けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

ラブホ

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集

大学生活にもだいぶ慣れた頃。
「なぁ、澪」
「なに?」
「ラブホいかね?」

ゴチンッ☆

「……何も殴らなくても」
「……まったく」


私は、別にからかったワケじゃなかった。


バイト先の居酒屋の休憩室。
「んで?どしたの?」
「……そのまま、寝た」
「きゃっはははは!!」
先輩二人が談笑していた。
談笑していたのは、私によくしてくれる女性の社員さんと、その後輩の男性の社員さん。
要約すると、男性の社員さんが彼女さんと「たまには…」と仕事帰りにラブホに行ったはイイものの。
多忙の疲れでそのまんま寝ちゃったって話。
女性の社員さんはケタケタ笑っていた。
「まぁねー、疲れてるから仕方無いけど……ぷっ」
「笑わないで下さいよ!」
「笑っちゃうから仕方無いっしょー?てかあんた、レジ締め行ってきなさい」
「あ、すいません!!」
男性の社員さんは休憩室から走り去った。
「あぁー面白かった……あ、田井中さん。ごめんねー馬鹿な話ばっかで」
先輩が話し掛けて来た。
「あ、あぁ。勉強になります、色々と」
私は赤面しながら恐縮した。
「……あ。田井中さん、同棲中だっけ?」
「はい…同棲っていうか、ルームシェアっていうか…」
先輩はきゃははっと笑い
「同棲でいいのよ、ソコは」
「はい…」
私のどっち付かずの姿勢を正した。
「じゃあ、ラブホとか行かないんだ?」
「そうですねぇ…同棲する前も、実家近かったし…」
「うわぁ。じゃあラブホとは縁もゆかりも無いねぇ」
「そうなんですよ~」
「まぁ、お金は掛かるけど…」
先輩は顎に手を当てながら
「たまにはイイんじゃない?ラブホとか」
「ら、ラブホ、ですかっ!?」
「一々赤くならないの!」
「は、はいっ!」
「まぁ、近所の幼馴染みから同棲じゃあ、行く機会も無いわよねぇ」
「ん~、確かに」
「ま、気分転換に。行ってみるのもイイんじゃない?」
「……」
「そんな難しく考えないのっ」
先輩はぴんっ、と私の頭をつついた。
「今はサイト持ってるラブホも増えたし……気になるなら、下調べでもしてったら?」

顔を赤くした私を見て、先輩は肘をテーブルに突いてふふっ、と笑った。

「ま、誰と行ってもする事は一緒だけどね」



私はその先輩の言葉になんとなく納得し、澪に提案してみた所、拳骨をいただいたのであった。
「みおー」
「なんだよっ!」
…おこってる。
「なんで怒るの?」
「なんでって、律がラブホとか言うから」
「ラブホって、悪いの?」
正論を投げ掛ける。
「……いやっ……別に…」
「別に?」
「なんか、恥ずかしくなって…」
恥ずかしくなると殴るのかお前は。
と、突っ込みたかったが。ソコは抑えて。
だきっ
私は澪の背後から抱き着いた。
「わっ」
澪は驚いた。
「みおちゃんたら~♪ウブなのねん♪」
私は思いっきしからかった。
「そっ…そんな事っ…」
拳骨飛んでくるかなーとか予想してたが。澪は口ごもった。
「そんな事?」
「ー……っ」
澪は真っ赤になって黙り込んだ。
「…みーお」
私は澪を呼び
「…ん?」

