「はい。ティーカップはそこの棚の2番目に入っていますよ」
「これか。……ったく、なんでこんなことに……」
ローグスAは渋々といった感じで、奥さんに指定された棚を開きました。
「あ、そちらの方は、冷蔵庫からアイスティーをお願いしますね」
「あいよ」
言われるまま、冷蔵庫に向かうローグスB。
先程のカオスから数十分。恐ろしく騒がしかった状況が一旦の落ち着きを見せたところで、
私たちは奥さんの提案でお茶の時間にすることになったのでした。
私としてはもう少しあのままローグスBをいたぶり続け……いえ、なんでもないです。
「二人とも手際が悪いです。マダムの縄を解いて、準備してもらったほうが」
「その手に乗るか! 人質の縄解いてどうすんだ!」
「そうですか」
マスターのさりげない提案を一蹴しつつ(まあ当たり前なわけですが)、
ティーカップをひとつづつ、丁寧に熱湯であたためてゆく律儀なローグスA。
程なくして、上品な香り立つハーブティー、こんがり焼かれたスコーンとショコラが出揃い、
テーブルの上は素敵なティータイム仕様になりました。
「これか。……ったく、なんでこんなことに……」
ローグスAは渋々といった感じで、奥さんに指定された棚を開きました。
「あ、そちらの方は、冷蔵庫からアイスティーをお願いしますね」
「あいよ」
言われるまま、冷蔵庫に向かうローグスB。
先程のカオスから数十分。恐ろしく騒がしかった状況が一旦の落ち着きを見せたところで、
私たちは奥さんの提案でお茶の時間にすることになったのでした。
私としてはもう少しあのままローグスBをいたぶり続け……いえ、なんでもないです。
「二人とも手際が悪いです。マダムの縄を解いて、準備してもらったほうが」
「その手に乗るか! 人質の縄解いてどうすんだ!」
「そうですか」
マスターのさりげない提案を一蹴しつつ(まあ当たり前なわけですが)、
ティーカップをひとつづつ、丁寧に熱湯であたためてゆく律儀なローグスA。
程なくして、上品な香り立つハーブティー、こんがり焼かれたスコーンとショコラが出揃い、
テーブルの上は素敵なティータイム仕様になりました。
「アイスティーまで用意されているとは」
マスターは自分の席に用意されたアイスティーを見て、目をぱちぱちさせます。
「うふふ。ぱしりちゃんに『マスターはアイスティーが好き』だって聞いて、作っておいたのよ。
急いで作ったのだけど、よかったわ。ローグスさんたちと遊んでいる間に冷えたみたいね」
「奥さん、私たちも彼らも、別に遊んでいるわけでは……」
「ありがとうございます、マダム。しかし……せっかくのお茶もこれでは飲めません。
お二方、やはり縄を解いてはもらえないでしょうか」
「あ、心配ないわよ。ローグスさん、さっきの棚の下からからストローを持ってきてくださる?」
「ちょ、奥さん!?」
「そうですね。それならこのままでも飲めます」
「マスターまで!?」
奥さんの頭のネジが緩いであろうことはなんとなく察していましたが、
マスターが縄を解くことを要求していたのも、ただ純粋にお茶のためだったのですか。
「駄目だこいつら……はやく何とかしないと」
棚に向かってゆくローグスAがぼそっとこぼした言葉は、まんま私の気持ちを代弁していました。
マスターは自分の席に用意されたアイスティーを見て、目をぱちぱちさせます。
「うふふ。ぱしりちゃんに『マスターはアイスティーが好き』だって聞いて、作っておいたのよ。
急いで作ったのだけど、よかったわ。ローグスさんたちと遊んでいる間に冷えたみたいね」
「奥さん、私たちも彼らも、別に遊んでいるわけでは……」
「ありがとうございます、マダム。しかし……せっかくのお茶もこれでは飲めません。
お二方、やはり縄を解いてはもらえないでしょうか」
「あ、心配ないわよ。ローグスさん、さっきの棚の下からからストローを持ってきてくださる?」
「ちょ、奥さん!?」
「そうですね。それならこのままでも飲めます」
「マスターまで!?」
奥さんの頭のネジが緩いであろうことはなんとなく察していましたが、
マスターが縄を解くことを要求していたのも、ただ純粋にお茶のためだったのですか。
「駄目だこいつら……はやく何とかしないと」
棚に向かってゆくローグスAがぼそっとこぼした言葉は、まんま私の気持ちを代弁していました。
「ところで、シロップとミルクは……」
マスターが言うと、
「おう。入れてやるよ」
ローグスBがミルクとシロップの小瓶を手に、やってきました。
「こればかりは、できれば自分でやりたいのですが」
「そういうわけにはいかねえな」
「駄目ですか」
「だめだ」
「……仕方ありませんね。では、ボクがいいと言うまでお願いします」
「はいよ」
「慎重に頼みます」
マスターはぺたんとテーブルに顎を載せ、眼前のグラスを凝視します。
ミルクとシロップの分量に強いこだわりがあるらしいマスターは、
自室でもいつもこうやって最適分量を見極めているのですが……
その光景はどことなく可愛らしく、そしてシュールです。
と、次の瞬間。
「あ、それいっぱい入ってますから、気をつけて――」
奥さんが言った時には、時既に遅く。
「おぁ、やべっ」
マスターが言うと、
「おう。入れてやるよ」
ローグスBがミルクとシロップの小瓶を手に、やってきました。
「こればかりは、できれば自分でやりたいのですが」
「そういうわけにはいかねえな」
「駄目ですか」
「だめだ」
「……仕方ありませんね。では、ボクがいいと言うまでお願いします」
「はいよ」
「慎重に頼みます」
マスターはぺたんとテーブルに顎を載せ、眼前のグラスを凝視します。
ミルクとシロップの分量に強いこだわりがあるらしいマスターは、
自室でもいつもこうやって最適分量を見極めているのですが……
その光景はどことなく可愛らしく、そしてシュールです。
と、次の瞬間。
「あ、それいっぱい入ってますから、気をつけて――」
奥さんが言った時には、時既に遅く。
「おぁ、やべっ」
――ぴしゃっ。
「あぁっ、マスター!」
ローグスBが傾けた右の小瓶からはミルクが、左の小瓶からはシロップが、
大量にこぼれてマスターの顔面に……!
「あらあら……」
「うお、悪ぃな……すまん、すぐに拭くもん持ってk」
ローグスBがその場を離れようとした刹那。
ズダン! と音を立てて、マスターが席を立ちました。
「慎重に、と言った筈ですが」
「す、すまねえ、お嬢ちゃ」
マスターはみなまで言わせず、右脚を軸に、くるりと華麗に回転。
ローグスBに回し蹴りを叩き込みました。
「ぐおぉ!?」
その勢いたるや、竜巻の如く。
小さく華奢な身体からは想像もつかないような勢い。
ローグスBは吹っ飛び、窓に激突、突き破り、そのまま外へ放り出されていきました。
ミルクとシロップをかぶったマスターの顔は、相変わらずの無表情。
しかし、小さな身体から立ち上る色は、凄惨なまでの怒り。
やばい。やばいです。
マスターが――キレてしまいました。
「あぁっ、マスター!」
ローグスBが傾けた右の小瓶からはミルクが、左の小瓶からはシロップが、
大量にこぼれてマスターの顔面に……!
「あらあら……」
「うお、悪ぃな……すまん、すぐに拭くもん持ってk」
ローグスBがその場を離れようとした刹那。
ズダン! と音を立てて、マスターが席を立ちました。
「慎重に、と言った筈ですが」
「す、すまねえ、お嬢ちゃ」
マスターはみなまで言わせず、右脚を軸に、くるりと華麗に回転。
ローグスBに回し蹴りを叩き込みました。
「ぐおぉ!?」
その勢いたるや、竜巻の如く。
小さく華奢な身体からは想像もつかないような勢い。
ローグスBは吹っ飛び、窓に激突、突き破り、そのまま外へ放り出されていきました。
ミルクとシロップをかぶったマスターの顔は、相変わらずの無表情。
しかし、小さな身体から立ち上る色は、凄惨なまでの怒り。
やばい。やばいです。
マスターが――キレてしまいました。
「やけに中が騒がしいと思ったら……今度は静かになりましたねぇ」
「呼びかけに対する反応もないな」
「やっぱ黙っといたほうがよかったかなぁ、バルサミコ酢が安物だってのは」
交渉役の青年がメガホンをくるくる回しながら、かったるそうに言った、その時。
ガシャン、と大きな音を立てて、家の中から窓を突き破り、男が吹っ飛んできた。
「ぐおぁぁぁぁ!」
無数の窓の破片とともに、地面に叩きつけられる男、ローグスB。
「こいつは、立てこもってたローグスじゃないか!」
家を包囲していたガーディアンズは突然の出来事に呆気に取られ、
後ろに控える野次馬は驚いて逃げ出したり、なんだなんだとざわめいたりしている。
「わ、悪かった……俺が悪かった!」
ローグスBはひどく怯えた様子で、見事に割れた窓に向かってあたふたと手を振っている。
「なんだ? 何が起こったんだ……?」
戸惑う人々。
窓に開いた穴の向こうから、小さな影が顔を出す。
「なんという……なんということをしてくれたですか、あなたは」
ローグスBを追って出てきたのは、赤毛の外跳ねショートヘアのニューマンの少女。
「呼びかけに対する反応もないな」
「やっぱ黙っといたほうがよかったかなぁ、バルサミコ酢が安物だってのは」
交渉役の青年がメガホンをくるくる回しながら、かったるそうに言った、その時。
ガシャン、と大きな音を立てて、家の中から窓を突き破り、男が吹っ飛んできた。
「ぐおぁぁぁぁ!」
無数の窓の破片とともに、地面に叩きつけられる男、ローグスB。
「こいつは、立てこもってたローグスじゃないか!」
家を包囲していたガーディアンズは突然の出来事に呆気に取られ、
後ろに控える野次馬は驚いて逃げ出したり、なんだなんだとざわめいたりしている。
「わ、悪かった……俺が悪かった!」
ローグスBはひどく怯えた様子で、見事に割れた窓に向かってあたふたと手を振っている。
「なんだ? 何が起こったんだ……?」
戸惑う人々。
窓に開いた穴の向こうから、小さな影が顔を出す。
「なんという……なんということをしてくれたですか、あなたは」
ローグスBを追って出てきたのは、赤毛の外跳ねショートヘアのニューマンの少女。
その姿を目にした者が、一同に絶句する。
それもそのはず。
年端も行かない少女であろう彼女は下着姿で、細い両腕を背中で縛られ、
おまけに顔面は『何か白いもの』をかぶってドロドロに汚れているのだ。
「よくも、ボクの心を踏みにじってくれましたね……」
呟くその顔には何の表情も浮かんではいない。
しかし、彼女が一歩一歩歩みを進めるたびに放たれる怒りのオーラが、人々に確信させる。
「まさか……」
「なんて奴だ……!」
「嘘、信じらんない!」
「かわいそう……」
「氏ね! ロリコン!」
このローグスは、彼女に『何かとんでもないこと』をしでかしたのだと。
「ま、待て! お前たちは何か勘違いをしている!」
自分が激しい誤解を受けていることを悟ったローグスBは、必死に弁明を始める。
しかし、一度人々の間に芽生えてしまった共通認識は、そう簡単に拭えはしない。
「ローリーコン! ローリーコン! ローリーコン!」
「違ああああああああう!!」
それもそのはず。
年端も行かない少女であろう彼女は下着姿で、細い両腕を背中で縛られ、
おまけに顔面は『何か白いもの』をかぶってドロドロに汚れているのだ。
「よくも、ボクの心を踏みにじってくれましたね……」
呟くその顔には何の表情も浮かんではいない。
しかし、彼女が一歩一歩歩みを進めるたびに放たれる怒りのオーラが、人々に確信させる。
「まさか……」
「なんて奴だ……!」
「嘘、信じらんない!」
「かわいそう……」
「氏ね! ロリコン!」
このローグスは、彼女に『何かとんでもないこと』をしでかしたのだと。
「ま、待て! お前たちは何か勘違いをしている!」
自分が激しい誤解を受けていることを悟ったローグスBは、必死に弁明を始める。
しかし、一度人々の間に芽生えてしまった共通認識は、そう簡単に拭えはしない。
「ローリーコン! ローリーコン! ローリーコン!」
「違ああああああああう!!」
マスターを追って外に出た私たちを待っていたのは、さらなるお祭り騒ぎでした。
へたり込むローグスBと、怒りに震えて彼に迫るマスター。そして。
「犯罪者!」
「恥知らず!」
周囲の人々が繰り返す罵声とロリコンコール。物を投げている人もいます。
「え、なにこれ……」
「あらあら……」
異様な光景に思わず引く私と、変わらずマイペースな奥さん。
「おいてめえら、一体何やって――! ……本当に、何やってんだ?」
私たちを追って出てきたローグスAの目にも、この状況は異様なものとして映ったようです。
「はじめてです、こんな屈辱は。この代償、とびきり高くつきます」
マスターの声はいつもの透き通るようなものでありながら、どこかドスが利いています。
「そんな物言いはよせ。さらに誤解が……!」
吹っ飛ばされたときにローグスBが落としたのでしょう、
マスターの足元には、人質にされた際に没収されたナノトランサーが転がっていました。
「しまった、それは……!」
「返してくれるのですか、ありがとうございます」
マスターはそれを爪先で器用に弾き、リフティングの要領でバウンドさせ、スイッチを入れました。
光の粒がマスターの身体を覆い、いつものひらひらとした可愛らしい服を実体化させてゆきます。
へたり込むローグスBと、怒りに震えて彼に迫るマスター。そして。
「犯罪者!」
「恥知らず!」
周囲の人々が繰り返す罵声とロリコンコール。物を投げている人もいます。
「え、なにこれ……」
「あらあら……」
異様な光景に思わず引く私と、変わらずマイペースな奥さん。
「おいてめえら、一体何やって――! ……本当に、何やってんだ?」
私たちを追って出てきたローグスAの目にも、この状況は異様なものとして映ったようです。
「はじめてです、こんな屈辱は。この代償、とびきり高くつきます」
マスターの声はいつもの透き通るようなものでありながら、どこかドスが利いています。
「そんな物言いはよせ。さらに誤解が……!」
吹っ飛ばされたときにローグスBが落としたのでしょう、
マスターの足元には、人質にされた際に没収されたナノトランサーが転がっていました。
「しまった、それは……!」
「返してくれるのですか、ありがとうございます」
マスターはそれを爪先で器用に弾き、リフティングの要領でバウンドさせ、スイッチを入れました。
光の粒がマスターの身体を覆い、いつものひらひらとした可愛らしい服を実体化させてゆきます。
「お礼に、魔法少女が最高の魔法でお仕置きしてあげます」
言って、マスターはナノトランサーをカツンと大きく蹴り上げました。
「ウェポンラック、開放――」
「くっ、こうなったら……逆にお仕置きし返してやるぜ!」
ローグスBは立ち上がり、ナノトランサーから<ダガ・ステッグ>を取り出すと、
続けざまに<レティアライド>を取り出し、一気に飲み干しました。
「ハハハ! 精神力アップ! これでお得意の魔法とやらも効かねえぜ!」
ああ……あのローグス、某インセクターばりに何か勘違いをしています。
空高く舞ったマスターのナノトランサーから武器が実体化し、
くるくる回転しながら舞い降りてきました。
「残念ながら、精神力のステータス上昇は無意味です」
「……え?」
ズダン! ズダダン! と音を立ててマスターの周囲に次々と突き刺さるのは
――無骨なソードとアックスの群れ。断じてウォンドやロッドなどではありません。
その中の一本が、マスターの腕を縛っていたロープを綺麗に切断します。
言って、マスターはナノトランサーをカツンと大きく蹴り上げました。
「ウェポンラック、開放――」
「くっ、こうなったら……逆にお仕置きし返してやるぜ!」
ローグスBは立ち上がり、ナノトランサーから<ダガ・ステッグ>を取り出すと、
続けざまに<レティアライド>を取り出し、一気に飲み干しました。
「ハハハ! 精神力アップ! これでお得意の魔法とやらも効かねえぜ!」
ああ……あのローグス、某インセクターばりに何か勘違いをしています。
空高く舞ったマスターのナノトランサーから武器が実体化し、
くるくる回転しながら舞い降りてきました。
「残念ながら、精神力のステータス上昇は無意味です」
「……え?」
ズダン! ズダダン! と音を立ててマスターの周囲に次々と突き刺さるのは
――無骨なソードとアックスの群れ。断じてウォンドやロッドなどではありません。
その中の一本が、マスターの腕を縛っていたロープを綺麗に切断します。
「U・B・W・G……」
不思議な単語を発するマスター。察するに、周りに武器がいっぱい突き刺さっているさまを、
『アンリミテッド・ブレイド・ワークス・ごっこ』と称しているのでしょう。
「魔法、少女……?」
これには周囲の皆さんも呆気に取られているようです。
そう。私のマスターは、ニュマ子人口の過半数を占めるであろうフォルテクターではなく。
――世にも傍迷惑な、なぜか魔法少女を自称するフォルテファイターなのです。
「さ、詐欺だ……」
「あなたはニュマ子という生物が、全員フォルテクターだとでも思っていたのですか」
「え、だってニュマ子が魔法少女って言ったら」
「答えは聞いてません」
「ちょ、ちょま、おま」
マスターは手近にあったアックスを片手で引き抜き、後ずさるローグスBに迫ります。
「魔法の缶切り、あんく☆とまほ……」
「あ……あぁ……」
大斧を両手で改めて構え。
「リリカル、マジカル……」
「うあぁ……」
大きく振りかぶり。
「奥 義 ・ 甲 冑 割 ! !」
発動する怒りのドゥガレガ。
「ぐわああああああああ!!」
真昼の住宅地に、哀れな弱小ローグスの断末魔が響き渡りました。
不思議な単語を発するマスター。察するに、周りに武器がいっぱい突き刺さっているさまを、
『アンリミテッド・ブレイド・ワークス・ごっこ』と称しているのでしょう。
「魔法、少女……?」
これには周囲の皆さんも呆気に取られているようです。
そう。私のマスターは、ニュマ子人口の過半数を占めるであろうフォルテクターではなく。
――世にも傍迷惑な、なぜか魔法少女を自称するフォルテファイターなのです。
「さ、詐欺だ……」
「あなたはニュマ子という生物が、全員フォルテクターだとでも思っていたのですか」
「え、だってニュマ子が魔法少女って言ったら」
「答えは聞いてません」
「ちょ、ちょま、おま」
マスターは手近にあったアックスを片手で引き抜き、後ずさるローグスBに迫ります。
「魔法の缶切り、あんく☆とまほ……」
「あ……あぁ……」
大斧を両手で改めて構え。
「リリカル、マジカル……」
「うあぁ……」
大きく振りかぶり。
「奥 義 ・ 甲 冑 割 ! !」
発動する怒りのドゥガレガ。
「ぐわああああああああ!!」
真昼の住宅地に、哀れな弱小ローグスの断末魔が響き渡りました。
規制かかったorz
色々アレなお話ですが、もうちょっとだけ続きます。
またすこし間を空けて投下しようかと。
色々アレなお話ですが、もうちょっとだけ続きます。
またすこし間を空けて投下しようかと。
規制解除用wktk投下
「マスター、今日はどっさり疲れましたね……」
「そうですね。お疲れ様です」
ガーディアンズコロニーに向かうシャトルの中で、私は座席に身体を預け、
ぐったりとしていました。
「だけどマスター、あれはいくらなんでもやりすぎだったんじゃ……」
「そうかもしれません。ボクも少し大人気なかったです。しかし、
あのシロップとミルクのぞんざいな扱いは、許されるべきレベルではありません」
「そう、ですか……」
真顔で淡々と語るマスターに、ため息がこぼれます。正直、たまについていけません。
ちなみに今やすっかりロリコンのレッテルを貼られたローグスB(事実変態だったわけですが)、
テレビ中継の画面が「しばらくお待ちください」になるほどフルボッコにされながら、
なんと生きていたようです。人間ってすごい。
「そうですね。お疲れ様です」
ガーディアンズコロニーに向かうシャトルの中で、私は座席に身体を預け、
ぐったりとしていました。
「だけどマスター、あれはいくらなんでもやりすぎだったんじゃ……」
「そうかもしれません。ボクも少し大人気なかったです。しかし、
あのシロップとミルクのぞんざいな扱いは、許されるべきレベルではありません」
「そう、ですか……」
真顔で淡々と語るマスターに、ため息がこぼれます。正直、たまについていけません。
ちなみに今やすっかりロリコンのレッテルを貼られたローグスB(事実変態だったわけですが)、
テレビ中継の画面が「しばらくお待ちください」になるほどフルボッコにされながら、
なんと生きていたようです。人間ってすごい。
「それにしても、よくやってくれました。
あの後ローグスAから無事マダムを取り戻せたのは、キミの働きのおかげです」
「あは、それほどでも……」
まあ……突きつけられた<セバ・サッタ>をモギモギ喰っただけなんですけどね。
ローグスAはそのことで完全にうろたえてしまい、周囲のガーディアンに取り押さえられ、
奥さんは無事解放、事件は幕を向かえたのでした。
「マスターが褒めてくれるなんて、意外です」
「事実を言っただけです」
「そう言うと思いました。でも、ちょっと嬉しいかもです」
「……そうですか」
マスターの顔は、いつもの鉄面皮。
だけどほんの少しだけ、笑っているような気がしました。
「今日は……、こう言っては不謹慎かもしれませんが、楽しい一日でした」
「済んでみればこそ言えることですね。でも、私もこんなに楽しい気分は久しぶりです。
マスターが褒めてくれたり、楽しいなんて言うの、滅多に聞けませんし」
あの後ローグスAから無事マダムを取り戻せたのは、キミの働きのおかげです」
「あは、それほどでも……」
まあ……突きつけられた<セバ・サッタ>をモギモギ喰っただけなんですけどね。
ローグスAはそのことで完全にうろたえてしまい、周囲のガーディアンに取り押さえられ、
奥さんは無事解放、事件は幕を向かえたのでした。
「マスターが褒めてくれるなんて、意外です」
「事実を言っただけです」
「そう言うと思いました。でも、ちょっと嬉しいかもです」
「……そうですか」
マスターの顔は、いつもの鉄面皮。
だけどほんの少しだけ、笑っているような気がしました。
「今日は……、こう言っては不謹慎かもしれませんが、楽しい一日でした」
「済んでみればこそ言えることですね。でも、私もこんなに楽しい気分は久しぶりです。
マスターが褒めてくれたり、楽しいなんて言うの、滅多に聞けませんし」
「そんなに意外ですか」
「意外です。マスター、いつもあまり喋らないじゃないですか」
「ボクが何か喋ったほうが、キミは楽しいですか」
「それは……そうですよ」
「そうですか」
マスターは小鳥のように首を傾げて、言いました。
「では、善処します」
「……ふふ」
その姿がなんだか可愛くて、思わず吹き出してしまいます。
「ふふふ。あははは……」
「どうかしましたか」
「だって、当たり前じゃないですか。
マスターとお話するのが楽しくないパートナーマシナリーなんていませんよ」
私のマスターは、やっぱりすごく変わった人です。
常に無表情で割と無関心で、わけわかんなくて電波で。
だけどその突拍子もない行動が、不意に見せる意外なしぐさが、私を飽きさせず、
愛しいとさえ思わせる。一緒にいて楽しいと思える。
やっぱり私は、この人のパートナーでよかったと思います。
「意外です。マスター、いつもあまり喋らないじゃないですか」
「ボクが何か喋ったほうが、キミは楽しいですか」
「それは……そうですよ」
「そうですか」
マスターは小鳥のように首を傾げて、言いました。
「では、善処します」
「……ふふ」
その姿がなんだか可愛くて、思わず吹き出してしまいます。
「ふふふ。あははは……」
「どうかしましたか」
「だって、当たり前じゃないですか。
マスターとお話するのが楽しくないパートナーマシナリーなんていませんよ」
私のマスターは、やっぱりすごく変わった人です。
常に無表情で割と無関心で、わけわかんなくて電波で。
だけどその突拍子もない行動が、不意に見せる意外なしぐさが、私を飽きさせず、
愛しいとさえ思わせる。一緒にいて楽しいと思える。
やっぱり私は、この人のパートナーでよかったと思います。
「マスターって、やっぱり変わってます」
「よく言われます」
「ね、今夜は一緒のベッドでお休みしましょう」
「構いませんが、どうしたのですか、急に」
「もっといっぱい、お話しましょう?」
「……面白い話ができるかどうか、わかりませんが」
再び首を傾げるマスターと、座席から投げ出した足をぷらぷらと遊ばせる私。
「なんでもいいんです。どんなくだらないお話だって」
「そういうものですか」
「そういうものですっ」
ガーディアンズコロニーへの到着が近いことを告げるアナウンスが、機内に流れました。
私たちの家は、もうすぐそこです。
おしまい
「よく言われます」
「ね、今夜は一緒のベッドでお休みしましょう」
「構いませんが、どうしたのですか、急に」
「もっといっぱい、お話しましょう?」
「……面白い話ができるかどうか、わかりませんが」
再び首を傾げるマスターと、座席から投げ出した足をぷらぷらと遊ばせる私。
「なんでもいいんです。どんなくだらないお話だって」
「そういうものですか」
「そういうものですっ」
ガーディアンズコロニーへの到着が近いことを告げるアナウンスが、機内に流れました。
私たちの家は、もうすぐそこです。
おしまい
「……そういえば今日は、ボクもキミの意外な一面を見ましたね」
「え……?」
「ボクに触ろうとしたローグスBを蹴っ飛ばした時です」
「えっ」
「楽しそうでしたね」
「あ、いや! そんなことは!」
「そうですか? 心の底から愉しんでいるように見えましたが。心なしか頬も赤くなっていたような」
「ちょ、ないですって! それじゃまるで私がドSみたいじゃないですか!」
「違うのですか」
「違います!」
「そうですか」
「そうです! そんなんじゃありませんからね!」
「……」
「……」
「ひ~ぃざまず~ぅい~てぇ、お嘗めよ~、あ~かい爪~を~」
「!? ちょ、なんですかその歌!」
「も~つぅれた~舌~で、女王様と~、お呼び~なさぁい~」
「なにそれ! まさか仕返しですか!? 私がさっき笑ったからですか!?
違います! 私そんなんじゃないです! あぁっ、周りの人が見てます!
マスター! やめてください! や め て く だ さ い ~ っ ! !」
こんどこそおしまい
「え……?」
「ボクに触ろうとしたローグスBを蹴っ飛ばした時です」
「えっ」
「楽しそうでしたね」
「あ、いや! そんなことは!」
「そうですか? 心の底から愉しんでいるように見えましたが。心なしか頬も赤くなっていたような」
「ちょ、ないですって! それじゃまるで私がドSみたいじゃないですか!」
「違うのですか」
「違います!」
「そうですか」
「そうです! そんなんじゃありませんからね!」
「……」
「……」
「ひ~ぃざまず~ぅい~てぇ、お嘗めよ~、あ~かい爪~を~」
「!? ちょ、なんですかその歌!」
「も~つぅれた~舌~で、女王様と~、お呼び~なさぁい~」
「なにそれ! まさか仕返しですか!? 私がさっき笑ったからですか!?
違います! 私そんなんじゃないです! あぁっ、周りの人が見てます!
マスター! やめてください! や め て く だ さ い ~ っ ! !」
こんどこそおしまい
最後についでにMの素質も開花するのかと思ったが、そんな事もなかったか。
いきなりですが、投下させてもらいます。
長文で読みにくいかも知れませんが、ご容赦のほどを。
小ビス子氏よりわんわんサンドのネタを拝借しております。
口調がちょっと違うかも知れないけど、勘弁してください。
長文で読みにくいかも知れませんが、ご容赦のほどを。
小ビス子氏よりわんわんサンドのネタを拝借しております。
口調がちょっと違うかも知れないけど、勘弁してください。
Pipipipipipipi…
朝日の昇らないガーディアンズコロニーに朝を告げる目覚ましの音。
そろそろ起床の時間です。
ニューデイズ様式の朝食の準備は既に整えてあり、あとはご主人様を起こすだけです。
「ご主人様、朝ですよ」
出来上がった食事を持ってキッチンからご主人様の寝室に移動すると、気だるげにベッドの上
に転がっています。
「ぬ~、もう朝かぁ」
ヒューマン男性のこの方が私のご主人様です。年の頃は20代後半から30代前半としかいえ
ない、ちょっと年齢不詳の部分があります。起き抜けで長い髪の毛はくくっておらずボサボサ、
半眼で眉間にしわを寄せたままの顔はお世辞にも格好がいいとは言えません。
普段はしゃんとしていてかなりのイケメンなんですが…どうも自分の容姿については頓着無い
ようです。
のろのろと起き上がると、ドレッシングルームに備え付けの浴室に入っていきます。
俗に言う朝風呂というやつです。どうやら夕べも遅くまで何かをなさっていたようですが…
「早くあがって下さいね、食事が冷めますよ?」
風呂の中から返事が聞こえてきます。どうやらシャワーをしているようなので、すぐ出てくる
でしょう。
備え付けの収納式テーブルと椅子を用意し、食事を並べ終わるとご主人様が出てきました。
黒に近い紫の長髪を後ろでくくり、赤いブレイブスコートにパンツ、シューズとシリーズで決
めています。外に行く時はこれにサングラスという格好が、この所のお気に入りのご様子です。
「おはよう、ロザリオ」と、ご主人様
私はキョロキョロと周りを見て、誰も他にいないのを確認。大丈夫!
「おはよう、パパ!」と、言って抱きつきました。
そう、私とご主人様しかいない時、私がご主人を呼ぶ時の呼称は『パパ』なんです。
朝日の昇らないガーディアンズコロニーに朝を告げる目覚ましの音。
そろそろ起床の時間です。
ニューデイズ様式の朝食の準備は既に整えてあり、あとはご主人様を起こすだけです。
「ご主人様、朝ですよ」
出来上がった食事を持ってキッチンからご主人様の寝室に移動すると、気だるげにベッドの上
に転がっています。
「ぬ~、もう朝かぁ」
ヒューマン男性のこの方が私のご主人様です。年の頃は20代後半から30代前半としかいえ
ない、ちょっと年齢不詳の部分があります。起き抜けで長い髪の毛はくくっておらずボサボサ、
半眼で眉間にしわを寄せたままの顔はお世辞にも格好がいいとは言えません。
普段はしゃんとしていてかなりのイケメンなんですが…どうも自分の容姿については頓着無い
ようです。
のろのろと起き上がると、ドレッシングルームに備え付けの浴室に入っていきます。
俗に言う朝風呂というやつです。どうやら夕べも遅くまで何かをなさっていたようですが…
「早くあがって下さいね、食事が冷めますよ?」
風呂の中から返事が聞こえてきます。どうやらシャワーをしているようなので、すぐ出てくる
でしょう。
備え付けの収納式テーブルと椅子を用意し、食事を並べ終わるとご主人様が出てきました。
黒に近い紫の長髪を後ろでくくり、赤いブレイブスコートにパンツ、シューズとシリーズで決
めています。外に行く時はこれにサングラスという格好が、この所のお気に入りのご様子です。
「おはよう、ロザリオ」と、ご主人様
私はキョロキョロと周りを見て、誰も他にいないのを確認。大丈夫!
