けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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mioritsu

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『2月14日』今日はバレンタインデー男女が愛を誓い合う特別な日。

私、秋山澪もその特別なイベントに乗じて思いを伝えようとしている。
正直、この日をカラメルソースのようなほろ苦い記憶にはしたくなかった。
しかし、思いを伝えずに後に残らないのはもっと嫌だ。

だから、この日の記憶が甘い甘い一生に残るものにしようと、必死に作った私の初めてのチョコレート。
出来ればこの日が私のチョコレートのような甘くてとろけるような一日になるのを信じて…

部活の終わり、いつもと同じ道をいつもと同じ人と帰る。
ただそれだけの事なのに、この後の事を考えると緊張せずにはいられない。

「しっかし、すごいなー澪は。」

「…何がだよ。」

「そのチョコレートの量だよ、流石ファンクラブのある人はちがうな~」

私の持つ紙袋に一杯に詰め込まれたチョコレートを眺めながら、からかうように言ってくる私の思い人。
しかし、その本人もボーイッシュな見た目と元々の面倒見の良さからか後輩達に人気があるらしく、
それなりの量のチョコレートを貰っている。

「律だって、結構貰ってるじゃないか。」

「いやーとてもとても、澪様には敵いませぬー」

「はいはい…」

いつも通りおどけたように話す律をしり目に、私は自分のチョコレートをどう渡そうか頭を悩ませていた。
元々恥ずかしがり屋で臆病な私が『律、これ私の気持ち受け取って…』なんてあっさり言えるわけもない、
むしろ、言えるならとっくの昔に伝えている。

「(決意したからって、そんな簡単に自分の性格は変わらないよな…)」

そんな事を考えながら、ああでもない、こうでもないと考える。

「いや~そんなに食べるとまた体重が増えちゃうな!」

「あぁー…そうだな…」

「うわっ!いてぇ!!…って、澪しゃん?」

「(どうやって自然に思いを伝えられるかな…こんな道端で言うのは恥ずかしい…
やはり私の家に呼ぶのが…でも…)」

「おーい!澪!」

「うわっ!ど、どうした?律?」

「どうしたって…話し聞いてくれないとか、どうせ、あたしの話になんか興味ないんだなー」

「違うぞ律!少し考え事をしてたんだ!」

自分の考え事に夢中になりすぎて、律の話をおろそかにしすぎた私に、
ふてくされたような視線をなげかける律、しょうがないだろ。
私だって精一杯なんだよ…

「ふーん、どんな考え事してたんだ?」

「え…それは…」

言えるはずがない。『律にどうやって告白しようか悩んでるんだ』とか、絶対に無理だ。
そんな私の戸惑った雰囲気を察したのか、律は質問を変えて別の質問を投げかけてきた。

「…まぁ、いいや。それより今から澪の家に行って良い?」

「…え!?」

「無理なら良いんだけど…」

無理じゃない、むしろ好都合だ。
私が言えなかった事があっさり実現してしまった。
しかし、その嬉しさを隠すように冷静に律に話しかける。

「でも、良いのか?律だって結構荷物あるだろ?」

「まぁー澪しゃんよりは軽いしな!」

「そうか、じゃあ遊びにきてよ。」

嬉しさを隠しながら言いつつ心の中でガッツポーズを決める。

「…それに、澪の荷物増えちゃうしさ。」

「うん?律なにか言った?」

「別にー」

おかげで律がぼそっと、言ったその一言には気付けなかった。


「おじゃましまーす。」

「あぁ、今日親出かけてるから気にしなくて良いよ。」

「ほほう、それは好都合…」

「何か言った?」

「いや、別に?」

「そう…」

「隊長無事、部屋に帰還する事が出来ました!」

「何ごっこだそれは…」

「りっちゃん隊員ごっこ、隊員は喉が渇いたからジュースを所望するであります!」

「はいはい、今入れてくるから。」

ふざけてはいたが、律のお願いは正直助かった。
少し間を持たないと緊張のしすぎで心臓がもたない。
親もいない自分の家で、本当の意味で律と二人きり…否が応にも意識してしまうし。
はぁ、こんなので本当に思いを伝えられるのか不安だ…

「おまたせ、ジュース持ってきたぞ。」

「おーう、ありがと。」

「………」

「………」

それからしばらく二人とも無言でジュースを飲んでいた。
私が意識しすぎて何も言えないでいると、律の方から話をふってきた。

「なぁ、澪ー」

「なんだ?」

「澪ってさ、チョコレート一杯貰うじゃん?」

「?あぁ、貰うな。」

「どう思う?」

「え、それって…?」

「だから、中には本命をくれる子とかもいるわけだろ?それを貰ってどう思う?」

「えっと…」

律の顔がいつになく真剣な顔で私の顔を見つめる、だから私も同じく真剣な顔で律の顔を見つめ返す。
どう思う…気持ち悪いとは思わない。だって、私もくれる子と同じ立場の人間なのだから。
でも律はどうなんだろう…もし気持ち悪いと思われたら…そう思うと体がすくむ。
でも、やっぱり、伝えたい。今言わなかったら絶対に言えない。
自分の心を奮い立たせて、自分の気持ちを言葉にすることにした。


