けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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mioritsu

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「‥んー」
「お。起きたかー?」
私はキッチンに現れた一人の幼女に声を掛けた。
「‥おきたー」
幼女は寝ぼけ眼で、キッチンで鍋を振るう私に答えた。
「じゃ、ママも起こしてきな」
私が声を掛けると
「わかったー」
幼女は、寝室へ消えた。
「ママー。あさだよぉー」
寝室から、幼女の声が聞こえてきた。
「んぁ‥」
寝起きの声が、微かに聞こえた。
朝食を作る私の元へ、幼女と一人の女性が歩み寄ってきた。
「‥おはよ‥」
「ママ、おきたー」
目を擦りながら現れたのは、私の愛妻、澪。
幼女は、私と澪の愛娘、理緒。
「おはよー。顔洗ってきな?」
「んん‥」
私の言葉に、澪は寝ぼけ眼のままで洗面所に向かった。
「‥りつー」
理緒が、足元から声を掛けた。
「んー?」
私が調理しつつ返事をすると
「テレビ、つける?」
理緒はお決まりの台詞を述べた。
「あぁ、おねがい。危ないから、あっちいってな」
私も、お決まりの台詞を返した。
「わかったー」
理緒は、素直にリビングへ向かった。
程無くして、澪が洗面所からキッチンを経由してリビングへ向かう。
そのタイミングに合わせ、私は朝食の調理を済ませる。

リビングのテーブルを囲み

『いただきまーす!!』
「いただきます」

我が家の一日は、始まる。



人類とは恐ろしいモノで。
「同性同士の婚姻関係」までも成立させていた。
更には、体外受精とか無しに「同性間での子供の誕生」をも実現させた。

神のシナリオからの盛大な脱走だな、と思ったけど。

実際、成立しちゃってるから、仕方無い。

私達夫婦(って言うのか?よくわかんないけど)も、その恩恵を受けて子供を授かったのだった。



可愛い可愛い愛娘は、今年で四歳になる。
「ママ、いってらっしゃーい!」
可愛い愛娘、理緒が手を振ると
「ふふっ。いってきます」

ちゅっ

澪は理緒に行って来ます、のキスをした。
「えへへー」
理緒はいつものように照れた。
「今日は、遅くなるのか?」
「いや、定時で帰れると思う」
「わかった」

ちゅっ

私は澪に行ってらっしゃい、のキスをした。
パンツスーツ姿の澪は手を振って笑顔を残し、出勤した。
私はキッチンへ戻り、朝御飯の後片付けに入った。
「早く保育園の準備しろよー」
テレビ、テレビ、とリビングに走る理緒に声を掛けた。
「はぁーい」
生返事気味に声が返って来た。
ちゃちゃっと後片付けを済ませ、理緒を保育園へ送る。
私も澪も、私立がどうとかの拘りは無かったので、近所の保育園に決めた。
通い始めはビービー泣いていた理緒も、もうすっかり慣れ
「りつー!いってらっしゃーい!」
保育園の柵越しに声を掛けて、私を見送るようになった。
子供は、一日ずつ成長するから、面白い。
私は、手を振り保育園を後にする。


一旦帰宅して家事を済ませ、近所の洋食屋のバイトに向かう。
当初は専業主婦も悪くないかなー、なんて思ったが。
やっぱり澪も稼いでるんだし、なんかしなきゃなって思い、バイトを始めた。
料理が得意な私にとって、洋食屋での厨房のバイトは楽しかった。店の皆ともすぐ仲良くなったし。
調理しながら「今夜も美味しい晩御飯作るぞー!!」とか息巻いたり。
ディナータイムの前のアイドルタイムで、私は勤務終了。
保育園に理緒を迎えに行くのだ。
「りっちゃーん、お疲れ様ー」
保育園に着くと、保母さんの一人が出迎えた。
「りつー!かえるぞー!」
理緒が元気良く門から飛び出した。
「待て!急に飛び出すな!!」
私は理緒の首根っこを掴んだ。
「きゃっ!!」
誰かにそっくりな声で理緒は急停止した。
「あ、そうそう」
保母さんに声を掛けられた。
私は理緒を解放して手をしっかり握りつつ
「ん?」
保母さんの方に向き直った。
「理緒ちゃん、おやつの時間にアイス食べ過ぎちゃって‥」
お腹、こわしちゃうかも。と、眉をハの字にしながら保母さんは笑った。
「そうですか…」
呆れつつ、私は理緒を睨んだ。
「理緒‥?」
「つーん」
理緒は誰かにそっくりなカオでそっぽを向いた。
「‥まぁ、今の時間で大丈夫だから、何ともないと思うけど。一応、頭に入れといてほしいなって」
「あぁ。ありがと」
私は保母さんに礼を言い
「じゃ、また明日!」
保育園を後にした。
「りおちゃんじゃーねー!」
居残っている子供たちが理緒に声を掛けた。
「じゃーねー!!」
手を振って応える理緒。
この調子なら、大丈夫かな…と思いつつ。私は理緒の手を引きマンションに帰った。



