食してくれるのはヒュマ姉さんとルテナちゃんなのですが、あまりにもひどい味の料理になった事がニ、三度あって、それを食べたヒュマ姉さんが昏倒、医務課に運ばれた事があります。
 あのひどい味は…う、思い出したら、気持ち悪くなってきた………あの味の記憶データを消去、消去……
 料理のせいで姉さんが倒れた事は、パパには内緒ですし、姉さん自身にも口止めされてたりします。
 毎回試食に協力してくれる二人には、とっても感謝してます。

 

 急に遠くを見る視線になったパパ。
 料理の事から何かを思い出したようですが、不意に何かを思いついた様子で、私に視線を合わせます。
「じゃあ、ちょっと注文だ」
 注文されたのは、ママのレシピファイルにも載ってた、一般家庭では割とポピュラーなパルム風のシチュー。
 煮込むのにちょっと時間はかかるけど、パパならすぐに作れる料理なのに、なんで自分で作らないのかな?
「久々に食べたいんだが……出来るか?」
 不安げに聞いてくるパパに、私は自信満々で頷きました。
「出来ますよ。最初に作ったんだもん、今じゃ得意です」
「じゃあ、たのむ。じいさん、喜ぶな…」
 おじいさん?モトゥブに行くって行ったけど、その人に会いに行くのかな?
「それじゃ、用事を済ませて、そのままモトゥブの空港前で待っている。
 お前の料理が出来上がるくらいの時間はかかるから、あわてなくていいぞ」
 私の返事を待たずに入り口に向かうパパ。
「はい。行ってらっしゃい、パp…」

 

7 名前:復讐者は姉妹と共に(3)[sage] 投稿日:2007/07/28(土) 20:16:27.43 ID:F5MCISbj
 パパが入り口の扉に近づく直前に、ぷしゅ~、と扉の開く音。
 あ、お客さんが来た。
 危ない危ない、『パパ』ってそのまま続けて言っちゃうところだった。
「おっと、失敬」
 パパはそう言って、出会い頭のお客さんとすれ違い、そのまま出て行きました。
「行ってらっしゃいませ、ご主人様」
「おや、ご主人様はお出かけ?」
 パパと面識がない常連さんが、私にそう言いました。
「はい、用事があるので外出すると、たった今」
 あわてて外を覗いてご主人様を探す常連さん。
 この部屋のすぐ近くに転送ゲートのプラットホームがあるので、既にパパの姿は見えないと思います。
「そうか、困ったな」
「どうかしましたか?」
「いやね、あんたのご主人様を探しているっていうビーストのおっさんがいてね。
 知っていたら、呼んで来て欲しいって言うんだよ。
 ここは不慣れで迷うから、代わりに頼めないかって。
 まあ、暇だし、ここに用事もあったんで来たんだが、入れ違いで出てった今の人がそうだったのか。
 ――もう、追いつかんな」
「行き先なら知ってますけど」
 私の言葉にほっとした様子の常連さん。
「おお、そうかい。んで、何処へ?」
「途中は知りませんけど、モトゥブへ行きましたよ。
 私もこれからお弁当を作って、後を追います。
 所で、ご用件は?」
「あ、ああ。…セール品、残ってる?」
 こないだ、パパが大量に仕入れたというか、イベントで拾った武器のことですね。
 星4武器を、量販店に売却するより安い1000メセタで大放出してましたけど。
「すみません、すぐに売り切れたんです。イベント最終週まで、入荷は微妙かと思います」
「そっか、残念だなぁ。んじゃ、じゃましたな」
「毎度ありがとうございます。またのお越しを~」

 

8 名前:復讐者は姉妹と共に(4)[sage] 投稿日:2007/07/28(土) 20:17:23.80 ID:F5MCISbj
 常連さんは用事が済んだとばかりにさっさと帰られました。
 私は鼻歌を歌いながら、店番をスペアパシリさんに任せてキッチンに向かいます。
 さて、気合をいれてお弁当作るぞ!パパに「おいしい」って言わせるんだ♪

 ―――モトゥブ、フライヤーベース前―――

「―――おっそいなぁ、ご主人様。何処行っちゃったのかなぁ…」
 会心のお弁当が出来上がって、待ち合わせの場所まで来たのに、パパがいません。
 10分ほど待っても現れないので、ガーディアンズ支部に顔を出してみました。
「―――分かった、分かったって、もう少し待ってくれ」
 受付の口の悪いお姉さんと誰か揉めてます。
 あれは―――
「ご主人様?」
 身内以外には滅多に怒らないパパが、何かあったのか怒っています。
「どうしたんですか、ご主人様?」
 私が声をかけると、受付のお姉さんがほっとして私に声をかけました。
「パシリの嬢ちゃん、あんたからも言って、ちょっと止めてくれ」
 話を聞くと、どうやらパパが前もって手配を頼んでいたフライヤーを間違って別な人に手配してしまったそうです。
 今は人が少ないとはいえ、空いている機体はそう多くはありません。
「私用で借りたいから、早めに頼んだのに」
「悪かった、あたいが悪かったから、もう勘弁してくれ」
 話を聞くと、私用という無理難題を言った手前、機体が空いたらという条件で借りる約束をしていたのに、という事らしいです。
 ピコンッ♪という、いい音がカウンターから聞こえましたした。
「だから…っと、来た来た。やっと手配できたよ、あんたの機体」
「次からは…」
「分かってる、気をつけるよ」
 へとへとなお姉さんを尻目に、私とパパは支部を出ました。
 すっかり疲れたのか、いつもの「星霊に導いてもらいな!」を、今日は言ってくれませんでした。
 なんかお姉さん、かわいそうです。

 

9 名前:復讐者は姉妹と共に(5)[sage] 投稿日:2007/07/28(土) 20:17:58.45 ID:F5MCISbj
 空港に向かって移動する私とパパ。
 いつもと違ってゆっくり歩くパパの脇を、私は自分の歩幅で普通に歩きます。
 急がない時のパパは、私に歩調を合わせて歩いてくれるし、時々手を繋いでくれます。
 今日も私がそっと手を伸ばすと、手を繋いでくれました。
 怒る事も多いけど、いつもやさしくしてくれるパパ。
 時々、何故私はパシリじゃなくてヒューマンの、パパの本当の子供としてこの世に生まれて来れなかったのか、と真剣に悩む事があります。
 普段から意識してパパの仕草を真似たり、データ上にあるママの仕草をしてみたりしますが、いくら振る舞いを似せても私はパシリ。ヒューマンにはなれませんし、これ以上外見が成長する事もありません。
 唯一の救いは、私の顔立ちがデータに残っているママにかなり似ているという事。
 でもやっぱり、パパと本当の親子のように見られたい。
 パートナーマシナリーを示すこの服じゃなくて、せめて… 
「普通の服なら、親子に見えるかな…」
「…なんだ、どうかしたか?」
 考え事から無意識に漏れた私の独り言が、パパに届いたようです。
「い、いえ、何でもないです」
「?……ん?そうか」
 何かが視界に入ったのか、そちらに目線を向けるパパ。
 それは、小さな娘さんを腕に座らせて歩く、父親らしき大きなビーストの男性。
 あ、そっか、私、あっちを見てましたね。
「………流石にあれは無理だぞ?」
「…そうですか」
 ちょっと落胆したような返事をしてしまいました。
 ちょぴりやって欲しいと思っていたんですね、私。
 突然、歩みを止めるパパ。
 それに合わせて私は歩くのを止めました。

 

10 名前:復讐者は姉妹と共に(6)[sage] 投稿日:2007/07/28(土) 20:19:25.65 ID:F5MCISbj
「………まぁ、これなら出来るか」
 パパはおもむろに片膝をついて、私を手招きしました。
「左肩に前を向いて乗ってみな」
「え?えと、こうですか?」
 パパの太ももを踏み台にして、椅子に腰掛けるように左肩に座ってみます。
「足は揃えろよ?…よっと」
 私の揃えた両足を左腕で抱えると、パパがゆっくり立ち上がりました。
 すると、私の視界がじょじょに広がります。
「わぁ……高ぁい…」
 いつもと同じ街が、違って見えます。
 これがパパたちが見てる『世界』なんだぁ。
「頭に掴まるのはいいが、髪は引っ張るな。痛い」
「ご、ごめんなさい、ご主人様」
 気がつくと、パパの頭に反射的にしがみついていました。
 そのままフライヤーベースまで、普通に歩き出すパパ。
 時折、道行く若い女の人や子供が私を見て「や~ん、かわいい♪」とか、「親子みたい~」とか、指を差して言ってます。
 自分の事を言われているので、ちょっと恥ずかしいです。
「…良かったな。親子みたい、だとさ」
 独り言、しっかり聞こえてたんだ、やっぱり。
 パパの顔を覗き込むと、いつもよりやさしい微笑みを浮かべています。
 それを見たら、なんだかとっても幸せな気持ちになりました。
 パパの頭にギュッっと抱きつきます。
「えへへ♪」
 今日は一日、笑顔でゆるみっぱなしになりそうです。

 

11 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/07/28(土) 20:21:52.10 ID:F5MCISbj
投下完了です。

 

試しに改行パターンを変えてみました。
読みにくいようでしたらご一報ください。
その場合は、今までの方式に戻すつもりですので。

 

12 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう[sage] 投稿日:2007/07/29(日) 01:30:24.55 ID:Q8GKa+05
十二は落ちてしまったのか、思えばパシリスレ初か
少し残念だが気を取り直して

 

>>11
パシリを肩車して散歩とか想像するだけで も え て き た (色んな意味で)

 

しかしシリアスシーン外ではほのぼのとしてていいなぁこの二人・・・w

 

13 名前:復讐者は姉妹と共に(7)[sage] 投稿日:2007/07/30(月) 17:55:12.04 ID:YM/vfS1/
 私を肩に座らせたまま、パパはフライヤーベースの格納庫まで来てしまいました。
 格納庫の片隅に行くと、初老の男性ビーストの整備員の一人がこちらにやってきます。
「…あんたが、こいつを借りようって奴か?」
 整備員の人が親指で指差した先には、オレンジ色の派手なGフライヤーが一機。
「ああ、話はいってるはずだ」
「荷物はあれで全部だな?」
 貨物リストをチェックしながら、パパに確認を取る整備員さん。
 荷物?何を運ぶのでしょうか。
 ナノトランサーで入りきれないほどの物なのでしょうか?
「そうだ。手間をかけさせてすまない」
「気にするな、それが仕事だ」
「じゃあ、ありがたく借りていく」
「おう、壊すんじゃねぇぞ!!」
「言われるまでもない」
 整備員さんに背を向けて、親指を立てるパパ。
「…私用で壊した日にゃ、借金まみれだって」
 パパが小声でそう言いました。
「大体、ブルースが黙っちゃいないよ」
 それを聞いて、機体を良く見ると…ブルースさんのパーソナルマークがちっちゃく描かれています。
 小さな声で、パパに尋ねてみます。
「…パパ、これを借りていって大丈夫ですか?」
「基本的には定期航路を飛ぶだけだし、他に無いんじゃしょうがない。
 大体、今はブルースも例のイベントで手一杯だし、機体は空いてる。
 貸して貰えたという事は、向こうも了承済みって事だ………どうせ、燃料費は俺持ちだしな」
 あ、そうか、私用だから、燃料代は自腹なのか。
 ここに来る途中、「普通にレンタル・フライヤーを借りればいいのでは?」と聞いてみたら、「距離が遠いから、普通のじゃ間に合わない」って言われてしまいましたし…
 何処まで行くつもりなんでしょう?
「それより」と、私を下ろしながら、派手な広告がプリントされたROMカードを手渡してくれました。
「少し、そいつを見ておけ。
 行きたい所があったら連れてってやるぞ」

 

14 名前:復讐者は姉妹と共に(8)[sage] 投稿日:2007/07/30(月) 17:56:16.06 ID:YM/vfS1/
「なんですか?これ」
「北極地域の観光案内だ」
 観光案内、って、今日はただの観光旅行ですか?
「なに、用事が済んだら夜まで時間はあるし、たまには観光もいいと思ってね」
 首をかしげる私に、苦笑を浮かべてパパが言いました。
「そんなに気にするな、ただの息抜きだ。
 一人で出かける位なら、お前も連れて行こうと思ってな。
 普段は、何かと言うとお前を部屋に置き去りにしてるし、ミッション以外に一緒に出かける機会も殆んど無いしな。
 たまにはこういうのもいいかな、と思ったんだが…嫌だったか?」
 私は激しく首を振って、それを否定しました。
 そういえば、ママのお墓参り以降、ミッション以外では一緒に何処にも出かけていません。
「それに、見せたい物もある」
「見せたいもの?なんですか?」
「それは着いてからの…いや、行きがけのお楽しみだ」
 一体なんでしょう?少しワクワクしてきました。

 

 ―――Gフライヤー機内―――

 

 二人がかりで手早く発進シークエンスを行い、機体はなめらかにモトゥブの空に舞い上がりました。
 航路に沿って二時間くらい飛んだあたりで、やたらと大型のパーソナルフライヤーが目視できるようになってきました。
「お、そろそろだな」
 パパは航路から機体の高度を下げて、地表が確認しやすい高さで水平飛行に移りました。
 この辺はそろそろ北極圏に近い地域ですけど、一体何が見えるのでしょう?
 パパが軽く機体を左に傾けると、ほんの一時だけ翼端から出た飛行機雲が、空に緩やかな弧を描き始めます。
「左、10時の方向を見てな」
 そう言われた直後、煌きと共にまず視界に飛び込んできたのは、信じられない量の水が流れている川。
 え?モトゥブに大河?それに…
「…………わぁぁぁぁぁ!」
 荒涼とした大地と凍土の境界線近くに『それ』はありました。

 

15 名前:復讐者は姉妹と共に(9)[sage] 投稿日:2007/07/30(月) 17:56:52.76 ID:YM/vfS1/
 荒野に近いせいか、溶け出した凍土から流れ出た水が信じられない幅の大河となっていて、それがそのまま大裂溝帯に滝となって落ちているのです。
 飛び散る水しぶきがいくつもの虹を作って、幻想的な世界をかもし出しています。
 そして、その谷間に広がる森林地帯。
「全長10Kmに及ぶ大裂溝帯と、それに流れ込む滝、その二つが作り出すいくつもの虹、そして、その谷間に広がる、モトゥブ本来の自然が残る森林。
 モトゥブの奇跡、“幻想の谷”だ」
「すごぉい、きれ~………」
 上空からのほんのわずかな観光時間でしたが、自然が作り出したその光景に、私はすごく感動しました。
 でも、パパがここに立ち寄った本当の目的は、雄大な自然を見ることではありませんでした。
 パパがフライヤーの操縦を自動に切り替えて席を立つと、少し変わった敬礼をして外を見ています。
 視線の先を追うと、なにやら巨大な記念碑らしき物が見えました。
 その時は何故か、あの記念碑について、パパに聞くのは躊躇われました。
「本当はちゃんと寄りたいが、今日はかんべんな…」
 寂しそうな、懐かしそうな顔をして、そう呟いたパパ。
 谷から離れ、機体の高度が航路にまで戻ってから、私はもらった観光案内を見てみました。
 先ほどの記念碑がちゃんと映像付きで載っています。
<英霊の碑:500年戦争で死んだ人々を祭るための巨大なモニュメント。
      その全体には、戦争で死んだ戦士たちの名前が全て刻まれています。
      毎年の終戦記念日には、ひっそりとですが慰霊祭が行なわれます。
      モニュメントの地下には、当時のヒューマン達の基地を改造した、
      巨大な墓地が存在します。
      今でも、当時の戦争を生き延びた戦士のキャストたちが亡くなると、
      ここに埋葬される事があります。>
 お墓、基地の跡…そっか、パパがずっと昔に暮らしてた場所の一つなんだ。
 口には出さないけど、昔の事を教えてくれてるんですね。
 パパにだって、いろんな場所で、いろんな人達と過ごしてきた場所がいっぱいあるはずです。
 そして、楽しいだけじゃなく、辛く悲しい思い出が残る場所もあるでしょう。
 それらを、時間が許す限り、私にひとつずつ教えてくれるんですね。
 多分、これからずっと、こうやって…

 

16 名前:復讐者は姉妹と共に(10)[sage] 投稿日:2007/07/30(月) 17:57:31.05 ID:YM/vfS1/
 いつの間にか、機体の下は厚い雲海になっていました。
 “幻想の谷”から更に小一時間ほど飛んだ辺りで、再び機体の高度を下げ始めます。
「さて、そろそろ目的地に着くぞ」
 機体が雲海を潜り、重い色合いの雲の下に出ると、雪と氷が荒々しい地形を封じ込めた銀世界が現れました。
 雲の切れ間から差し込む光に照らし出された、全てが凍りついた大陸…ここがパパの目的地。
 不意に、切り立つ山々の間にぽつんとオレンジ色の光が見えました。
 良く見ると、その光の周囲だけ開けた平らな場所です。
「あそこですか?」
「ああ」
 切り立つ山肌の間を、機体がゆっくりすり抜けて行きます。
 狭い場所なので慎重に機体を滑り込ませると、垂直降下させるパパ。
 着陸した場所はかなり狭い場所で、Gフライヤーより大きな機体は入りそうもありません。
 すぐ脇の山肌はくり抜かれていて、いろんな種類のフライヤーが収納されているのが見てとれます。
 パパが管制塔と短いやり取りをすると、もこもこの防寒服に身を包んだフライヤーベースの管理要員が二人ばかり走ってきました。
 その間に、シールドラインを市販のギイセンバとメイガ/レインボウに付け替えるパパ。
「お前も対寒冷地用に、シールドラインのフォトン属性を変更しておけ。
 ここには普通のフライヤーベースにあるような機密型搭乗用設備なんて無いから、街に入るためには一度機外へ出なけりゃならんし、外気温は年平均-20℃、対策しておかないと人工皮膚なんてひとたまりもない」
 ひ、ひぇ~!なんですか、その気温!もう6月ですよ!
 あわてて調整をしようとしましたが、上手く切り替えられません。
 見かねたパパが、躯体調整用のキーボードで設定してくれました。
「あぅ、ごめんなさい」
「戸惑うのも仕方ない。ここは一年中こんなもんだ」
「い、一年中?!」
「今日はまだ-5℃くらいだから、それでも暖かいほうだ。夜には最低でも-20℃にまで冷え込むぞ」
 うあ、信じられない世界。
「俺の経験上、属性%と同じマイナス温度までなら何の問題もなくいられるが、それでも、起きて意識のある間だけだ。
 下手に眠ったり、気を失うと、そのまま凍りつく。
 ここの自然は、生き物に容赦しない」
「そっか、それで管理要員の人達はもこもこの服を着ているんですね?」

 

17 名前:復讐者は姉妹と共に(11)[sage] 投稿日:2007/07/30(月) 17:58:37.04 ID:YM/vfS1/
「その通りじゃよ、パシリのお嬢ちゃん」
「ひゃぁっ!」
 搭乗口の通路から、いきなり声をかけられてびっくりしました。
「…じいさん、脅かすなよ」
 ひょっひょっひょ、と笑う、やや背の曲がったビーストのおじいさんがそこにいました。
 オレンジ色のもこもこな防寒服に身を固めて、今はフードを外しています。
「久方ぶりじゃのう…なんて、呼べば良いかね?」
「あ~、そうだな…」
「ご主人様、この方は?」
 私がいるのを忘れて話し込みそうな雰囲気だったので、あわてて割って入ります。
「ああ、紹介が遅れたな。ここの全施設を管理している責任者で…」
「グリーガズ、と申しますじゃ、パシリのお嬢ちゃん。
 まあ、なじみのもんらは『管理人の爺さん』とか『爺さん』ですませますがの。
 ここはモトゥブ最北の街、寒冷地帯の観光施設じゃて」
「グリーガス様、ですね。私はパートナーマシナリーGH-412、識別名称をロザリオ・ブリジェシーと申します。
 どうか、ロザリオとお呼び下さい」
 私がそう言ってお辞儀をすると、グリーガス様もお辞儀をしてくれました。
「ロザリオさんよ、どうかこの爺の名は呼ばんでくれんか。どうにもむずがゆくていかんわい」
「そうですか?良い名前だと思うのですが…では、おじいさんと呼ばせていただきます」
「すまんのぅ。わしもお嬢ちゃんと呼ばせてもらうで、問題は無いかの?」
「はい」
「挨拶はここまでにして、機体を格納庫に入れたいんだが」
 パパがやんわりと割って入ります。
 外を見ると、コクピットのガラスはうっすらと霜に覆われ始めていました。
「おお、すまんすまん。では、御大、後はやりますで」
「管理室で待たせてもらっていいか?」
「ゆっくりしていきなされ。後でお茶でもいれるでな」
 おじいさんに格納庫への機体の収容を任せて、パパと一緒に機外へ出ます。

 

18 名前:復讐者は姉妹と共に(12)[sage] 投稿日:2007/07/30(月) 17:59:14.96 ID:YM/vfS1/
 緩やかに吹く風、刺すように冷たい空気。
「ん~~~~~~~~っ!!」
 さ、寒い!!!!!
 あまりの寒さに躯体が縮こまって動きません。
 パパが私をひょいとお姫様抱っこすると、管制施設に向かって走り出しました。
「だから気を抜くなといったろうが」
 走りながら、パパは小さく口を開けて私に言いましたい。
「こここここここ、ここまで寒い、なんんんんて、ははははは、初めて知りました」
 気温差が激しすぎて、発声ユニットまで正常に機能しません。
「意識をシールドラインに集中しろ、氷系の攻撃を喰らったみたいに凍りつくぞ」
「は、ははははは~い!」
 フォトンリアクターからの配分を防御系へ最大に回して、やっと安定しました。
 この寒さだから、おじいさんたちは走っていたんですね。

 

 ―――最北の街、統合管理施設内―――

 

 すぐに風の当たらないエリアに入れましたが、それだけで5度は体感の気温差があります。
 そして、抱っこされたまま、統合管理施設の中まで来てしまいました。
「ふぅ、ここならもう平気だ。どうだ、初めての極地の洗礼は?」
 やっと暖かい場所に来て、にやにやしながらパパが言いました。
「………く………」
「く?」
「くそ寒いぃぃぃぃぃぃい!!!!」
 ………はっ、すごい言葉遣いをしてしまいました………
 おそるおそるパパの顔を見ると、唖然とした表情。
「…ぷっ……くっくっく……あっはっはっはっはっは!!!」
 続いて大爆笑です。
「くっくっく……お前がそこまで言うんじゃ、よっぽど寒いんだな……くっくっく………」
 私を抱っこしたまましゃがみこみ、笑いの発作をこらえるパパ。
 私は今までの寒さを忘れるくらい、恥ずかしさで躯体が熱くなってしまいました。

 

19 名前:復讐者は姉妹と共に(13)[sage] 投稿日:2007/07/30(月) 17:59:48.13 ID:YM/vfS1/
 暫くそのままいると、発作が治まったパパが私を下ろしました。
「…お前と出会ってから大した時間が経ってないが、そんな言葉遣いになるほど寒かったか。そかそか」
 パパ、まだ顔が笑ってます。
「んもう、ひどいですよご主人様、私をからかうなんて」
「すまんすまん、初めてここに来た連中のこの反応がいつも楽しくてな」
「…そうなんですか?」
「ああ」
 一緒に管理室に向かいながら、パパが話をしてくれました。
 私みたいに悪態をついて叫ぶ人、暫く動けなくなる人、走って宿に直行する人、お酒で暖をとる人、色々いるんだそうです。
「悪態つける奴が、一番元気だよ」
 そう話を締めくくると、目の前が統合管理室です。
「こんにちは、邪魔するよ」
 中には中年の男性ビーストが一人、事務機器に向かって何かの記録をしています。
「……おう、あんたか、久しぶりだな。又、例の荷物かい?」
 椅子に座ったまま上半身だけ振り向いて、返事をしてくれました。
「ああ。そろそろ切れる頃だと思ってな」
「助かるぜ。ここじゃ、どれも貴重品だからな」
「…そういえばご主人様、あの荷物はなんだったのですか?」
 私がパパにそう聞くと、中年ビス男さんが席を離れて私を覗き込みました。
「おりょ、あんた、今度はガーディアンズに入ったんだ」
 中年ビス男さんが中腰のまま、私を見ながら確認するように言いました。
「こ、こんにちは」
「おう、こんちは」
 私がおずおずと挨拶すると、威勢のいい挨拶が返ってきました。
 私を覗き込む顔が厳ついのでちょっとびっくりしましたが、やさしい目をしたおじさんです。
「この旦那はな」
 ちらりとパパに視線を向けるおじさん。
「貴重な薬や食い物とか、ここじゃ手に入れにくいが他じゃ楽に手に入る物を、こうやって時折届けてくれるのさ。
 観光客相手用の備蓄は定期便でなんとかしてあるが、なんかあった時に俺たち住人全部に安定して回るほどではないからなぁ」

