けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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mioritsu

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だれでも歓迎! 編集

「うーっ、さみーなー!」
自宅にいるかのように無造作にカバンを置き、ベッドに座る律
私にしてもそれが自然なので、もはや何も言うまい
「暖房入れるぞ」
「はーい、たのんますー」
早いものでもう12月に入った。最後の学園祭も終え、学校はすっかり受験ムード
進路が決まったものは力を抜き、何事もなく学園生活を終えようとしている
一方受験を控えるものは、そのムードに浸らないよう周りを見ずに勉強に打ち込んでいる
私はと言うと後者、律の方は前者。
一緒に遊んでる場合では無いが、この時間が最高の休息になるから、心を許している。
「何か暖かいもの飲む?」
「ほい!入れてちょ!」
休日のパパか。と言わんばかりに安らいだ顔でベッドに寝っ転がっている彼女
その姿に他に言いようのない安らぎを感じていること、君は知っているのかな

コップにレモンを絞り、ハチミツとお湯を足して軽く混ぜる
私も律も大好き、冬の定番メニュー。お盆にカップを二つ乗せて、部屋に戻ると
ベッドの上にはぐうたらおやじが一人。羨ましいもんだ
「はい、到着。」
テーブルにお盆を置き、律に呼びかけるよう言うと、食い気味に待ってました!と飛び起きる
ぐうたらおやじが無邪気な子供に変わる瞬間。
スプーンで軽く混ぜ、温かい酸味に身をゆだねる
「んふー。やっぱ澪の作ったホットレモンは世界一だな!」
「誰が作っても一緒だよー。」
笑いながら言うと、君も笑顔を返してくる
ホットレモンもそうだけど、やっぱりその笑顔が芯から温まる一番好きな定番メニュー。


この冬を越せば、春が来る。春は出会いの季節、そして別れの季節
こうやって、部屋で一緒にホットレモンを楽しむ時間、もしかしたら今が最後なのかもしれない。
私の日常になっていたその笑顔も、いつかは遠いものになってしまうのかな。
「澪、おかわり!」
「は、はやっ!ちょっと待ってろ」
今がチャンス。部屋から出れば誰も見てない、だから気は使わない。
こんなときに君の前で涙を流すなんて、わけわかんないもんね
律のカップを手に取り、ドアノブに手をかける
「・・・別に構わないよ。泣いたって」
急に耳に入るやさしい声。振り向くと、芯の強い笑顔の中に少し寂しさを含んだ律がいた。
あれ、何でばれたのかな・・・・
「わかるよ。澪のことはなんでも・・・」
そうみたいだな。ドアノブから手を離し、テーブルの上にカップを置くと、律が床をポンポンと手で叩く
手で叩いたあたりに座ると、律の小さい手で、私の大きい手を包み込んでくれた。
「・・・・私、律と一緒じゃなきゃ・・・やってけないかもしれない」
「ふぅん。えらく弱気だな。乙女な澪しゃん?」
口ではからかっていても、握る手の力には優しさばかりが溢れていた
一番涙腺を刺激するのは、優しさなんじゃないかと。私は思う
「お、澪の目からも美味しそうなホットレモンが。」
上手いこと言ったつもりか。そんなツッコミをするのもままならず、ただ律の胸に顔をうずめる
私の頭を撫でる手つきが、また涙を誘う。こいつ、いつからこんなお母さんみたいになったんだろ。
下に兄弟がいると自然にそうなるのかなあ。わからないけど
「私だって不安だよ。澪がいなくちゃ、何したってつまんないもん。」
何いってんだか。唯やムギと二人きりでも、いつも楽しそうにしてるじゃないか。
そんな律の優しさを無下にするようなこと考えて、私はひねくれてるなあ。


これこそが、私の休息。泣き虫な私が、誰にも構わず涙を流せる時間
その時間に付き合ってくれる律が、いつか遠い存在になろうとも
その笑顔だけは近くにあると信じて。私は左手に力を込める
「さて、勉強勉強!」
律に私の成長した姿を見てもらうため、今度は律に甘えてもらうため、今は頑張るだけ。
ホットレモンをお供に・・・


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