ちゅうっ

「行ってみようぜ?ラブホ」
キスして、提案してみた。
「……仕方無いな…」
澪は真っ赤な顔のまま、承諾した。



カタカタッカタカタカタ…カチッカチッ
部屋に響くキーボードを叩く音と、マウスのクリック音。
澪は真っ赤な顔から真顔に戻り、ノートPCでラブホを検索に掛けた。
近所…ってのも味気無いし。せっかくだから少し足を伸ばしてみても、とか相談しながら検索した。
カチッ…カチッ
澪は地図情報とサイト検索を巧みに使い分け、エリアを絞る。
カタタッ……カチッ
「この辺…」
「おぉ」
目星を付けた辺りは電車で小一時間程のターミナル駅。
「そーいやこの辺、あんまし行った事無いしな。イイんじゃん?」
「そうだな!」
ちょっと買い物してゴハン食べてー、居酒屋かどっかで軽く引っ掛かけてチェックイン、とプランも練った。
「わぁー、たくさんあるよ?」
澪は目星を付けたエリアのラブホテルの検索結果を見て驚いた。
「へぇー。めっちゃ密集してるな」
私は検索結果の地図を見て気付いた。ホテルを示すマークがあるエリアに集中していた。
「ホントだ、面白いね。一応、宿泊施設になるんだー」
澪は感心していた。
「しっかし、名前がよく分からんな…」
「ホテル・メトロポリタン…幸福の宿…ホテル・ジャガー…ホテル・月の滴…」
澪が音読した。ホントによく分からん。
「月の滴…」
澪が呟きながらクリックし、ホテル「月の滴」のサイトへアクセスした。
「へー。こうなってんだー」
「部屋のグレードも、色々あるね」
澪はサイトに表示された各部屋の内装をチェックした。
どうやら料金毎に内装等変わるらしい。
内装もシックな部屋とか、レトロモダンとか、和室とか。
色々あるもんなんだな、と感心した。
「律…」
「ん?」
「…この部屋、103合室!天蓋がある!」
澪は目を輝かせた。
「ココにしよう!!な!?な!?」
澪は私の肩を掴んでゆさゆさ揺さぶってきた。
まぁ、天蓋がツボだったんだろう。
「あ、あぁ、そうだな」
私は揺さぶられながら承諾した。
「へぇ、予約とか出来るんだー」
澪は顔を紅潮させながら「月の滴」のサイトをどんどん突き進んでいった。
興味津々、を絵に描いた様。
「じゃ、次のオフの日、だな」
私がやれやれ、と腕を組むと
「うん!」
澪は子供みたいに嬉しそうに、頷いた。



初ラブホ当日。
私達は昼前に起きて、身支度を済ませた。
澪はいつも通りの肩が広めに開いた薄い黄色のカットソーに、インナーは青のタンクトップ。
パンツは色が濃い目のスキニー。靴は白地に黒の水玉模様のぺたんこのパンプス。手には白の大きめのハンドバッグ。
細腕に輝くシルバーのバングルはいつかのデートで買った思い出の品。
我が彼女ながら、綺麗で可愛い。
私は、黒のロンTに青地に黄色のロゴの入った半袖Tシャツ。オーバーサイズ気味のデニムに、いつもの「ROCK」ロゴのキャップ。
バッグはブラウンのボストンバッグ。腕には聡から逆お下がりで貰った角型のG-SHOCK。
で、靴は前に買ったベージュのスウェード地のラバーソール。
厚底でなんとか身長差をカバー出来ればなー、なんて考えた。
澪には何も言ってないのに通じたらしく。くすっ、と「かわいい」と笑われた…。



私達は、アパートの最寄り駅から駅から電車に乗った。
せっかくのオフだし、ちょっとの遠出だし。
昼だけどお酒でも…とキオスクでビールとチューハイとピーナッツを買って。
あんまり顔が赤くならないように、とちっちゃいやつにして。
ちょっと贅沢をしてグリーン車で、乾杯。
実家に居た頃、父がたまーに昼酒を煽りながら音楽鑑賞をしていたのを思い出した。
「律―。パンクはなー。音楽のジャンルじゃなくて、アティテュードなんだぞー?」
父がそう言ってほろ酔い加減で頭を撫でてくれたのも思い出した。
昔を思い出しながら車窓を眺めていると

ちょんちょん

澪が肩をつついてきた。
澪の手にはピーナッツ。
私の顔に向けられたいた。

あーん

私は反射的に口を開いた。
澪は手を伸ばした。

ぱくっ

私はピーナッツを食べた。
澪がくすっと笑った。
私はポリポリとピーナッツを噛み砕きながらピーナッツを手に取った。

あーん

澪は既に口を開けてスタンバっていた。
私が手を伸ばすと

ぱくっ

澪は私の指もちょっと食べた。
お互い、くすっと笑った。

ふたりだけの幸せな時間が、車窓の外の景色が、通り過ぎていった。



目的駅に、到着。
特に買いたい物ってのは無かったが、そんなに知らない土地に来たので、とりあえずショップ散策。
裏路地のカフェとか、見た目からして賑やかな古着屋とか、ローカルなレコ屋とか。
私達は手を繋いで、腕を組んで、楽しく歩き回った。
途中楽器屋に寄ってレフティ用の楽器を物色する澪に待ちくたびれたり。
アンティークショップの家具をどうしても欲しくなったけど、予算の都合で断念したりとか。
楽しく、歩き回った。