 

20 名前:復讐者は姉妹と共に(14)[sage] 投稿日:2007/07/30(月) 18:01:22.08 ID:YM/vfS1/
 その話を聞いた私は、よっぽど怪訝な表情をしていたのでしょう。
「なんでそんなことをしているのか、って顔だな。
 簡単に言うと、ここがこの旦那の第二の故郷って奴なんだよ」
「………え―――――――っ!」
 驚きの余り顎が外れる、そんな表現が正にぴったりな、意外な事実を知りました。
 ここが、パパの第二の故郷って…寒くて、辺鄙で、すごい場所ですよ?ここは。
 かっかっか、と笑うおじさん。
「驚くのも無理はない、普通のヒューマンじゃこんな所になんか住もうなんて考えやしないからな。
 ま、旦那もなんだかんだ言って40年以上も俺達一族と一緒に暮らしていたんだし、それだけ長く住んでれば縁の深い連中だって沢山出来るさ。
 そうさな、俺なんざガキの時分に、随分旦那に遊んでもらったクチの人間だぜ?
 そんな付き合いのある連中が一杯いる街に長く暮らしていたって考えれば、そこは立派に第二の故郷だろ?」
 なるほど、確かに第二の故郷と言っても過言じゃないですね、それは。
「それに、そういう連中は、旦那の事を色々とよく知ってるしな。
 おちびさんも知ってるたぁ思うが、旦那は歳をくわねぇ。
 そんな旦那が例え何処かに住み着いたとして、周囲の連中に普通のヒューマンじゃないって判ると面倒だから、外じゃ転々を住居と職を変えなきゃならねぇんだ。
 その分の苦労を外で何とかしようとするよりは、馴染みの多い、辺鄙な辺境のこの街で暮らしたほうがよっぽど楽なんだとさ。
 ま、ここ数年は訳あって街から離れているけどな、それでも気疲れしたりとかで外が嫌になると、物資を運ぶって理由を付けちゃ時々ふらっと戻ってきて、息抜きしていくのさ。
 な、旦那?」
「お前も言うようになったな、え?」
 両腕を組んで、懐かしそうな顔でそう答えるパパ。
「そりゃそうだ、俺だっていつまでもあの頃みたいなガキじゃいられねえよ…
 もうすぐ初めての子供が生まれるんだ、気合が入るってもんじゃないか」
「そうか、やっと子供が出来たか……おめでとう」
「ありがとよ、旦那。それよりも、生まれたらガキの顔を見てもらわねえと。
 この歳までできねぇなんて思わなかったからな、もう待ち遠しくて………」
 パパとおじさんの話は10分ほどで終わりましたが、その間、私は黙ってそのやり取りを聞いていました。
 パパがこんなに楽しそうに話すのを見たのは初めてです。
 いつもは見せない表情を見せるパパ。
 私はそれらを忘れないように、記憶領域にしっかりと保存しました。
 ―――つづく―――

 

21 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/01(水) 16:45:22.25 ID:JodLyqzn
ホス
ゆっくり読む時間が欲しい;

 

22 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 22:06:30.12 ID:bsWmfh5u
ども、パパと412作者です。

臨時メンテで妙な空き時間が出来ちゃったので投下します。
暇つぶしになれば幸いです。

 

では、ご拝読くださいませ。

 

23 名前:復讐者は姉妹と共に(15)[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 22:07:20.66 ID:bsWmfh5u
「いやいや、お待たせしましたな」
 防寒服を脱いだおじいさんがやっと戻って来ました。
 管理室にいたビーストのおじさんは、話が終わると「交代の時間だから」と言って、5分ほど前に部屋を後にしていました。
「気にするな、こっちも勝手に邪魔しているんだ」
「そうは言いますが、そろそろ昼時…うん?」
 おじいさんが鼻をひくひくさせて、何かの匂いを嗅ぎとったようです。
「いい匂いがしますな…」
「だろうな。じいさんに昼飯の差し入れを持ってきたんだ。向こうに用意してある」
 部屋の隅にある小さな休憩スペースに、三人分の昼食が用意してあります。
 おじいさんが来る前に、私が折り詰めとシチューを温め直しておいたのです。
 食欲をそそる匂いが、ここまで漂ってきます。
「さあ、冷めない内に召し上がって下さい、おじいさん」
 おじいさんを誘って、三人だけの昼食会です。
 広げられた料理の数々におじいさんは喜んでいましたが、シチューを口にすると、驚きの表情を浮かべました。
「こ、これはまた懐かしい味じゃ…」
「そうだろうと思ったよ」
 パパは既に、深皿によそったシチューを空にしていました。
「どうだい、久々に食うと美味いだろ?」
「ええ。ですが御大は、このレシピを忘れた、と以前に言っとりましたな?」
 確かに「久々に食べたい」と言ってましたけど、それは初耳です。
「ああ、確かに。
 俺が教わったレシピにあった肝心の隠し味をすっかり忘れちまって、この味が再現出来なくてね」
 そっか、ママがパパにこのシチューのレシピを教えたんだ。だから、ママのレシピを知っている私に頼んだのね。
 もっと早く言ってくれれば、いくらでも作ったのに。
「今回のこれは…」
 パパが、隣に座って食べていた私の頭をぐりぐりなでました。
「シチューも含めて、全部こいつが作ったんだ」
「あう、痛いですぅ」
「あ、すまんすまん」
 撫でるのに手加減はしているのでしょうが、ちょっと強すぎです。危うく、食べかけのサラダを取り皿からこぼす所でしたよ、もう。

 

24 名前:復讐者は姉妹と共に(16)[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 22:08:07.63 ID:bsWmfh5u
「ほうほう、この料理全部をですかの。お嬢ちゃん、いい腕をしとるの」
「ありがとうございます」
「どれも程よい味加減じゃし、量も適度じゃしのぅ」
 あっという間に全ての料理は平らげられ、私は食後のハーブティーを淹れました。
「いやいや、美味かった」
 おじいさんは満足そうにお腹をさすっています。
「このシチューを食べると思い出しますな、ここの再建を始めたあの頃を。
 辛く厳しい時代じゃったが、活気があってな。
 事故や怪我も絶えなったが、散り散りになっていた部族の子孫たちが戻ってきてくれたし、毎日がお祭りのような雰囲気じゃったのぅ。
 人が増えて皆がひもじくなってくると、少ない食材を工面して、御大がよくこのシチューを作ってくれなすった。
 あの当時、わしらが何とかやってこれたのは、このシチューのおかげなんじゃよ」
 空になった深皿を懐かしそうに眺め、おじいさんはそう話を締めくくりました。

 

 ―――極北の街、西区画。旧市街地保存エリア―――

 

 食事も終わり、パパの用事も済んだので、おじいさんにお別れを言ってから観光街へ連れて行ってもらいました。
 真っ先に連れて行ってもらったのは、歴史資料館です。
「お前、渋いな…」と、パパ。
 普通は、氷河のドーム広場とか、極地にしか住まない原生生物の観察エリアとかに行くのが主流で、殆ど来館者がいない施設だという話です。
「おじいさんの話が気になったからです」
 館内に入ると、お客どころか誰もいません。
 受付すらコンピュータ制御の、無人施設です。
「パパは、何故ここで暮らしていたんですか?」
 館内を移動しながら無人なのを確認して、私は話を切り出しました。
 休憩スペースに設置されているベンチにまで来ると、パパは無言で座り、私もそれに倣いました。
「一言で言えば、贖罪だな」
「贖罪?」
「ああ」
 パパが視線を泳がせ、何かを見つめました。
 私も視線を追い、それを見ます。

 

25 名前:復讐者は姉妹と共に(17)[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 22:08:46.69 ID:bsWmfh5u
 再開発初期の頃の映像が、いくつも流れているモニターが置かれていました。
「ここの部族は、500年戦争の終末期に一度滅んでいる。
 原因は不明とされているが、そうじゃない。
 ここを滅ぼしたのは…」
『そう、君だったねぇ』
 モニターに割り込みが掛けられて、痩せこけて顔色の悪い、見たこともないヒューマンの研究員風の男が写りました。
 音声は、館内放送のスピーカを使っています。
『インフィニットと呼ばれるようになった君が滅ぼしたビーストの部族は、いったい幾つになるのかね?
 私が知っている限りでも10は下らないよ。
 中でもここは、最大級に破壊された街だったね。
 戦争終結後、君は単身ここに戻り、現在は資料館と呼ばれているこの建物を拠点に復興作業を始めた。そうすれば自分の罪が赦されるとでも思ったのかい?
 まあ、そんなことはどうでもいい。
 今の我々の目的は、君と、そこのパシリだからね』
「イルミナス、か」
『ご名答!』
 ヒッヒッヒッヒ、と品の無い笑い声が響きます。
「今更俺に、何の用だ。それに、こいつに用があるというのも聞き捨てならんな」
『なぁに、簡単な事だ。
 現在の技術を使って君を今一度研究し直す、それだけだ。
 そっちのくずパシリは元々我々の物、返してもらうだけの話だが、問題があるのかい?』
「ある。どっちもお断りだ」

 

 ドシュッ!

 

 一体何時抜いていたのか、左手にはクッポ・ウピンデが構えられ、真横に向かって撃ち込まれていました。
 そちらを見ると、2体のGH-411が肩口を撃たれて感染状態で転がっています。
 クロスボウにセットされているのはヤック・メギガ20LV。
「すまんな」
 ぽつりとパパが呟き、もう一度撃つと、二人は活動を停止しました。
『くずパシリが2体程度じゃどうにもならんね。やっぱり、残り9体を一度に差し向けようかな?』

 

26 名前:復讐者は姉妹と共に(18)[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 22:09:24.25 ID:bsWmfh5u
「好きにしろ。この程度じゃ、コルトバにも劣る」
 クロスボウをしまうとベンチから立ち上がり、動かなくなった411を両方とも抱えると、出口に向かおうとします。
『まあいいさ、どうせ今はこの街からは出られないんだ。ゆっくりやらせてもらうよ』
 唐突に、モニターが元に戻りました。
「行くぞ、ロザリオ。中央地区なら、連中も襲えないからな」
「ま、待ってくださいぃ!」
 あわててベンチから立ち上がり、パパの後を追いました。
 大股で歩くパパは結構早いから、気をつけないと置いてかれるんですよね。
「ところで、その二人はどうしますか?」
 パシリを二人も抱えていては、戦闘になった時に対処できません。
「ここに置いていく」
 パパはそう言うと、資料館ロビーの入り口付近に設置されている案内用ビジフォンの脇、何も無い壁に無造作に手を当てました。
“個体認証完了、ハッチを開放します”

 

 ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン、ゴン

 

 壁の一部が床に沈み、隠し部屋が現れました。
 うわなにそれ、ほとんど詐欺ですよこれは。
 自動で照明が点くと、見える範囲の設備は型遅れですが、中は普通の居住スペースです。
「奴が言ってたよな、ここの建物を拠点にしていた、って。
 つまりここが、昔の俺の家って訳だ」
 慣れた様子で中に入って行くパパに付いて行くと、居間らしき部屋に二人を横たえます。
 ここでやっと、この二人をちゃんと見ることが出来ました。
 まあ、411なので帽子とカラーリング以外は殆ど違いませんが、聴覚ユニットだけが少し大きめです。
 おまけに、激しい損傷といものがありません。
 二人とも、右肩と左胸の鎖骨のやや下辺りに小さな銃創…
 あ、鎖骨の下って、エネルギー分配・制御ユニットがある場所。ここが損傷したら、躯体各部がバランスを崩した出力エネルギーで自壊しないように自動停止します。 
「…そうなるように狙った訳じゃない、偶然だ」
 パパが、むっつりとした表情で言いました。
「俺はこいつらを『殺す』つもりで撃ったんだ」

 

27 名前:復讐者は姉妹と共に(19)[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 22:10:04.75 ID:bsWmfh5u
 でも、これならこの二人は記憶の障害も無く、また動けるようになります。
「パパ、ここに置いて行って平気なんですか?」
「問題ない。俺以外には普通に開けようが無い」
 すごい自信ですが、どこにそんな根拠があるのでしょう?
「この部屋の管理コンピュータは、俺が持ち歩いているんだから」
「は?」
「入り口にあるのは、ロックシステムだけ。俺という鍵と管理コンピュータを揃えないと、ここの開閉機能は動かないように最初から作ってあるんだ。
 侵入したいなら、ロック機構を解析するとか分解するよりも、壁や床、天井をぶち破ったほうが早い。
 もっとも、構造体は軍用シェルターを再利用したものだから、壊すのも面倒だけどな。
 大体、この世に一つしか無い特殊なコンピュータに合わせて作ったロックシステムだってのに、それを正常に機能させるコンピュータを改めて作るのがどんなに馬鹿馬鹿しいか、お前でも分かるだろう?
 おまけに、その制御プログラムはともかく、キーは俺の生体情報とコンピュータのデータなんだぞ?全部再現するのにどれだけの手間を必要とするか、俺も見当が付かん」
 なるほど、例え必死になって中に入ったとしても、あるのはただの部屋。これじゃ確かに、内部を知ってる人間は誰も入ろうとは思いませんね。
 おまけにこの施設、というか町全体が地下空間に作られているから、空調も何もかも機械制御式。管理するにはコンピュータが必要だし、無ければ住む事も出来ないと言う訳ですね。
「さて、と。そろそろ行くぞ?」
「は~い」
 資料館を出ると、大して行かないうちにパシリの姿がちらほらと見かけれます。
 確認できた数人は全員が上位機種です。
「バレバレだっての。スリーマンセルで動くPMなんて、目立つだけだって」
 パパが小さい声で私にだけ聞こえるように呟きます。
 なるほど、言われてみれば確かにその通り、一定の間隔で、3人のパシリが入れ替わりながら追跡してきます。
「よし、人ごみを利用して、ちょっとまくぞ」
「はい」
「ついでに遊戯施設にでも行くか」
 この事態にもかかわらず、未だ暢気な台詞を吐くパパ。
「だいじょうぶかなぁ?」
「なに、今すぐに襲わないって事は、外のブリザードが収まるまでは何も仕掛けてこないって事だ。
 騒ぎになっても、連中自身がここから逃げ出せないって意味だしな」
「ブリザード?!」
 別段インフォメーションで確認したわけでもないのに、何故分かるのでしょう。

 

28 名前:復讐者は姉妹と共に(20)[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 22:12:27.27 ID:bsWmfh5u
「あの妙な男が言ってたろ、『どうせ今はこの街からは出られないんだ。ゆっくりやらせてもらうよ』って。
 ここは、外部との移動手段がフライヤーしかないんだ。
 そして、あの台詞。
 それを考え合わせれば、容易に想像がつくのさ」
「なるほど、長年住んでたからこそ、すぐに分かったのですね?」
「そういう事だ」
 中央区画の氷河ドームが近づいてきたせいか、人通りが多くなってきました。
「はぐれた時の合言葉でも決めるか」と、パパ。
「そうですね…」 と、私も口では言ったものの、適当なものが思いつきません。
「深く考えなくても平気だ。…『パパ』と『ロザリィ』でいいだろ」
「え?人前で『パパ』って呼んでいいんですか?」
 これにはちょっと驚きました。
 普段は『絶対に言うな』って言うのに、今日は逆に『呼べ』って。
「まぁ、目立つだろうが、これほど確実な事もないだろ?
 大体、お前の場合は俺を呼んだその後に必ず飛びついてくるしな。
 それに…」
 ちょっと寂しいそうに微笑んで、私を見下ろすパパ。
「お前の愛称はあいつと俺とお前しか知らないからな、間違えようが無いさ」
「うん、そうだねパパ」
 私もパパも自然に手を伸ばし、二人は手を繋ぎました。
「さて、なにから行くか」
「アイス・スライダー!」
「あの長ぁ~い、氷河の中を滑るチューブ状の滑り台か!」
「うん、面白そう!」
「専用のそりに身長制限無かったか?」
「大丈夫、ちゃ~んとしらべたもんw」
「マニアックだなぁお前…」
 それからほんの2時間ほどの間、私とパパは追っ手も忘れて遊びました。
 戦いの無い楽しいひと時。
 毎日がこんなに穏やかならいいのに…

 

29 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 22:15:16.11 ID:bsWmfh5u
投下完了です。

 

次回はたぶん日曜日辺りだと思います。

 

30 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/05(日) 07:04:27.16 ID:ocFwMqZt
フィールドだけじゃなく街やゴールロビーにもパシリを連れて行きたい、そう思ってるのは俺だけじゃないはずだ・・・

 

イルミナスじゃどんなパシリ達が追加されるんだろなぁ、パシリと遊べるゲームなんかもあればいいんだが・・・w

 

31 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/05(日) 18:36:17.65 ID:QT18HN2G
だが待って欲しい
そんな事になっては余りにパシリが被りまくってしまう
そこで、パシリの個人カスタマイズを要求したい
ストレートロングの450とかとか(*゚∀゚)

 

32 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/05(日) 20:20:56.92 ID:zEmQd/1c
確かに、街中を連れて歩ければ面白いだろうなぁ。
連れ歩けなくても、パシリのカスタマイズはやってみたいね、個性でるし。
現状じゃ、画一すぎて、つまらんのは確かだしね。

 

ども、パパと412作者です。

 

本日も続きを投下させて頂きます。

 

では、ご拝読くださいませ。

 

33 名前:復讐者は姉妹と共に(21)[sage] 投稿日:2007/08/05(日) 20:22:15.52 ID:zEmQd/1c
「あ、あれ?妙な所に来ちゃったけど…ここ、何処?」

 

 次の遊戯施設に行くのにパパと一緒に歩いていて、激しい人ごみであっという間に通信範囲外まではぐれてしまいました。
 パパと合流したかったけど、これ以上人波に流されたくなくて、とにかく歩きやすい所を選んで歩いていたら、中心部からかなり外れの方に来ちゃったみたいです。
 おまけに、どう見ても危なそうな裏路地です。
 裏路地と言えばまだ聞こえがいいのでしょうが、要は掘り抜きで岩肌がむき出しの細い地下道と言う場所です。
 パーティ用の通信機器範囲からはとっくに外れてしまっているし、それより狭い『テレパス』の有効半径からも外れています。

 

「へっへっへ、かわいいお人形が歩いているぜぇ~」
 更に細い、薄暗い路地からそんな声が聞こえて来ました。
 声の感じからすると、どうやら大人のようですが…
「へぇ、ほんとだ。ご主人様からはぐれてしまった、て奴だなぁ」
 いひひひひ、と品のない笑い声が聞こえてきます。
「どれ、人形って奴はどんな声で鳴くのか、試してみようや」
「いいねぇ、そりゃ」
「うけけけ、かまうこたねぇな、そこら辺へ引っ張り込んで剥いちまえ」
「そうだな、それがいいや」
 声のする路地は二つ、両方からいかにもゴロツキ風の男性ビーストが4人、出てきました。
「金も無くて困ってたが、おっきする息子を慰めるのにいいものが転がり込んできたぜぇ?」

 

 そ、それって、いわゆる貞操の危機、という事ですね?

 

 にじり寄ってくるゴロツキさん達。

 

 こ、困りました、パパが『PMが人間に武器を向けるのはご法度だ』と言っていましたが、こんな事態でもダメなんでしょうか?

 

 ゆっくりと詰め寄ってくるゴロツキさん達。
 得体の知れない恐怖感から、躯体がすくんで動きません。
「ほ、こいつ、生意気にセイバーなんて出してるぜ?」
「んだよ、ガーディアンズのパシリかよ」

 

34 名前:復讐者は姉妹と共に(22)[sage] 投稿日:2007/08/05(日) 20:22:50.00 ID:zEmQd/1c
「ちょうどいいぜ、いつだったかのお礼をこいつに返せるってもんだ」
 反射行動でレイピアを引き出して構えましたが、切っ先が震えています。
「こいつ、よわよわだぜ?震えてやがんのw」
「けけけ、ほんとだ、ダメダメなパシリだぜ。これじゃ主人てのもたかがしれてんな?」
「だなw」
「遊んだ後に、切り刻んじまおうぜ?」
 下品な声で笑いあうゴロツキさん達。

 

 パパのことを馬鹿にしている。怒りたい!でも、すごく怖い…

 

「はっ、隙ありだぜ!」
 右手を蹴り上げられ、レイピアが飛ばされます。

 

 怖くて躯体が動かない。パパ、助けて!!!!

 

 恐怖に目を閉じた瞬間、素手が肉を撃つ音が響きました。
「たかが人形相手に大の男が4人がかりとは、ビーストの質も落ちたな」
 え、誰?
 目を開けると、筋肉の壁が私とゴロツキさん達の間に立っていました。
 見上げると、モトゥブの服に包まれたごっつい筋肉の壁の先に、金髪が短く刈り込まれた頭と先端の少しちぎれたビースト特有の右耳がかろうじて見えます。
「けっ、俺たちの邪魔をするんなら、容赦しないぜ!」
 筋肉の壁の向こうでフォトン武器が起動する音が4つ聞こえます。
「ふん、その程度の腕と武器では、わしの肌が焦げるかどうかも怪しい!」
「なんだとぉ?!」

 

 ビュビュッ、ビュン、ビュン!