「そうだな、嬉しい…かな。」

「嬉しい…?」

「うん、こんな私を本気で好きになってくれてるんだ。って。」

「はは、そうか、じゃあ、そんな子達への返事はどうするんだ?」

「…気持ちは嬉しいけど、今日くれた子達への思いには答えられない。」

「…え?」

「だって、私にも好きな人がいるんだ…」

そう言った瞬間律が悲しそうな顔をした気がした。

「はは、澪にも好きな人がいたのか~私にも教えないなんて傷つくなぁ!」

「誰なんだよ、澪の好きな人って、こんなかわいい子に好かれる幸せ者は!」

早口で言う律、何か勘違いをしているようだ。
でも、この反応を見て私の気持ちが少し楽になった気がする。

「幸せかは分からないけど…」

「私の好きな人はな、いつも元気で、私のそばにいてくれて、ちょっかいばっかりだしてきて、
私の嫌がることばっかりするような奴で、鈍感で、その癖凄い繊細だったりする。」

いっきに思ったことを伝える私、そして最後にどうしても伝えたかった一言を添える。

「そんな幼馴染が好きなんだ。」

「えっと…」

「はい、今日ずっとこれをどう渡そうか考えてた。」

そう言って差し出したハート型のチョコレート。
私の思いを全部詰め込んだ本命チョコを渡した瞬間、律がへたり込むように話し出した。

「これは…その…本命チョコって事で良いんだよな…?」

「言わせるなよ…野暮だぞ。」

「はは…ガラにもない事してくれるじゃん…」

「こう言うのは、私から言う物だと思ってたのに…」

「…じゃあ、律も?」

そう声をかけると同時に差し出されたチョコレート。
私と同じハート型をしたチョコレートだった。

「律…」

「ほんとは私から言うはずだったんだけどな…はは。」

「澪に好きな人がいるって聞いたら言葉でなくなっちゃってさ…」

「でも、澪の気持ちが聞けて嬉しかった。」

「告白してくれてありがとな、澪。」

「お礼とか…私が伝えたかっただけだから。」

「じゃあ、澪に負けないように私も言わないとな!」

「え…?」

「澪、私はお前が好きだ!付き合って下さい!」


大きい声でなんて事を言ってるんだ、誰かに聞かれたらどうするんだ。
って、言うか改めて言われると恥ずかしすぎて何が何だか分からなくなる。
あぁ、なにか言わなくては!

「こ、こちらこしょよろしくでしゅ!!」

「ぷっ…噛みすぎだろ!」

うぅ…恥ずかしい。
そんな照れ隠しをするように律をいつも通りに怒ってみる。
でも、そんなやり取りも何だか新鮮に感じる。

「う、うるさい!バカ律!」

「はは、これからもよろしくな!」

「うん、これからもよろしく」

「じゃあ、早速!」

「な、なんだよ…」

「澪しゃんのチョコをいただきますか!」

「待て!」

「えーなんでだよー」

「私が勇気を出して告白したんだから、私が先に律のチョコを食べたい!」

「何だそれ、別に良いけど…」

私のチョコレートをお披露目するの前に律のチョコを見ておかねば。
律は料理はできるけど、お菓子はどうなんだろうか。
細かい作業苦手だし案外失敗してたり…何ていう淡い期待を打ち砕く立派なチョコレートが出てきた。
ハート型のチョコのなかにホワイトチョコで『澪大好き』と、書いてある。