あっという間に、夕方。
駅前に戻ってきた私達は夕飯を済ませよう、という事になった。
どうせ後はメインイベントのラブホだけだしーって事で私は居酒屋に行こう、と言った。
澪は遊び足りないらしくカフェに行きたい、と言った。
テンションの上がった澪は、子供だ。
自分で言うのも何だが、私は子供のあやし方は慣れている。

ちゅっ

私は子供の頬にキスをした。
駅前で。人通りの多い中で。
私は、人々が他人にそんなに関心の無い事を知っている。
あんまりその事を知らない子供は顔を真っ赤にして、立ちすくんだ。
「みーお!行くぞ!!」
私は澪の手を引いて駅前の居酒屋に入った。



「みおー?」
「…何?」
「おこってる?」
「…別に」
「カフェ…行きたかった?」
「…うん」
私達は居酒屋のボックス席に通された。
威勢よくビールとジンライムをオーダーして、間もなく飲み物とお通しの枝豆とひじきの和え物が届いた。
…が、澪の機嫌が晴れない。
「一緒に、行きたかったのに…」
澪は拗ねていた。
やっぱりまだ、子供だった。
私はふぅ、と溜め息をつき箸で枝豆を摘んだ。
「澪」
「ん?」

ちゅるっ

いじけた澪の唇に枝豆を滑りこませた。
「次、行けばイイじゃん?」
「…次?」
澪はモグモグ、と枝豆をかじりながら聞いてきた。
「うん。また、来ような?」
私が聞くと
「…うん」
少しだけ嬉しそうに、頷いた。
悔しさ半分、嬉しさ半分、みたいな澪の顔は、やっぱり子供だった。
普段、大学やHTTの皆には見せない顔を見て、私は「来て、良かった…かな」と安心してビールを呷った。



居酒屋で夕飯と少しの晩酌を済ませ。
ローソンで軽くお酒と飲み物を買った。
澪は珍しく「私もビール飲みたい」とおねだりしてきた。
澪が普段チューハイばかり飲むのは、ビールだと太りやすいんじゃないか?と体質を気にしている事を、私は知っている。
勿論、突っ込むと拳骨が飛んでくるけど…。
多分、少しの遠出でテンションが上がっているのとほろ酔い加減なのが手伝って、ビールを選んだんだろう。
そして、いよいよメインイベントのラブホテル「月の滴」へ向かった。
下調べの成果もあり、方向感覚が弱い澪と一緒に。ちゃんと辿り着いた。

ウィィン…

ホテルの入口に入る。
私はバイト先の先輩から予備知識を得ていたので、なんとか平静を装っていたが、澪はそうもいかない。
と、言うか予備知識があっても変わらないだろうな…。
挙動不審な澪を何とか制しながら、私はフロントに入った。
予備知識を頼りに、私はフロントで目的の「天蓋のある部屋」103合室の空室を確かめた。
「どうぞー」
フロントの窓口からルームキーを受けとり、私は澪を引っ張り103合室へ向かった。

ガチャッ

重めの、103合室の扉を開けた。
「わあ…」
「わぁ…」
内装はサイトに載っていた通りの焦茶色の壁に、白い床。シックな印象。
間接照明とメインの照明が光々と部屋の天井、壁、床、私達を照らした。
知らない家に来た時の匂いがした。
そして
「律!!天蓋だ天蓋!!」
テンションが上がる澪。
澪の望みの天蓋も、バッチリベッドを囲んで設置してあった。
「…寝てみなよ」
私はバッグからカチューシャを取り出し、キャップと入れ替わりで装着した。
バッグをソファの上、コンビニ袋を備え付けの冷蔵庫の前に置いた。

澪はバッグをソファに投げ捨てる様に置くと

がばっ

ぎゅーっ

勢い良く、私に抱き着いてきた。
私と澪は勢いのまま、ベッドに雪崩込んだ。

「びっくりした…」
あっという間の出来事に呆気に取られた私。
目の前には、天蓋の内側。
「んんーっ」
澪は私に抱き着いたまま、私の肩に顔を摺り寄せている。
「澪―?」
私が呼ぶと