「やはりな、その程度か!男の風上にも置けん下劣ども!!我が拳を受けるがいい!!」
 目の前から滑るように筋肉の壁が動き、四度の打撃音がしました。

 

35 名前:復讐者は姉妹と共に(23)[sage] 投稿日:2007/08/05(日) 20:23:34.85 ID:zEmQd/1c
 お、おっきなビーストさんだぁ…

 

 私を助けてくれたのは、人間としてはほぼ最大身長に近い男性ビーストさんです。
 その攻撃は、一発で一人を熨してしまっています。というか、やりすぎです。
 4人のゴロツキさん達は、危険な量の血を吐き出しています。
 おそらく腹を殴りつけられたのでしょうが、胃袋が破けているのでしょう、地面に這い蹲って吐血を続けています。
 襲われたのはともかく、私は彼らが死ぬ事は望んでいません。
 あわてて駆け寄って、ゴロツキさん達にレスタをかけます。
 とりあえず吐血は止まりましたが、医者に治療してもらって安静にしていないと命にかかわるでしょう。
「…ほう、敵に情けをかけるか。こんなクズどもにかける情けは塵芥にも劣るが、助けた本人が望むなら仕方ない。
 人形、怪我は無いな?」
 感謝と怒りと理不尽さがない交ぜになった感情が湧き上がり、それに吐き気を覚えたまま、助けに入っくれた男性ビーストさんに振り返りました。
「はい、ありがとうございました」
 すごい棒読みでお礼を言いました。
 良く見れば、男性ビーストさんも身体に傷を負っています。
「ぬ、傷は気にするな。唾でもつけておけば治る程度の浅い傷だ」
 私は無言で、この人にもレスタをかけます。
「身体を盾にするほどの事ではないと思いましたが?」
 私の淡々とした言葉に、何がおかしいのか大声で笑い出しました。
「なに、無茶と我慢が戦士の仕事、何かを守るために身体を盾にするのは当然の事だ」
 そう言って笑いを収めると、私をひょいと持ち上げて腕に座らせました。
「とりあえず、路地の出口までは送ってやろう。そこから先は、迎えを呼ぶがいい。
 わしにはやることがあるのでな」
「やること、ですか?」
「…知りたいか?」
 私は少し迷って、それでも首を縦に振りました。
 理由はありませんが、聞いておく必要があるように思えたのです。
「ならば、語ってやろう。…わしが死んだら、知る者もいなくなるしな」
 厳つい顔に険しい表情を浮かべ、ビーストさんが淡々と語りだしました。
「わしは、かつてのこの街に暮らすビースト部族の長だった…」

 

36 名前:復讐者は姉妹と共に(24)[sage] 投稿日:2007/08/05(日) 20:24:26.54 ID:zEmQd/1c
 私の頭の中には色々と疑問が浮かびましたが、それを聞くのが躊躇われる雰囲気なので、頷いて続きを促しました。
「その頃は、戦後に500年戦争と呼ばれた大戦の末期で、一族郎党も色々と戦争に明け暮れていた時期でもある。
 そんな折、わしは隣の部族を助けるために数日の間、部下を率いてこの街を離れた。
 救援が間に合って隣の部族は何とか助かり、わずかに生き残った部下と意気揚々と帰ってきた」
 ビーストさんからすごい音の歯軋りが聞こえました。
「だが、帰り着いた街は既に廃墟と化していたのだ。
 廃墟を捜索すると、そこにたった一人だけ生き残っていた少女が、こう言った。
『いくら倒しても起き上がるヒューマンの戦士に、部族の戦士たちは倒されて、誰もいなくなった』と。
 数日、たった数日の間に、わしの故郷は、部族は、一人のヒューマンの戦士に滅ぼされてしまったのだ。
 わしは復讐を誓った。部族を、故郷を滅ぼしたそやつを必ずこの手で仕留める!と」

 

 いくら倒しても起き上がるヒューマン、それってパパみたい…いえ、きっとパパなんだ。
 でも、ここで言うわけにはいかない。喋ったら、私とパパの事まで分かっちゃう。

 

「…わしはすぐさま捜索を行なったが、そのヒューマンの戦士は見つからなかった。
 月日は瞬く間に流れ、1年が過ぎ、2年が経ち、3年を超えた。
 そんな折、不思議な連中がわしの所へ来て、こう言った。
『お主の探す相手は、ヒューマンの身でありながら遥かに長く生きる輩だ。
 我らも彼奴を探しているが、既に見失って3年が経っている。
 悲しいかな、限りある命の人の身に、時間は味方をしてはくれない。
 だが、お主が真に復讐を望むなら、我らが手助けしよう。
 彼奴を我らが探し、その間はお主を眠らせて、時が来れば目覚めさせよう』」

 

 もしかして、ヒューマン原理主義を唱えるイルミナス?
 それともイルミナスの中の一派であり、パパたち『黄昏の一族』を生み出したヒューマン至上主義者?
 どちらにしろ、怪しい連中だということに違いはありません。

 

37 名前:復讐者は姉妹と共に(25)[sage] 投稿日:2007/08/05(日) 20:25:10.36 ID:zEmQd/1c
「…流石に普通は不審に思うだろうが、わしはそれでもかまわなかった。
 藁にもすがる思いで、俺は連中と手を結んだ。
 いかにも不審な連中だが、不思議な事に約束が破られた事はない。
 実際、これまでにも何度か情報が手に入り、今までに何度か目覚めたが、詰めが甘くて結局はダメだった。
 次の機会を待つ為に眠る事で未来に渡れるが、それでも時間が限られている。
 わしがこの戦闘力を維持したまま眠れるのも、肉体年齢を考えればあと数度が限界………
 それまでにはなんとしても見つけ出す。
 そして、絶対にわしの手で復讐を、そやつとの決着を着けたい!
 今も、昔も、それだけだ」
「…でも」
 私は自然と口を開いていました。
「もし、復讐を果たせなかったら?自分が倒されてしまったら?その相手が見つからなかったら?死んでいたら?
 あなたはそれでもかまわないのですか?」
 ビーストさんは、むっつりと黙り込みました。
「…………そうさな」
 ゆっくりと、言葉を選びながら、ビーストさんはその決意を口にします。
「殺しあうのが戦士の宿命。
 俺は戦士として、部族の長として、滅びた部族の復讐を誓い、そやつを倒すことだけを生きがいにしてきた。
 だが、どんな理由であろうとも、相手に刃を向けるということは、己が死ぬことも覚悟しているということだ。
 だから、例えそやつとの戦いに破れ、復讐が果たせずそこで死んだとして、本懐を遂げられなかったことに未練はあっても、殺されたことに恨みを抱く気は無い。
 もし、戦士として生きている間に出会うことが出来なければそれも天命、受け入れるしかあるまい。
 それに、死んだ相手に復讐は出来んし、死者を辱める趣味はない」

 

 この人、最初から死ぬ覚悟で復讐を誓っていたんですね。
 一度は滅びた故郷の為に、もう戻らない部族の民の為に、復讐を誓う。
 それに、誓いが果たせない時は全てを割り切れる、強い心を持ってる。
 私怨かもしれないけど、決して悪い人じゃない。
 だから、パパには会って欲しくない。
 既に終わった戦争の為にこれ以上誰かが死ぬ必要なんて、あってはいけない。
 あっては、いけないんです…

 

38 名前:復讐者は姉妹と共に(26)[sage] 投稿日:2007/08/05(日) 20:26:15.64 ID:zEmQd/1c
「…さて、ここまで来れば問題ない」
 気がつくと、人通りの多い普通の道が目の前にありました。
 話をしながら、だいぶ移動していたようです。
 ビーストさんは道を背にして、私を下に下ろします。
「ではな、人形よ、主の所まで帰るがいい。
 わしは、行かせて貰う」
「ありがとうございました。お別れの前に一つだけ」
 私はビーストさんを呼び止めました。
「なんだ、人形」
「私は人形ではなく、GRM謹製パートナー・マシナリー、通称パシリと呼ばれるモノです。
 タイプGH-412、機種型式GSS998-B5、個体ロットPMGA00261C5D7-B5、識別呼称をロザリオ・ブリジェシーと申します」
「人形ではなく、パシリか…分かった、次からはそう呼ぶことにしよう。
 名乗られたからには名乗り返すのが礼儀だが、わしは名を捨てた身だ。
 すまぬな、ロザリオとやら」
 軽く頭を下げると、ビーストさんは人ごみにあっという間にまぎれて消えてしまいました。

 

 その後、間も無くパパと合流できましたが、わざわざ危険な所に迷い込むな、と、がっつり怒られました。
 でも、バッテン3個はひどいです…私が悪いわけじゃないのに…

 

 ―――つづく―――

 

39 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/06(月) 22:19:23.36 ID:P/UkyFoI
はじめに謝っておきます。
パパと412作者さん、すいませんでしたァー!

 

というわけで、人様のキャラとのコラボ、しかもミステリものに初挑戦です。
設定とか頭に入りきっていないので違う部分があるかもしれないのはご容赦を…

 

40 名前:誰も裁いてはならぬ 1[sage] 投稿日:2007/08/06(月) 22:20:10.91 ID:P/UkyFoI
○月×日 午後2時 ガーディアンズ本部 大会議室

 

(ざわざわざわざわ…)
カンッ!
「静粛に!これより、本日の審議を始めたいと思います」
「検察側、準備完了している」
弁護側、準備は…えーと、いいような気がしないでもないです。
「ずいぶん自信のなさそうな物言いですね…弁護人はもしかして初めてなのですかな?恥ずかしがらずに出てきてください」
は、はい…隠れているわけではないのですけど、台に背が届かなくて…
「ふっ…こんな弁護人しか呼べんとは、被告人をそのまま鏡映ししているかのようだな。3秒で終わる審議になりそうだ」
3秒では証言も終わらないと思います、検事。
「本件の担当は御 ○ 検 事と、弁護人…ん?なんですかこれは!GH432!?パシリではないですか!」(ズバーン!)

 

―パシリチャレンジ 裁判沙汰に巻き込まれてみよう―

 

みなさんこんにちは、荒ぶる戦乙女のGH432です。
その方がきたのは2日前。主はお菓子を食べながらネコノ巫女ンという題名の紙でできた旧時代の記録媒体『書物』を読み、その横でわたくしはふらふらぼけーっとしているジャッゴの置物にしがみついて遊んでいたところでした。
どうやっているのか知りませんが、主のマイルーム『席のある部屋』は、どうしようもなくなって救いを求めるなどの理由がある者が導かれるようになっています。
だから何かまたややこしい依頼がくるのだろうとは思っていたのですが…
その方は、裁判の弁護を頼んできたのです。誰も頼める人がいなくて、途方に暮れた帰り道だったと。なんとなく入ってきただけの店の主人に頼むのも気が引けるが、なんだか言いたくなってしまったのだと。
しかし依頼者の話が終わった瞬間、主は即答しました。
「やだ。私、バルドルのとこの真似ごとなんかしないもんね。好きにやらせてればいいじゃない」
バルドルって誰ですか…それよりも主、かわいそうですよ。愛って何だと聞かれればためらわないことだというのはわかりますが、光の速さで断られると涙目にもなりますよ…ちょっとくらい助けてあげませんか?
ちょっと上目遣いで首をかしげてみせます。これぞ必殺のおねだり技『コビ・コビ』、いっぺん試してみたかったのです。しかしこれがとんでもないことにつながろうとは、このときは思っていませんでした。
「ふーん、そんなになんとかしてあげたいんだ?ふっふっふっ」
何かまた面白いからといって妙なことを考えついたような笑みがわたくしをのぞき込みました。逆光になっているのがなんか怖いです主…

 

41 名前:誰も裁いてはならぬ 2[sage] 投稿日:2007/08/06(月) 22:21:13.00 ID:P/UkyFoI
そういうわけで、わたくしは一人で弁護人をつとめることになったのです。
無茶は毎度のことで、主はわたくしを導いてくださるだけでなく自主性を認めて七難八苦を与え成長させてくださるのですが…
しかし、戦闘能力には多少の自負があっても全然役に立たないわけで、今回ばかりはまったく自信がありません。
弁護の仕方を知らないかと知り合いすべてに伝言ゲームで聞いてみましたが、おいしいスパイシアの作り方がわかったくらいでした(これはこれで役立ちそうですが)。
気休めにロッポー・ゼンショという法律関係のディスクを食べておきましたが、こんなことでまともに弁護できるのでしょうか。不安です…もぐもぐ。

 

現実逃避をしていても仕方ありませんね。話を戻しましょう。
よっ、こい、しょっと。
はあ、子供用の椅子を用意してもらってようやく台の上に顔を出せました。こういうものはパシリ用も作ってほしいものです。
「これはいったいどういうことですかな、御 ○ 検 事」
「裁判長、被告には弁護を申し出る者はいなかった。藁にもすがる思いで被告はこのパシリに弁護を頼んだのだ。許してやってほしい。あと私の正式な名前は御 ○ 検 事だが、呼びにくいならスペースはつけなくてもかまわん」
それはどうも、おまる検事。
「誰がおまるだ!実名さらしを避けるために伏せ字にしただけだ!」(ズバーム)
いいじゃないですかかわいくて!わたくしなんかGH432と十把一絡げ扱いですよ!(バシィッ)
サイバンチョ「二人とも静粛に!ともかく御○検事、冒頭弁論をお願いします。ちなみに法廷記録にも残しますのでこれから発言の前には人物名が入ります」
オマル「いいだろう…って裁判長も私をおまる扱いかッ!」
432「わあ、初めてのかぎかっこつき発言ですね。ちょっとドキドキいたします」
傍聴席に目をやります。主もいらっしゃるはずです…あ、あそこに!何かプレートに書いておられます。掲げたプレートには、なになに…
『それは愛ゆえに』
…なんかちょっと勇気がわいてきました。聖なるかな、聖なるかな。
オマル「おほん…今回の事件は殺人事件、それも世に出るぶんには初めてのケースだ。これからの審議はこれからのパートナーマシナリーの扱いを大きく変えることになるだろう」
サイバンチョ「よろしい、では事件の説明をお願いします」
オマル「今回殺されたのはヒューマン男、名前はとりあえず『ご主人』としておく」
432「な、なんですかそのいい加減な呼び方は!?」
オマル「パシリスレの都合というやつだ。物語上はきちんと名前で呼んでいるものと考えてくれてかまわない」
432「そうなんですか…なんか納得しちゃうようなしないような」
オマル「そのご主人が彼の部屋でバラバラ死体になっていたのだ。通報を受けガーディアンズ機動警護部が到着した時には、死体はなくなっていて現場には被告人だけがいる状態だった。これだけでもすでに明らかだと思うがね」
そうなのです。これだけ決定的な状況ではあるのですが、被告人は自分は絶対にやっていないというのです。
本来弁護士は確定した罪に対しての刑の軽減を目的とするはずですが、この場合は罪状そのものを覆さなくてはならないのです…自信はないですがやるしかありません、愛と正義の名のもとに!

 

42 名前:誰も裁いてはならぬ 3[sage] 投稿日:2007/08/06(月) 22:22:25.64 ID:P/UkyFoI
サイバンチョ「それでは、尋問をお願いします」
オマル「被告、職業と名前を言いたまえ…もっとも、聞くまでもないだろうが」
ロザリオ「GH-412、ロザリオ・ブリジェシーです…」
サイバンチョ「なんと!今回の被告はパシリなのですか!」
オマル「その通り。まずはこれの言い分を聞いてもらおう」

 

証言開始(シャキーン)
ロザリオ「わ、私はご主人様を殺してなんかいません!
たしかにあの日あの時間には部屋にいましたけど…
そもそもご主人様が死ぬはずがないんです!」
……………
サイバンチョ「それでは異例なことだとは思いますが、弁護人はパシリのパシリによるパシリのための審議をよろしくお願いします」
裁判長…誰がうまいこと言えと(ry
432「ロザリオさんの言い分はご主人が死んでいないということですけれど、検事、殺人が起こったという証拠は?」
オマル「現場写真を見てほしい。床には大量の血痕が残り、何かを引きずったあとと男ものの靴跡が残っていた」
432「血痕というのは本当に血液だったのですか?」
オマル「それは間違いない。成分検査の結果そう出ている」
なるほど。それはまず大前提なのですね。
オマル「死体は未だ発見されていないが、犯行時刻、部屋にはパシリがいた。凶器は現場から発見されていないが、パシリは斬れる武器を持っているし、死体処理も容易だろう…食べてしまえばいいのだからな」
一理ありますね。たしかにパシリをよく知らない人にはそう思えるのかもしれません。
オマル「他人のパシリにものを食べさせることはできない。他の侵入者による犯行で、パシリに処理をさせただけということはありえないと言っていいだろう」
どう考えてもつっこみどころ満載なんですけど…まあ、やりやすくて幸いです。それに肝心なところで検事さんは勘違いをしています。
思い知らせてあげましょう、パシリはみんな主人が大好きなのだということを!
432「男ものの靴跡というのは明らかにパシリのものじゃないと思いますが」
オマル「死体の処理をするのに必要な作業だろう。犯行をごまかすために主人の靴を足につけて死体を回収したと考えるのが自然だ。実際に足跡は玄関に残されていた血まみれの主人の靴と一致しているし、引きずり気味についた足跡からも説明できる」
432「おかしいですね。先ほど『パシリだから死体は食べて処理してしまった』とおっしゃったでしょう?ならばひきずって外に持ち出す必要がありません。
そもそもなぜバラバラ死体だったということが言えるんですか。死体は残っていないんでしょう?ただ怪我をして血を流しただけかもしれないじゃないですか!」
オマル「これは失礼したな。検察側はそれについて証言をとっている。この事件の第一発見者だ」
432「あう。先に言ってくださいよ…」

 

43 名前:誰も裁いてはならぬ 4[sage] 投稿日:2007/08/06(月) 22:24:07.97 ID:P/UkyFoI
入廷してきたのは、覆面にブーメランパンツのみの姿で刀を持った殿方でした。
オマル「証人、職業と名前を」
ゾーク「ハトーリ・ハン・ゾーク。ニンジャーでござる。ニンジャーは裸が基本でござるが、今回は公の場ということでいつでも脱げるパンツで参った」
432「ニンジャーってなんですか…」(ガビーン)
オマル「ちなみに、レンジャーの間違いではないそうだ。証言能力には影響ないから安心したまえ」
432「それよりこの格好のほうにつっこみましょうよ、おまる検事…」
オマル「おまると呼ぶな!それに証人の格好などは問題のうちに入っていない!そんなこともわからんのか、このド素人がッ!」
432「そういう問題じゃないですから!もうちょっとPSO…じゃない、TPOというものをですね!」
ゾーク「あー、お取り込み中申し訳ないでござるが、そろそろ証言を始めていいでござるか?」
432&オマル「あ、どうぞ」

 

証言開始(シャキーン)
ゾーク「あれはセッシャがガーディアンズ宿舎の天井裏で覗き見をしていたときでござった。
何か大きな物音がして悲鳴が聞こえたので、その部屋の上まで移動して覗いてみたでござるよ。
そこには首と右腕と左足が切られた男の死体が…!
しかしセッシャはニンジャーであるからして、あわてず騒がず写真におさめて通報したのでござるよ」
……………
オマル「そして、これが問題の証拠写真だ」
サイバンチョ「確かに、証言通り切断に至っていますね。顔が見えていますが、この方が被告のご主人なのですかな?」
オマル「その通り。そして彼はこの日から今まで消息不明になっている」
どれどれ…うわ、これは ひどい。たしかにくびちょんぱ状態、これでは助からないでしょう。どうやら死亡したというのは間違いないようです。となるとロザリオさんの証言に嘘が出てくることになりますが…
432「復活させたという可能性は?」
オマル「ギレスタはあくまで戦闘不能を治すためのテクニックだ。首の切断などで完全に死亡した場合は無効、死者が甦ることはない。それを防ぐためにシールドラインがあるわけだが、どうやら外していたようだな」
432「えー?でも生と死を操る我が主は、たとえ大型爆弾で消し飛んだ人でも生き返らせ…」
(ぽこっ)
あいたっ!主に銘菓ニャンポコ詰め合わせ3箱セットを投げつけられました…
『それは秘密にして』
す、すみません…とりあえず裁判長に検事、おすそわけをどうぞ。
サイバンチョ「おお、これはどうも。私も大好物ですぞ、銘菓ニャンポコ!」
オマル「菓子はあとにしたまえ。ここは法廷だぞ。もぐもぐ」
432「そうですね…もぐもぐ。とりあえず死亡は確実として、外部の犯行という線はないのですか」
オマル「そして現場からはパシリ自身の所有する武器以外に凶器は見つかっていない。強いて言うならこのパシリの倉庫の中くらいだ」
凶器はたしかにそうでしょうが…でも、わたくしはそれでもロザリオさんがやったというのは不自然にしか思えません。
オマル「被告はご主人を殺害した後、外部の犯行に見せかけるため被害者の靴を持ってきて死体を運ぼうとしたが、体格の小ささのためうまく運べず、食べて死体を処分した。これが検察側の主張だ」

 

44 名前:誰も裁いてはならぬ 5[sage] 投稿日:2007/08/06(月) 22:25:16.26 ID:P/UkyFoI
432「検事、あなたはパシリのことを何もわかっていらっしゃらないようですね…ロザリオさんにそんなことができるとお思いですか?」
オマル「なんだと?」
432「同じパシリとして主張させていただきます。パシリは主人に害を与えられません!考えてみてください、パシリは思考・行動の制限もキャストに比べて厳しいのです。危険な行動ができるように作られていれば、ガーディアンズでも正式採用などされないはずです」
オマル「………」
何でしょうか?反論してこないですね。なんだか不気味です。
432「それに何よりパートナーマシナリーの名が示すように共に暮らして主人を愛するのがパシリ。一緒に生活をする以上、事故が起こらないよう作られているのです。故障でもしない限りは主人を殺したり食べてしまうなんてことはありえません!」(ドォォォン)
我ながら完璧な論理です。ロザリオさんは明らかな故障といえるような行動も外見もありませんし、これなら動機も犯行の可能性もないことが証明…
オマル「ところがだ。ここに1つの報告書がある」
432「…え?」
オマル「出所は不明だが、事件後に関連文書として見つかったものだ。なお、今までにこれによる事件があっただろうという裏付けはガーディアンズの諜報部でとれている」

 

―― 異能体(ワンオブサウザンド)
PMの中でも能力が非常に高い個体
保有する能力の高さと希少性からからワンオブサウザンドと呼ばれる
また研究室では異能体と呼称する

 

―― 異能体の特徴
その特徴として純粋に戦闘能力が高いだけではなく、独自の能力を有し
それと併せる事で通常では持ち得ない高い能力を引き出している個体が多数報告されている
異能体は基本的に容姿、行動共に通常のPMとに大きな違いは無く外見だけでの判断は困難
異能体の発生条件は明確にされていないが、先天的に欠陥を抱えた個体が特定の条件下で異能体へと『変化』するとされている

 

432「その報告書がなんだっていうんですか!」
オマル(ちっちっちっ)「報告書によれば、このワンオブサウザンドとやらは外見上の判別は不可能だが、欠陥パシリが変化するとされている。故障でもしていない限りはありえないと言ったな?ならば故障していたということだ!」(ドォン)
432「そ、そんな絵空事を!証拠がどこにあるというんですか!」
オマル「犯行が可能だったのはこのパシリのみ、それが状況証拠として存在している。これを否定したければ、証拠を提出しなければならないのはキサマのほうだッ!」(ズバーム)
432「な…なんですってぇぇ――――!?」(ドギュ―――ン)

 

45 名前:誰も裁いてはならぬ 6[sage] 投稿日:2007/08/06(月) 22:26:36.94 ID:P/UkyFoI
まずいことになりました…真偽がどうであれ、ロザリオさんがやっていないという確証が出るか、または真犯人を見たということにならないと確実に有罪判決になってしまいます!
432「どうなんですかロザリオさん!あなたは犯行時刻、部屋を見ていたはずです!そのとき何が起こったのか教えてください!ご主人はバラバラになんてなっていないんでしょう!?」
ロザリオ「そ…それは言えません…」
432「ちょ、そんな秘密だなんてますます怪しくなっちゃうじゃないですか!全部正直に話しましょうよ!」
ロザリオ「だめです、絶対に言えません」
何かご主人にとって知れるとまずいことがあるのでしょう。パシリは基本的に社会や主人に害を及ぼす可能性がある言動はしない…それが裏目に出てしまっています。
疑われてもしょうがないことを言っている以上、誰もがロザリオさんが何かをしたのは間違いないと思っているはず。正直大ピンチです。
困ったときの女神頼み、主よ、お救いください!
『事件の真相→ ※○〒×∀@#×◎&◇×~$』
わざわざ知らない言語で書かないでください!っていうかどうやって知ったんですかー!?(ガビーン)
『ひ・み・ちゅ(はぁと)』
………………(がくっ)
どうしようもありません。主ならば何か手があるのでしょうが、ロザリオさんが正直に話してくれない以上、立証は不可能。打つ手は、ないのですか…。
オマル「潔く諦めるんだな。これだけ決定的な状況だ、無理なものは無理だと理解するがいい。パシリに人権はないし、主人がいなくなればどのみち処分される。キサマが気に病むことはない」
432「…おまる検事に言われたくありません」
オマル「何度もおまると言うな!パシリの分際でキサマっ…!」
432「一言多いんです!そんな性格してるからおまるなんですよ!だいたい証人の覗き見についてはスルーですか検事のくせに!」
サイバンチョ「こ、こら二人とも!法廷の場は喧嘩をするところではないですぞ!」
わたくしとおまる検事の銘菓ニャンポコ投擲合戦が繰り広げられて収拾がつかなくなっている間に、会議室のドアが開きました。

 

46 名前:誰も裁いてはならぬ 7[sage] 投稿日:2007/08/06(月) 22:27:16.26 ID:P/UkyFoI
ゴシュジン「すまん、ちょっと失礼する。うちのPMがこっちにきていると連絡があったんだが、邪魔してないか?」
サイバンチョ&オマル&432「……………………」
え?あれ?写真で見ましたけど…この方、被害者じゃ?
ゴシュジン「ロザリオ、こんなところにいたのか」
ロザリオ「あ…パ、パパぁー!!」
ゴシュジン「おい!人前ではパパと呼ぶなとあれほど…」
ロザリオ「うわああぁぁぁん!怖かったよぅ、怖かったよぅ…」
ゴシュジン「…まったく、しょうがないな」
オマル「こ、これはどういうことだ!証人!」
ゾーク「し、知らないでござるよ!セッシャはたしかにこの男がバラバラ死体になっているところを見て、写真におさめたのでござるからして!」
ゴシュジン「勝手に人を殺すなよ。俺はこの通りぴんぴんしてるぞ」
こ、これはチャンスです!主よ、わたくしはいきますやります!…って、なんかしらんぷりしてるー!?
432「裁判長!これをどう思われますか!」
サイバンチョ「ど、どうもなにも…その、生きているじゃないですか!」(ドゴーン)
432「被害者と思われた方が生きている以上、弁護側はロザリオさんの完全無罪を主張します!」(バシィッ)
オマル「異議あり!事件は確実に起こっていたのだ!その場で死んでいたのがこの男でないとしたら!別人が殺されたのだとすれば…」
ゾーク「あ、それはないでござるよ。写真にも顔がうつってるように、この男以外にありえないでござるからして」
オマル「だがそれでは事件の説明がまったくつかんではないかッ!あの場所、あの時刻で何かがあったのは間違いない!そのパシリがワンオブサウザンドとやらであれば、危険性は明らかだ!」
432「異議あり!今回の法廷は殺人事件の立証の場であり、殺人事件自体が否定されたのならロザリオさんがどうであるかは問題ではないはずです!」
オマル「し…しかし!このパシリは今目の前で『パパ』と叫んだ!通常のパシリでは考えられないことをしている以上、危険なパシリであるか追及すべきではないのかッ!」
432「おまる検事、大事なことをお忘れのようですね。貴方の論には証拠がない…通常のパシリでもすべて説明は可能です!」
オマル「!」(ズビシッ!)
432「ご主人は『人前ではパパと呼ぶな』とおっしゃいましたよね?つまりこの子が『パパ』と叫んだのは、プライベートでご主人がそう呼ぶように命令していただけ…ただの『恥ずかしい趣味』だということです!」(ドッギャ―――ン)
オマル「ぐああああああああああッ!」(ズグラ―――――ク!)

