けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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mioritsu

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「私おっきくなったら、りっちゃんのお嫁さんになる」
「ほんとっ?それじゃ私は、世界で一番、お父さんより格好良くなって、澪ちゃんの旦那さんになるから!約束ね!」
「うん、約束!」

整った寝顔を見ながらふと、遠いあの日の小さな約束を思い出した。いかにも子供らしい、無邪気な約束。
ただ1つおかしいのは、約束を交わしたのが女の子同士ということ。
その約束の相手は、テスト疲れからか夕食前だというのにぐっすり寝入っている。
カチューシャもとらずに、それも人のベッドを占領して。
「髪、癖ついちゃうぞ」
「ん~い~っ……」
返ってくるのは意味をなしていない呻きだけ。
有言実行のつもりだろうか、世界一とまではいかないが正直人並み以上に美形に成長してしまったその寝顔に私は愚痴を零す。
「なにも本当に格好良くならなくても、良かったんだぞ」
忘れっぽい律の事だ、あんな約束覚えちゃいないんだろうけど。
未だに私は、律が時折見せる真面目な表情にドキリとさせられたりもする。
けれど寝顔はまだまだ幼さの残る“女の子”のそれで、私の感情が正しくないんだと自覚させてくれる。
だから私は、今のところ間違いをおかさずに済んでいた。


そう、私が抱く感情は明らかに間違っている。
友達同士の好きから逸脱した感情、それを律に抱く理由ははっきり言って多すぎて、
でもカタチにしてはいけないモノで。
1人、あの約束をなかなか忘れられない私は、
「なんだよ、いつも私は貧乏くじじゃないか」
“人の気も知らないで”と律の寝顔を理不尽に突っつく。でもそれで良い。
私の気持ちを知られないうちは、私は間違わずに済む。間違っていると人に言われずに済むんだ。それなのに、
「何が貧乏くじ?」
どうして目を覚ますんだお前は。
「澪が私のほっぺた突つくからだろ~」
知らず漏れたらしい私の問いに律儀に答えながら体を起こすと、ぐいっと顔を覗き込んできた。
「なんだ澪、泣いてたのか?」
「泣いて、ないよ。その理由がないだろ」
「じゃなんでそんな悲しそうな顔してんのさ」
相変わらず鋭いのか鈍いのか。それが言えないから悲しいのに。
返事に困ってうつむいていると、突然温かさに包まれる。




ベッドの上で私を抱き締めたまま、
「悩み事ならいつでも言ってよ。これでも私、未来の旦那さんだぞぉ?……な~んてな」
冗談めかして言った律の笑顔が妙に寂しげに見えて、私はまだ離れたくなくて、離したくなくて。
何より、覚えていてくれた約束を守りたくて。
「それじゃあ聞いてくれる?未来の、お嫁さん、の悩み」
「おうっ。なんでも聞いてやるぜ」
それはいつもの笑顔。私が“好きな”笑顔。ああ、やっぱりこの感情は正しくなんかない。
それでも律なら、一緒に間違ってくれるのかな。あの約束、守ってくれるのかな。

ねぇ、律。


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