ちゅっ

澪は、キスしてきた。

「ありがと…」
礼を言った顔は赤らみ、目は少しとろん、としていた。
そういえば、澪は居酒屋で飲みが進んでいたのを思い出した。

…かぷっ

「ひゃっ!?」
澪がいきなり私の耳を噛んできた。

れろっ

「んんっ!」
噛んだ耳を、舌で撫でてきた。
私は声を抑えた。

「りつ…?」
澪が私の耳元で思いっ切り優しく囁いてきた。
吐息が熱くて、ゾクっとした。
抱き締めてくる身体の体温も、熱くなっていた。

「…だいすき」

んちゅっ

澪は優しく囁くと、私の耳に荒いくちづけをした。

「んふぅっ…!!」
私は思わず声を上げたが

「み…お…?」
なんとか声を絞り出した。

「なぁに?」
澪は完全にスイッチが入っていた。

「シャワー…浴びたい…」
私の言葉に、澪は暫く考え

「ソレも、そうだね…」
なんとか、正気を取り戻したようだった。



私達は気を取り直し、初めてのラブホテルの部屋の中を探索した。
大型液晶テレビ。ホテル独自の食事等のオーダリングシステム。
備え付けの冷蔵庫。
インスタントのコーヒーと、紅茶。
私達の住むアパートと違い、大きな浴槽を備えたバスルーム。
全てが、新鮮だった。


「澪―。お風呂でっかいぞー?」
私は浴室に入り澪を呼んだ。
「わ、すごっ!!」
澪も流石に正気に戻ったみたいだった。
「お湯、溜めとくかー」
私はコックを捻った。蛇口からどぼぼぼ、と勢い良くお湯が出てきた。
「一緒に入ろうねー♪」
澪は、やっぱり子供っぽかった。


「ふぅー」
私はコンビニで買った酒を冷蔵庫に突っ込み、私と澪の分、一缶ずつ出しておいた。
「はぁー」
澪も溜め息を漏らした。
私達はベッドサイドにどん、と置かれたソファに座った。私はテレビのリモコンのチャンネルボタンを適当に押した。
澪は、缶ビールを手に、私にもたれかかっていた。

その時だった。

『!!』

液晶テレビに映しだされたのは……アダルトチャンネルだった。

『…』

私と澪は、絶句した。
私は、リモコンのボタンを押して、チャンネルを変えた。


…………。



沈黙。なんか、気まずい沈黙。

「…びっくりした」
澪が、沈黙を破った。
「…私も」
ふぅ、と私は溜め息をついた。
まぁ、ラブホだし。そういうのも、流れてるよな…。
若干、迂闊だった自分を責めると