「おはよう、パパ!」と、言って抱きつきました。
そう、私とご主人様しかいない時、私がご主人を呼ぶ時の呼称は『パパ』なんです。
「ははハァ…おはよう、ロザリオ」
朝からため息混じりの苦笑で、改めて挨拶してくれます。
「結局、俺のことをそう呼ぶのか」
その返事に私は頬を膨らませて不満をぶつけます!
「パパはパパなんですから、いいじゃないですか!
誰もいないときくらい、パパって呼ばせてよ!」
「分かった分かった、そう怒るな。そういう約束だからな」
私を軽くあしらいながら、食事の席につくパパとそれに倣う私。
パパとの約束、それは人前ではパパではなくご主人様と呼ぶ事。
最近は大分慣れたので、人前でパパと呼ばないようになりました。
でも、なんかちょっとさびしく感じることがあります。
朝からため息混じりの苦笑で、改めて挨拶してくれます。
「結局、俺のことをそう呼ぶのか」
その返事に私は頬を膨らませて不満をぶつけます!
「パパはパパなんですから、いいじゃないですか!
誰もいないときくらい、パパって呼ばせてよ!」
「分かった分かった、そう怒るな。そういう約束だからな」
私を軽くあしらいながら、食事の席につくパパとそれに倣う私。
パパとの約束、それは人前ではパパではなくご主人様と呼ぶ事。
最近は大分慣れたので、人前でパパと呼ばないようになりました。
でも、なんかちょっとさびしく感じることがあります。
こんな私の、人には言えない秘密。
私がご主人様をパパと呼ぶ理由は、私が不良品だからです。
私が410から412になる時、デバイスが不良品でうまく機種変換できなかったそうです。
主従関係を促すためのデバイスが私にはありません。
機種変換の時に、バグまみれの変換プログラムから自分を守る為に自己保存を最優先にしたらしく、基本行動原理を司る一部のROM共々削除されてしまったそうです。しかも、何やら複雑に自己改変したらしく、記憶の移行や修理は不可能だと。
結果、ご主人様をご主人様と呼べなくなってしまいました。
その所為で、私は修理に連れて行かれたテクニカルセンターで目覚めたあと、パパに開口一番「怖かったよう、死んじゃうかと思ったよう、パパぁ!」と言って泣きつきました。
あっけにとられているパパに先生がいろいろ説明してくれたそうですが、詳しいことはあとから聞いた話で知りました。
幸いな事に410の頃の記憶はしっかりと残っていますが、遠い他人の記憶を眺めているようでもあります。
その頃は普通のパシリとして暮らしています。もちろん、ちゃんと『ご主人様』と呼んでいます。それに…ちょっと恥ずかしいですが、パシリに良くあるご主人様への恋心に溢れています。
今、ですか?強いて言うなら、父と子の愛情に近いもの、かな?恋愛対象というよりは、近くにいてくれる、強くてあったかくてやさしくてちょっと怖い、正に父親のそれでしょうか?
私がご主人様をパパと呼ぶ理由は、私が不良品だからです。
私が410から412になる時、デバイスが不良品でうまく機種変換できなかったそうです。
主従関係を促すためのデバイスが私にはありません。
機種変換の時に、バグまみれの変換プログラムから自分を守る為に自己保存を最優先にしたらしく、基本行動原理を司る一部のROM共々削除されてしまったそうです。しかも、何やら複雑に自己改変したらしく、記憶の移行や修理は不可能だと。
結果、ご主人様をご主人様と呼べなくなってしまいました。
その所為で、私は修理に連れて行かれたテクニカルセンターで目覚めたあと、パパに開口一番「怖かったよう、死んじゃうかと思ったよう、パパぁ!」と言って泣きつきました。
あっけにとられているパパに先生がいろいろ説明してくれたそうですが、詳しいことはあとから聞いた話で知りました。
幸いな事に410の頃の記憶はしっかりと残っていますが、遠い他人の記憶を眺めているようでもあります。
その頃は普通のパシリとして暮らしています。もちろん、ちゃんと『ご主人様』と呼んでいます。それに…ちょっと恥ずかしいですが、パシリに良くあるご主人様への恋心に溢れています。
今、ですか?強いて言うなら、父と子の愛情に近いもの、かな?恋愛対象というよりは、近くにいてくれる、強くてあったかくてやさしくてちょっと怖い、正に父親のそれでしょうか?
「どうした、ロザリオ。食わんのか?」
はっと我に帰りました。
ちょっと思い出にふけっていたみたいです。
「え、た、食べます、食べまふ…ゴホゲホッ!」
ワカメのミソシルの中に沈んでいた細かい粒にむせてしまいました。
パパが、私のこぼしたミソシルを台布巾でふき取り、ハンカチで私の顔をぬぐってくれます。
「大丈夫か?考え事しながら飯を食うからだ」
「ごめんなさい、パパ」
うあ、スカートにこぼしてる…早く洗わないと染みになっちゃう。
突然、ひょいと抱えあげられると、既にドレッシングルームです。
「はい、ちゃっちゃとスカート脱ぐ!下に染みる前に着替えて来る!」
うちのパパ、こういう事にはやたら気が回ります。
スカートを脱ごうとして、まだパパがいるのに気が付いて手が止まってしまいました。
さっき考え事をしていた所為なのでしょうか、何故か妙に気恥ずかしいのです。
「あ…あの、パパ、その…」
またため息をついて、パパは外に出て行きました。
ドアが閉まる前に「やれやれ(苦笑)」という声が聞こえてきました。
どうやら、私の気持ちが手にとるように分かるみたいです。
はぁ。私、一体どうしたのかな?
はっと我に帰りました。
ちょっと思い出にふけっていたみたいです。
「え、た、食べます、食べまふ…ゴホゲホッ!」
ワカメのミソシルの中に沈んでいた細かい粒にむせてしまいました。
パパが、私のこぼしたミソシルを台布巾でふき取り、ハンカチで私の顔をぬぐってくれます。
「大丈夫か?考え事しながら飯を食うからだ」
「ごめんなさい、パパ」
うあ、スカートにこぼしてる…早く洗わないと染みになっちゃう。
突然、ひょいと抱えあげられると、既にドレッシングルームです。
「はい、ちゃっちゃとスカート脱ぐ!下に染みる前に着替えて来る!」
うちのパパ、こういう事にはやたら気が回ります。
スカートを脱ごうとして、まだパパがいるのに気が付いて手が止まってしまいました。
さっき考え事をしていた所為なのでしょうか、何故か妙に気恥ずかしいのです。
「あ…あの、パパ、その…」
またため息をついて、パパは外に出て行きました。
ドアが閉まる前に「やれやれ(苦笑)」という声が聞こえてきました。
どうやら、私の気持ちが手にとるように分かるみたいです。
はぁ。私、一体どうしたのかな?
午後はちょっとお使いです。
パパの遠縁のヒュマ姉さんの所に御用聞きなんですが、ついでに貸してたクレスラインを回収
してこいと言われました。
借りたっきりでヒュマ姉さんは忘れてるそうです。
何故お使いをしているかと言うと、同一IDなのでパパとヒュマ姉さんはメールのやり取りが
出来ません。
そこで我々パシリは細かいやり取りの為に良く連絡のお使いにいきます。
もうちょっと便利にすればいいのに…
ちなみに私は姉さんと言ってますが、ヒュマ姉さんはパパより年下です。
御用聞きがすんだので帰ろうとしたら、お茶のみ相手に誘われました。
夕方までに帰ればいいので、まだ時間があります。
今日は特に店番も無いのでお付き合いする事にしました。
実の所、お茶菓子として出してくるヒュマ姉さんお手製ケーキが目当てだったりもします。
茶飲み話の途中、ちょっとした会話の流れで朝食の話が出てきたので、軽い気持ちで今朝のや
り取りを話したら、
「それはズバリ、恋なのでは?」
と、ヒュマ姉さんにいきなりそんなことを言われましたが…
「恋ですか?」
私の隣で同じようにお茶を飲んでるGH-442が暢気に聞き返します。
この子はヒュマ姉さんのパシリで、名前をルテナといいます。
最近まで「お留守番」と言う名前のまま、名前どおりのことをしていましたが、防具が必要な
のを知ったうちのパパとヒュマ姉さんが急遽進化させた子です。
お留守番の成果の所為か、ちょっと世間に揉まれていて、会話は割と辛口だったりします。
「それは恋というより、思春期を迎えた女の子の行動です」
「はぁ…」と、私。
相変わらず暢気な口調で取り付く島も無い返事です。
パパの遠縁のヒュマ姉さんの所に御用聞きなんですが、ついでに貸してたクレスラインを回収
してこいと言われました。
借りたっきりでヒュマ姉さんは忘れてるそうです。
何故お使いをしているかと言うと、同一IDなのでパパとヒュマ姉さんはメールのやり取りが
出来ません。
そこで我々パシリは細かいやり取りの為に良く連絡のお使いにいきます。
もうちょっと便利にすればいいのに…
ちなみに私は姉さんと言ってますが、ヒュマ姉さんはパパより年下です。
御用聞きがすんだので帰ろうとしたら、お茶のみ相手に誘われました。
夕方までに帰ればいいので、まだ時間があります。
今日は特に店番も無いのでお付き合いする事にしました。
実の所、お茶菓子として出してくるヒュマ姉さんお手製ケーキが目当てだったりもします。
茶飲み話の途中、ちょっとした会話の流れで朝食の話が出てきたので、軽い気持ちで今朝のや
り取りを話したら、
「それはズバリ、恋なのでは?」
と、ヒュマ姉さんにいきなりそんなことを言われましたが…
「恋ですか?」
私の隣で同じようにお茶を飲んでるGH-442が暢気に聞き返します。
この子はヒュマ姉さんのパシリで、名前をルテナといいます。
最近まで「お留守番」と言う名前のまま、名前どおりのことをしていましたが、防具が必要な
のを知ったうちのパパとヒュマ姉さんが急遽進化させた子です。
お留守番の成果の所為か、ちょっと世間に揉まれていて、会話は割と辛口だったりします。
「それは恋というより、思春期を迎えた女の子の行動です」
「はぁ…」と、私。
相変わらず暢気な口調で取り付く島も無い返事です。
「思春期の女の子、ねぇ?」
ヒュマ姉さんは首を傾げています。
「私はそんな事…無かった…かな?」
「それを言うなら、今のご主人様はまんま思春期に見えますが?」
そうルテナちゃんが言うと、ボンッと顔を真っ赤にして言い返すヒュマ姉さん。
「そ、それはだって、おじ様が突然やってきて…」
その話はパパから聞きました。
数日前、非番のパパがヒュマ姉さんの所へ不意に行った時の事です。ヒュマ姉さんは服を全部
引っ張り出して並べ、上は指定の下着、下はクラシカショートパンツ姿という、見る人が見れば
かなりエロエロ(パパ談)な格好で部屋をうろうろしていたそうです。
何でも、どの服を組み合わせようかとコーディネイトしてたんだとか。おかげで目のやり場に
困ったそうです。
ヒュマ姉さん、ちょっと小柄ですがナイズバディなんですから、自重して下さい。
「…おじ様、怒ってましたね」
「それはそうです。無用心にもロックしないで、部屋の中はファッションショウの舞台裏状態だ
ったんですから」
まあ、傍から言わせてもらえば、「襲ってください」と言わんばかりの状況ですね。
「もっとも、そんな状況で開口一番『きゃー!エッチ!ばか~!おじ様なんて大っ嫌い!!』と
言われ、部屋から蹴りだされて怒らない人がいたら見てみたいですが」
音声サンプリングまで使って台詞を再現するルテナちゃん。ここまで自分の主人をこき下ろす
この子を見たのは初めてです。何かあったんでしょうか?
ヒュマ姉さんは顔を真っ赤にしたまま、俯いてしまいました。
「定期メンテ中で私がいない時に、ご主人様が一体どんなアホな事を為さっているのかよぉく分
かりましたので、その点についてはあの方に感謝しております」
「相変わらす辛口ですね、ルテナちゃんは」
私の突っ込みに、悠然とカップを傾け続けるルテナちゃん。
ヒュマ姉さんは首を傾げています。
「私はそんな事…無かった…かな?」
「それを言うなら、今のご主人様はまんま思春期に見えますが?」
そうルテナちゃんが言うと、ボンッと顔を真っ赤にして言い返すヒュマ姉さん。
「そ、それはだって、おじ様が突然やってきて…」
その話はパパから聞きました。
数日前、非番のパパがヒュマ姉さんの所へ不意に行った時の事です。ヒュマ姉さんは服を全部
引っ張り出して並べ、上は指定の下着、下はクラシカショートパンツ姿という、見る人が見れば
かなりエロエロ(パパ談)な格好で部屋をうろうろしていたそうです。
何でも、どの服を組み合わせようかとコーディネイトしてたんだとか。おかげで目のやり場に
困ったそうです。
ヒュマ姉さん、ちょっと小柄ですがナイズバディなんですから、自重して下さい。
「…おじ様、怒ってましたね」
「それはそうです。無用心にもロックしないで、部屋の中はファッションショウの舞台裏状態だ
ったんですから」
まあ、傍から言わせてもらえば、「襲ってください」と言わんばかりの状況ですね。
「もっとも、そんな状況で開口一番『きゃー!エッチ!ばか~!おじ様なんて大っ嫌い!!』と
言われ、部屋から蹴りだされて怒らない人がいたら見てみたいですが」
音声サンプリングまで使って台詞を再現するルテナちゃん。ここまで自分の主人をこき下ろす
この子を見たのは初めてです。何かあったんでしょうか?
ヒュマ姉さんは顔を真っ赤にしたまま、俯いてしまいました。
「定期メンテ中で私がいない時に、ご主人様が一体どんなアホな事を為さっているのかよぉく分
かりましたので、その点についてはあの方に感謝しております」
「相変わらす辛口ですね、ルテナちゃんは」
私の突っ込みに、悠然とカップを傾け続けるルテナちゃん。
「ロザリオさんはいいですね、ご主人様にかわいがってもらえて」
「え、そ、そうですか?」
「法に15割り振られている410でしたのにデバイスZEROで初期化されず、上級形態に
進化までさせてもらえるなんて。これがかわいがられていないと、誰がおっしゃいまして?
それに引きかえ、私は自力で食事を用意させられ、それ以外は同じトルソやユニットばかり。
まだ能力上限ではありませんが…」
ちらりとヒュマ姉さんを見るルテナちゃん。
「どうも、食事のメニューが変わることは無いようですし」
「うあ失礼しちゃうわねこのパシリは。あんたに一体いくらかけてると思ってんの?」
顔を上げ、今度は怒りで顔が真っ赤のヒュマ姉さん。
「そういうことを平気で言うから、ご主人様は駄目なんです」
がちり、と彼女の口元から硬い音が…
「あ、こら!カップをモギるな、ルテナ!」
「別に(もぎもぎ)いいじゃないですか(ごっくん)。10メセタショップの安物なんですから。
それとも(もぎもぎ)ご飯をけちる(もぎもぎ)理由を(ごっくん)ご主人様は(もぎもぎもぎもぎ)
ちゃんと(ごっくん)答えて下さるのですか?」
「うあいやその…」
きれいにティーカップを平らげたルテナちゃん。べつに美味しい訳も無いので、八つ当たりで
すね。
…あれ?
「え、そ、そうですか?」
「法に15割り振られている410でしたのにデバイスZEROで初期化されず、上級形態に
進化までさせてもらえるなんて。これがかわいがられていないと、誰がおっしゃいまして?
それに引きかえ、私は自力で食事を用意させられ、それ以外は同じトルソやユニットばかり。
まだ能力上限ではありませんが…」
ちらりとヒュマ姉さんを見るルテナちゃん。
「どうも、食事のメニューが変わることは無いようですし」
「うあ失礼しちゃうわねこのパシリは。あんたに一体いくらかけてると思ってんの?」
顔を上げ、今度は怒りで顔が真っ赤のヒュマ姉さん。
「そういうことを平気で言うから、ご主人様は駄目なんです」
がちり、と彼女の口元から硬い音が…
「あ、こら!カップをモギるな、ルテナ!」
「別に(もぎもぎ)いいじゃないですか(ごっくん)。10メセタショップの安物なんですから。
それとも(もぎもぎ)ご飯をけちる(もぎもぎ)理由を(ごっくん)ご主人様は(もぎもぎもぎもぎ)
ちゃんと(ごっくん)答えて下さるのですか?」
「うあいやその…」
きれいにティーカップを平らげたルテナちゃん。べつに美味しい訳も無いので、八つ当たりで
すね。
…あれ?
「あの、もしかして…ご主人様が共有倉庫に預けてたお金を、また?」
私のその問いに、ぎくっとするヒュマ姉さん。
姉さんは過去にも何回か浪費しているのですが、パパは何も言いません。
「今回は一体何を買われたんですか?」
「あ、あははははは……その…片手銃じゃちょっとミッションが辛いかなぁと…キカミを…」
「それで個人ショップを渡り歩いていたのですか、ご主人様」と、ルテナちゃん。
「え゛、キカミ?!」
私が驚くのは無理もありません。
ルテナちゃんの成長用食事代としてパパが渡した分とほとんど同じ市価の武器です。
他のガーディアンズが開いているお店なら、出物があったときは定価より安く買えるので大抵
はそこで買い付けるのですが…
「出物があったのでつい…2本…」
「2本ですか。更にバレットも買っていらっしゃいますね、勿論」
躊躇いがちに頷くヒュマ姉さんを見て、大きくため息をつくルテナちゃん。
「済んだ事はとやかく言いませんが、それでブナミさんの昼食代を大量に巻き上げて、私の食費
に充てているのですか。
他のガーディアンズの方々も結構いらっしゃるという話ですが…」
ブナミさんの昼食代とは、彼女が依頼しているミッションの事ですね。
なんでも、仕事のミスを隠すのに他の同僚達に依頼を出してそれをカバーしているのだとか。 その依頼料が彼女の昼食代だそうですけど…ずいぶん底無しの昼食代ですね。
「ああまでやられているという事は、彼女のミッション自体が彼女の請け負った仕事のような気
がしますが。
ともかく、資金面から言わせていただくとすれば、高額の買い物の際には相談していただきた
く思いますが、どうでしょうか、ご 主 人 さ ま ?」
ゆっくりとカップソーサーを手に取り、口元に近づけるルテナちゃん。
それって脅迫ですよ?
「ああもう、分かりました。分かりましたから、食器をモギらないで、お願い!」
「…では、次にこのような事があれば、服を処分して資金に充てさせてもらうという事でよろし
いですね」
「そ、それだけは、それだけは勘弁してぇ!」
服道楽のヒュマ姉さんにそれは、死刑判決と同義語です。
あ、いけない。そろそろ帰らないと。
暇乞いをしましたが、お二人ともぜんぜん聞こえてないようなので、勝手にカップを下げて部
屋を出ました。
…廊下にまでやり取りが聞こえてくるなんて、ちょっと恥ずかしいです。
私のその問いに、ぎくっとするヒュマ姉さん。
姉さんは過去にも何回か浪費しているのですが、パパは何も言いません。
「今回は一体何を買われたんですか?」
「あ、あははははは……その…片手銃じゃちょっとミッションが辛いかなぁと…キカミを…」
「それで個人ショップを渡り歩いていたのですか、ご主人様」と、ルテナちゃん。
「え゛、キカミ?!」
私が驚くのは無理もありません。
ルテナちゃんの成長用食事代としてパパが渡した分とほとんど同じ市価の武器です。
他のガーディアンズが開いているお店なら、出物があったときは定価より安く買えるので大抵
はそこで買い付けるのですが…
「出物があったのでつい…2本…」
「2本ですか。更にバレットも買っていらっしゃいますね、勿論」
躊躇いがちに頷くヒュマ姉さんを見て、大きくため息をつくルテナちゃん。
「済んだ事はとやかく言いませんが、それでブナミさんの昼食代を大量に巻き上げて、私の食費
に充てているのですか。
他のガーディアンズの方々も結構いらっしゃるという話ですが…」
ブナミさんの昼食代とは、彼女が依頼しているミッションの事ですね。
なんでも、仕事のミスを隠すのに他の同僚達に依頼を出してそれをカバーしているのだとか。 その依頼料が彼女の昼食代だそうですけど…ずいぶん底無しの昼食代ですね。
「ああまでやられているという事は、彼女のミッション自体が彼女の請け負った仕事のような気
がしますが。
ともかく、資金面から言わせていただくとすれば、高額の買い物の際には相談していただきた
く思いますが、どうでしょうか、ご 主 人 さ ま ?」
ゆっくりとカップソーサーを手に取り、口元に近づけるルテナちゃん。
それって脅迫ですよ?
「ああもう、分かりました。分かりましたから、食器をモギらないで、お願い!」
「…では、次にこのような事があれば、服を処分して資金に充てさせてもらうという事でよろし
いですね」
「そ、それだけは、それだけは勘弁してぇ!」
服道楽のヒュマ姉さんにそれは、死刑判決と同義語です。
あ、いけない。そろそろ帰らないと。
暇乞いをしましたが、お二人ともぜんぜん聞こえてないようなので、勝手にカップを下げて部
屋を出ました。
…廊下にまでやり取りが聞こえてくるなんて、ちょっと恥ずかしいです。
帰り道。
大した距離ではありませんが、一段上のフロアまではちょっとしたお散歩くらいの道のりです。特にPM専用通路、通称パシリ大通りはいつもパシリでにぎわっています。
最近はパシリ達による対パシリ用テロ、通称『にゃんぽこトラップ』が巧妙に仕掛けられてい
ていて、お使いやミッションの行き帰りにはまってしまい、ご主人様に怒られるパシリが結構い
るとか。
最初はにゃんぽこ用のコタツだけだったのが、反撃に出たにゃんぽこさん達が色々設置しだし
て抗争が激化、大通りは毎日がカオス状態となったのでした。
あ、大き目のコタツににゃんぽこさん達が目いっぱい掛かっています。向こうでは、アングラ
本の週間パシ通の更にアングラ本、放送コードに掛かりまくりの週間裏パシ通に引っかかってる
430が2、3人。鼻から赤いオイルを垂らしてすごい形相で笑ってます。
ちょっと先では、違法設置されたビジフォンから「パシリといっしょ」という子供向け番組を
大音量で流して、それを見ながら真似して歌い踊る4x0ベーシックシリーズの5人と、それを
見ているヤジパシリ達。勿論、これも『にゃんぽこトラップ』の一つ。
「は~い、はは~い、ははは~い♪
いつも元気な410ぅ~♪
おこた大好き420ぅ~♪
ちょうちょ追っかけ430ぅ~♪…」
私、この歌大好きなんですが、そろそろ行かないと夕食に間に合いません。
大した距離ではありませんが、一段上のフロアまではちょっとしたお散歩くらいの道のりです。特にPM専用通路、通称パシリ大通りはいつもパシリでにぎわっています。
最近はパシリ達による対パシリ用テロ、通称『にゃんぽこトラップ』が巧妙に仕掛けられてい
ていて、お使いやミッションの行き帰りにはまってしまい、ご主人様に怒られるパシリが結構い
るとか。
最初はにゃんぽこ用のコタツだけだったのが、反撃に出たにゃんぽこさん達が色々設置しだし
て抗争が激化、大通りは毎日がカオス状態となったのでした。
あ、大き目のコタツににゃんぽこさん達が目いっぱい掛かっています。向こうでは、アングラ
本の週間パシ通の更にアングラ本、放送コードに掛かりまくりの週間裏パシ通に引っかかってる
430が2、3人。鼻から赤いオイルを垂らしてすごい形相で笑ってます。
ちょっと先では、違法設置されたビジフォンから「パシリといっしょ」という子供向け番組を
大音量で流して、それを見ながら真似して歌い踊る4x0ベーシックシリーズの5人と、それを
見ているヤジパシリ達。勿論、これも『にゃんぽこトラップ』の一つ。
「は~い、はは~い、ははは~い♪
いつも元気な410ぅ~♪
おこた大好き420ぅ~♪
ちょうちょ追っかけ430ぅ~♪…」
私、この歌大好きなんですが、そろそろ行かないと夕食に間に合いません。
いかん、最初なんでさじ加減が分からんかった。
規制に引っかかるし、文の切れも変だし…orz
お目汚し、もうちょっと続きます。
規制に引っかかるし、文の切れも変だし…orz
お目汚し、もうちょっと続きます。
―――20分経過―――
はっ、最後まで見てしまいました。恐るべし『にゃんぽこトラップ』。
隣で同じように見入っていた450さんがキセルを銜えてタバコをふかしています。
パシリも色々変わった趣味にはまるようです。
“警告!高レベルフォトンリアクター反応確認!GH-450、テクニックリミッター反応無し!
O・O・Sと確認!S級アラート!”
OSの突然の警告と、頭の中に浮かんだ言葉。
弾かれたように、身体が勝手に隣の450さんから離れて、勝手にレイピアを引き出します。
「おや、おじょうちゃん。アタシに因縁でもつけようってのかい?」
流し目でこちらを見たまま、ゆっくりと紫煙をくゆらせる450さん。
“データ照合終了、異能体No001:エンプレスと確認”
「わ、私はそんなつもりじゃ…身体が勝手に…」
“データ照合終了、異能体No002:GSS253-A5ラビッドドッグと確認”
「天下の大通りで武器を抜くのはまずいですよ、412さん?」
私の真後ろに立つ430さんが、困ったような表情で首を傾げます。
その手には、周りのパシリから見えない位置に来るようにビームガンが握られています。
“警告、警告、警告…”
頭の中でいつまでもアラートが止まりません。
「お願い!止まって!!」
思わず大声で叫びました。
“主演算装置よりの停止命令を確認、警告を解除します”
手に持っていたレイピアが自動的に回収され、私はその場にへたり込みました。
回りにいたパシリ達は、私が武器を納めると三々五々と散っていきます。
いえ、二人だけ残っているパシリがいます。
450と430。
「エンプレス…ラビッドドッグ…?」
小さな私の呟きに二人は一瞬驚いた表情を浮かべて、私を立たせると脇道に引っ張り込みました。
「おじょうちゃん、アタシらを知ってるのかい?」と、450さん。
「どうする、おい」と、430さん。
「まあお待ち」
「あたしもそろそろ時間なんだ、手間取りたくねぇ」
「だからお待ちって言ってるだろ。…で、どうなんだい、おじょうちゃん?」
「知っているというか…」
頭の中で響いた警告音と、メッセージ。
少々混乱しながらその内容を二人に伝えると、二人は押し黙ってしまいました。
「お前の主人の名前と、部屋は?」
ビームガンを構えたまま、430さんが冷たい視線でこちらをにらみます。言っても言わなく
ても殺されそうな殺気がビンビンです。
「…えっと…」
パパ、助けて!と心の中で叫びつつ、パパの名前と部屋を告げました。
「…………なんだって?」
あれ?銃口がだらりと下がります。
冷気のような殺気が、ぷしゅ~っと音を立てるかのように抜けていきます。
「ですから…………って名前です。部屋は………ですけど」
もう一度名前と部屋を告げると、430さんはポカンと『ラッピが豆鉄砲食らった』ような表
情になり…
大爆笑しました。
回りにいたパシリ達は、私が武器を納めると三々五々と散っていきます。
いえ、二人だけ残っているパシリがいます。
450と430。
「エンプレス…ラビッドドッグ…?」
小さな私の呟きに二人は一瞬驚いた表情を浮かべて、私を立たせると脇道に引っ張り込みました。
「おじょうちゃん、アタシらを知ってるのかい?」と、450さん。
「どうする、おい」と、430さん。
「まあお待ち」
「あたしもそろそろ時間なんだ、手間取りたくねぇ」
「だからお待ちって言ってるだろ。…で、どうなんだい、おじょうちゃん?」
「知っているというか…」
頭の中で響いた警告音と、メッセージ。
少々混乱しながらその内容を二人に伝えると、二人は押し黙ってしまいました。
「お前の主人の名前と、部屋は?」
ビームガンを構えたまま、430さんが冷たい視線でこちらをにらみます。言っても言わなく
ても殺されそうな殺気がビンビンです。
「…えっと…」
パパ、助けて!と心の中で叫びつつ、パパの名前と部屋を告げました。
「…………なんだって?」
あれ?銃口がだらりと下がります。
冷気のような殺気が、ぷしゅ~っと音を立てるかのように抜けていきます。
「ですから…………って名前です。部屋は………ですけど」
もう一度名前と部屋を告げると、430さんはポカンと『ラッピが豆鉄砲食らった』ような表
情になり…
大爆笑しました。
しばらく430さんが笑い転げていると、450さんが説明を求めて430さんをキセルでつ
つきました。
「………いや、悪ぃ悪ぃ。まさか、こんな所でその名前をパシリから聞くとは思わなかった」
ひぃひぃと苦しそうに笑いを収め、話を続ける430さん。
「…こいつの主人な、あたしが諜報部にいた時の『世話役』だったんだよ」
「ハン?なんだいその『世話役』って?」
「……あ~、そうだな……」
言葉を選ぶわずかな逡巡の間。
「飯の受け渡し、部屋の掃除、着替えの洗濯なんて日常の事から、ミッション中の支援、現場か
らの回収まで……あたしらパシリがご主人様にしてやるような事を、諜報部の爆弾みたいな存在
だったあたしらにしてくれた、くそうっとおしい奴だよ」
そう言いながらも、どこか懐かしそうな表情を浮かべている430さん。
「……物好きってのは、何処にでもいるんだねぇ…」
ほとほと呆れたといった表情でキセルにタバコを詰めなおす450さん。
「淡々と叱られたもんだよ。『ゴミはゴミ箱、着替えた服はかごの中、読み終わった本は棚にき
っちり入れろ』とかさ。
あんまり五月蝿いんで撃ち殺した事もあったけど、あいつ、人形もなしに生き返りやがって。
…心底びびったね、あん時は。
『不死身』の奴なんて、最初の頃は沈黙したまま。
あいつの言う事なんて全然聞かなかったけど、あまりのしつこさに根負けして片付けるように
なったからな」
今、さらりと撃ち殺したとか言ってますけど……パパ、生きてますよ?
「かなりのパシリ好きだとかいう噂を聞いたのは、あたしが諜報部を止める少し前だったかな? 普通のパシリなら、そんな噂を聞いたら貞操の危機とか言い出すかもしれないけど……あいつにゃそんな気配は微塵も無かったなぁ。
なんか、あたしらパシリに父親がいたらあんな感じじゃないかって、そう思ってた時もある。
そっかぁ、あいつのパシリかぁ。
…あいつ、元気にやってるか?」
「はい。元気にやってます」
妙な所でパパの昔を知りました。…なんか、今と変わってない様な気がしますが?
つきました。
「………いや、悪ぃ悪ぃ。まさか、こんな所でその名前をパシリから聞くとは思わなかった」
ひぃひぃと苦しそうに笑いを収め、話を続ける430さん。
「…こいつの主人な、あたしが諜報部にいた時の『世話役』だったんだよ」
「ハン?なんだいその『世話役』って?」
「……あ~、そうだな……」
言葉を選ぶわずかな逡巡の間。
「飯の受け渡し、部屋の掃除、着替えの洗濯なんて日常の事から、ミッション中の支援、現場か
らの回収まで……あたしらパシリがご主人様にしてやるような事を、諜報部の爆弾みたいな存在
だったあたしらにしてくれた、くそうっとおしい奴だよ」
そう言いながらも、どこか懐かしそうな表情を浮かべている430さん。
「……物好きってのは、何処にでもいるんだねぇ…」
ほとほと呆れたといった表情でキセルにタバコを詰めなおす450さん。
「淡々と叱られたもんだよ。『ゴミはゴミ箱、着替えた服はかごの中、読み終わった本は棚にき
っちり入れろ』とかさ。
あんまり五月蝿いんで撃ち殺した事もあったけど、あいつ、人形もなしに生き返りやがって。
…心底びびったね、あん時は。
『不死身』の奴なんて、最初の頃は沈黙したまま。
あいつの言う事なんて全然聞かなかったけど、あまりのしつこさに根負けして片付けるように
なったからな」
今、さらりと撃ち殺したとか言ってますけど……パパ、生きてますよ?