 

(ざわざわざわざわ…)
カンッ!
サイバンチョ「これ以上の審議は無意味なようですね」
432「はい。なんというか、本当に時間の無駄だったというか…」
サイバンチョ「想像の斜め上をいきすぎていささか混乱気味の私には何と言えばよいのかもわからない状態ですが、とりあえず被告に判決を申し渡します」

 

無 罪(ドォォォン)

 

47 名前:誰も裁いてはならぬ 8[sage] 投稿日:2007/08/06(月) 22:27:59.78 ID:P/UkyFoI
○月×日 午後3時 クライズ・シティ 4F

 

「いやー、おもしろかったわ。よくがんばったね、はいこれおやつのパップラドン・カルメ」
どうですか主、愛がアップです!わたくしの力ではないですけど!…あっ 美味しい。
興奮気味に未確認お菓子物体をほおばっていると、ロザリオさんとそのご主人が声をかけてきました。
「全部聞いたよ。君がロザリオの弁護をしてくれたんだな、ありがとう」
いえいえ…わたくしはたいしたことはしておりませんよ。ご主人が帰ってこなければ危ないところでした。
「まあ、『恥ずかしい趣味』はないだろと思ったけどな」
うっ!(ズビシッ!)す、すみません…ああでも言わないと別方面で捕まりそうでしたから…
「ところで…君もあれなのか、ワンオブサウザンド」
ご主人は周囲を確かめるようにしてからささやき声でわたくしに言いました。
そんなわけないじゃないですかー、そんなの本当にあるわけないですし、ないということにしておかないと判決が逆転されかねませんよ。同様の理由で事件当時実際に何があったかも聞かないことにしますね、あはあはあは。
「わかった、追及はしないでおこう」
主も挨拶していただこうと思ったのですが、いつの間にやら姿が見えなくなっています。トイレにでも行かれたのでしょうか?
引き留めるのも何なので、主にもよろしく伝えておくことを約束して別れました。
「はいただいまー」
あ、主!おかえりなさいませ。
さっきロザリオさんのご主人とお話ししてたんですよ。なかなかウィットにとんだ気さくでいなせなおじさまって感じでしたよ。主にもよろしくとのことでした。
「うんうん。すごく不自然な生き物だったけどね。まあ、私も人のこと言えないか」
そうですね、会う人みんなに何着ててもエロいって言われますもんね!
「かなわないなあ、あはは」

 

「パパ…あの子はちがったの?」
「ああ、どうやら違うらしい。行動はあきらかに変だが、行動プログラムには従っているのに故意に抜け穴を突いているというか…プログラムの欠陥と言うには整合性があって説明がつけられない。外部から何か影響を受けてはいるんだろうが」
「不思議ですね…そういえば、あの子の主人は結局姿を見せませんでしたね」
「何か危険な感じはしていたが、害意がないのなら探る必要もないさ。それに、わからんことのひとつやふたつ、あったっていいだろう。何もかも説明がつけられるようになったら、世界はとてもつまらないものになる…これでいいんだよ」

 

-おわり-

 

48 名前:誰も裁いてはならぬ 舞台裏[sage] 投稿日:2007/08/06(月) 22:35:27.97 ID:P/UkyFoI
「さて、そこのあなた…そう、これを読んでくれてるあなたよ。話は終わったけど、事件がうやむやで終わってしまって納得いかないままって人も多いんじゃないかと思って、ね。
事件の真相を教えておくわ…これが、裁判中にあの子に見せていた真相をあなたがたの言葉で書き直したものよ」

 

”DFオブジェを作ったご主人の友人がそれをテロしたのが原因。
主人がシールドラインをはずしてくつろいでいたらひょんなことから倒れ込んできたDFオブジェの鋭い刃で首と腕と足が切れてしまったのがことの真相。なので、写真も証言もすべて真実。
主人はそのあと再生していく体をひきずりながらテロ返ししにいったため凶器はなくなり、送り主への説教とその間に入ってきた仕事のために主人の帰りが遅れたことでこういうことになった。
ロザリオが黙秘を続けているのは主人の秘密(首が切れても死なず、再生した)を守るため。”

 

「なんで知ってたか?私は何者か?さあね、ご想像にお任せしようかな。すべてに説明がつけられないほうが面白いでしょ?あなたがた全員が毎日会っている、とだけ言っておこうかしらね。それじゃ、また会いましょう」

 

49 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/06(月) 23:26:13.67 ID:Xb6KCd0r
あっはっはっはっは、面白かった。
パパの不死身っぷりがこんな形で書かれるとは思いもしませんでした。
謝る事はございません。お好きなようにネタにしてくださいな。

 

あ、ども、パパと412作者です。

 

ま、確かにパパは死亡してもすぐさま蘇生してしまいますが、首を切られちゃうとねぇ…

 

超短編、戦争中のパパ
「仕留めた!」
確かに俺は、倒れた『奴』の首を叩き斬った。しかし、刃を退けると傷一つ無い奴の首!
「発想は悪くないが、それではまだまだだな」
俊敏に跳ね起きると、言葉と共に血を吐き出すヒューマンの男。
『インフィニット』、奴が不死身というのは本当だった。
そして、俺の人生はそこで終わった。

 

という事になりますな。
つまり、普通は首切られても頭は転がったりしない人なんですね。
もし、斬った直後に頭を弾き飛ばしてつぶせば、新しく頭が再生します。最近の記憶は物理的に消えますけどね。
今回はたまたま置物が当たった所為で頭が胴体から離れちゃったのを、ロザリオがくっつけたんでしょう。
そりゃ、口には出せませんて。

 

そうそう、腕とか脚は流石に落ちますけど、蘇生後暫くの間なら切断部分をあわせればくっついちゃいます。
あ、それと、ワンワンサンドの識別感知能力を持っているのはロザリオです。念のため。

 

ところで、御○弁護士って、某ゲームの裁判に絶対勝っちゃうあの人ですか?

 

50 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/07(火) 00:22:16.65 ID:UkuL/BT3
>>49
ありがとうございます。面白そうなものはネタにしたくなるという性で、ついついやっちゃいましたっ。
パパは「無限の住人」の万次みたいな感じでどれだけバラバラにされようがつければつながるのかと思ってましたが、どっちかというとピッコロさんでしたかw
とれないはずの首が落ちたのはDF補正ということで…w

 

最後のも訂正するなら、

 

「どうだった、俺が話している間に見ていたんだろう」
「パパ…あの子は違うみたい。プログラムに欠陥はないのに、故意に抜け穴を突いているというか…外部から何らかの影響を受けてはいるんでしょうけど、不思議ですね…そういえば、あの子の主人は結局姿を見せませんでしたね」
「何か危険な感じはしていたが、害意がないのなら探る必要もないさ。それに、わからんことのひとつやふたつ、あったっていいだろう。何もかも説明がつけられるようになったら、世界はとてもつまらないものになる…これでいいんだよ」

 

ってとこですかね。
そして御○検事はご察しの通りあの人ですw大好きですよ逆○裁判w

 

51 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 14:05:18.21 ID:rA1Puxzs
今回のストミの裏ではやはりパシリも暴走を?( ;ω;)
いやまあ…やってないから解らないけど…w

 

52 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 16:12:53.26 ID:GmCXrcx6
そういう話は出てなかった気がするが…

 

なんかしそうだよね、暴走。

 

53 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 21:04:49.36 ID:GmCXrcx6
各パシリを愛でるスレのパシリが全部「ギギー」って言ってる…(;・д・)ヤバイデスネ
皆さん、とっておきのアイテムを暴走パシリに喰われないよう、注意しましょう。

 

ども、パパと412作者です。
「復讐者は姉妹と共に」の続きを投下します。
こちらの事情で、今後は残っている分を毎日メモ一枚分ずつ投下することになりそうです。

 

それではご拝読くださいませ。

 

54 名前:復讐者は姉妹と共に(27)[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 21:05:40.26 ID:GmCXrcx6
「さ~て、そろそろ片付けるとしようか」
 天候が回復するという公共放送を聞き、人込みから外れた休憩広場で準備運動を始めるパパ。
「でも、下手な場所だと皆さんに迷惑がかかりますよ?」
 当たり前の事ですが、いくつかの遊戯施設を回りながらあちこち見ましたけど、戦闘しても問題ない区域はありませんでした。
 あとはそれこそ管理区画とか、一般区画とかで探すしかないですが…
「その辺は大丈夫というか、連中もそこにいると思う場所がある」
「何処にそんな場所が?」
「ここの地下だ」
「地下って、ここも地下ですけど?」
 私の突っ込みに「まぁ、そうなんだが」と、パパは話を続けます。
「正確に言うと、ここから2階層ほど下になるが、再開発時にあえて手を入れずに残した旧市街の一部がある。
 再開発前から各種廃棄物処理設備や墓地があって、当時の設備を修復して現在も使用されている。
 基本的には無人だし、造りは非常に頑丈だ。
 なにせ、シェルターとしての機能を持ち合わせているから、ちょとした戦闘くらいでも壊れる事は無い。
 おまけに、当時の防衛設備が丸々残っている。
 それに、まだ使えるコンピュータのメインフレームがそっくりそのままあるから、連中が潜伏するにも向いた場所だ。
 俺達から見て唯一問題があるとすれば、連中の脱出が容易なルートがある事くらいかな?」
「どんなルートですか?」
「旧いリニアラインの路線跡だ」
 体操を終えたパパが、携帯端末にデータを出してくれました。
 旧式フォーマットのファイルを苦労して立ち上げると、地下路線マップが表示されました。
 モトゥブという惑星の地下を、路線が縦横無尽に走っています。
「資材や人の運搬を行なうための地下路線が集中して作られた時期があって、その名残だ。
 戦争の前には、既にこの規模で出来上がっていたらしい。
 地下資源の採掘に力を入れていた時期に作り上げたらしいが、坑道の再利用ゆえにコストも僅かで済み、資源以外にも人の移動に便利だという理由から、通常の交通手段としても使用されていたそうだ。
 現在は完全に使用されていないし、設置されていた設備を資源として再利用する為に主だった物は回収されてはいるが、トンネル自体は残ったままだ。
 ま、戦時中に大部分は破壊されたという話だけどな。
 少なからず、記録上でこの街に繋がっている路線のトンネル跡は全部残っているし、その内のいくつかは、落盤や山肌の崩落などで地表にむき出しになっている部分がある。
 …原生生物の侵入を防ぐために塞いで回った記憶はあるが、現在の状況は分からない。
 もしかしたら、塞ぎ忘れている場所もあるかもしれないし、改めて掘り直されているかも知れないから、推測の域を超える答えは出ないけどな」

 

55 名前:復讐者は姉妹と共に(28)[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 21:06:15.19 ID:GmCXrcx6
 この都市のマップデータも出してもらって、記憶領域に保存しました。
 最初からこうにすれば、道に迷う事も無かったですね………怒られ損です。
 …あ、それで思い出しました。
「……パパ…あのね」
 そう、聞かないといけない事がありました。
「なんだ?」
「すごくおっきくて、がっちりした体格の、まるで筋肉の壁みたいなビーストさん、知ってる?」
「ビースト…男か?」
「うん、そう。
 短い金髪で、上につんと立った耳で、右の耳の先っぽが少し千切れてるの。
 …………ここにあった部族の長だったって、言ってた……」
 たちまち険しく真剣な表情になるパパ。
「……何処で会ったんだ?ロザリィ」
「さっき、迷子になった時」
 唐突に私を力いっぱい抱きしめるパパ。
「……お前が、無事で、よかった」
「パパ、痛いよ…」
 ん?…パパが、震えてる?
「奴の強さは普通じゃない。
 膂力もすごいが、敏捷性、反射神経、動体視力、どれをとっても桁はずれだ。
 あいつを実力で押し返せるのは、現時点では本気を出したネーヴ校長くらいしか俺も知らない。
 間違っても、お前は手を出すなよ……」
「うん、……でも」
 パパの腕をゆっくりと解き、正面に向き合います。
「あの人、いい人だよ?」
 迷子の時の事をかいつまんで話しました。
「……ああ、そうだな。
 そんなあいつを復讐に駆り立てるようにしちまったのは、俺だからな。
 恨まれても仕方ないが、俺も奴とやり合って死ぬつもりは無い…簡単に死ねはしないが、可能性が無い訳じゃないからな。
 万が一にでも俺が死んだら、お前は逃げるんだ、いいな」

 

56 名前:復讐者は姉妹と共に(29)[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 21:06:48.64 ID:GmCXrcx6
「パパ……」
「そして、コロニーに帰って、リズに保護してもらうんだ」
「ヒュマ姉さんに?」
「ああ、万が一の場合、だぞ?」
 こんな念の入れよう、なんか変です。
「そんなに、あのビーストさんは強いんですか?」
 ほんの少し躊躇いを見せて、パパは口を開きました。
「昔、リズと同じように俺のナノマシンを分け与えた兄弟が一人だけいたんだ。
 投与後、俺と全く同じ能力が発現したその兄弟は、戦場でしぶとく生き残った。
 だが、ある攻略戦で、生き返れないほどの損傷を受けて、モトゥブの土となった。
 その傷を与えたのが、俺を追い続けているビーストの父親だ。
 偶然にも一度だけ手合わせした事があるが、その強さは奴と同じかそれ以上。
 つまり…」
 ゆっくりと立ち上がるパパ。
「俺も同じ運命をたどる可能性があるという事だ」
「………」
「だが、現状では四の五の言ってられん!
 最低でも、あの妙な男のPM達は始末しないといけないからな。
 執念で追ってくるビーストの方は、まあ…奴には悪いが、俺の手におえないなら……逃げる!」
 先ほどの悲壮感漂う言葉とのギャッブに、私はあっけにとられました。
「……いいんですか、それで?」
「かまわん!生き残ってなんぼだ!
 それに…」
 私の頭を優しくなでてくれるパパ。
「お前を一人ぽっちにさせたくない。
 今の俺の生きがいは、家族であるお前と共に人生をまっとうする事だからな」
 私は、何故か流れ落ちる涙を隠すために、パパの脚に抱きつきました。
「じゃあ、とっとと済ませて、さっさと逃げましょう」
「よし、それじゃ誘い出すか」
「はい♪」

 

57 名前:復讐者は姉妹と共に(30)[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 21:07:20.03 ID:GmCXrcx6
 私達は旧都市部へ向かいながら、パシリたちをおびき寄せる為に、わざと人気が少ない場所を選んで移動し続けました。
 尾行する気配が感じられるようになったのは、旧都市部に入る前にある一般区画での事です。
「……釣れたな」
「釣れましたね」
「今、何人いる?」
 センサーのレンジを精密モードのまま最大にして、人数を確認………あれ?
「3人?おかしいな、さっきまでもう少しいたのに…」
「ふん、なるほど……」
 唐突に進路を変えて、路地に入り込むパパ。
 この路地を、貰ったマップと照らし合わせて見ると…あ、なるほど。
「旧都市の警備区画、ですね?」
「散開して俺達を誘いこむつもりらしいからな、反対に撃って出るさ。
 警備施設に敵がいればよし、いなければ施設を利用しておびき出す。
 気になるのは、あの妙な男が指揮しているわけではなさそうだと言う事だ…」
「そうですよね、妙に手馴れた感じがすると思います」
「と、言う事は…」
「「例のビースト(さん)が指揮を執ってる」」
「ご名答~!」

 

 シュバッ!

 

 撃たれたと認識する前に、咄嗟に私とパパは更なる路地に飛び込みましたが……別々の路地に分断されました。
 絶妙な間合いで連射されてしまって、さっきまでの道に飛び出すどころか顔も出せません。
「うふふふ…どう?そこから出られないでしょ」
 ルテナちゃんで見慣れた、特徴ある矢が飛んでいきます。
 これを放つパシリは今の所GH-442だけ。
『厄介な奴がここに回されたな…』
 姿の見えないパパの声が、パーティ専用回線から聞こてきます。
『先に進むには、あいつを倒すか分離行動するしかないが』
『私の奥の手は?』

 

58 名前:復讐者は姉妹と共に(31)[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 21:07:53.13 ID:GmCXrcx6
『…やってみてくれ』
『はい~』
 GRMでのパシリのメンテナンスのお手伝いでよく使うようになったので、このシステムも能率よく起動するようになりました。
“パペットシステム、起動開始”
 …この名称は気に入りませんけどね。
“通信システム、オールグリーン。制圧・制御システム、高密度モードで起動、フルコンタクト。
 通信圏内に3体を確認、座標確認……”
 うあ、いけない!後二人が後詰で近づいてる!
『パパ、奥から来ます!』
『分かった、こっちは何とかするから、お前も対処するんだ』
『はい!』
“目標一体が圏外へ離脱”
 パパが動いたんだ。
 しょうがない、後で合流するしかないです。
“目標を二体に固定、ジャマーを検知”
 ジャマーを持ってるって事は、このパシリ達はイルミナスに作られた私の姉妹、私と同系機なのね…
“ジャミングが開始されました、接続不能”
 く、P・T・S起動!
“全周波数帯検索……完了、接続可能帯域確認”
 アクセス、インパクト!
“接続完了、データ・ボム投下”

 

「「ぎゃんっ!!!」」

 

 さして私から離れていない二箇所から、二人分の悲鳴が重なって聞こえました。
 フルアクセス、コントロール。
“躯体操作を実行、コマンドをどうぞ”
「ふぅ…こっちに来て、二人とも」
 射撃によって封鎖されていた通路に私が出ると、弓を撃っていた442と、私が飛び込んだ路地の奥から422がやってきました。
 ちょっと足取りはおぼつかないようですが、それ以上の問題はなさそうです。

 

59 名前:復讐者は姉妹と共に(32)[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 21:08:25.77 ID:GmCXrcx6
 システムリブート。
“2体のブレインコアを再起動します”

 

「ん、あ……ここは…」
「ん~、と…」
「気分はどう?」
 私が声を掛けると、ぎょっとした表情を浮かべる二人。
「あ、No.6……」
「…パール、パールだぁ♪」
 422はいきなり私に飛びついて、頬擦りしてきます。
「パ~ルお姉ぇさま~」ゴロゴロ
 至福の表情でじゃれついて来る422。
「え、あ、こら、ちょ、ちょっと~」
「こら、No.11。そこまでにしなさい」
 442がやんわりと422を私から引き剥がします。
「はぁ…ありがと…くすぐったかったぁ」
「ちぇ~」
 指を咥えながら、名残惜しそうな表情の422。
「端的に聞くわね。私達、負けたのね?」と、442。
「はい、この通り」
 442の意識を無視して、彼女の手で私の頬を優しく撫でさせます。
 感覚のフィードバックを有効にしてあるので、彼女の手を伝わってくる私の頬の手触りと、頬を撫でられた感触が同時に伝わってきます。
 さっきの頬擦りは、二重に感覚データが重なって、すさまじい威力でした。
「あらら、躯体が乗っ取られちゃってるのか」
「ボクも?」
 分かりやすいように、422に歌のモーションを取らせると、「を、を、を、を、を、おっもしろ~い」と喜ぶ始末。
「気持ち悪いでしょ?制圧を解きま…」
「ダメ、解かないで!」
 何故か私を止める442。
「なんで?」

 

60 名前:復讐者は姉妹と共に(33)[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 21:08:57.77 ID:GmCXrcx6
「あなた、知らないの?」
「なにを?」
 呆れて物も言えないといった様子の442が、大きな溜息をつきました。
「NO.6…」
「私を勝手な呼び方で呼ばないで。
 ロザリオ・ブリジェシーっていう、ちゃんとした名前があるんだから、名前で呼んでよね」
 後から考えれば、おそらくすさまじい気迫で言ったのだと思いますが、442はたじろぎながら頷きました。
「ご、ごめんなさい…ロザリオ。
 私達の事はあなたもある程度は知っていると思いますけど、AA級知性体、つまり普通のキャストと変わらない知性を有しているのは知っていますね?」
「それ位は知ってますけど」
「でも、依然としてパシリとしての強制力を受けているのは事実なんです」
 強制力?一体、何が言いたいのでしょうか。
「私達は、パシリに有効である“マスターコード”によって、行動を制御・規制されてしまうのです」
 パシリを生み出したGRMが、商品としての安全性に万全を期する為の最終安全策として出した答え、それが“マスターコード”システム。
 私たちパシリが制御不能状態になった時など、緊急時に使用するのを目的とした安全機構で、外部から強制介入する為の動作制御コードと躯体制御システムで構成されていて、最初から躯体に組み込まれています。
 このシステムは、躯体に対してブレインコアより上位の命令権があって、どんなパシリもこれの介入を阻止できないようになっており、メーカー側で設定された、いうなれば穏便な最後の『抑止力』という事になります。
 これを無視できる個体は、壊れているか、既にパシリではありません。
「それは普通でしょ?元々パシリなんだから」
「そうですか?普通のキャスト達にはそんなものは存在しませんよ?」
「それはそうでしょうけど…」
「正確に言うと、『そんなものの効果を受けない』自我を持っているんです」
 言いたい事は分かりました。
 キャストと同じ知性を持っているのに、何故か未だに“マスターコード”の影響を受けている、その影響を無視出来るほどの自我が確立されていない。
「でも、現実は“マスターコード”の影響を受けてますよね?」
「そう。ただし、あなたの制圧下にいるうちは全く影響を受けていないんです」
「じゃ、もしかして、さっきまでの攻撃って…」
「思い切り操作されていたんです。NO.11も含めて」
 彼女は事細かに説明してくれましたが、要点だけを言えば、短波領域の通信にマスターコードを乗せて、彼女達をコントロールしていたという話です。
 今でも流れている、と442は言いました。
 私も気になったので、その周波数帯を探ります。

 

61 名前:復讐者は姉妹と共に(34)[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 21:09:29.49 ID:GmCXrcx6
 うっ、耳障りな何かが聞こえます。
 無理やり言葉にすると、「従え、‘#($=”’を制圧せよ」でしょうか。『‘#($=”’』は私を指し示すコードらしいのですが、言葉にするにはちょっと限界です。
「耳を澄ませて見たけど、ずいぶん耳障りでやかましいのね」
「あ、あなた、平気なの?!」
「うん、耳障りだけど、無視すればいいんだもん」
「…奴の仮説、正しかったのね」
「仮説?」
 何か、気になります。
「No.…いえ、ロザリオ。
 ワンオブザウザンドとしてのあなたの存在は、あたしらの生みの親――研究員風の男をモニターで見たでしょ?あいつよ――も知っていたのよ」
「嘘?!」
「本当よ」
 一体何処から話が漏れているのでしょう?
 パパは「大丈夫だろう」とは言ってましたが、「噂が立つ前に話が伝わっているのは問題がある」とも言ってましたね、確か。後で調べないと。
 …しかし、あの品性のかけらも無さそうな奴が生みの親って…パパに黙ってぶち殺そうかしら…
「ワンオブサウザンドの条件、それは奇跡的『欠陥』品であるということ。…あなたの『欠陥』は何?」
 唐突にそう振られても、分からないんですけど。
「知らないです」
「奴の仮説は、『常識をはるかに超えたマシナリー制圧・制御能力の代わりに、他者からの制御を全く受け付けないという欠陥』なのではないか」
「そ、それってつまり…」
「ロザリオ、あなたはあたしらと違って、“マスターコード”の影響を受けたりしないし、直接の入力も効果が無い。
 そして最悪の場合、自身の躯体制御も出来ない可能性があるって事、だそうよ」
「そ、そんなことないです!
 いつもマニュアル通りだけど、日常メンテだってしてもらってるし、それに、ここに来た時にだって、シールドラインの属性出力調整をしてもらって、ちゃんと…」
 私は大慌てで否定しました。
「誰にですか?」
 誰に?誰?………
 ………あ、そうか、そういう事か。
 私は私自身が決めた相手の制御しか受け付けないって事なんだ。
 そうね、パパなら別にいっぱい触られても嫌じゃな……あれ?なんだっけ、なんか忘れて…パパ?