ちゅっ

澪が、くちづけてきた。

「…っ」
「…」

ちゅぅっ

少し、長かった。
身体が、熱くなった。
唇が離れた。
澪に…キスしたくなった。

ちゅっ

身体が先に動いていた。

…っ

唇を、離したくなかった。
澪を、抱き締めた。


れろっ


澪の舌が、私の唇にイタズラしてきた。


「んっ…」
私は思わず唇を離した。


「…シャワー、浴びるんでしょ?」
澪が意地悪く笑った。
澪はおあずけ、と左手の人差し指を私の唇をつついた。

私は、澪の意地の悪い表情に、欲情した。

「…あと、で…」

私は、意地の悪い澪の指にくちづけした。

がっ

そのまま、澪の左手を右手で掴み、勢いでベッドに押し倒した。

ちゅっ…

「…んっ、はっ…」
押し倒した澪の唇から離れた私は、気が気じゃなかったらしい。

「りつ…」

黒い長髪をベッドのシーツにばら蒔かれた澪が、話し掛けてきた。

「りつ、こわいよ…?」
子供っぽい声と裏腹に、澪の口元は笑っていた。

「…澪」
私は、澪にくちづけたくてたまらなかった。

「律…」
澪は相変わらずイタズラっぽい顔だった。
左手で、私の頭を撫でながらカチューシャを外してくれた。


今の私にとって、カチューシャは、理性だった。


理性を外された私は、澪に食らいついた。

「シャワー浴びなきゃ…」
と澪が呟いた。

思わず手を止めた私だが、直ぐ様澪は「ふふっ…」と笑いくちづけを求めた。

澪の胸ばかりに触れた私の右手を、澪は左手で掴んで自らの太腿と太腿の間に導いた。

私は、右手で器用にベルトを外し、デニムのボタンを外した。

澪は腰回りを解放され、少し「びくっ」と反応した。

私はジップを下ろし、右手をデニムの奥に滑らせた。

同時に、澪の唇を執拗に貪った。澪も応える様に、唇を絡ませてきた。

澪は、「シャワーは?」と時折呟いた。

その度に行き詰まる私を、楽しんでいる様だった。



………………。

私達は結局シャワーを浴びる事なく事を済ませ、ベッドでぼうっとしていた。
お互いに上半身は中途半端にはだけた着衣。下半身は裸だった。
そのまま、私は左腕を伸ばし、澪はそれに収まるように丸くなっていた。
「りつー…」
口を半分開いたまま、澪が声を掛けてきた。
「…なにー?」
同じく、口が半開きの私が応える。
「音楽、何とかなんないかなー」
言い終わると澪は私の顔を見上げた。
「あぁー…」
確かに。そういえば室内にはずっと古~い洋楽…オールディーズともなんとも付かないBGMが流れていた。
私はゆっくりと体を起こした。目の前にはヘッドボード。
「あ…」
私は、ヘッドボードに何か多数のスイッチがある事に気付いた。
「みおー」
「んー?」
「なんだろ。コレ」
澪は私の呼び掛けに応えると、体を起こして匍匐前進で隣にやってきた。
パチッ
『わっ!!』
澪がなんとなくスイッチを押すと消灯した。思わず声を上げる二人。
パチッ
照明は復旧した。
よく見るとスイッチ類は幾つかグループ分けされていた。
「この辺は、照明…?」
澪がパチパチスイッチをいじると間接照明だけ点いたり消えたり、出入口付近だけ点いたり消えたりした。
ツマミをいじると照度調節も出来た。
「おもしろーい!」
澪は子供っぽく笑った。
「こっちは……?」
私がもう一つのスイッチ群を見ると、近くに何かの一覧表を見つけた。
「あ、有線だって」
有線放送のチャンネル一覧だった。
「なになにー?」
澪が興味津々に擦り寄ってきた。
「邦楽とか洋楽とか、ラジオとかもあるな」
私は一覧表を眺めつつ澪にも見せた。
「わー。ジャンル細かーい」
澪は一覧表を見ながら感心すると
ピッ ピッ
ボタンをいじり始めた。
「こっちがアルファベットで、こっちが数字か…」
スイッチ群の脇にはディスプレイがあり、チャンネルが表示されている。
澪は流石飲み込みが早く、サクサクチャンネルを切り替えていった。
「洋楽、でイイよね?」
「ああ」
「ロック&ポップス。ココは古めっぽい」
ピッ
♪~
「…ビートルズ?」
「いや、キンクス」
「あぁ、そっか」
間違いを正す私に、納得する澪。
「オールディーズ」
ピッ
♪~
「ビーチボーイズ…」
「ベタやなぁ~。次は?」
「ヒップホップ、だって」
ピッ
♪~
「あ、ビースティじゃん」
「セカンドとか、なつかしっ!」
「次は?」
「R&B」
ピッ
♪~
「R.Kelly?」
「ビンゴ!!」
澪の回答に親指を立てる私。
いつの間にかイントロクイズになっていた。
「‥コレで、いっか?」
「うん」
澪の問い掛けに頷く私。
「ビール、飲みかけだった…」
澪がベッドの脇のテーブルを見て気付く。
「アレ飲んだら、お風呂入ろっか?」
私が聞くと
「うん!」
澪は自然に可愛く答えた。
事の間、私を下から嘲笑っていた澪とは別人の様な笑顔だった。



私達はソファに座り、R.Kellyを聞きながら缶に残っていたビールを飲んだ。
澪がそういえば、と話し出した。
「R.Kellyってさ。歌詞、下ネタだらけなんだよ?知ってた?」
「マジで!?」
「日本盤の歌詞カードの和訳、とんでもないよ?」
「ど、どんな?」
「さ、流石に、言えやしないよ…」
澪の恥ずかしそうな表情から、とんでもなさは伺えた。
「つーか澪、R.ケリーとか持ってたっけ?」
「あ、ムギから借りた」
「あぁー…」
何かと合点が行った。今度、ムギから借りてみるか。
私は、テーブルに置いてあった「ご利用のご案内」のファイルを開いた。
「あ、シャンプーレンタルしてる」
「なになに?」
澪が横から覗き込んできた。湿っぽい匂いが鼻に入る。
「あー、私、アジエンス使ってみたい」
「おっけー」
私は澪の希望に応じ
「コスプレ衣装もレンタルしてる!」
「コ、コスプレ…」
私がファイルを指さすと澪は引き気味だった。
おそらく高校時代の思い出(色んな意味で)を思い出したんだろう。
「まあまあ…じゃ、オーダーするぞー」
私は澪をなだめ、オーダリングシステムでアジエンスのシャンプー&コンディショナー。
それと、コスプレ衣装の「ナース服」をオーダーした。
澪は引き気味のまま。気付いていなかった。
私達は脱ぎ散らかったデニムやら下着やらをかき集め、上半身も裸になり、衣類をハンガーに掛けた。
澪はバッグから下着用のポーチを取り出し、私達の下着を畳んで仕舞った。
「あ、充電」
澪はバッグと入れ替わりに携帯の充電器を取り出した。
「いい加減機種変しないとなー。コンセントはー、と…あったあった」
私はコンセントを探し出し、二台の携帯を二台の充電器にセットした。
「今度、一緒にドコモショップ行こうねー♪」
「当たり前だろ?」
私が答えると、澪は背後から嬉しそうに抱き着いてきた。
澪の胸の感触を直接背中で感じて、なんとも言えない気持ちになった。
すると

