けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

ナキムシ

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mioritsu

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私の部屋の中は、不穏な空気が踊りまくっていた。
「んー…」
律の難しそうな顔。
「な?もう、イイだろ?隠す事無いって!」
私は律を必死に説得していた。
「…別に、今のままでもさ…」
「だから!」
煮え切らない律を責め立てる私。
別に喧嘩をしてる訳で無い。
「いつかは言わなきゃなんないんだよ?」
「そりゃそうだけど…」
「私達から言うのと、周りから聞くのとじゃあ全然印象違うんだし」
「まぁね…」
「言わなきゃ何も始まんないよ!!」
説得しようと必死な私。と、全く煮え切らない律。
……もう、何時間も同じようなやりとりを繰り返している。
ママも一回ジュースを持ってきてくれたっきり、部屋に来る事は愚か、メールもしてこない。
今更だが、私の剣幕が部屋の外にまで伝わっているんだろう。
そんな事も忘れる程に、私は必死だった。
「私の関係、皆にちゃんと言わなきゃダメだよ!!」


私と律は、恋人同士。
幼馴染みで、物心付いたあたりで互いを意識し始め、紆余曲折ありつつも、結ばれた。
只、女同士なワケで。
勿論、世間体良くない事とか、一般的に異常だとは理解している。若さ故の過ちとか、感情の履き違いとか、その内気付く事かもしれない。
でも、私は今が大事だと思ったから、律に気持ちを伝えた。律も、応えてくれた。
私達は、結ばれた。


結ばれてから暫く経つが、いい加減に、この関係を軽音部の皆にちゃんと伝えなきゃ、と思った。


軽音部の皆は信頼出来る仲間だし、今の私と律の関係も受け入れてくれるだろう。
何より、皆に隠し事をしたくなかった。私一人ならまだしも、律は軽音部の仲間で、部長でもある。
周りから噂を伝え聞いたり、何となく感付かれて聞かれて答える、じゃ嫌だ。
私達からちゃんと、伝えよう。


私は律を家に呼び、この話を切り出したのだが……。
「いや、今のままでもイイんじゃないか?」
あっさりと返された。
律はあっさりと返した割には、何も考えていない訳でなかった。
私が思っていたより、しっかりとした意見を述べて来た。


私達の関係自体は、軽音部とは直接関係無い。あくまで、私達の関係。
確かに軽音部の皆は信頼出来る仲間だ。唯もムギも、私達の告白をすんなり受け入れてくれるかもしれない。
けど、梓はどうだろう。軽音部にもすっかり馴染んだけど、私達より一学年下。一歳年下だ。
十代、つまり思春期は多感な時期。私達のような関係をどう捉えるだろう?私達はたまたま思い合って結ばれた。唯もムギも、同い年で、同じ時間を長い時間過ごしただけあり「受け入れてくれるんじゃないか」という期待値は確かに高いと思う。
梓は真面目だ。それだけに拒否反応を示すかもしれない。勿論、理解を示すかもしれないが……時折見せる幼さ。正直、不安な所もあるし。
と、なると唯とムギだけに伝えるか?そうなると梓だけに伝えない事になる。ソレはソレで仲間外れにならないか?
そもそも、唯もムギも受け入れてくれるか、わからない。
なら、とりあえず。今のままが良いんじゃないか?もう少し、私達を含めた皆が成長してからでも遅くはないと思う。

と、いうのが律の意見。
中々に理路整然としていて正直、驚いた。
私の意見も律は聞いてくれたが……私が感情的になったのがいけなかった。
「なんで!?」
「どうして!?」
私が声を上げる度に律は落ち着いて、私に言い聞かせる様に反論してきた。
私はその度に感情的になり、律は萎縮……というよりは呆れ。
押し問答になってしまった。
もし、どこかのカフェでこのやりとりを晒したらカップルの痴話喧嘩だろう。
だが、私にとっては切実な問題だった。


