けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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mioritsu

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律の気をひきたい。

最近は特にそう思うことが多くなった。
多分、たくさん詞を書くようになったからだな。
恋愛について書きたいのに恋愛なんてしたことがない。
だから私に一番近い存在である律のことを考えながら頭の中で擬似恋愛を繰り返してきた訳だ。

うん、最初は自分でも変かなって思った。
だって自分に一番近い存在といっても同性なんだ。
それでも筆が進んだのは、律との恋愛を想像しても全然嫌じゃなかったから。
律としてみたいことや憧れるシチュエーションが自然と溢れてきて、時に私の心はそれだけでいっぱいいっぱいになった。
そしてそのうち私は気付く。

ああ、これは恋だ。
これが恋なんだ。

…残念ながら当の擬似恋愛体験の産物は、本人から「背中が痒くなる」なんて言われちゃって素直には受け入れてもらえてないけれど。
それでも私は律といつか詞を再現したいと思うし、詞になるようなことをしたいし、詞に書けないようなこともしてみたいと思う。

でも、どうしたら律の気をひけるのかな。
どうしたら律と恋人同士になれるのかな。


澪「うーん…」

律「みーおっ!」

澪「うわっ」ビクッ

澪「り、律…来てたのか」

律「さっきからずーっとそこにいたんだけどな」

澪「なら声かけてくれればいいだろ」

律「だからかけたじゃん」

澪「かけたけど…もっとこうソフトにできるんじゃないか?」

律「…澪、私がさっきはじめて声をかけたと思ってる?」

澪「え?…え?」

律「何回声かけたと思ってるんだよ。まぁ詞に集中してるのは分かるけどさ…」

澪「あ…ごめん。書いてるうちにいろいろ考えちゃって」


…律のこととか。


律「ふーん?…まぁ熱心になるのはいいけど約束ぐらい覚えといてくれ」

澪「約束? …あ!今何時だ!」

律「4時前」

澪「…ごめんなさい」

律「いいよ、買い物なんて言っても今すぐ必要なものなんかじゃないし。明日にでも一人でちょろっと行ってくるから」


まずい。拗ねてる。


澪「本当にごめん!代わりに律のお願いなんでも聞くから!」

律「だからいいって。本当に大した用事でもなかったから。じゃあ私はお邪魔みたいだし帰るな」

澪「ま、待ってよ律」ギュッ

律「…離せよ」

澪「お願いだから帰らないで…私が悪かったから…」グスッ

律「………」

律「…分かったよ。分かったから手、離してくれ。服が伸びる」

澪「ごめん…」


律「…それで?時間中途半端になっちゃったしこれからどうするって言うんだよ」

澪「それは…ふ、二人でこのままのんびり過ごすってのはだめか?」

律「…まぁ帰っても特にすることもないしな。別にいいけど」

澪「あぁ。ごめんな律」

律「もういいって」

澪「でも…」

律「………」

律「じゃあさっき何考えてたのか教えてよ」

澪「え!?」


それを言うのはちょっと…。


律「そのせいで約束すっぽかされたんだから。気になるじゃん」

澪「う…それはだめ」

律「あれぇ?さっきは私のお願いなんでも聞くからって」ニヤニヤ

澪「あ…う…」

律「…なんてな!まぁどうせむっつり澪ちゃんのことだから人に言えないことでも考えてたんだろ」

澪「ち、違う!私は律のこと考え…!」


あ。


澪「て…?」

律「………」

澪「………」

律「……えっと」

澪「…あ、あ、あ」カァァ

律「そ、そんなに愛してくれて嬉しいわんっ」

澪「ち、ちちち違う!違うぞ律!私は…」

律「違うのか…」シュン

澪「そうじゃなくて!どうやったら律にまともに詞を読んでもらえるかなって!」


律「え…?そんなこと?」

澪「…ああ」

律「失礼な奴だなー!私だって毎回ちゃんと読んどるわい」

澪「そういう意味じゃなくて。こう…背中が痒いとかそういうこと言わずに、きちんと感情移入して読んでもらえるかなってことだよ」

律「あぁ…。とは言ってもそれはなかなか難しい…」

澪「………」ウルウル

律「わ、分かったよ。そのうち、な」

澪「…今やりなよ」グスッ

律「へ?」

澪「どうせそのうちそのうちって先延ばしにして終わりだろ」スン

律「いやそんなことないぞ!…ないよね?」

澪「じゃあ具体的にいつするか、言ってみて」

律「うーん…あ、明日?」

澪「本当か?」

律「た、多ぶ」

澪「本当か?」

律「…ごめんなさいっ」

澪「ほら。…だから今やってみなよ」

律「わ、分かったよぅ」

澪「じゃあ、はい」

律「どーも…」

澪「………」


まったく。
でも律がこれでちゃんと私の詞と向き合ってくれるなら。
そしてその中に私を見つけてくれるなら…。


律「………」

澪「………」

律「……だぁぁ!無理!私には無理!」

澪「ん…どうして無理なんだ?」

律「だってやっぱり背中が」

澪「…それ以外にも何か原因があるんじゃないか?」

律「え?…うーんと、その場に自分がいる風景を想像できない?とか…」

澪「もっと具体的に」

律「う…恋愛経験なんてないから“キミ”とか“あなた”とかが浮かばないんだよー!」


なるほど。
しかしこれはもしかすると律の気持ちを確かめるチャンスなのではないだろうか。


澪「な、なら律。そこには身近な人とかを当てはめてみてくれ」

律「身近な人?聡とかか?」

澪「お前は弟と恋をしたいのか?」

律「でも男っ気なんて他に…」

澪「なら…その、私なんかを当てはめて」カァァ

律「へ!?でも女同士でなんて…」

澪「いいからやってみて!!」

律「わ、わっかりましたぁ!」

澪「………」


再び沈黙。
今律は私の詞を、私が律のことを想って書いた詞を、どんな気持ちで読んでいるのだろう。
『女同士でなんて』。
さっきの律の一言は本心からのものだったのだろうか。
だとしたら私は、私のこの気持ちは…。


律「………」

律「……っ」カァァ

律「…ぅぅ」

律「…よ、読み終わりました」

澪「ど、どう…?」

律「背中は…痒くないけど…」

澪「けど…?」

律「は、恥ずかしい…」カァァ

澪「…り、律」

律「なに…?」


さっきの一言が本心からのものなのか。
…私の気持ちは消してしまうべきなのか。
確かめるのは今しかないと思った。


澪「嫌じゃ、なかったか…?その、私と…」

律「え…嫌じゃ…?」

澪「………」

律「嫌じゃ…うん。なかった、よ…」

澪「!」


嫌じゃなかった。
たったそれだけなのに、私は報われた気がした。


律「澪となら…その、なんていうか、むしろ…」

澪「ぁぁ…」ポロポロ

律「自然に…澪?」

澪「律…」ポロポロ

律「どうした…?澪」

澪「律…りつ…」ポロポロ

律「うん…」ナデナデ

澪「聞いてほしい…話があるんだ…」ポロポロ




――翌々日、月曜日。
私は皆に新しい詞を披露した。
今度の詞は初デートの体験を描いたものだ。



おわり。


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