ピンポーン♪

インターホンが鳴った。
「ん?」
「あ、多分、シャンプーとかだ」
澪が出入口を向くのと同時に、私は出入口に向かった。
案内のファイルによると、出入口付近の小窓に色々と届けられているらしい。
カチャッ
私は小窓の戸を開けた。
学校の下駄箱一人分のスペースが横に二つ分ぐらいの小窓に、ソレは届けられていた。
「よーし、お風呂入ろうぜー♪」
私はアジエンスのシャンプーとコンディショナーだけ取り出し、澪の元へ駆け寄った。
ナース服は、風呂上がりのお楽しみに。取っといた。



「わー、やっぱ広いね」
浴室に入った澪が感心した。
サイトをチェックした際に、浴室の様子も確認してはいたが、実物はやはり違う。
「あ、澪―」
浴室に入った私は、あるモノに気付いた。
「なにー?」
「コレ、なんだ?」
私の問に
「…椅子?」
澪は半疑問形で答えた。
確かに、椅子だった。
だが、私達を悩ませたのは、椅子のセンターの空洞だった。
「…とりあえず、座ってみるか」
「…うん」
私達は未知の生物でも見るかの様な面持ちで椅子を眺めた。
私はその椅子の前に立ち、とりあえずセンターの空洞が横になるように、座った。
「…普通、だな…」
「うん…」
今ひとつ用途を把握出来ない私をしゃがんで見つめる澪。
私は腰を上げ、
「よいしょ」
センターの空洞を縦にして、座った。


『!!!』


……私達は、なんとなく、把握した。


……………。


私は顔を真っ赤にして、その椅子を引っくり返して浴室に隅へ追いやった。
「…み、澪、体流そうぜ!!」
「そ、そうだな!!」
澪も顔を真っ赤にして、答えた。

さっきまでベッドに押し倒したり何だりしときながら思うのもアレだが。
ラブホテル、なんだよな、ココ…。



ちゃぽーん

お互い、身体を洗い合ったり。
お互い、髪を洗い合ったり。
お互い、背中を流し合ったり。
広めの浴室を満喫した私と澪。
二人で、浴槽に浸かっていた。

澪が先に浴槽に入って、私が後から入って。
ざばーん、と浴槽からお湯が溢れた。
溢れたお湯に流される風呂桶やら浴用の椅子やら。
二人とも、子供の時にお父さんとお風呂に入った時の事を思い出した。
全く同じ事を思っていて、思わず笑った。
一頻り笑い合うと、脚を伸ばした澪に私が重なる体勢になった。
背中に澪の胸が当たる、体勢。
お互い、同じ方向を向いている体勢。
澪には、私の濡れた髪の後頭部。
私には、浴槽に漂う澪の黒髪の毛先が見えている。
裸の付き合いなんか慣れっこだ。
澪は、うしろから腕を回して私を抱えている。
私は、腕を掴んでいる。
浴槽の中の軽い重力を、私達は楽しんでいた。

お湯の温かさと、澪に包まれた暖かさ。
夢見心地を、私は体感していた。
「みおー?」
「なに?」
「…だいすき」
「…もぅっ」
背中越しに照れる澪の表情が伝わってきた。
澪は右腕で私を抱き寄せ、左手で濡れた私の頭を撫でた。
「へへっ」
「ふふっ」
私達は、浴槽の中で笑い合った。



