第四十二話
「冬を呼ぶ風」
ー洛陽郊外の花園ー
董卓の命令で洛陽周辺の賊らを討伐している呂布にも前のように安らげる時間が与えられていた。
いつものように目を閉じ、首に下げた十字架を握りしめ祈る。
しかし、その日は少し違っていた。
「あなたも、花が好きなの?」
年にすると17、8の少女であった。
今日は傍に張遼がいない。
呂布はアタフタしながらカタコトの言葉を必死で操った。
呂布「オ、俺…ガ、怖クナイ…ノカ?」
誰もが怖がり、近づかない事は呂布が一番良く知っていた。
少女「私は目が見えないの。でも、そのおかげでその人の“気”みたいなものが見えるの。」
呂布「“気”…?」
少女「あなたは優しい“気”だったから思わず話しかけちゃった。」
少女は切なく笑った。
風が冬を連れてくる。
呂布「君ノ名前ハ…?」
少女「私の名前はチョウ蝉。」
呂布の心に何かが満たされていった。
最終更新:2006年11月23日 21:59