「さーて、と‥」
私はキッチンで今夜の晩御飯の献立を思案していた。
すると

~♪

携帯にメールが届いた。澪からの、仕事が定時で終了した旨のメールだった。
よーし、と私は腕まくりをした。
「‥」
‥が、すぐ様子がおかしい事に気付いた。
リビングの、様子だ。
「…」
いつもなら理緒がレコーダーに撮っといたプリキュアやらをガン見してる時間なのだが。
‥リビングが、静かだった。
「‥理緒ー?」
私がリビングに向かうと
「‥んー?」
理緒は、ソファで絵本を読んでいた。それはそれは珍しい事だった。
‥私は、察した。
「理緒」
「なに?」
私はソファに歩み寄り
「‥おなか、痛いんだろ?」
理緒の頭を撫でた。
「…」
理緒は、無言で答えた。何も言わない時は、図星の時だ。
「‥まったく」
私は理緒の隣に座った。
理緒はすぐに私の膝に寝転がり、身を縮めた。
「‥りつ」
「ん?」
「おなかいたい…」
ちいさな、ちいさな声で白状した。おやつの時間のアイスの食べ過ぎが、今響いたらしい。
「ちょっと寝てな‥」
私は、理緒のおなかをさすった。
「いたいのいたいのー、とんでけー」
「…」
理緒は、無言で痛みに耐えているようだった。
一応、理緒の様子を澪にメールした。
メールを送信してから、晩御飯どうしよう、と思い出した。
…とりあえず、苦しむ理緒を寝かしつける事に専念した。やっぱ心配だし。
私と澪の髪を足して2で割ったような焦茶色の髪を撫でた。
見下ろす幼い横顔は、嫁の幼い頃にそっくりだった。

すー‥ すー‥

やがて、理緒の寝息が聞こえてきた。
「‥やれやれ」
私は理緒にタオルケットを掛け、晩御飯の準備を急ごうとした。


すると
「ただいまっ!!」
澪が勢い良く帰って来た。まぁ、心配になって急いで来たんだろう。
「しっ。さっき寝かしつけた所だから」
私は人差し指を立て、澪を制した。
「‥大丈夫、なのか?」
「‥多分。痛がってはいたけど、そのまま寝たから‥」
私は状況を説明して
「‥でさ、澪」
「ん?」
「晩御飯、作ってないんだわ…」
ポリポリ、と頭を掻いた。
「あぁ、そっか‥」
澪は、理緒に手を掛けてて晩御飯どころじゃなかった事を、すぐに理解した。
「‥出前、取ろっか?」
澪の提案に
「そうだな。そうすっか」
私は、たまにはイイか、と乗った。
「いつものそば屋さんのそば、食べたいな」
最近食べてないし、と澪は、希望を言いつつ理緒の元へ向かった。
「オッケー」
私は、冷蔵庫にマグネットで貼ってあったメニューを手に、リビングに向かった。
「‥気持ち良さそうに、寝てるな‥」
澪が、理緒の頭を撫でていた。
「あぁ‥」
私は、理緒を澪と挟む形で座り、テーブルにメニューを広げた。
「私、鴨せいろ食べたい」
澪はメニューを眺めて、即決した。
「りょーかい。じゃ、私はとろろ大盛りにするかな」
「大盛り?」
「うん。どーせ、食べてる途中で理緒、起きるし」
「そっか」
「じゃ、電話してくるわ」
「うん」
私は席を外し出前を注文して、メニューを冷蔵庫に戻し、リビングに戻った。
「‥理緒、まだ寝てる?」
「あぁ」
澪は、また理緒の頭を撫でた。
理緒は気持ち良さそうに、身体を捩った。
「ふふっ‥」
澪は、とても優しい笑顔を理緒に向けた。
愛娘を愛でる、母親の顔だった。
「理緒も、大きくなったよなー」
私は理緒の寝顔を眺めながら座った。
「ホントに‥ね」
澪はまた理緒の頭を撫でて、片方の手で私の手を握った。
「あぁ‥」
私は手を握って応えた。
私と、澪と、娘の理緒。家族、三人。
好き好きーって言ってばっかの高校時代もあったし。
二人の関係を現実的に考えた大学時代もあった。

…まさか、家族になって。子供も授かるなんて、思っても見なかった。

私も澪も、おそらく同じ事を考え、同じ事を思い。理緒の寝顔を眺めていた。



間もなく出前が届き。
案の定、食べてる最中に理緒が目覚め、私のとろろそばを一緒に食べて。
澪の優しい笑顔に見守られながら、どっちの量が多いだ少ないだでケンカになり。
食べ終わって、母娘三人でお風呂に入って。
浴室でまーた私と理緒がケンカになり。澪は優しい笑顔で見守って。
私と理緒は、ケンカ疲れで布団に入るなり、速攻で寝に入った。

…が、私はなんだかんだで大人なので。ぼんやりしながらも、起きていた。

布団には私、理緒、澪の順で川の字に並んで寝ていた。
「律‥」
「ん‥?」
澪は、左手を伸ばして私の右手を握り
「次は、理緒が起きてる時に一緒に頼もうな」
そば、と言って笑った。
「‥そうだな!」
私は、寝ぼけ眼で精一杯応えた。
「‥じゃ、また明日」
澪は私の今にも寝そうな顔を見て、笑った。
「あぁ…」
私は澪の手の温もりに包まれながら、落ちた。


我が家の一日が、終わる。


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