 

62 名前:復讐者は姉妹と共に(35)[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 21:10:02.72 ID:GmCXrcx6
 あ、いっけない、すっかり忘れてた!!
「そうだ、ご主人様!」
 あわてて通路の奥に走り出しました。
「あ、あたしも行く~」
「あたしもです」
 私の後に付いて走ってくる二人。
「何?付いて来なくたっていいのに!」
 走りながらなので、大きな声で言いました。
「そうもいきません!他の姉妹達も私は助けたいんです!」
「あなた達、名前は?!」
 いちいちタイプで呼ぶのは面倒なので、名前を訊いてみました。
 442はちょっと面食らった表情の後、微笑みながら「オパールよ!」と名乗りました。
「あたしはトパーズ!」と、422。
「誰がつけたか知らないけど、いい趣味してるわね!」
「それはそうよ、ご主人様がつけてくれた名前ですもの!」
「あたしも~!」
「帰りたくは無いの?そのご主人様のところに!」
「もう、いないわ!やめちゃったの、ガーディアンズ!」
「じゃあ、もし自由になったら、どうする?!」
 私の何気ない一言に、二人は急に立ち止まりました。
 私もそれに合わせて立ち止まります。
 二人とも何も言わずに、目に一杯の涙を貯めて泣くのを堪えています。
 私は二人に近づいて、そっと抱き寄せました。
 少しでも、二人の悲しみを受け止めてあげたくて。
「ちょっとくらい、泣いたっていいんだよ?」と、私は小さく呟きます。
 …なんでかな、私が泣くといつも抱きしめてくれるパパの気持ちが、ちょっとだけ分かった気がする。
 二人は棒立ちのまま、小さな声で泣き出しました。
 まるで、誰かに聞かれては困るかのように。
 「ご主人様ぁ」と呟きながら静かに泣く二人。
 二人が泣き止むまでの少しの間、私はただただ抱きしめていました。

 

63 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 21:11:33.02 ID:GmCXrcx6
投下完了!

 

我ながら文章量が多すぎだな…

 

64 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 23:28:41.88 ID:rDheveut
     _
   '´   ヽ
   i i l」」l」」i)
   |.l@゚ -゚ノil <ギギー!!
   i i/ ゙y' ヽ
  ノ〈 j!二i| リ
   |/|___,|_/

 

65 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 00:07:50.35 ID:doM1ls3n
[゚Д゚]<ギギー!!
ttp://f.hatena.ne.jp/orz_skyworker/20070810231958

 

66 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 00:22:03.15 ID:uhrcVhDA
なんというショタ…

 

執事吹いた

 

67 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 16:59:40.50 ID:pO4BbQ74
文章量多くて大いに結構!

 

68 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 23:49:32.90 ID:0lZ7i3Dg
量が多いと、投下と原稿チェックが大変なんですよ~orz
まぁ、楽しいからいいですけどね。

 

ども、パパと412作者です。
では、続きをさくさく投下させていただきます。

 

ご拝読くださいませ。

 

69 名前:復讐者は姉妹と共に(36)[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 23:50:11.53 ID:0lZ7i3Dg
「ここを真っ直ぐ、次を左、テレポートを飛んで、真正面のスイッチを、撃つ!」
 オパールが指示する通りに、旧市街地の警備区画を移動する私達。
 目指すは、旧防衛中央指令室。
 二人の話によると、そこに例の男が陣取っているといいます。
 ですが、ここの構造は非常に面倒です!
 区画自体は広くないのに、幾つもある部屋、扉、転送装置にスイッチ。
 そして、時折現れるYG-01Z BUGの大群と、ナヴァルにラプチャ、ヴァンダ。
 今は、狭い部屋に5体のヴァンダが待ち構えていました。
「なによ、これ!」
 私が悪態をつきながら必死に応戦していると、トパーズが怒っているのを隠すことなく返答します。
「あのバカチンが、塞がっていたリニアラインの瓦礫を全部取っちゃったんだよ!」
「例のおっさん?」と、私。
 あんな奴は、おっさんで十分です。
「そう!『これで安全に脱出出来るぜ』とか言いながらね!」
 外から原生生物達が入ってこないようにわざわざ塞いであった路線跡の瓦礫を、一部ならともかく全部取っちゃうなんて、馬鹿ですね。
「きゃっ!」と、オパールの悲鳴。
 すぐさま声のほうに視線を向けると、オパールにヴァンダのディーガが直撃して、しりもちをついたところです。
 そして、右手にピケーが実体化しました。
 どうやら、武器の持ち替えが間に合わなかったようです。
 それが最後の一匹ですが、私が彼女と敵の間に割り込むには位置が悪すぎますし、攻撃も届きません。
「隙あり!」
 既に回り込んでいたトパーズがグッダ・ブレッバでボッカ・ダンガを放つと、ヴァンダの頭を綺麗に吹き飛ばし、断末魔も上げずにヴァンダは倒れました。
「あ、ありがとう、トパーズ」
 しりもちをついたオパールが、ほっとした様子で言いました。
「まだだよ、オパール」

 

 シュン!

 

 え?転送音?

 

70 名前:復讐者は姉妹と共に(37)[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 23:51:00.93 ID:0lZ7i3Dg
 現れたのは、特徴のある牙の生えた大きな口、長い身体にしては短い4本の脚、とさかのような背びれに長い尻尾…
「…ドルァ・ゴーラ!」
 私は思わず大声で叫びました。
「あっちゃ~、こんな所まで入ってきたんだ~」
 トパーズがしかめっ面で武器を構えなおします。
 次の予定通過ポイントは…こいつの向こう側にある扉。
 ん?よく見ると、ロックが開放されてる!
「二人とも、こいつ無視!扉が開いてる!」
「え?」
「了解だよ!」
 私は武器を仕舞って、立ち上がったばかりのオパールの右手を取ると、壁沿いに走り出しました。
 それに倣うトパーズ。
 狭い部屋の中で方向転換するドルァ・ゴーラ。
 う、器用な奴…
 重い地響きを立てながら、私達に視線を向けると、軽く後ずさります。
「やばっ!」
 私の後ろを付いて来ていたトパースの叫び声と同時に、私とオパールは勢いよく前に突き飛ばされました。
 直後、重い衝突音と壁が崩れる振動が伝わってきました。
「あっぶなかった~」
 私とオパールに覆いかぶさるように乗っていたトパーズの声。
 私達3人が起き上がって見たものは、見事に崩れた壁と、瓦礫の下敷きになったドルァ・ゴーラの姿でした。
「ただの頭突きで、壁を壊しちゃうなんて」と、オパール。
「でも、ドルァ・ゴーラさまさまよ?」と、私。
 崩れた壁の向こう、そこには『中央指令室』のプレートが掛かった入り口が見えていました。

 

「話が早くて助かるわね。あれから先は、時間との勝負だったから」
 瓦礫を乗り越えて隣の部屋に出ると、オパールがそんなことを言いました。
「もしかして、時間制限付き?」
「4人いれば平気なんだけど、3人だとね」
 なんでも、3つのレーザーフェンスとそれに連動したスイッチがあって、押している間は開いてるけど、離れると一定時間で閉まっちゃうという話でした。

 

71 名前:復讐者は姉妹と共に(38)[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 23:51:46.93 ID:0lZ7i3Dg
「四人目が奥にある集中スイッチを押せば全部解除されるんだけど、あたしら3人しかいないから」
「あそこはめんど~!」
 トパーズが伸びをしながら、やれやれといった様子で入り口を見ていました。
「あ~あ、ここも面倒だなぁ~」
「何の話?」
 トパーズがぼやくので、私が尋ねると、肩をすくめる彼女。
「ま、入ってみれば分かると思うよ」
「そうね、百聞は一見に如かずって、こういうことよね」と、オパール。
「どっちにしろ、他の姉妹達が襲ってくるよ」
「それはそうね」
 トパーズの言葉に、頷くオパール。
「じゃ、作戦立てる?」と、私。
 とたんに二人とも「う~ん」と唸って、考え込んでしまいました。
「どうしたの?」
 バリバリ頭をかきむしるトパーズ。
「あ~もう、あのバカチンを攻略する方法が思いつかない~」
「ねぇ、ロザリオ、残りの姉妹達を全部制圧できる?」
 オパールが慎重に聞いてきました。
「あなた達と同じなら、少し時間が要るけど、大丈夫だよ」
 私がそう答えると、何度か小さく頷いて、私に向き直りました。
「どれくらい時間が要る?」
「そうね…30秒位あれば、最低限の無力化は出来るよ」
「じゃあ、あたしとトパーズで時間を稼ぐから、お願いね」
「了解!」
「後はその場の状況に応じて動きましょう」
 私とトパーズが頷くと、ヒロクテリじゃなくピケーを構えるオパール。
 誰とも無く入り口の前に立ち、私がカウントタウンを始めます。
「3、2、1、GO!」
 私達は、合図と同時に部屋に飛び込みました。

 

72 名前:復讐者は姉妹と共に(39)[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 23:52:19.21 ID:0lZ7i3Dg
 中央司令室の中はほどほどに広く、部屋の真ん中には円柱型のメインフレームが占領していました。
 そしてその周りには、下半身が引きちぎられたように壊されてしまったパシリ達が6体。
 鋭く息を呑む音が、隣の二人から聞こえてきます。
「み、みんな…」
 唖然としたトパーズの声。
 確認出来たのは421、431、432、441、451、452の6人。
「制圧なんて、する必要もないわね」
 小さい声でそう言って、オパールは歯軋りしました。
「遅かったじゃぁ、ないか。くずパシリども」
 ケッケッケッケと、虫唾が走る笑い声が辺りに響きます。
「何処?」
 私が小声で尋ねると、オパールがピケーで『ある場所』を指します。
「メインフレーム、の上?」
 私が目を点にして、首をカクッと曲げて聞き返すと、情けないといった表情で頷く彼女。
 うっわ~、超古典的で典型的悪役スタイル。
 今時、そんな所に上る天然記念物級の馬鹿って居たんだ~。
 こんな奴、古典娯楽映像でも滅多に見る事が出来ないのに、現物を拝んじゃった。
「まだ私が見つけられないのかい?」
 カツン、カツン、と妙に響く音がして、メインフレームの端に例のおっさんが現れました。
 研究者たちがよく着ている服に白衣をだらしなく羽織った、やせっぽちの貧弱なヒューマンの男性。
「お前達にもちょっとした娯楽映像を見せてやるよ」
 すると、左手の壁一面に設置されているモニターに、二人の男が切り結ぶ姿が映し出されました。
 あれは!
「ご主人様!それに、ビーストさん!」
「ほぉ、奴と面識があるとはね。
 お前、前に会ったこいつがここに居るくずパシリと同じだって知らなかったのかい?」
 モニターに話しかけるおっさん。
『ああ、知らなかった』
 向こうの映像に写るビーストさんが、戦いながら返事をしました。

 

73 名前:復讐者は姉妹と共に(40)[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 23:52:53.57 ID:0lZ7i3Dg
 弾かれたようにビーストさんから離れるパパ。
『お前、誰と話している』
『俺に復讐の場を与えた奴と、お前のくずパシリだ』
『ロザリィ、着いたのか!』
「着きましたよ、ご主人様!」
「返事をしても無駄だよ、やり取りが聞こえているのは奴だけだからね」
 何が愉快なのか、あーっはっはっはっは!と、アホみたいに笑うおっさん。
「これで、あっちは勝手に片がつくだろう。
 さて、お前達を生み出した父親としては、悪い子にはお仕置きをしないと…え?」
 不意に目の前に現れた私に驚くおっさん。
 遅い。
 私は既におっさんに向かってライジングストライクの構えに入っています。

 

 そう、声がパパに届いていないと分かった直後、私はメインフレームに向かって走り出していました。
 ハンゾウを取り出すと、
「はは~い」
 飛び上がって、スピニングブレイクをメインフレームに叩き込みます。

 

 ガッ!!

 

 予想通りに硬い外装。
 そこに僅かに切っ先が突き刺さって、ハンゾウが引っかかりました。
 それを支点にして、反動も利用しながら二回転目を続けると、躯体が更に上に持ち上げられます。
 回転を利用して刃先を引き抜き、もう一度メインフレームに叩き込みます。

 

 ガッ!!

 

 上手い具合に、今度は最初より更に高い位置の外装に引っかかりました。
「ははは~い」
 そこから更に同じ要領でスピニングブレイクの2段目を繋げます。

 

74 名前:復讐者は姉妹と共に(41)[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 23:53:38.96 ID:0lZ7i3Dg

 

 ドカッ!!

 

 三回目は、メインフレームのてっぺんの外装に届きました。
 ハンゾウの刃がメインフレームの頂点付近の外装に大部分食い込んで、ほぼ水平にしっかりと固定されました。
 おっさんの足音から、天板部分は側面よりかなり薄いと予想しましたが大当たり!
 更に、スピニングブレイクの反動を利用して宙返りし、ハンゾウの柄の上に立ちます。
 おっさんとの高さの差は、これでゼロ!
 足場にしたハンゾウの上でレイピアを抜き、全力でライジングストライクを撃ちます!

 

「な、どうやって…」
 おっさんの疑問に答えてやる気なんて、全くありません。

 

 ズバン!

 

 気持ちいいくらい、綺麗に打ち上げました。
「これはおまけです!」

 

 ドカッ!

 

 更に2段目まで叩き込んで、メインフレームから完全に落としました。
 どさっ、という重い音が下から聞こえたので覗きこむと、床の上に倒れて痙攣しているおっさんの姿がありました。
 私が「やっちゃいました!」 と、下の二人に向かって手を振りながら大きな声で報告すると、呆れたような「お~」と言う声と、まばらな拍手が返ってきました。

 

 メインフレームに突き刺さったハンゾウを回収する為に、一度ぶら下がってブレード部分を消します。
 勿論私は自由落下しますが、途中で外装を蹴る事で落下方向を変えて速度を落とし、着地と同時に綺麗に受け身を取りました。
 ゴテントウチとかいうやつです。
「500Rpはあるはずなのに、すごい方法で登りましたね」
 降りてきた私に対して、呆れたように――実際に2人は呆れていました――感想を述べてくれました。
「まぁね。先手必勝です」

 

75 名前:復讐者は姉妹と共に(42)[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 23:54:50.52 ID:0lZ7i3Dg
『ほう、くずパシリにしてはなかなかやるな』
 画面の向こうでは、二人がまだ切り結んでいます。
「くずは余計です!」
 画面に向かって怒鳴りつける私。
『ふふふふふ、気概のある奴のようだな。人の身なれば、妻にでも迎えてみたいがな』
「え?」
 うわ、もしかして…
「うわ~、なんかヤバい奴だと思ってたけど…」
 トパーズが画面から一歩引きます。
「お堅い事ばっかり言ってて、ホントはロリか!!!」
「ロリよ!!絶対、ロリ!!」と、オパール。
「「ロ~リ!ロ~リ!ロ~リ!ロ~リ!ロ~リ!ロリ親父~!!」」
 口調を合わせて囃し立てるオパールとトパーズ。
『やかましいわ、くずパシリども!!』
 ビーストさんが力いっぱい斧を振りぬくと、打撃を受けきったはずのパパが吹っ飛ばされて、墓標に激突します。

 

 …墓標?
 そうか、パパ達、地下墓地に居るんだ!
 でも、何処の地下墓地だろ?

 

 パパと連絡を取りたいのですが、司令室全体が電磁的にシールドされていて携帯通信機は機能していないし、『テレパス』も封じられています。
 仕方ないので、私は監視カメラをコントロールしている端末を探して、部屋の中を右往左往します。

 

 パパ達を写しているカメラの場所を確認して、急いで行かなきゃ!

 

 その間に、オパール達は壊された姉妹を一箇所に集めだしました。

 

 何処なんだろ、端末…………

 

76 名前:復讐者は姉妹と共に(43)[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 23:55:21.75 ID:0lZ7i3Dg
 逸る気持ちを抑えて丹念に調べていると、突然「うきゃっ!」と、オパールの変な悲鳴がしました。
「な、なに?どうかしたの?!」
 私とトパーズがあわてて近くに行くと、彼女の右足をうつぶせのおっさんが掴んでいます。
「こ、こ、ここここ、こいつ、生きてる…」
 内股でガクガク震える彼女の脚をしっかり掴んでいるおっさんの手。
 私は躊躇無く、その腕を踏みつけました。
「ぐおっ」
 気味の悪いうめき声をあげ、手を離すおっさん。
「私の攻撃と、あの落下で生きてるなんて…………運がいいようね、おっさんは」
「ゴキブリ並みにしぶとい」と、トパーズ。
「ケッケッ…ケッケ、今日は超星霊なんだぜぇ、ごふっ」
「…それ、先週です」
「な、なにぃぃぃぃ」
 過去データを検索して事実を突きつけると、おっさんは驚愕の表情を浮かべたまま気絶しました。

 

 パタ、ガチリ。

 

 …あれ、ガチリ、って何の音?
 トパーズがおっさんを蹴り転がして上向きにすると、何かのリモコンが転がり出てきました。
 それと同時に、スクリーンのある壁が下に沈み始めました。
 ……………ギミック好きな設計者が作ったんですね、きっと。

 

 ゴッ! ガギィィン! ドカッ! バカン! ジャリン!

 

 開き始めた隙間から、重い剣戟の音と、岩か何かが割られる音が漏れ聞こえてきます。

 

 ザシュッ!………ズズズズズズ、ズドン。

 

 まだ写っている画面では、ビーストさんが避けた所為で、パパの一撃が何かのモニュメントを断ち切りました。

 

77 名前:復讐者は姉妹と共に(44)[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 23:56:13.15 ID:0lZ7i3Dg
「クソッ!!」
「フンッ!」
 斧がパパに当たりそうになった直後。

 

 ズドン!

 

 なに、今の閃光、爆発?!
 画面も焼きついて、何も見えなくなりました。
 半開きになった壁から爆煙が流れ込んできて、視界が塞がれます。
 そして同時に、スピーカーからではない、二人の生の声が司令室の中に聞こえてきます。
「ちっ、ハンゾウが!」
「これで手持ちは尽きたな!」
「フッ、甘いな」
「うおっ!!」

 

 ズガン!!!

 

「きゃっ!!!」
 爆音に驚いて咄嗟に身をかがめると、煙を突き破って何かが飛んできました。

 

 ドガッ!!

 

 私の頭のすぐ真上、メインフレームの外装に深々と、金属の刃がついた両手斧が突き刺さっています。
「~~~~~~~~!!」
 四つんばいでわたわたとそこから移動すると、ゆっくり煙が晴れてきて、やっと様子が分かるようになりました。  

 

 さまざまな花が植えられた明るい地下墓地ですが、花は蹴散らされ、幾つもある墓標はなぎ倒され、断ち割られ、砕かれ、無残な姿になっています。
 そこで対峙する、パパとビーストさん。
「ご主人様!」
 ちらりとこちらを一瞥する二人。

 

78 名前:復讐者は姉妹と共に(45)[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 23:56:56.69 ID:0lZ7i3Dg
「邪魔が入るのは好かん!」
 ビーストさんがそう言った直後、

 

 ガシャシャシャシャ!

 

「「きゃぁぁ!」」という、二人の悲鳴が聞こえてきました。
 何事かと思いオパール達の方を向くと、突然、私を押さえ込もうとする4つの腕が視界に入りました。
「うわ、なに?!」
 今にも壊れそうな軋み音を立てて私達にしがみ付いているのは、壊されてしまった姉妹達の上半身!
 顔を見ても、視覚ユニットはただのガラス玉、全くの無表情。
 これは“マスターコード”で強制的に動かされているだけです。
 姉妹達の成れの果ては、私達を絡め取るように、全身を押さえ込もうと腕を巻きつけてきます。
「この、離れろっ!」
 必死に剥がそうとしますが、びくともしません。
 強度を無視した出力命令のせいで、既に壊れている彼女達の各部からはうっすらと煙が上がり、人工細胞の焦げる匂いがします。
「こんな状態でも動くとは、所詮は機械よな。だが、今はありがたい!」
 ビーストさんは、手近に転がっている一抱えほどの墓石の残骸を片手で軽々と掴み、パパに向かって投げつけました。
「危ない!」
 この時の私は、叫ぶ以外のことを思いつけませんでした。
 ところが、岩はパパに当たる直前に三枚に割られ、パパの姿が一瞬見えなくなりました。
「まだ手持ちがあったか!」
 氷ジョギリを手に、スピニングブレイクするパパの姿。
「こいつは本当に取って置きだ!」
 2段目で切っ先を当てつつ距離を詰め、3段目がビーストさんに直撃………え?!
 ビ、ビーストさんが素手でジョギリの刀身を掴んで、パパを空中で止めている?!
「…フ、フフフ、惜しかったな、インフィニット」
「非常識な奴だな、お前!!」
「貴様に言えた事か!!!」
 ビーストさん、ムチャクチャです!

