自動販売機のボタンに手を伸ばそうとした律の手を、澪が掴んだ。
律の訝るような視線を受けて、澪は言葉を放つ。
「そのコーラ、350ミリで120円だろ?
こっちの方がお得だ」
澪は空いている方の手で、見本商品陳列の一角を指差した。
そこには500ミリ缶のコーラが130円で売られている。
「そんなに飲めないよ。350ミリでさえキツイのに。
本来250ミリくらいが丁度いいんだけど」
「うん、だろうね。実際にこの前、残してたもんな」
「それ分かってんなら、500なんて勧めんなよ」
律の声は呆れ気味だった。
「私だってさ、350ですら多いと思ってる。
250で丁度良いと思ってるよ」
「なら何で……ってああっ」
律は澪の考えに思いが至ったらしく、小さく叫んでから続けた。
「二人で500飲むって事……ね。
まぁ家帰って飲むんだし、コップもあるし、ね」
「コップ?要らないだろ?」
律の表情が硬直したが、澪は構わず500ミリ缶コーラのボタンを押した。
勢い良く缶が落とされ、取り出し口から大きな音が響いてくる。
その音に衝き動かされるように、律の顔は動きを取り戻して言葉を放つ。
「やー?間接キス?
ま、いいかもね。コップ洗うの面倒だし、ね」
律の顔は、羞恥を表すように赤みが差している。
「歯切れが悪いな。もしかして、嫌なの?」
挑発するような笑みを浮かべて、澪は問いかけた。
「嫌じゃないよっ、嫌じゃない。ちょっと……恥ずかしくは思うけど」
「ああ、だから歯切れが悪かったのか。
意識してもらっているのなら、良い事だ」
澪はコーラ缶を取り出すと、早い歩調で歩き始めた。
律がすぐ後に小走りで追いついて来た。
「いきなり行くなよー」
不平を零す律に対し、澪は悪びれる様子を見せずに言う。
「早く味わいたいからさ」
「コーラを?」
「律を」
「おまっ」
律は再び頬を染めると、羞恥に悶えるように俯いた。
澪はその耳元に口を寄せ、囁きかける。
「500もあるから、たっぷり味わえるな」
「……っ」
絶句を浮かべる律の頬に、澪は缶を押し当てた。
「冷たっ。何するんだよ、みぃおー」
「いや、真っ赤だから冷やそうかと思って」
「か、からかうなっ」
羞恥に喘ぐ律に笑みを向けてから、澪は更に歩く歩調を速めた。
靡く黒髪のすぐ後ろに、律も付いてきていた。
律の訝るような視線を受けて、澪は言葉を放つ。
「そのコーラ、350ミリで120円だろ?
こっちの方がお得だ」
澪は空いている方の手で、見本商品陳列の一角を指差した。
そこには500ミリ缶のコーラが130円で売られている。
「そんなに飲めないよ。350ミリでさえキツイのに。
本来250ミリくらいが丁度いいんだけど」
「うん、だろうね。実際にこの前、残してたもんな」
「それ分かってんなら、500なんて勧めんなよ」
律の声は呆れ気味だった。
「私だってさ、350ですら多いと思ってる。
250で丁度良いと思ってるよ」
「なら何で……ってああっ」
律は澪の考えに思いが至ったらしく、小さく叫んでから続けた。
「二人で500飲むって事……ね。
まぁ家帰って飲むんだし、コップもあるし、ね」
「コップ?要らないだろ?」
律の表情が硬直したが、澪は構わず500ミリ缶コーラのボタンを押した。
勢い良く缶が落とされ、取り出し口から大きな音が響いてくる。
その音に衝き動かされるように、律の顔は動きを取り戻して言葉を放つ。
「やー?間接キス?