私が感情的になったのは、律の同意を得られなかったショックもある。
もう一つ。私が「皆に伝えなきゃ」と行動に移そうとした事を、律が気付いてくれてないと思ったからだ。
精一杯考えて、悩んだのに。
押し問答の末。私は、立ち上がった。
「もういい」
「は?」
「私一人で、皆に伝えてくる」
「何言ってんだ!?大体、今何時だと思ってんだよ!」
律は私を怒鳴り付けた。
呆れていた様子だったが、律も抑えていたんだろう。夜も更けてたし。
「!!……っ」
私は立ち尽くしたまま、床を見つめて唇を噛んだ。
身体が震えているのが、分かった。
親指を他の指で握り締め、感情を必死に抑えた。


目から涙が、溢れた。

悔しい、くやしい。

頭の中が、真っ暗になった。
律に怒鳴られるなんて、部室で私が駄々を捏ねた時ぐらい。
でも、本気で怒った顔の律に怒鳴られたのは、初めてだった。
「うっ…」
私は、溢れる涙を両手で抑えた。
今すぐ、泣き出したかった。大声で、思いっ切り。
子供の頃だったら、迷わず泣いていただろう。
今はまだ高校生とは言え、あの頃よりは大人になった。
抑える事を覚えた。


「澪」
「……!?」
横を振り向くと、律が立っていた。やれやれ、と言う表情。
私が涙を抑えている間に、テーブルの向かいから歩み寄ったんだろう。
思わず振り向いたが、私は酷い顔をしていただろう。溢れる涙を、洩れる嗚咽を、両手で必死で抑えて。
涙と、涎でぐっちゃぐちゃだっただろう。
「…泣くなよ」
律は優しい顔で、声を掛けてきた。

さっきまで、何時間も口論してたのに。
さっきまで、どう言い負かそうか必死だったのに。
ついさっき、怒鳴られたばっかりなのに。

私は、律に思いっ切り抱き着いた。
涙と涎で濡れた手を背中に回し、律のシャツをぎゅうっと掴んで。

「りつぅ~!!!」

泣いた。

律を抱き締めたまま、涙と嗚咽と涎と。全部、吐き出した。
律の肩が、ぐっちゃぐちゃに濡れていった。
律は私を抱えて、座った。
私も律にもたれたまま、座った。
私がうぇーん!!と泣き叫ぶ度に、律は私の頭を撫でてくれた。
私がひぐっひぐっ、と身体を震わせる度に、律は私の背中をさすってくれた。
その度に、私は律を強く抱き締めた。
その度に、律は私を強く抱き締めた。
「うぐっ…りつっっ…だいすきっ……あいしてるっ……あいしてるからっ……」
もう、抑制の効かなくなった私は、全ての感情をも吐き出した。
「…」
律は何も言わず、頭を撫でてくれた。
私はぐちゃぐちゃに濡れた律の肩で、泣いた―――


「……?」
はっ
私は目を覚ました。
すー…すー…
目の前には、前髪をゴムで留めた律の寝顔。
がばっ
思わず起き上がる。
私は、ベッドで寝ていたらしい。
「……ぅあ…」
律がぼんやりと目を覚ました。
律は、私のパジャマを着ていた。私は、制服のままだった。
「……律?」
「…みお…おきた…?」
寝起きの律の声は可愛かった。
部屋は真っ暗だった。時計は夜の一時を指していた。
「……」
私は状況をよく把握出来なかった。
「…みお」
ちゅっ
宙を見つめる私に律はキスしてきた。
驚いたが、何が起きたか、何で寝てたか。把握出来なかった。
「ふわぁ~っ…」
律が欠伸をした。
「…律?」
「んぁ?」
口を開けたままの律が返事をした。寝ぼけ眼だ。
「……私、何で寝てたんだ?」
疑問を投げ掛けた。
「あぁ…」
律はだらり、とベッドを下りた。そしていつの間にかテーブルに置いてあったジュースを飲んだ。
「ふぅ…」
律はジュースを飲んで一息付くとベッドに戻ってきた。
少し、緩い眼のまま
「色々、大変だったんだぞ?」
律は私の前に座り、一部始終を話し始めた。