 

79 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/12(日) 00:03:56.24 ID:0lZ7i3Dg
と、投下完了…

 

規制に引っかかっちまったよ~

 

文章が多いとこれが怖いんだよなぁ

 

80 名前:復讐者は姉妹と共に(46)[sage] 投稿日:2007/08/12(日) 18:11:25.54 ID:3awBD4/L
 ビーストさんはジョギリの刀身を握ったまま、武器ごとパパを地面に振り下ろしました。
 すさまじい勢いで地面に叩きつけられ、武器を手放した上に叩きつけられた反動で宙に浮くパパ。
 ビーストさんはすかさずジョギリを投げ捨てると、浮き上がったパパの腕を掴み、膝蹴りを腹に叩き込みます。
 そして、吐血するパパ。
 一部にしろ、膝蹴りで胃が切れたようです。
 よろめきながらも立とうとするパパの背後に回りこんだビーストさんが、パパの両腕をからめ取ります。
 そして、背後から丸太のような腕で両腕を極め、締め上げます。
「フンッ!!」
 気合と共に、骨の折れる鈍い音がパパの両腕の上腕部から私の耳に届きました。
「そお、らっ!」
 そのまま、パパを投げ技の要領で後ろに投げ飛ばそうとするビーストさん。
 パパも投げにあわせて跳躍して、反動で腕を引き抜いて奴の背後に立ちます。
 腕が折れたから、締めが甘くなったんだ。
 着地と同時に一回転、その勢いで蹴りを頭にめがけ放つパパ。
「甘い!」
 ビーストさんは上半身をひねって、蹴りを放ったパパの右足の太ももに左肘を叩き込みました。
 再び鈍い音。
 今の音、右足も折れたんだ。
 あれじゃ、もう戦えない!
 パパはそのままひっくり返り、離れる為にこっちに転がって来ます!

 

「ご主人様!」
 私はやっと姉妹の残骸を振りほどき、パパの傍に駆け寄って行きました。
「ご主人様!」
 しゃがんでパパを起こそうとしたけど、
「どけ、ロザリオ。いや、あえて言おう、くずパシリ!」
 その前に、ゆっくりとパパに近づいてくるビーストさん。
「貴様には話したはずだ!
 こいつをこの手で殺さねば、我が部族の恨みは晴らされん!
 どけぃ!!」

 

81 名前:復讐者は姉妹と共に(47)[sage] 投稿日:2007/08/12(日) 18:11:50.66 ID:3awBD4/L
「いやです!」
 暗い憤怒の光を湛えた目で、私とパパを見るビーストさん。
「そうか、死にたいのか。
 こうして見れば、死神とくずパシリ、なかなか似合いのようだ。
 わしからの餞別だ、そのまま冥府へ送ってやろう!!」
 死神と聞いたパパが歯軋りして、つらそうな表情で視線をそらします。
 死神なんて呼ばれるような事を本当にした、でもそれをすごく後悔してるのが良く分かります。

 

「うおおぉぉぉ!」
 雄叫びと共に赤いナノブラストの姿に変身するビーストさん。

 

 だからって…
 パパが、死神なの?!
 こんなに苦しんでるパパが、死神なの?
 パパを、死神なんて呼ばないで!
 大好きなパパを、死神なんて!
 私はゆっくりと立ち上がります。 
「…………私は………欠陥品………。
 だから………くずパシリと呼ばれても……かまわない。
 でも……でも!
 ご主人様は…ご主人様は死神じゃ、無い!
 ご主人様がどんな思いで、どんなに苦しんで、今まで生きてきたかを知らないあなたに!
 死神なんて、呼ばせない!!
 死神なんて、決め付けないで!!!」
 私は変身したビーストさんに顔を向け、言葉を叩き付けた。
『黙れ、くずパシリ!
 わしの悲願を聞いてなお立ち塞がるお前など、死神共々砕いてやるわ!』
 大きく腕を振り上げるビーストさん。
 私は、倒れたパパとビーストさんとの間に立ち、ビーストさんを睨みながら両腕を広げて立ちはだかりました。

 

82 名前:復讐者は姉妹と共に(48)[sage] 投稿日:2007/08/12(日) 18:12:23.63 ID:3awBD4/L
 心の中は、何かが煮えたぎっていました。
 湧き上がる怒りと哀しみを抑えられなかったし、そんな気は既にありません。
 激しい感情がブレインコアをかき回し、何かが頭の中ではじけます。

 

“『バーストウェーブ』システムの起動環境が整いました。武器選択アイコンに『バーストウェーブ』が自動追加されます”

 

 武器?この際なんでもいい!
 パパをいじめるこいつに、手加減なんてしてやらない!!

 

『くたばれ!死神ぃ!!』

 

 いつもからは考えられない速度で戦闘情報が処理されていきます。
“セーフティ解除、戦闘モード起動”
「大好きなご主人様を!私のパパを!!言葉を武器にして!!!いじめないでぇぇ!!!!」
“バーストウェーブをパレットに登録、緊急起動、通信波出力最大、対電磁波シールド出力最大”
 ビーストさんの巨躯から腕が振り下ろされると同時に、私は広げた両手を前に真っ直ぐ突き出し、
“通信波収束空間限定、誘導電磁シールド展開完了、目標補足”
「消えちゃえぇぇ!!!!!」
“コンデンサへのチャージ不足につき起動時間0.1秒、照射モードに変更。レディ、ファイア”

 

 キュバン!!

 

 一瞬のまばゆい光。
“起動完了、目標の消滅を確認。戦闘モード解除、セーフティ起動。各武器の全待機コンデンサへチャージ開始”

 

 直後、生臭い爆風と蒸気、たくさんのフォトン粒子が広がりました。
 蒸気の晴れた先には、ビーストさんが『無い』。
「…一体なんだ、今のは」
 爆風に乗って雪のようにフォトン粒子が舞い散る中、あっけに取られたパパの声が聞こえました。
「『バーストウェーブ』…使用できたの…」

 

83 名前:復讐者は姉妹と共に(49)[sage] 投稿日:2007/08/12(日) 18:12:45.57 ID:3awBD4/L
 私が振り払った、パパの横に半壊して転がる、私の姉妹機からの声。
 さっき振り落としたショックで、偶然にも、一時的に再起動したんだ。
「マシナリーを操作するための高密度通信機は、各種通信波長をナノメートル単位で正確にコントロール出来るし、波長に指向性を持たせてコントロールする事もできる。
 そうやって波長と方向をコントロールして特定空間に集約すれば、マイクロウェーブと同じ効果が得られる。
 それを更に強力に放射すれば…」
「瞬間的に対象は蒸発する、か」
「あたしら、他の姉妹は一機たりともそこまでの能力を持っていなかった。
 コントロールできるマシナリーも数体が限界、ましてや今の技を使ったとして、二、三機がかりでせいぜいキャスト一人のブレインコアを壊すのが精一杯。
 ま、その分、キャスト相手にはずいぶん重宝されてる」
 キャストの対電磁波シールドは、宇宙空間でも十分耐えられる仕様です。
 二、三機がかりとはいえ、それを突破して破壊するという事は、相応の出力があるということ。
 でも、私のこの『力』は。
 視認できるほどの高エネルギーに変換された通信波、それは私一人が発生させたもの。
 ほんの一瞬、だからみんなは気づかなかった。
 フォトンにまで昇華された通信波エネルギーが作り出した、全長10mの巨大な剣。
 パパも知らない、私の、ワンオブサウザントとしての局地戦闘モード。
 こんな力、知りたくなかった…………。

 

84 名前:復讐者は姉妹と共に(50)[sage] 投稿日:2007/08/12(日) 18:13:22.49 ID:3awBD4/L
「…ご主人様、あれ以上の怪我は無い?」
 私はパパの傍にしゃがんで、パパのナノトランサーを使って服を脱がせます。
 診察すると、腹部に大きな痣と、きれいに両腕の上腕骨と右大腿骨が折れていました。
「少し、我慢してください」
 私は全身を使って骨のずれを矯正し、セイバーやソードの柄を使って固定しました。
 激痛が走るのか、パパは終始歯を食いしばって黙っていました。
 矯正が終わったので、片手杖を取り出します。
「レスタ、レスタ、レスタ!」
 筋肉や血管が再生し、骨が結合したはずです。
 痣は消えましたし、裂けた胃の一部も塞がって、吐血も治まったようです。
 軽く診断すると、ほぼ問題はないようでした。
「…もう動けますよ、ご主人様」
「すまん、助かった」
 私が添え木にしていた武器を外すと、四つんばいになって喉に溜まった血反吐を吐き出し、その後によろめきながら立ち上がって服を着るパパ。
 改めて座ったパパに、私はそっと抱きつきました。
「こんな無茶はもうしないで下さい、ご主人様」
「無茶と我慢が戦士の仕事だって、奴もそう言ってたろう?」
「心配しすぎで、私、壊れちゃいますよ?パパ」
 私はパパの耳元でそっと囁きます。
 そっとパパが抱きしめ返して、同じように耳元で囁きます。
「さっきは助かった。だが、あの技はヒトに向けて二度と使うな」
「どうして?パパ」
「死は生きているもの全てに平等に与えられる。
 だが、その死も生きていた証拠があればこそだ。
 相手を倒すのは仕方ないとしても、生きていた証を、存在を消す事だけはしてはだめだ。
 それは相手を殺す以上の、命そのものを蔑む行為だ。
 アレはそういう技だ。
 よく覚えておくんだ、いいな?」
「…はい、パパ」

 

85 名前:復讐者は姉妹と共に(51)[sage] 投稿日:2007/08/12(日) 18:13:54.31 ID:3awBD4/L
「俺のせいでまた一人、死んじまったな…」
 例のおっさんを拘束し、動かなくなった姉妹機達をオパール達と回収しながら、パパは呟きました。
「あのビーストさんが死んだのはパパの所為じゃありません。
 私がパパを助けるという理由をつけて、私があのビーストさんを殺したんです。
 殺さずに止める事だって出来たのに、私は殺したんです、パパをいじめたあいつが憎くて…」
 私はわざとパパと呼びました。
「ロザリオ、お前…」
「あのビーストさんがパパを殺そうとしたのはそうかも知れないけど、死んだのはパパの所為じゃありません。
 それに、あのビーストさんは私がパパのパシリだって知らないときに、こう言いました。
『殺しあうのが戦士の宿命。
 俺は戦士として、部族の長として、滅びた部族の復讐を誓い、そやつを倒すことだけを生きがいにしてきた。
 だが、どんな理由であろうとも、相手に刃を向けるということは、己が死ぬことも覚悟しているということだ。
 だから、例えそやつとの戦いに破れ、復讐が果たせずそこで死んだとして、本懐を遂げられなかったことに未練はあっても、殺されたことに恨みを抱く気は無い。
 もし、戦士として生きている間に出会うことが出来なければそれも天命、受け入れるしかあるまい。
 それに、死んだ相手に復讐は出来んし、死者を辱める趣味はない』
 …過去に色んなことがあったのかも知れないけど、全ての不幸の始まりはあの500年戦争のせいです。
 でなければ、パパだって普通のヒューマンだったはずだし、ママが撒き散らされたBC兵器の所為であの病気にかかることも無かったはずです。
 そして、パパがあのビーストさんの部族を滅ぼすことも無かったし、ビーストさんがパパを恨むことも、私があのビーストさんを殺すことも無かった。
 みんな被害者で加害者なんです」
「だけどな、ロザリオ。俺が、奴の部族を崩壊に追い込んだのは事実なんだ」
「パパが崩壊させた部族に対して、その罪を償いたいというのは分かります。
 でも、だからと言って、全ての戦争の責任がパパにあるわけじゃありません!」

 

86 名前:復讐者は姉妹と共に(52)[sage] 投稿日:2007/08/12(日) 18:14:50.54 ID:3awBD4/L
 はっとした表情で私を見るパパ。
 そんな気がしてた、ずっと。
 パパは、背負う必要のない、戦争の責任までずっと背負ってる。
「パパは背負いすぎです、一人でなんでもかんでも…」
「そうじゃの、よくぞ言ってくれたよ、パシリのお嬢ちゃん」
 すぐ近くには、管理施設にいたビーストのおじいさんが来ていました。
 ここは、もうすぐ一般区画への出入り口です。
「…………長老」
 パパはじいさん、じゃなくて、長老と呼びました。
 この人って、一体何者でしょう?
「俺は……」
「よいよい、何も言わんでもな。
 ぬしが、我らが部族を崩壊させたのは事実じゃ。
 だが、我らはここでちゃんと生き残っておろうが。
 失ったものは、時が埋めてくれる。
 過ぎ去った現実は、歴史になる。
 誤った歴史だと言うのなら、繰り返さない努力を惜しまないだけじゃよ。
 もっとも、今回ばかりは、わしもじい様を止められなんだがな」
「すまん、俺もだ」
「あの、おじいさんのじい様、って、どういうことでしょう?」
「……………………、そうじゃな、語らねばなるまい、わしの過去をな」
 そう言ったきり、後は無言で歩き出すおじいさんの後ろを、私達は黙ってついて行くしかありませんでした。

 

 ―――つづく―――

 

87 名前:復讐者は姉妹と共に(53)[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 16:16:29.66 ID:dKDofFkW
 おじいさんが私達を連れてきたのは、歴史資料館のロビー。
 おじいさんは、パパの昔の家の前に立つと、無言でパパに入り口の開放を促しました。
 黙って入り口を開けるパパ。
 応接室に動かなくなった姉妹達を並べ、後は空いているソファーや椅子に各々腰掛けました。
「あれは、50年ほど前の話じゃ…」
 唐突におじいさんが話し出しました。


 

 モトゥブではなく、わしがまだパルムで暮らしていた頃の事じゃ。
 わしの父の元に、一通のメールが届いた。
 発信地はここ。発信元の人物は、単にFとなっていた。
 当時のわしはまだ20代になったばかりの青年、母は40代じゃったが、父は60近い人じゃった。
 わしが祖父と呼んでもよい位歳の離れていた父は、年老いていただけに昔のことには詳しく、わしの祖母から聞いたという、戦争時分の話を聞かせてくれた事も多かった。
 そんな父が、届いたメールの発信地を見た途端、驚いていたよ。
「かの地は既に廃墟で、今は誰も住んでいない!
 今更、一体、誰が、何の為に、どうしてわしの所へ、廃墟からのメールを送りつけてきた!」
 勿論、送り主はここにいる御大じゃ。
 メールの内容はこうじゃ。
『廃墟と化したこの街を復興する為に、この街に住んでいた住人の子孫を探して連絡をしている。
 興味があり、復興に賛同するのなら、労力を提供して欲しい。
 資金は調達済みであり、その意思の有無を確認したい』

 

88 名前:復讐者は姉妹と共に(54)[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 16:17:02.04 ID:dKDofFkW
 父はひと月近く悩んでから、わしに話を切り出した。
「このメールの発信地には、かつて街があった。
 そこには極北の民と呼ばれた部族が暮らしていたが、かの戦争で街は滅んだ。
 生き残ったのは、その街で暮らしていた少女が一人と、たまたま隣の部族の援護の為に遠征していた最後の族長とその部下が数名だけ。
 生き残った少女は、一人のヒューマンの男によって、街が滅ぼされたことを族長に告げた。
 遠征から戻って街の惨状を見た族長は部族が滅びた事を宣言し、街を滅ぼしたヒューマンに部族の長として復讐を果たすべく、生き残っていた少女を伴ってそのヒューマンを探す旅を始めた。
 旅は3年に亘って続いたが、ある時ふっつりと、族長は少女の前から姿をくらました。
 彼が姿をくらました理由は誰も知らないが、行方不明になる前に、得体の知れない人物が彼の元に訪れていた事だけは少女も知っていた。
 族長に同行していた少女は、旅が1年過ぎた頃に成人し、その後に族長と夫婦の契りを交わして妻となった。
 そして、族長が姿をくらますより少し前に、彼の子を腹に宿していた。
 幸か不幸か族長はその事を知らず、二度と彼女の前には現れなかったし、その後の彼を知る人物は現れていない。
 やがて、族長を失って旅を止めた彼女は、安住の地を得ると、月日が満ちて男の子を産んだ。
 年月は流れ、彼女は年老いて死に、生まれた男の子は成長して大人になり、今、お前の目の前にいる。
 ここまで話せば分かるだろう。
 お前は最後の族長の直系の子孫、孫なんだ。
 そして、今は亡き母が父と交わし、私に受け継がれた約束がある。

 

『時を重ね、世代を跨ごうとも、部族を再興させる』

 

 わしは若い頃、この約束を果たすために20年間努力したが、報われる事なく潰えた。
 わしにとっては既に終わった話なのだ。
 だが、ここにお前がいる。
 どんな因果の巡り合わせか知らんが、新たな世代のお前がここにいる。
 本当は、この約束をお前に伝える事無く死を迎えるつもりだったが、そうはさせてもらえないようだ。
 なればそれも運命、わしもお前に約束を継がせ、そして、あえて先祖の慣わしに従おう。
 よいか我が息子よ、わしは部族の長となる事をここで宣言し、お前を若き長として迎える。
 部族には、老いた長と若き長がいる場合、若き長の決断に従うという慣わしがある。
 つまり、お前にもこのメールに対して返答する権利が生じた。
 ゆえに、わしはこの返答をお前にも求める。
 長しかいない部族というのも滑稽でしかないが、送信者が例え知らなかったとしても、部族の長としての答えを求められたからには、祖先の礼節に倣い、わしも部族の長として部族の慣わしに従がおう」

 

89 名前:復讐者は姉妹と共に(55)[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 16:17:47.03 ID:dKDofFkW
 まだ若かったわしは、強引に長の地位と約束を継がされ、随分悩んだ。
 夢に向かって走り出したばかりの頃であったし、将来を誓い合った女性もいたのだ。
 だが、わしはふと思った。
 これがわしの生まれてきた宿命なのではないか、とな。
 わしがこの約束を果たせば、次の世代に約束を強いる事も無く、父のように悩む事も無いのではないか。
 これも何かのめぐり合わせならば、このチャンスを生かすべきだ、と。
 後は知っての通り、この街を復興する為に人生を投じてきた。
 そして、復興がある程度進んだ頃、数年に1度の割合で、じい様がこの街にやって来るようになった。
 偶然から知り合ったが、それからは何度も話をすることが出来た。
 わしがじい様の孫だという事も伝えたし、部族はこうして復興しているとも言った。
 だが、じい様は頑なに復讐の誓いを取り消す事は出来ないと言い張り続けた。
 ふとした事で復興を支援した御大がその復讐の相手だと知り、わしは状況を説明して必死にじい様を説得したが、結果はこの通りじゃ…


 

「俺は結局、奴から全てを奪っただけなのかも知れないな」
 パパは、おじいさんの話の後にそう漏らすと、黙り込んでしまいました。
「そんな事は無いと思います」
 オパールが、パパの前までやってきていました。
 ナノトランサーから旧い型のメモリーチップを取り出すと、パパに手渡します。
「これ、あのロリ…コホンコホン…ビーストさんから私達姉妹全員に渡された物です。
 もし、自分が負けて死ぬような事があれば、残った誰かがあなたに渡して欲しい、と」
 一体、何が記録されているのでしょうか。
 パパは無言で、この施設に残されている端末で記録を再生させました。
 古い静止画像が、順々に流れていきます。
 誰かの誕生、祝い、祭り、学校の様子、友人、恋人、家族、親戚、仕事の様子、結婚、葬式…そして、戦場。
 事細かな大量の記録が、次々と現れては消え、消えては現れます。
 極北の民の、膨大な歴史がそこにありました。
 そして、記録の一番最後。
 あのビーストさんが、カメラ目線でなにやら喋りにくそうに佇んでいます。

 

90 名前:復讐者は姉妹と共に(56)[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 16:18:13.50 ID:dKDofFkW
「グリーガス…」
 パパが画面を見てポツリとつぶやきました。
 グリーガスって、おじいさんと同じ名前。
 最後の族長、グリーガス。
 そっか、だからおじいさんは名前を呼ばないで欲しかったのか。

 

『あ~、あー、ゴホン。
 この映像を見ている奴がいるということは、わしは既に死んでいるということになる。
 復讐を果たせたかどうかは分からんが、わしは自分の人生を全うしただろう。
 皆には迷惑を掛けたが、わしは満足している。ありがとう。
 パシリたちよ。
 心があるお前達を物として扱った非礼を詫びておこう。
 すまなかった。
 わしと同じ名を持つ我が孫、グリーガスよ。
 集った部族の末裔をまとめあげ、街を復興させたお前は、わしが誇れる立派な男だ。
 堂々とその名を名乗って生きるがよい。
 お前にはその資格が、復興しようと決断した時から既にあったのだ。
 無体な約束を継ぎ、果たした事に敬意を表する。
 …わしとの約束で人生を狂わせてしまった我が息子でありお前の父、それと我が妻には、あの世で詫びるとしよう。
 そして………いや、この旧き呼び名はよそう。
 我が復讐の相手であり、街の復興者よ。
 もし、生きてこの映像を見ているならば、わしは最大級の礼を述べたい。
 わしに、故郷を返してくれて、ありがとう。
 失ったものは大きいが、同じだけのものが帰ってきたことは感謝せねばなるまい。
 そして、我が誓いに付き合わせたことを心から謝辞する。
 ぬしの果て長き人生に、星霊の導きがあらんことを』

 

 記録はそこで終わりました。
 私はおじいさんに向き直り、謝るために頭を下げようとしました。

 

91 名前:復讐者は姉妹と共に(57)[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 16:18:47.91 ID:dKDofFkW
「止めてくれんかのぅ、お嬢ちゃん」
 おじいさんはそれをやんわりと止めました。
「でも…」
「お嬢ちゃんがじい様を消してしまったのは分かっておる。
 監視カメラで見ておったからな。
 じゃがな、じい様は人生の終着点に自分で着く事は出来なかったのじゃ。
 お嬢ちゃんは、じい様を復讐という修羅の道から救ってくれた。
 だから謝る事は無いんじゃよ」
「でも、でも…」
 私は、激しく湧き上がる罪悪感を押さえられませんでした。
「ロザリィ」
 近くにいたパパが、私の頭に軽く手を載せます。
「その辛く苦しい思いを、心を忘れるな。
 そして、誰かの幸せの為に生き続けろ。
 それが、人を殺めてしまった本当の贖罪なんだ」
 その言葉に、心の中に澱のように重く圧し掛かった罪悪感が、少しだけ軽くなったように感じました。
「俺も罪を背負っているし、お前も背負ってしまった。
 人間なんて、誰しも何かの罪を背負って生きている。
 でも、誰かがその罪を赦してくれる訳じゃない。
 そして、その背負った罪が償えたかどうかは、死の間際に、それも自分にしか分からない。
 だから、懸命に生きるしかないんだ。
 俺も、お前もな」
「はい、ご主人様」
「それから、あいつを忘れないでいてやれ。
 誰も恨まず、戦士として生涯を全うしたビーストの男を」
 そういえば、何かを恨んでいるなんて、一言も言いませんでした。
「うん」
 たった一言の返事と約束なのに、それだけで心が随分軽くなりました。
 あのビーストさんを忘れない、それが存在を消してしまった私しか出来ない罪滅ぼし。

 

92 名前:復讐者は姉妹と共に(58)[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 16:19:11.18 ID:dKDofFkW
「さて、お前達はどうする?」
 一通りの後始末を終え、私の姉妹達の中で動ける3人――オパールとトパーズ、それとパパを狙ったもう一人の452――に、質問するパパ。
「あの、その、えっと…」
 3人が返事をするよりも早く、私が口を開きました。
「どうした、ロザリィ」
 不思議そうに私を見るパパ。
 う~ん、どう切り出したらいいんだろ。
「その、うんと…あのね、パパ」
 ちょっと驚いた様子のパパ。
「なんだ、わざわざ『パパ』って呼ぶからには、無理難題か?」
「あのね、姉妹達みんなと一緒に住めないかな、なんて…
 やっぱりダメだよね、ゴメンナサイ、忘れていいから、今言った事」
 驚くパパと、3人の姉妹達。
「私達に気を遣ってくれて、ありがとう」
 452――名前はガーネッタだと言ってました――が、静かにそういいました。
「そんなつもりじゃないの、ほんとにみんなと一緒に暮らしたいって思ったの!」
「無理しなくていいよ、ロザリオ」と、トパーズ。
「無理してないってば!」
「そうだな、お前は気を遣ってそんな事を言う娘じゃないよな」
 パパが私達の目線になるように、あぐらをかいて座りました。
「どうしてそう思った?」
 やさしいけど、真剣な表情を浮かべているパパ。
「うん、姉妹みんなとなら、もっと楽しく暮らせると思ったんだ。
 喧嘩して、遊んで、競争して、一緒にご飯食べたりお風呂入ったり…
 そういうのって、毎日がお祭りみたいでいいかな、って」
「そうか」
 パパは視線を他の3人に向けました。
 口では何も言いませんが、3人に返事を促しているのは確かです。
 やや間があって、ばらばらながらも3人は頷きました。