ま、いいかもね。コップ洗うの面倒だし、ね」
律の顔は、羞恥を表すように赤みが差している。
「歯切れが悪いな。もしかして、嫌なの?」
挑発するような笑みを浮かべて、澪は問いかけた。
「嫌じゃないよっ、嫌じゃない。ちょっと……恥ずかしくは思うけど」
「ああ、だから歯切れが悪かったのか。
意識してもらっているのなら、良い事だ」
澪はコーラ缶を取り出すと、早い歩調で歩き始めた。
律がすぐ後に小走りで追いついて来た。
「いきなり行くなよー」
不平を零す律に対し、澪は悪びれる様子を見せずに言う。
「早く味わいたいからさ」
「コーラを?」
「律を」
「おまっ」
律は再び頬を染めると、羞恥に悶えるように俯いた。
澪はその耳元に口を寄せ、囁きかける。
「500もあるから、たっぷり味わえるな」
「……っ」
絶句を浮かべる律の頬に、澪は缶を押し当てた。
「冷たっ。何するんだよ、みぃおー」
「いや、真っ赤だから冷やそうかと思って」
「か、からかうなっ」
羞恥に喘ぐ律に笑みを向けてから、澪は更に歩く歩調を速めた。
靡く黒髪のすぐ後ろに、律も付いてきていた。
部屋に着きコーラを開ける段階になると、律が言を翻した。
「や、やっぱりさ。コップ用意しようよ。
間接キスが恥ずかしいっていうか……その……」
「やっぱり、間接キスは嫌なのか」
「あ、いや。嫌ってワケじゃ無くってさ。心の準備というか」
「嫌ならいいっ」
澪は煮え切らない態度を見せる律の言葉を遮って、言葉を続けた。
「遠慮しなくて良いからさ。
間接キスが嫌なら、私にも考えがあるから」
澪はプルタブを起こして缶を開けると、口腔にコーラを流し込んだ。
「澪……私、嫌とかそんなんじゃ無いのに……」
寂しそうな顔を浮かべて呟く律の両頬を、両手で抑え込む。
「えっ?何する心算」
律の口から、驚愕と疑問を表すような声が放たれる。
その口を、自らの口で塞いで声を止めた。
澪は自らの口腔にあるコーラを、ゆっくりと律の口腔へと流し込んでゆく。
律は初めのうちこそ驚愕を顔に浮かべていたが、すぐに表情を蕩けさせた。
澪はコーラを飲ませ終わるまで、
潤んだ瞳を虚ろに泳がせる律の蕩けた表情を堪能する。
飲ませ終わると、澪は口を離して問いかける。
「どんな味だった?」
「甘くて、ぬるかった」
律は表情を上気させながら、放心したような声で言葉を紡いだ。
「ふふ、それは良かった。ところで、大胆だよな、律は」
澪は律の下顎に中指を添えて、言葉を続ける。
「口移しで飲ませて欲しいから、間接キスが嫌だって示したんだろ?
間接じゃ嫌だなんて、律の我侭は本当に可愛いね」
律は俯いて、小さな声で呟く。
「別に……そういう意味じゃなかったし」
対して澪は、意地の悪い声で問う。
「じゃ、もうこれ以上は飲ませてあげなくていい?
意地張ってると、コップ本当に持ってきちゃうよ?」
律が慌てて言葉を返してきた。
「だめっ。その……もっと、飲ませて……欲しい」
「や、やっぱりさ。コップ用意しようよ。
間接キスが恥ずかしいっていうか……その……」
「やっぱり、間接キスは嫌なのか」
「あ、いや。嫌ってワケじゃ無くってさ。心の準備というか」
「嫌ならいいっ」
澪は煮え切らない態度を見せる律の言葉を遮って、言葉を続けた。
「遠慮しなくて良いからさ。
間接キスが嫌なら、私にも考えがあるから」
澪はプルタブを起こして缶を開けると、口腔にコーラを流し込んだ。
「澪……私、嫌とかそんなんじゃ無いのに……」
寂しそうな顔を浮かべて呟く律の両頬を、両手で抑え込む。
「えっ?何する心算」
律の口から、驚愕と疑問を表すような声が放たれる。
その口を、自らの口で塞いで声を止めた。
澪は自らの口腔にあるコーラを、ゆっくりと律の口腔へと流し込んでゆく。
律は初めのうちこそ驚愕を顔に浮かべていたが、すぐに表情を蕩けさせた。
澪はコーラを飲ませ終わるまで、
潤んだ瞳を虚ろに泳がせる律の蕩けた表情を堪能する。
飲ませ終わると、澪は口を離して問いかける。
「どんな味だった?」
「甘くて、ぬるかった」
律は表情を上気させながら、放心したような声で言葉を紡いだ。
「ふふ、それは良かった。ところで、大胆だよな、律は」
澪は律の下顎に中指を添えて、言葉を続ける。
「口移しで飲ませて欲しいから、間接キスが嫌だって示したんだろ?
間接じゃ嫌だなんて、律の我侭は本当に可愛いね」
律は俯いて、小さな声で呟く。
「別に……そういう意味じゃなかったし」
対して澪は、意地の悪い声で問う。
「じゃ、もうこれ以上は飲ませてあげなくていい?
