けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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mioritsu

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だれでも歓迎! 編集

放課後、部室に行くと澪の姿がなかった。
あぁ、そりゃあ澪は忙しいか。
何たって今日はバレンタインだ。
好きな人に、チョコとか渡す日…我ながら漠然とした解釈である。
澪にはファンクラブなるものがあるわけで。
多分今頃どこかでもみくちゃにされているんだろう。

「澪は?」
けど一応確認。
「連れてかれちゃった」
とムギが答える。
ふむ、やっぱり。
「結構な人数でしたね…」
「私もチョコ欲しいなー」
「ちゃんと用意してるわよーチョコケーキ!」
「んぇへへへ流石ムギちゃーん」
「澪先輩来るまで待ちましょうよ」
「…んーでも澪食べるかなー」
「あぁ…今いっぱい貰ってるでしょうしね」

そう、そんなに人がいたんなら嫌と言うほど貰ってるはず。
果たして食べるだろうか。
実は、私もチョコを作ったりしてんだよなー。
もちろん、澪の。
…んー、だけど必要ないかも。
寂しいけど、帰って自分で食べよ。

「それにしても澪ちゃん凄い人気だよねー」
「はは、私なんか一個も貰ってないってのに」
「澪先輩は特殊なんですよ」
「…そんなこと言ってるりっちゃんにお客さんよ」

と、一人の女子生徒が部室に入ってきた。


「…どーやって食えっていうんだ…」
さっきまでファンクラブの人からチョコ貰ってたんだけど…量が多過ぎる。
多分軽音部からも何かしら貰うだろうから…うーん、体重計が踊りそうだ。
…あいつは、貰ったんだろうか。
まぁどうせ貰えてないだろうから、一応用意してきたんだけどな。
泣きつかれても面倒だからな…うん、そう、それだけ。深い意味はないぞ。
毎年あげてるから、惰性だ。うん。
なんて心の中で言い訳して、音楽室の扉を開く。
そこには律の姿が無かった。

「…律は?」
私が問い掛けるとムギは少し苦笑する。
ん?なにかおかしいか?
「連れてかれちゃった」
…連れてかれた…?
「わー澪ちゃんすごい量…ちょっとくれたりは」
「連れてかれたって、誰に?」
「うわぁいスルーだぁ」
「黙ってましょうね、唯先輩」
「さぁ…私は知らない人だったけど」
「綺麗な人だったよー」
「多分三年生の人でしたよ」
上級生…?そんな人が律に何の用があるんだ…?
そこに律が帰ってきた。
「お、澪来てたんだ」
「あ、あぁ」
「りっちゃん何だったのー?」
「えっ、いや、その…」
モゴモゴと言う律の手には、綺麗に包装された箱があった。
何だか、言葉が出なかった。

「あっそれチョコじゃない?」
「…ん、貰ったん、だ」

と顔を赤くさせ律は言う。
…何だよ、それ。

「もしかして本命かしら?」
「………らしい」
「うへぇ!凄いねりっちゃん」
「先輩から告白されるとは…」
「う、うるせーよ!」

バタバタと暴れる律を見ながら、私の頭は曇る。
律が、本命を貰った。
律の手には、綺麗に包装された箱と、その箱のリボンに挟まっている手紙。
それを見ると、今鞄にある私の手作りチョコが酷くちっぽけに思えた。


それから家に帰って。
貰ったチョコやらクッキーやらを全部食べた。
美味しいんだけど、何度か吐き気がした。
胸やけハンパない…
結局律にチョコは渡さなかった。
…渡せなかった。
あれから部活はしたんだけど、律の様子はいつもと違った。
端から見たらそうでも無いんだけど、私には分かる。
…律からも貰えなかった。
あぁ、もう私にあげる必要もないのか。
ひいては、私があげる必要も。
本命貰えたんだから。
きっとホワイトデーの時とかにも、お返しするのかな。
私としてたように。
バレンタインもホワイトデーも、クリスマスとか初詣なんかも。
今まで私だったものが、これからはその人になるのかな。
私の惰性も終わる。
私の代わりに、その人が埋まるのかな。
しかも、それは私みたく仮じゃなく、本命。

…あぁ、それは嫌だな。
本当に、嫌だな。
まだ律とやりたいこといっぱあるのに。
律のチョコが食べたい。
小学生のときの、チロルでもいいから。
中学生のときの、しょぼい市販のチョコでもいいから。
…高校一年のときの、手作りチョコでもいいから。
ずっと、私とバレンタインしてよ。律。
そしたら私も、手作りのチョコ作るから。
あんまり上手くないけど、私頑張るよ。
美味しくなるように、練習するから。
本命、作るよ。
だから…
自然と涙がこぼれる。
拭っても溢れる。

「…チョコ…ひぐっ…食べたいよぉ…」



「お前がそんなに大食いだとは思わなかったぞ」


「……り、つ?」
「なーに泣いてんだよ」
そう言って私の隣に座る律。
…律だ。律、りつ、りつ…

「すげーな全部食ってやんの…」
「…りつ…りつぅ…!」
「あー?そーかそーかまだチョコが欲しいんだな?」といって、律はガサガサとポケットを漁る。
それから、手には少し小さな包みが。

「私の手作りチョコだぞ」
それを聞いてまた涙が出てきて。
一つ口に入れるんだけど全然味が解らなくて。
せっかく律が作ってくれたのに。もったいない。

「明日、断ろうかなーって」
不意に律がそんなことを言う。
もちろん、その人との事だろう。
「…なんで?」
「私にはまだそういうのよくわかんねーし」
「………」
「それに、澪に構わなくなったら、お前寂しがるだろ?」
「…私を理由にするなよ」
「うはは、まだまだ澪と色んなことしたいからさ」
「……あのね、りつ」
「おう」
「…私もチョコ作ったんだけど…」
「へぇー」
「…余ってるから、食べる?」
「しゃーねぇ、食べてやるよ」

どうやら、私の惰性は続くみたい。
嫌じゃないよ。
できれば、来年も、再来年も。
律に私の代わりができるまで。
…そんな日、来なくていいのにな。


END


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