孔明、月英伝(9)
『亮~!そろそろ行くぞ~!』
孔明は話を遮り立ち上がった。
『ごめん、月英さん。私はそろそろいかなければ…』
『うん、じゃあ私も…、…あ~、せっかく手伝って貰ったお礼に何か…』
月英は服や袋を捜した。服の間から何かが転がった。
孔明はそれを拾いあげた。
『これは…?。』
鉄で出来た小さな物を孔明は見つめていた。
『それはボルトだよ。』
『ボルト?』
月英は袋からもう一つ部品を取り出した。
『このナットと組み合わせると…』
月英はナットをボルトにはめてクルクルと回す。
『…おお!素晴らしい。何かを固定する物ですね。』
『そうだよ~。』
『私にくださいませんか?』
『ほぇ?こんなのでいいの?』
『はい。』
『じゃあ、あげるね。』『有難う。』
『じゃあ、私も行くね。』
そう言って月英は歩き始めた。
孔明は何かを考え月英を呼び止める。
『月英さん!』
『ん?』
孔明は貰ったボルトからナットを外すと月英に渡した。
『あの、これはお返しします。』
『どうして?』
『あの…いつかまた…貴女と…出会えるその時に…あの時の私だという証拠に…。…ボルトはお守りとして大切にします。』
『ん、解ったよ。』
『では。お元気で。』
孔明は伯父の方へ走っていった。
『亮ちん…か…』
月英もまた歩き始める。
2人の初めての出会いであった。
最終更新:2006年12月13日 09:07