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近代三国志外伝Ⅱ
夢のまた夢(1)


自分の振るった戟で人が倒れて死んでいく。
目の前が真っ赤に染まっていく。
そこには地獄が広がっていた。


「…布、呂布。どうしたの?」

呂布は優しい声で目を覚ました。

呂布「お母さん…。」

呂布の母
「嫌な夢でも見たの?うなされてたけど。」

呂布「うん…、戦場で沢山の人が死んでた…。」
母「…、忘れなさい。そんな夢。」


呂布の一族は旅商人を営んでいた。
西洋から漢へ、漢から西洋へ様々なものを輸送し、売り渡る。


母「あなた、呂布の事なんだけど…。」

父「うん?どうした?」
母「やっぱり呂布のためには一つの場所に留まった方がいいと思うの。まだ友達も出来てないし…。」

父「そうだな、いつまでもお前に付きっきりとはいかんからな。」

父「よし、今度、家に帰ったらしばらくゆっくりしようか。」


夕焼け空が広がっている。

呂布「ねぇ、お母さん、そのネックレスって何なの?」

母「これ?これは十字架よ。これで神様に祈りを捧げるの。」

呂布の母は美しい女だった。目が優しく、そして澄み切った空のように青い。

母「神様は素晴らしい方なのよ、祈りを捧げれば私達を守って下さる。幸せにして下さるのよ。」
呂布「じゃあ、僕も祈るよ、お母さんが幸せになりますように。」

母「ふふ、ありがとう。」

呂布は母親思いだった。父親が仕事で取引をする間、いつもいろんな事を教えてくれた。

母「じゃあ、この十字架を呂布にあげる。いつも祈りを忘れちゃダメよ。」

呂布「うん!わかったよ!」

その夜はいつもと違っていた。
純粋な呂布少年の人生を大きく変えた。


「大変だ!親方!夜襲だ!」

父「何ぃ!皆、焦らず陣形を整えよ!」

呂布「お母さん、こ、怖いよ!」

母「大丈夫よ、あなたは隠れてなさい。」

呂布「お母さんはっ!?」

母「大丈夫よ、私達には神様がついてるもの!!」


「ぐわぁ!だめだ!逃げろ~!」



血の匂いがする。

闇が世界を支配していく。

血の匂いがする。

目覚めると朝だった。
即席のゲルは、無残な形になっている。


呂布「お母さん…どこ…?」


焦げた瓦礫の下に呂布は見てしまった…。

母の変わり果てた姿を。

呂布「お母さん…、何で…。」

呂布は知らぬ間に涙を流していた。
濃度の濃い涙。

呂布は胸にぶら下がった十字架を握りしめた。
何度も投げつけようとして思い留まる。


呂布「何故…神様…。祈ったじゃないか!僕らを守ってくれって…。」

呂布「お母さん…、うわぁぁぁ!!」






そして呂布は鬼神となった。

「…布殿、呂布殿。どうされました?」

呂布「……陳宮…カ。」
陳宮「嫌な夢ですか?うなされておりましたが。」

呂布「アア、全テヲ失ッタ夢ヲ…。」

陳宮「忘れなされ、今は目の前に曹操軍が迫っておりますゆえ。」


カヒ城に冬がやってくる。



近代三国志外伝Ⅱ
夢のまた夢

終了