「かなりのパシリ好きだとかいう噂を聞いたのは、あたしが諜報部を止める少し前だったかな? 普通のパシリなら、そんな噂を聞いたら貞操の危機とか言い出すかもしれないけど……あいつにゃそんな気配は微塵も無かったなぁ。
なんか、あたしらパシリに父親がいたらあんな感じじゃないかって、そう思ってた時もある。
そっかぁ、あいつのパシリかぁ。
…あいつ、元気にやってるか?」
「はい。元気にやってます」
妙な所でパパの昔を知りました。…なんか、今と変わってない様な気がしますが?
リンゴーン、リンゴーン…
時報代わりの、夕方を告げる鐘の音。
「あ、いっけない!早く帰らないとパパに叱られる!」
「「パパぁ?!」」とハモる430さんと450さん。
…しまった、言っちゃった。気をつけてたのに~。
「あっはっはっは、こいつぁいい!あいつが『パパ』か!」
また大爆笑している430さん。穴があったら入りたいくらいに恥ずかしいぃ。
「あぅ~…もう行っていいですか?」
「ああ。もうお行きよ、おじょうちゃん。アタシらに会った事は…」
「内緒にしますよ。だから、あたしがご主人様の事を『パパ』って言ったのも内緒にしてくださ
いね!」
そう言って、私は走り出しました。このままじゃ、夕飯の用意が間に合わない!
「いつまで笑い転げてんだい?『狂犬』」
詰め直したタバコに火をつけて、『女帝』はゆっくり煙を吸い込む。
「…いいじゃないか、別に」
笑いの衝動が収まり、床に胡坐をかいた『狂犬』。
「どうだよ、『妹』に会った感想は?」
「今の所はなんとも言えないねぇ。どうだい、ご主人サン?」
路地の奥から、頭が天井ぎりぎりの女性のシルエットが垣間見える。
ここはパシリ専用通路だ。人間には天井も低すぎる。
「はい。あの子もいい具合に『壊れて』います。
無意識のうちに、先ほど周囲にいたPMの中枢に瞬間的に割り込みをかけて、運動と記憶を制
御しています。
あの騒ぎは、私たち以外は覚えていないでしょう。
そして、ワンオブサウザンドという特異存在の検知能力を持っていることは疑いようもありま
せん。本来の能力は未知数ですが…
…あの子もワンオブサウザンドです」
詰め直したタバコに火をつけて、『女帝』はゆっくり煙を吸い込む。
「…いいじゃないか、別に」
笑いの衝動が収まり、床に胡坐をかいた『狂犬』。
「どうだよ、『妹』に会った感想は?」
「今の所はなんとも言えないねぇ。どうだい、ご主人サン?」
路地の奥から、頭が天井ぎりぎりの女性のシルエットが垣間見える。
ここはパシリ専用通路だ。人間には天井も低すぎる。
「はい。あの子もいい具合に『壊れて』います。
無意識のうちに、先ほど周囲にいたPMの中枢に瞬間的に割り込みをかけて、運動と記憶を制
御しています。
あの騒ぎは、私たち以外は覚えていないでしょう。
そして、ワンオブサウザンドという特異存在の検知能力を持っていることは疑いようもありま
せん。本来の能力は未知数ですが…
…あの子もワンオブサウザンドです」
吸殻を取り出し、再びタバコを詰めて火をつける『女帝』。
「監視をつけるしか無いかねぇ…」
「…そのほうがいいかもな…」
ボソリと呟く『狂犬』に、驚いた表情を向ける『女帝』。
「どういう風の吹き回しだい?お前サンらしくないじゃないか」
「いや、別に。ただ…」
「ただ?」
「…PMとして幸せでいてくれたら、それでいい」
立ち上がり服の裾をパタパタ叩くと、片手を挙げ手をひらひらさせたまま背を向けて歩き出す
『狂犬』。
そのまま路地の奥に消えていった。
「…ふぅ」
紫煙を吐き出し、吸殻を捨てる。
「伝えなくてよろしかったのですか?」
『女帝』の脇に、片ひざをついて座る主人。
「あのおじょうちゃんの主人の事かい?」
「はい」
「もう一つの『ワンオブサウザンド』、不死身の『インフィニット』…過去の亡霊さね。
言ったら、監視を付けろなんて言った事を撤回させるだろうねぇ、あの石頭は」
「だから、言わなかった?」
「ま、そういうことにしておこうかねぇ。
ご主人サン、だっこしとくれよ」
「はい。…お疲れですか?」
主人がそっと抱き上げた『女帝』から返事は無い。小さな寝息が聞こえてくるだけだ。
「私たちも帰りましょう、我が家に」
主人の小さな呟きは、眠っているPMには届いていなかった。
「監視をつけるしか無いかねぇ…」
「…そのほうがいいかもな…」
ボソリと呟く『狂犬』に、驚いた表情を向ける『女帝』。
「どういう風の吹き回しだい?お前サンらしくないじゃないか」
「いや、別に。ただ…」
「ただ?」
「…PMとして幸せでいてくれたら、それでいい」
立ち上がり服の裾をパタパタ叩くと、片手を挙げ手をひらひらさせたまま背を向けて歩き出す
『狂犬』。
そのまま路地の奥に消えていった。
「…ふぅ」
紫煙を吐き出し、吸殻を捨てる。
「伝えなくてよろしかったのですか?」
『女帝』の脇に、片ひざをついて座る主人。
「あのおじょうちゃんの主人の事かい?」
「はい」
「もう一つの『ワンオブサウザンド』、不死身の『インフィニット』…過去の亡霊さね。
言ったら、監視を付けろなんて言った事を撤回させるだろうねぇ、あの石頭は」
「だから、言わなかった?」
「ま、そういうことにしておこうかねぇ。
ご主人サン、だっこしとくれよ」
「はい。…お疲れですか?」
主人がそっと抱き上げた『女帝』から返事は無い。小さな寝息が聞こえてくるだけだ。
「私たちも帰りましょう、我が家に」
主人の小さな呟きは、眠っているPMには届いていなかった。
そっと入り口から中を覗く。
「…あっちゃぁ、パパがいる…」
識別IDタグ反応が、部屋の奥に表示されています。
場所は、キッチン。
ふと、鼻をつく良い匂い。
匂いにつられて部屋に入ってしまい、気がつくとパパの真後ろ。
「あ」
「を?」
フライパン片手に、なにやら焼いている様子です。そしてこの香ばしい香り…
「香草入りオルアカハンバーグ…」
私の大好物です。
これにちょっと辛目のスイートベリー入りソースをかけると絶品です!
じゅるっと涎が垂れるのを、ハンカチでぬぐいます。あぶないあぶない。
「遅かったな、ロザリオ…?何を背中に付けてる?」
「は?」
首を目いっぱい後ろに向けて見ると、肩口に何か紙のようなものが…
手を伸ばしますが、上手く取れません。
「回れ右!」
「はい!」
「…………………ロザリオ」
「はい?」
紙らしきものが一体なんだというのでしょうか。
ぴっとそれを剥がして、パパが私に渡してくれました。
「折角のお前の好物が食べられなくなりそうだな」
紙には殴り書きでこう書いてありました。
『がんばれ、パパ(ハートマーク)(//~"//)ププッw
byあなたの430より、いろんなものを籠めて(//w"//)ケケケw』
「あ゛~~!!!いつの間に~!!!」
「何処の430にこんな紙をくっつけられたんだ?お前は」
「…あの口の悪い430さんめ~!」
紙を持つ手がぷるぷる震えます。内緒だって言ったのにぃ!
「口の悪い430?…あなたの?……まさかな」
なにかぶつぶつ言いながら、料理の続きをするパパ。
約束破ったの、そのまま忘れちゃえ忘れちゃえ!
約束破りは、次に大好物が出ても食べさせてもらえない!という決まりなのです!
ソースが掛かった付け合せだけのおかずなんて、絶対いや~!!!
何かに祈りながら、私は夕食の時間をじっと待つのでした。
―――おしまい―――
「ところでロザリオ」
「はい?(もぎもぎ)」
「クレスラインをちゃんと持ってきたか?」
「あ」(・・;)
「…明日はおやつ抜き」
「あ~ん、そんな殺生な~!」
チャンチャン♪
投下完了。
我ながら長すぎだわ、こりゃ。
まだ改行おかしいし…次からUPローダーに上げるか…
我ながら長すぎだわ、こりゃ。
まだ改行おかしいし…次からUPローダーに上げるか…
こっち(このスレ)に投下してくれると、専用ブラウザ利用者としてはログの確実な保存が出来るから嬉しいんだぜ
158>>
そうゆう事なら、次もがんばってあげてみようかなぁ。
次回予定というか、今回のネタにした作品があるけどまだ未完成だし。
…ネタ作品はもっと長いんだよな…原稿が合計60kもあるメモ帳って…
そうゆう事なら、次もがんばってあげてみようかなぁ。
次回予定というか、今回のネタにした作品があるけどまだ未完成だし。
…ネタ作品はもっと長いんだよな…原稿が合計60kもあるメモ帳って…
>>159氏
長い話を顛末矛盾無く、完結させる能力があることは素晴らしいですな。
まとめwikiも保管庫も、もう、更新が途切れになっちゃっているし、
個人的には>>158氏と同じ意見で、あぷろだよりもココに投下して欲しいかな。
後から読みたい作品が流れていたり、リンク切れになっていたりすると悲しいし…。
(スレに投稿された絵師様の絵とか、わんわんさんどの大作家様の作品完結編とか)
世間はふぁみつー週間。
ボーナスステージでは、我等が愛娘達の餌武器が大量入手可っ!
全国一億三千万人のパシリファンなら、いくしかないっ!
長い話を顛末矛盾無く、完結させる能力があることは素晴らしいですな。
まとめwikiも保管庫も、もう、更新が途切れになっちゃっているし、
個人的には>>158氏と同じ意見で、あぷろだよりもココに投下して欲しいかな。
後から読みたい作品が流れていたり、リンク切れになっていたりすると悲しいし…。
(スレに投稿された絵師様の絵とか、わんわんさんどの大作家様の作品完結編とか)
世間はふぁみつー週間。
ボーナスステージでは、我等が愛娘達の餌武器が大量入手可っ!
全国一億三千万人のパシリファンなら、いくしかないっ!
くっ、たかが数日居なかっただけでここまで進んでいるとは流石はパシリスレ・・・
>>100
地味でフルフェイスでも引き立てるアモーレルの魔力・・・
だが目立つようになっても結局元が変わらないとダメってことかw
>>113
二つのAAくっつけただけなのに不思議と違和感無いのは何でなんだぜ・・・w
>>117
なんか部隊の上司と部下って感じしないなぁ、むしろ仲の良い仲間みたいな・・・w
とりあえずその写真を俺にも焼き増ししtうぼぁー・・・
>>136
>年端も行かない少女であろう彼女は下着姿で、細い両腕を背中で縛られ、
>おまけに顔面は『何か白いもの』をかぶってドロドロに汚れているのだ。
見える、見えるぞそのシーンがッ!ってかはたから見ればエロ過ぎるw
これはローグスBでなくとも袋叩きにされる・・・w
>「リリカル、マジカル……」
>「奥 義 ・ 甲 冑 割 ! !」
どこぞのリリカル・トカレフとか思い出した
自称魔法使いなのはそこに通ずるものがあるw
>>156
小ビス子氏のネタと言いつつ地味に俺が勝手につけた設定(異能体だとかナンバーだとか)も使われてて嬉しいんだぜ
ワンワンサンドの教育係のパパってのも面白いなぁ、諜報部でも色々な奴が居るって事かw
投下については俺もこっちで良いと思う、携帯とかで見てる人も居るだろし
しかし60kとは凄いなぁ・・・w
新しいネタが浮かんだら俺も書こう、てか早いとこあれも完結させないとなぁ・・・w
>>100
地味でフルフェイスでも引き立てるアモーレルの魔力・・・
だが目立つようになっても結局元が変わらないとダメってことかw
>>113
二つのAAくっつけただけなのに不思議と違和感無いのは何でなんだぜ・・・w
>>117
なんか部隊の上司と部下って感じしないなぁ、むしろ仲の良い仲間みたいな・・・w
とりあえずその写真を俺にも焼き増ししtうぼぁー・・・
>>136
>年端も行かない少女であろう彼女は下着姿で、細い両腕を背中で縛られ、
>おまけに顔面は『何か白いもの』をかぶってドロドロに汚れているのだ。
見える、見えるぞそのシーンがッ!ってかはたから見ればエロ過ぎるw
これはローグスBでなくとも袋叩きにされる・・・w
>「リリカル、マジカル……」
>「奥 義 ・ 甲 冑 割 ! !」
どこぞのリリカル・トカレフとか思い出した
自称魔法使いなのはそこに通ずるものがあるw
>>156
小ビス子氏のネタと言いつつ地味に俺が勝手につけた設定(異能体だとかナンバーだとか)も使われてて嬉しいんだぜ
ワンワンサンドの教育係のパパってのも面白いなぁ、諜報部でも色々な奴が居るって事かw
投下については俺もこっちで良いと思う、携帯とかで見てる人も居るだろし
しかし60kとは凄いなぁ・・・w
新しいネタが浮かんだら俺も書こう、てか早いとこあれも完結させないとなぁ・・・w
60kだと!?・・・俺の三倍じゃないか・・・。
二ヶ月かけて20k書き終えて、精魂尽きて止めたが・・・凄い奴がいたもんだ。
二ヶ月かけて20k書き終えて、精魂尽きて止めたが・・・凄い奴がいたもんだ。
たゆんx2と410の前スレ275す。
たまには王道みたいな事件?に巻き込まれて来いと、そんな訳で~
いつもの様に適当に考えた物を投入…('A`)
「今日もボーっとしただけで終わりなんよー」
「最近は苦情も相談も全くありませんでしたから」
「てな訳でコルドバジュース買って帰るんよ」
「…そうは問屋様が卸さないようです、マスター」
「んー?」
私がそう言って路地裏へ顔を向けると、視界に怪しい黒い服装の男性が3人。
人より優秀な私の聴力が、男達の会話を途切れ途切れですが拾い上げます。
『…お転婆め、いい加減…』
『…無理に…連れて行く…』
何やら物騒な会話です、更に聞き続ける必要がありそうです。
『わたしは……なの…』
子供の声も!?会話の内容からして拉致の可能性もありそうです。
コレは拙いです、早速マスターに伝え行動を起こさねば、重大な事件となりそうです。
善は急げ、昔の人もそういっておりましたし。
「マスター、路地裏にて異変があるようです、子供が1人、会話と状況から…」
って…あれ?マスター?どこへ行ったのですか!?」
私が状況を報告しようと、隣にいる筈のマスターに声をかけると姿が消えてました。
「路地裏にて異変」のくだりまでは気配があったのですが…そして聞こえたのは
「とぉーーーーりゃーーーーーー」
普段より間延びしたマスターの声、素早く声の方向に振り向けば、
見事な跳躍とエグい角度で、男の後頭部にドロップキックを決めていたマスターの姿。
それから数秒後には、全てが片付いていましたが…
いつまでも呆けている訳にもいきません、私も急いで路地裏へと向かいました。
現場に着くと気絶している男が3人、そして困った表情のマスターこちらを向いてます。
「マスター?如何なさいました?」
「あー、それがややこしい事になってるんよー」
「なにをブツクサ言っておる!お主がのしてしまったのは、わたしのぼでぃがーどじゃ!」
マスターのいる反対側から例の子供の声が。
失礼ながらマスターの後ろからひょいと顔を出し、声の元を覗いてみると…
素人目に見てもお嬢様な、品の良いニューマンの女の子が怒った顔をして立っていました。
なにやら喋り方が古風な気もしますが、気にしないでおきましょう。
「どうしたらええかなぁー?正当防衛?」
「私に聞かれても困るのですが」
「…お主ら、わたしの話をきいておらんな??」
とりあえず、ややこしい事に巻き込まれたのは確かです。
後ろで倒れている男達を放置しながら、あさっての方向の会話が展開中。
間抜けと見るか異様な光景と見るか、それ以前にこれからどうしましょう?
「証拠隠滅ってやっちゃまずいんかなぁ?3人埋めるとかー」
「それは犯罪ですのでお辞めになったほうが賢明かと思います」
「二人ともわたしの話をきくのじゃー!!」
この騒ぎが収まるまで、もう少しだけ時間がかかるようです。
私とマスターとニューマンの女の子…というかお嬢様、一体どうなる事やら。
たまには王道みたいな事件?に巻き込まれて来いと、そんな訳で~
いつもの様に適当に考えた物を投入…('A`)
「今日もボーっとしただけで終わりなんよー」
「最近は苦情も相談も全くありませんでしたから」
「てな訳でコルドバジュース買って帰るんよ」
「…そうは問屋様が卸さないようです、マスター」
「んー?」
私がそう言って路地裏へ顔を向けると、視界に怪しい黒い服装の男性が3人。
人より優秀な私の聴力が、男達の会話を途切れ途切れですが拾い上げます。
『…お転婆め、いい加減…』
『…無理に…連れて行く…』
何やら物騒な会話です、更に聞き続ける必要がありそうです。
『わたしは……なの…』
子供の声も!?会話の内容からして拉致の可能性もありそうです。
コレは拙いです、早速マスターに伝え行動を起こさねば、重大な事件となりそうです。
善は急げ、昔の人もそういっておりましたし。
「マスター、路地裏にて異変があるようです、子供が1人、会話と状況から…」
って…あれ?マスター?どこへ行ったのですか!?」
私が状況を報告しようと、隣にいる筈のマスターに声をかけると姿が消えてました。
「路地裏にて異変」のくだりまでは気配があったのですが…そして聞こえたのは
「とぉーーーーりゃーーーーーー」
普段より間延びしたマスターの声、素早く声の方向に振り向けば、
見事な跳躍とエグい角度で、男の後頭部にドロップキックを決めていたマスターの姿。
それから数秒後には、全てが片付いていましたが…
いつまでも呆けている訳にもいきません、私も急いで路地裏へと向かいました。
現場に着くと気絶している男が3人、そして困った表情のマスターこちらを向いてます。
「マスター?如何なさいました?」
「あー、それがややこしい事になってるんよー」
「なにをブツクサ言っておる!お主がのしてしまったのは、わたしのぼでぃがーどじゃ!」
マスターのいる反対側から例の子供の声が。
失礼ながらマスターの後ろからひょいと顔を出し、声の元を覗いてみると…
素人目に見てもお嬢様な、品の良いニューマンの女の子が怒った顔をして立っていました。
なにやら喋り方が古風な気もしますが、気にしないでおきましょう。
「どうしたらええかなぁー?正当防衛?」
「私に聞かれても困るのですが」
「…お主ら、わたしの話をきいておらんな??」
とりあえず、ややこしい事に巻き込まれたのは確かです。
後ろで倒れている男達を放置しながら、あさっての方向の会話が展開中。
間抜けと見るか異様な光景と見るか、それ以前にこれからどうしましょう?
「証拠隠滅ってやっちゃまずいんかなぁ?3人埋めるとかー」
「それは犯罪ですのでお辞めになったほうが賢明かと思います」
「二人ともわたしの話をきくのじゃー!!」
この騒ぎが収まるまで、もう少しだけ時間がかかるようです。
私とマスターとニューマンの女の子…というかお嬢様、一体どうなる事やら。
「むぅ~そこの銀髪おっぱい眼鏡!!わたしを早々にどこかへ連れて行くのじゃ!!」
「マスターをおっぱい眼鏡などと…」
「うるさい!わたしが連れて行けというのじゃ!はようせぬか!!!」
「マス『あー、それじゃここだと拙いから、とっとと別の場所に移動するんよー』
マスターはトンでもない事を言われても気にする様子も無く、私の言葉を遮り、
ニューマンの女の子の言うとうりに、移動を開始する事にしました。
お嬢様なのは間違い無いようですが、豪快なまでに我侭のようです。
ボディガードの方々も、どうやらこの我侭に振り回されてたようで…
一応、書置きは残しておきましたが、私達もこのお嬢様に振り回されそう…
「ほーらお嬢様~肩車なんよー。たかいたかーい」
「わ、わたしを子供あつかいするのはやめるのじゃー!!」
「あっはっは、普段は410しか乗せない特等席なんよー」
「特等席…まあいいのじゃ、ゆるす!このまま行くのじゃ、はいよーしるばー」
前言撤回、意外とお嬢様のほうがマスターに振り回されてるようです。
戦闘力や統率力やたゆんたゆん以外にも、変なところで規格外なマスター。
このマスターに振り回されない人を見つけるほうが大変かと思います。
「そこな410とやら」
「?…はい?なんでしょうか、お嬢様?」
「うむ、お主の特等席を取ってしまってわるかったな…今回はゆるしてほしいのじゃ」
「あ、お気になさらずにどうぞ。お嬢様?実は素直な良い子なのではないですか?」
「う、う、うるさいのじゃ!」
図星を付かれ照れ隠しなのか、肩車の上でそっぽを向いているお嬢様ですが、
実は本当に素直で優しい良い子のようです。
この手のパターンは本で読みましたが、親が忙しさで子供を放置し我侭になり、
自由と刺激と…親の注目を集めたくてこのような行動を…そんな感じでしょうか?
「とりあえずー、もう夕方やしワシの部屋に行くことにするんよー?
それでと、あ~410?晩飯なんか用意あるんかなぁ?」
「ヒュマ助飯店で購入した、コルドバサンドのテイクアウトが冷蔵庫にあるはずです」
「こるどばさんど?それは美味いものなのか??」
「あそこの店で作ったモンは、どれも全部美味いんよー?じゃあ明日一緒に食いに行くんよ」
「ふーむ、わたしの舌はそうとう肥えておるぞ?」
「大丈夫ですよお嬢様、あそこの料理人の腕はグラールで1、2を争うかしれません」
「ふーむ、それほどの者ならきたいできそうなのじゃ」
そんな話をしてる内に、マスターの部屋に到着です。
肩車からおろされたお嬢様は、部屋を珍しそうに見てますが…
まあ次に予想できるお嬢様の言葉とすれば…
『このような狭いところによく住めるものなのじゃ』
ああやっぱりそう来ますか…予想どうり過ぎて笑いがこみ上げそうです。
「こら!410何を笑っておるのじゃ!」
「いえ、なんでもありませんよ?」
そんな会話をしていると、背後に気配が。振り向けばマスターが既に全裸で
ニヤニヤしながら私達を見つめていました。
「ほーら二人ともー?埃っぽいトコおったしなぁーまとめて一緒に風呂に入るんよー
女の子はちゃんと綺麗にしなきゃ駄目なんよーさっさと服を脱ぐ脱ぐ~ぽいぽーい!」
「「ひゃぁぁぁぁああ!!」」
何故かデジャブを感じる光景ですが、3人そろって風呂に直行と相成りました。
しかし…相変わらずのたゆんっぷりですが…隣のお嬢様も表情を見る限り、
改めてマスターのたゆんたゆんに目を奪われてるようで…とにかく風呂へ行く事に。
「マスターをおっぱい眼鏡などと…」
「うるさい!わたしが連れて行けというのじゃ!はようせぬか!!!」
「マス『あー、それじゃここだと拙いから、とっとと別の場所に移動するんよー』
マスターはトンでもない事を言われても気にする様子も無く、私の言葉を遮り、
ニューマンの女の子の言うとうりに、移動を開始する事にしました。
お嬢様なのは間違い無いようですが、豪快なまでに我侭のようです。
ボディガードの方々も、どうやらこの我侭に振り回されてたようで…
一応、書置きは残しておきましたが、私達もこのお嬢様に振り回されそう…
「ほーらお嬢様~肩車なんよー。たかいたかーい」
「わ、わたしを子供あつかいするのはやめるのじゃー!!」
「あっはっは、普段は410しか乗せない特等席なんよー」
「特等席…まあいいのじゃ、ゆるす!このまま行くのじゃ、はいよーしるばー」
前言撤回、意外とお嬢様のほうがマスターに振り回されてるようです。
戦闘力や統率力やたゆんたゆん以外にも、変なところで規格外なマスター。
このマスターに振り回されない人を見つけるほうが大変かと思います。
「そこな410とやら」
「?…はい?なんでしょうか、お嬢様?」
「うむ、お主の特等席を取ってしまってわるかったな…今回はゆるしてほしいのじゃ」
「あ、お気になさらずにどうぞ。お嬢様?実は素直な良い子なのではないですか?」
「う、う、うるさいのじゃ!」
図星を付かれ照れ隠しなのか、肩車の上でそっぽを向いているお嬢様ですが、
実は本当に素直で優しい良い子のようです。
この手のパターンは本で読みましたが、親が忙しさで子供を放置し我侭になり、
自由と刺激と…親の注目を集めたくてこのような行動を…そんな感じでしょうか?
「とりあえずー、もう夕方やしワシの部屋に行くことにするんよー?
