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 ヒュ~、ポン
  ヒュヒュ~、ポポン

 

『・・・・・・・・・・・・・』
 ぽか~んと口を開けて、部屋の真ん中に設置された花火の置物に見入っている姉妹達。
「ただい、ま?」
 あ、パパが帰って来ました。でも、妙な語尾表現になってます。
「お帰りなさい、ご主人様」
「あ、ああ、ただいま…」
 奇妙なものを見るような目で姉妹達を見つつ、部屋の奥に飾られているリフレス・ゼリーを片付け、新しい花火の置物を設置しました。
「…ぅおっ!な、なんだなんだ、お前達」
 さっきまで間近で見れずにいた他の姉妹達が、パパがたった今、設置したばかりの花火の前に陣取って、座っているのです。
「おい、ロザリオ」
「はい?」
「ジュエルズ、どうしたんだ?」
 あ、ジュエルズって言うのは、パパが保護観察処分で受け持っている、私の姉妹達をまとめて呼ぶ時の呼び方です。
 みんな、宝石に関係した名前ばかりなのでそう呼んでいるのですが、みんなは気に入っているようで文句も言いません。
「どうしたと言われても…見たまんまとしか言えませんが?」
「……………つまり、花火にハマっている訳か」
「ぶっちゃけそういう事です」
 呆れたような苦笑を浮かべ、首を振リつつドレッシングルームへ消えていくパパ。
 仕方ありません、みんな暇なんですから。

 

 翌日の夕方。
 今日のパパは珍しく、ビジフォンに配信されているニュースを見つつ、のんびりとベッドに寝っ転がっています。
 その下で、ベッドに寄りかかりながらニュースを見ている元GH-452で今は453のオリビン、422のトパーズ、411のラピス。
 この三人は、部屋にパパがいるとべったり張り付きます。
 その姿を見ていると、私も店番なんかほっぽりだして甘えたくなりますが、ぐっと我慢。
 ニュースの音は、私の所にも多少は聞こえてきます。
『今年も恒例となりました、オウトクシティでの花火大会は今年も盛況で、各地からの観光客が…』
 あ、そっか、去年は私とパパが出会ったばっかりの頃で、世間の情勢に気を止めてる余裕なんてありませんでしたね。
 花火かぁ。パパの持ってきた置物で見たのが一番最初の花火なんだなぁ。
「…………てってよぉ」
「……見たいよ~」
「…だって。大体だな…」
『え~?本物、見たい~!!!』
 突然聞こえてきた会話と大声。
 何が『本物見たい』なんでしょう?ま、前後の流れからすると、花火の事だと思いますけど。
 仕方なくスペアPMさんを起こして店番を任せると、パパの部屋まで移動します。

 

『行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたいぃ~!!!!』

 

 だだをこねて、床を転がる3人の姿が目に入りました。
 いつもは結構おとなしいオリビンがだだをこねる姿というのは、初めて見ました。
 大きな溜息をつくパパ。
「お前達3人だけ、って訳にはいかないんだぞ?
 大体、今日は全員が来る日じゃないか」
「だったら、みんなで行けばいいじゃん!」
 トパーズのその一言は、パパにすごい負担をかけたようです。
「…勘弁してくれぇ。12人も一度に面倒見切れねぇ…」
 パパは肩を落とし、頭を抱えました。
「…パパ、大丈夫?」
「…あんまり、大丈夫じゃねぇな…」

 

 プシュプシュ~

 

「ねぇ、みんなで花火を見に…あ、今日はあの人がいる日だった」
 やって来て早々、そう言いながら入ってきたのは元GH-411で今は414のサファイア。
 今日はパパがいることを忘れてたみたい。
 頭を抱えたパパがぽつりと、
「み・ん・な・で?」
 あ、なんか今、パパからプチッって切れた音が…
「ロザリオ、全員来てるか?」
 やけに冷ややかな口調のパパ。
 ああ、みんながぞろぞろ集まって…全員います。
「はい、今、揃いました」
「じゃあ、部屋にロックかけて、店を閉めろ」
「は、はい~」
 パパのただならぬ様子に、入り口まで走ってロックを掛けます。
 同時に、

 

「このバカ娘どもがぁ~~!!!!
 お前ら全員、保護観察処分中だって事忘れてるだろう!!!!
 しかも、勝手にニューデイズまで渡航しようとしてたなぁ?!
 主人のいないPMが勝手に惑星間移動するのは禁止されているって事を知らないわけじゃないだろう!!!!
 所有者がいないPMは発見され次第捕獲、GRMへ強制連行が公的に認められているんだ、ただでさえ立場の危うい保護観察処分中のお前らがそんなことしてみろ、その場で『コレ』だぞ!!!!」

 

