第七十八話
「水面の月」
王允宅
王允「チョウセン、ここに座りなさい。」
チョウセン「は、はい、お義父様…。」
チョウセンは盲目の、バイオリン奏者であった。それを王允が目をかけ、養女にした。
王允「お前は、飛将軍とねんごろのようだな。」
チョウセン「……、あの人は世間のいう程、悪い人ではありません。ただ…、不器用なだけ…。」
王允「わかっておる、それを咎めるわけではない。お前にはある事を頼みたい。」
王允「……、飛将軍殿に董卓を討ってもらいたい。」
空気が凍りつくのが盲目のチョウセンには敏感に感じ取れる。
チョウセン「あの方に謀反を勧めよ、と仰るのですか?」
王允「それしか、この国を救う策はない。」
チョウセン「……できません。」
予想外の答えに王允は声を荒げた。
王允「盲目のお前を拾ってやったワシの言う事を聞けないのかっ!!この恩知らずめがっ!」
チョウセンは黙り込んだ。
チョウセン「……でも…。」
王允「…ゴホン、ま、まあ、よく考える事だな…。何が一番良い方法か。」
チョウセンは何も言わずに外に出た。
水面に写る月が寂しげに揺れていた。
最終更新:2006年12月13日 08:55