私と律は口論になった。やがて私は泣き出した。泣き喚いた。
律が何とかなだめると、私はそのまま眠ったらしい。
静かになった様子を見計らい、ママが部屋にやってきたらしい。
律は上手く言ってくれたみたいで、ママに凄く謝られたらしい。
ママは律のぐっちゃぐちゃになったシャツを見るや否や、シャワーを浴びるように勧めたらしい。
勧めた、と言うよりは部屋から連れ出されたらしい。その間際に、私は律にベッドへ運ばれたらしい。
律が渋々シャワーを浴びている間に、ママは律のママに連絡をして律の替えの下着と制服のシャツを手配したらしい。
聡は訳も分からないまま、紙袋持参で我が家を訪れたらしい。律はシャワーを浴びてから聡にメールでフォローしたらしい。
律はシャワーから上がって自分の下着があって滅茶苦茶、驚いたらしい。当たり前だ。着替えに私のパジャマが用意されていたらしい。
ママ曰く「あんなに泣き喚く澪、何年も見てないから…」と添い寝……もとい、付き添いを頼まれたらしい。勿論、律のママの承諾済だったらしい。
律が部屋に戻ると、ジュースが置いてあったらしい。律はママに濡らして絞ったタオルを手配してもらい、私の顔と首回りを拭いてから、ベッドで寝に入ったらしい。


「………ごめんなさい」
私は謝る他無かった。
「まったく、な。あんなに泣き喚く澪なんか見た事無かったからビックリしたし」
「……」
赤くなる私。
「替えの下着があったのも驚いたし」
「そ、それは御迷惑を…」
私は申し訳無さすぎて言葉が続かない。
「まったく、だ」
やれやれという律の顔。呆れの中にも優しさがあるから困る。
「…でもまぁ」
ばふっ
律は私を抱き寄せ
「澪が、ちゃんと私達の事。皆に伝えようって言った事が、一番驚いたけどな」
私の頭を撫でた。
「………っ!!」
私はまた、抑え切れなくなった。
「みっみお!?」
涙が溢れて来た。

悔しいとか、そんなんじゃなくて。
やっぱり律には適わないな、とか。
やっぱり律の事愛してる、とか。
色んな感情が、溢れて来た。

「ど、どうした!?」
慌てる律。そりゃ、あんな事があったんだし。慌てるよな。
「ぐすっ……らいじょぶ」
涙は止まらないが、笑顔にはなれた。
「なんだよ…」
律は安堵し、ティッシュを取り私の鼻に当てた。
ちーんっ
私は鼻をかんだ。
「ありがと…」
私のパジャマを着た律の胸に、顔を埋める。
律は私の髪を撫でながら
「明日、皆に言おうな」
「えっ?」
「私達の事、不安だけどさ…ちゃんと言わなきゃ、何も始まんないしな」
見上げた私の顔に向かって優しく、笑った。
「……うん」
私は笑顔を返した。


翌日の、放課後。
ガチャッ
「すいません!HR長引いちゃって…」
梓が遅れて音楽室に現れた。
「あーずにゃーん♪」
「にゃっ!」
待ち構えていた唯が抱き着く。
「うふふ♪」
嬉しそうなムギ。
「……」
私は、やや緊張している。
「お、梓ー待ってたんだぞー?」
律は五人揃った事を確認した。
「よーし。皆揃ったな?」
「では、お茶にしましょー!」
「さっきまで飲んでただろっ」
ビシッ
「ぁうっ」
唯に突っ込む律。
「今日はすぐ練習ですか?」
「いや…」
梓の質問に律は少し口ごもり
「おちゃ」
ビシッ
「あぅっ」
またもや唯に突っ込んだ。
コホン
「今日は皆に重大発表がある!!」
「お茶ー!?」
「なんですか!?ライヴですか!?」
「なになに!?なんなの!?」
「……」
律のいつにも増した真剣な表情に皆のテンションが上がる……私以外。
「実は―――」



律は、全てを話した。



数年後、放課後ティータイムはまだ、続いている。


私と律の関係と、一緒に。


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