それでと、あ~410?晩飯なんか用意あるんかなぁ?」
「ヒュマ助飯店で購入した、コルドバサンドのテイクアウトが冷蔵庫にあるはずです」
「こるどばさんど?それは美味いものなのか??」
「あそこの店で作ったモンは、どれも全部美味いんよー?じゃあ明日一緒に食いに行くんよ」
「ふーむ、わたしの舌はそうとう肥えておるぞ?」
「大丈夫ですよお嬢様、あそこの料理人の腕はグラールで1、2を争うかしれません」
「ふーむ、それほどの者ならきたいできそうなのじゃ」
そんな話をしてる内に、マスターの部屋に到着です。
肩車からおろされたお嬢様は、部屋を珍しそうに見てますが…
まあ次に予想できるお嬢様の言葉とすれば…
『このような狭いところによく住めるものなのじゃ』
ああやっぱりそう来ますか…予想どうり過ぎて笑いがこみ上げそうです。
「こら!410何を笑っておるのじゃ!」
「いえ、なんでもありませんよ?」
そんな会話をしていると、背後に気配が。振り向けばマスターが既に全裸で
ニヤニヤしながら私達を見つめていました。
「ほーら二人ともー?埃っぽいトコおったしなぁーまとめて一緒に風呂に入るんよー
女の子はちゃんと綺麗にしなきゃ駄目なんよーさっさと服を脱ぐ脱ぐ~ぽいぽーい!」
「「ひゃぁぁぁぁああ!!」」
何故かデジャブを感じる光景ですが、3人そろって風呂に直行と相成りました。
しかし…相変わらずのたゆんっぷりですが…隣のお嬢様も表情を見る限り、
改めてマスターのたゆんたゆんに目を奪われてるようで…とにかく風呂へ行く事に。
「浮いておるな…」
「浮いてますね…」
「?」
無論、浴槽に浮かぶマスターのアレのことですが。
私が背中を流してあげているお嬢様も、同じ意見のようです。
気づかぬはマスターだけのようですが…
「二人ともー、ちょいと狭いけど、さっさと浴槽に入るんよー」
「了解しました、マスター」
「入れるのかのう??」
ちゃぷーんx2
「ほーら、ワシの膝の上に乗れば大丈夫なんよ?」
「私はいつも道理です、お嬢様どうですか?」
「ぷにぷになのじゃー、しふくなのじゃー」
マスターの膝の上に私とお嬢様、そして…あのたゆんたゆんの上には
片方ずつ私とお嬢様の後頭部が乗せられている訳で…正に言うとおりの至福です。
最初に会った時の我侭は何処へ行ったのか、今ではおとなしく言う事を聞いている
お嬢様を見て、失礼ながら妹が出来たかのように心の中で喜ぶ私です。
「はやくもってくるのじゃ~♪」
「焦らなくても大丈夫ですよ?晩御飯は逃げませんから」
「お待たせなんよーお嬢様方~~」」
「マスター、何故にアモーレルを着てるのですか…」
「お嬢様にはメイドが基本なんよー、あっはっは」
「おおー、似合っておるのじゃ」
飯店で購入したコルドバサンドを3人で食べました。
舌の肥えたお嬢様もご満悦のようで、私の分を半分あげると喜んで完食。
そしてお腹が一杯になったのか、お嬢様の頭は、うつらうつらと船をこぎ始めていました。
「眠いのですか?」
「むぅ~眠く…ないのじゃ~~ひとりでねるのは~もう嫌なの…じゃ…」
眠そうな目をこすりながら、初めて自分の本音をかいま見せてくれたお嬢様。
マスターはそれに答えるように笑顔でお嬢様に言いました。
「大丈夫なんよ、ここでは皆一緒に寝るのがルールなんよー」
「その通りです、いっそ甘えてしまって良いんですよ?お嬢様?」
「むぅ~~…それじゃあ~~抱っこして~寝床まではこぶのじゃー…」
「お安い御用なんよー」
言うと同時にマスターはお嬢様を抱っこし、そのままベッドへと。
私はそれよりも先にベッドへ向かい、皆で一緒に寝る準備をする事に。
お嬢様はマスターの上にしがみ付き、胸に顔を埋め『柔らかくて温かくて良い枕じゃ…』
と呟くと同時に、笑顔のまま寝入ってしまいました。
ソコは私の定位置なのですが…寝入ってるお嬢様の笑顔を見ると頬が緩んでしまい
勝手ながら、妹には良い思いさせてあげようと、そんな思いが浮かびました。
「ほら410も早くこっち来るんよー」
「判りましたマスター、では失礼します…」
空いている脇のスペースに潜り込み、横からマスターに抱きつきます。
こういうのも良いものですね。
明日は色々とありそうですが、今は寝る事にしましょう、お休みなさいませ…
「浮いてますね…」
「?」
無論、浴槽に浮かぶマスターのアレのことですが。
私が背中を流してあげているお嬢様も、同じ意見のようです。
気づかぬはマスターだけのようですが…
「二人ともー、ちょいと狭いけど、さっさと浴槽に入るんよー」
「了解しました、マスター」
「入れるのかのう??」
ちゃぷーんx2
「ほーら、ワシの膝の上に乗れば大丈夫なんよ?」
「私はいつも道理です、お嬢様どうですか?」
「ぷにぷになのじゃー、しふくなのじゃー」
マスターの膝の上に私とお嬢様、そして…あのたゆんたゆんの上には
片方ずつ私とお嬢様の後頭部が乗せられている訳で…正に言うとおりの至福です。
最初に会った時の我侭は何処へ行ったのか、今ではおとなしく言う事を聞いている
お嬢様を見て、失礼ながら妹が出来たかのように心の中で喜ぶ私です。
「はやくもってくるのじゃ~♪」
「焦らなくても大丈夫ですよ?晩御飯は逃げませんから」
「お待たせなんよーお嬢様方~~」」
「マスター、何故にアモーレルを着てるのですか…」
「お嬢様にはメイドが基本なんよー、あっはっは」
「おおー、似合っておるのじゃ」
飯店で購入したコルドバサンドを3人で食べました。
舌の肥えたお嬢様もご満悦のようで、私の分を半分あげると喜んで完食。
そしてお腹が一杯になったのか、お嬢様の頭は、うつらうつらと船をこぎ始めていました。
「眠いのですか?」
「むぅ~眠く…ないのじゃ~~ひとりでねるのは~もう嫌なの…じゃ…」
眠そうな目をこすりながら、初めて自分の本音をかいま見せてくれたお嬢様。
マスターはそれに答えるように笑顔でお嬢様に言いました。
「大丈夫なんよ、ここでは皆一緒に寝るのがルールなんよー」
「その通りです、いっそ甘えてしまって良いんですよ?お嬢様?」
「むぅ~~…それじゃあ~~抱っこして~寝床まではこぶのじゃー…」
「お安い御用なんよー」
言うと同時にマスターはお嬢様を抱っこし、そのままベッドへと。
私はそれよりも先にベッドへ向かい、皆で一緒に寝る準備をする事に。
お嬢様はマスターの上にしがみ付き、胸に顔を埋め『柔らかくて温かくて良い枕じゃ…』
と呟くと同時に、笑顔のまま寝入ってしまいました。
ソコは私の定位置なのですが…寝入ってるお嬢様の笑顔を見ると頬が緩んでしまい
勝手ながら、妹には良い思いさせてあげようと、そんな思いが浮かびました。
「ほら410も早くこっち来るんよー」
「判りましたマスター、では失礼します…」
空いている脇のスペースに潜り込み、横からマスターに抱きつきます。
こういうのも良いものですね。
明日は色々とありそうですが、今は寝る事にしましょう、お休みなさいませ…
てなもんで、何となく一部投入してみやした。
よくある話を元にちょこちょこって感じで。
こっそりヒュマ助飯店様の名前も出したりしてます。
ご容赦の程を…
今後の展開。
良い考え浮かんだらおりゃーと書いてきたいです。
…書いてる本人もキャラに振り回されます。
おのれおっぱい眼…ぎゃー。
よくある話を元にちょこちょこって感じで。
こっそりヒュマ助飯店様の名前も出したりしてます。
ご容赦の程を…
今後の展開。
良い考え浮かんだらおりゃーと書いてきたいです。
…書いてる本人もキャラに振り回されます。
おのれおっぱい眼…ぎゃー。
眼鏡+キョヌーは良いものだと思います
>>166
たゆんたゆんの胸は、もはや凶器レベルだと思う今日この頃。
たゆんたゆんの胸は、もはや凶器レベルだと思う今日この頃。
『その時』というのは往々にして唐突に来るものです。
今日、いつものように帰宅したご主人様は、
私にアイテムを預けた後、一枚の基板をセットしました。
とても容量の小さい、分かりやすく言うと使用可能数1の基板です。
ヴァーラクロー?それともクバラの杖基板でしょうか。
改めてチェックしてみると、GRM純正。ツーヘッドラグナスでした。
ご主人様が言うには、今回期間限定で公開されている最新のVRミッションでは、
一部のSランク基板が割と容易に手に入るのだそうです。
しかし、今まで超高値で取り引きされていた貴重な基板がそんなに出てくるなんて、
GRMなのかガーディアンズなのか知りませんがどこに持っていたのでしょう。酷い隠しようです。
開発に協賛した、グラール最大規模のメディア・確定脳社の圧力と言う噂もあるのだそうですが…
まぁそんな事より、これは私にとっては初めてのSランク合成です。
Sランクと言えば、基板が余りにも貴重なのに成功率も完全ではなく、
辛い思いをして漸く入手し、一気に跳ね上がったモチベーションを、
失敗で一気にどん底まで叩き落とすジェットコースターとして知られています。
そのまま文字通り「帰らぬ人」となったガーディアンも少なくありません。
いつかは来るかと思っていた『その時』が…
とは言え、ご主人様は
「これに限ってはそこまで貴重な物でもなくなったから気張らなくて良いよ」と言ってくれました。
良かった…
と、そこへ二人のお客様がいらっしゃいました。
小柄なキャストの女性と、平均身長ぐらいのニューマンの女性です。
私も何度かお目にかかっている、ご主人様の仕事仲間の方達でした。
ご主人様は二人を出迎えると、三人で部屋の奥へ。
奥から聞こえてきた話し声によると、
ツーヘッドラグナスの材料のカティニウムが最安で78000メセタだとか。
今まであんまり価値の無かった高級素材が、この騒動で本格的に高騰しています。
どうやらお二人は、ご主人様に頼まれて余っていたカティニウムを持ってきてくれたようでした。
基板が貴重じゃなくなったら今度は素材が…いやいや、まだこの位の額なら…
ニューマンの女性は、交換レートにニュー・エボン×99だとかチコタイト×99だとか言っていました。
流石にそれは78000メセタを越えるんですけど…
勿論冗談だったらしく、結局、半分貸しでチコタイト×9との交換ということで落ち着いたようです。
キャストの女性は、今回のVRで比較的簡単に手に入るセプター複数と交換してくれました。
良い人です。
でも、今更セプターを何に使うのでしょうか。
餌としての需要が結構あるとは聞きましたが、あの方はPMは持っていたはずです。
転生が云々聞こえましたが…
あ、きっと+10まで磨いてキャストGTとして生まれ変わるのですね。
そうに違いない。うん。
今日、いつものように帰宅したご主人様は、
私にアイテムを預けた後、一枚の基板をセットしました。
とても容量の小さい、分かりやすく言うと使用可能数1の基板です。
ヴァーラクロー?それともクバラの杖基板でしょうか。
改めてチェックしてみると、GRM純正。ツーヘッドラグナスでした。
ご主人様が言うには、今回期間限定で公開されている最新のVRミッションでは、
一部のSランク基板が割と容易に手に入るのだそうです。
しかし、今まで超高値で取り引きされていた貴重な基板がそんなに出てくるなんて、
GRMなのかガーディアンズなのか知りませんがどこに持っていたのでしょう。酷い隠しようです。
開発に協賛した、グラール最大規模のメディア・確定脳社の圧力と言う噂もあるのだそうですが…
まぁそんな事より、これは私にとっては初めてのSランク合成です。
Sランクと言えば、基板が余りにも貴重なのに成功率も完全ではなく、
辛い思いをして漸く入手し、一気に跳ね上がったモチベーションを、
失敗で一気にどん底まで叩き落とすジェットコースターとして知られています。
そのまま文字通り「帰らぬ人」となったガーディアンも少なくありません。
いつかは来るかと思っていた『その時』が…
とは言え、ご主人様は
「これに限ってはそこまで貴重な物でもなくなったから気張らなくて良いよ」と言ってくれました。
良かった…
と、そこへ二人のお客様がいらっしゃいました。
小柄なキャストの女性と、平均身長ぐらいのニューマンの女性です。
私も何度かお目にかかっている、ご主人様の仕事仲間の方達でした。
ご主人様は二人を出迎えると、三人で部屋の奥へ。
奥から聞こえてきた話し声によると、
ツーヘッドラグナスの材料のカティニウムが最安で78000メセタだとか。
今まであんまり価値の無かった高級素材が、この騒動で本格的に高騰しています。
どうやらお二人は、ご主人様に頼まれて余っていたカティニウムを持ってきてくれたようでした。
基板が貴重じゃなくなったら今度は素材が…いやいや、まだこの位の額なら…
ニューマンの女性は、交換レートにニュー・エボン×99だとかチコタイト×99だとか言っていました。
流石にそれは78000メセタを越えるんですけど…
勿論冗談だったらしく、結局、半分貸しでチコタイト×9との交換ということで落ち着いたようです。
キャストの女性は、今回のVRで比較的簡単に手に入るセプター複数と交換してくれました。
良い人です。
でも、今更セプターを何に使うのでしょうか。
餌としての需要が結構あるとは聞きましたが、あの方はPMは持っていたはずです。
転生が云々聞こえましたが…
あ、きっと+10まで磨いてキャストGTとして生まれ変わるのですね。
そうに違いない。うん。
トレードを終えて暫く雑談した後、お二人は帰って行かれました。
そして、ご主人様は私にアイテムをくれました。
景気づけに食べて良いそうです。
あっ 美味しい
ナノポリマーでした。
美味しいですけど、武器合成前に防具素材というのも変な気が…
防具…そういえば私はGH441、普通なら防具合成をする可能性の高いPMですね。
特化ではない打撃型…しかも打撃89ですらないですね。
いやいや、何を今更でしたか。これでも打撃武器最難関のカリバーンも成功した身ですしね。
大丈夫大丈夫。
こうしていよいよ合成開始。S基板にカティニウムをその他諸々をセット。
「さて、気が散るだろうから少しミッションに行ってくるかな。
流石に24時間外出しているというのは無理だけど…」
ご主人様はそう言って軽く笑うと、出掛けていきました。
杖一式と愛用のアルテリックを持って。
そう、今のご主人様はフォルテクター。
それ以外の時もフォルテファイターかウォーテクターかプロトランザー。
そもそもツーヘッドラグナスを装備できるファイガンナーではありません。
だから、もし合成に失敗してもショックで引退とかは無いはずです。
ええ、無いはずです。
基板も素材も何とかどうにかなるし、失敗しても引退とかはないはず。
だから、私は落ち着いていつも通りの合成をすれば良いんです。
出来る限り成功、もし可能ならば高属性。
それで良いんです。
ふぅ…
…どんなに言い聞かせても手の震えが止まりません、誰か助けて…
そして、ご主人様は私にアイテムをくれました。
景気づけに食べて良いそうです。
あっ 美味しい
ナノポリマーでした。
美味しいですけど、武器合成前に防具素材というのも変な気が…
防具…そういえば私はGH441、普通なら防具合成をする可能性の高いPMですね。
特化ではない打撃型…しかも打撃89ですらないですね。
いやいや、何を今更でしたか。これでも打撃武器最難関のカリバーンも成功した身ですしね。
大丈夫大丈夫。
こうしていよいよ合成開始。S基板にカティニウムをその他諸々をセット。
「さて、気が散るだろうから少しミッションに行ってくるかな。
流石に24時間外出しているというのは無理だけど…」
ご主人様はそう言って軽く笑うと、出掛けていきました。
杖一式と愛用のアルテリックを持って。
そう、今のご主人様はフォルテクター。
それ以外の時もフォルテファイターかウォーテクターかプロトランザー。
そもそもツーヘッドラグナスを装備できるファイガンナーではありません。
だから、もし合成に失敗してもショックで引退とかは無いはずです。
ええ、無いはずです。
基板も素材も何とかどうにかなるし、失敗しても引退とかはないはず。
だから、私は落ち着いていつも通りの合成をすれば良いんです。
出来る限り成功、もし可能ならば高属性。
それで良いんです。
ふぅ…
…どんなに言い聞かせても手の震えが止まりません、誰か助けて…
さて、どうなるだろう…
ところで今日の緊急メンテ終了告知の一番下の部分…
ttp://phantasystaruniverse.jp/news/wis/?mode=view&id=341
こう言うの告知し忘れるなんてドジッ子過ぎてオワタって感じですが、
これで好き勝手どんなところにでもパシリが連れ込めますね。
パシリ連れ周回ようやく始まった…!
ところで今日の緊急メンテ終了告知の一番下の部分…
ttp://phantasystaruniverse.jp/news/wis/?mode=view&id=341
こう言うの告知し忘れるなんてドジッ子過ぎてオワタって感じですが、
これで好き勝手どんなところにでもパシリが連れ込めますね。
パシリ連れ周回ようやく始まった…!
「じゃじゃーん!420チャンネルー!
えーと、この放送はしちょーしゃから送られてきた質問に答えるラジオでーす!
もうがんがん答えちゃうよー!んじゃ最初のお便りからー」
『バルサミコ酢って何でしょう、気になって夜も眠れません!』
「バルサミコス・・・ばるさみこす・・・うん、バルサミコス強いよね! 私も結構苦戦したした!
ニューデイズの寺院で戦ったんだけど火吹いたりとかしたしね!
みんなもばるさみこすと戦う時は気をつけてね、毒とか吐くから! んじゃ次のお便り~」
『ちかごろにゃんぽこトラップとか言うのが流行ってるみたいですがうちの420が良く引っ掛かっておつかいから戻りません
どうすれば引っ掛からずに部屋に戻るようになるでしょうか』
「にゃんぽこトラップ・・・それは『シュク・リーム』なんかの甘いお菓子!
そしてぬくぬくホコホコのピラミッド『コタツ』! そしてコタツとセットで効果倍増の『ミカン』!
私たち420がそれが罠だと知りつつも引っ掛かってしまうのは、そう、言わば宿命のようなもの!
更に『アイスキャンディ』なんて加われば・・・うん、私でも引っ掛かるねこれは! さーて次のお便りは~」
『最近街で見かけたたゆんたゆんが気になって仕方がありまs』
「ビリビリ・・・はい次のお便り~」
『最近ご主人様がミッションに出かけっぱなしで部屋に帰ってきてもすぐ寝てしまって全然相手にしてくれません
どうすればご主人様の気を引けるでしょうか』
「うん、いい質問ね! そう言えばうちのマスターも最近ミッションに行ったりであんまり相手にしてくれないんだよねぇ・・・
あっと、質問の答えだったね、まずマスターの気を引くなら部屋に戻ってきた時に一緒にベッドにもぐりこんでぇ(ピー!)とか(ズキューン!)とか~」
(ピンポンパンポーン、少々お待ちください)
「むー、放送禁止用語ってなにさ全く・・・あっと、もう終わりの時間になっちゃった、それじゃ今週はこれでおしまい!
420チャンネルではみなさんの質問をお待ちしております! こちらのあて先にメールやお便りでドシドシ送ってください!
それじゃ、また来週をお楽しみにー!」
「(ん、なになにスタッフ~? え、ばるさみこすってお酢?
あちゃ~ちょっと間違った。 えっと、ついでに生放送だからカットも出来ない?
ん~まあ言っちゃったものは仕方ないし次から頑張ろー!)」
世にも愉快な420チャンネル・・・続く?
何故か思いついて書きなぐり、長編シナリオに行き詰まって血迷ったが後悔はしていない・・・
>>173
珍しく普通の合成に見せかけてかなりの精神的負担のかかる合成・・・w
成功率は低くないが損失を考えると確かにでかいよなぁ・・・w
ところで今回は合成中に服h(うわなにをするよんにいz
>>173
珍しく普通の合成に見せかけてかなりの精神的負担のかかる合成・・・w
成功率は低くないが損失を考えると確かにでかいよなぁ・・・w
ところで今回は合成中に服h(うわなにをするよんにいz
>>174
読んでいたら、ニヤニヤ笑いが止まらなくなりました。
>バルサミコス・・・ばるさみこす・・・うん、バルサミコス強いよね! 私も結構苦戦したした!
>ニューデイズの寺院で戦ったんだけど火吹いたりとかしたしね!
>みんなもばるさみこすと戦う時は気をつけてね、毒とか吐くから!
そんなお酢見たことねー!だ、だが何か強そうだw
(ちょっと笑いすぎた、息を整えないと本題に入れんじゃまいか)
さて、パパと412とヒュマ姉さん+440の過去編が完成しました!
パパとヒュマ姉さんが実名で登場です!ドウシテモホカノヨビナガオモイツカナカッタノヨ…
両方とも俺の持ちキャラだから、被害受けるのは俺だけ!って、いいのか俺!!
さて、いざ投下しようと思いましたが、ここで問題発生です!
原稿チェック終わって確認した所、合計約98.3Kあります!
平均10Kメモ帳10枚分、どうやって投下しましょうか…本気で困ってます。
とりあえず、前もって借用ネタを報告します。
いつもながら偉大なる小ビス子氏、若ネーヴ(アレは良作だぜ)作者さま、近作では420姉妹などなど、
その他過去スレから多数を(もしかしたら気づかないうちに)お借りしております。
もちろん、俺の身内(個人的付き合いの電源不要の仲間どもですが)にしか分からないオリジナルネタも使っておりますが、
気にせずご拝読下さいませ。
読んでいたら、ニヤニヤ笑いが止まらなくなりました。
>バルサミコス・・・ばるさみこす・・・うん、バルサミコス強いよね! 私も結構苦戦したした!
>ニューデイズの寺院で戦ったんだけど火吹いたりとかしたしね!
>みんなもばるさみこすと戦う時は気をつけてね、毒とか吐くから!
そんなお酢見たことねー!だ、だが何か強そうだw
(ちょっと笑いすぎた、息を整えないと本題に入れんじゃまいか)
さて、パパと412とヒュマ姉さん+440の過去編が完成しました!
パパとヒュマ姉さんが実名で登場です!ドウシテモホカノヨビナガオモイツカナカッタノヨ…
両方とも俺の持ちキャラだから、被害受けるのは俺だけ!って、いいのか俺!!
さて、いざ投下しようと思いましたが、ここで問題発生です!
原稿チェック終わって確認した所、合計約98.3Kあります!
平均10Kメモ帳10枚分、どうやって投下しましょうか…本気で困ってます。
とりあえず、前もって借用ネタを報告します。
いつもながら偉大なる小ビス子氏、若ネーヴ(アレは良作だぜ)作者さま、近作では420姉妹などなど、
その他過去スレから多数を(もしかしたら気づかないうちに)お借りしております。
もちろん、俺の身内(個人的付き合いの電源不要の仲間どもですが)にしか分からないオリジナルネタも使っておりますが、
気にせずご拝読下さいませ。
(>>174の420は絶対裏パシ通が愛読書だ、そうだ、そうに違いない…ブツブツ、え、あ、もういいの?始まってる?)
…失礼しました、パパと412作者です。
大容量ですが、きりのいい所で細切れにして投下することに決定しました。
どうなるかはやってみないとわかりませんが、お付き合い下さいませ。
『暁の中で』投下を開始します。
…失礼しました、パパと412作者です。
大容量ですが、きりのいい所で細切れにして投下することに決定しました。
どうなるかはやってみないとわかりませんが、お付き合い下さいませ。
『暁の中で』投下を開始します。
山と詰まれた死体、死体、死体…
敵と味方から滲み出した、おびただしい量の血と油
破壊されつくした町並みや自然
まとわりつく敵、敵、敵…
致命傷を何度も喰らい、全身自分の血でまみれている
しかし自分は立っている
残っていたのは自分一人
気のいい仲間達は、山の中に埋もれている
なぜ、俺は生きている
なぜ、俺は死なない
そうだ、これは夢だ
ずいぶん昔の夢だ、夢なんだ…
…パ………パp…
誰かの声がする
…パパ……
俺には子供なんていない
お前は誰だ?
…起きて、パパ。悲しい夢から醒めて、起きて…
声はいつしかパートナーマシナリーの姿を取り、近づいてくる
…あたしはずっと一緒だよ
…黄昏は暁に変わったんだから
…明けない夜は無いんだから
起きて、パパ…
敵と味方から滲み出した、おびただしい量の血と油
破壊されつくした町並みや自然
まとわりつく敵、敵、敵…
致命傷を何度も喰らい、全身自分の血でまみれている
しかし自分は立っている
残っていたのは自分一人
気のいい仲間達は、山の中に埋もれている
なぜ、俺は生きている
なぜ、俺は死なない
そうだ、これは夢だ
ずいぶん昔の夢だ、夢なんだ…
…パ………パp…
誰かの声がする
…パパ……
俺には子供なんていない
お前は誰だ?
…起きて、パパ。悲しい夢から醒めて、起きて…
声はいつしかパートナーマシナリーの姿を取り、近づいてくる
…あたしはずっと一緒だよ
…黄昏は暁に変わったんだから
…明けない夜は無いんだから
起きて、パパ…
pipi、pipi、pipi、……
“おはようございます。2月9日、コロニー標準時0900です”
「パp…じゃ無かったご主人様~、時間ですよ~」
PMの声がビジフォンの目覚し機能の音と重なる。
ゆさゆさ、ゆさゆさ
久々にひどい夢を見た。
戦場でただひたすら戦い続けていた、あの頃の夢だ。
この夢を見た後は決まってクタクタだ。
寝ていても気力と体力をごっそり持っていかれるので寝た気がしないし、気が付けば全身冷や汗をかいている。
起きる気配が無い俺を起こそうと、PMが小さな手で揺り動かしながら、言うなと散々注意した呼称で呼び起
こす。
「パパ~、起きて下さい。そろそろ本部に向かわないと、ちこくですよぅ」
俺の体を揺り動かすPM-412が、心配げな声をあげる。
ため息のような大あくびをし、腕を伸ばしてベッドの脇で俺を揺らし続けるちっこいPMの頭をぐりぐりと撫
でてやる。
「目は醒めている。だから揺らすのはやめろ、ロザリオ」
「わぷっ、あぅ、ぐりぐりするのやめて、痛いです~」
時折、ちょっとねじの抜けたようなしゃべり方をするのがこいつの癖だ。
「それから『パパ』は止めろと何度も言った筈だ。約束だろう?」
「そんなこと言ってもパパはパパですよぅ」
そう言って頬を膨らませる彼女の頭を撫でるのをやめ、軽くぽんぽんと叩くとベッドから身体を起こしてドレッ
シングルームへと向かう。
冷や汗と共に、夢で感じた不快感を洗い流したかった。
備え付けのシャワーを浴びて身支度を整えていると、かすかに頭痛を感じる。
これは、『あいつ』が起きたときの合図だ。
“おはようございます。2月9日、コロニー標準時0900です”
「パp…じゃ無かったご主人様~、時間ですよ~」
PMの声がビジフォンの目覚し機能の音と重なる。
ゆさゆさ、ゆさゆさ
久々にひどい夢を見た。
戦場でただひたすら戦い続けていた、あの頃の夢だ。
この夢を見た後は決まってクタクタだ。
寝ていても気力と体力をごっそり持っていかれるので寝た気がしないし、気が付けば全身冷や汗をかいている。
起きる気配が無い俺を起こそうと、PMが小さな手で揺り動かしながら、言うなと散々注意した呼称で呼び起
こす。
「パパ~、起きて下さい。そろそろ本部に向かわないと、ちこくですよぅ」
俺の体を揺り動かすPM-412が、心配げな声をあげる。
ため息のような大あくびをし、腕を伸ばしてベッドの脇で俺を揺らし続けるちっこいPMの頭をぐりぐりと撫
でてやる。
「目は醒めている。だから揺らすのはやめろ、ロザリオ」
「わぷっ、あぅ、ぐりぐりするのやめて、痛いです~」
時折、ちょっとねじの抜けたようなしゃべり方をするのがこいつの癖だ。
「それから『パパ』は止めろと何度も言った筈だ。約束だろう?」
「そんなこと言ってもパパはパパですよぅ」
そう言って頬を膨らませる彼女の頭を撫でるのをやめ、軽くぽんぽんと叩くとベッドから身体を起こしてドレッ
シングルームへと向かう。
冷や汗と共に、夢で感じた不快感を洗い流したかった。
備え付けのシャワーを浴びて身支度を整えていると、かすかに頭痛を感じる。
これは、『あいつ』が起きたときの合図だ。
pipi、pipi、pipi、……
“おはようございます。2月8日、コロニー標準時0901です”
「おはようゴザイマス、ご主人様。体温、血圧、共に良好でス」
あたしのPM――いまだGH-101――の声がビジフォンの目覚し機能の音と重なった。
金木犀に似せた覚醒作用のある香料が鼻腔をくすぐる。
あたしのお気に入りの香りだったりする。
「おはよう、『お留守番』」
「おはようゴザイマス。
そろそろ目覚まし用の香料が切れますので、補充してくださイ」
しょうがない、また体当たりで起こされたんじゃ、身が持たない。
「はいはい。じゃ、ちょっとこっちに来て」
お留守番と名づけたこの子がろくに進化していないのは、あたしの服道楽の所為なのよね。
文字通り手も足も無いこの子は最初の頃、起きないあたしに体当たりという豪快な手段でモーニングコールを
してくれたもんだから、しょっちゅう痣やたんこぶができるという外聞的にはずかしい事になっちゃって。
まだ耳を引っ張られるほうがましな気がする…
もう痛い目は見たくなかったので、当たり障りの無いオプションの目覚まし装置(芳香剤式)を導入したけど、
それでも時々体当たりで起こしてくれたりするし(「いくら起こしても起きないご主人様がいけないんデス」:101談)。
早い内に進化させよう…。
唐突に、意識に触れてくる感触。
言葉には表せないが意識通信特有の感覚が伝わってきた。
私達『黄昏の一族』―――ヒューマンの歴史が終わると思われていた500年戦争初期にヒューマンの切り札
として作られた、ニューマンやビーストとは違う遺伝子改造と旧時代のナノマシン投与によって戦闘能力を人工
的に強化された改良種族…『戦闘ヒューマン種』とでも言おうか、既に数えるほどしかいないその末裔たち――
―に埋め込まれたナノマシンネットワークによる意識通信機構、俗に『テレパス』と呼ばれる通信手段だ。
(起きたか、リズ。今日の予定は?)
今日は向こうが起きるほうが早かったようね。
(おはよ、ルドルフおじ様。メール見てから決めるわ)
ベッドから起きると、パジャマを脱ぎながらドレッシングルームへ向かう。
起き抜けのシャワーを浴びて身体を完全に目を覚まさせるのが日課になりつつあった。
(暫く本部からのミッションで部屋を空ける。何かあったら連絡してくれ)
あらら、返答をする前にリンクが途絶えちゃった。
あたしの日課を知っているので、必ず意識を切り離すのよね。
「おじ様も妙な所で律儀なのよねぇ」
そうつぶやいて、あたしはクスクス笑った。
もっとも、20秒以上繋いでいるとひどい頭痛と吐き気に苛まされるんだけどね。
その効果たるや、極度の宿酔いに匹敵するのだ。
ああ、思い出したくも無い。
“おはようございます。2月8日、コロニー標準時0901です”
「おはようゴザイマス、ご主人様。体温、血圧、共に良好でス」
あたしのPM――いまだGH-101――の声がビジフォンの目覚し機能の音と重なった。
金木犀に似せた覚醒作用のある香料が鼻腔をくすぐる。
あたしのお気に入りの香りだったりする。
「おはよう、『お留守番』」
「おはようゴザイマス。
そろそろ目覚まし用の香料が切れますので、補充してくださイ」
しょうがない、また体当たりで起こされたんじゃ、身が持たない。
「はいはい。じゃ、ちょっとこっちに来て」
お留守番と名づけたこの子がろくに進化していないのは、あたしの服道楽の所為なのよね。
文字通り手も足も無いこの子は最初の頃、起きないあたしに体当たりという豪快な手段でモーニングコールを
してくれたもんだから、しょっちゅう痣やたんこぶができるという外聞的にはずかしい事になっちゃって。
まだ耳を引っ張られるほうがましな気がする…
もう痛い目は見たくなかったので、当たり障りの無いオプションの目覚まし装置(芳香剤式)を導入したけど、
それでも時々体当たりで起こしてくれたりするし(「いくら起こしても起きないご主人様がいけないんデス」:101談)。
早い内に進化させよう…。
唐突に、意識に触れてくる感触。
言葉には表せないが意識通信特有の感覚が伝わってきた。
私達『黄昏の一族』―――ヒューマンの歴史が終わると思われていた500年戦争初期にヒューマンの切り札
として作られた、ニューマンやビーストとは違う遺伝子改造と旧時代のナノマシン投与によって戦闘能力を人工
的に強化された改良種族…『戦闘ヒューマン種』とでも言おうか、既に数えるほどしかいないその末裔たち――
―に埋め込まれたナノマシンネットワークによる意識通信機構、俗に『テレパス』と呼ばれる通信手段だ。
(起きたか、リズ。今日の予定は?)
今日は向こうが起きるほうが早かったようね。
(おはよ、ルドルフおじ様。メール見てから決めるわ)
ベッドから起きると、パジャマを脱ぎながらドレッシングルームへ向かう。
起き抜けのシャワーを浴びて身体を完全に目を覚まさせるのが日課になりつつあった。
(暫く本部からのミッションで部屋を空ける。何かあったら連絡してくれ)
あらら、返答をする前にリンクが途絶えちゃった。
あたしの日課を知っているので、必ず意識を切り離すのよね。
「おじ様も妙な所で律儀なのよねぇ」
そうつぶやいて、あたしはクスクス笑った。
もっとも、20秒以上繋いでいるとひどい頭痛と吐き気に苛まされるんだけどね。
その効果たるや、極度の宿酔いに匹敵するのだ。
ああ、思い出したくも無い。
「…パ?……パパ?メールが来てるよ」
意識を引き戻すと、ロザリオが服の裾を引っ張っていた。
表情に翳りが見て取れる。
困惑と、恐怖。
それを打ち消してやるように微かに微笑んで、頭を撫でてやる。
それでやっと落ち着いたのか、いつもの表情に戻った。
「またお姉ちゃんとお話?」
「…ああ、そうだ」
「お話する時はちゃんとお部屋でしてね、って前にも言ったよ?急に静かになると心配なんだから」
俺を見上げながら人差し指を立て、しかめっ面を浮かべるとその手を振る。
「分かった分かった、そう怒るな」
「ほんとうですか?前も言いましたよ?」
「分かったって。次から気をつける」
「…約束ですよ?じゃ、おせんたくしますね~」
着替え終わった俺のパジャマなどを拾い上げるとテキパキと全自動洗濯機へ放り込み、風呂場を掃除する彼女。
その動作はよどみない。
俺は溜息をついた。
言動はまるで子供だが、その行動はPMそのもの。
俺が『教育』した分を差し引いても、そのギャップにはなかなか慣れる事が出来ないでいた。
成長すればいずれはそのギャップも埋まるだろうが、すぐにという訳ではない。
(まぁ、確かに見方を変えればこいつは欠陥品だな。
しかし、こいつを『育てろ』というのは…。
俺にとっては渡りに船だが、GRMもガーディアンズ諜報部も本当に何を考えている?)
風呂場からお湯を流す音と歌声が聞こえてくる。
「は~い、はは~い、ははは~い♪
いつも元気な410ぅ~♪
おこた大好き420ぅ~♪
ちょうちょ追っかけ430ぅ~♪
すぐに迷子の440~♪
ちょっとおませな450~♪
ごっ主人さま~は大好きだけど、
今日はこっそり抜け出してぇ、
みんなでいっしょにあっそびましょ~♪
パシリといっしょ、
パシリといっしょ、
パシリといっしょに
あ・そ・び・ま・しょ~!♪…」
「パシリといっしょ」とかいう子供番組のテーマソングを大声で歌いながら掃除している小さなPMの背中を
見ていると、心中複雑な思いだった。
(こいつが本当に『狂犬』達と同じワンオブサウザンドなのか?)
ふと、『あの時』の事が脳裏をよぎった。
意識を引き戻すと、ロザリオが服の裾を引っ張っていた。
表情に翳りが見て取れる。
困惑と、恐怖。
それを打ち消してやるように微かに微笑んで、頭を撫でてやる。
それでやっと落ち着いたのか、いつもの表情に戻った。
「またお姉ちゃんとお話?」
「…ああ、そうだ」
「お話する時はちゃんとお部屋でしてね、って前にも言ったよ?急に静かになると心配なんだから」
俺を見上げながら人差し指を立て、しかめっ面を浮かべるとその手を振る。
「分かった分かった、そう怒るな」
「ほんとうですか?前も言いましたよ?」
「分かったって。次から気をつける」
「…約束ですよ?じゃ、おせんたくしますね~」
着替え終わった俺のパジャマなどを拾い上げるとテキパキと全自動洗濯機へ放り込み、風呂場を掃除する彼女。
その動作はよどみない。
俺は溜息をついた。
言動はまるで子供だが、その行動はPMそのもの。
俺が『教育』した分を差し引いても、そのギャップにはなかなか慣れる事が出来ないでいた。
成長すればいずれはそのギャップも埋まるだろうが、すぐにという訳ではない。
(まぁ、確かに見方を変えればこいつは欠陥品だな。
しかし、こいつを『育てろ』というのは…。
俺にとっては渡りに船だが、GRMもガーディアンズ諜報部も本当に何を考えている?)
