「うーさっびい」
「さすがにこの時間は冷え込むな……」
小さく吐き出した息は、瞬く間に真っ白に染まり、宙に消えていく。
時刻は深夜。とにかくひたすらに寒い。
「早く帰らないとおでん冷めちゃうな」
持っていたコンビニのビニール袋を持ち上げて律が言う。
「さすがにこの時間は冷え込むな……」
小さく吐き出した息は、瞬く間に真っ白に染まり、宙に消えていく。
時刻は深夜。とにかくひたすらに寒い。
「早く帰らないとおでん冷めちゃうな」
持っていたコンビニのビニール袋を持ち上げて律が言う。
「……こんな時間におでんなんか食べたら太っちゃうよ」
「澪だって食べたいって言ってたじゃん」
「そりゃそうだけど……」
うぐ、と言葉に詰まる。
確かに「なんだか小腹が空いた」と漏らしたのは私だ。
それでも、いつもならそこをぐっと我慢して体重のキープに努めているんだ。……いつもなら。
「澪だって食べたいって言ってたじゃん」
「そりゃそうだけど……」
うぐ、と言葉に詰まる。
確かに「なんだか小腹が空いた」と漏らしたのは私だ。
それでも、いつもならそこをぐっと我慢して体重のキープに努めているんだ。……いつもなら。
――んじゃ、今からコンビニ行こうぜ! おでん食べよう、おでん。
これだから律とのお泊り会って怖い。
深夜のおでんだなんて、そんな誘惑に勝てるはずがないのだ。
「ただでさえ冬は太りやすいのに」
「ったく、気にしすぎだって。そんなんじゃせっかくのおでんがまずくなっちゃうぞ」
「……まあ、それもそうか」
どうせ食べるのなら何も考えずに食べた方が美味しいに決まってる。
明日からダイエットすれば……いいよね、うん。
深夜のおでんだなんて、そんな誘惑に勝てるはずがないのだ。
「ただでさえ冬は太りやすいのに」
「ったく、気にしすぎだって。そんなんじゃせっかくのおでんがまずくなっちゃうぞ」
「……まあ、それもそうか」
どうせ食べるのなら何も考えずに食べた方が美味しいに決まってる。
明日からダイエットすれば……いいよね、うん。
「にしても、今日は星が全然見えねーな」
「星? ああ……ほんとだ。曇ってるな」
律と同じように空を見上げる。真っ暗な空には星ひとつ輝いていない。
「流れ星のひとつでもあれば寒い中外に出た甲斐があるのにな」
「流れ星か……そういえば見たことないな」
ずず、と鼻をすすりながら答える。
「星? ああ……ほんとだ。曇ってるな」
律と同じように空を見上げる。真っ暗な空には星ひとつ輝いていない。
「流れ星のひとつでもあれば寒い中外に出た甲斐があるのにな」
「流れ星か……そういえば見たことないな」
ずず、と鼻をすすりながら答える。
満点の星空、流れ星。
そんな光景を目の当たりにしたらさぞかしロマンチックな歌詞が出来ることだろう。
と、そんなことを考えていると、ふいに律がこんなことを尋ねてきた。
「澪はさ、もし流れ星が見えたら何をお願いする?」
「……律らしくない質問だ」
「どういう意味だそりゃ」
べし、と背中を叩かれてお互いに笑い合う。
だって星にお願いごと、なんて律のキャラからはあまり想像が出来ないじゃないか。
そんな光景を目の当たりにしたらさぞかしロマンチックな歌詞が出来ることだろう。
と、そんなことを考えていると、ふいに律がこんなことを尋ねてきた。
「澪はさ、もし流れ星が見えたら何をお願いする?」
「……律らしくない質問だ」
「どういう意味だそりゃ」
べし、と背中を叩かれてお互いに笑い合う。
だって星にお願いごと、なんて律のキャラからはあまり想像が出来ないじゃないか。
「んー……お願いごと、かあ。なんだろうな」
