クリスマスが終わった。
別に何十年と、物心ついたときからその『終わり』は経験してきた。
楽しい時間は、必ず終わる。クリスマスだって終わる。
そんなの当たり前だし、年中行事は日にちを過ぎれば終るんだ。
でも、それが物悲しくなったのはいつからなんだろう。
楽しい時間は、必ず終わる。クリスマスだって終わる。
そんなの当たり前だし、年中行事は日にちを過ぎれば終るんだ。
でも、それが物悲しくなったのはいつからなんだろう。
子供の頃は、別に純粋だった。
クリスマスが終わっても、プレゼントに喜んでいられた。
行事が『終わる』ということに、特に何も感じなかった。
クリスマスが終わっても、プレゼントに喜んでいられた。
行事が『終わる』ということに、特に何も感じなかった。
だけど。
高校生になってから、『終わり』が怖くなった。
終わってしまうことが、悲しいんだ。
高校生になってから、『終わり』が怖くなった。
終わってしまうことが、悲しいんだ。
なんか切ねえ。
「律?」
「えっ? あ、ごめん。なんだって?」
「聞いてなかったのか? そこの袋取ってくれよ」
「えっ? あ、ごめん。なんだって?」
「聞いてなかったのか? そこの袋取ってくれよ」
今日はクリスマスツリーの片付けだ。
私の家のダイニングに立てられていた、それなりのクリスマスツリー。
昨日まで煌びやかに輝いていたけれど、それも今日でお終い。
クリスマスは終わったのだから、もうツリーの仕事は終わりだ。
それを片付けるのも、私たちの仕事だった。
私の家のダイニングに立てられていた、それなりのクリスマスツリー。
昨日まで煌びやかに輝いていたけれど、それも今日でお終い。
クリスマスは終わったのだから、もうツリーの仕事は終わりだ。
それを片付けるのも、私たちの仕事だった。
ツリーの高さは私と同じくらい。澪よりちょっと低い程度。
その澪は、ツリーの上の方から飾りを取り外していっていた。
私も手伝っていたけれど、途中からなんか物思いにふけってた。
その澪は、ツリーの上の方から飾りを取り外していっていた。
私も手伝っていたけれど、途中からなんか物思いにふけってた。
袋と言われて、足元にある白い袋を手に取る。
この袋は、主に飾りを入れておく専用の袋だった。
私はそれを澪に渡すと、澪は手に持っていた飾りをそれに入れた。
この袋は、主に飾りを入れておく専用の袋だった。
私はそれを澪に渡すと、澪は手に持っていた飾りをそれに入れた。
その様子を、私は見ていた。
澪は私の視線に気付いたのか、首を傾げる。
澪は私の視線に気付いたのか、首を傾げる。
「どうしたんだ? さっきからぼーっとして」
「……いや、なんでもねえ、けど」
「嘘だろ」
「嘘じゃないって」
「……いや、なんでもねえ、けど」
「嘘だろ」
「嘘じゃないって」
嘘だ。
私は飾りに手をつけた。緑の枝から、綺麗な飾りを外していく。
澪とたまに目があったけど、私たちは黙々と飾りを取っていった。
雪を模した白い綿も取って、少しずつツリーは緑色になっていく。
澪とたまに目があったけど、私たちは黙々と飾りを取っていった。
雪を模した白い綿も取って、少しずつツリーは緑色になっていく。
一番上の、木のてっぺんの星だけはまだ取らずにいた。
一番下まで全部の飾りを取り終えた。
ツリーは、てっぺんの星の輝きだけが残ってる。
そこから下は、寂しそうに真緑なただの木だ。
木といっても、作り物だから本当の木じゃないけど……。
でも、飾りも何も無いツリーは、本当に寒そうだった。
ツリーは、てっぺんの星の輝きだけが残ってる。
そこから下は、寂しそうに真緑なただの木だ。
木といっても、作り物だから本当の木じゃないけど……。
でも、飾りも何も無いツリーは、本当に寒そうだった。
「あと、この星だけだな」
「ああ。澪、取れよ」
「いや律が取れ」
「これどっちが取るとか、重要なのか?」
「いいからさ」
「わかったよ」
「ああ。澪、取れよ」
「いや律が取れ」
「これどっちが取るとか、重要なのか?」
「いいからさ」
「わかったよ」
私は腕を上げて、星を掴んだ。
子供の頃は、これを見上げていた。
ツリーもすごく高くて――なのに、もう同じ身長だ。
私、成長したなあ。
ツリーもすごく高くて――なのに、もう同じ身長だ。
私、成長したなあ。
星を取った。
同時にふと見た澪の表情は。
寂しそうな笑顔だった。
寂しそうな笑顔だった。
■
ツリーは倉庫に片付けて、私たちは私の部屋に戻った。
暖房を効かせておいたはずなのに、妙に肌寒かった。
暖房を効かせておいたはずなのに、妙に肌寒かった。
「寒いなー」
「暖房本当にかけたのか律?」
「かけたよ。どっか窓開いてたのかー?」
「暖房本当にかけたのか律?」
「かけたよ。どっか窓開いてたのかー?」
