第三十八話
『ムラサキイロ』
夕暮れも過ぎ、空が紫色に染まっていた。
納得学園の屋上で、相馬麗はそんな空を見上げていた。
麗「これから…どうしたらいいんだろ…」
麗は解らなかった。自分が取るべき行動が。
麗「僕は、どうやって君に近付けばいい?」
麗は誰もいない空に問い掛けた…その空の向こうに、かつての盟友を見据えて。
一秒一秒が、酷く長く感じられた。
クシュン!
麗は驚いた、この場所に自分以外に誰もいないと思っていたからだ。
しかし、さっきの音は確かに自分以外の誰かが発したクシャミだ。
麗は、恐る恐る音の方に目を向けた。
そこには、一人の美しい女生徒が黙々と絵を書いていた。
麗は何故か、やけにその女生徒が気になった。
麗「こんな時間に…何を描いてるの?」
麗の問い掛けに女生徒は答えなかった。
仕方が無いので、「見ていい?」と尋ねると女生徒は「いいよ」と簡潔に答えた。
その絵には一人の男が描かれていた。
麗「てか、こんな時間に…」
女生徒「描きかけだったから」
麗が尋ねる前に女生徒は答えてきた。
女生徒「この絵を描いてる途中、彼に呼び出されたんだけど…行っても誰もいなくて…どうせだから描ききっちゃおうと思って」
絵の中の少年を指差しながら呟く様に言った。
麗「そんな酷い奴の絵描いてるんだ?どうして?」
麗の問い掛けに対する女生徒の答えは明快だった。
女生徒「愛してるから」
麗「…そんな奴のどこが…」
女生徒「信じてるもん、今日こんな事があった分、明日はいっぱいアタシを愛してくれるって。」
麗「…」
女生徒「たとえ、どんな事があったって、信じて、その人の事を考えられる、それがパートナーでしょ?」
麗「君…凄いね」
そう呟いた麗は、自然と笑顔になっていた。
麗「君、名前は?」
女生徒「紫音」
麗「!!?…君が…イヤ、ありがとう、紫音!」
紫音「???…どういたしまして??」
麗は屋上を後にした。
麗『そうだよ、あの娘の言う通りだよな…。
しかし…あんな娘が汰譜王陣営にはいるのか…強敵だね。
やっぱりハクには僕が必要だ!!』
空には夜が訪れ、
麗の心に明かりが灯った。
fin。
最終更新:2007年02月28日 16:09