けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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匿名ユーザー

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最近どうも心がムズムズしておかしい。
なんなんだろう。いつから、こんな風にそわそわし始めたんだっけ。

……そうだ、唯の家で漫画読んでからだ。
あの時は澪とムギが唯の追試の勉強を教えていて、暇だった。
だから暇つぶしに本棚にあった漫画を拝借して、勝手に読んでいたのだ。
その中にあった少女漫画……あれが原因かなあ……。

こんなこと今までなかったのに。
恋の話だとか、そういうのがまったくないわけじゃないだろうに。
誰それが付き合っている。あいつはあいつに片想い。
こんな会話、別に女なら当たり前だよな?
暗黙の了解のように、友達の輪の中で恋の話はしたこともある。

中学の修学旅行とか。
クリスマスが近かったりすれば、やっぱりそういう話も増えるし。
バレンタインが近づけば、やっぱりそういう話が出てくる。
私は無関係の人間だけど、でも会話だけはしていた。
ほとんど「へえ」とか「ふーん」という相槌だけだったけど。
でも、確かに友達と恋の話はしたことはあるんだ。

だからって、こんなの初めてだ。

(あー、胸痛い)

読後感ってマジであるんだな。
そういうの、映画や漫画で体験したことは何度もあるけれど。
でも大抵、数日経てば消えていく。

だけど唯の家で読んだ少女漫画のラスト。
どうにもそれが引っかかって、後を引いていた。
いつもなら、すぐにおもしろかったと過去に出来るのに。
なんか胸が痛いままだ。

なんでだろうなあ。




「唯、追試大丈夫かな」
「大丈夫だってー」
「お前はもっと心配しろ!」

澪が私に怒鳴った。これもいつものことだ。
だけど今日は胸も痛かったし、なんだか澪が妙に気になっていた。
どうしてだろう。やっぱり私、おかしいぞ。

それゆえに、唯の事ばかり心配する澪。
そりゃ勉強を見たのは澪だから、心配するのはわかっている。
でも、なんだか寂しいと思うのはなんでだろう。


あの少女漫画。
主人公は憧れの人と結ばれてハッピーエンドだ。

この胸のちらつきはそれだ。
読んだあとからたまに無性に鳥肌が立つほど不安になるのは。
私と『主人公』は違うのかも、って思ってしまうから。



自分に重ねてるからだ。
そうならないかもしれないと、怖がってるから。
だからこんなにも、読んだ後なのに後を引いてんだ。

『主人公』は恋を叶えた。
じゃあ、私は?


唯が追試に満点合格し、そのピースを澪は写真で撮った。
それすらも、一瞬ばかり漫画を連想させてしまった。

(嫉妬かよ……あれは、漫画の話じゃん)


「律?」
「え? あ、えーと何?」
「どうかしたのか? ぼーっとして」
「いや、なんでもない」

私はとりあえずなんでもない振りをした。
まったくコードが弾けなくなった唯を見つめながら。
XだとかYだとか、しょうも無いことに突っ込む澪。
あー、胸痛えな。

あの本、読まなきゃ良かったかな。







帰り道は、澪と一緒だ。それは何年も変わらない。


だけどこんなに頭に『恋』の文字が浮かんだまま歩くことは無かった。
それも恋をしている相手は隣にいる。

……澪が好きだ。
それだけだったし、澪と恋人同士になりたいと思う。
少女漫画を読めば、そこに広がる恋の世界。
その住人の一人に私もなって、願わくば澪と――。

ロマンチックが似合わないのにな私。
だけど、でも。好きな人ってのはやっぱりいるものだ。
それもいつまで経っても変わらないけど。

私は我慢できなくて、口を開いた。


「なあ澪」
「うん?」


平凡な返事。かえって言葉を繋ぎ易い。


「……澪は好きな人とか、いたりする?」
「――律?」
「……」


やっぱり違和感があるかな、私がこんな話切り出すの。
だって普段から大雑把だし、そんなの興味なさげに振舞ってるし。
だからやっぱりおかしいかな。私が恋の話……。


「いたらどうなんだ?」
「……い、いるのかよ」


澪は不適に笑った。


「……いる」


それは、『私じゃない別の誰か』という可能性も否定できない。
『主人公』のように、ポジティブになれないし。
ここまできたら、もう逃げれない。
でも、いたたまれなかった。


「ごめん、忘れて! あ、私用事思い出したから走るわ! じゃな!」


と、手を振り上げようとした時。
澪は私の手を掴んで引き止めた。


「……澪……?」
「律は――律はどうなんだよ。そんな話持ちかけるなんてことは」
「……」
「できたのか、好きな人が」


できたんじゃないよ。
できたんじゃないんだ。
違うんだ。
私はずっと前から。


「できたんじゃなくて、ずっと前からできてた……」
「律――」


「私は……澪のことが好きだ」


追い詰められたからなのか。
それとも、頭の中に少女漫画のラストが思い出されたからなのか。
どちらにしろ、私は言ってしまっていた。

澪の表情が怖くて、私は地面を見ていた。
足音が聞こえて、澪が一歩一歩近づいているのがわかった。

そして。


「……律」
「――」


私の頬に手を触れたと思うと、半ば強引に私を上に向かせた。

そのまま、キスをした。

澪が、私に。

いつもの澪とは違う。
舌が入ってくる。待てよ。澪。いやでも待つな。

しばらくして、離れた。



「私もお前と同じだよ」
「……」
「ずっと前から、律のこと好きだ」


少女漫画のセリフを思い出した。
そのセリフを言ってるのは、主人公と、主人公の相手。
そのセリフたちは、ハッピーエンドのすぐ手前だった。


「だから、ありがとう」
「……澪ぉ」
「なんだよ律。嬉し泣きか?」
「ば、馬鹿やろー……ちげーよ……っ」


結局、私も少女漫画の『主人公』ってことだな。
だって女の子だし。もちろん澪も女の子だけど。
でも、ロマンチックなのもいいじゃん。

とりあえず恋愛物の漫画は、結ばれてエンドだ。
だけど私と澪はそうはいかない。結ばれてからがプロローグなんだ。


「律……今日は私、お前の家に泊まるからな」
「……マジで?」
「駄目か?」

恋人同士になった今、私の理性が我慢できるかなあと思った。
でも、それもロマンチックでありだよな。


「よし来い澪!」
「覚悟しとけよ律。今夜は寝かさないぞ」
「えっ――?」




暴走澪がどうってのは、また別の話。




■終■


  • 暴走澪いいっすなぁ -- 名無しさん (2011-10-30 21:34:08)
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