意地張ってると、コップ本当に持ってきちゃうよ?」
律が慌てて言葉を返してきた。
「だめっ。その……もっと、飲ませて……欲しい」
澪は柔らかい笑みを浮かべて、諭すように語りかける。
「甘えんぼだね、律は。
甘えんぼな律に教えてあげる。もう一度欲しい時は、お代わり、って言うんだ。
ほら、言ってみな?おねだりしてみな?」
律は頬を一層深く染め──そして耳まで赤色を伝播させ──
喘ぐような声で言い放った。
「お、おかわりっ」
「良くできました。ご褒美に、たっぷり飲ませてあげる」
澪は言葉どおりに、大量のコーラを口に含んだ。
そして再び、律の唇と自分の唇を重ね合わせる。
ゆっくりと少量ずつ、口中へとコーラを送り込む。
律がそのペースに慣れた頃合を見計らって、
澪は大量のコーラを素早く送り込んだ。
怒涛の量を唐突に受けた律は、堪らず咽て口元をコーラで汚した。
「あーあ、零しちゃった。律の口元、ベトベトだぞ?」
律の咳が止まったタイミングで、澪は言葉を放つ。
「みっ、澪がいけないんだっ。いきなり、いっぱい送ってくるから……」
律の返す抗議の声を、澪は素直に受け入れて言う。
「私のせいか?
なら、責任取って綺麗にしてやるよ」
澪は律の口元へ自身の唇を寄せ、粘つくコーラの跡に舌を這わせてゆく。
澪自身、口にコーラを含んでいたので舌が粘ついている。
それ故に効果は薄いが、律の口から抗議の声は放たれなかった。
代わりに、律の口からは艶やかな吐息が漏れ出て、澪の顔にかかる。
それは生暖かく甘い、吐息だった。
一頻り舐め回してから、ハンカチを取り出して口元を拭いてやった。
「ほら、綺麗になったぞ」
「ありがと……。その、澪。もうあんな荒っぽい事したらヤダからね。
もっと、優しく飲ませて欲しいし」
澪はコーラの缶を手に取って、言葉を放つ。
「分かってるよ。
まだ、かなり残ってるな。たっぷり味わえるぞ」
「澪も……たっぷり味わえるよね、私を。
今度は優しく堪能して、ね」
「ああ。500ミリを買って良かったよ」
「うんっ、そうだよな。
あと……後で、私も澪に……」
律は言い難そうに語尾を濁したが、澪は意を察して引き継ぐ。
「ああ、後で私にも飲ませてもらうよ。楽しみにしてる」
首肯しながら笑みを浮かべる律を見て、澪は改めて思った。
本当に──500ミリを買って良かった──と。
「甘えんぼだね、律は。
甘えんぼな律に教えてあげる。もう一度欲しい時は、お代わり、って言うんだ。
ほら、言ってみな?おねだりしてみな?」
律は頬を一層深く染め──そして耳まで赤色を伝播させ──
喘ぐような声で言い放った。
「お、おかわりっ」
「良くできました。ご褒美に、たっぷり飲ませてあげる」
澪は言葉どおりに、大量のコーラを口に含んだ。
そして再び、律の唇と自分の唇を重ね合わせる。
ゆっくりと少量ずつ、口中へとコーラを送り込む。
律がそのペースに慣れた頃合を見計らって、
澪は大量のコーラを素早く送り込んだ。
怒涛の量を唐突に受けた律は、堪らず咽て口元をコーラで汚した。
「あーあ、零しちゃった。律の口元、ベトベトだぞ?」
律の咳が止まったタイミングで、澪は言葉を放つ。
「みっ、澪がいけないんだっ。いきなり、いっぱい送ってくるから……」
律の返す抗議の声を、澪は素直に受け入れて言う。
「私のせいか?
なら、責任取って綺麗にしてやるよ」
澪は律の口元へ自身の唇を寄せ、粘つくコーラの跡に舌を這わせてゆく。
澪自身、口にコーラを含んでいたので舌が粘ついている。
それ故に効果は薄いが、律の口から抗議の声は放たれなかった。
代わりに、律の口からは艶やかな吐息が漏れ出て、澪の顔にかかる。
それは生暖かく甘い、吐息だった。
一頻り舐め回してから、ハンカチを取り出して口元を拭いてやった。
「ほら、綺麗になったぞ」
「ありがと……。その、澪。もうあんな荒っぽい事したらヤダからね。
もっと、優しく飲ませて欲しいし」
澪はコーラの缶を手に取って、言葉を放つ。
「分かってるよ。
まだ、かなり残ってるな。たっぷり味わえるぞ」
「澪も……たっぷり味わえるよね、私を。
今度は優しく堪能して、ね」
「ああ。500ミリを買って良かったよ」
「うんっ、そうだよな。
あと……後で、私も澪に……」
律は言い難そうに語尾を濁したが、澪は意を察して引き継ぐ。
「ああ、後で私にも飲ませてもらうよ。楽しみにしてる」
首肯しながら笑みを浮かべる律を見て、澪は改めて思った。
本当に──500ミリを買って良かった──と。
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