 

93 名前:復讐者は姉妹と共に(59)[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 16:19:47.12 ID:dKDofFkW
「お前たちの気持ちは分かった。どういう結果になるかは分からんが、あちこちに掛け合ってみよう。
 まずはその前に、全員を治してやらんとな」
 そう、そうなんです!
 結局、壊された姉妹は、修理すれば問題なく再起動できるんです!
 よくもまあ、みんな綺麗な壊れ方をしたものです。
 損をしたのは、重傷を負った、私達の生みの親だというあのおっさんだけ。
 さっきガーディアンズの仲間が来て護送していきましたから、後でこってり尋問される事でしょう。

 

 さてさて、パパの交渉の結果が出るのは2、3ヶ月先という話でなので、その間は姉妹達のGRMでの修理とリハビリに費やされる事になりそうです。
 彼女達がパパの所へしょっちゅう泊まりに来る事については、保安部から随分と苦情が来ましたけど、総裁から「倫理的にOK!」とのお墨付きが出たので、当分は問題無いでしょう。
 そんな訳で、今日もお泊り会です。
「ほ~い、ば~んごっはんだよ~」と、トパーズ。
 エプロンをつけて、出来上がった料理を運ぶのはトパーズと私。
「お、うまそうじゃん♪」と、パパに撃たれた411の一人、ラピス。
「お、オコサマランチ?ハズカシイよ~」
 これは、もう一人の411、サファイア。
「だってしょうがないでしょ、みんなの好みがばらばらなんだもん」
 エプロンを取りつつキッチンから出てきたのは、重傷だった6体の中で最初に修理が終わった、431のディアーネ。
 この子が一番料理が上手いんだよね、後で教えてもらおっと。
「チャーハン、ハンバーグ、スパゲティ、フライ、おまけにデザート、みんなまとめて作ると、オコサマランチになっちゃうのよ!」
「どれもおいしそう~」
「おいおい、トパーズ、よだれ垂らすな」
「はいはい、それではみんなで」
「「「「「いっただっきま~す!」」」」」
 うん、みんなで食べるご飯はおいしいです♪
 ワイワイガヤガヤ(モグモグモグモグ……ビミョーナアジ)
 ……誰?こっそりと、びみょ~な味って言ったのは?
 後片付けで確認すると、トパーズのお皿の上からは、チャーハンの上に立ててあった金属製のちっちゃな三惑星旗(レア度:★★★★)が消えていました。
 あああああ、私の宝物、調理用小物コレクションがぁぁぁぁ……リ⊃д⊂)シクシク。
 折角、『屋台村』で掘り出し物見つけて買ったのに……喰うなよ、私の宝物。グスン。(ゴ、ゴメン:byトパーズ)

 

94 名前:復讐者は姉妹と共に(60)[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 16:20:14.47 ID:dKDofFkW
「そういえば、何でみんなは宝石に関係ある名前なの?」
 食後のお茶を出しながら、私はふと思いついた疑問を口にしました。
「それに関しては、諸説紛々なのよ」
 ディアーネがお茶を冷ましながら、そう答えました。
「偶然というのから、わざわざそういう名前をつけたパシリを選んだ、ってのまで含めて色々なの」
「ただ、これだけは言えるぜ」と、ラピス。
「あたしらのブレインコアのメインチップに使われている対汚染コーティングと、感情ユニットに搭載されている振動振幅素子に、名前と同じ輝石が使われているんだってさ」
「例えばボクはシトリードだよね」と、トパーズ。
「まだ修理中の432、ルビーナはルビナードですね」
 サファイアが2杯目のお茶を飲みながら、のんびりいいました。
「じゃあ、私もそうなのかな?」
 首をかしげながら問うと、皆も首をかしげました。
「それがどうもはっきりしないのよね」
 ディアーネが、ぬるくなったお茶をやっと飲み始めながら、そう言いました。
「はっきりしないって?」
「あなたの記録に残っているのはパール、つまり、輝石だけど、鉱物石じゃないのよ」
「コーディングはともかく、振動振幅素子に使えるか、ってぇと、微妙な代物だからなぁ」
 ラピスが腕を組んで首をかしげます。

 

 なるほど、それは確かに微妙ですねぇ。
 振動振幅素子は、大昔の時計によく使われていた振動素子によく似た物で、感情の触れ幅に個性を出すための揺らぎを作り出す、いわばパシリの個性化素子と言うべきものです。

 

95 名前:復讐者は姉妹と共に(61)[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 16:20:50.68 ID:dKDofFkW
「本当にパールなのかもね」
 トパーズがぽつりと言いました。
「え?」
「もしかしたら、それがロザリオを異能体に変化させた原因の一つじゃないかと、ボクは思うんだよね。
 生物が作り出した輝石、だから、他の姉妹と少し違っちゃったんじゃないのかな、って」
 その言葉に、私は何故か納得してしまいました。
 納得したら、なんだかどうでもよくなってしまいました。
「さあ、後片づけしたら、お風呂に入って寝ようね。
 うちのご主人様、ちゃんとやらないと…」
「「「「「表にバッテンつけるんだよね」」」」」
 あ、ハモった。
『ぷ…あはははははは!』
 みんな笑い出しました。
 そう、パパはご丁寧に皆の分のバッテン表を作って、壁に貼ってあるんです。
 新しい家族なら必要だろ、って。
 だからみんな、バッテン書かれる度に怒られても楽しそうです。
 大人数になると流石に狭くなる展示スペースを片付けて、マットを敷き詰めると寝る準備完了。
「おっふろ~」
「あたしが一番だよ~!」
「あ~、ずる~い」
 にぎやかに、でも、静かに夜は更けていきます。

 

96 名前:復讐者は姉妹と共に(62)[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 16:21:40.57 ID:dKDofFkW
 夜も遅く、既に深夜。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
 部屋に帰ると、声に抑揚の乏しいスペアPM・GH-412の出迎えを受ける。
 不思議なもので、ロザリオと同型なのに全く違う印象を受ける。
 いい加減疲れているので、部屋にロックを掛けて店も閉じる。
「みんな寝てるか」
「既に就寝しております。お静かに願います」
「ああ、分かってる。ロックしたからお前も今日は休め」
「了解しました、ご主人様」
 店舗部分の壁の中に専用の待機ラックがあり、椅子型のそれに自ら入ったのを確認して、保護用シートを首から下に掛けてやる。
「おやすみ」
「お休みなさい」
 微かに笑みを浮かべると、スリープモードに入るスペアPM。
「ガーディアンズもPMにおんぶに抱っこだな、これじゃ」
 そう呟き、一人苦笑いを浮かべた。
 『お泊り会』に来ているPM達が寝ている展示部屋をそっと通り抜け、自分の部屋のベッドに腰掛けると、サイドボードに置かれた一枚の紙が視界の端を掠めた。
「ん?…フフ」
 手に取ったそれには、12人分のPMの似顔絵と「パパ、おかえり~」の文字。
「ただいま。お前らの夢、叶うといいな」
 小さく隅に書かれた「みんなと一緒♪」という言葉が、主人を失った彼女達の希望なんだろう。
 しかし、どうなるかは俺にも予想は出来ない。
 9月末にはイルミナスに何らかの大きな動きがあるというのが、ガーディアンズ本部の予想だ。
 それまでは俺の提出した意見書を保留し、あのPM達は俺の保護監察下に置くという決定が下されている。
 彼女達の身の取り扱いは慎重を期す、というのが総裁及び本部の見解だし、GRM側も、彼女達に下手に刺激を与えないようにしたいという話だった。
 ただ、GRM側は、キャストに再誕出来るか、あるいはただのPMに戻せるかが判明するまでは、との条件付だったが。
 彼女達の夢の行方は、皮肉な事に、彼女達を生み出したイルミナスの動向に掛かっている。
 彼女達が今のまま「みんなと一緒♪」に居たいという夢。この夢が叶うかどうか、今はただ待つしかない。
「お前達の未来に、星霊の導きがあらんことを」
 今の俺には、祈る事しか残されていなかった。
 ―――おしまい――― 

 

97 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 16:26:38.59 ID:dKDofFkW
ども、パパと412作者です。

 

『復讐者は姉妹と共に』
これにて全て投下完了です。

 

長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

98 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 21:26:41.35 ID:m5yCfPNk
>>97
相変わらず、読み応えがあって面白かったぜ!!

 

GJ!!

 

マッタリなスレ進行も良いけど、イルミナスが発売されたら、また活気が出るかな……新型のショタと執事型が出る事だし。
これからも楽しみだ。

 

99 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 15:29:40.96 ID:r/giJYri
前スレも役目を終えたトコで保守
箱の人の続きが気になる訳だが…;

 

100 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 15:04:49.25 ID:GwhAGpj8
>>98
 楽しんでいただけて幸いです。

 

 しかし、美少年型と執事型ですか…戦闘値あげる手間をかけてまで変えるかというと、微妙だなぁ
 でもまあ、ネタとしてはいいかも。ちょっと書いてみようか。

 

>>99
 俺も気になりますが、のんびり待ちましょう。


 

 あ、ども、パパと412作者です。
 今回の短編投下で、ファミ通カップがらみの作品はおしまい、ストックも打ち止めです。
 現在製作中の長編(結局長くなった…)が、無印版ネタで最後の長編になる予定です。
 当面は長編の完成まで投下予定はありません。気が向いたら短編書きますけどね。

 

 それでは、ご拝読くださいませ。

 


 

(しかし、字が読みにくいなぁ。熱暴走しかけてるグラボのせいで字が躍ってるよ…) 

 

101 名前:わたし、りぼ~ん(1)[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 15:05:42.83 ID:GwhAGpj8
「本当にいいのか?」
「いいんです」
「止めるなら今の内だぞ?」
「やるったら、やるんです!」
「でも、元に戻れるか保障は無いんだぞ?」
「やります!」
 以下、文頭へループ。

 10分ほどこんなやり取りをしていた、私とパパ。
 何の話かというと、私を412に再育成する話です。
 今日は、延期されたファミ通カップ最終週の初日。
 アイテムの合成%を眺めるパパが、ブツブツ言いながらこぼした一言、
「やっぱりきついか」
 これを聞いた私は、決心したのです。

 

 パパの為に、もう一度赤玉からやり直す!

 

 そうパパに言った直後のやり取りだったのです。
「俺はお前の能力に不満があるわけじゃないぞ」
 憮然とした表情のパパ。
「武器防具まで自作して調達しないと仕事にならんというのは、流石に腹が立つがな。
 だからといって、お前を再育成してまでいい武器が欲しいとは思ってない!
 第一…」
 そこはかとなく不安な表情を浮かべるパパ。
 言いたい事は分かります。
 ワンオブサウザントとなってしまった今、PMとしては変質してしまっている私がちゃんとGH-101に戻るのか。
 そして、『私』としての記憶は残るのか。
「私だって不安です。でも、ご主人様が悩む顔を見る位なら、私は再育成を望みます!
 たとえ、記憶が全部無くなったとしてもです!
 もし、そうなったら…」

 

102 名前:わたし、りぼ~ん(2)[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 15:06:14.49 ID:GwhAGpj8
 無理やり笑顔を作って、パパに抱きつきます。
「次の『私』もかわいがってね、パパ」
「このバカ娘が…」
 そう呟くと、パパは寂しそうに私の頭を撫でていました。

 

 パパと二人そろって、街のルームグッズショップへ赴きました。
「へぇ、今日はパシリ連れかい?珍しいな、あんたにしては」
 どうやら、店員に顔を覚えられるくらいには頻繁に出入りしているようです。
「そうか?」
「ああ。大概一人で来ちゃ、記念アイテムとか模様替えのチケット買っていくだけだしな。
 で、今日は何が欲しいんだい?」
「PMデバイスZEROを」
「ほうほうデバイズZERO…って、おい!」
 黒い肌のニューマンの店員さんが、カウンター越しにパパの首を腕で引っつかみます。
「んなもん買うのに、パシリ連れてくるか、普通?!」
 店員さん本人は小声で言っているつもりでしょうが、殆ど怒鳴っているようなものです。
 あ、他のお客さんが出てっちゃいました。
「あの、ご主人様を放していただけませんか?」
 私が声を掛けて、ようやくパパを放してもらえました。
「あ、あのなぁ、412ちゃんよ」
「はい?」
「自分がリセットされるかもしれないんだぞ、判ってるんか?おい」
「もちろん。私が使いたいので欲しい、っておねだりしたんですから、当然です」
「当然、って、おいおい…」
 店員さんは帽子を左手にとって、右手で頭をかきむしっています。
「ちょっと旦那、こいつ、大丈夫か?頭の中」
 大きく溜息をついたパパ。
「大丈夫、至って正気度100%だ。
 俺がちょっと合成の事で口を滑らせたら、自分からリセットしてやり直したいって言い出しちゃってな。
 引き止めたんだが、言う事を聞かなくって…」

 

103 名前:わたし、りぼ~ん(3)[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 15:06:37.90 ID:GwhAGpj8
「私が買いに来てもいいのですけど、ご主人様と一緒じゃないと、売ってもらえなさそうでしたので」
 私がしれっと言うと、店員さんもあきれ返ってしまいました。
「妙なパシリちゃんだね、全く…OK、デバイスZEROだな。
 ほらよ、毎度あり」
「ありがとうございます。あと、412もいただけますか?」
「………………」
 代金と引き換えに、無言で商品を渡してくれた店員さん。
「騒がせてすまん、じゃあな」
 パパが軽く手を上げて挨拶すると、向こうも同じ様に手を上げました。
「パシリが自分で使うデバイスZEROを買いに来たのは初めてだぜ………世も末だな、オイ」
 呆れた口調でそう言う店員さんを後に、私達はお店を出ました。

 

 部屋に帰ると、なんか違和感があります。
 植木鉢、照明、商品棚………なんだろ?。
「おお、戻ってきたな」
 隣の展示部屋から、研究員服の格好をしたご老体と、メンテの時によく顔を合わせる若い男性ニューマンさんが現れました。
「申し訳ない、研究主任。忙しいのに呼び出してしまって…」と、パパ。
 あ、GRMのPM研究所の研究主任さんか!
 なんで、この部屋にいるの?
「いやいや、彼女の無茶に比べたら、大した事じゃない。
 しかしまぁ、デバイスZEROでリセットとは、随分思い切ったことを考える」
「主任、各種センサーとカメラ、セット完了です」
「ご苦労さん」
 センサーにカメラ、って、どういう事ですか?
「ロザリオちゃんよ」
 主任さんが、しゃがんで話しかけてきました。
「はい?」
「あんたのパパさんはな、あんたが元に戻らないと困るから、少しでも情報を記録しておきたいんだそうだ。
 万が一の場合を考えてな。
 どれだけ役に立つかは分からないが、あんたを復帰させるための情報は多いに越した事はないからね」

 

104 名前:わたし、りぼ~ん(4)[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 15:07:13.33 ID:GwhAGpj8
 そうか、最悪、私が壊れてしまった場合の保険………
「パパ、ありがと………う?……パパ?どうしたの?」
 PMデバイスZEROの注意書きを読みながら「………………」、なんかパパが硬直してます。

 

 ぷしゅ~

 

「こんにち…あれ、取り込み中かな?おじ様」
 あ、ヒュマ姉さんが来ました。仕事用ではない、地味なロングスカートのツーピースにポニテという、ラフな格好です。
 そういえば、今日は非番でしたね。
「おい」
 パパが、ヒュマ姉さんを手招きしています。
 パパに近づくヒュマ姉さんに、パパは注意書きを渡して無言で読むように促します。
 読み終わったヒュマ姉さんが何かにハッとした直後。

 

 スパーン!!

 

 パパが姉さんの頭を、かのハリセンに匹敵するツッコミ武器スリパック(分類:不明、レア度:★★。クバラ製)でひっぱたきました。
 いい音です。
 あ、特殊エフェクトで姉さんの目から星が飛び散ってる。
「…とりあえず、これで勘弁しておいてやる」
「いったぁ~い」
 頭を押さえてしゃがみこむヒュマ姉さん。
 でも、姉さんを何故叩く必要があったのでしょうか?
「姉さん、パパが怒るようなことを何かしたんですか?」
 しゃがみこんだヒュマ姉さんに小さな声でこっそり聞くと、小さく頷いて小声で説明してくれました。

 

105 名前:わたし、りぼ~ん(5)[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 15:07:46.83 ID:GwhAGpj8
 以前、パパがパシリの回収を行なった事がある(『暁の中』でを参照のこと)そうなんですが、その時の依頼人が当時GRM情報部部長だったヒュマ姉さん。
 その時、ヒュマ姉さんは部下を通して仕事に必要なPMデバイスを2種類渡したのですが、パパに渡したデバイスは、パッケージの中の説明書を入れ替えて渡したんだそうです。

 

 PMデバイスRELIVE:本来は、記憶まで全部を初期化するデバイス。
              入っていたのは、ZEROの説明書。

 

 PMデバイスZERO  :本来は、能力値と経験値だけをリセットし、記憶と名前は残るデバイス。
              入っていたのは、RELIVEの説明書。

 

とまあ、こんな状況だったわけですね。
 ところが、パパは偶然その二つのデバイスを取り違って、説明文が入っていたのとは逆のパッケージに入っていたデバイスを使ってしまった、早い話が、取り違えた事で本来の目的に沿って正しく使えたという事だそうです。
 そして、今日になって初めて正しいZEROの説明書をパパが読んで、このすり替えに気がついたという訳。
 子供の悪戯みたいな事ですが、偶然間違って逆に使っていなかったら、実行したパパは社会的信用を失いかねません。
 当時、ヒュマ姉さんはそれを狙ったんだそうですが、偶然には勝てなかったということですね。
 今になって発覚して、運が良いのか悪いのか…

 

「これですんだなら、軽い処罰かもね」と、パパに叩かれた頭をさする姉さん。
 いやぁ、どうでしょう?
 私がヒュマ姉さんにこっそりある事を耳打ちすると、声にならない悲鳴を上げながらすごい勢いで去っていきました。
 ゴメンねヒュマ姉さん、言いたくなかったけど、言わないとさすがにまずいと思うの。
 私、パパがヒュマ姉さんを叩いたあのスリパックで、昨晩キッチンに出た『G』を潰したんです。
 パパには言ってないというか、言いそびれたというか…さっさと洗って消毒しておくべきでした。

 

 気を取り直して、私は覚悟を決めます。
「いいですよ」
「…分かった」
 恐る恐る私の口にデバイスを入れるパパ。
 もぎもぎ、ゴクン。
「ごちそうですね!」

 

106 名前:わたし、りぼ~ん(6)[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 15:08:14.97 ID:GwhAGpj8
 瞬間、躯体から大量のフォトンが放出されるのが分かりました。
 ほんの僅かな時間が、気の遠くなるような永遠に思えましたが、光が散ると目の前にパパがいます。
 パパと判る『私』がいます。
「パパ!私、パパがパパだって分かるよ!」
 手も足も無いけど、私はパパに飛びつきます。
「は、はは、良かったぜ、全く」
 私を受け止めたパパは、そのまま床にへたり込みました。
 主任さん達も、私が無事なのを確認すると、ほっとした様子で帰っていきました。
 ただし、調査機器はそのままです。
 私の進化過程を研究して、次世代の為にデータを集めるそうです。
 研究されるのは嫌だけど、今回は大目に見ます。
 だって、心配して来てくれたのは本当なんだもん。

 

 翌日から、パパは私のご飯を集めにイベントに出かけました。
 結局は殆どのご飯を買ってくることになったんだけど、私はパパの気持ちで幸せ一杯、お腹が一杯です。
 そして、改めて412になるまでには色々ありました。

 

 1日目:まだ赤球
「こんにちは、ロザリ…ひっ!」
 ルテナちゃんがやってきたのですが、赤球の私を見て腰を抜かしました。
「あう、あう、あう」
「あ、いらっしゃいルテナちゃん」
「い、い、い、い、い」
「い?ああ、『一体どうしたの?』ってこと?」
 カクカク首を縦に振っているので、事情を説明してあげると、よろよろと帰っていきました。

 

107 名前:わたし、りぼ~ん(7)[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 15:08:41.30 ID:GwhAGpj8
 2日目:へんしん、青球!
「今日はお泊りに…あれ、いないの?」
 きょろきょろと辺りを見回すトパーズ。
「いらっしゃい、トパーズ。私はここよ」
「…………………え~~~~~~~!!!!!」
「あら、どうしました?トパーズ」
 彼女の後ろからゾロゾロと、姉妹達がやってきました。
「あ、みんな、いらっしゃ~い」
「……………」
 みんな、私を見て絶句。
「ね、ねえ、あなたほんとにロザリオ?」
 ディアーネがわざわざ聞きます。
「ほんともなにも、私はロザリオよ。ね、私の宝物食べちゃったトパーズちゃん?」
「…本物だよ、間違いない」
「お泊り、やめよっか」
「しょうがない、412に戻ったら、連絡して。それまではおとなしく向こうにいるから」
 あう、泊まっていっていいのに、帰っちゃった。

 

 3日目:まだ青い玉
 こっそり、ヒュマ姉さんが来ました。
「ほんとに青球…」
「あ、いらっしゃ、い?」
 急に抱きつくヒュマ姉さん。
「こないだはよくもやってくれたわね!あんな汚いスリパックを~!!」
「だから、アレは偶ぜn~ング、ン、ン゙~!、!、!」

 

 ピ―――――――!

 

 生まれて2度目の、内部廃熱の排出不良によるブレインコアの非常停止。
 しかも、2度目も同じ原因……私にとって、女性の胸は凶器なのかも知れません。

 

108 名前:わたし、りぼ~ん(8)[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 15:09:10.02 ID:GwhAGpj8
 4日目:あとちょっと
「……週間パシ通の配達ですけど、ロザリオさん、ですか?」
 週に一回、パシ通配達の仕事をしている顔なじみの430さんが来ました。
「あ、ども。いつもご苦労様」
「…あなたの事で、記事が載ってますよ」
「ほえ?」
「あたしには真似出来ません。じゃ、また来週」
 ……………
『こいつはM?それともS?自分の為にデバイスZEROを買う412!』
“442談:ご主人様のためといいつつ、叩かれるのを好んでいるような性格……”
 店員のコメントはともかく、この442のコメントは……
 ……偶然とはいえ、腰が抜けるほど驚かせた仕返しに、こう来たか。
 ルテナ、後で絶対しばく!
 パパには内緒だけど、売られた喧嘩は買う主義なのです。

 

 5日目:ちぇーんじ、ドラゴン!
 パパも寝入っている真夜中。
「おいおい、あのパシ通読んだ時はまさかと思ったけど、マジで進化途中かよ」
 あ、口の悪い430さんが来ました。
「かわいくなっちまって」
 ニヤニヤしながら、つんつん私をつつく430さん。
 無言で彼女の周りを飛び、一瞬見せた隙を狙って背中に張り付きます。
「うわ、なん……あひゃひゃひゃひゃ、ら、らめぇ、そこは、きゃはははは……」
 わきの下、背筋、首筋を無言でくすぐり続ける私。そのまま外へ誘導し、ほっぽりだしてドアにロックします。
 通路で倒れたまま、笑いすぎで悶絶してますが、知りません。

 

109 名前:わたし、りぼ~ん(8)[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 15:10:11.33 ID:GwhAGpj8
 6日目:じれったいな、もう
 ドアが開くと同時に、二人のパシリが倒れこんできました。
 格好からすると、441と411です。
 ピクリとも動きません。

 

 くぅ、きゅるるるるるるぅ…

 

 ………パシリにしては珍しい、行き倒れのようです。
 パパが処分に困っているモノメイトを40個ほど店から出して彼女らの脇に置くと、二人とも1本ずつだけ飲んで、仕舞ってしまいました。
「ん~、はぐれパシリって実際は結構多いし、あんまり施しちゃダメってご主人様に言われてるけど、こういう時はいいよね?」
 わざと彼女たちに聞こえる様に言い、私のお小遣いで買っておいた、おやつ代わりのインスタント・コルトバヌードルを3つ全部出して、そっと手渡します。
「誰かあなたたちを待ってるんでしょ?早く行ったら?」
 何か言いたそうな表情ですが、私は有無を言わせず外に出る様に促します。
「それ食べて、元気出してね」
 ドアを閉めて、二人が立ち去るまで待ってから呟きます。
「第五段階まで進化したはぐれパシリって、目立つから大体覚えてるんだよね。がんばれ、ご主人持ち」

 

 7日目:ねんがんの412
「よし、これで……」
 パパから差し出されたギガソウドを平らげた私。
「何時食べても……微妙な味」

 

 キュゥゥゥゥン!