風呂場からお湯を流す音と歌声が聞こえてくる。
「は~い、はは~い、ははは~い♪
いつも元気な410ぅ~♪
おこた大好き420ぅ~♪
ちょうちょ追っかけ430ぅ~♪
すぐに迷子の440~♪
ちょっとおませな450~♪
ごっ主人さま~は大好きだけど、
今日はこっそり抜け出してぇ、
みんなでいっしょにあっそびましょ~♪
パシリといっしょ、
パシリといっしょ、
パシリといっしょに
あ・そ・び・ま・しょ~!♪…」
「パシリといっしょ」とかいう子供番組のテーマソングを大声で歌いながら掃除している小さなPMの背中を
見ていると、心中複雑な思いだった。
(こいつが本当に『狂犬』達と同じワンオブサウザンドなのか?)
ふと、『あの時』の事が脳裏をよぎった。
プロローグの投下完了!
一度に上げられる回数を考えるとこんなものでしょう。
ある程度の時間を見ながら、順次UPしていきますのでご了承のほどを。
一度に上げられる回数を考えるとこんなものでしょう。
ある程度の時間を見ながら、順次UPしていきますのでご了承のほどを。
さて、大して時間も空いてませんが『暁の中で』2回目の投下です。
GRM情報部部長に直々に呼び出されるのは久しぶりだった。
以前呼び出された時の部長はとっくに引退し、3度は入れ替わっているはずだ。
確か、今の部長は年若い女性のニューマンだと聞いていた。
部屋にすぐさま通され、挨拶もそこそこに任務を告げられて困惑した。
「……PMの回収、ですか?」
普段ならまずやらないが、この時は珍しく聞き返していた。
標準的な身長の女性ニューマンの情報部部長―――俺よりは“かなり”若い―――は器用に片側の眉を上げ、
驚きを表した。
そして、何事も無かったかのように話を続ける。
「そうだ。
例の課金騒ぎで辞表を出した同盟軍出身者のガーディアンズ、彼らに支給されたPMを全機回収する」
俺を興味深げに見上げながら、なにが可笑しいのかクスクス笑う。
「名目上は本社からなんだが、実の所は同盟軍からの要請でね、機密情報の漏洩を危惧してとの事だ。
まあ、近いうちに未使用区画となった彼らの居住区画を処分するという話が持ち上がっているからな、情報漏
えいの有無を確認したいんだろう。
ガーディアンズのほうは了承済みだ。
この所、我々の後ろ暗い話も数多く挙がるようになったが、断って世間に対する心象を悪くする必要も無いと
いうのが向こうの本音だろう」
彼女は席から立ち上がり、俺の傍まで来るとしげしげと観察し始めた。
どうみても色めいたものはなく、研究者としての眼差しだった。
「私としてはどうでもいいのだが、これも仕事だ。こなさねばならん」
俺の腕を取りながら、話が続いた。
「それよりも、私は君の事を研究してみたいね。
都市伝説とも言われた『黄昏の一族』がこうして実在しているのだから。
その中でもイレギュラーと呼ばれた『ワンオブサウザンド』の一人、“生還者”“不死者”とも呼ばれた男。
コードネーム『インフィニット』…」
瞬間、俺の腕をつかんでいた彼女の手が俺の腕から弾き飛ばされ、バランスを崩してたたらを踏んだ。
別段、俺が意識的に倒そうとした訳ではない。
単に怒声を堪える為に「掌を握りこんだ」だけであり、その時の筋肉の反動で彼女の腕がはじかれたに過ぎない。
彼女は、後ろにあったソファーにひざ裏を引っ掛けた。
白衣にタイトスカートのスーツと長めの薄い手袋、ハイヒールという非活動的な格好ゆえ、バランスを崩した
まま後ろ向きに倒れかける。
以前呼び出された時の部長はとっくに引退し、3度は入れ替わっているはずだ。
確か、今の部長は年若い女性のニューマンだと聞いていた。
部屋にすぐさま通され、挨拶もそこそこに任務を告げられて困惑した。
「……PMの回収、ですか?」
普段ならまずやらないが、この時は珍しく聞き返していた。
標準的な身長の女性ニューマンの情報部部長―――俺よりは“かなり”若い―――は器用に片側の眉を上げ、
驚きを表した。
そして、何事も無かったかのように話を続ける。
「そうだ。
例の課金騒ぎで辞表を出した同盟軍出身者のガーディアンズ、彼らに支給されたPMを全機回収する」
俺を興味深げに見上げながら、なにが可笑しいのかクスクス笑う。
「名目上は本社からなんだが、実の所は同盟軍からの要請でね、機密情報の漏洩を危惧してとの事だ。
まあ、近いうちに未使用区画となった彼らの居住区画を処分するという話が持ち上がっているからな、情報漏
えいの有無を確認したいんだろう。
ガーディアンズのほうは了承済みだ。
この所、我々の後ろ暗い話も数多く挙がるようになったが、断って世間に対する心象を悪くする必要も無いと
いうのが向こうの本音だろう」
彼女は席から立ち上がり、俺の傍まで来るとしげしげと観察し始めた。
どうみても色めいたものはなく、研究者としての眼差しだった。
「私としてはどうでもいいのだが、これも仕事だ。こなさねばならん」
俺の腕を取りながら、話が続いた。
「それよりも、私は君の事を研究してみたいね。
都市伝説とも言われた『黄昏の一族』がこうして実在しているのだから。
その中でもイレギュラーと呼ばれた『ワンオブサウザンド』の一人、“生還者”“不死者”とも呼ばれた男。
コードネーム『インフィニット』…」
瞬間、俺の腕をつかんでいた彼女の手が俺の腕から弾き飛ばされ、バランスを崩してたたらを踏んだ。
別段、俺が意識的に倒そうとした訳ではない。
単に怒声を堪える為に「掌を握りこんだ」だけであり、その時の筋肉の反動で彼女の腕がはじかれたに過ぎない。
彼女は、後ろにあったソファーにひざ裏を引っ掛けた。
白衣にタイトスカートのスーツと長めの薄い手袋、ハイヒールという非活動的な格好ゆえ、バランスを崩した
まま後ろ向きに倒れかける。
反射的に伸ばした彼女の腕を俺が捕まえ、そのまま強引に引き上げた。
「…引継ぎの時に聞かなかったのか?俺をその銘で呼ぶな、と」
背筋が凍りそうな、抑揚の無い俺の言葉に彼女は息を呑む。
殺気というよりは濃密で冷たい怒気に、空間が凍りついたような錯覚が起きる。
そのまま更に引き上げ、腕で宙刷り状態にする。
悲鳴を上げるまもなく、苦痛のうめきが口から漏れた。
「や、止めて…もう…言わ……ない」
その言葉を聞き、ゆっくりと彼女をソファーに下ろす。
すると、腕全体を抱えて上半身を屈めた。
「…詳細は……机の上のメモリスティックに…入っている。…それを見てくれ」
俺はうつむいたままの彼女にかまわずメモリスティックを手に取り、部屋を退出しようとした。
が、背中に視線を感じ、振り返る。
視線の主である彼女の顔には苦痛に加え、恐怖、憎悪、嫌悪といった負の感情が入り混じっていた。
「ばけものめ…」
その呟きはやけにはっきりと耳に届いた。
俺はその言葉に対して何も言わなかったし、反応を示すような表情を取った覚えはなった。
扉が閉ざされる瞬間に見えた彼女の表情には驚愕と後悔が浮かび、何かを言おうとして唇が動いていたが、す
でに閉まった扉に遮られた。
「久々にやっちまたか…」
俺はGRM内にある社員食堂でホットショコラの入ったカップを手に、深々と溜息をついた。
どうにも、過去に触れられると激高してしまう。
フフ、と自虐的な笑いを浮かべ、片手で顔を隠すようにして俯いた。
―――皮肉なもんだな。500年以上も経つのに、俺は未だに『ワンオブサウザンド』の呪縛から逃れられない
らしい―――
先ほど持ってきたメモリの内容を思い返すと、更にその顔の翳りが増した。
『元同盟軍のガーディアンズに奉仕していたPMを回収、並びにGH-410、識別番号GST685-F9を鹵獲せよ。
同個体は異能体――ワンオブサウザンドと予想される。
いかなる手段を講じてでも確実に遂行せよ』
ホットショコラを一気にあおり、薄いプラカップを握りつぶす。
「…くそったれが」
甘ったるいはずのホットショコラは、苦味しか感じなかった。
「…引継ぎの時に聞かなかったのか?俺をその銘で呼ぶな、と」
背筋が凍りそうな、抑揚の無い俺の言葉に彼女は息を呑む。
殺気というよりは濃密で冷たい怒気に、空間が凍りついたような錯覚が起きる。
そのまま更に引き上げ、腕で宙刷り状態にする。
悲鳴を上げるまもなく、苦痛のうめきが口から漏れた。
「や、止めて…もう…言わ……ない」
その言葉を聞き、ゆっくりと彼女をソファーに下ろす。
すると、腕全体を抱えて上半身を屈めた。
「…詳細は……机の上のメモリスティックに…入っている。…それを見てくれ」
俺はうつむいたままの彼女にかまわずメモリスティックを手に取り、部屋を退出しようとした。
が、背中に視線を感じ、振り返る。
視線の主である彼女の顔には苦痛に加え、恐怖、憎悪、嫌悪といった負の感情が入り混じっていた。
「ばけものめ…」
その呟きはやけにはっきりと耳に届いた。
俺はその言葉に対して何も言わなかったし、反応を示すような表情を取った覚えはなった。
扉が閉ざされる瞬間に見えた彼女の表情には驚愕と後悔が浮かび、何かを言おうとして唇が動いていたが、す
でに閉まった扉に遮られた。
「久々にやっちまたか…」
俺はGRM内にある社員食堂でホットショコラの入ったカップを手に、深々と溜息をついた。
どうにも、過去に触れられると激高してしまう。
フフ、と自虐的な笑いを浮かべ、片手で顔を隠すようにして俯いた。
―――皮肉なもんだな。500年以上も経つのに、俺は未だに『ワンオブサウザンド』の呪縛から逃れられない
らしい―――
先ほど持ってきたメモリの内容を思い返すと、更にその顔の翳りが増した。
『元同盟軍のガーディアンズに奉仕していたPMを回収、並びにGH-410、識別番号GST685-F9を鹵獲せよ。
同個体は異能体――ワンオブサウザンドと予想される。
いかなる手段を講じてでも確実に遂行せよ』
ホットショコラを一気にあおり、薄いプラカップを握りつぶす。
「…くそったれが」
甘ったるいはずのホットショコラは、苦味しか感じなかった。
今の俺は『黄昏の一族』以外に3つの肩書きを持っている。
表の顔としてのガーディアンズ機動警備部隊員。
裏の顔としてのガーディアンズ諜報部特殊諜報班潜入捜査官。
そして、GRM情報部ガーディアンズ専任特別諜報官。
どんな理由かは定かじゃないが、裏じゃ水と油の組織から肩書きをもらって生きているなんて奇跡に近い。
大分好き勝手をやっては来たが、今の所はどちらからも処罰や処断を食らったことは無い。
今でこそこんな肩書きを持つ俺だが、それまでは過去を知られないようにひっそりと暮らしていた。
とはいえ、生来の能力ゆえか、つける職業は血なまぐさいものがほとんどだったが。
十年近く前、ある筋から中期契約の仕事を請けることが決まった。
なんでも、GRM研究施設の警備主任だという。
近々大きな研究が始まるのでその為の警備の強化が必要になったとか言っていたが、後になって部下から話を
聞くと、警備主任が内部鎮圧作戦で死亡したという事だった。
記録によれば、『異能力サンプル躯体の暴走による事故死』となっている。
死亡原因は、PM初の異能体……通称『ワンオブサウザンド』による人間への攻撃だった。
表の顔としてのガーディアンズ機動警備部隊員。
裏の顔としてのガーディアンズ諜報部特殊諜報班潜入捜査官。
そして、GRM情報部ガーディアンズ専任特別諜報官。
どんな理由かは定かじゃないが、裏じゃ水と油の組織から肩書きをもらって生きているなんて奇跡に近い。
大分好き勝手をやっては来たが、今の所はどちらからも処罰や処断を食らったことは無い。
今でこそこんな肩書きを持つ俺だが、それまでは過去を知られないようにひっそりと暮らしていた。
とはいえ、生来の能力ゆえか、つける職業は血なまぐさいものがほとんどだったが。
十年近く前、ある筋から中期契約の仕事を請けることが決まった。
なんでも、GRM研究施設の警備主任だという。
近々大きな研究が始まるのでその為の警備の強化が必要になったとか言っていたが、後になって部下から話を
聞くと、警備主任が内部鎮圧作戦で死亡したという事だった。
記録によれば、『異能力サンプル躯体の暴走による事故死』となっている。
死亡原因は、PM初の異能体……通称『ワンオブサウザンド』による人間への攻撃だった。
俺が実際にPMを初めて見た時は、GRM研究施設の警備主任として着任した日だった。
そもそもはPMの研究棟内で研究主任を警備する羽目になったからだが、どうやら研究主任は俺とPMを出会
わせて反応を見たかったらしい。
研究者の『好奇心』というやつは今も昔も変わってない。そして、俺の記憶の中にある研究者の『好奇心』に
は不快な思い出しか無い。
研究主任の思惑など知らず、研究棟内を歩き回るPMに俺は出くわした。
最初は、何で子供がうろついているのかと不思議に思って問いただしたが、初期の彼女たちは嫌悪の表情を取
り繕う事もなく、なんともそっけない態度で「稼動試験中です」という言葉だけを繰り返していた。
「なんです、今の『物体』は?」
人ではないと直感的に理解できたので研究主任に問いただすと、
「あれが私達の作っている『娘たち』だよ」
ただの事実であることだけが強調された、感情のこもっていない答えが返ってきた。
「知性に関してはキャストの規格以下のスペックを持つ、小型キャストとでも言えばいいのか…。
初期状態からアイテムを投与することで成長し、最終形態としてあの幼女の姿をとる生活支援機械。
パートナーマシナリーといえば、聞いたことくらいはあるだろう?」
「はい。何でも感情を持っているという話でしたが…確か、一時期人権問題で騒がれましたね。
現物を見たのは初めてですが」
俺のその言葉に、初めて研究主任に表情が浮かんだ。
目を細め、何かを噛みしめるように。
苦虫を噛み潰す、まさにその表情だった。
「ああ、そうだ。
『彼女達』は知性体としての基準である『得られた情報を元にして、次の新たなモノを創造する能力』を持ち
得ないからな。どう足掻こうが、人権を得ることは不可能だよ。特に、差別意識の強いキャスト達から見れば、
感情を持った出来損ないでしかないからな。
最後まで感情を持たせることに反対した『彼女たち』の生みの母であった私の元上司は、大分前に心労でここ
を辞めたよ。
あの騒ぎは、あの人の命日だった…」
そもそもはPMの研究棟内で研究主任を警備する羽目になったからだが、どうやら研究主任は俺とPMを出会
わせて反応を見たかったらしい。
研究者の『好奇心』というやつは今も昔も変わってない。そして、俺の記憶の中にある研究者の『好奇心』に
は不快な思い出しか無い。
研究主任の思惑など知らず、研究棟内を歩き回るPMに俺は出くわした。
最初は、何で子供がうろついているのかと不思議に思って問いただしたが、初期の彼女たちは嫌悪の表情を取
り繕う事もなく、なんともそっけない態度で「稼動試験中です」という言葉だけを繰り返していた。
「なんです、今の『物体』は?」
人ではないと直感的に理解できたので研究主任に問いただすと、
「あれが私達の作っている『娘たち』だよ」
ただの事実であることだけが強調された、感情のこもっていない答えが返ってきた。
「知性に関してはキャストの規格以下のスペックを持つ、小型キャストとでも言えばいいのか…。
初期状態からアイテムを投与することで成長し、最終形態としてあの幼女の姿をとる生活支援機械。
パートナーマシナリーといえば、聞いたことくらいはあるだろう?」
「はい。何でも感情を持っているという話でしたが…確か、一時期人権問題で騒がれましたね。
現物を見たのは初めてですが」
俺のその言葉に、初めて研究主任に表情が浮かんだ。
目を細め、何かを噛みしめるように。
苦虫を噛み潰す、まさにその表情だった。
「ああ、そうだ。
『彼女達』は知性体としての基準である『得られた情報を元にして、次の新たなモノを創造する能力』を持ち
得ないからな。どう足掻こうが、人権を得ることは不可能だよ。特に、差別意識の強いキャスト達から見れば、
感情を持った出来損ないでしかないからな。
最後まで感情を持たせることに反対した『彼女たち』の生みの母であった私の元上司は、大分前に心労でここ
を辞めたよ。
あの騒ぎは、あの人の命日だった…」
そんなある日、本社の幹部がここを訪れた。
無論、俺には警護任務が廻ってきた。上に立つ人間の警護には、責任者の出番というわけだ。
棟内の視察と研究成果を確認しながら、広い研究棟のあちこちを廻る。
先導する俺などいないかのように向こうはお構いなく動き、俺もお偉いさんの気を惹かない様に警護を続けた。
お陰で、色々な話が耳に入ってきた。
「…という事なら、2体目はまだ確認はされていない、そういうことだね?」
「はい。未だにどういう条件で目覚めるのかも、どのような能力を発現するのかも全てにおいて不明です」
「が、それらの能力を意図的に再現できなければ、研究の意味は無いぞ。
ガーディアンズも、あの存在に気づいている」
「企業にとって有益であるものは何でも使う…企業の理念は我々も理解しています。
ですが、感情プログラムを持たせたがゆえに発生する、数万体に一体の確率で現れる奇跡的『欠陥』能力を持
ったPMを見分けるのは現状では不可能です。
あまりに範例がありません、今しばらく時間がかかります」
「ワンオブサウザンド――ふん、我が社の命運を分ける存在が、たかがパシリとは皮肉だな」
―――ワンオブサウザンド―――
かつて己を示し、呪縛した言葉。
その日の俺はそれ以後の記憶が曖昧だった。
無論、俺には警護任務が廻ってきた。上に立つ人間の警護には、責任者の出番というわけだ。
棟内の視察と研究成果を確認しながら、広い研究棟のあちこちを廻る。
先導する俺などいないかのように向こうはお構いなく動き、俺もお偉いさんの気を惹かない様に警護を続けた。
お陰で、色々な話が耳に入ってきた。
「…という事なら、2体目はまだ確認はされていない、そういうことだね?」
「はい。未だにどういう条件で目覚めるのかも、どのような能力を発現するのかも全てにおいて不明です」
「が、それらの能力を意図的に再現できなければ、研究の意味は無いぞ。
ガーディアンズも、あの存在に気づいている」
「企業にとって有益であるものは何でも使う…企業の理念は我々も理解しています。
ですが、感情プログラムを持たせたがゆえに発生する、数万体に一体の確率で現れる奇跡的『欠陥』能力を持
ったPMを見分けるのは現状では不可能です。
あまりに範例がありません、今しばらく時間がかかります」
「ワンオブサウザンド――ふん、我が社の命運を分ける存在が、たかがパシリとは皮肉だな」
―――ワンオブサウザンド―――
かつて己を示し、呪縛した言葉。
その日の俺はそれ以後の記憶が曖昧だった。
間も無くして、俺は契約を途中で打ち切った。
その後、数少ない周囲の反対を押し切ってガーディアンズに入った。
自己満足だと分かっていたが、世に出たPMに少しでも近い位置から守ってやりたかった。
心があるPM達に、戦闘兵器だった己と同じ苦しみを味わせない為に。
年月なんて、あっという間に過ぎていった。
ガーディアンズに入ると、色々うわさのあった諜報部入りを志願した。
主人に売り飛ばされ、呆然としていたPMを回収した。
形も分からない主人の死体の前で呆然としているPMを保護した。
進んで彼女らのバックアップをした。
散々煙たがられたし、何度も殺されかけた。
一度は本当に殺された。
助かったのは、この呪わしき身体のおかげだ。
任務の度にわざとそっけない扱いをし、自分の気持ちを悟られないようにしていたが、いつの頃からか、口う
るさいものの彼女らのとげとげしさが和らいだ。
何処かでばれていたのかもしれない。
そして…GH-410、識別番号GSS988-B2。
あの時の女性ニューマンとGH-410の表情は脳裏に焼きついている。
交渉に赴いた時に見せた、買収に応じなかった彼女達の怒りと苦悩と悲しみと…
去り際のGH-410の「心遣い、ありがとう」という呟きと両目を閉じたままの悟ったような微かな微笑み。
その後の、『狂犬』の任務失敗と離職願い。
あの時、新しい部長は条件付でそれを受諾した。
その真意は測りかねる部分もあるが、あの時の俺は胸の内で喜び、明るい未来が訪れるよう聖霊に祈っていた。
今、あいつは幸せにやっているという。
そして俺は、特殊後方支援班と呼ばれた、彼女らを管理する部署から外された。
一体になったPMを管理するのにたくさんの人手は必要ないという、いわば規模の縮小による人員削減。
残留を希望した嘆願書を出したものの、部長はそれを見ることもなく新しい部署への転属を命じた。
たった一人残されたあいつが心配だった。
俺は機動警備部に新規に配属された。
諜報部特殊諜報班潜入捜査官という肩書きを隠して。
その後、数少ない周囲の反対を押し切ってガーディアンズに入った。
自己満足だと分かっていたが、世に出たPMに少しでも近い位置から守ってやりたかった。
心があるPM達に、戦闘兵器だった己と同じ苦しみを味わせない為に。
年月なんて、あっという間に過ぎていった。
ガーディアンズに入ると、色々うわさのあった諜報部入りを志願した。
主人に売り飛ばされ、呆然としていたPMを回収した。
形も分からない主人の死体の前で呆然としているPMを保護した。
進んで彼女らのバックアップをした。
散々煙たがられたし、何度も殺されかけた。
一度は本当に殺された。
助かったのは、この呪わしき身体のおかげだ。
任務の度にわざとそっけない扱いをし、自分の気持ちを悟られないようにしていたが、いつの頃からか、口う
るさいものの彼女らのとげとげしさが和らいだ。
何処かでばれていたのかもしれない。
そして…GH-410、識別番号GSS988-B2。
あの時の女性ニューマンとGH-410の表情は脳裏に焼きついている。
交渉に赴いた時に見せた、買収に応じなかった彼女達の怒りと苦悩と悲しみと…
去り際のGH-410の「心遣い、ありがとう」という呟きと両目を閉じたままの悟ったような微かな微笑み。
その後の、『狂犬』の任務失敗と離職願い。
あの時、新しい部長は条件付でそれを受諾した。
その真意は測りかねる部分もあるが、あの時の俺は胸の内で喜び、明るい未来が訪れるよう聖霊に祈っていた。
今、あいつは幸せにやっているという。
そして俺は、特殊後方支援班と呼ばれた、彼女らを管理する部署から外された。
一体になったPMを管理するのにたくさんの人手は必要ないという、いわば規模の縮小による人員削減。
残留を希望した嘆願書を出したものの、部長はそれを見ることもなく新しい部署への転属を命じた。
たった一人残されたあいつが心配だった。
俺は機動警備部に新規に配属された。
諜報部特殊諜報班潜入捜査官という肩書きを隠して。
投下完了!
本日のUPはここまで。
さて、パシリの顔を拝んでからファミ通カップにでも行ってくるかねぇ~♪
本日のUPはここまで。
さて、パシリの顔を拝んでからファミ通カップにでも行ってくるかねぇ~♪
お疲れ様です!
今までと違う雰囲気ですが、これも楽しみにしてます。
今までと違う雰囲気ですが、これも楽しみにしてます。
次の展開への布石、またはお嬢様の寝言が書きたかっただけの噂。
または金髪の肉食獣と百戦錬磨の410が動き出す話で。
朝になりました。
ガーディアンズからマスター宛に来ているメールの処理を私がしております。
それ以外にもベッドでマスターから離れずグッスリと眠っているお嬢様の
情報についても連絡がありました。
と言う訳で、寝ているお嬢様の綺麗な黒髪をいじって楽しんでいるマスターに
早速の報告をする事にしました…
「マスター、お嬢様の身元が判明いたしました」
「んー?(こしょこしょ)どんなん??」
「…(むずがるお嬢様も可愛いものですね)はい、教団の幹部の義理の娘と言う事です…」
「義理?ほんとの両親はどないしてんよー?」
「事故により両親が死亡との事ですが…コレについては疑惑が、しかも…
次世代の幻視の巫女の候補でもあるらしいとの噂も」
「へぇー、元さんのミー子なんてどうでもええけど、疑惑ってのがなぁー」
めったに見せない真顔で応対するも、抱きついたまま離れないお嬢様の髪の毛を
いじって遊び、鼻の穴にコショコショやってるのは如何な物かと?
お嬢様はくすぐったいのか、ニューマン特有の長い耳がぴくぴく動いてます。
可愛いですねぇ…って、クシャミが出ちゃいますよ!マスター。
「くちゅん!!むぅー…むむむぅ~…む…(コテン)」
「二度寝と言うべきものでしょうか?」
「いやー、将来大物になりそうな予感なんよー」
寝ぼけ眼で起きたかと思ったお嬢様、しかしまた眠ってしまいました。
しかも仕返しなのか欲望に忠実なのか、マスターの胸から顔を離す気配すら
ありません、寝言で「ぷにぷにむにゅむにゅ」と。
それに関しては体験者である私も全くの同感です。
しかしながら、次の寝言にマスターと私は色々と動く事になるのですが…
または金髪の肉食獣と百戦錬磨の410が動き出す話で。
朝になりました。
ガーディアンズからマスター宛に来ているメールの処理を私がしております。
それ以外にもベッドでマスターから離れずグッスリと眠っているお嬢様の
情報についても連絡がありました。
と言う訳で、寝ているお嬢様の綺麗な黒髪をいじって楽しんでいるマスターに
早速の報告をする事にしました…
「マスター、お嬢様の身元が判明いたしました」
「んー?(こしょこしょ)どんなん??」
「…(むずがるお嬢様も可愛いものですね)はい、教団の幹部の義理の娘と言う事です…」
「義理?ほんとの両親はどないしてんよー?」
「事故により両親が死亡との事ですが…コレについては疑惑が、しかも…
次世代の幻視の巫女の候補でもあるらしいとの噂も」
「へぇー、元さんのミー子なんてどうでもええけど、疑惑ってのがなぁー」
めったに見せない真顔で応対するも、抱きついたまま離れないお嬢様の髪の毛を
いじって遊び、鼻の穴にコショコショやってるのは如何な物かと?
お嬢様はくすぐったいのか、ニューマン特有の長い耳がぴくぴく動いてます。
可愛いですねぇ…って、クシャミが出ちゃいますよ!マスター。
「くちゅん!!むぅー…むむむぅ~…む…(コテン)」
「二度寝と言うべきものでしょうか?」
「いやー、将来大物になりそうな予感なんよー」
寝ぼけ眼で起きたかと思ったお嬢様、しかしまた眠ってしまいました。
しかも仕返しなのか欲望に忠実なのか、マスターの胸から顔を離す気配すら
ありません、寝言で「ぷにぷにむにゅむにゅ」と。
それに関しては体験者である私も全くの同感です。
しかしながら、次の寝言にマスターと私は色々と動く事になるのですが…
金ではない銀髪だ('A`)、そして後半。
『ちちさまーははさまー、あいたいのじゃ…おじうえは嫌いなのじゃ~
迎えにきてほしいのじゃー…』
「…寝言、ですか」
「寝言やけどなぁ…なんか気になりすぎる寝言なんよ」
「左様で御座いますね…」
アモーレルを着ていても、銀髪の肉食獣の瞳は衰えるばかりか、爛々になってます。
対照に幸せそうな寝顔のお嬢様、大物で良かったなと今、心から思っています。
『むぅー…はんばーぐー、おむ…らいすー、おいしいのじゃー』
「クスクス、その辺りを調べる事については、マスターが手を打っているでしょうから
私達は朝食の準備でもいたしますか?」
「いやー、この子が起きるまでまだええんよー、昼になったらオコサマランチ
食いに行くんよ、ハンバーグやオムライスもついてるしなぁ~」
「それは名案ですね、でも関係者がお嬢様を取り返しに来たらいかがいたします?」
私の問いにマスターはにこやかな笑顔で…
「ワシらの監視役に勝てたら来ると思うんよー」
「…あー、当分は無理でしょう」
「あいつら、こういう事に関してはノリがええしなぁ…無論最後の壁はワシ。」
「戦争でも仕掛けるおつもりですか…?」
『みんなではんばーくとおむらいすー…にんじんは…410~代わりに食べ…くぅ』
少々ピリピリした空気の中に、またもお嬢様の大物寝言炸裂。
思わず笑いを堪えてしまいます。
「まあ、お嬢様が起きるまでワシも動けんし、ちょいこのままでええかなぁ?
「はい、私も失礼ながらお嬢様の寝顔を眺めさせて頂きます」
「ワシもそれに賛成しとくんよー」
これから事態は動く事になり、色々と苦難もありそうですが、
まずはお嬢様の寝顔を楽しむ事にいたします。
それにしても、お嬢様…羨ましいポジションだなぁと思ってる事は秘密です。
私も今度、マスターの幸せ枕を堪能させていただく事にしましょう。
『ちちさまーははさまー、あいたいのじゃ…おじうえは嫌いなのじゃ~
迎えにきてほしいのじゃー…』
「…寝言、ですか」
「寝言やけどなぁ…なんか気になりすぎる寝言なんよ」
「左様で御座いますね…」
アモーレルを着ていても、銀髪の肉食獣の瞳は衰えるばかりか、爛々になってます。
対照に幸せそうな寝顔のお嬢様、大物で良かったなと今、心から思っています。
『むぅー…はんばーぐー、おむ…らいすー、おいしいのじゃー』
「クスクス、その辺りを調べる事については、マスターが手を打っているでしょうから
私達は朝食の準備でもいたしますか?」
「いやー、この子が起きるまでまだええんよー、昼になったらオコサマランチ
食いに行くんよ、ハンバーグやオムライスもついてるしなぁ~」
「それは名案ですね、でも関係者がお嬢様を取り返しに来たらいかがいたします?」
私の問いにマスターはにこやかな笑顔で…
「ワシらの監視役に勝てたら来ると思うんよー」
「…あー、当分は無理でしょう」
「あいつら、こういう事に関してはノリがええしなぁ…無論最後の壁はワシ。」
「戦争でも仕掛けるおつもりですか…?」
『みんなではんばーくとおむらいすー…にんじんは…410~代わりに食べ…くぅ』
少々ピリピリした空気の中に、またもお嬢様の大物寝言炸裂。
思わず笑いを堪えてしまいます。
「まあ、お嬢様が起きるまでワシも動けんし、ちょいこのままでええかなぁ?