「やっぱあれ? 最近たるんできたお腹の肉を……あ、いや、なんでもないです」
私の眼光に怯えた律が、苦笑しながら続きを飲み込んだ。まったく、相変わらず失礼な奴だ。
それにしても、いざこうして何をお願いするか、と訊かれるとなかなかに悩む。
叶えたいことはたくさんある。
それでも、流れ星にお願いするほどに、強く願うことってなんなんだろう。
「やっぱあれ? 最近たるんできたお腹の肉を……あ、いや、なんでもないです」
私の眼光に怯えた律が、苦笑しながら続きを飲み込んだ。まったく、相変わらず失礼な奴だ。
それにしても、いざこうして何をお願いするか、と訊かれるとなかなかに悩む。
叶えたいことはたくさんある。
それでも、流れ星にお願いするほどに、強く願うことってなんなんだろう。
「うーん……」
「へへ、澪すっごい真剣な顔で悩んでる」
「…………あ」
楽しそうに私の顔を覗き込んでくる律の顔を見て、ひとつの願いごとが浮かぶ。
「いっこ浮かんだ」
「お、なになに?」
「……笑うから言わない」
「そんなこと言われたらよけー気になるっての。ねー笑わないから教えて、澪」
「絶対に笑わない?」
「もちろん!」
任せとけ、と胸を叩く律。
「それじゃあ……」
「うんうん」
「へへ、澪すっごい真剣な顔で悩んでる」
「…………あ」
楽しそうに私の顔を覗き込んでくる律の顔を見て、ひとつの願いごとが浮かぶ。
「いっこ浮かんだ」
「お、なになに?」
「……笑うから言わない」
「そんなこと言われたらよけー気になるっての。ねー笑わないから教えて、澪」
「絶対に笑わない?」
「もちろん!」
任せとけ、と胸を叩く律。
「それじゃあ……」
「うんうん」
「……律とずっと一緒にいたいって」
「…………」
「…………」
「………………ぷっ」
さっそく約束を破ってくださった律の頬をぎゅうと左右に引っ張る。
「あででででで……ごめ、ごめんなひゃい」
「だから言いたくなかったのに」
「悪かったって……なんかおかしくって」
くすくすと笑いながら言うと、律は私の手を握り、
「だってさ、その願いごとって星に願うことじゃないじゃん」
そんなことを言ってきた。
笑われた恥ずかしさに顔を熱くしたままの私は、そんな律にぶっきらぼうに答える。
「じゃあ何に願えばいいんだよ」
「澪の目の前にいる人」
「…………」
おでんの袋を揺らしながら笑う、私の目の前にいる人。
……律は、ずるい。
たった一言で私の機嫌を直してしまうのだから。
「…………」
「…………」
「………………ぷっ」
さっそく約束を破ってくださった律の頬をぎゅうと左右に引っ張る。
「あででででで……ごめ、ごめんなひゃい」
「だから言いたくなかったのに」
「悪かったって……なんかおかしくって」
くすくすと笑いながら言うと、律は私の手を握り、
「だってさ、その願いごとって星に願うことじゃないじゃん」
そんなことを言ってきた。
笑われた恥ずかしさに顔を熱くしたままの私は、そんな律にぶっきらぼうに答える。
「じゃあ何に願えばいいんだよ」
「澪の目の前にいる人」
「…………」
おでんの袋を揺らしながら笑う、私の目の前にいる人。
……律は、ずるい。
たった一言で私の機嫌を直してしまうのだから。
「ね、律」
「うん?」
「……律、私とずっと一緒にいてくれる?」
「おう!」
きゅうっと律の手に力がこもる。まったく、調子いいんだから。
でもまあ、たまには深夜のおでんも悪くないかな。
「うん?」
「……律、私とずっと一緒にいてくれる?」
「おう!」
きゅうっと律の手に力がこもる。まったく、調子いいんだから。
でもまあ、たまには深夜のおでんも悪くないかな。