「律もこういう所は女の子だな…」

「う、うっせーし!早く食べてくれ…恥ずかしい…」

「じゃあ、頂きます。」

「ど、どうかな?」

甘い、それでいてスッと溶けるようになくなっていく完璧なチョコレートだ。

「すっごく甘くておいしい…」

「へへん!お口にあって良かった!今度こそ澪のをいただくよん♪」

「どうぞ…」

「どれどれ…」

私の作ったチョコレートは律のと比べお世辞には立派とは言いがたい…
文字とか思いつかなかったし…

「まぁ、チョコレートは見た目じゃないしな!」

「味と、気持ちで勝負だしな!」

「律、無理しなくても良いよ…」

「無理なんかしてないよ!いただきまーす」

そう言って口いっぱいにチョコレートをほおばる律。

「…どうかな?」

「頑張って作ったんだけどおいしい…?」

「んー…」

「やっぱりおいしくなかったんだ…」

律の反応を見て目頭が熱くなるのを感じた、初めてとは言え上手く作れなかった自分の腕のなさが悔しい。


「あ、いや…おいしくなかったと言うか、ちょっとだけ苦かったと言うか!」

「良いよ律、無理しなくて…」

「無理なんか…あ、そうだ。」

そう言って近寄ってくる律、一体何をするのか疑問に思っている私の顔にどんどん律の顔が迫ってくる。

「ちょ…律、一体何を…!」

「良いから…それとも、まだこう言うのは嫌か…?」

「嫌…とかじゃないけど…恥ずかしい…」

もうお互いの顔が鼻先まで接近していてお互いの呼吸まで感じられる位置に来ており、
少し動くだけでも唇が触れ合いそうになっていた。
普段ボーイッシュで活発な律も、今は頬を少し赤く染め、かわいらしい少女のような雰囲気をかもしだしていた。
そんな律に目を奪われていると、じれったそうに律がささやいてきた。

「そうか…じゃあ、ちょっと目を瞑ってくれるか?」

「えっと…はい。」

そう言って目を瞑る私、しかし緊張のためか力が入り無駄に固くなっているのが自分でも分かる。
そんな私を見て律が苦笑しながら優しく話かけてくる。

「痛いとか、そういう事はないからもっと肩の力抜いて。」

「う、うん…」

「じゃあ…」

そう言うと同時に、ちゅっ…っと、唇に暖かくて柔らかい感触が伝わる。

「…ん、ちゅ…律…」

「…っふ、澪…」

そう言いながらお互いに夢中で唇の感触を確かめ合った。
触れては離し、また唇を重ねる、そんなフレンチキス。
律の唇はまるでマシュマロみたいにふわふわで、私の理性を容赦なく奪っていく。
もっと、もっと触れていたい、そう思いながら口付けあっていると不意に私の唇が割られ口内に律の舌が差し込まれてきた。

「ふっ、ぷは、り…律…」

「大丈夫だから…私に任せて…」

そう言って律はさっきまでとは違う、柔らかく、余韻がさっと消えるような優しいキスではない。
濃厚で余韻が体の芯に響くような恋人同士のキスを始めた。

律の舌が私の口内で自由に動きまわる、舌を絡ませたり、歯を舐めたり。
その舌の動きを感じる度に私の体が反応する、お互いの唾液が混じりあい、頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。
律の舌はぬるぬるとした感触が何ともいえない心地よさで次第に何も考えられなくなっていった。

「──っふ、ぷは、はぁはぁ…」

「ふっ、ぷぁ、はぁはぁ…」

お互い息をするのも忘れてキスをしていたらしい、だから頭がボーっとしていたのか。
なんて考えていたら、律が赤く染まった顔の表情を崩しながら話しかけてくる。


「澪しゃんすっごいいやらしい顔してますね~」

「はぁはぁ…ど、どういうことだよ…」

そう聞くと律は何も言わずに口元を指差した、
慌てて口元に手をやると、そこにはあふれ出したお互いの唾液が飲みきれず一本の筋を引いていた。

「な、なな…!」

「そういうの見せられると我慢できなくなっちゃいますな~」

さっきまでの真剣な表情とは違う律、私も負けじと同じ言葉を返してやる。

「そういう律だってえっちな顔してるよ、口元からそんなに…ふふ」

「う、うああぁ…!」

そう言って慌てて口元を拭う律を見て、一気に緊張の糸が解れ笑いが止まらなくなってしまった私。
そんな私を見ながら律が恨めしそうに言う。

「そんなに笑うなよ!で、どうだった?」

「何が?」

「だから!ファーストキスの味だよ!」

「え…あっ!」

「気付くの遅すぎるだろ~」

「え~…少し苦かったかも…」

「それが澪のチョコレートの味だ!」

「じ、じゃあ律はどうだったんだよ!」

「私のファーストキスは甘くてとろけるようなチョコの味だな!」

「うぅ…」

「まぁまぁ、でも澪の唇はふわふわのマシュマロみたいでおいしかったよ?」

「な、な、恥ずかしい事を言うなー!」

「あいたー!褒めたのになんで殴られたんだ!?」

「うるさい!もう知らない!」

「ちぇー…でも」

「うん?」

「来年はお互いが甘いキスになったら良いな。」

「…頑張ります。」

私は今日という特別な日を忘れる事はないだろう。
律と恋人になれた日。初めての甘いキスをした日…ここに偽りがあるか。
少し失敗したチョコレートのおかげで、ほろ苦い味のキスになってしまったが。

今日と言う、甘くてとろけるような一日の思い出に残ったほろ苦いキス。
来年はもっともっと甘くてとろける一日にしてやろう。

「来年こそは甘いキスを…」

そう心にリベンジを誓い、律とのキスの余韻を楽しむのだった。

おわり


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