「はい、私も失礼ながらお嬢様の寝顔を眺めさせて頂きます」
「ワシもそれに賛成しとくんよー」
これから事態は動く事になり、色々と苦難もありそうですが、
まずはお嬢様の寝顔を楽しむ事にいたします。
それにしても、お嬢様…羨ましいポジションだなぁと思ってる事は秘密です。
私も今度、マスターの幸せ枕を堪能させていただく事にしましょう。
自他共に認めるおっぱい星人の俺もこれはお嬢様も持ち帰らざるを得ない
>>194
そのミッションはSクラスの上をいく難易度ですぜ、旦那……
そのミッションはSクラスの上をいく難易度ですぜ、旦那……
>>192、>>193
たゆんたゆんな銀髪の人は、ずいぶんと子煩悩だな。こう見ると……
410もやきもち焼くかと思えば、結構度量が大きいし。
寝てれば天使、起きれば小悪魔。それが子供と誰かが言ってました。
それを守る銀髪の肉食獣ですか。
お持ち帰りは決死の覚悟でやりましょう、皆さん。
俺はヤですw
たゆんたゆんな銀髪の人は、ずいぶんと子煩悩だな。こう見ると……
410もやきもち焼くかと思えば、結構度量が大きいし。
寝てれば天使、起きれば小悪魔。それが子供と誰かが言ってました。
それを守る銀髪の肉食獣ですか。
お持ち帰りは決死の覚悟でやりましょう、皆さん。
俺はヤですw
>>196
つ「虎穴に入らずんば、虎子を得ず」
つ「虎穴に入らずんば、虎子を得ず」
むしろ、毎日一話ずつ小出しオンラインで頼む。
ファミ通BはA武器出放題でパシリの食事には困らないな。
ラッピー好きなパシリ持ってる人は拗ねられてそうだが…
>>196
余計なお世話かもしれんが、流石にコメントだけの時はsageた方が良いんじゃなかろうか。
投下の時にどうするかは個人の裁量だと思うけど…
(上にあるように1日1話でやるならageはお勧めしないが)
ラッピー好きなパシリ持ってる人は拗ねられてそうだが…
>>196
余計なお世話かもしれんが、流石にコメントだけの時はsageた方が良いんじゃなかろうか。
投下の時にどうするかは個人の裁量だと思うけど…
(上にあるように1日1話でやるならageはお勧めしないが)
>>198
ではそのようにさせて頂きます。大量にスレが伸びるのは本望ではありませんし。
大体4~5スレで1話分になると思います。
>>199
ご忠告、感謝!今後はそうします。ま、文体でバレそうですがw
では、本日分『暁の中で』、第3回目の投下です。
なお、今後は終了時に
―――つづく―――
と表記して、投下終了の合図とさせて頂きます。
ではそのようにさせて頂きます。大量にスレが伸びるのは本望ではありませんし。
大体4~5スレで1話分になると思います。
>>199
ご忠告、感謝!今後はそうします。ま、文体でバレそうですがw
では、本日分『暁の中で』、第3回目の投下です。
なお、今後は終了時に
―――つづく―――
と表記して、投下終了の合図とさせて頂きます。
そして、1月18日。午後4時58分。
今日は設備管理課からの指名ミッションとして、PM回収作業に従事していた。
あまり知られていないが、この時間帯にこうやって主人のいなくなったPMを回収しているのがガーディアン
ズの総務部設備管理課とGRMの業務だ。
もっとも、この仕事にわざわざ俺を指名するという事は、裏の仕事としてGRMや諜報部からの意向もあるのだろう。
こんな時はろくな事がない。
今日は俺一人かと思っていたが、情報部の中年男性ヒューマン(外見は当然俺より年を食ってる)が一人、相棒
のGH-440を連れて同行している。
男が言うには、何でもPMを狙った侵入者事件に関連してとの事だが、男は詳細は言わなかったし、俺も聞こ
うとも思わない。
どんな事件かは大方予想はついているし、あらかじめ諜報部から渡されている情報で裏付けも取れていたからだ。
「パシリは玩具じゃない。犯人はそんな簡単な事が分かっちゃいないんだ」
引き合わせの時に渋い顔をしながら、男はそうぼそりとそう締めくくった。
ミッション自体は滞りなく進行していった。
実際、大概のPM達の対応は予想範囲を超えることは無かった。
事情を説明し、該当PMのバックアップ終了後にPMデバイスZEROとPMデバイスRELIVE――これ
までの記憶はそのまま、ボディ形状、戦闘レベル、生産レベル、名前だけをリセットするGRM側にしかない特
殊デバイスだ――を手渡す。
彼女らのとる行動はその後、ほぼ三通りに分かれる。
思い出という行動記録データを保持したままボディリセットする為にデバイスRELIVEを使用するか、デ
バイスZEROで思い出を完全に抹消して初期状態に戻るか、あるいはその場で自ら全てのデータを完全抹消し
て全機能の停止を選択――要は自殺だ。
時折、自らの武器でブレインコアを破壊しようとする躯体もいるが、それを説得して、デバイスではなく俺の
手で自殺用のバーチャルプログラムを入力し、納得する死を与えた。
GRMにすれば回収できれば問題は無いと俺は判断したが、澱のように疲れが溜まっていくのを感じていた。
気持ちのいい仕事じゃない。
PMだとしても、一部は目の前で自殺していくのだから。
助けてやろうと手を伸ばしても、その手を拒まれるのだから。
稀に、ほんの数%にも満たないが、再課金が確認されることもあった。
最初にその例外を知った時、PMに教えてやると花が咲いたように笑顔を浮かべていた。
俺の日常では当たり前のことだが、俺の行動は可能な限り監視されている。
ましてやコロニー内でのミッション中、行動なんて瞬きの回数まで筒抜けだ。
どうせ行動が筒抜けならばと、分かっている限りは教えてやっていった。
いたたまれない仕事であったが、幸運なPM達の笑顔だけが救いだった。
今日は設備管理課からの指名ミッションとして、PM回収作業に従事していた。
あまり知られていないが、この時間帯にこうやって主人のいなくなったPMを回収しているのがガーディアン
ズの総務部設備管理課とGRMの業務だ。
もっとも、この仕事にわざわざ俺を指名するという事は、裏の仕事としてGRMや諜報部からの意向もあるのだろう。
こんな時はろくな事がない。
今日は俺一人かと思っていたが、情報部の中年男性ヒューマン(外見は当然俺より年を食ってる)が一人、相棒
のGH-440を連れて同行している。
男が言うには、何でもPMを狙った侵入者事件に関連してとの事だが、男は詳細は言わなかったし、俺も聞こ
うとも思わない。
どんな事件かは大方予想はついているし、あらかじめ諜報部から渡されている情報で裏付けも取れていたからだ。
「パシリは玩具じゃない。犯人はそんな簡単な事が分かっちゃいないんだ」
引き合わせの時に渋い顔をしながら、男はそうぼそりとそう締めくくった。
ミッション自体は滞りなく進行していった。
実際、大概のPM達の対応は予想範囲を超えることは無かった。
事情を説明し、該当PMのバックアップ終了後にPMデバイスZEROとPMデバイスRELIVE――これ
までの記憶はそのまま、ボディ形状、戦闘レベル、生産レベル、名前だけをリセットするGRM側にしかない特
殊デバイスだ――を手渡す。
彼女らのとる行動はその後、ほぼ三通りに分かれる。
思い出という行動記録データを保持したままボディリセットする為にデバイスRELIVEを使用するか、デ
バイスZEROで思い出を完全に抹消して初期状態に戻るか、あるいはその場で自ら全てのデータを完全抹消し
て全機能の停止を選択――要は自殺だ。
時折、自らの武器でブレインコアを破壊しようとする躯体もいるが、それを説得して、デバイスではなく俺の
手で自殺用のバーチャルプログラムを入力し、納得する死を与えた。
GRMにすれば回収できれば問題は無いと俺は判断したが、澱のように疲れが溜まっていくのを感じていた。
気持ちのいい仕事じゃない。
PMだとしても、一部は目の前で自殺していくのだから。
助けてやろうと手を伸ばしても、その手を拒まれるのだから。
稀に、ほんの数%にも満たないが、再課金が確認されることもあった。
最初にその例外を知った時、PMに教えてやると花が咲いたように笑顔を浮かべていた。
俺の日常では当たり前のことだが、俺の行動は可能な限り監視されている。
ましてやコロニー内でのミッション中、行動なんて瞬きの回数まで筒抜けだ。
どうせ行動が筒抜けならばと、分かっている限りは教えてやっていった。
いたたまれない仕事であったが、幸運なPM達の笑顔だけが救いだった。
今日一日の今現在で回収されたのは合計315体。
そして、本日回収予定数は後一体。
最後の最後になって最重要PMであるGH-410、識別番号GST685-F9の暮らしている部屋の前まで来た。
「ここか、あんたの目的の部屋ってえのは」
男は、異動してから滅多に抜かないという支給品のブドゥキ・ハド・カスタムをナノトランサーから取り出した。
銃を構える姿はしっくり来るほど様になる――かなりの使い手だ。
「間違いないぞ、おっさん。この部屋も3ヶ月が過ぎた」
資料を頭の中で検索しているのであろう440は、不満を隠そうともせずぶっきらぼうに答えた。
「…フゥー、末期の水を取るって感じだなぁ、今回の仕事は」
重い溜息を吐くその足元で、あからさまに嫌そうな表情を浮かべる440。
「そういう事言うなよな、おっさん。」
440が低い位置にあるロック端末に取り付く。
「さてと、はじめるぞ」
440が聴覚センサーユニットに内装されている接続端子を引っ張り出して端末に接続すると、個人情報から
推察された、当たりと思しき数字を片っ端から打ち込んでいく。
その間、約二秒。
ドアは――開かない。
「あーもう、ネタが尽きたぞ。どうするんだよ」
440が悪態をつきながら振り向くと、俺は中年ヒュマと目をあわせる。
俺の詳細は、この男に通達済みのはずだ。
しかたねぇといった素振りで肩をすくめる男をみて、俺は襟元のマイクを口に引き寄せ、呟くように通信する。
「こちら諜報部特殊諜報班『サテライト0』、案件GRM-PM144598-A8、状況P-1につきマスターキーを使用する」
状況P-1、それはPMを非常回収する場合の専用コードを指す。
大概は、複雑な事情を持つPMがらみであり、そして犯罪まがいの行為の後に使用される、誰からも敬遠され
る非常コードだ。
今まで数え切れないほど使用した。
うち1回は、主人をひき肉にしたGH-440を回収した件だった事を思い出して歯噛みする。
ロックが解除された音が聞こえ、入り口が開く。
同時に愛用のダブルセイバーを取り出し、部屋の中に飛び込んだ。
奇妙なほど静かに静まり返った部屋だった。
通信機にザッ…とノイズが入る。
『こちら本部。サテライト0、動体反応はない。カウンター裏にPM特有の金属反応を検知、確認せよ』
事務的な口調で通信が入る。
「サテライト0、了解」
最低限の返答を返す。
店舗まで改装された室内を慎重に回り込み、カウンター裏を確認する。
そこには、血のごとく赤黒いオイルの海があった。
そして、本日回収予定数は後一体。
最後の最後になって最重要PMであるGH-410、識別番号GST685-F9の暮らしている部屋の前まで来た。
「ここか、あんたの目的の部屋ってえのは」
男は、異動してから滅多に抜かないという支給品のブドゥキ・ハド・カスタムをナノトランサーから取り出した。
銃を構える姿はしっくり来るほど様になる――かなりの使い手だ。
「間違いないぞ、おっさん。この部屋も3ヶ月が過ぎた」
資料を頭の中で検索しているのであろう440は、不満を隠そうともせずぶっきらぼうに答えた。
「…フゥー、末期の水を取るって感じだなぁ、今回の仕事は」
重い溜息を吐くその足元で、あからさまに嫌そうな表情を浮かべる440。
「そういう事言うなよな、おっさん。」
440が低い位置にあるロック端末に取り付く。
「さてと、はじめるぞ」
440が聴覚センサーユニットに内装されている接続端子を引っ張り出して端末に接続すると、個人情報から
推察された、当たりと思しき数字を片っ端から打ち込んでいく。
その間、約二秒。
ドアは――開かない。
「あーもう、ネタが尽きたぞ。どうするんだよ」
440が悪態をつきながら振り向くと、俺は中年ヒュマと目をあわせる。
俺の詳細は、この男に通達済みのはずだ。
しかたねぇといった素振りで肩をすくめる男をみて、俺は襟元のマイクを口に引き寄せ、呟くように通信する。
「こちら諜報部特殊諜報班『サテライト0』、案件GRM-PM144598-A8、状況P-1につきマスターキーを使用する」
状況P-1、それはPMを非常回収する場合の専用コードを指す。
大概は、複雑な事情を持つPMがらみであり、そして犯罪まがいの行為の後に使用される、誰からも敬遠され
る非常コードだ。
今まで数え切れないほど使用した。
うち1回は、主人をひき肉にしたGH-440を回収した件だった事を思い出して歯噛みする。
ロックが解除された音が聞こえ、入り口が開く。
同時に愛用のダブルセイバーを取り出し、部屋の中に飛び込んだ。
奇妙なほど静かに静まり返った部屋だった。
通信機にザッ…とノイズが入る。
『こちら本部。サテライト0、動体反応はない。カウンター裏にPM特有の金属反応を検知、確認せよ』
事務的な口調で通信が入る。
「サテライト0、了解」
最低限の返答を返す。
店舗まで改装された室内を慎重に回り込み、カウンター裏を確認する。
そこには、血のごとく赤黒いオイルの海があった。
オイルの海の中心に、首が胴体と離れて腹がかっ捌かれているGH-410の成れの果てと、フォトンリアク
ターのエネルギーが尽きて動かなくなったハンゾウがあるだけだった。
「本部、こちらサテライト0。目標の残骸を確認」
『了解した、サテライト0。ビジフォンのデータを転送後、全アイテムを回収せよ。塵ひとつ忘れるな』
「サテライト0、了解…すべて、だな?」
『そうだ、全てだ』
ゆっくりと背後から近づく気配と、ヒッと鋭く息を飲み込む音がする。
「だから言ったろうが、見るんじゃねえって」
男の声がするほうへ視線をやると、男とその足にしがみつく440がいた。
「おおおおおおおっさん、うぅっ…ぉぇぇぇぇぇ」
あまりの光景に440は腰が砕け、座り込んだ。
そして、えづきながら吐しゃ物を床にぶちまけた。
PMとはいえ、流石に胸糞悪くなる光景だ。
この程度なら俺は見慣れているが、耐性の無いであろう440には刺激が強すぎたようだ。
男は、440の背中をさすりながらカウンターの向こうへ連れて行く。
「すまんな、そこは任せる。こいつがこの調子じゃ、検証なんてさせられんよ」
「…了解した」
現場をゴーグルでざっとスキャニングし、データを転送する。
破壊されたPMの小さな手に握られている枯れた薔薇に気づいた俺は、それをそっと引き抜くと胸の上に置い
て両手を組ませる。
(カチャン…)
その服から何かが落ちた。
「…PMデバイス…か?」
412と手書きで数字が打たれているが、今日のメンテナンス後に解禁される予定の進化デバイスのようだ。
主人がいたとしても、フライングゲットはありえない。
裏事情を知っている俺は奇異に感じた。
この手のアイテムは厳重に管理されている為、たとえ研究者であっても外部へ持ち出すのは極めて難しい。
はっとして、ゴーグルを取り出すと仔細に検分を始めた。
そして…
「……ブレインコアが無い」
リアクター類が人間で言う所の心臓なら、ブレインコアは脳だ。
しかも、キャストほどではないにしろ、感情を有することが出来るほどの高性能な代物だ。
第一、あまりに特殊すぎて特定の闇市でも無ければ出回らない代物でもある。
つまり、出回ればすぐに足がつく。
「一体、どういうことだ?」
答えを出すにはまだ決定打が足りなかった。
―――つづく―――
ターのエネルギーが尽きて動かなくなったハンゾウがあるだけだった。
「本部、こちらサテライト0。目標の残骸を確認」
『了解した、サテライト0。ビジフォンのデータを転送後、全アイテムを回収せよ。塵ひとつ忘れるな』
「サテライト0、了解…すべて、だな?」
『そうだ、全てだ』
ゆっくりと背後から近づく気配と、ヒッと鋭く息を飲み込む音がする。
「だから言ったろうが、見るんじゃねえって」
男の声がするほうへ視線をやると、男とその足にしがみつく440がいた。
「おおおおおおおっさん、うぅっ…ぉぇぇぇぇぇ」
あまりの光景に440は腰が砕け、座り込んだ。
そして、えづきながら吐しゃ物を床にぶちまけた。
PMとはいえ、流石に胸糞悪くなる光景だ。
この程度なら俺は見慣れているが、耐性の無いであろう440には刺激が強すぎたようだ。
男は、440の背中をさすりながらカウンターの向こうへ連れて行く。
「すまんな、そこは任せる。こいつがこの調子じゃ、検証なんてさせられんよ」
「…了解した」
現場をゴーグルでざっとスキャニングし、データを転送する。
破壊されたPMの小さな手に握られている枯れた薔薇に気づいた俺は、それをそっと引き抜くと胸の上に置い
て両手を組ませる。
(カチャン…)
その服から何かが落ちた。
「…PMデバイス…か?」
412と手書きで数字が打たれているが、今日のメンテナンス後に解禁される予定の進化デバイスのようだ。
主人がいたとしても、フライングゲットはありえない。
裏事情を知っている俺は奇異に感じた。
この手のアイテムは厳重に管理されている為、たとえ研究者であっても外部へ持ち出すのは極めて難しい。
はっとして、ゴーグルを取り出すと仔細に検分を始めた。
そして…
「……ブレインコアが無い」
リアクター類が人間で言う所の心臓なら、ブレインコアは脳だ。
しかも、キャストほどではないにしろ、感情を有することが出来るほどの高性能な代物だ。
第一、あまりに特殊すぎて特定の闇市でも無ければ出回らない代物でもある。
つまり、出回ればすぐに足がつく。
「一体、どういうことだ?」
答えを出すにはまだ決定打が足りなかった。
―――つづく―――
>>193
たゆんがまるで母親のようだ、ぜひともセットで譲って欲しいものだw
たとえそれがS2ランクミッション以上でも己が身一つで突っ込む、それがfFの真髄!
>>203
中年はやっぱかっこいいなぁ、元の作者の手を離れまくって大暴れだがw
PM回収の話は自分でも書いたがやっぱあまりいい雰囲気の話ではないな、PMの話書いてる側からすると・・・w
>近作では420姉妹などなど
設定だろうがキャラだろうが好きに使ってくださいな、と言っても中途半端にしか出てない設定もあったりするが・・・w
たゆんがまるで母親のようだ、ぜひともセットで譲って欲しいものだw
たとえそれがS2ランクミッション以上でも己が身一つで突っ込む、それがfFの真髄!
>>203
中年はやっぱかっこいいなぁ、元の作者の手を離れまくって大暴れだがw
PM回収の話は自分でも書いたがやっぱあまりいい雰囲気の話ではないな、PMの話書いてる側からすると・・・w
>近作では420姉妹などなど
設定だろうがキャラだろうが好きに使ってくださいな、と言っても中途半端にしか出てない設定もあったりするが・・・w
>>204
あの役回りをさせるのにはあの中年ヒュマしかいない!と直感的に思って書きました。
ほおっておいても勝手に動いてくれるので、とっても楽でしたw
ではでは、本日分、『暁の中で』第四回目の投下です。
あの役回りをさせるのにはあの中年ヒュマしかいない!と直感的に思って書きました。
ほおっておいても勝手に動いてくれるので、とっても楽でしたw
ではでは、本日分、『暁の中で』第四回目の投下です。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
自分の部屋に戻った俺は、自分のPM――この頃はもちろん410で、まだ『ローザ』という名前だった――
の出迎えを受けた。
「おう。今日の売れ行きは?」
「2種の武器、計4つが売れました。他にはありません」
時間は既に翌日の早朝、4時を回っていた。
生あくびをかみ殺しつつ、ローザが夕食にと作っておいたモトゥブ風スパイシア・ライスを暖めなおしてそそ
くさと詰め込み、作り置きしてあったお手製のクリームスープをゆっくりと味わった。
不可解な現場を立ち去れたのは30分ほど前だった。
後方処理班が俺と一緒に後始末を行なっていったが、やはりブレインコアは出てこなかった。
連中いわく、誰かが明確な目的があって持っていったのではないか?
一体何の為に?
あまりに情報が足りなかった。
「………じんさ…ごしゅ…ご主人様!お休みになるのでしたら、ベッドでお休み下さい!風邪を引きます!」
どうやら、食べ終わってうたた寝をしていたらしい。
「ん、そうだな…。後は頼む」
「はい、お任せください!」
手際よく後片付けを始める後ろ姿を見て、ふと、ナノトランサーのリストを確認する。
メセタ表示のひとつ上に、PMデバイス412が表示されている。
帰りがけに、何とは無しに買ってきたものだった。
(後で食わせてやるか。普段はたいした物もやってないしな)
そして、思い出して苦笑した。
(そういやこいつ、ウワバミだったな)
短時間で育てるのと予算の都合で、餌として与えていたのはほとんどジュース類だったが、出来るだけ出費を
抑えるために材料を集めてハッピージュースを作って与えた事もあった。
数は大してそろえられなかったが、それを与えた時は喜んできれいに全部飲み干した。
(最初はちょっとした晩酌相手だったが、しまいにゃ俺の分まで横取りしてたっけ)
連鎖的な思考で、ついでに一杯やろうとハッピージュースを2本取り出し、ローザに声をかける。
「一杯付き合え」
「え?よろしいのですか?」
俺が手渡すと、躊躇無くボトルのキャップを開ける。
グラスを出すのも面倒だったが、ラッパ飲みしようとするPMの姿を見て流石に持ってくる。
「…今更だが、お前には普通の酒の飲み方を最初から教えないとダメか?」
「は?」
間の抜けた表情を浮かべた彼女から、ハッピージュースのボトルを取り上げる。
それを、サイドボードの上においた二つのグラスに均等に注ぐ。
注がれたグラスを手渡すと、彼女は小さな両手でしっかりと持った。
そのグラスに、俺が手に持ったグラスを軽く当てる。
チィン…
澄んだガラスの音がきれいな音色を奏でる。
自分の部屋に戻った俺は、自分のPM――この頃はもちろん410で、まだ『ローザ』という名前だった――
の出迎えを受けた。
「おう。今日の売れ行きは?」
「2種の武器、計4つが売れました。他にはありません」
時間は既に翌日の早朝、4時を回っていた。
生あくびをかみ殺しつつ、ローザが夕食にと作っておいたモトゥブ風スパイシア・ライスを暖めなおしてそそ
くさと詰め込み、作り置きしてあったお手製のクリームスープをゆっくりと味わった。
不可解な現場を立ち去れたのは30分ほど前だった。
後方処理班が俺と一緒に後始末を行なっていったが、やはりブレインコアは出てこなかった。
連中いわく、誰かが明確な目的があって持っていったのではないか?
一体何の為に?
あまりに情報が足りなかった。
「………じんさ…ごしゅ…ご主人様!お休みになるのでしたら、ベッドでお休み下さい!風邪を引きます!」
どうやら、食べ終わってうたた寝をしていたらしい。
「ん、そうだな…。後は頼む」
「はい、お任せください!」
手際よく後片付けを始める後ろ姿を見て、ふと、ナノトランサーのリストを確認する。
メセタ表示のひとつ上に、PMデバイス412が表示されている。
帰りがけに、何とは無しに買ってきたものだった。
(後で食わせてやるか。普段はたいした物もやってないしな)
そして、思い出して苦笑した。
(そういやこいつ、ウワバミだったな)
短時間で育てるのと予算の都合で、餌として与えていたのはほとんどジュース類だったが、出来るだけ出費を
抑えるために材料を集めてハッピージュースを作って与えた事もあった。
数は大してそろえられなかったが、それを与えた時は喜んできれいに全部飲み干した。
(最初はちょっとした晩酌相手だったが、しまいにゃ俺の分まで横取りしてたっけ)
連鎖的な思考で、ついでに一杯やろうとハッピージュースを2本取り出し、ローザに声をかける。
「一杯付き合え」
「え?よろしいのですか?」
俺が手渡すと、躊躇無くボトルのキャップを開ける。
グラスを出すのも面倒だったが、ラッパ飲みしようとするPMの姿を見て流石に持ってくる。
「…今更だが、お前には普通の酒の飲み方を最初から教えないとダメか?」
「は?」
間の抜けた表情を浮かべた彼女から、ハッピージュースのボトルを取り上げる。
それを、サイドボードの上においた二つのグラスに均等に注ぐ。
注がれたグラスを手渡すと、彼女は小さな両手でしっかりと持った。
そのグラスに、俺が手に持ったグラスを軽く当てる。
チィン…
澄んだガラスの音がきれいな音色を奏でる。
ローザはその音に一瞬ポカンとした浮かべた。
「…不思議な音、ですね。ガラス同士がぶつかり合って発生する単なる現象なのに。心に響くとでも言えば良い
のでしょうか…」
目を閉じて微笑みながら、今の音を頭の中で反芻している様子だった。
俺はそれを見ながら、グラスを傾ける。
俺が二杯目を飲み終わる頃になって、ローザはやっと目を開け、グラスの中身をなめるようにちびちび飲みだした。
その様子は、好物を最後までゆっくり味わう子供と変わらない。
時間をかけて最初の一杯が空になった所で、自分と彼女のグラスに改めて酒を満たす。
「…PMデバイス、売り出したのは知ってるな?」
唐突に俺が切り出すと、二杯目をちびちび飲み出した彼女はコクリと頷く。
「はい、公示情報のメールで確認しています」
俺はトランサーから、PMデバイス412を取り出して彼女に見せた。
「帰りがけに買ってきたんだが、使ってみるか?」
「PMデバイス412…これ、私が前に欲しいといっていた物ですね?」
「ああ。外装、性格プログラム、武装、戦闘プログラム、これらの追加・変更及び補正だな」
グラスを手近な場所に置いたローザの小さな手に、デバイスをポンと乗せる。
じっと見ていたかと思うと、
ヒョイパク、モギモギ…
更に、先ほどの飲みかけのハッピージュースを手に取り、一気にデバイス諸共流し込む。
「ちょ、おまっ!」
止めるのも間に合わず、グラスは空になった。
「ごちそうですね!」(///ヮ//)=3 ゲプッ
(;゜Д゜)…オイオイ
直後、光の繭に包まれ、メタモルフォーゼが始まった。
光が消え去ると、そこには今までの410の姿ではなく412となったローザがいた。の、だが…
『メインプログラムのリブートに失敗しました。性格プログラムに致命的な欠損を確認、ROMユニットの一部
が損壊。非常コード発動、ブレインコアを強制停止します』
ブレインコアから独立している、ブレインコア診断・監視用デバイスによる無機質な音声警告が彼女の口から
発せられ、同時にぽてっと倒れた。
「…不思議な音、ですね。ガラス同士がぶつかり合って発生する単なる現象なのに。心に響くとでも言えば良い
のでしょうか…」
目を閉じて微笑みながら、今の音を頭の中で反芻している様子だった。
俺はそれを見ながら、グラスを傾ける。
俺が二杯目を飲み終わる頃になって、ローザはやっと目を開け、グラスの中身をなめるようにちびちび飲みだした。
その様子は、好物を最後までゆっくり味わう子供と変わらない。
時間をかけて最初の一杯が空になった所で、自分と彼女のグラスに改めて酒を満たす。
「…PMデバイス、売り出したのは知ってるな?」
唐突に俺が切り出すと、二杯目をちびちび飲み出した彼女はコクリと頷く。
「はい、公示情報のメールで確認しています」
俺はトランサーから、PMデバイス412を取り出して彼女に見せた。
「帰りがけに買ってきたんだが、使ってみるか?」
「PMデバイス412…これ、私が前に欲しいといっていた物ですね?」
「ああ。外装、性格プログラム、武装、戦闘プログラム、これらの追加・変更及び補正だな」
グラスを手近な場所に置いたローザの小さな手に、デバイスをポンと乗せる。
じっと見ていたかと思うと、
ヒョイパク、モギモギ…
更に、先ほどの飲みかけのハッピージュースを手に取り、一気にデバイス諸共流し込む。
「ちょ、おまっ!」
止めるのも間に合わず、グラスは空になった。
「ごちそうですね!」(///ヮ//)=3 ゲプッ
(;゜Д゜)…オイオイ
直後、光の繭に包まれ、メタモルフォーゼが始まった。
光が消え去ると、そこには今までの410の姿ではなく412となったローザがいた。の、だが…
『メインプログラムのリブートに失敗しました。性格プログラムに致命的な欠損を確認、ROMユニットの一部
が損壊。非常コード発動、ブレインコアを強制停止します』
ブレインコアから独立している、ブレインコア診断・監視用デバイスによる無機質な音声警告が彼女の口から
発せられ、同時にぽてっと倒れた。
――――数時間後――――
我に返り、周囲を見渡す。
ここは、何処だ?
あやふやな記憶を反芻すると、錯乱しながらローザを抱え、シャトルに乗ってGRMのPM研究施設に強引に
押し入ったようである。
普通なら、施設不法侵入で捕まってただろう。
肩書き、恐るべし…。
今居る場所は定期メンテでPM達を診断する施設の待合ロビーで、そこにあるソファーに座っているのだと、
やっと理解する。
「ミスタ・ルドルフ、検査が終わりました。お話がありますので、こちらへ」
ナース風のパーツに身を包んだ、女性キャストのPMメンテナンス要員が俺を呼びに来た。
診断室に入って驚いた。
見知った顔の研究主任が、表示された診断カルテを深刻な顔で仔細に検分していたのだ。
更に、ニュースでよく見るGRM開発局長の姿もある。
あっけにとられていると、先ほどの女性キャストが椅子を勧めてくれた。
「――来たか。とにかく、腰掛けてくれ。話はそれからだ」
研究主任に言われるまま、デスクチェアに腰掛ける。
「状況は複雑だが、簡潔な部分から言おう。君のPMは…」
僅かに間が空いて、ため息に言葉が乗って出てきた。
「無事、再起動した。現在はスリープモードだが」
「はあ…」
俺は未だ、衝撃から立ち直れていない。
情けないようだが、合いの手を入れているのも反射行動だ。
研究主任は、更に話を続ける。
「ただ、幾つか不明な点と問題があってね…」
綺麗に整えてある髪をわしわしとかきむしる。
「こちらで判ったのは、君が使ったPMデバイス412に何らかの欠陥があったということだけだ。
製造段階の検品ではその製品自体に問題無いのが報告されているので、出荷後に発生したものと見て調査中だ」
「はあ…」
「メタモルフォーゼの過程はバックアップに残っていたので仔細が判っているのだが、酒との関連性は不明だ。
影響があったとしても、ほんの微細なものと推測される」
「…はあ…」
「残る問題点と不明な点は…まあ、当のPMに会った方が話が早い」
主任は、ナース姿の女性キャストに頷いてみせる。
しばらくすると、その女性キャストに連れられて412の姿になったローザがうつむいたままやってきた。
「ほら、あなたのご主人様がいますよ」
顔をあげ、俺を確認したのか泣き出しそうな表情になり、伊達めがねを外して手で目をこする。
反射的に立ち上がった俺の足に抱きつくと、
「ぅっぅっうっ、うわぁ~ん、わ~ん、わぁ~ん!」
そのまま、感極まって泣き出した。
「ごわ゛がっだよぅ~、じんじゃうがどおもっだよぅ、パパぁ!」
泣きじゃくるローザの背中を撫でてやろうとした手が、止まった。
「………………………………………………パパ?」
ギギギときしみ音が聞こえてきそうな動きで、首を主任に向ける。
主任が、更に頭をかきむしってため息を吐いた。
「外聞的に一番問題なのは、『それ』だな」
主任は再び診断結果に目を通す。
「PMデバイスの影響とプログラムの損傷から回復を図るために自己修復が試みられているんだが、どういうわ
けか君を『パパ』、すなわち主人ではなく父親として認識しているようだ」
唖然としたままの俺の態度を話を促すためのものとして受け取ったらしく、更に続ける。
「何らかの相互作用があったのか、本来はブレインコアのROMに焼付けされている基本動作の一部がいくつか
のROMごと完全に消滅、上書きされるように増設されたRAMに、改良された学習プログラムが組み込まれて
いる。
性格デバイスもオリジナルからは変形しているし、プログラムも自己改変している。
主人に追従させるための擬似恋愛機能はデバイスユニットごと完全消失、それによって生じた空間を利用して
ブレインコア自体も増強・再構築されている。
無論、基本プログラムもだ。
唯一といってもいいのは、412としての能力自体に変化が無いことだけだ。更に…」
おいおい、まだ何かあるのか?