私と澪は浴槽から上がり。
シャワーで互いの身体を流して浴室を出た。
バスタオルで体を拭き合った。
きゃっきゃっ、と無邪気な澪の笑顔が眩しい。
入浴で少しはアルコールが抜けたかと思ったけど、そうでもないみたい。
「りつー、はい」
澪はホテルのガウンを広げ、私に袖を通すように促した。
「あ、ありがと」
私はくるっ、と一回転してガウンに袖を通した。
すると
「…ぷっ」
澪は思わず吹き出した。
「な…なんだよ…」
私は眉を潜めた。
「ガウン…おっきすぎ…」
澪は私を指差して笑いを堪えた。
「笑うなぁ!!」
確かに、ガウンは大きく、鏡を見なくとも「子どもっぽい」見た目が、自分で分かった。
「…澪も、ほら!!」
私は馬鹿にされた悔しさで頬を赤くしながら澪にガウンの袖を通さした。
「…あ、意外と着やすい」
澪が感想を述べた。私はその姿に見惚れてしまった。
ガウンのサイズは澪にもやや大きかったが、所々身体に張り付いたり、胸元が開いて谷間が強調されていたり。
ちょっと、抱きたくなった。

がばっ

ずるっ

「あっ」

だきっ

私は澪に抱き着こうとして、ガウンの裾を踏んで、滑って。
丁度、目の前に居た澪の腰にしがみついた。

「だ、大丈夫か?」
澪も流石に酔いがちょっと覚めたらしい。
「う、うん。だいじょぶ」
私は澪の腰から離れつつ無事を伝える様に手を振った。
「なら、良かったけど…」
安堵する澪。
私は尻目に、出入口へ向かった。裾を踏まない様に膝あたりからガウンを掴んで、お姫様っぽく。
「律?」
澪の言葉を背中に受け、私は出入口横の小窓からナース服を取り出した。
「え?」
私が手にしたナース服を見て澪は何かを察知した。
「みーおーちゃん♪」
私は裾を踏まないように器用に澪に駆け寄った。
すると

ばっ

澪は駆け寄った私の手からナース服を取り上げた。
「かえせよー!」
手を伸ばす私。
「ガウンが大きかったのが、仇になったねぇ」
前髪で隠れた私の額を手の平で制し、勝ち誇る澪。
「かーえーせーよぉー!!」
私は、駄々を捏ねた。

ちゅっ

澪は、私にキスしてきた。卑怯だ。
「わっ!」
私は思わず声を上げて後ずさる。
「あーとーで。な?」
ニコッ、笑うと澪はナース服をソファの向こうに隠した。
「…」
私は、正直拗ねた。
「…律」
「…なんだよ」
「ビール、飲も?」
澪は冷蔵庫を指差した。
「…うん」
拗ねた私も、アルコールと澪の誘惑には勝てなかった。



私と澪は、ソファで冷蔵庫に残っていた残りの缶ビールを呷っていた。
「りつー?」
「んー?」
「私のナース姿、見たい?」
「はぁ?」
酒のせいだろうが…素面では有り得ない澪の発言に、私は目を丸くした。
「見たくないの…?」
一撃必殺の上目遣いを繰り出す澪。
澪はアルコールが入るとナチュラルに仕掛けてくる。
「あ…後で!お楽しみに、とっとく!」
「うん…そっか」
澪はへぇ、という表情で缶ビールを傾けた。瞳に恣意的な何かを感じたのは気のせいか…。
「でさ、律」
直ぐ様声を掛けてくる澪。
「な、なに?」
私は少々狼狽えた。
「私のナース姿、見たいんだよね?」
「う、うん、見たい」
唐突な質問に私は更に狼狽えた。
「じゃあー…」
澪は斜め下を見下ろし…
「お手本、見してもらおっかなー」
さっき私から取り上げたナース服を取り出した。
「お、お手本?」
「うん、お手本」
澪は真顔だが、赤らんだ顔からアルコールの回り具合は分かった。
「お手本…って?」
「だから、律がナース服着て。お手本見してよ」
澪はそういうと、にじり寄って来た。
「え…?え…??」
澪は、私のガウンを脱がしに掛かって来た。
「やっ…やめっ…!!」
どさっ
澪は私をベッドに強引に押し倒した。

「き、着るから!!着るから!!」
「どーせ自分じゃ着ないでしょ?」
「…っ」

澪の突っ込みが正確で参った。
「嫌がってる律も、興奮するなぁ~」
澪が意地悪く言った。両手を両手で塞がれながら言われると、正直エロくて怖い。

じたばた、じたばた

一通り抵抗すると、澪は疲れた様子で

ぱたっ

私の胸に、倒れ込んで来た。



………………。

私は、澪とベッドの中に居た。
澪は、私にナース服を着させようとしたが
「酔っ払っちゃった…」
そう呟き、私の胸で半分寝てしまった。
その後、天蓋のカーテンを閉めて、まったりとした時間を過ごしていた。
「…ん」
澪がもぞもぞと目をさましたらしい。
「…りつ?」
「ん?」
甘い声に応えると
「………にゃあ」
澪は、私の顔を見上げ、猫の真似をした。
「…」
私は最初戸惑ったが、おそらく梓の真似だ、と気付いた。
酒は、怖い。
「…みーおにゃーん!」
私は、唯の真似をして抱き着いた。
「にゃっ!!」
澪は驚いた。
と、思ったら