 うわ~、すごい怒鳴り声。
 パパの部屋に戻る最中に、最後の『コレ』の仕草だけ見えましたが、首をかき切るあのポーズはその場で処分OK!って事ですね。 
 しーんと静まり返った後、痛々しい空気が部屋に満ちています。
「…そんなに見に行きたかったのか?花火」
 みんなが泣き出しそうになる寸前にパパが静かにそう言うと、みんなは一斉に首を縦に振りました。
 実の所、私も見に行きたかったのですけど、パパの場合は機会があったら連れて行ってくれるって知っていたので我慢していたんです。
 でも、みんなの場合はそうもいきませんよね。
 保護観察処分中の身だし、こことGRMの行き来だって、保安部の人が必ず張り付いているんですから。
 すさまじく大きな溜息をついたパパは、そのままビジフォンの前に移動して、何かの文章を打ち始めました。
「ロザリオ、ディアーネ、ガーネッタ、晩飯の準備をしてくれ。ちょっと手が離せなくなったからな」
 無言で頷くと、とぼとぼとキッチンに移動するディアーネとガーネッタ。
「しかし、こんな申請して許可が下りるのかね?」
 ぶつぶつと言いながらメールを送信するパパ。
 そして、お通夜のような夕食が済んだ頃、いくつかのメールが着信しました。
 ガーディアンズ、GRM、グラール教団、同盟軍と、バリエーション豊かです。
「…ほんとにそうか?」
 メールを見たパパの呟きに、私もメールを覗き込みました。
 メールに書かれている一文は、「It is OK ethics.」とか「I OK it ethically.」です。
「えっと、そのまま訳せば『倫理的にOK』ですけど」
「どうなっても知らんぞ、俺は」
 花火が見に行けると分かって、後ろで歓声を上げてるみんなをよそに、パパは一人、胃の辺りを掌で押さえていました。

 


 ひゅ~………ドン!パラパラパラ!
  ひゅひゅ~~………………ドドン!!キュルルルル!パラパラパラパラ!

 

『・・・・・・・すごいねぇ』
 今、私達は、夜店の屋台で買ったキャンデ・アプルやクレープなどを手に、教団前近くの四阿屋(あずまや)から花火を眺めています。
「やれやれ、この程度の散財で済んで、良かったよ」
 屋台で売ってたお酒を飲みながら、ほっとした様子でみんなの後姿を眺めているパパ。
 その左隣にぴったりとくっついて、私も買ってもらったお酒をちびちび飲んでいます。
 反対側では同じようにガーネッタがお酒を飲んでいましたが、今はパパに寄りかかってすっかり眠っています。
「一時はどうなるかと思ったけどな」
 微笑と苦笑の中間のような笑みを浮かべ、お酒の缶をあおります。
「あのね、パパ」
「うん?」
 花火の音と水のせせらぎに紛れる、私とパパの会話。
「みんな、ほんとは出かける場所なんて何処でもよかったの」
「何処でも?」
「うん、何処でもよかった。みんながパパと出かけられれば何処だって」
「俺と、ジュエルズ?」
「そう。みんなね、パパとの思い出が作りたかったんだって」
「いつも、あんなに大騒ぎしているのにか?」
「お出かけって、ちょっぴり特別な日だし、そういう日の事ってよく覚えているでしょ?」
「ああ」
「だから、そういうちょっとした特別な日が欲しかったんだって。
 自分達の事を『家族だ』って言ってくれた、パパの思い出に残るように」
「……………」
「それでね、もし出かけることになったら、みんなでいい子にしようね、って約束したの。
 暫く前の話だけどね。
 そしたら、みんなが花火の事を知ったでしょ?
 『コレにしよう!』って、直ぐに決まったんだけど」
 大きな花火の音。一瞬、真昼のように明るくなる。
「自分達の立場を思い出したんだな?」
「そうなの。おまけにパパに叱られて、泣くのを忘れちゃうくらい随分凹んだの」
「なるほど、それで泣かなかったのか…」
 沢山の花火が立て続けに上がる音。辺りを激しく照らし出す光。
「パパ」
「なんだ?」
「みんなね、一緒に暮らせない時の事を覚悟してる。
 だからね…」
「だから、思い出作りか。
 でもな、ロザリィ。家族って言うのは、思い出以上に心に残るし、繋がっているんだ。
 みんながバラバラになっても、例え誰かが死んでも、な」
「パパ、それって…」
 深く静かな笑みを浮かべて、何かを思い出しているパパ。
「俺の女房はあいつだけだし、娘はお前らだけだ。血は繋がってないけどな。
 死んじまった兄弟達なんか星の数ほどいるけど、俺はそれが悲しくはあっても寂しくはない。
 ………なんか、上手く言えないが、それが家族って事だし、繋がりなんだと思う」
「一緒に暮らせなくても、寂しがる必要はない、家族として繋がっているから、って事?」
「まぁ、そんな所かな」
 残っていたお酒をあおって缶を空にし、握りつぶすとナノトランサーに放り込むパパ。
「なんだ?どうしたお前ら。花火はまだ続いているぞ?」
 いつの間にか、みんながこっちをじっと見ています。
「眠いから、帰ろうよ~」
 そう言ったGH-451ことコーラルが、目をこすりながらあくびをしています。
「おし、んじゃ帰るか」と、パパ。
「今日はみんなと一緒に寝ようよ~」
 GH-421のウラルがパパのズボンを引っ張りながら言うと、
「今日くらいはいいでしょ?」と、サファイアの援護攻撃。
「俺が一緒じゃ、狭いだろうが」
「いいじゃん、たまにはさ。家族なんだし」と、トパーズ。
「お前、寝相悪いからなぁ」
「あ~、そういう事言うんだ~」
 …な~んだ。みんな、さっきの話を聞いてたのか。

 

 部屋に戻って寝る用意をし、パパに寄り添うように周りを囲んで、初めて一緒に眠りにつくパパと私達。
 既に手に入れていた、幸せな日々の営み。
 この先一緒に暮らせるか、という未来の不安より、既に一緒に暮らしている、今の幸せに気づいたみんなと私の生活は、これから少しずつ変わると思います。

 

 これは、花火によって気づかされた、そんなある日の出来事。

 

 ―――おしまい―――

 

※平成19年8月末の季節限定「花火ロビー」をネタにしています。





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