「…異能体に変化したと見られる。確率は99.987703%。能力は不明」
ディ・ラガンの尻尾で頭をぶん殴られた時以上の衝撃に襲われた。
「――我が社で調査し、データが正式に確認された三体目のワンオブサウザンド、ということになる」
今まで黙っていた開発局長が口を開いた。
「そして、最後の問題点だ。
この個体はワンオブサウザンドという事を抜かしても、PMとして生まれながらPMとしての絶対条件を超え
ているのだ」
「………P……M…の…絶対条件…?」
局長は未だに泣きじゃくっているローザに近づき、ひざ立ちになってゆっくり頭を撫でている。
「…検査の為、この子に標準的な知性測定用論理・非論理演算テストを行わせた所、ランクAA、通常キャスト
と同じ『人権を有することが出来る高度知性体』であるという結果が出た。
PM、パートナーマシナリーは法律上、ただの『物』だ。
感情こそ与えられているが、人権は存在しない。
何故なら、基準となる知性が及ばないからだ。
が、ここに例外が発生した。
さて、世間は、政府は、GRMは、特にPMを持つ連中はどうすると思う?」
反射的に俺は局長の胸倉をつかんで持ち上げた。
「ふざけるなよ、何処まで心持つモノを弄ぶ気だ」
冷ややかな口調の俺に、局長は勤めて冷静に語る。
「…君の怒りは尤もだ。
だから、落ち着いて聞いて欲しい。
この子の存在は、ここにいる面々しか知らないんだ」
ギギギときしみ音が聞こえてきそうな動きで、首を主任に向ける。
主任が、更に頭をかきむしってため息を吐いた。
「外聞的に一番問題なのは、『それ』だな」
主任は再び診断結果に目を通す。
「PMデバイスの影響とプログラムの損傷から回復を図るために自己修復が試みられているんだが、どういうわ
けか君を『パパ』、すなわち主人ではなく父親として認識しているようだ」
唖然としたままの俺の態度を話を促すためのものとして受け取ったらしく、更に続ける。
「何らかの相互作用があったのか、本来はブレインコアのROMに焼付けされている基本動作の一部がいくつか
のROMごと完全に消滅、上書きされるように増設されたRAMに、改良された学習プログラムが組み込まれて
いる。
性格デバイスもオリジナルからは変形しているし、プログラムも自己改変している。
主人に追従させるための擬似恋愛機能はデバイスユニットごと完全消失、それによって生じた空間を利用して
ブレインコア自体も増強・再構築されている。
無論、基本プログラムもだ。
唯一といってもいいのは、412としての能力自体に変化が無いことだけだ。更に…」
おいおい、まだ何かあるのか?
「…異能体に変化したと見られる。確率は99.987703%。能力は不明」
ディ・ラガンの尻尾で頭をぶん殴られた時以上の衝撃に襲われた。
「――我が社で調査し、データが正式に確認された三体目のワンオブサウザンド、ということになる」
今まで黙っていた開発局長が口を開いた。
「そして、最後の問題点だ。
この個体はワンオブサウザンドという事を抜かしても、PMとして生まれながらPMとしての絶対条件を超え
ているのだ」
「………P……M…の…絶対条件…?」
局長は未だに泣きじゃくっているローザに近づき、ひざ立ちになってゆっくり頭を撫でている。
「…検査の為、この子に標準的な知性測定用論理・非論理演算テストを行わせた所、ランクAA、通常キャスト
と同じ『人権を有することが出来る高度知性体』であるという結果が出た。
PM、パートナーマシナリーは法律上、ただの『物』だ。
感情こそ与えられているが、人権は存在しない。
何故なら、基準となる知性が及ばないからだ。
が、ここに例外が発生した。
さて、世間は、政府は、GRMは、特にPMを持つ連中はどうすると思う?」
反射的に俺は局長の胸倉をつかんで持ち上げた。
「ふざけるなよ、何処まで心持つモノを弄ぶ気だ」
冷ややかな口調の俺に、局長は勤めて冷静に語る。
「…君の怒りは尤もだ。
だから、落ち着いて聞いて欲しい。
この子の存在は、ここにいる面々しか知らないんだ」
「なに?」
局長を持ち上げた腕から力が抜ける。
「何故、と思う君の疑問にひとつの回答をあげよう。
我が社の中に、極秘だが、ある種の結社が潜伏している。
連中の目的は私もよくは知らない。
だが、PMに知性を持たせる事で混乱を引き起こそうとしていた事は事実だ。
その一環として、製造ラインに彼らの製作した特殊なPMパーツが乗せられ、市場に出回っていったのだ。
運良く我々が発見したものはメンテの時に回収されていったのだが、そうではないものもある。
実稼動したパーツを回収した彼らは、定期メンテの度に、メンテにまぎれて集約して行ったのだろう。
そして、我々が確認していた幾つかのブレインコアのうち、最後の一個が回収されなかった。
そう、君が回収し損ねたブレインコアだよ。
では、それは何処に?」
局長の視線はローザに向けられたまま。
「それは、この子の頭の中だよ」
あまりに突飛も無いことだと冷静に受け止められるというが、それは本当だと今更ながらに知った。
「では、こいつはメイドイン結社ということか?」
淡々と尋ねる俺に違和感を覚えたのか、泣き止んだローザが俺の顔を見上げていた。
「YesでありNoでもある。
GRMで作られたことに変わりは無い。
君のPMであることに変わりは無い。
結社の仕組んだ状態になったとしてもだ」
「なら、高度知性体への変容はどう…」
どうやって引き起こさせる、そう言いそうになって気がついた。
「流石に判ったようだな。
その通り、PMデバイスだよ。
あまりにも内部構成が複雑すぎて現在もまだ解析中だが、PMデバイスにトリガー因子を加えたか、基本プロ
グラムをトロイの木馬で組み込んだのだろうな。
ガーディアンズ達なら、面白そうなものに興味をそそられて使うだろうと踏んでの事だろう。
そうすれば、既に大量のパーツを撒いている分、どれかが発動する。
我々が気づいて発売を遅らせなければ、実際にそうなっただろう。
…もっとも、我々の実験結果では、ブレインコアが該当しなければ問題無い事が確認されている。
だからこそ、発売に踏み切ったわけだ。
確認されていた最後の一つを回収できるものと踏んでな。
まさか連中も、検品出荷後のデバイスに不良品が発生してそれが使用されるなどという不測の事態までは考慮
してないだろうし、知性体へ覚醒するだけでなく異能体になるとはそれこそ思ってもいないだろうがね。」
―――つづく―――
局長を持ち上げた腕から力が抜ける。
「何故、と思う君の疑問にひとつの回答をあげよう。
我が社の中に、極秘だが、ある種の結社が潜伏している。
連中の目的は私もよくは知らない。
だが、PMに知性を持たせる事で混乱を引き起こそうとしていた事は事実だ。
その一環として、製造ラインに彼らの製作した特殊なPMパーツが乗せられ、市場に出回っていったのだ。
運良く我々が発見したものはメンテの時に回収されていったのだが、そうではないものもある。
実稼動したパーツを回収した彼らは、定期メンテの度に、メンテにまぎれて集約して行ったのだろう。
そして、我々が確認していた幾つかのブレインコアのうち、最後の一個が回収されなかった。
そう、君が回収し損ねたブレインコアだよ。
では、それは何処に?」
局長の視線はローザに向けられたまま。
「それは、この子の頭の中だよ」
あまりに突飛も無いことだと冷静に受け止められるというが、それは本当だと今更ながらに知った。
「では、こいつはメイドイン結社ということか?」
淡々と尋ねる俺に違和感を覚えたのか、泣き止んだローザが俺の顔を見上げていた。
「YesでありNoでもある。
GRMで作られたことに変わりは無い。
君のPMであることに変わりは無い。
結社の仕組んだ状態になったとしてもだ」
「なら、高度知性体への変容はどう…」
どうやって引き起こさせる、そう言いそうになって気がついた。
「流石に判ったようだな。
その通り、PMデバイスだよ。
あまりにも内部構成が複雑すぎて現在もまだ解析中だが、PMデバイスにトリガー因子を加えたか、基本プロ
グラムをトロイの木馬で組み込んだのだろうな。
ガーディアンズ達なら、面白そうなものに興味をそそられて使うだろうと踏んでの事だろう。
そうすれば、既に大量のパーツを撒いている分、どれかが発動する。
我々が気づいて発売を遅らせなければ、実際にそうなっただろう。
…もっとも、我々の実験結果では、ブレインコアが該当しなければ問題無い事が確認されている。
だからこそ、発売に踏み切ったわけだ。
確認されていた最後の一つを回収できるものと踏んでな。
まさか連中も、検品出荷後のデバイスに不良品が発生してそれが使用されるなどという不測の事態までは考慮
してないだろうし、知性体へ覚醒するだけでなく異能体になるとはそれこそ思ってもいないだろうがね。」
―――つづく―――
Nooooo!切り番チェックすんの忘れて上げちゃったぃ!番号変わってねぇ!
…誰か直してくれねぇかなぁ…やり方知らんからなぁ……
…誰か直してくれねぇかなぁ…やり方知らんからなぁ……
本日分『暁の中で』、第五回目の投下です。
昨日上げ足りなかった(というか上げ忘れてた)分、今日は量が多くなってしまいました。
ご勘弁のほどを。
昨日上げ足りなかった(というか上げ忘れてた)分、今日は量が多くなってしまいました。
ご勘弁のほどを。
PM達が高度知性体に変化し、PMが本来の機能から開放されたとしたら、色々な意味で間違いなく大混乱になる。
あの500年戦争が再来する可能性だってある。
少なからず、ガーディアンズはコロニーごと、一時的にしろ無力化されるだろう。
おそらく、それが本当の目的のはずだ。
しかし、何故、ローザを利用したんだ?
俺の疑念が昨日の仕事を思い出させた。
刻まれたPM
抜き取られていたブレインコア
試作品らしきPMデバイス412
そして
情報部部長がクスクス笑っている顔
あれは、俺が回収するべき物が既に無いための笑いだとしたら…
定期メンテの時間を指定した理由が、俺をPMから離す為なら…
確証は、無い。だが、勘が当たりだと告げている。
「…局長」
俺の緊迫した様子に、ただならぬ何かを察してくれたらしい。
「なんだね」
「情報部部長の事ですが、彼女がその結社と関わっている可能性はありますか?」
「公式には無い」
「では、非公式では?」
「……私が個人的に調べた範囲では、彼女の父はニューマン、母はヒューマン、共にガーディアンズにいた。
彼女が幼いうちに両親ともミッション中に死亡、彼女は父親の親戚に預けられている。
彼女の数少ない親類の口から、預けられていた親類の家で相当な迫害を受けていたことが判っている。
その後、彼女が自立してからその親類は旅行中にテロに巻き込まれて死亡している。
テロを行ったのは結社だという話だ」
「…俺の推論が正しければ、そのテロ自体、彼女から結社への依頼ということになります。
おそらく、それが最初の接触でしょう。
テロを依頼するほどに彼女を突き動かしている動機が、彼らにとって非常に便利で利用しやすい条件だったは
ずでしょうし、彼女も結社を利用できると考えたのでしょう。
双方の利害が一致して、彼女は結社の一員となった」
「その動機とは?」
俺は、今得た情報で補正しながら、ひらめいた推論を淡々と語った。
「種族差別に対する憎悪と、自分が生まれるきっかけになったガーディアンズへの恨み。
ガーディアンズを揺さぶるのに、PMは実に使いやすく効果的な手段だと判断したのでしょう。
そして、俺という内部にフリーパスで出入り出来る手駒がいる…」
あの500年戦争が再来する可能性だってある。
少なからず、ガーディアンズはコロニーごと、一時的にしろ無力化されるだろう。
おそらく、それが本当の目的のはずだ。
しかし、何故、ローザを利用したんだ?
俺の疑念が昨日の仕事を思い出させた。
刻まれたPM
抜き取られていたブレインコア
試作品らしきPMデバイス412
そして
情報部部長がクスクス笑っている顔
あれは、俺が回収するべき物が既に無いための笑いだとしたら…
定期メンテの時間を指定した理由が、俺をPMから離す為なら…
確証は、無い。だが、勘が当たりだと告げている。
「…局長」
俺の緊迫した様子に、ただならぬ何かを察してくれたらしい。
「なんだね」
「情報部部長の事ですが、彼女がその結社と関わっている可能性はありますか?」
「公式には無い」
「では、非公式では?」
「……私が個人的に調べた範囲では、彼女の父はニューマン、母はヒューマン、共にガーディアンズにいた。
彼女が幼いうちに両親ともミッション中に死亡、彼女は父親の親戚に預けられている。
彼女の数少ない親類の口から、預けられていた親類の家で相当な迫害を受けていたことが判っている。
その後、彼女が自立してからその親類は旅行中にテロに巻き込まれて死亡している。
テロを行ったのは結社だという話だ」
「…俺の推論が正しければ、そのテロ自体、彼女から結社への依頼ということになります。
おそらく、それが最初の接触でしょう。
テロを依頼するほどに彼女を突き動かしている動機が、彼らにとって非常に便利で利用しやすい条件だったは
ずでしょうし、彼女も結社を利用できると考えたのでしょう。
双方の利害が一致して、彼女は結社の一員となった」
「その動機とは?」
俺は、今得た情報で補正しながら、ひらめいた推論を淡々と語った。
「種族差別に対する憎悪と、自分が生まれるきっかけになったガーディアンズへの恨み。
ガーディアンズを揺さぶるのに、PMは実に使いやすく効果的な手段だと判断したのでしょう。
そして、俺という内部にフリーパスで出入り出来る手駒がいる…」
更に俺は語った。
俺の立場を利用して容易に俺のPMと接触できる事、仕事を利用してPMを簡単に俺から引き離せる事…
つまり、GRMにパイプを持つ俺のPMを焦点にしてパーツを秘密裏にかき集め、自ら情報操作をする事で会
社や俺の不信感を俺のPMと自分からまんまと外し、疑惑のかからない状態で完成体を作成したのではないか。
混乱をもたらすだけではなく、完成体を必要とする理由が有るがゆえに。
「…こう考えれば、あの時の不可解な笑みに納得のいく説明がつく」
――俺を興味深げに見上げながら、なにが可笑しいのかクスクス笑っていた、あの笑みに。
だが、本当にそれだけか?何か、引っかかる気がする。何かが…
トントン、トントン
古風にドアをノックする音に、全員が緊張した。
来客を写すモニタには、ニューデイズの服装に身を包んだ年若いビーストの女性がたたずんでいた。
「――入りたまえ」
研究主任が招き入れると、彼女は同盟軍形式の敬礼を行った。
「局長、情報部部長の行方が判らなくなりました。
部長は結社の連絡員との接触の後、流しの個人フライヤーに乗り込みました。
これを追跡しましたが都市部の渋滞中に目視から外れ、発信機を頼って追跡を試みましたが発信機が発見され
破壊された模様。
以上です」
「場所は?」
「旧首都西、リゾート地帯の近くです」
「局長!」
今度は、一般人用に流布されているパーツ姿の男性キャストが飛び込んできた。
「廃都西区に大規模爆発を観測、旧発電施設が消失しました!
爆発直前に、小型フライヤーが墜落していくのが同盟軍に目撃されています!」
「分かった、直ぐに調査隊を出す。定時連絡を欠かすな」
「「はっ!」」
開発局局長は、俺に向き直ると意味ありげににやりと笑った。
「どうせ事のついでだ、君に仕事を頼みたい」
「…言わなくていい。どうせ巻き込まれたんだ、とことんやらせてもらう」
「話が早くて助かる。ダルガンには、私から話をしておこう」
まるで近所の知り合いにでも話すような軽い口調で言うので、怪訝な表情になっていたのは確かなんだろう。
まるでいたずらっ子のような表情で、局長は続ける。
「子供の頃からの悪友でな」
そう言うと、ローザの頭を優しく撫で、
「お前も行くといい。パートナーマシナリーは、主人と共にあるものだ」
「…うん。ありがとう、おじs…きょくちょうさま」
「はっはっは、おじさんでいいぞ。肩書きは窮屈でいかん。なあ、ガーディアンズ」
そう言って、俺の肩をぽんと叩く。
…この若造が。
顔にも口にも出さないで、軽く頭を下げると部屋を出た。
俺の立場を利用して容易に俺のPMと接触できる事、仕事を利用してPMを簡単に俺から引き離せる事…
つまり、GRMにパイプを持つ俺のPMを焦点にしてパーツを秘密裏にかき集め、自ら情報操作をする事で会
社や俺の不信感を俺のPMと自分からまんまと外し、疑惑のかからない状態で完成体を作成したのではないか。
混乱をもたらすだけではなく、完成体を必要とする理由が有るがゆえに。
「…こう考えれば、あの時の不可解な笑みに納得のいく説明がつく」
――俺を興味深げに見上げながら、なにが可笑しいのかクスクス笑っていた、あの笑みに。
だが、本当にそれだけか?何か、引っかかる気がする。何かが…
トントン、トントン
古風にドアをノックする音に、全員が緊張した。
来客を写すモニタには、ニューデイズの服装に身を包んだ年若いビーストの女性がたたずんでいた。
「――入りたまえ」
研究主任が招き入れると、彼女は同盟軍形式の敬礼を行った。
「局長、情報部部長の行方が判らなくなりました。
部長は結社の連絡員との接触の後、流しの個人フライヤーに乗り込みました。
これを追跡しましたが都市部の渋滞中に目視から外れ、発信機を頼って追跡を試みましたが発信機が発見され
破壊された模様。
以上です」
「場所は?」
「旧首都西、リゾート地帯の近くです」
「局長!」
今度は、一般人用に流布されているパーツ姿の男性キャストが飛び込んできた。
「廃都西区に大規模爆発を観測、旧発電施設が消失しました!
爆発直前に、小型フライヤーが墜落していくのが同盟軍に目撃されています!」
「分かった、直ぐに調査隊を出す。定時連絡を欠かすな」
「「はっ!」」
開発局局長は、俺に向き直ると意味ありげににやりと笑った。
「どうせ事のついでだ、君に仕事を頼みたい」
「…言わなくていい。どうせ巻き込まれたんだ、とことんやらせてもらう」
「話が早くて助かる。ダルガンには、私から話をしておこう」
まるで近所の知り合いにでも話すような軽い口調で言うので、怪訝な表情になっていたのは確かなんだろう。
まるでいたずらっ子のような表情で、局長は続ける。
「子供の頃からの悪友でな」
そう言うと、ローザの頭を優しく撫で、
「お前も行くといい。パートナーマシナリーは、主人と共にあるものだ」
「…うん。ありがとう、おじs…きょくちょうさま」
「はっはっは、おじさんでいいぞ。肩書きは窮屈でいかん。なあ、ガーディアンズ」
そう言って、俺の肩をぽんと叩く。
…この若造が。
顔にも口にも出さないで、軽く頭を下げると部屋を出た。
その足で、パルムにあるガーディアンズの支部へ移動する。
受付には、見慣れた格好の女性が俺を待っていた。
「…認識票を確認しました。
現在、ルドルフ・Fさんに指名で依頼が来ております。
お受けになりますか?」
「もちろんだ。急いでいる、ブリーフィングは後回しでいいな?」
「問題ありません、現場に急行してください。それから…」
「私が同行します」
後ろから声をかけられ、振り返る。
そこにはルゥ(No.2795)が立っていた。
普段、俺が呼び出したときに来る躯体だ。
「詳細は聞いています。環境汚染を調査する必要もありますので、くれぐれも先走らないようにとの総裁からの伝言です」
いつもの抑揚に乏しい言葉を聞いて、瞬時に冷静なる。
「了解。打ち合わせは機上で行なおう」
「では、行きましょう」
すぐさまGフライヤーが用意され、俺達は現場へと急いだ。
受付には、見慣れた格好の女性が俺を待っていた。
「…認識票を確認しました。
現在、ルドルフ・Fさんに指名で依頼が来ております。
お受けになりますか?」
「もちろんだ。急いでいる、ブリーフィングは後回しでいいな?」
「問題ありません、現場に急行してください。それから…」
「私が同行します」
後ろから声をかけられ、振り返る。
そこにはルゥ(No.2795)が立っていた。
普段、俺が呼び出したときに来る躯体だ。
「詳細は聞いています。環境汚染を調査する必要もありますので、くれぐれも先走らないようにとの総裁からの伝言です」
いつもの抑揚に乏しい言葉を聞いて、瞬時に冷静なる。
「了解。打ち合わせは機上で行なおう」
「では、行きましょう」
すぐさまGフライヤーが用意され、俺達は現場へと急いだ。
―――フライヤー機内―――
「じゃあ、シャトルは墜落じゃあなく、砲撃されたってことか」
「はい」
操縦桿を握りながら、ルゥはそっけなく答えた。
「墜落した爆発現場の規模から、シャトル搭乗者の生存率は―」
「1%以下、だろうな」
「その通りです。
墜落場所はエネルギー生成プラントの中心部です。
移動するには、地下のメンテナンス区画を通り抜けるしかありません。
直前の衛星写真から、大型マシナリーの機影が現場付近で確認されています。
機体はアガーナ・デガーナのバリエーションの一つです。
超長射程高射砲と長距離連装ミサイル、対地掃射用マシンガンを複数装備した、局地戦闘タイプである可能性が87%」
「…じゃあ、どうやって近づく?」
俺が目標付近のマップを呼び出すと、そこに、距離にして1500mほどの赤い線が表示される。
「砲撃の使用できない旧市街地を突破します。幸い、最短コース上に徒歩で移動可能な陸路が残されています。
ただし、イルミナスの妨害が入る可能性が65%あります」
「イルミナスだと?」
「あなたが先ほどから結社と呼ぶ存在です。
かつて『黄昏の一族』を生み出した首脳者達の影響を最も色濃く残す組織でもあります」
ははは、と、自虐的な笑いが出る。
「俺の周りには、今でも過去の亡霊がやってくるのか?」
「そのようです。
今回のターゲットである女性もあなたと同じ『黄昏の一族』ですから」
「…なっ、馬鹿な!あいつはどう見ても…」
食って掛かろうとする俺を無視して、人物レポートがすっと差し出された。
「経歴詐称はよくある話ですが、種族を偽るのは容易ではありません。
外見はフォトン・ミラージュによる偽装でごまかせますが、遺伝情報まではそう簡単にいきません。
ですが彼女の場合、両親から受け継がれてる遺伝子構成の影響で、検査機械からはどちらの種族としても認識
されてしまっています」
丹念に経歴を見ていくと、まだ24歳のヒューマンの女性となっていた。
名前はリゼリア・ローズ・フォリス。オリジナルの外見はヒューマン。白い肌で紫色の髪に琥珀色の瞳。
紫色の髪に琥珀色の瞳。それは『黄昏の一族』共通の外見的特長だ。
大まかな経歴はこうだ。
Gコロニー生まれ。
両親はガーディアンズ。
両親と死別後にニューデイズの親戚に引き取られる。
成績優秀で特待生として15歳で医科大学を卒業。
医師としての研修中にローグスに拉致。
三年の空白の後、再び医師として研修を行い病院に着任。
わずか半年でGRM傘下の病理研究所に転職、更に三ヶ月で主任に昇進。
翌月、所長に就任からさして日をおかずに解任、情報部に引き抜かれている。
情報部部長に就任したのは2年前。
「それから」
俺が読み終わるのと同時にルゥは話を続ける。
「彼女の寿命は推定23歳とされています」
寿命を知る為にテロメア計測を行うのは、いまや普通の事だ。
病院の健康診断の項目にも含まれ、先天異常の早期発見や自分の身の振り方を決める指針として、当たり前の
ように成人前には必ず行われる。
家庭用の測定器が体温計と同じように並べられ、同じくらい売れていく。それだけ生活に浸透しているのだ。
「テロメア測定誤差なんて、よくある話だろ」
ルゥは微かに首を振り、
「測定誤差最大年齢が23歳です。つまり、彼女の肉体は既に死んでいるも同然です。
話は変わりますが、通常、両親が異種族の場合における遺伝子の種族分化の確率は50%、つまり、男女に分
化するのと全く同じです」
「ニューマンとビーストの子供なら、必ずどちらかにしかならない、そういう事だな?」
「その通りです。
ところが彼女の場合、両方の遺伝子特性が発現するという、きわめて異常な状態で誕生しました。
それが、彼女の寿命を削る結果を招いたのです。
外見はヒューマンのままですが、高い精神力などはニューマンの、環境にあわせた柔軟性はヒューマンのそれ
をそのまま色濃く受け継いでいます。
専門医の見解では、おそらく先天的な遺伝要因によるハイブリッド種族への変異ではないか、とのことです」
「先天的遺伝要因…」
「総帥は、『黄昏の一族』が持つナノマシンの影響があるのだろう、と推測していますが、今現在の詳細は不明
です。推測の域を超える情報は有りません」
彼女の母親のプロフィールを出す。
ごくありふれた、ごく普通の女性。きれいな金色の髪に鮮やかな緑の瞳…
ずきり、と頭が痛む。
俺の遺伝子提供ソースとなった一族の第一世代。
当時、<串刺し公>の二つ名で呼ばれていた槍の名手、俺達第二世代の母の一人として選ばれた女性によく似ている。
俺のPMの名前は彼女の名前をもらってつけたものだ。
俺も含め、大勢いた『彼女の子ら』と、よく一緒に遊んでくれた。戦闘訓練もさんざんしてくれた。
今となっては、古い昔話でしかないが。
確か、第一世代は際立った特徴が与えられなかったはずだ。それに、彼女は普通に子供が居たと聞いている。
その子供は特に秀でた所もなく、普通のヒューマンとして一生を過ごしたはずだ。
その子孫か、あいつは。
ずきり、と頭が痛む。
なんだ、この頭痛は…
「パパッ!!」
さっきまで後ろの席で静かにしていたローザが突然、ルゥの操作している操縦桿に飛びついて思い切り倒した。
俺が読み終わるのと同時にルゥは話を続ける。
「彼女の寿命は推定23歳とされています」
寿命を知る為にテロメア計測を行うのは、いまや普通の事だ。
病院の健康診断の項目にも含まれ、先天異常の早期発見や自分の身の振り方を決める指針として、当たり前の
ように成人前には必ず行われる。
家庭用の測定器が体温計と同じように並べられ、同じくらい売れていく。それだけ生活に浸透しているのだ。
「テロメア測定誤差なんて、よくある話だろ」
ルゥは微かに首を振り、
「測定誤差最大年齢が23歳です。つまり、彼女の肉体は既に死んでいるも同然です。
話は変わりますが、通常、両親が異種族の場合における遺伝子の種族分化の確率は50%、つまり、男女に分
化するのと全く同じです」
「ニューマンとビーストの子供なら、必ずどちらかにしかならない、そういう事だな?」
「その通りです。
ところが彼女の場合、両方の遺伝子特性が発現するという、きわめて異常な状態で誕生しました。
それが、彼女の寿命を削る結果を招いたのです。
外見はヒューマンのままですが、高い精神力などはニューマンの、環境にあわせた柔軟性はヒューマンのそれ
をそのまま色濃く受け継いでいます。
専門医の見解では、おそらく先天的な遺伝要因によるハイブリッド種族への変異ではないか、とのことです」
「先天的遺伝要因…」
「総帥は、『黄昏の一族』が持つナノマシンの影響があるのだろう、と推測していますが、今現在の詳細は不明
です。推測の域を超える情報は有りません」
彼女の母親のプロフィールを出す。
ごくありふれた、ごく普通の女性。きれいな金色の髪に鮮やかな緑の瞳…
ずきり、と頭が痛む。
俺の遺伝子提供ソースとなった一族の第一世代。
当時、<串刺し公>の二つ名で呼ばれていた槍の名手、俺達第二世代の母の一人として選ばれた女性によく似ている。
俺のPMの名前は彼女の名前をもらってつけたものだ。
俺も含め、大勢いた『彼女の子ら』と、よく一緒に遊んでくれた。戦闘訓練もさんざんしてくれた。
今となっては、古い昔話でしかないが。
確か、第一世代は際立った特徴が与えられなかったはずだ。それに、彼女は普通に子供が居たと聞いている。
その子供は特に秀でた所もなく、普通のヒューマンとして一生を過ごしたはずだ。
その子孫か、あいつは。
ずきり、と頭が痛む。
なんだ、この頭痛は…
「パパッ!!」
さっきまで後ろの席で静かにしていたローザが突然、ルゥの操作している操縦桿に飛びついて思い切り倒した。
「な、お前!」
錐揉みしながら機体が右にそれると、フライヤーに衝撃が伝わってきた。
「砲撃です。距離6800m」
機体を立て直しながら、冷静にルゥが対応する。
ずきり、と頭が痛む。
「パパ、またくる!」
「I have control!」
すかさず操縦優先権をかっぱらい、機体を下に押し込む。
直後、機体の上空で爆発音、衝撃波と破片が機体を叩く。
けたたましい警告音が鳴り響く中、リアクター内に設置されている俺専用の記憶バックアップシステムから、
警告と共に過去の記憶と詳細データがリロードされてきた。
この記憶バックアップシステムは、ナノマシンネットワークを利用して、俺の脳からあふれ出た記憶の保存と再生を行う。
500年以上の記憶を、脳みそだけで蓄えてなんておけるはずも無い。
「…精神感応兵器とは、やってくれる!」
100年ぶり位だと、おおさっぱに計算する。
「ルゥ、お前じゃ回避行動は無理だ!突入ポイントを指示してくれ!」
「分かりました―」
ずきり、と頭が痛む。
この頭痛は、精神感応兵器が使われたときにナノマシンネットワークが過剰反応し、その刺激が頭痛として感
じられるという、俺の持病だ。
記憶が転写されるまで忘れていた。
瞬間、気が緩む。
「あぶない!」
ローザの声に我に返ったが、間に合わない!
