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第四十話

『歌姫の話』


ネオンサインが五月蠅いくらいに輝く夜の街を、汰譜王と紫音が二人手をつないで歩いていた。

紫音「ねぇ?汰譜王さん、今日は何処に行くの?」

汰譜王「とりあえず、行く所があるから…まずはそこに行ってから、ご飯を食べて…その後は僕の家にでも行こうか」

紫音「うん♪…汰譜王さん、アタシ…今日は帰りたくないな…」

汰譜王「もちろん、最初から帰すつもりもないよ、紫音君♪」

紫音「本当に?やったぁ♪」

そんな他愛もないやり取りをしながら歩いていると、汰譜王は、ある店の前で歩みを止めた。

紫音「なに?この店?…-Soul Singer-…??」

汰譜王「ライブハウスさ、今日はここに様があったんだ、丁度良い時間だね♪さぁ、入ろうか」

そう言って二人は店内へと入って行った。
店内に入ると一組のバンドが今まさに演奏を始める所だった。
ギターとドラムの音が鳴り響き、次第にベースの音も聞こえてきた。
そして、後ろを向いていた黒く長い髪の女性がマイクの前にスタンバイした。
その調った顔立ちは同性の紫音が見ても見とれてしまう程だった。
そして、彼女の歌声が聞こえだした。
その声は鳥肌が立つ程に透明で、美しかった。


紫音がその声に聞き惚れているうちに、曲が終わった、そして、ヴォーカルの女性が喋り始める。

「こんばんわ、MI(エムアイ)です」

MCのコーナーになったところで汰譜王が紫音に話しかけた。

汰譜王「綺麗な歌声だろう?」

紫音「うん…」

紫音は呆然と答えた。

汰譜王「次は彼女を仲間にしなくちゃいけない」

紫音が「えっ?」と聞くと汰譜王は続けた。

汰譜王「彼女の名前は『美優』、ウチの学校の軽音部の部長さ」

紫音「じゃあ、今日はそのために?」

汰譜王「そのつもり…だけど、彼女の説得は難しいよ~」

汰譜王は苦笑い混じりに言った。
紫音が「どうして?」と訪ねると、汰譜王は少し間をおいて答える。

汰譜王「彼女は…美優は僕や酔逸の幼馴染みでね…そして、Dの元恋人なんだよ…そして、訳あって彼女は僕を恨んでる」

紫音「訳って?」

汰譜王「それは、家で話すよ…とりあえず、今日は家に帰ろう…」

汰譜王と紫音は出入り口へと向かった。

美優「待ちなさいよ!王君!!またアタシから逃げるつもり!!?」

マイク越しに、美優の透明な声がライブハウスに響いた。
それと同時にライブハウス中の人の視線と、美優の鋭く真っ直ぐなまなざしが汰譜王と紫音に向けられた。

                 fin。