確認を取りに窓際に行くが、開いてなかった。
じゃあなんで、こんなに寒いんだろう。いや、でも……。
寒い廊下から突然暖かい部屋に入ったから、寒いのかな。
多分そうだ。指先はまだ微妙に感覚が無い。
ダイニング、暖房かけなかったからなあ。
寒い部屋で片付けるんじゃなかったかも。
じゃあなんで、こんなに寒いんだろう。いや、でも……。
寒い廊下から突然暖かい部屋に入ったから、寒いのかな。
多分そうだ。指先はまだ微妙に感覚が無い。
ダイニング、暖房かけなかったからなあ。
寒い部屋で片付けるんじゃなかったかも。
窓の鍵がしまっていることを確認した。
その時だった。
――澪に後ろから抱きつかれた。
首に腕を回されて、澪の顎が私の右肩に乗る。
私はあまりの驚きに、硬直した。
首に腕を回されて、澪の顎が私の右肩に乗る。
私はあまりの驚きに、硬直した。
そして、右耳でわずかに聞こえる澪の息遣いが。
首を取り巻く澪の腕が。
背中に当たる澪の胸が。
首を取り巻く澪の腕が。
背中に当たる澪の胸が。
私の心臓を叩く。
「律……」
「……どうした澪」
「……どうした澪」
耳元で名前を呼ばれると、くすぐったい。
澪の声は、細くて、弱かった。
澪の声は、細くて、弱かった。
「クリスマス……楽しかったな……」
澪が微かに笑ったような気がして。
私は、自分の胸の前にある澪の腕に触れた。
暖かかった。
私は、自分の胸の前にある澪の腕に触れた。
暖かかった。
「ああ……」
「来年も、一緒にさ……クリスマス……」
「来年も、一緒にさ……クリスマス……」
途切れ途切れってことは、照れてるのかな。
私はなんだか、さっきまでの切なさが嘘のように微笑ましくなった。
私はなんだか、さっきまでの切なさが嘘のように微笑ましくなった。
「わかってる。来年も澪と一緒にいるよ」
「来年だけじゃ、許さないからな」
「ああ。もうずっとずっと一緒だ」
「……律」
「来年だけじゃ、許さないからな」
「ああ。もうずっとずっと一緒だ」
「……律」
さっきよりもギュッと抱きしめられた。
私は、それに反応するかのように、澪の手をギュッと握ってやる。
感覚の無い指先が、少しずつ感覚を取り戻していく。
私は、それに反応するかのように、澪の手をギュッと握ってやる。
感覚の無い指先が、少しずつ感覚を取り戻していく。
耳に聞こえる澪の吐息。
なんというか。
なんというか。
「おい、澪」
「なに?」
「……無防備すぎだろ」
「なに?」
「……無防備すぎだろ」
こんなにくっつかれて、平気なもんかよ。
「律、昨日あれだけやってまた?」
「し、仕方ないだろ。お前が抱きついてきたのが悪いんだ」
「……いいよ、私も。抱きついてたら、その……」
「し、仕方ないだろ。お前が抱きついてきたのが悪いんだ」
「……いいよ、私も。抱きついてたら、その……」
澪の吐息が、いつのまにか甘くなっていた。
私はおかしくなって、笑った。
私はおかしくなって、笑った。
■
クリスマスって、終っちゃうの悲しいけど。
でも学園祭みたいに、来年がないなんてことはないんだ。
多分何十年経ったって、なくなりはしないイベントだろう。
でも学園祭みたいに、来年がないなんてことはないんだ。
多分何十年経ったって、なくなりはしないイベントだろう。
だから、悲しくない。
澪だって言ってくれた。
『来年』って。
私も言った。
『ずっとずっと』ってさ。
『来年』って。
私も言った。
『ずっとずっと』ってさ。
終わりは始まり。
私と澪には、一緒に迎える行事がまだまだたくさんあるんだ。
一緒に楽しめる、いろんな出来事がこの先待ってる。
だから、いちいち切なくなってなんかいられねえよな!
クリスマスだって来年もあるんだ!
私と澪には、一緒に迎える行事がまだまだたくさんあるんだ。
一緒に楽しめる、いろんな出来事がこの先待ってる。
だから、いちいち切なくなってなんかいられねえよな!
クリスマスだって来年もあるんだ!
終わりは始まり。
一日が終われば、明日が始まる。
一年が終われば、来年が始まる。
一日が終われば、明日が始まる。
一年が終われば、来年が始まる。
クリスマスが終われば、もうすぐお正月だ。
今度、お羽根突きで澪に勝つ! で、顔に落書きしてやるぜ。
でもカルタは澪強いんだよなあ……。
今度、お羽根突きで澪に勝つ! で、顔に落書きしてやるぜ。
でもカルタは澪強いんだよなあ……。
終わりは始まり。
今度迎える楽しみな出来事。
あといくつ寝ると、なんて歌があったけど。
今度迎える楽しみな出来事。
あといくつ寝ると、なんて歌があったけど。
私、全然成長してねえな。
まだ、『次』が楽しみで仕方ないじゃん!
まだ、『次』が楽しみで仕方ないじゃん!
澪と一緒だから、もうなんでも楽しみだ。
■