ちゅ

キスをしてきた。澪の顔がマジだった。
罠だ、と気付いた。

ちゅっ

澪は引き続き甘いキスをくれた。

私は自分の目尻が甘く下がった事に気付いた。

「ふふっ…」

澪はくすっ、と笑った。
澪は私の頭の後ろに右手を回していた。

がばっ

んちゅっ

澪は、私の唇に吸いついてきた。

私は、意識を理性の向こう側に連れて行かれそうになった。

「んふぅっ…」
「…っはぁっ」

私は、澪の唇を。
澪は、私の唇を。

求め合った。

「…みおにゃん?」
「…うにゃ?」

私がイタズラに聞くと、
澪は上目遣いで、眉毛をハの字にして。口の周りを唾液で汚して答えた。
生乾きの髪が、顔に張り付いていた。

心臓がドクン、と鳴った。

私は澪の手の内に居る、と自覚した。

私は、澪には勝てない。

そう確信した瞬間。

びくっっ

「!?」

澪の左手が、私の太腿に触れた。

「…かんじた?」

頬を赤らめた澪の問に、私は答えられなかった。
唇を噛んで斜め下を向くだけで精一杯だった。

んちゅっ

澪は私の顎を掴みまた唇を奪うと

ぐいっ

私の頭の後ろに回した手で、私の顔を引き寄せた。

はむっ

澪は、私の舌を唇で捕らえた。

同時に

するっ

左手をガウンの隙間に、私の太腿と太腿の隙間に、滑り込ました。

「はぁぅっ…!」

澪は、左手の人差し指を、私の中に入れてきた。
反射的に、私は澪のガウンを掴んだ。

「だめっ…!」

台詞と裏腹に、私の身体は澪の左手の人差し指を滑らかに受け入れる。

「だめ……なの?」

澪は私の顔を右手で撫でながら聞いてくる。

同時に、左手の人差し指を奥の方に差し込んでくる。

「うあぁっ……んっ!!」

思わず声を上げ、意識が理性の向こう側に飛びそうになり、堪えた。
澪のガウンを掴んでいる両手は、震えていた。

「……………みお…」

「なに?」

私はやっとの思いで澪の顔を覗いた。

「…はげしい…よ…」

おそらく、私の顔は眉毛を下に下げ、目を潤ませ、何かを懇願する子供みたいだっただろう。

「………」

「…………そんなこと、ないよ?」

澪は、私の瞳を見つめると、中指を私の中へ滑りこませた。

「―――――――っ!!!」

私は、半分の意識をこっち側、半分の意識を理性の向こう側に、辛うじて置いた。

「はぁ……はぁ……」

私は、気が気でない心境で、澪に聞いた。

「みぉ…」

「………なに?」

「ゆびわ、よごれちゃうよ…」

澪の左手の薬指には、私があげた指輪がはめられていた。

隣の中指からは、私が垂らした体液が垂れてきているはず。

「…………律ので汚れるなら、気にしないし」

「…んんっ!!」

澪が臆面も無く動かそうとした左手を、私は掴んで拒んだ。

「………なに?」

澪は優しく聞いてきた。

「んぅっ…」

優しく聞きながらも。澪の指先はたまに、小刻みに私の身体を踊らせた。

「……みお………よっぱらってない……?」

吐息混じりにやっと聞いた私に
澪は、私の意識を、理性の向こう側へやさしく連れ出すように、優しく答えた。



「――――律に、酔っちゃった」


  • おおお〜、こどもなのにアダルト -- 名無しさん (2011-05-24 04:51:06)
  • エロくて、良いリバーシブルでした -- 名無しさん (2011-06-11 03:28:12)
  • ごめんなさい 刺激がとても 強すぎた by俳句です -- 涙 (2011-11-27 19:30:47)
  • これはエロくて良い澪律 -- 名無しさん (2012-04-29 22:03:59)
  • 次は琴吹グループのホテルへ……ハァハァ -- 琴吹紬 (2012-07-25 00:01:52)
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