直感的にそう判断したが、機体は予想直撃点よりもわずかにポイントがずれ、砲撃をかわしきっていた。
「パパ、わたしがやる」
ローザがいつの間にか隣のパイロットシートに座っているルゥの膝の上にちょこんと座り、操縦桿を握っている。
「あい はぶ こんとろーる!」と、ローザ。
「くっ…You have control!」
操縦権を渡すと、どっと冷や汗が噴出す。
「…この子があなたを『パパ』と呼ぶのはいささか疑問ですが、それはさておき」
ローザの操作にあわせて推力コントロールをしながら、この状況下で冷静にツっ込むルゥ。
「私の知る限り、精神感応兵器に超長距離遠隔兵器は存在しません」
中に人間が乗っているとは思えない回避機動を取りつつ、目標ポイントへGフライヤーが猛然と加速する。
耐GシートでキャンセルしきれないGに耐えながら、俺が答えてやる。
「この、砲撃は、感応装置、を、照準用、の子機につか、ってるんだ!
そして!
ロー、ザ、は、何故かその波動を感知している!」
不意に砲撃が止む。
相手の砲撃の最低射程より手前に割り込んだからだ。
記憶の中から、この手の敵が使う次の戦闘パターンを引っ張り出す。
「次は弾道型ミサイルだ!ルート変更!水面すれすれまで降下、音速でぶっちぎれ!」
「はは~い!」
錐揉みしながら機体が右にそれると、フライヤーに衝撃が伝わってきた。
「砲撃です。距離6800m」
機体を立て直しながら、冷静にルゥが対応する。
ずきり、と頭が痛む。
「パパ、またくる!」
「I have control!」
すかさず操縦優先権をかっぱらい、機体を下に押し込む。
直後、機体の上空で爆発音、衝撃波と破片が機体を叩く。
けたたましい警告音が鳴り響く中、リアクター内に設置されている俺専用の記憶バックアップシステムから、
警告と共に過去の記憶と詳細データがリロードされてきた。
この記憶バックアップシステムは、ナノマシンネットワークを利用して、俺の脳からあふれ出た記憶の保存と再生を行う。
500年以上の記憶を、脳みそだけで蓄えてなんておけるはずも無い。
「…精神感応兵器とは、やってくれる!」
100年ぶり位だと、おおさっぱに計算する。
「ルゥ、お前じゃ回避行動は無理だ!突入ポイントを指示してくれ!」
「分かりました―」
ずきり、と頭が痛む。
この頭痛は、精神感応兵器が使われたときにナノマシンネットワークが過剰反応し、その刺激が頭痛として感
じられるという、俺の持病だ。
記憶が転写されるまで忘れていた。
瞬間、気が緩む。
「あぶない!」
ローザの声に我に返ったが、間に合わない!
直感的にそう判断したが、機体は予想直撃点よりもわずかにポイントがずれ、砲撃をかわしきっていた。
「パパ、わたしがやる」
ローザがいつの間にか隣のパイロットシートに座っているルゥの膝の上にちょこんと座り、操縦桿を握っている。
「あい はぶ こんとろーる!」と、ローザ。
「くっ…You have control!」
操縦権を渡すと、どっと冷や汗が噴出す。
「…この子があなたを『パパ』と呼ぶのはいささか疑問ですが、それはさておき」
ローザの操作にあわせて推力コントロールをしながら、この状況下で冷静にツっ込むルゥ。
「私の知る限り、精神感応兵器に超長距離遠隔兵器は存在しません」
中に人間が乗っているとは思えない回避機動を取りつつ、目標ポイントへGフライヤーが猛然と加速する。
耐GシートでキャンセルしきれないGに耐えながら、俺が答えてやる。
「この、砲撃は、感応装置、を、照準用、の子機につか、ってるんだ!
そして!
ロー、ザ、は、何故かその波動を感知している!」
不意に砲撃が止む。
相手の砲撃の最低射程より手前に割り込んだからだ。
記憶の中から、この手の敵が使う次の戦闘パターンを引っ張り出す。
「次は弾道型ミサイルだ!ルート変更!水面すれすれまで降下、音速でぶっちぎれ!」
「はは~い!」
水と廃墟の世界の中に急降下で飛び込む機体。
コンクリートジャングルの中をすり抜けながら、水平飛行で水面すれすれを音速でかっ飛んでいく。
Gフライヤーのソニックブームが水面を湾曲させ、水面に設置されていた機雷を巻き込みながら後方に盛大な
水柱を吹き上げる。
再び頭痛、今度の数はさっきまでの比じゃない。
「「来る!!」」
巻き上げた水と遅れて爆発する機雷、林立する廃墟にかく乱されたミサイルが、後方に12本の火と水の柱を作る。
再び頭痛がして、その瞬間、イメージが割り込む。
十代前半くらいの少女。
フ、と頬をゆがめて俺は笑った。
『うるせぇぞ!!しょんべん臭い小娘がぁ!!!』
心の内だけで叫ぶと、一瞬だけ敵の感応装置のネットワークに割り込み、それを少女に叩きつけるイメージで送り込む。
直後、ミサイルの軌道がおかしくなり、明後日の方向に飛んでいって爆発した。
「…パパ、こわい」
聴覚システムを押さえてローザがぽつりと言った。
おそらく俺のネットワークにリンクしているのだろうが、苦痛は感じない。
「ローザ、操縦桿を離さないように」
素早く操縦桿に手を伸ばし、ルゥが機体を安定させる。
「目標、沈黙しました。現状報告をお願いします」
「…『テレパス』を逆手にとって、向こう側の感応装置で俺の精神圧を増幅して、相手の精神に直接打撃を送り込んだ。
久々だったんで手加減してられなかったから、運が良ければ気絶、悪ければ脳が損傷して廃人かな」
はは、と気の抜けた声で小さく笑う。
右の頬に生暖かい、ぬるりとした感触と、ぽたり、ぽたりと音を立てる鉄の匂いがする何か。
敵に負荷をかけた反動で、眼球を支えている筋肉の毛細血管が切れたらしい。
既に大まかな出血は止まっているが、血の涙を流すその姿は異常な光景だ。
「レスタ!」
右目の痛みがすぅっと引いていく。
「パパ、もういっかいやる?」
今の回復はローザのした事だ。
俺は軽い驚きを感じながら、首を横に振る。
「ありがとう、助かる」
垂れた血を服の袖で拭くと、袖にべっとりとこびりつく。
袖についた澱んだ血には、何か細かい物が何度も光を乱反射させ、すぐに消えた。
俺の血液中のナノマシンだ。
そう、俺の奇跡的『欠陥』はこれのせいだ。
じゃあ、ローザの場合は?
ナノマシンネットワークと同じ機能の精神感応能力。
それだけだろうか。
いや、それはあくまで二次的なものだろう。キャストにだって、中には使える奴も居る。
では、一体何がこいつの奇跡的『欠陥』なんだ?
「ルドルフ、着陸します。戦闘準備を」
予定と違う地点にフライヤーが降下する。
アガーナ・デガーナが沈黙した今、そこは目標に一番近い降下地点に変わっていた。
―――つづく―――
コンクリートジャングルの中をすり抜けながら、水平飛行で水面すれすれを音速でかっ飛んでいく。
Gフライヤーのソニックブームが水面を湾曲させ、水面に設置されていた機雷を巻き込みながら後方に盛大な
水柱を吹き上げる。
再び頭痛、今度の数はさっきまでの比じゃない。
「「来る!!」」
巻き上げた水と遅れて爆発する機雷、林立する廃墟にかく乱されたミサイルが、後方に12本の火と水の柱を作る。
再び頭痛がして、その瞬間、イメージが割り込む。
十代前半くらいの少女。
フ、と頬をゆがめて俺は笑った。
『うるせぇぞ!!しょんべん臭い小娘がぁ!!!』
心の内だけで叫ぶと、一瞬だけ敵の感応装置のネットワークに割り込み、それを少女に叩きつけるイメージで送り込む。
直後、ミサイルの軌道がおかしくなり、明後日の方向に飛んでいって爆発した。
「…パパ、こわい」
聴覚システムを押さえてローザがぽつりと言った。
おそらく俺のネットワークにリンクしているのだろうが、苦痛は感じない。
「ローザ、操縦桿を離さないように」
素早く操縦桿に手を伸ばし、ルゥが機体を安定させる。
「目標、沈黙しました。現状報告をお願いします」
「…『テレパス』を逆手にとって、向こう側の感応装置で俺の精神圧を増幅して、相手の精神に直接打撃を送り込んだ。
久々だったんで手加減してられなかったから、運が良ければ気絶、悪ければ脳が損傷して廃人かな」
はは、と気の抜けた声で小さく笑う。
右の頬に生暖かい、ぬるりとした感触と、ぽたり、ぽたりと音を立てる鉄の匂いがする何か。
敵に負荷をかけた反動で、眼球を支えている筋肉の毛細血管が切れたらしい。
既に大まかな出血は止まっているが、血の涙を流すその姿は異常な光景だ。
「レスタ!」
右目の痛みがすぅっと引いていく。
「パパ、もういっかいやる?」
今の回復はローザのした事だ。
俺は軽い驚きを感じながら、首を横に振る。
「ありがとう、助かる」
垂れた血を服の袖で拭くと、袖にべっとりとこびりつく。
袖についた澱んだ血には、何か細かい物が何度も光を乱反射させ、すぐに消えた。
俺の血液中のナノマシンだ。
そう、俺の奇跡的『欠陥』はこれのせいだ。
じゃあ、ローザの場合は?
ナノマシンネットワークと同じ機能の精神感応能力。
それだけだろうか。
いや、それはあくまで二次的なものだろう。キャストにだって、中には使える奴も居る。
では、一体何がこいつの奇跡的『欠陥』なんだ?
「ルドルフ、着陸します。戦闘準備を」
予定と違う地点にフライヤーが降下する。
アガーナ・デガーナが沈黙した今、そこは目標に一番近い降下地点に変わっていた。
―――つづく―――
単語の表記が間違っている箇所を発見しました。
>>218の12行目
×:けたたましい警告音が鳴り響く中、リアクター内に設置されている
○:けたたましい警告音が鳴り響く中、トランサー内に設置されている
お目汚しとなってしまった事をお詫びいたします。
>>218の12行目
×:けたたましい警告音が鳴り響く中、リアクター内に設置されている
○:けたたましい警告音が鳴り響く中、トランサー内に設置されている
お目汚しとなってしまった事をお詫びいたします。
長編物 GJ!!
続きwktk!!!
読んでてふと、思ったのだが、ニュータイプもこんなふうに感じるのだろうか。
続きwktk!!!
読んでてふと、思ったのだが、ニュータイプもこんなふうに感じるのだろうか。
確かにこれはニュータイプって感じだなぁw
ともあれGJ、フライヤーでのシーンは中々読んでて面白かったぜ
しかし後天的に変化する異能体か、中々・・・
ちなみに>>211の
>Nooooo!切り番チェックすんの忘れて上げちゃったぃ!番号変わってねぇ!
>…誰か直してくれねぇかなぁ…やり方知らんからなぁ……
まあまとめサイトとかでなら直せると思うが諦めるしかないw
ともあれGJ、フライヤーでのシーンは中々読んでて面白かったぜ
しかし後天的に変化する異能体か、中々・・・
ちなみに>>211の
>Nooooo!切り番チェックすんの忘れて上げちゃったぃ!番号変わってねぇ!
>…誰か直してくれねぇかなぁ…やり方知らんからなぁ……
まあまとめサイトとかでなら直せると思うが諦めるしかないw
ども、パパと412作者です。
>>221、>>222
楽しんで読んでいただけているようで、作者としてはうれしい限りです。
言われてみれば、ニュータイプみたいですね。書いている時は気にもしませんでしたが。
まぁ、俺も初代ガンダム世代の端くれですから、影響は受けているんでしょうがねぇ…。
とりあえず、切り番の修正は諦めました。もうしょうがないし。
さて、本日分『暁の中で』、第六回目の投下です。
投下前の加筆修正分で、8レス分という、予定より長い1話となってしまいました。
ですので、今回は前後編に更に分けてあります。
尻切れトンボに感じるかも知れませんが、ご容赦下さいませ。
>>221、>>222
楽しんで読んでいただけているようで、作者としてはうれしい限りです。
言われてみれば、ニュータイプみたいですね。書いている時は気にもしませんでしたが。
まぁ、俺も初代ガンダム世代の端くれですから、影響は受けているんでしょうがねぇ…。
とりあえず、切り番の修正は諦めました。もうしょうがないし。
さて、本日分『暁の中で』、第六回目の投下です。
投下前の加筆修正分で、8レス分という、予定より長い1話となってしまいました。
ですので、今回は前後編に更に分けてあります。
尻切れトンボに感じるかも知れませんが、ご容赦下さいませ。
俺達の乗ったフライヤーは、アガーナ・デガーナの陣取っていた広大なプラットホームに着陸する。
大して離れていない場所に、アガーナ・デガーナが横転したまま沈黙していた。
機外に出て、敵の機体を確認。
追加ユニットが背面に設置された、120mm速射型高射砲、12連装長距離ミサイルを主装備としたアガーナ
・デガーナ対高高度・対空戦仕様であるのが見て取れる。
似たような大型マシナリーとは過去に体験済みだが、明らかにそれらよりは小ぶりな機体だ。
装甲ハッチが開いたコクピットの近くに、特殊なパイロットスーツを身に纏った小柄な人影が倒れ手いる。
この距離では、状態を確認できるはずも無い。
「後方支援をお願いします」
ルゥがそう言って慎重に人影に近づいていき、状況を確認する。
意識が無いらしく、手早く検査し拘束すると、こちらに振り返る。
「複数箇所の打撲は負っていますが、生命活動自体は問題ありません。
脈拍、呼吸、体温共に正常値誤差範囲です」
そう言って手際よく手当てを始める。
「脳波に若干の乱れが生じていますが、意識障害は確認できません」
近寄ると、10歳くらいの少女が手足を拘束され、横たわっていた。
「本来ならこのままフライヤーに拘束して帰還時に回収するべきなのですが、イルミナスの手の者が放置してお
くはずはありません。
ですが、このまま連れ歩く事も生還率を下げるだけであって得策ではありません」
「…証人として、連れ帰る必要がある、か」
どちらにしろ、このまま放って置くわけにもいかない。
「まずは覚醒させるべきでしょう」
「…それ以外にないか」
「有りません」
にべもなく返答が帰ってくる。
「起こすだけなら薬物によって覚醒する事も可能ですが、困難です。また、脳の活動が不安定な状態での薬物に
よる覚醒は危険を伴います。現状のまま覚醒させると意識障害が残って証言を取る時に不利な事態を招く確率が
71%あります。
安全且つ確実に起こすには精神面からの喚起が必要です」
こちらを振り返り、表情の乏しいいつもの顔に何かをうかがう様子を感じる。
「本来、あなたのプライベートに関わる事ですが、緊急事態なのでお許しください。
…『黄昏の一族』の中には、ナノマシンネットワークの共鳴を利用して、相手の意識…つまり脳波を操作する
手段があるという情報があります。あなたがそれを編み出したとか」
怯えの様な表情をはっきりと浮かべ、ルゥは続ける。
「彼女を起こして同行させるのが現在の最善の策です。
……………………………………お願いできますか?」
俺はため息をついた。
「…しょうがない、緊急事態だしな。こいつもネットワークを持っているようだから可能だろう。
ただ、成功するかはやってみないと分からないぞ?」
ついついいつもの癖で、ローザをかまう時の様にルゥの頭を軽くポンポンたたく。
「あんまり、その事を他人に言いふらすなよ?」
「…はい、記憶しました」
俺が叩いた帽子を両手で押さえ、ルゥはほっとした表情を浮かべる。
「さて、それじゃ周囲の警戒を頼む」
返事を聞くよりも先に座り込んで意識を集中させると、周囲から音が消えた。
大して離れていない場所に、アガーナ・デガーナが横転したまま沈黙していた。
機外に出て、敵の機体を確認。
追加ユニットが背面に設置された、120mm速射型高射砲、12連装長距離ミサイルを主装備としたアガーナ
・デガーナ対高高度・対空戦仕様であるのが見て取れる。
似たような大型マシナリーとは過去に体験済みだが、明らかにそれらよりは小ぶりな機体だ。
装甲ハッチが開いたコクピットの近くに、特殊なパイロットスーツを身に纏った小柄な人影が倒れ手いる。
この距離では、状態を確認できるはずも無い。
「後方支援をお願いします」
ルゥがそう言って慎重に人影に近づいていき、状況を確認する。
意識が無いらしく、手早く検査し拘束すると、こちらに振り返る。
「複数箇所の打撲は負っていますが、生命活動自体は問題ありません。
脈拍、呼吸、体温共に正常値誤差範囲です」
そう言って手際よく手当てを始める。
「脳波に若干の乱れが生じていますが、意識障害は確認できません」
近寄ると、10歳くらいの少女が手足を拘束され、横たわっていた。
「本来ならこのままフライヤーに拘束して帰還時に回収するべきなのですが、イルミナスの手の者が放置してお
くはずはありません。
ですが、このまま連れ歩く事も生還率を下げるだけであって得策ではありません」
「…証人として、連れ帰る必要がある、か」
どちらにしろ、このまま放って置くわけにもいかない。
「まずは覚醒させるべきでしょう」
「…それ以外にないか」
「有りません」
にべもなく返答が帰ってくる。
「起こすだけなら薬物によって覚醒する事も可能ですが、困難です。また、脳の活動が不安定な状態での薬物に
よる覚醒は危険を伴います。現状のまま覚醒させると意識障害が残って証言を取る時に不利な事態を招く確率が
71%あります。
安全且つ確実に起こすには精神面からの喚起が必要です」
こちらを振り返り、表情の乏しいいつもの顔に何かをうかがう様子を感じる。
「本来、あなたのプライベートに関わる事ですが、緊急事態なのでお許しください。
…『黄昏の一族』の中には、ナノマシンネットワークの共鳴を利用して、相手の意識…つまり脳波を操作する
手段があるという情報があります。あなたがそれを編み出したとか」
怯えの様な表情をはっきりと浮かべ、ルゥは続ける。
「彼女を起こして同行させるのが現在の最善の策です。
……………………………………お願いできますか?」
俺はため息をついた。
「…しょうがない、緊急事態だしな。こいつもネットワークを持っているようだから可能だろう。
ただ、成功するかはやってみないと分からないぞ?」
ついついいつもの癖で、ローザをかまう時の様にルゥの頭を軽くポンポンたたく。
「あんまり、その事を他人に言いふらすなよ?」
「…はい、記憶しました」
俺が叩いた帽子を両手で押さえ、ルゥはほっとした表情を浮かべる。
「さて、それじゃ周囲の警戒を頼む」
返事を聞くよりも先に座り込んで意識を集中させると、周囲から音が消えた。
真っ暗な世界がイメージとして喚起される。
相手の波長に合わせる為、意識の波をゆっくりとリラックスした状態に持っていく。
己の意識を水面に模倣したイメージで呼び起こすと、真っ暗な世界に波打つ水面が現れる。
波の広がるイメージを更に広げ、別な波と重なる場所を見つけた。
『捕らえた』
波をたどり、中心点を目指す。
雫が水面を叩くように、何度も上下する中心点を探りだす。
『…いい状態じゃ無いな』
普通の意識の波長に重なって、ある種の独特なリズムで波が発生している。
洗脳を受けた人間特有の、しかもかなり性質の悪いタイプの波形だ。
ちょっとでも失敗すれば俺も廃人になりかねない。
『ちときついが、やるしかない』
己の波を、相手の洗脳以外の波に合わせる。
自分の意識がかなりぐらつくが、こらえる。
そのまま、波を共鳴させて意識をリラックスさせ、波を小さくしていく。
洗脳の影響を受けた波だけが、際立つ。
洗脳の波に全く同じ周期で逆の波を作り、波をあわせる。
最初は少しぶれるが、きれいに重なると徐々に小さくなり、すっと消えた。
最後に仕上げとして、意識を覚醒するまで波の力を高めてやる。
力強い感じで波が動きだすと、俺の意識がはじき出されるのを感じる。
逆らわずに波に乗り、そのまま相手の意識から遠ざかった。
「…ふぅ」
意識を外界に向けると、座り込んだ自分が大量の汗をかいている事に気がついた。
「パパ、だいじょうぶ?」
小さなハンカチで、俺の顔の汗をぬぐっているローザ。
「大丈夫だ」
立ち上がろうとして、少しふらつく。
だいぶ消耗したようだ。
酒でもあれば良かったが、あいにくミッション中に持ち歩く習慣が無い。
「ご苦労様です、ルドルフ」
ルゥが少女を抱えて近寄ってきた。
「各種パラメータ、覚醒レベルに到達。血圧上昇、α波、β波安定。
彼女の脳波は正常です。まもなく覚醒しますが、この場を移動しましょう。
あと3分22秒で廃都監視衛星がここの観測範囲に到達します。私たちを確認されるのは問題があります」
「了解。メンテナンスルートへ移動すれば問題ないか?」
「いえ、管理施設へ向かいます。そこを通れば上空から確認される事はありません」
少女を抱えなおすルゥ。
その動きが覚醒を促したのか、ルゥに抱えられていた少女が目を開けた。
「…ここ、どこ?」
瓦礫混じりのプラットホームに下ろされる少女。
「廃都西部地区第6区画発電施設のプラットホームです。目が覚めましたね。
あなたの姓名、種族、年齢、所属組織をお答えください」
手早く拘束を解かれ、ルゥに詰問される少女。
彼女にすれば、目が覚めると見知らぬヒューマンとキャスト達にいきなり囲まれた状況は危険に感じる事だろう。
「おい、ルゥ。まずは自分から名乗るべきだ」
俺が助け舟を出そうとそう切り出すと、憮然として切り返す。
「彼女は敵である可能性が98%です。安易にこちらの情報を与えるべきではありません」
思わず溜息をつく。時々融通が利かなくなるのが『このルゥ』の癖だ。
「最低限は教えてやれ。ローグス相手だって、取調べの場合はこちらの身分を明かすんだからな」
少女は辺りをゆっくりと見渡す。
俺と視線が合うと、一瞬硬直する。
「こわい、おじさん…」
俺の脇でウンウンと頷くローザ。俺はその頭を軽く小突く。
「いたっ!あ、で、でもね、やさしいよ?」
取り繕うように、腕をパタパタ振って少女の前に出て行く。
「…うん、大丈夫。もう、怖くない」
俺は目線を少女と同じ高さに合わせる。子供目線に落とさないと、どうにも会話がしにくい。
「俺はガーディアンズ機動警備部所属、ルドルフ・F。
彼女は同じくガーディアンズのルゥ、で、このPMが俺のパートナーのローザだ」
「…おうち、どこ?なまえは?パパとママのいるところ、わかる?」
ローザの問いに大きく首を振って、少女はぽつりぽつり答える。
「…お家、モトゥブ。リリアナ。ビースト。11歳。パパ、知らない…」
垂れ耳で髪の毛と色が同じなので気がつかなかったが、リリアナと名乗った少女はビーストだった。
別段、小ビーストではないらしい。
やや薄い金髪と浅黒い肌、青みの強い緑の瞳。
「…ショゾクソシキって良く判んないけど…ママは『海の牙』って呼ばれてる…」
わずかな間が空くと、ルゥが口を開く。
「…検索完了。
『海の牙』、通称タスクはモトゥブにあるローグスの中でも変り種の、女性だけの集団です。
戦闘力、組織力共に上位のローグスですが、ここ5年ほどなりを潜めています。
噂では、上位幹部が離脱したために組織の運営を一時中断しているという話があります」
落胆の表情こそ出さなかったが、流石に困った。
ルゥには言わなかったが、足手まといになりそうなら、この少女をフライヤーに残していこうと思っていたのだ。
しかし、それでは問題がありすぎだ。
ローグス首領の母親と言うからには、子供とはいえ相応の操縦技術を身につけていると思っていいだろう。
そうなれば、フライヤーを盗まれる可能性がある。
それに、ここに残す事は再び連れ去られる危険性が残っている。
「連れて行きましょう」
「…分かった。ルゥがそう言うのなら。応援は期待できないんだろ?」
ルゥは珍しく躊躇った後、
「はい、応援はありません」
とだけ言った。
彼女が来た時点で分かっていた。
本来ならば沈黙を守る宣誓書類に署名をするべき類いの事件なのだ。
今回の彼女は、いわば情報端末の役割でここに来ているのだから。
「…行くぞ」
そう言って、施設へと足を向けた。
「おい、ルゥ。まずは自分から名乗るべきだ」
俺が助け舟を出そうとそう切り出すと、憮然として切り返す。
「彼女は敵である可能性が98%です。安易にこちらの情報を与えるべきではありません」
思わず溜息をつく。時々融通が利かなくなるのが『このルゥ』の癖だ。
「最低限は教えてやれ。ローグス相手だって、取調べの場合はこちらの身分を明かすんだからな」
少女は辺りをゆっくりと見渡す。
俺と視線が合うと、一瞬硬直する。
「こわい、おじさん…」
俺の脇でウンウンと頷くローザ。俺はその頭を軽く小突く。
「いたっ!あ、で、でもね、やさしいよ?」
取り繕うように、腕をパタパタ振って少女の前に出て行く。
「…うん、大丈夫。もう、怖くない」
俺は目線を少女と同じ高さに合わせる。子供目線に落とさないと、どうにも会話がしにくい。
「俺はガーディアンズ機動警備部所属、ルドルフ・F。
彼女は同じくガーディアンズのルゥ、で、このPMが俺のパートナーのローザだ」
「…おうち、どこ?なまえは?パパとママのいるところ、わかる?」
ローザの問いに大きく首を振って、少女はぽつりぽつり答える。
「…お家、モトゥブ。リリアナ。ビースト。11歳。パパ、知らない…」
垂れ耳で髪の毛と色が同じなので気がつかなかったが、リリアナと名乗った少女はビーストだった。
別段、小ビーストではないらしい。
やや薄い金髪と浅黒い肌、青みの強い緑の瞳。
「…ショゾクソシキって良く判んないけど…ママは『海の牙』って呼ばれてる…」
わずかな間が空くと、ルゥが口を開く。
「…検索完了。
『海の牙』、通称タスクはモトゥブにあるローグスの中でも変り種の、女性だけの集団です。
戦闘力、組織力共に上位のローグスですが、ここ5年ほどなりを潜めています。
噂では、上位幹部が離脱したために組織の運営を一時中断しているという話があります」
落胆の表情こそ出さなかったが、流石に困った。
ルゥには言わなかったが、足手まといになりそうなら、この少女をフライヤーに残していこうと思っていたのだ。
しかし、それでは問題がありすぎだ。
ローグス首領の母親と言うからには、子供とはいえ相応の操縦技術を身につけていると思っていいだろう。
そうなれば、フライヤーを盗まれる可能性がある。
それに、ここに残す事は再び連れ去られる危険性が残っている。
「連れて行きましょう」
「…分かった。ルゥがそう言うのなら。応援は期待できないんだろ?」
ルゥは珍しく躊躇った後、
「はい、応援はありません」
とだけ言った。
彼女が来た時点で分かっていた。
本来ならば沈黙を守る宣誓書類に署名をするべき類いの事件なのだ。
今回の彼女は、いわば情報端末の役割でここに来ているのだから。
「…行くぞ」
そう言って、施設へと足を向けた。
フライヤーのフォトン・ミラージュ装置を起動した後、俺の後を追って小走りに駆け出すルゥ。
その前を大股に歩きながら、俺は疑問を口にする。
「しかし、なんだってローグス首領の子供が、アレに乗ってたんだ?」
と、アガーナ・デガーナを親指で指さす俺。
「不明です」
「…あのね…」
小走りに移動しながら、リリアナが話に割り込む。
「…おねーちゃんに会いに行く途中にね、誘拐されたの…おねーちゃんには会えたけど、あたしを誘拐したのお
ねーちゃんだったの…おねーちゃん、あたしを利用するって言ってた…」
「「…おねーちゃん?」」
異口同音に聞き返す。
「ちっちゃい頃遊んでくれた、リゼリアおねーちゃん。パルムでお仕事してるって…遊びにおいでって…」
「…あ」
そういうことか。
呼び寄せて、この子の能力を利用した訳か。
しかし、その目的がさっぱり判らない。
彼女――リゼリアは一体何の目的で動いているんだ?
気のせいかもしれないが、イルミナスのヒューマン原理主義の為にしては、それ以外の部分が見え隠れしてい
るように俺は感じる…
…そういえば、何故俺がこの事件にここまでかかわってる?
よくよく考えれば、今回の騒ぎの発端は俺が彼女に呼び出されてから始まっている。
俺がここまでかかわるように仕向けられているとしたら…
俺が彼女の目当てということになるぞ?
本当か?自意識過剰じゃないか?俺。
例えそうだとして、一体、俺の何を望んでいる?彼女に有益そうな物は…
「ここから先は危険です。戦闘準備を」
ルゥのその言葉に、思考が中断され現実に引き戻される。
扉も無い、黒々とした建物の入り口だけがそこにあった。
「了解。
ローザ、ここを抜ける間のリリアナの警護は任せるぞ、いいな?」
「は~い!」
元気のいい返事をすると、リリアナの手を取るローザ。
「きをつけてね。ここからはあぶないから、あたしからはなれないでね?」
「…うん…」
ローザの手をぎゅっと握り返す少女。
そして、全員がゆっくりと建物に踏み込んだ。
―――つづく―――
その前を大股に歩きながら、俺は疑問を口にする。
「しかし、なんだってローグス首領の子供が、アレに乗ってたんだ?」
と、アガーナ・デガーナを親指で指さす俺。
「不明です」
「…あのね…」
小走りに移動しながら、リリアナが話に割り込む。
「…おねーちゃんに会いに行く途中にね、誘拐されたの…おねーちゃんには会えたけど、あたしを誘拐したのお
ねーちゃんだったの…おねーちゃん、あたしを利用するって言ってた…」
「「…おねーちゃん?」」
異口同音に聞き返す。
「ちっちゃい頃遊んでくれた、リゼリアおねーちゃん。パルムでお仕事してるって…遊びにおいでって…」
「…あ」
そういうことか。
呼び寄せて、この子の能力を利用した訳か。
しかし、その目的がさっぱり判らない。
彼女――リゼリアは一体何の目的で動いているんだ?
気のせいかもしれないが、イルミナスのヒューマン原理主義の為にしては、それ以外の部分が見え隠れしてい
るように俺は感じる…
…そういえば、何故俺がこの事件にここまでかかわってる?
よくよく考えれば、今回の騒ぎの発端は俺が彼女に呼び出されてから始まっている。
俺がここまでかかわるように仕向けられているとしたら…
俺が彼女の目当てということになるぞ?
本当か?自意識過剰じゃないか?俺。
例えそうだとして、一体、俺の何を望んでいる?彼女に有益そうな物は…
「ここから先は危険です。戦闘準備を」
ルゥのその言葉に、思考が中断され現実に引き戻される。
扉も無い、黒々とした建物の入り口だけがそこにあった。
「了解。
ローザ、ここを抜ける間のリリアナの警護は任せるぞ、いいな?」
「は~い!」
元気のいい返事をすると、リリアナの手を取るローザ。
「きをつけてね。ここからはあぶないから、あたしからはなれないでね?」
「…うん…」
ローザの手をぎゅっと握り返す少女。
そして、全員がゆっくりと建物に踏み込んだ。
―――つづく―――
上げたそばからまた切り番ミスった…………モウイヤ orz……シクシク
ルウとルゥは別人という理解でおk?