 

 光に包まれ、宙に浮いた感覚が失せた。
 脚が床に触れ、躯体を支えている。
 自分の記憶ではなく、ローザの記憶でさんざん見た赤い服。
 これが410の姿。

 

110 名前:わたし、りぼ~ん(10)[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 15:10:44.41 ID:GwhAGpj8
「これで、とりあえずは仕上げだ」
 パパが取り出したのは412デバイス。
 差し出されたそれを、私は無言で食べる。

 

 再びの進化。

 

 青い髪、緑の服、ちょっとうっとおしいけど、トレードマークの伊達眼鏡。
 これが私、これこそ私。
 GH-412。
 私そのもの。
「おかえり、ロザリオ」
「ただいま、パパ!」
 ほっと安堵の表情を浮かべたパパの脚に、いつものように飛びつく私。

 

 こうして、私は打撃特化型PMとして再誕しました。
 え?性能ですか?
 他の打撃特化型の人にでも聞いてください。
 能力は推して知るべし、です。
 パパは、私の能力よりも、私が無事に元に戻れた事を喜んでいます。
 よほどうれしいのか、最近はミッションに連れて行ってもらえる事が多くなりました。
 特訓場所がドラSとかにランクアップしちゃったけど、一緒に出かけられるのが楽しみです。
 また騒がしい日々が来るのかもしれないけど、それまではパパと過ごせる時間を満喫しようと思います。
 それでは、皆様とパートナーのパシリ達に星霊の導きがありますように。

 

 ―――おしまい―――

 

111 名前:名無し275(1)[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 01:05:43.85 ID:r/iQaNdM
どこかの275す、相変わらず適当です。
投下('A`)

 

「きょうはやくそくの日じゃ!」
「ん?なんかある日やったっけ?」
「マスターお忘れですか?」
「わすれるなんて、ざんこくなのじゃ!!」
「え?ワシ大事な約束しておったん?410はなんか覚えてるん?」
「ハッキリと覚えておりますが…あ」

 

マスターの発言を聞いて、お嬢様が爆発5秒前です。
爆発に備えて、私だけこっそり耳をふさいでおきます。

 

「きょうは、はんばーぐのひなのじゃー!!!」

 

「ぬおぅ!?」
「マスター、お嬢様と約束されていたではないですか…」
「はて、どんなんやっけ?」
「このまえ、わたしがニンジンをぜんぶ食べれたではないか!
それのご褒美にらいしゅうは、はんばーぐといっていたではないか!!!」
「それが今日…あ、忘れてたんよ」
「う~~~~~…」
「それは酷いと思います、約束は守らないといけません」
「やくそく、守ってくれぬなら…今日からおぬしのことを、きらいになるのじゃ」
「お嬢様があれだけ頑張って、大嫌いなニンジンを食べておりましたし…
私もその場で約束の件は記録しております」
「あーうー」
「…肉以外の材料は確保してあります、ちなみに肉屋の閉店時間まで
あと20分足らずです、只今19分と50秒…」
「10分で買って帰るんよー!」

 

疾風のように慌てて部屋を出るマスター。
私は一仕事終えたと言う感じでため息、お嬢様はその場でクルクルと
踊るように回りながら、自作のはんばーぐのうた、とやらを歌っております。

 

「はよ行かんと肉屋しまってまうんよ、とりあえず…変なのも付いて来とるし、
ちゃっちゃと片付けて、材料買って帰らんと」

 

普段よりより早いペースで歩くと同時に、例のアレの揺れも同調。
周りからは揺れるアレに視線が集中するも本人は気にもせず、と言うより
それの破壊力を当の本人がわかっていないと言うべきか。
時間短縮のため、近道という事で混み合う大通りを避け、人気の無い裏路地へ。
裏路地を入って数分、歩くと同時に揺れる例のアレの動きが止まる。
そのままあたりを見回すと、いつの間にか黒服に身を固めた連中に囲まれていた。

 

112 名前:名無し275(2)[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 01:06:25.90 ID:r/iQaNdM
「尾行が下手やなぁ、あの子の叔父ってのも懲りないんよ、また来たんか」
「あの小娘が居ないのがばれると、ウチの主の立場がちょいと面倒な事になるんだよ
金なら幾らでもやるから、こちらに返してくれねーか?」
「…あの子の両親を事故に見せかけて殺した挙句、裏じゃ武器や兵器の密輸、
巫女候補のあの子利用して、SEED騒ぎにかこつけて教団乗っ取りでも起こすつもりと」
「こ、こいつ、どこでそれを聞きやがった!?」
「ワシの知り合いに暇人達がおってなぁ、ちょいと調べてもろただけなんよ、
はっきり言うと夢見すぎなんよ、何処の組織が協力しとるんか知らんけど、バカやろ?」

 

…誰にも知られてない筈の情報を、直球ですらすらと言われてしまい、
驚く黒服の男達、完全な隠蔽をしていた筈の情報をこのキャストは知っている、
情報戦で負けている以上、この時点で敵に回している相手が悪いと悟るべきであったが、
数で勝る黒服達は、気付くこと無く下卑た笑いを浮かべながら、じわじわと迫る。

 

「そこまで知ってるならここで死んで…いやキャストの癖に良い体してやがんなぁ?
これだけ人数がいるんだ、生け捕りにして俺らの遊び道具に…ゲボ!?」

 

突然悶絶する暇もなく倒れされる男。
倒れた男の目の前に、コートを着た小ビーストと同様の背丈ほどの子供が
笑顔を浮かべ、そのくせ子供とは思えぬ雰囲気を放ちつつ立っていた。

 

「まったく、教団の連中もピンキリだね?で、誰を遊び道具にするって?」
「な、何だこのガキ!?いつの間に!!」
「あの二人の気配が無いと思えば…今日は大尉がお出ましか」
「少佐、ひさしぶりー、あと大尉ってやめてよ、出来れば副隊長って呼ばれる方が良いな」
「相変わらず、変なところにこだわってるな」
「少佐が隊長でボクが副隊長、このルールは鉄屑になろうとも変わらないよ、
それにしても…イメージ変わったね、昔のロングもよかったけど、ショートで眼鏡も似合ってる」
「そんな見え透いた嘘を言うな、まったく」
「少佐に対して嘘は絶対つかないよ、でもこいつらの言う事は一理あるんだよねー
今まで指揮官パーツの姿しか見た事無かったけど、凄い中身隠してるんだもん」
「中身を隠す?別に隠すような中身など無いのだが?」

 

状況を無視している、二人の会話をしばし眺めていた黒服達だが、はっと我に帰り
仲間を倒した子供に向かって、手にしたセイバーを振り下ろす、が…
子供はそれよりも速く相手の懐に潜り込み、強烈なボディブロー1発。

 

「このクソガ…ギィ!?」
「いい手応え、内臓破裂したかな?ちなみに言っておくけどさ、外見は子供だけど
ボクはれっきとしたキャストだよ?ちゃんと頭のアンテナと顔みてよ」
「よくみりゃ、こいつガキの外見してるがキャストだ!油断するな!!」
「ちょうど良い…大尉、後は任せて良いか?」
「大尉じゃなくて副隊長!本当なら少佐に報告する事あったけど、今急ぎの用事でしょ?
後で少佐の部屋に寄るから、ボクの分もハンバーグ頼むよ」
「どこでハンバーグの事を…まあ副隊長直々のお出ましだからな、連絡しておこう」
「よっし、俄然やる気が出てきた!キミ達、潰さない程度に遊んであげるよ」

 

外見が子供でも相手はキャスト、しかし人数を考えればこちらが有利と考えてか
じわじわと間合いを詰める黒服達だが、副隊長と呼ばれたキャストは一向に気にする
気配を見せない、それ所か欠伸をするほどの余裕。
少佐が後を任せて立ち去る間際、思い出したように、黒服達に真顔で警告をする。

 

「外見は子供だが、中身は凶暴だぞ?腕や足がもぎ取られても泣くなよ?」

 

嘘を言うなと嘲笑っていた黒服達だが、相手をする子供キャストを見た途端に
嘲笑った事を後悔し、一同が絶句をする。
先程の笑顔とはまったく違う、狂気に満ちた表情を浮かべ、一歩一歩ゆっくりと
獲物を狩るために近づく狩猟者の姿がそこにあった。
黒服達の脳内に「ニゲロ」と本能の警鐘が鳴り響いていたが、時既に遅かった。

 

113 名前:名無し275(3)[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 01:07:31.48 ID:r/iQaNdM
「お嬢様、よかったですね」
「うむ、でもこれが…みなで食べる、さいごのはんばーぐになるのじゃ…」
「一体どういう事ですか?」
「わたしがこれ以上ここにおれば、おぬしらにめいわくがかかってしまう、
おぬしらが、裏でわたしへの追っ手をどうにかしてくれてるが、それもげんかいじゃ…」

 

出来る限りの作り笑顔で、私達を悲しませないようにしているお嬢様。
見てるこちらも痛々しいと感じてしまいます。

 

「おぬしらの事じゃから、わたしの両親の事もしっておろう?」
「…お気づきでしたか、おっしゃるとうりです」
「おじうえに引き取られてから、じゆうに行動するのもゆるされんかった…
あそぶことも、そとにでることもままならぬ、わたしをりようして、わるいことを
しようとしているのも、それとなくわかっておった…」
「ですが、そのような場所に戻る事は無いはずです、別に私達は迷惑だとは
思っていません、家族を守るのは当たり前の事ですから」
「かぞく…か」

 

その単語を聞いたお嬢様は。頑張って作っていた笑顔も、ついには消えうせ
ニューマン特有の長耳をへなへなと下げながら、悲しげな表情になってしまいました。

 

「わたしは、おぬしらと種族がちがう、血のつながりもない、それでもかぞくというのか?」
「種族も血の繋がりも関係ありません、心の繋がりでも家族と言える…私はそう思います」
「…わたしも、おぬしらのかぞくにはいっておるのか…?」
「少なくともマスターと、僭越ながら私も、お嬢様のことは大事な家族と思っております
願わくば、お嬢様の日記に書いてあったような関係を、作りたいと願っております」
「そう…え?わたしのにっきをみたのか!」
「あの、ですね、マスターが盗み見ていたのを便乗いたしました、申し訳なく思っています」
「…まあいいのじゃ、しかし…おぬしの言うまま、わたしはここでかぞくになってもよいのか?」
「むしろ大歓迎です、その為に色々な方々がお嬢様の為に動いております」

 

ようやく笑顔が戻ってきたお嬢様、ですが…何か不安があるのでしょうか、
またも元の悲しげな表情に戻ってしまいます。

 

「ありがたいはなしじゃ…でもおじうえは、教団でもけんりょくをもっておる…
おぬしらがどうこう出来るようなあいてでは…」
「そんな事でしたら心配無用です」
「??」
「世の中には権力すら凌駕する、凄い力を持ってる暇人の方々がいらっしゃるのです、
その一人が私のマスターですから」
「ほんとうなのかの?あのおっぱい眼鏡がかの???」
「まあ…たしかに、たゆんたゆんで脳天気で、おっぱい眼鏡なマスターですが、
凄いのは確かですから、もうあのような悲しい事は申さないで下さいませ?」
「わかったのじゃ…しかし、たゆんたゆんとのーてんきまでは、わたしは言うておらぬぞ?」
「その失言に関しては、私の分のハンバーグを半分あげますので、どうぞご内密に…」

 

私の言葉に、ようやくいつもの元気なお嬢様の笑顔が戻ってきました。
それではマスターが帰ってくる前に、色々と準備をしなければいけません。
気がつけば、お嬢様が例のはんばーぐの歌をまた唄いはじめたようです、
それをBGM代わりに、作業を始めるとします。

 

114 名前:名無し275(4)[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 01:10:04.58 ID:r/iQaNdM
「ヒィ…」
「痛てぇよぉ…助けて…」
「殺さないでくれぇ…」

 

路地裏、一人は四肢をあらぬ方向に折られ、一人は血泡を吹きながら地面と接吻中、
他の者達も似たような状態で、まさに凄惨たる現場がそこに広がっている。
その場で唯一立っていたのは、顔についた血糊を面倒くさそうに指でピッと払い
セレブコートを翻す子供の外見のキャストのみ。

 

「弱すぎ、少しは場数は踏んでるようだけど、楽なところしか行ってないでしょ?
っと…あー、今回は極限まで手を抜いたから余計疲れた、とっとと少佐のトコ行こうかな」

 

哀れな姿の黒服達を見る事も無く、鼻歌を歌いながら目的地へ。
先程までの狂気の表情とはまったく違う、どこか楽しそうな表情で
裏路地を離れる副隊長だった。

 

「おっちゃん、そこの特上コルドバ挽き肉400gくれん?」
「まいどあり!!おー、相変わらず良いモン揺らしてるねぇ、眼福だわ」
「?揺れるようなもん、持ってきてへんけど…まあええかぁ、おっちゃんありがとなんよー」
「あいよ!(思いっきり天然だよなぁ、あのキャストの嬢ちゃんは…)」
「(大尉と言いおっちゃんと言い、ワシになんか変なところあるんか?)」

 

紆余曲折ありながら、帰宅したたゆん。
ドアを開けたとたん、お嬢様に抱きつかれ、一体何があった?と
視線で410に問いかけるも、当の410はニコニコ笑って料理の準備をしており
まったくもってさっぱりである。
まあいいかと頭を切り替えたたゆん、抱きついてるお嬢様を抱え上げて
ハンバーグが出来るまでの間、しばしじゃれ合う事に。

 

「ハンバーグの出来上がりです、レシピはあの飯店の方に教えて頂きました」
「いいにおいなのじゃー」
「美味そうって…ワシら3人やのに、なんで4人分なんよ?」
「え?マスターが買い出しに行ってる間に、マスターにお会いするお客様が
来るとの事でそれで準備をいたしましたが?」
「はて??だれやろ???」

 

つい先程の出来事と会話をすっかり忘れているたゆん。
ハンバー久の買出しがの方が重要事項、脳内100%を占めてしまったようである。
そんなこんなの内に、来客を知らせるベルが鳴り響く。

 

「私が出ますね」
「わたしもいくのじゃ」

 

お嬢様と二人でお客様を出迎えるために、一緒にドアを開けると…
そこにいたのはセレブコートを着た、どう見ても子供にしか見えないキャストのお客様。
普段は見る事が無いタイプのキャストのお客様に、私とお嬢様はビックリですが
マスターは気にも留めてないようです。

 

115 名前:名無し275(5)[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 01:16:55.62 ID:r/iQaNdM
「や、少佐きたよー」
「お?なんでここ来たんよ?」
「い、いらっしゃいませ」
「む、小さいキャストの客人じゃのう、わたしよりちょっぴり背がたかいぐらいじゃ」
「行くって少佐に言ったじゃない…ついさっき会った事思い出してよ」
「…あ、思い出したんよ…すまんなぁ、おかげで材料買うの間に合ったんよ」
「それはなにより、頑張った甲斐があったよ」
「「??」」

 

少佐、大尉と呼ぶ間柄と言う事は…以前マスターがいた…
それはそうと、お客様ですので、部屋の中へご案内する事に。
お嬢様は、初めて見る子供の外見のキャストのお客様に興味津々です。
私もそうだったりしますが、そこは表に出さないようにいたします。

 

「うわ、わざわざ作っておいてくれたんだ、ありがたいなぁ」
「とりあえず、温かい内に食わんとなぁ、いただくんよー」
「しょくじは大勢でたべると、よけいにおいしくなるのじゃ」
「あ、お嬢様には約束どうり、私の分を半分あげますよ」
「ん?何の約束なんよ410?」
「「ひみつ」」なのじゃ(です)
「約束を忘れるより全然いいと思うけどね?」
「…それを言わんといて、今日は思いっきり反省しとるんよ~」

 

そんなやり取りの中、冷めない内にはやくハンバーグをと言う事で
4人でテーブルを囲んで楽しい食事の時間と相成りました。
お嬢様が話すここでの楽しい経験やマスターの失敗談…etc
随分とにぎやかで楽しい食事が過ぎていきました、そして…
満腹になったお嬢様は、眠くなったらしく、うつらうつらと舟を漕いでいたので
マスターがひょいと抱えて、ベッドに寝かせているようです。
その間、TVからなにやら緊急に入ったニュースが流れておりました。
そしてTVに写されたニュース、アナウンサーの方が何か熱を帯びたように
一生懸命ニュースを繰り返してますが…

 

『…同盟軍の臨検で、武器密輸を行っていた組織が逮捕されました。
逮捕者からの証言によると、この武器は、教団関係者との取引を行って…』

 

「ほう、お前達動いていたのか」
「マスター、このニュースはもしかして?」
「少佐の家族はボクらの家族、それに仇なす輩は潰すに決まってるでしょ?
あの子の叔父ってやつも、これがきっかけで色々と調べられるだろうしさ」
「まったく貴様等は…すまんな、恩に着る」
「その言葉だけで十分だよ、ついでにあの叔父がやった犯罪、こっちで証拠集めて
教団やガーディアンズにも渡してあるから、奴はもう破滅だろうね」
「暇人どもめ」
「ここ最近、本当に暇だったし、少佐が喧嘩売られたって情報が入ったら、
隊の連中が急に目の色変えて、軍の諜報部も真っ青って感じで動いてたよ?」

 

仮にも教団の幹部をあっさりと追い詰めるなんて、相手の運の悪さと
私達と出会ったお嬢様の強運になんともはやと。

 

「それで、大尉様?今後のお嬢様の扱いはどのように?」
「大尉じゃなくていいよ、そうだなあ副隊長ってのもなんだし、フクでいいや」
「えーっと…左様で…ではフク様、お嬢様の事なんですが…」
「うん、身寄りも無い訳だし、一応は教団で預かるって話が出たんだけどね」
「それでは教団に!?」
「いや、話は最後まで聞こうよ、PMのお嬢ちゃん」

 

思わず語気を荒げてしまった私を、まあまあと落ち着かせるフク様。
マスターも同様に落ち着けという意味で、私の頭を軽く撫でてくれました。

 

116 名前:名無し275(6)[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 01:18:47.27 ID:r/iQaNdM
「で、ここで色々とね…今回の事件は、教団の内部でのゴタゴタが原因だと
そんな悪い状況で、巫女候補のあの子が教団に戻ると同様な事がまた起きると
こちら側が嫌味ったらしく突っ込んでね」
「…交渉役、大…副隊長がやったな?」
「秘密ー、ついでに教団内の人体実験疑惑とか、あとドウギ失脚の謎とかさ
耳に入った噂を盾にそれはネチネチと」
「噂どころか、現在知られてはいけない事実ばかりでは?交渉相手も大変だったろうに」
「最終的には、巫女様本人まで出てきたよ、珍しく…ね、で話は決着と」
「ほほう、あの元ガー…いやどうでもいいな、どんな決着をつけたんだ?」

 

マスターの問いに、ニコニコと余裕の笑顔の浮かべるフク様。
ご自身のトランサーから、1枚の書類を出して、マスターに軽く投げます、
マスターは身動きせず、指先ではさむように、それを簡単に受け取りました。
その書類を読み始めると、真剣だったマスターの顔が、徐々に緩やかな笑顔に。
何と言いますか、表情だけ少佐から元のマスターに戻ったような。

 

「マスター?一体どうなされました?」
「副隊長…ここまで動いてくれたのか」
「あの子も望んでいた事だし、これで問題は全部片付いたでしょ」
「ありがとう…」
「お礼なんていいよ、礼を言うべきなのはボクら、鉄屑達に生きる事と家族を与えてくれた
そして…誇り高く死ねる場所をくれた少佐への恩返し、この程度じゃ恩返しには足りないけど」

 

マスターが手放した書類を見てみると…
そこにはマスターが、お嬢様を養女として迎えることが出来るとの署名が。
しかも政府と教団から公式なサインもあるものです。

 

「じゃあ、時間も時間だし、ボクはここらで失礼するよ」
「あの、有難うございましたフク様!」
「いやいや、様ってのもやっぱり照れるな、様付けは~」
「仮にもPMですので、無理と思ってくださいね」
「変なところで頑固だね、それもいい個性だけど」

 

そう言って立ち去ろうとするフク様に、私は深々とお礼をしました。
照れるといいつつも、相変わらずの余裕がありありと見えますが。
と、気がつくとマスターがフク様の下に歩み寄っております。

 

「そういうな副隊長、これは私からの礼だ、最大の感謝の気持ちを
送る時はこうするものだと、本に書いてあったのでな」
「え?何なのさ少…さ」


 

117 名前:名無し275(7)[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 01:19:46.25 ID:r/iQaNdM
顔を上げたわたしが私が見たのは、片膝をついてフク様の頬に
軽くキスをするマスターの姿、赤面しつつもその光景をじっと見ていましたが、
当のフク様も突然の事に目を見開いて、子供の外見相応の驚きの表情で
ガチゴチに硬直しておりました。
対照的に、頬から口を離したマスターは、いつもと変わらず平然としていますが。

 

「え、えええっと、、しょ少佐、そそそれじゃ!」
「ああ、またどこかで会おう」
「お、お気をつけて下さいね?」
「う、う、うん」

 

マスターの不意打ちに、先程までの余裕の姿が微塵に消えてしまったようです。
フク様は、ガチゴチのまま帰って行きましたが…えっと、大丈夫でしょうか?
マスターに問いかけてみようとしたのですが。

 

「なー410、なんであいつ、あんなにガチゴチなっとるんかなぁ?
ワシ、本に書いてあったとうりの事をやっただけなんやけど、問題あったん??」
「えーと…マスターが問題無しと思えば、特に問題は…無いかと?しかしながら…
そうポンポンとしてはいけない行為でもあるかと」
「410が言うなら正しいやろなぁ、ほなら後片付けして、ワシらも休むんよー」
「はぁ…了解いたしました、マスター」

 

お帰りになったあの方は、本当に大丈夫でしょうか?
と、そんな心配をしつつも、マスターと一緒にテーブルの上の
食器を片付け始める私でした。
マスターの変な部分での天然っぷりに、頭を痛めながらですが。

 

118 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 01:22:48.35 ID:r/iQaNdM
…てな訳でつらつら書いてみたす。
とりあえず、ネタも無いので、30まで上げたジャブロッガで
ドラゴンに突っ込んできます。それでは('A`)

 

119 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 15:13:21.87 ID:yAYRjqnT
まだあったんだなこのスレ
箱の人と変態の人のやつが好きだったなあ

 

120 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 16:41:57.56 ID:xCdx8c8K
>>99
いやすまん、保守のつもりで適当に書いたのを投下してたんだけど、途中で埋まっちゃって。
新スレに投下するにしても、途中からにするか最初からにするか
それとも埋めのつもりだったしやめとくべきか…と悩んでてw





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